JP4091715B2 - 塗膜付き樹脂部品の再生処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装が施された熱可塑性樹脂部品の再生処理装置に関し、さらに詳しくは、自動車のバンパーのごとき塗装が施された樹脂部品廃材を再利用するにあたってその塗膜を剥離させるための再生処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用バンパーに代表されるような熱可塑性樹脂部品の再生処理技術としては、金属その他の異材質部品を除去したのちに塗膜を剥がすことなくそのまま例えば一辺が10mm程度の大きさに粉砕した上で造粒し、外観品質がそれほど問題とならない下級部品の原材料として再利用する方法のほか、その再生品質の向上を図るために、上記粉砕片をアルカリあるいは有機塩酸等の溶剤に浸漬させて塗膜を剥離させる方法や、上記粉砕片を所定の処理槽に入れて高速にて撹拌させることにより塗膜を剥離させる方法がある(特開平11−58383号公報)。
【0003】
そして、撹拌によって塗膜を剥離させる上記の方法では、その撹拌に伴う粉砕片同士の摩擦あるいは衝突熱によって樹脂自体が軟化もしくは溶融する直前の温度近くまで昇温させ、その昇温によって表面の塗膜が剥離しやすくなった粉砕片同士をバレル仕上研磨のごとき形態で相互に接触させることで塗膜を剥離させることを基本としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
溶剤を使って塗膜を剥離させる方法では、処理後の溶剤の処理が問題となるほか、塗膜剥離後に水洗が必須となるために、処理設備全体が大型化することとなって好ましくない。
【0005】
また、撹拌のみによって塗膜を剥離させる方法では、剥離された塗膜と樹脂とを処理槽内で完全に分別することができないため、処理後に別工程において塗膜と樹脂との分別作業を行わなければならず、工数の増加とコストアップが余儀なくされる。
【0006】
その上、一旦剥離された塗膜も処理時間中は粉砕片とともに継続して撹拌されることになるため、その一旦剥離した塗膜がクッションとなって未剥離の粉砕片の塗膜剥離を妨げるだけでなく、一旦剥離した塗膜が粉砕片に再度付着してしまうことが予想され、結果として塗膜剥離効率が悪くなり、処理時間が無用に長くなって好ましくない。
【0007】
さらに、上記のように処理時間が長くなると、粉砕片の表面の塗膜だけでなく樹脂層自体までもが粉状に破砕される度合いが大きくなり、本来の目的である樹脂の回収効率が低下することになる。
【0008】
本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、設備の大型化や廃液の二次処理問題を招くことなく、しかも短時間のうちに効率よく塗膜を剥離させることができるようにした再生処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、塗膜が付着した熱可塑性樹脂部品を所定の大きさに粉砕し、この粉砕片を処理槽内で撹拌させて塗膜を剥離させるようにした塗膜付き樹脂部品の再生処理装置であって、軸心が上下方向を指向する円筒状の処理槽内に該処理槽とほぼ同心状のスクリーンを配設して二重槽構造とし、その処理槽の内底面のうちスクリーンの内側領域を覆う円板状をなす撹拌用の回転部材を設け、この回転部材の回転によって粉砕片を撹拌し、撹拌によって粉砕片から剥離された塗膜粉をスクリーンを通して撹拌領域の外側に排出するようになっているとともに、前記回転部材と同軸一体にファンブレードを設けて、前記処理槽とスクリーンとのなす空間に積極的に送風するようになっていて、同時にこの空間には排気装置が接続されていることを特徴としている。
【0010】
上記スクリーンとしては、粉砕片から剥離された塗膜が通過できる機能があればよく、例えば金網のごとき網目状のものやパンチングメタル等を用いることができる。
【0011】
したがって、この請求項1に記載の発明では、粉砕片から剥離された塗膜はスクリーンを通過して処理槽の外側に集められるので、スクリーンの内側の撹拌領域に残される粉砕片とは完全に分離され、一旦剥離した塗膜が再度粉砕片に付着するような事態がなくなる。
【0013】
また、実質的に円板状をなす回転部材の回転によって処理槽内の粉砕片が満遍なく撹拌されることから、撹拌と同時にその撹拌に伴う遠心力によって剥離塗膜片が処理槽の外側に集められる。
【0015】
そして、上記のようにしてスクリーンを通過した塗膜は、ファンブレードからの送風によって処理槽の外側に積極的に集められた上、排気装置によって槽内空気とともに処理槽外部に排気される。なお、上記排気装置の一部に集塵装置を設けておけば塗膜はその集塵装置によって補集される。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明におけるスクリーン設置位置のうち粉砕片の撹拌領域となる下部が断熱層構造となっていて、その断熱層の上部のみがスクリーンとなっていることを特徴としている。
【0017】
したがって、この請求項2に記載の発明では、実際に粉砕片が撹拌される領域ではその断熱構造のために熱の放出が抑制され、粉砕片自体の昇温による塗膜剥離効率を高いままで維持することができるようになる。
【0018】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、一旦剥離された塗膜と粉砕片とがスクリーンを介して分離されるので、その一旦分離した塗膜が再度粉砕片に付着することがなく、塗膜剥離効率が向上するほか、従来のように塗膜剥離処理後にあらためて剥離塗膜と粉砕片との分別作業を行う必要がないので、工程数の削減とコストダウンを図ることができる。また、上記塗膜剥離効率の向上により処理時間が短くて済むので、樹脂層までも粉状に破砕してしまうことがなく、本来の目的である樹脂の回収効率が一段と向上する効果がある。
【0019】
さらに、処理槽の内底部に配置した円板状の回転部材にて粉砕片を撹拌するようにしたため、処理槽内での粉砕片が満遍なく撹拌されて処理むらが発生することがなく、処理時間の一層の短縮化と処理品質の均一化を図ることができる効果がある。
【0020】
加えて、撹拌用の回転部材と同軸一体の送風手段たるファンブレードによって積極的に送風しつつ排気装置によって排気するようにしたため、一旦剥離された塗膜と粉砕片とがより確実に分離されるようになり、塗膜剥離効率の向上と処理時間の短縮化をより一層促進できる効果がある。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、実質的に二重槽構造とした処理槽の下部を断熱構造として上部のみをスクリーンとしたため、一旦剥離された塗膜と粉砕片とを分別しながらも、実際に粉砕片が撹拌されている部分ではその断熱構造のために熱の放出が抑制されることから、請求項1に記載の発明と同様の効果のほかに、塗膜剥離効率が一段と向上する効果がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る処理装置の好ましい実施の形態を示す図であって、1は投入口2から所定の塗膜付き熱可塑性樹脂部品の粉砕片Pが投入されることによりその粉砕片Pの塗膜剥離処理を行う略円筒状の処理槽、3はその排気口4に接続された排気装置である。
【0023】
例えばポリプロピレン製の自動車用バンパーに代表されるような所定の塗装が施された熱可塑性の樹脂部品廃材は、前工程である破砕工程にて塗膜付きのまま一辺が5〜30mm程度の大きさの粉砕片Pに粉砕された上で、所定量ずつ投入口2から処理槽1内に投入される。
【0024】
上記処理槽1内には、網状構造物やパンチングメタル等からなる円筒状のスクリーン5が配設されていて、その処理槽1自体が実質的に二重槽構造となっている。また、処理槽1の内底部にはその説明用断面図である図2にも示すように、スクリーン5で囲まれた底面領域を覆うような大きさの円板状をなす回転部材6が設けられているとともに、粉砕片Pの撹拌を効果的に行うためにその回転部材6上面には羽根6aが取り付けられている。また、回転部材6の下方にはこれと同軸一体に送風手段たるファンブレード7が設けられていて、これらの回転部材6およびファンブレード7は共通のモータ8により回転駆動されるようになっている。
【0025】
そして、処理槽1に粉砕片Pが投入されると回転部材6が回転駆動されて、粉砕片Pが撹拌される。この撹拌に伴い粉砕片P,P同士もしくは槽内壁面との摩擦あるいは衝突により各粉砕片Pが溶融する直前の温度まで加熱され、その表面での接着力が低下した塗膜が細かく破砕されながら樹脂そのものから剥離されるようになっている。同時にファンブレード7の回転により回転部材6の下方空間に正圧が生じ、該下方空間から処理槽1自体とスクリーン5とのなす空間に向けて送風されるようになっている。なお、スクリーン5のメッシュの大きさは例えば1〜5mm程度とする。
【0026】
上記排気装置3は、集塵装置9と排気ファン10および排気筒11とから形成されていて、処理槽1内での処理と並行して排気装置3による排気が行われるようになっている。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、先に述べたように、処理槽1に粉砕片Pが投入されると回転部材6が回転駆動されて、粉砕片Pが撹拌される。この撹拌に伴い粉砕片P,P同士もしくは槽内壁面との摩擦あるいは衝突により各粉砕片Pが溶融する直前の温度まで加熱され、図3に示すように樹脂層Wの表面での接着力が低下した塗膜Gが細かく破砕されながら樹脂層Wそのものから剥離されるとともに、樹脂層Wそのものの表面の一部も粉状に破砕される。なお、剥離された塗膜片を符号G1で示し、同じく粉状に破砕された樹脂片を符号W1で示す。
【0028】
同時に、排気装置3による排気と並行して、ファンブレード7の回転により、該ファンブレード7側から処理槽1自体とスクリーン5とのなす空間に向けて送風される。これにより、粉砕片Pから剥離された塗膜片G1等の粉体成分は撹拌に伴う遠心力によりスクリーン5を通過し、さらにファンブレード7からの風圧により処理槽1の外側に集められた上で、速やかに集塵装置9に集塵される。また、図1に示すように、処理槽1の底部のうち最外側部分が底部中央部よりも低くなっていることにより、その部分に集められた剥離塗膜片G1等の粉体成分が上方へは戻りにくくなる。
【0029】
ここで、上記処理槽1内での温度は、先に述べたように樹脂自体が溶融する直前の温度(熱可塑性樹脂の場合、一般的には150〜160℃程度)に維持することが望ましく、必要に応じて撹拌中に水をシャワー状に滴下する。また、上記回転部材6の表面には、粉砕片Pの大きさもしくは撹拌効率改善のために必要に応じて所定の突起等が設けられる。
【0030】
そして、処理槽1内での所定時間の撹拌を終えた粉砕片Pは、先に述べたように、剥離された塗膜片G1等の粉体成分とは完全に分別されて回収されることから、そのまま所定の樹脂材料として再利用される。
【0031】
なお、前記スクリーン5自体への剥離塗膜片G1等の付着を防止するためには、スクリーン5にフッ素樹脂等のコーティングによる表面処理を施すのが望ましい。また、スクリーン5は、塗膜剥離処理の繰り返しにより塗膜片G1等の粉体の付着による目詰まりが発生しやすいので、図示しない振動発生手段によりスクリーン5に定期的に微振動を与えてそのスクリーン5に付着した粉体成分を除去したり、あるいは図1に示すように、処理槽1とスクリーン5との間に高圧空気噴射用のノズル12を予め臨ませておき、定期的に高圧空気をスクリーン5に噴射させて、そのスクリーン5に付着した粉体成分を除去するのが望ましい。
【0032】
図4は本発明の好ましい第2の実施の形態を示す図で、先に説明した図1と共通する部分には同一符号を付してある。
【0033】
図4に示すように、この実施の形態では、実質的に二重槽構造とした点で先の実施の形態と同様であるものの、実際に粉砕片Pが撹拌される領域では円筒状の断熱層13を設け、その断熱層13の上部にのみスクリーン15を配設したものである。
【0034】
この実施の形態によれば、スクリーン15によって、一旦剥離された塗膜片等と粉砕片Pとを分別しつつも、粉砕片Pの撹拌領域での保温効果を高めて、その撹拌温度の低下を抑制できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい第1の実施の形態を示す構成説明図。
【図2】本発明の好ましい第1の実施の形態における処理槽の説明用断面図。
【図3】粉砕片の塗膜剥離過程の拡大説明図。
【図4】本発明の好ましい第2の実施の形態を示す構成説明図。
【符号の説明】
1…処理槽
3…排気装置
5…スクリーン
6…回転部材
7…ファンブレード(送風手段)
8…モータ
13…断熱層
15…スクリーン
P…熱可塑性樹脂部品の粉砕片
G1…剥離した塗膜片
Claims (2)
- 塗膜が付着した熱可塑性樹脂部品を所定の大きさに粉砕し、この粉砕片を処理槽内で撹拌させて塗膜を剥離させるようにした塗膜付き樹脂部品の再生処理装置であって、
軸心が上下方向を指向する円筒状の処理槽内に該処理槽とほぼ同心状のスクリーンを配設して二重槽構造とし、
その処理槽の内底面のうちスクリーンの内側領域を覆う円板状をなす撹拌用の回転部材を設け、
この回転部材の回転によって粉砕片を撹拌し、撹拌によって粉砕片から剥離された塗膜粉をスクリーンを通して撹拌領域の外側に排出するようになっているとともに、
前記回転部材と同軸一体にファンブレードを設けて、前記処理槽とスクリーンとのなす空間に積極的に送風するようになっていて、
同時にこの空間には排気装置が接続されていることを特徴とする塗膜付き樹脂部品の再生処理装置。 - 前記スクリーン設置位置のうち粉砕片の撹拌領域となる下部が断熱層構造となっていて、その断熱層の上部のみがスクリーンとなっていることを特徴とする請求項1に記載の塗膜付き樹脂部品の再生処理装置。
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