JP4090538B2 - ころ軸受用保持器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ころ軸受の保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、一例として、円すいころ軸受用保持器の標準的な形態を示している。この保持器は、図3に示す円すいころ7を収容するための複数のポケット11を備え、ポケット11の軸方向の一方側が小径側環状部12、軸方向の他方側が大径側環状部13、円周方向に隣り合ったポケット11間が柱部14になった環体である。図5に拡大して示すように、ポケット11の各隅には隅アール部15、16が設けられており、この隅アール部15、16の半径は、円すいころ7の面取り部7a、7bと接触しないよう、面取り部7a、7bの面取り寸法Cr、CRよりも小さく設定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
軸受回転時、保持器の柱部14が円すいころ7に押されることによって曲げモーメントが発生し、これに伴い、ポケット11の隅アール部15、16に応力集中が生じる。この応力集中は、軸受回転数が高くなるほど、また、隅アール部の半径が小さいほど大きくなり、保持器の強度低下の主たる要因の一つとなっている。隅アール部の応力集中を緩和するための対策として、隅アール部の半径を大きくすることも考えられるが、円すいころの面取り部との干渉を避けるために、面取り寸法を大きくする必要があり、軸受負荷容量の低下につながる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ころの面取り部との干渉を生じることなく、かつ、軸受負荷容量を低下させることなく、隅アール部の応力集中を緩和し得る構成を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、ポケットの少なくとも軸方向の一方側の隅アール部を、第1アールと、第2アールと、第3アールとで構成し、第1アールの領域を、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出させと共に、第2アールの領域を介して柱部側のストレートなポケット壁面と滑らかに連続させ、第3アールの領域を、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出させと共に、その一端を第1アールの領域の内径側部分と境界を接しさせ、かつ、その他端を柱部側の傾斜状のポケット壁面と滑らかに連続させ、第1アールと、第2アールと、第3アールの半径を、それぞれ、ころの対応する面取り部の面取り寸法と同一以上にした。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を円すいころ軸受用保持器に適用した実施形態について説明する。
【0007】
図1に示すように、この実施形態の保持器は、例えば鋼板素材からプレス加工によって成形されたもので、図3に示す円すいころ7を収容するための複数のポケット1と、ポケット1の軸方向の一方側に位置する小径側環状部2と、軸方向の他方側に位置する大径側環状部3と、小径側環状部2と大径側環状部3とに連続し、円周方向に隣り合ったポケット1間を仕切る柱部4とを備えた環体である。ポケット1の小径側の2つの隅にはそれぞれ隅アール部5が設けられ、大径側の2つの隅にはそれぞれ隅アール部6が設けられている。
【0008】
図2{図1(d)のC部、D部の拡大図}に拡大して示すように、小径側の隅アール部5は、半径r1(第1アール)と半径r2(第2アール)の円弧で描かれた抜きアール5aと、半径r3(第3アール)の円弧で描かれた押しアール5bとからなり、大径側の隅アール部6は、半径R1(第1アール)と半径R2(第2アール)の円弧で描かれた抜きアール6aと、半径R3(第3アール)の円弧で描かれた押しアール6bとからなる。抜きアール5a、6aはプレス金型によって抜き成形されたもの、押しアール5b、6bはプレス金型によって押し成形されたものである。
【0009】
隅アール部5において、抜きアール5aの半径r1の領域は、小径側環状部2側のポケット面1aよりも所定寸法hだけ端面側に突出し、半径r2の領域を介して柱部4側のストレートなポケット面1b1と滑らかに連続している。押しアール5bは、一端は抜きアール5aの内径側部分と境界を接し、他端は柱部4側の傾斜状のポケット面1b2と滑らかに連続している。押しアール5bの半径r3の曲率中心O1は、ポケット面1aから所定寸法jだけポケット中央側に寄った直線上に位置する。寸法jは半径r3よりも小さく(j<r3)、そのため、押しアール5bはポケット面1aよりも所定寸法(=r3−j)だけ端面側に突出する。
【0010】
隅アール部6において、抜きアール6aの半径R1の領域は、大径側環状部3側のポケット面1cよりも所定寸法Hだけ端面側に突出し、半径R2の領域を介して柱部4側のストレートなポケット面1b1と滑らかに連続している。押しアール6bは、一端は抜きアール6aの内径側部分と境界を接し、他端は柱部4側の傾斜状のポケット面1b2と滑らかに連続している。押しアール6bの半径R3の曲率中心O2は、ポケット面1cから所定寸法Jだけポケット中央側に寄った直線上に位置する。寸法Jは半径R3よりも小さく(J<R3)、そのため、押しアール6bはポケット面1bよりも所定寸法(=R3−J)だけ端面側に突出する。
【0011】
この実施形態では、隅アール部5、6の諸寸法を、図3に示す円すいころ7の面取り部7a、7bの面取り寸法Cr、CRに対して、次のように設定している。
【0012】
r1、r2、r3≧Cr
R1、R2、R3≧CR
h≒r1、 H≒R1
隅アール部5、6の形状および諸寸法を上記のように設定しているため、円すいころ7の面取り寸法Cr、CRを従来と同程度にして、軸受負荷容量を従来と同程度に確保しつつ、隅アール部5、6の半径(r1、r2、r3、R1、R2、R3)を従来よりも大きく設定して(1.2〜2倍程度)、隅アール部5、6の応力集中を緩和することができる。その場合でも、隅アール部5、6が環状部側のポケット面1a、1cよりも端面側に所定寸法だけ突出した形状であるので、円すいころ7の面取り部7a、7bとの干渉は起こらない。
【0013】
尚、上記のような構成は、小径側の2つの隅アール部5および大径側の2つの隅アール6のうち何れか一方にのみ適用しても、かなりの効果が期待できる。
【0014】
また、本発明は円すいころ軸受に限らず、円筒ころ軸受等の他形式のころ軸受の保持器にも同様に適用することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、ポケットの少なくとも軸方向の一方側の隅アール部を、第1アールと、第2アールと、第3アールとで構成し、第1アールの領域を、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出させと共に、第2アールの領域を介して柱部側のストレートなポケット壁面と滑らかに連続させ、第3アールの領域を、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出させと共に、その一端を第1アールの領域の内径側部分と境界を接しさせ、かつ、その他端を柱部側の傾斜状のポケット壁面と滑らかに連続させ、第1アールと、第2アールと、第3アールの半径を、それぞれ、ころの対応する面取り部の面取り寸法と同一以上にしたので、軸受負荷容量を従来と同程度に確保しつつ、隅アール部の半径を従来よりも大きく設定して、隅アール部の応力集中を緩和することができる。その場合でも、隅アール部が環状部側のポケット面よりも端面側に所定寸法だけ突出した形状であるので、ころの面取り部との干渉は起こらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係わる保持器の断面図(図a)、図1(d)におけるC部の斜視図(図b)、図1(a)におけるA方向矢視図(図c)、図1(a)におけるB方向矢視図(図d)である。
【図2】図1(d)におけるC部の拡大図(図a)、図1(d)におけるD部の拡大図(図b)である。
【図3】円すいころの側面図である。
【図4】従来保持器の正面図(図a)、側面図(図b)である。
【図5】従来保持器のポケット部周辺を外径側から見た図である。
【符号の説明】
1 ポケット
1a 小径側環状部側のポケット面
1c 大径側環状部側のポケット面
2 小径側環状部
3 大径側環状部
4 柱部
5 隅アール部
6 隅アール部
7 円すいころ
7a 面取り部
7b 面取り部
Cr 面取り寸法
CR 面取り寸法

Claims (1)

  1. ころを収容するための複数のポケットと、ポケットを挟んで軸方向の両側にそれぞれ位置する環状部と、環状部に連続し、円周方向に隣り合ったポケット間を仕切る柱部と、ポケットの各隅に設けられた隅アール部とを備え、
    ポケットの少なくとも軸方向の一方側の隅アール部が、第1アールと、第2アールと、第3アールとで構成され、
    前記第1アールの領域は、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出すると共に、前記第2アールの領域を介して柱部側のストレートなポケット壁面と滑らかに連続し、
    前記第3アールの領域は、環状部側のポケット面よりも所定寸法だけ端面側に突出すると共に、その一端が前記第1アールの領域の内径側部分と境界を接し、かつ、その他端が柱部側の傾斜状のポケット壁面と滑らかに連続し、
    前記第1アールと、第2アールと、第3アールの半径が、それぞれ、上記ころの対応する面取り部の面取り寸法と同一以上であることを特徴とするころ軸受用保持器。
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