JP4089282B2 - エンジントルクの算出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクを算出し、この基本エンジントルクを補正することによりエンジントルクを算出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両においてトルクを制御する技術、例えば、トランスミッション制御、ABS(Anti lock Brake System)制御、トラクション制御等が知られている。これらの技術では、エンジンに関しては、実トルクが目標トルクとなるように制御される。また、上述したトランスミッション制御等に関しては、エンジンの実トルクに応じて制御量が演算され、その制御量に従ってアクチュエータが駆動制御される。例えば、トランスミッション制御の場合、エンジンの実トルクに応じて変速用ソレノイドバルブの制御量が演算され、その制御量に従って同ソレノイドバルブが駆動される。この駆動により油圧回路が切替えられ所定のギヤ位置(1速、2速、3速等)が決定されて変速が行われる。また、ABS制御では、エンジンの実トルクに応じてホイールシリンダのブレーキ油圧の制御量が演算され、その制御量に従ってアクチュエータが駆動される。この駆動によりブレーキ油圧が制御され、車輪と路面とのスリップ率が望ましい値に維持される。従って、これらのトランスミッション制御等のためには、前記エンジンのトルク制御において、エンジンの実トルク(エンジントルク)を精度よく算出することが要求される。
【0003】
これに対し、例えば特開2000−127807号では、エンジントルクを次にようにして算出している。まず、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づき基本エンジントルクを求める。また、エンジントルクに影響を及ぼすと考えられるパラメータ、例えば、吸入空気量、吸気圧等から補正係数を求める。そして、この補正係数で前記基本エンジントルクを補正することによって、エンジントルクを算出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記パラメータがエンジントルクに及ぼす影響度合いは、そのときのエンジンの運転状態、例えばエンジン回転速度、燃料噴射量等に応じて異なる。この点、前述した公報の技術では、パラメータの種類に応じた単一の補正係数を設定しているに過ぎず、前述したような影響度合いが変化することまで考慮していない。これでは、パラメータのエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態によって変化した場合、その変化した影響度合いを反映したエンジントルクの算出を行うことができない。このため、前記公報の方法では、エンジントルクの算出精度を高めるにも限度がある。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、基本エンジントルクを単に所定のパラメータで補正する場合よりも高い精度でエンジントルクを算出することのできる算出方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクを算出し、前記エンジンのトルクに影響を及ぼす所定のパラメータを用いて前記基本エンジントルクを補正することによりエンジントルクを算出する方法であって、前記パラメータが単位量変化したときの前記エンジントルクの変化量に対応するトルク感度係数を少なくとも前記エンジン回転速度に基づき算出し、この算出したトルク感度係数で前記基本エンジントルクを補正するものとする。
【0007】
上記算出方法によれば、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクが算出される。この基本エンジントルクはエンジンの標準状態でのトルクである。また、所定のパラメータについてのトルク感度係数が、少なくともエンジン回転速度に基づいて算出される。パラメータはエンジントルクに影響を及ぼすものであり、トルク感度係数は前記パラメータが単位量変化したときのエンジントルクの変化量に対応するものである。
【0008】
そして、前記パラメータ及びトルク感度係数によって基本エンジントルクが補正される。ここで、前述したようにトルク感度係数は、そのときのエンジンの運転状態(少なくともエンジン回転速度)に基づいて算出されている。すなわち、算出されたトルク感度係数はエンジンの運転状態に応じたものとなっている。このことから、パラメータ及びトルク感度係数を用いた基本エンジントルクの補正により、そのときのエンジンの運転状態に応じたパラメータの影響度合いで影響を受けたエンジントルクが求められる。
【0009】
従って、たとえパラメータのエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジン回転速度等のエンジン運転状態によって変化していたとしても、その変化した影響度合いを反映したエンジントルクが算出されることとなる。その結果、パラメータの種類に応じて設定した単一の補正係数で基本エンジントルクを補正する場合よりも、そのエンジントルクの算出精度を高めることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記パラメータ及び前記トルク感度係数を用いた前記基本エンジントルクの補正に際しては、前記パラメータの標準状態での値を前記エンジン回転速度及び前記燃料噴射量に基づき算出するとともに、同パラメータの実際の値を検出し、前記算出値及び前記検出値の偏差と前記トルク感度係数とに基づきトルク補正量を算出し、このトルク補正量を用いて前記基本エンジントルクを補正するものとする。
【0011】
上記算出方法によれば、基本エンジントルクの補正に際し、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づき、パラメータの標準状態の値が算出される。また、パラメータの実際の値が検出される。両者の値が異なっている場合、その現象はエンジンの運転状態の過渡時、周囲の環境の変化等によってパラメータが変化したことによるものと考えられる。そこで、前記算出値及び前記検出値の偏差が求められ、この偏差と前記トルク感度係数とに基づき、同偏差がエンジントルクに及ぼす影響量であるトルク補正量が算出される。従って、パラメータのエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、前記トルク補正量を用いて基本エンジントルクを補正することにより、エンジントルクを確実に高精度で算出することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記パラメータは吸入空気量であるものとする。
ここで、吸入空気量は、加減速時等の過渡時、環境(気温、大気圧等)の変化、エンジンの機差ばらつき、過給機の過給圧特性のばらつき等によっても変化する。
【0013】
これに対し、請求項3に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、吸入空気量を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、吸入空気量が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、吸入空気量のエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、過渡時等に吸入空気量が変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記パラメータは過給圧を含む吸気圧であるものとする。
ここで、吸気圧は、加減速時等の過渡時、環境(気温、大気圧等)の変化、過給機における過給圧特性のばらつき等によっても変化する。
【0015】
これに対し、請求項4に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、過給圧を含む吸気圧を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、吸気圧が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、吸気圧のエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、過渡時等に吸気圧が変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記燃料は、燃料ポンプで加圧されて畜圧容器に一時蓄えられた後に燃料噴射弁の開弁により噴射されるものであり、前記パラメータは前記燃料噴射弁からの燃料の噴射圧であるものとする。
【0017】
ここで、エンジンでは、燃料ポンプで加圧された燃料が畜圧容器に一時蓄えられる。そして、畜圧容器内の高圧燃料は燃料噴射弁が開弁されることで噴射される。ここで、燃料の噴射圧は、噴射圧制御において環境(気温、大気圧、水温等)の変化に応じて補正される場合がある。また、同噴射圧は過渡時の応答遅れ等により変化する(目標噴射圧からずれる)場合がある。
【0018】
これに対し、請求項5に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、噴射圧を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、噴射圧が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、噴射圧のエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、噴射圧制御時における補正等によって噴射圧が変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記パラメータは、空気及び燃料の混合気の燃焼にともない生じて吸気通路に還流される排気還流ガスの流量であるものとする。
【0020】
ここで、一般にエンジンでは排気還流ガスの流量により燃焼状態が変わり、それに応じてエンジントルクが変化する。
これに対し、請求項6に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、排気還流ガスの流量を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、排気還流ガスの流量が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、排気還流ガスの流量のエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわち排気還流ガスの流量の変化がエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、排気還流ガスの流量が変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記エンジンは、同エンジンにより駆動される燃料ポンプと、前記燃料ポンプから圧送された燃料を、同燃料が燃料噴射弁から噴射される前に一時蓄える畜圧容器と、前記燃料ポンプから前記畜圧容器への燃料の圧送量を調整する調量弁とを備え、前記パラメータは、前記調量弁による圧送量の調整にともない変化する前記燃料ポンプの駆動トルクであるものとする。
【0022】
ここで、上記エンジンでは、燃料ポンプがエンジンにより駆動され、その燃料ポンプから燃料が畜圧容器に圧送される。このときの燃料の圧送量は調量弁によって調整される。そして、畜圧容器に圧送された燃料は燃料噴射弁から噴射される。
【0023】
燃料ポンプから圧送される燃料の量が調量弁によって調整される際に、燃料ポンプに要求される駆動トルクは、圧送される燃料量に応じたものとなる。そして、この圧送量に応じた駆動トルクが損失となってエンジントルクが変化する。
【0024】
これに対し、請求項7に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、調量弁の調整にともない変化する燃料ポンプの駆動トルクを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、駆動トルクが単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、駆動トルクのエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわち調量弁の調整にともない変化する駆動トルクがエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、駆動トルクが変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記パラメータは、前記エンジンの温度上昇に応じて減少するフリクショントルクのうちアイドル時におけるフリクショントルクであるものとする。
【0026】
ここで、エンジンの冷間時には潤滑油の粘度が高くなる等の理由により、フリクションが増加する。このフリクションは、エンジンの温度、例えば冷却水温の影響を受けて変化する。
【0027】
これに対し、請求項8に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、アイドル時におけるフリクショントルクを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、アイドル時のフリクショントルクが単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、アイドル時におけるフリクションのエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、前記フリクションが変化しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の発明において、前記アイドル時におけるフリクショントルクは、暖機後の標準状態での燃料噴射量と、前記エンジン回転速度を所定のアイドル回転速度にするための燃料噴射量との偏差に基づき算出されるものとする。
【0029】
上記算出方法によると、アイドル時におけるフリクショントルク、換言すると、標準状態に対するフリクション増加分のトルクは、エンジン暖機後の標準状態での燃料噴射量と、エンジン回転速度を所定のアイドル回転速度にするための燃料噴射量との偏差に基づき算出される。このように標準状態との差からフリクショントルクを算出することで、冷間時のフリクションのみならず、エンジン慣らし前のフリクション、エンジン毎の機差、潤滑油の粘度等によるトルク増加分も推定可能となる。
【0030】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の発明において、非アイドル時には、前記エンジンの温度上昇に応じた前記フリクショントルクの変化量を前記アイドル時のフリクショントルクから減算し、その減算結果を前記パラメータとして用いるものとする。
【0031】
上記算出方法によると、エンジンの非アイドル時には、アイドル時のフリクショントルクから、エンジンの温度上昇に応じたフリクショントルクの変化量が減算される。そして、減算結果が非アイドル時のフリクショントルクとされる。このため、非アイドル時であってもアイドル時と同様にアイドルフリクショントルクを高い精度で求めることができる。また、このようにして求めたアイドルフリクショントルクによってエンジントルクを算出するため、得られるエンジントルクもまた精度の高いものとなる。
【0032】
請求項11に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記パラメータは、前記エンジンが搭載された車両の総走行距離であるものとする。
また、請求項12に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記パラメータは、前記エンジンの出力軸の総回転数であるものとする。
【0033】
ここで、エンジンの可動部で発生するフリクション(摺動抵抗)であるエンジンフリクションはエンジントルクに影響を及ぼすが、その影響量はエンジンの総運転量によって変化する。すなわち、エンジンフリクションはエンジンが新しいとき(新車時)には大きい。しかし、エンジンフリクションは、エンジンの運転にともない回転部分や摺動部分に当りがつく(接触面の凹凸が取り除かれる)ことにより、エンジンの運転履歴(積算時間、積算回転数等)、車両の走行履歴(走行距離等)に応じて減少し、いわゆる慣らし運転が終わると、それ以後はほとんど変化しなくなる。そして、このエンジンフリクショントルクの変化に応じてエンジントルクも変化する。
【0034】
これに対し、請求項11に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、総走行距離を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、総走行距離が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、総走行距離のエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、総走行距離の増加に応じてフリクションが減少しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0035】
また、請求項12に記載の発明では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、エンジンの出力軸の総回転数を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数が用いられる。このトルク感度係数は、総回転数が単位量変化したときのエンジントルクの変化量である。従って、エンジンの出力軸の総回転数がエンジントルクに及ぼす影響度合いがエンジンの運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値、すなわちエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、総回転数の増加に応じてフリクションが減少しても、標準状態での基本エンジントルクに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクを高い精度で算出することが可能となる。
【0036】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、ディーゼルエンジンのエンジントルクを算出する方法に具体化した第1実施形態について説明する。
【0037】
車両には、図1に示すように、原動機として畜圧式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダヘッド12と、複数の気筒(シリンダ)13を有するシリンダブロック14とを備えている。各シリンダ13内にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介し、エンジン11の出力軸であるクランク軸17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランク軸17に伝達される。クランク軸17の回転は変速機(図示略)によって変速され、その変速後の回転が駆動輪に伝達される。
【0038】
エンジン11には、シリンダ13毎に燃焼室18が設けられている。各燃焼室18には、吸気通路19及び排気通路20が接続されている。シリンダヘッド12には、シリンダ13毎に吸気弁21及び排気弁22が設けられている。これらの吸・排気弁21,22は、クランク軸17の回転に連動して往復動することにより、吸・排気通路19,20を開閉する。
【0039】
吸気通路19には、エアクリーナ23、吸気絞り弁24等が配置されている。そして、基本的にはエンジン11の吸気行程において、排気弁22が閉じられ、吸気弁21が開かれた状態でピストン15が下降すると、シリンダ13内の気圧が外気より低い値(負圧)になり、同エンジン11の外部の空気が吸気通路19の各部を順に通過して燃焼室18に取込まれる。
【0040】
吸気絞り弁24は、吸気通路19内に回動可能に支持されており、同吸気絞り弁24に連結されたステップモータ等のアクチュエータ25により駆動される。吸気通路19を流れる空気の量(吸入空気量)は、吸気絞り弁24の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0041】
シリンダヘッド12には、各燃焼室18に燃料を噴射する燃料噴射弁26が取付けられている。各燃料噴射弁26は電磁弁(図示略)を備えており、この電磁弁により、燃料噴射弁26から燃焼室18への燃料噴射が制御される。燃料噴射弁26は、畜圧容器(共通の畜圧配管)であるコモンレール27に接続されており、電磁弁が開いている間、コモンレール27内の燃料が燃料噴射弁26から対応する燃焼室18に噴射される。コモンレール27には、燃料噴射圧に相当する比較的高い圧力が蓄積されている。この畜圧を実現するために、コモンレール27は、燃料ポンプであるサプライポンプ29に接続されている。
【0042】
サプライポンプ29は燃料タンク(図示略)から燃料を吸入するとともに、エンジン11の回転に同期するカムによってプランジャを往復動させ、燃料を所定圧に高めてコモンレール27に供給する。サプライポンプ29には、コモンレール27へ向けて吐出される燃料の圧力、ひいては吐出量を制御するための圧力制御弁として吸入調量弁31が設けられている。
【0043】
コモンレール27には、所定の条件が満たされた場合に開弁される減圧弁(リリーフ弁)32が設けられている。この減圧弁32の開弁により、コモンレール27内の高圧燃料がリターン配管(図示略)を通じて燃料タンクへ戻されて、コモンレール27内の圧力が低下する。
【0044】
そして、吸気通路19を通ってシリンダ13内に導入され、かつピストン15により圧縮された高温かつ高圧の吸入空気に対し、燃料噴射弁26から燃料が噴射される。この噴射燃料は自己着火して燃焼する。このときに生じた燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランク軸17が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼ガスは、排気通路20に設けられた触媒33等を通ってエンジン11の外部へ排出される。
【0045】
エンジン11には、過給機としてターボチャージャ34が設けられている。ターボチャージャ34は、排気通路20を流れる排気ガスによって回転するタービンホイール35と、吸気通路19に配置され、かつロータシャフト36を介してタービンホイール35に連結されたコンプレッサホイール37とを備えている。ターボチャージャ34では、タービンホイール35に排気ガスが吹付けられて同ホイール35が回転する。この回転は、ロータシャフト36を介してコンプレッサホイール37に伝達される。その結果、エンジン11では、ピストン15の移動にともなって燃焼室18内に発生する負圧によって空気が燃焼室18に送り込まれるだけでなく、その空気がコンプレッサホイール37の回転によって強制的に燃焼室18に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室18への空気の充填効率が高められる。
【0046】
エンジン11には、排気通路20を流れる排気ガスの一部を、吸気通路19に還流させる排気還流(以下「EGR」という)装置38が設けられている。EGR装置38は、還流にともない吸入空気に混合された排気ガス(EGRガス)により、混合気中の不活性ガスの割合を増やして燃焼最高温度を下げ、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の発生を低減させるためのものである。
【0047】
EGR装置38は、EGR通路39及びEGR弁40を備えている。EGR通路39は、排気通路20と、吸気通路19において吸気絞り弁24よりも下流側の箇所とをつないでいる。EGR弁40はEGR通路39の途中、例えば、EGR通路39の吸気通路19との接続箇所に取付けられている。EGR通路39を流れるEGRガスの流量は、EGR弁40の開き具合(開度)に応じて変化する。
【0048】
エンジン11等の運転状態を検出するために、エアフロメータ41、吸気圧センサ42、水温センサ43、クランクポジションセンサ44、アクセルセンサ45、燃圧センサ46、車速センサ47等の各種センサが用いられている。エアフロメータ41は吸気通路19においてエアクリーナ23の下流近傍に取付けられ、同通路19を流れる空気の量(吸入空気量QI)を検出する。吸気圧センサ42は、吸気通路19において吸気絞り弁24よりも下流側に設けられており、吸気通路19内における吸気の圧力である吸気圧PIを検出する。
【0049】
水温センサ43はシリンダブロック14に取付けられ、冷却水の温度(冷却水温THW)を検出する。クランクポジションセンサ44はクランク軸17の近傍に配置されており、そのクランク軸17が所定角度回転する毎にパルス信号を出力する。このパルス信号は、クランク軸17の時間当りの回転数であるエンジン回転速度Neの検出に用いられる。アクセルセンサ45はアクセルペダル51の近傍に配置されており、運転者によるアクセルペダル51の踏込み量(アクセル開度ACCP)を検出する。燃圧センサ46はコモンレール27に取付けられており、そのコモンレール27内に蓄えられている燃料の圧力(燃圧PF)を検出する。車速センサ47は、車両の走行速度である車速SPDを検出する。
【0050】
前記各種センサ41〜47の検出値に基づきエンジン11の各部を制御するために、車両には電子制御装置(Electronic Control Unit :ECU)52が設けられている。ECU52はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0051】
前記各種制御としては、燃料噴射制御、噴射圧制御、EGR制御等が挙げられる。例えば、燃料噴射制御では、燃圧PFと、そのときのエンジン11の運転状態(エンジン回転速度Ne、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等)に応じた噴射量指令値とに基づき通電時間(噴射期間)を求める。そして、算出した時間にわたって電磁弁に通電することにより燃料噴射弁26を開弁させ、前記噴射量指令値に対応する量の燃料を噴射させるようにしている。
【0052】
また、噴射圧制御では、エンジン11の運転状態に応じた目標圧を算出し、燃圧PFがこの目標圧に収束するように制御する。この制御の方法としては次の2つの態様があり、これらの態様がエンジン11の運転状態に応じて切替えられる。1つは、減圧弁32を閉弁させた状態で、吸入調量弁31の開度を制御することにより、サプライポンプ29からコモンレール27へ圧送(吐出)される燃料の量を調整する態様である。他の1つは、吸入調量弁31の開度を最大にしてサプライポンプ29からコモンレール27へ最大量の燃料を圧送しつつ、減圧弁32の開度を制御することにより、コモンレール27から燃料タンクに戻される燃料の量を調整する態様である。
【0053】
ここで、コモンレール27に燃料を圧送するためにサプライポンプ29には所定の駆動トルクが要求される。この駆動トルクはサプライポンプ29の圧送量によって異なる。特に、前記減圧弁32の開度制御による噴射圧制御時には、サプライポンプ29からコモンレール27に対し最大量の燃料が圧送されることから、駆動トルクが最大となる。
【0054】
そして、前述したいずれかの態様で吸入調量弁31及び減圧弁32を制御することにより、燃圧PFが目標圧に収束して最適となり、燃料噴射弁26の燃料噴射に必要な燃圧が確保される。
【0055】
EGR制御では、エンジン11の運転状態に基づき、EGR制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。EGR制御実行条件としては、例えば冷却水温THWが所定値以上であること、エンジン11が始動時から所定時間以上連続して運転されていること、アクセル開度ACCPの変化量が正値であること等が挙げられる。そして、このEGR制御実行条件が成立していない場合には、EGR弁40を全閉状態に保持する。これに対し、同実行条件が成立している場合には、所定のマップ等を参照して、エンジン回転速度Ne及びアクセル開度ACCPに対応するEGR弁40の目標開度を算出する。そして、この目標開度に基づきEGR弁40を駆動制御する。
【0056】
そのほかにもECU52は、所定のパラメータ、例えば吸入空気量QIの変化に応じて変化するエンジントルクを算出する。次に、このエンジントルクの算出手順を図2(a)のフローチャートに従って説明する。
【0057】
ECU52はまずステップ110において、クランクポジションセンサ44によるエンジン回転速度Ne、及びエアフロメータ41による吸入空気量QIを読込む。続いて、ステップ120において、エンジン11の標準状態でのトルクである基本エンジントルクTQbを算出する。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、基本エンジントルクTQbとの関係を規定した二次元マップを参照する。これらエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qは、エンジントルクTQact に比較的大きな影響を及ぼすと考えられるパラメータである。上記マップは、例えば実験等により、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを種々変化させてエンジントルクを測定することによって作成したものである。この測定に際しては、エンジントルクに影響を及ぼすと考えられるパラメータのうち、前述したエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを除くもの、例えば吸入空気量等は一定に保たれている。そして、そのときの運転状態での基本エンジントルクTQb、すなわちエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応する基本エンジントルクTQbを前記マップから求める。
【0058】
次に、ステップ130において、吸入空気量のトルク感度係数K1を算出する。ここで、トルク感度係数K1は、吸入空気量が単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りの吸入空気量がエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、トルク感度係数K1との関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図2(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Neが高くなるに従い、また燃料噴射量Qの増加に従いトルク感度係数K1が大きくなる。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応するトルク感度係数K1を前記マップから求める。
【0059】
図2(a)のステップ140において、エンジン11の標準状態での吸入空気量である基本吸入空気量QIbを算出する。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、基本吸入空気量QIbとの関係を規定したマップを参照する。このマップは、例えば実験等により、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを種々変化させて吸入空気量QIを測定することによって作成したものである。この測定に際しては、吸入空気量に影響を及ぼすと考えられるパラメータのうち、前述したエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを除くもの、例えば気温、大気圧等は一定に保たれている。また、エンジン11の構成部品としては、その特性について公差の略中央値を採るものが用いられている。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応する基本吸入空気量QIbを前記マップから求める。
【0060】
次にステップ150において、前記ステップ110での吸入空気量QIと、前記ステップ140での基本吸入空気量QIbとの偏差ΔQIを求める。この偏差ΔQIが生ずるのは、エンジン11の運転状態の過渡時、周囲の環境の変化等によってパラメータ(吸入空気量QI)が変化したことによるものと考えられる。ステップ160において、前記ステップ130でのトルク感度係数K1と、前記ステップ150での偏差ΔQIとを乗算することにより、同偏差ΔQIがエンジントルクTQact に及ぼす影響量であるトルク補正量TQdを算出する。ステップ170において、前記ステップ120での基本エンジントルクTQbに前記ステップ160でのトルク補正量TQdを加算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ170の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0061】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)基本エンジントルクTQbの補正に際し、所定のパラメータ(ここでは吸入空気量QI)だけでなく、そのトルク感度係数K1を用いている。ここで、トルク感度係数K1は、そのときのエンジン11の運転状態(エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Q)に基づいて算出されている。すなわち、トルク感度係数K1はエンジン11の運転状態に応じたものとなっている。このことから、パラメータ及びトルク感度係数を用いた基本エンジントルクTQbの補正により、そのときのエンジン11の運転状態に応じたパラメータの影響度合いでもって影響を受けたエンジントルクTQact が求められる。
【0062】
従って、たとえパラメータのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン運転状態(エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Q)によって変化したとしても、その変化した影響度合いを反映したエンジントルクTQact が算出されることとなる。その結果、パラメータの種類に応じて設定した単一の補正係数で基本エンジントルクを補正する従来技術に比べ、エンジントルクTQact の算出精度を高めることができる。
【0063】
(2)基本エンジントルクTQbの補正に際し、パラメータについて算出した標準状態での値(基本吸入空気量QIb)と、検出した実際の値(吸入空気量Q)との偏差ΔQIを求め、この偏差ΔQIとトルク感度係数K1とに基づき、トルク補正量TQdを算出するようにしている。従って、過渡時等にパラメータが変化した場合において、そのパラメータのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク補正量TQdを用いた基本エンジントルクTQbの補正によりエンジントルクTQact を確実に高精度で算出することが可能となる。
【0064】
(3)吸入空気量QIは、加減速時等の過渡時、環境(気温、大気圧等)の変化、エンジン11の機差ばらつき、ターボチャージャ34の過給圧特性のばらつき等によっても変化する。これに対し、第1実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、吸入空気量QIを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K1を用いている。従って、吸入空気量QIのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K1を用いることで前記影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、吸入空気量QIの変化がエンジントルクTQact に及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、前記過渡時等に吸入空気量QIが変化しても標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態は、吸入空気量QIに代えて過給圧(吸気圧PI)のトルク感度係数K2を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。以下、この相違点を中心に、エンジントルク算出ルーチンの各処理について説明する。
【0066】
図3(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ210において、エンジン回転速度Ne及び吸気圧PIを読込む。続いて、ステップ220において、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づいて基本エンジントルクTQbを算出する。この処理は第1実施形態のステップ120の処理と同様である。
【0067】
次に、ステップ230において、吸気圧PIのトルク感度係数K2を算出する。ここで、トルク感度係数K2は、吸気圧PIが単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りの吸気圧PIがエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、トルク感度係数K2との関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図3(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Ne一定のもと、燃料噴射量Qが多くなるに従いトルク感度係数K2が大きくなる。また、燃料噴射量Q一定のもと、エンジン回転速度Neが高くなるに従いトルク感度係数K2が小さくなる。ただし、トルク感度係数K2は低回転速度域では正の値となり、高回転速度域では概ね負の値となるように設定されている。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qとに対応するトルク感度係数K2を前記マップから求める。
【0068】
続いて、図3(a)のステップ240において、エンジン11の標準状態での過給圧である基本過給圧(基本吸気圧PIb)を算出する。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、基本吸気圧PIbとの関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは、例えば実験等により、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを種々変化させた場合の吸気圧PIを測定することによって作成したものである。この測定に際しては、吸気圧PIに影響を及ぼすと考えられるパラメータのうち、前述したエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを除くもの、例えば大気圧、ターボチャージャ34の過給圧特性等は一定に保たれている。また、エンジン11の構成部品としては、その特性について公差の略中央値を採るものが用いられている。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応する基本吸気圧PIbを前記マップから求める。
【0069】
次に、ステップ250において、前記ステップ210での吸気圧PIと、前記ステップ240での基本吸気圧PIbとの偏差ΔPIを求める。この偏差ΔPIが生ずるのは、後述するように加減速時等の過渡時、環境(気温、大気圧等)の変化、ターボチャージャ34の過給圧特性のばらつき等によってパラメータ(吸気圧PI)が変化したことによるものと考えられる。
【0070】
次に、ステップ260において、前記ステップ230でのトルク感度係数K2と、前記ステップ250での偏差ΔPIとを乗算することにより、同偏差ΔPIがエンジントルクTQact に及ぼす影響量であるトルク補正量TQdを算出する。ステップ270において、前記ステップ220での基本エンジントルクTQbに前記ステップ260でのトルク補正量TQdを加算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ270の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0071】
なお、前記図3(b)のマップの設定により、低回転速度域ではトルク感度係数K2が正の値を採るため、エンジントルクTQact は基本エンジントルクTQbよりも大きくなる。しかし、高回転速度域ではトルク感度係数K2が負の値を採る場合があり、このときにはエンジントルクTQact は基本エンジントルクTQbよりも小さくなる。
【0072】
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した(1),(2)と同様の効果が得られるほか、以下の効果も得られる。
(4)エンジントルクTQact の算出方法として、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づいて算出した基本エンジントルクTQbを吸気圧PIによって補正すること(従来技術に相当)が考えられる。しかし、吸気圧PIは、加減速時等の過渡時、環境(気温、大気圧等)の変化、ターボチャージャ34の過給圧特性のばらつき等によっても変化する。
【0073】
これに対し、第2実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、過給圧(吸気圧PI)を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K2を用いている。従って、吸気圧PIのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、その影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、吸気圧PIがエンジントルクTQact に及ぼす影響量を、トルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、過渡時等に吸気圧PIが変化しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態は、吸入空気量QIに代えて噴射圧のトルク感度係数を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。以下、この相違点を中心に、ECU52によるエンジントルク算出ルーチンの処理について説明する。なお、エンジン11では、燃料噴射弁26の開弁によりコモンレール27内の高圧燃料を噴射させる構成を採っていることから、噴射圧とコモンレール27内の燃料の圧力(燃圧PF)との間には密接な関係が見られる。このことから、エンジントルク算出ルーチンでは、燃圧PFのトルク感度係数K3を、噴射圧のトルク感度係数の相当値として用いている。
【0075】
図4(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ310において、エンジン回転速度Ne及び燃圧PFを読込む。続いて、ステップ320において、前記エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づき基本エンジントルクTQbを算出する。この処理は、第1実施形態のステップ120の処理と同様である。
【0076】
次に、ステップ330において、燃圧PFのトルク感度係数K3を算出する。ここで、トルク感度係数K3は、燃圧PFが単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りの燃圧PFがエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、トルク感度係数K3との関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図4(b)に示されている。このマップでは、燃料噴射量Qが多くなるに従いトルク感度係数K3が大きくなる。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応するトルク感度係数K3を前記マップから求める。
【0077】
なお、エンジン回転速度Neの変化に対するトルク感度係数K3の変化は、燃料噴射量Qの変化に対するトルク感度係数K3の変化よりもかなり少ない。このため、図4(b)のマップでは、便宜上代表的なエンジン回転速度Neにおけるトルク感度係数K3のみが図示されている。従って、このマップでは、エンジン回転速度Neに関係なく燃料噴射量Qのみによってトルク感度係数K3が決められているわけではない。
【0078】
図4(a)のステップ340において、エンジン11の標準状態での燃圧である基本燃圧PFbを算出する。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、基本燃圧PFbとの関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは、例えば実験等により、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを種々変化させた場合の燃圧PFを測定することによって作成したものである。この測定に際しては、燃圧PFに影響を及ぼすと考えられるパラメータのうち、前述したエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qを除くもの、例えば大気圧、気温、冷却水温等は一定に保たれている。また、エンジン11の構成部品としては、その特性について公差の略中央値を採るものが用いられている。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応する基本燃圧PFbを前記マップから求める。
【0079】
次にステップ350において、前記ステップ310での燃圧PFと、前記ステップ340での基本燃圧PFbとの偏差ΔPFを求める。ステップ360において、前記ステップ330でのトルク感度係数K3と、前記ステップ350での偏差ΔPFとを乗算することにより、同偏差ΔPFがエンジントルクTQact に及ぼす影響量であるトルク補正量TQdを算出する。ステップ370において、前記ステップ320での基本エンジントルクTQbに前記ステップ360でのトルク補正量TQdを加算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ370の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0080】
以上詳述した第3実施形態によれば、前記(1),(2)と同様の効果が得られるほか、以下の効果も得られる。
(5)エンジントルクの算出方法として、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づいて算出した基本エンジントルクTQbを噴射圧(燃圧PF)によって補正すること(従来技術に相当)が考えられる。しかし、噴射圧(燃圧PF)は、前述した噴射圧制御において環境(気温、大気圧、水温等)の変化に応じて補正されることがある。また、噴射圧は過渡時の応答遅れ(実際の値が目標値に収束するまでの追従遅れ)等により変化する場合がある。
【0081】
これに対し、第3実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、燃圧(噴射圧相当値)PFを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K3を用いている。従って、燃圧PFのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K3を用いることで、その影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、燃圧PFがエンジントルクTQact に及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、噴射圧制御時における補正等によって燃圧PFが変化しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値分(トルク補正量TQd)の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について説明する。第4実施形態は、吸入空気量QIに代えてEGR弁40の開度についてのトルク感度係数を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。これは、一般にエンジン11では、EGRガスの流量により燃焼状態が変わり、これにともなってエンジントルクが変化するためである。EGRガスの流量はEGR弁40の開度に応じて変化する。そこで、EGR弁40の開度についてのトルク感度係数K4をエンジントルクの算出に反映するようにしている。
【0083】
以下、上記相違点を中心に、ECU52によるエンジントルク算出ルーチンの処理について説明する。なお、EGR弁40の開度はEGR弁40の制御量(以下、EGR制御量という)に応じて変化する。このことから、エンジントルク算出ルーチンでは、EGR制御量のトルク感度係数K4を、EGR弁開度のトルク感度係数の相当値として用いている。
【0084】
図5(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ410においてエンジン回転速度Neを読込む。続いて、ステップ420において、前記エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づき、エンジン11の標準状態でのトルクである基本エンジントルクTQbを算出する。この処理は、第1実施形態のステップ120の処理と同様である。なお、前記標準状態ではEGR弁40が全閉状態とされ、排気ガスの還流が行われない。
【0085】
次に、ステップ430において、EGR制御量のトルク感度係数K4を算出する。ここで、トルク感度係数K4は、EGR制御量が単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りのEGR制御量がエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、トルク感度係数K4との関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図5(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Ne一定のもと、燃料噴射量Qが多くなるに従いトルク感度係数K4が小さくなる。また、燃料噴射量Q一定のもとエンジン回転速度Neが高くなるに従いトルク感度係数K4が大きくなる。なお、低回転速度域ではトルク感度係数K4は負の値となる場合がある。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応するトルク感度係数K4を前記マップから求める。
【0086】
図5(a)のステップ440において、そのときのEGR制御量と前記ステップ430でのトルク感度係数K4とを乗算することにより、トルク補正量TQdを算出する。ステップ450において、前記ステップ420での基本エンジントルクTQbに前記ステップ440でのトルク補正量TQdを加算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ450の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0087】
なお、前記図5(b)のマップの設定により、高回転速度域ではトルク感度係数K4が正の値を採るため、エンジントルクTQact は基本エンジントルクTQbよりも大きくなる。しかし、低回転速度域ではトルク感度係数K4が負の値を採る場合があり、このときにはエンジントルクTQact は基本エンジントルクTQbよりも小さくなる。
【0088】
以上詳述した第4実施形態によれば、前記(1),(2)と同様の効果が得られるほか以下の効果も得られる。
(6)前記したように、一般にEGRを行うエンジン11では、EGRガスの流量により燃焼状態が変わり、それに応じてエンジントルクTQact が変化する。
【0089】
これに対し、第4実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、EGR制御量(EGRガスの流量の相当値)を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K4を用いている。従って、EGRガスの流量のエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K4を用いることで前記影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、EGRガスの流量の変化がエンジントルクTQact に及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、EGRガスの流量が変化しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値(トルク補正量TQd)分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0090】
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態について説明する。第5実施形態は、吸入空気量QIに代えて吸入調量弁31の開度のトルク感度係数を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。これは主として以下の理由による。
【0091】
エンジントルクの一部はサプライポンプ29を駆動するために消費され、その分小さくなる。また、サプライポンプ29がエンジン11によって駆動されることと、燃料の噴射圧制御方法に2つの態様があり、これらの態様がエンジン11の運転状態に応じて切替えられることについては先に説明した通りである。そして、吸入調量弁31の開度制御によってサプライポンプ29から圧送される燃料の量を調整する態様では、サプライポンプ29に要求される駆動トルクは、圧送される燃料量に応じたものとなる。この駆動トルクの変化により、サプライポンプ29の駆動のためのエンジントルクの損失量が異なってくる。この損失量は、サプライポンプ29からの燃料の圧送量が少なくなるに従い少なくなる。
【0092】
そこで、前述したように吸入調量弁31の制御量のトルク感度係数をエンジントルクTQact の算出に反映させることで、前記の影響を少なくしようとしている。以下に、この相違点を中心に、ECU52によるエンジントルク算出ルーチンの処理について説明する。
【0093】
図6(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ510においてエンジン回転速度Neを読込む。続いて、ステップ520において、前記エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づき基本エンジントルクTQbを算出する。この処理は、第1実施形態のステップ120の処理と略同様である。
【0094】
次に、ステップ530において、吸入調量弁31の制御量のトルク感度係数K5を算出する。ここで、トルク感度係数K5は、吸入調量弁31の制御量(調量制御量)が単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りの調量制御量がエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、トルク感度係数K5との関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図6(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Neが高くなるに従い、また燃料噴射量Qが多くなるに従いトルク感度係数K5が大きくなる。そして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応するトルク感度係数K5を前記マップから求める。
【0095】
図6(a)のステップ540において、そのときの調量制御量と前記ステップ530でのトルク感度係数K5とを乗算することにより、トルク補正量TQdを算出する。ステップ550において、前記ステップ520での基本エンジントルクTQbから前記ステップ540でのトルク補正量TQdを減算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ550の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0096】
以上詳述した第5実施形態によれば、前記(1)と同様の効果が得られるほか、以下の効果も得られる。
(7)サプライポンプ29から圧送される燃料の量が吸入調量弁31によって調整される態様では、サプライポンプ29に要求される駆動トルクがその圧送される燃料量によって異なり、これにともないエンジントルクTQact が異なってくる。
【0097】
これに対し、第5実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、吸入調量弁31の調整にともない変化するサプライポンプ29の駆動トルクを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K5を用いている。従って、駆動トルクのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K5を用いることで前記影響度合いに応じたトルク増減値求めることが可能となる。換言すると、吸入調量弁31の調整にともない変化する駆動トルクがエンジントルクTQact に及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、駆動トルクが変化しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値(トルク補正量TQd)分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0098】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態は、吸入空気量QIに代えてアイドル時のフリクショントルクのトルク感度係数を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。これは、一般にエンジン11の冷間時には、潤滑油の粘度が高くなる等の理由により、暖機時に比べてエンジン11のフリクションが高く、その分エンジントルクが減少する。そして、この減少量は、フリクションの大きさによって異なる。すなわち、暖機が進むに従いエンジン11のフリクションが小さくなり、エンジントルクの損失幅が小さくなる。そこで、アイドル時のフリクショントルクについてのトルク感度係数をエンジントルクの算出に反映するようにしている。
【0099】
以下、上記相違点を中心に、ECU52によるエンジントルク算出ルーチンの処理について説明する。このルーチンは所定のタイミング、例えば一定時間毎に繰り返し実行される。図7(a)及び図8(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ610において、エンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに基づき基本エンジントルクTQbを算出する。この処理は、第1実施形態のステップ120の処理と同様である。
【0100】
次に、ステップ620において、アイドル時のフリクショントルクのトルク感度係数K6を算出する。ここで、トルク感度係数K6は、アイドル時のフリクショントルクが単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りのアイドルフリクショントルクがエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Neとトルク感度係数K6との関係を規定した一次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図7(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Neが高くなるに従いトルク感度係数K6が大きくなる。そして、そのときのエンジン回転速度Neに対応するトルク感度係数K6を前記マップから求める。
【0101】
図7(a)のステップ630において、エンジン11がアイドル状態であるかどうかを判定する。例えば、車速センサ47による車速SPDが「0km/h」であり、かつアクセルセンサ45によるアクセル開度ACCPが0%である場合にアイドル状態であるとすることができる。この判定条件が満たされていると、ステップ640において、そのときの燃料噴射量Q及び冷却水温THWを、それぞれアイドル噴射量Qid及びアイドル水温THWidとしてメモリに記憶する。ここでのアイドル噴射量Qidは、エンジン回転速度Neを所定のアイドル回転速度に収束させるために要求される燃料噴射量である。
【0102】
続いて、ステップ650〜690において、アイドル時におけるフリクショントルク(アイドルフリクショントルクTQid)を推定する。この推定に際し、まずステップ650において基本アイドル噴射量Qidb を算出する。この基本アイドル噴射量Qidb は、暖機後のアイドル時における標準状態での燃料噴射量である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Neと基本アイドル噴射量Qidb との関係を規定した一次元マップを参照する。そして、そのときのエンジン回転速度Neに対応する基本アイドル噴射量Qidb を前記マップから求める。
【0103】
次に、図8(a)のステップ660において初期アイドルフリクショントルク(以下、単に初期トルクという)TQids を算出する。この初期トルクTQids は、標準状態に対するフリクション増加分のトルクである。すなわち、前記アイドル噴射量Qidの燃料が噴射された場合には、前記基本アイドル噴射量Qidb の燃料が噴射された場合よりもフリクションが増加するが、それに応じて増加するトルクが前記初期トルクTQids である。この初期トルクTQids は冷間時に大きく、エンジン11の暖機、すなわち機関温度(冷却水温THW)の上昇にともなって小さくなる。
【0104】
前記初期トルクTQids の算出に際しては、例えば、アイドル噴射量Qid及び基本アイドル噴射量Qidb の偏差ΔQid(=Qid−Qidb )と、エンジン回転速度Neと、初期トルクTQids との関係を規定したマップを参照する。その一例を図8(b)に示す。このマップでは、偏差ΔQidが大きくなるに従い、またエンジン回転速度Neが高くなるに従い初期トルクTQids が大きくなる。
【0105】
次に、図8(a)のステップ670において、アイドルフリクショントルク変化量(以下、単にトルク変化量という)TQidecを「0」に設定する。ここで、同トルク変化量TQidecは、後述するようにエンジン11の暖機、具体的にはエンジン11の温度(冷却水温THW)の上昇にともなう非アイドル時でのフリクショントルクの減少量である。
【0106】
一方、前記ステップ630の判定条件が満たされていないと、ステップ680において、非アイドル状態でのトルク変化量TQidecを算出する。この算出に際しては、冷却水温THWの偏差ΔTHW及び非アイドル時(例えば走行時)の冷却水温THWと、トルク変化量TQidecとの関係を規定した二次元マップを参照する。ここで、前記偏差ΔTHWは、先のアイドル時(ステップ640)に記憶したアイドル水温THWidと、現在(非アイドル時)の冷却水温THWとの偏差である。図8(c)にこのマップの一例を示す。このマップでは、偏差ΔTHWが大きくなるに従い、また冷却水温THWが低くなるに従いトルク変化量TQidecが大きくなる。このようにマップには、冷却水温THWの上昇代(偏差ΔTHW)に対するトルク変化量TQidecが冷却水温THW毎に規定されている。そして、偏差ΔTHW及び冷却水温THWに対応するトルク変化量TQidecを前記マップから求める。
【0107】
図8(a)において、前記のようにステップ670又は680でトルク変化量TQidecを求めた後は、ステップ690においてアイドルフリクショントルクTQidを算出する。すなわち、前記ステップ660での初期トルクTQids から前記ステップ670,680でのトルク変化量TQidecを減算し、その減算結果をアイドルフリクショントルクTQidとする。
【0108】
次に、ステップ700において、前記ステップ690でのアイドルフリクショントルクTQidに前記ステップ620でのトルク感度係数K6を乗算することによりトルク補正量TQdを算出する。ステップ710において、前記ステップ610での基本エンジントルクTQbから前記ステップ700でのトルク補正量TQdを減算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ710の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを一旦終了する。
【0109】
以上詳述した第6実施形態によれば、前記(1)と同様の効果が得られるほか、以下の効果も得られる。
(8)エンジン11の冷間時には潤滑油の粘度が高くなる等の理由により、暖機時に比べフリクションが増加する。このフリクションは、エンジン11の温度の影響を受けて変化する。
【0110】
これに対し、第6実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、アイドル時におけるフリクショントルクTQidを所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K6を用いている。従って、アイドル時におけるフリクションのエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K6を用いることで、その影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、アイドル時におけるフリクションがエンジントルクに及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、フリクションがエンジン11の温度に応じて変化しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値(トルク補正量TQd)分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0111】
(9)アイドル時におけるフリクショントルク、換言すると、標準状態に対するフリクション増加分のトルク(初期トルクTQids )を、エンジン暖機後の標準状態での基本アイドル噴射量Qidb とアイドル噴射量Qidとの偏差ΔQidに基づき算出している。このように標準状態との差から初期トルクTQids を算出することで、冷間時のフリクションのみならず、エンジン慣らし前のフリクション、エンジン毎の機差、潤滑油の粘度等によるトルク増加分も推定可能となる。
【0112】
(10)アイドル時にはエンジン11の温度の相当値としてアイドル水温THWidを記憶しておく。エンジン11の非アイドル時において、前記アイドル水温THWidと偏差ΔTHWとに基づき、冷却水温THWの上昇に応じた、アイドル時からのフリクショントルクの低減量であるトルク変化量TQidecを算出する。そして、初期トルクTQids から前記トルク変化量TQidecを減算し、その減算結果を非アイドル時のフリクショントルクとしている。このため、非アイドル時であってもアイドル時と同様にアイドルフリクショントルクTQidを高い精度で求めることができる。また、このようにして求めたアイドルフリクショントルクTQidを用いるため、エンジントルクTQact をより高い精度で算出することができる。
【0113】
(11)基本アイドル噴射量Qidb を算出するために、エンジン回転速度Neの1次元マップを用いている。このため、種々のアイドル回転速度に対応可能となる。種々のアイドル回転速度としては、例えば、冷間時において暖機時よりも高めに設定されるアイドル回転速度や、運転者によるヒータスイッチのオン操作に応じて設定され、かつオフ操作時よりも高めに設定されるアイドル回転速度等が挙げられる。
【0114】
(第7実施形態)
次に、本発明を具体化した第7実施形態について説明する。第7実施形態は、吸入空気量QIに代えて車両の総走行距離のトルク感度係数を求め、これを用いてトルク補正量TQdを算出している点において、第1実施形態と大きく異なっている。これは、エンジン11の可動部で発生するフリクション(摺動抵抗)はエンジントルクに影響を及ぼすが、その影響量がエンジン11の運転量等によって変化するからである。すなわち、エンジンフリクションは新車時には大きいが、車両の走行とともに減少し、ある程度の距離を走行する、いわゆる慣らし運転が終わると、それ以後はほとんど変化しなくなる。そして、このエンジンフリクショントルクがトルク損失となってエンジントルクTQact も変化する。以下、上記相違点を中心に、ECU52によるエンジントルク算出ルーチンの処理について説明する。
【0115】
図9(a)のフローチャートに示すように、ECU52はまずステップ810において、クランクポジションセンサ44によるエンジン回転速度Neを読込む。続いて、ステップ820において、エンジン11の標準状態でのトルクである基本エンジントルクTQbを算出する。この算出に際しては、第1実施形態のステップ120と同様に、例えばエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qと、基本エンジントルクTQbとの関係を規定した二次元マップを参照する。このマップは実験等によって作成されたものであるが、その実験等は、車両の慣らし運転が終わって、エンジンフリクションが略一定の値になったエンジン11に対して行われている。従って、このマップから求まる基本エンジントルクTQbには、新車時における初期のフリクション分が考慮されていない。そして、そのときの運転状態での基本エンジントルクTQbとして、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに対応する基本エンジントルクTQbを前記マップから求める。
【0116】
次に、ステップ830において、総走行距離のトルク感度係数K7を算出する。ここで、トルク感度係数K7は、車両の総走行距離が単位量変化したときのエンジントルクの変化量、換言すると、単位量当りの総走行距離がエンジントルクに及ぼす影響量に対応した値である。この算出に際しては、例えばエンジン回転速度Neとトルク感度係数K7との関係を規定した一次元マップを参照する。このマップは予め実験等によって作成されたものであり、その一例が図9(b)に示されている。このマップでは、エンジン回転速度Neが高くなるに従いトルク感度係数K7が大きくなる。そして、そのときのエンジン回転速度Neに対応するトルク感度係数K7を前記マップから求める。
【0117】
続いて、図9(a)のステップ840において、そのときの総走行距離と前記ステップ830でのトルク感度係数K7とを乗算することにより、トルク補正量TQdを算出する。ここで総走行距離は、例えば、所定期間毎の車速にその所定期間(時間)を乗算することにより走行距離を算出し、これを積算することで求められる。
【0118】
そして、ステップ850において、前記ステップ820での基本エンジントルクTQbから前記ステップ840でのトルク補正量TQdを減算することにより、エンジントルクTQact を算出する。ステップ850の処理を経た後、エンジントルク算出ルーチンを終了する。
【0119】
以上詳述した第7実施形態によれば、前記(1)と同様の効果が得られるほか以下の効果も得られる。
(12)エンジン11の運転量に応じたエンジンフリクショントルクの変化に従ってエンジントルクTQact も変化する。これに対し、第7実施形態では、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、総走行距離を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数K7を用いている。従って、総走行距離のエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数K7を用いることで前記影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、総走行距離がエンジントルクに及ぼす影響量をトルク補正量TQdとして求めることが可能となる。その結果、総走行距離の増加に応じてフリクションが減少しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0120】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・請求項4に記載の発明は、ターボチャージャ34を有しないエンジンにも適用可能である。
【0121】
・第1〜第7実施形態におけるパラメータを2つ以上組合わせてもよい。この場合、複数種類のトルク補正量TQdによって基本エンジントルクTQbを補正することとなり、エンジントルクTQact の算出精度を一層高めることが可能となる。
【0122】
・第6実施形態では、基本アイドル噴射量Qidb として、実験等によって求めた値をマップにおいてエンジン回転速度Ne毎に設定している。この基本アイドル噴射量Qidb の算出精度をさらに高めるために、暖機後にアイドル噴射量Qidを学習し、この学習値と、マップで設定した値(マップ値)との差を学習値として記憶しておき、マップ値をこの学習値によって補正したうえで使用するようにしてもよい。
【0123】
・第7実施形態において、エンジン11の運転量として、同エンジン11の総回転数(回転数の積算値)を用いてもよい。この場合、基本エンジントルク補正用のトルク感度係数として、クランク軸17の総回転数を所定のパラメータとした場合のトルク感度係数を用いる。このトルク感度係数は、総回転数が単位量変化したときのエンジントルクTQact の変化量に対応した値である。従って、クランク軸17の総回転数のエンジントルクTQact に及ぼす影響度合いがエンジン11の運転状態に応じて異なっていても、トルク感度係数を用いることで前記影響度合いに応じたトルク増減値を求めることが可能となる。換言すると、総回転数のエンジントルクに及ぼす影響量を求めることが可能となる。その結果、総回転数の増加に応じてフリクションが減少しても、標準状態での基本エンジントルクTQbに対し前記トルク増減値分の補正を行うことによって、エンジントルクTQact を高い精度で算出することが可能となる。
【0124】
・本発明のエンジントルクの算出方法は、ディーゼルエンジンに限らずガソリンエンジンにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態において、エンジントルク算出方法が適用されるディーゼルエンジンの概略構成を示す略図。
【図2】(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K1の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図3】第2実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K2の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図4】第3実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K3の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図5】第4実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K4の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図6】第5実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K5の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図7】第6実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K6の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図8】(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b),(c)は初期アイドルフリクショントルク、アイドルフリクショントルク変化量の各決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【図9】第7実施形態を説明するための図であり、(a)はエンジントルクを算出する手順を示すフローチャート、(b)はトルク感度係数K7の決定に用いられるマップのマップ構造を示す略図。
【符号の説明】
11…ディーゼルエンジン、17…クランク軸(出力軸)、19…吸気通路、26…燃料噴射弁、27…コモンレール(畜圧容器)、29…サプライポンプ(燃料ポンプ)、31…吸入調量弁、32…減圧弁、Ne…エンジン回転速度、PF…燃圧、PFb…基本燃圧、PI…吸気圧、PIb…基本吸気圧、Q…燃料噴射量、Qid…アイドル噴射量、Qidb …基本アイドル噴射量、QI…吸入空気量、QIb…基本吸入空気量、THW…冷却水温、THWid…アイドル水温、ΔPF,ΔPI,ΔQid,ΔQI,ΔTHW…偏差、TQact …エンジントルク、TQb…基本エンジントルク、TQd…トルク補正量、TQids …初期アイドルフリクショントルク、TQidec…アイドルフリクショントルク変化量、TQid…アイドルフリクショントルク、K1,K2,K3,K4,K5,K6,K7…トルク感度係数。

Claims (12)

  1. エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクを算出し、前記エンジンのトルクに影響を及ぼす所定のパラメータを用いて前記基本エンジントルクを補正することによりエンジントルクを算出する方法であって、
    前記パラメータが単位量変化したときの前記エンジントルクの変化量に対応するトルク感度係数を少なくとも前記エンジン回転速度に基づき算出し、この算出したトルク感度係数で前記基本エンジントルクを補正することを特徴とするエンジントルクの算出方法。
  2. 前記パラメータ及び前記トルク感度係数を用いた前記基本エンジントルクの補正に際しては、前記パラメータの標準状態での値を前記エンジン回転速度及び前記燃料噴射量に基づき算出するとともに、同パラメータの実際の値を検出し、前記算出値及び前記検出値の偏差と前記トルク感度係数とに基づきトルク補正量を算出し、このトルク補正量を用いて前記基本エンジントルクを補正する請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
  3. 前記パラメータは吸入空気量である請求項1又は2に記載のエンジントルクの算出方法。
  4. 前記パラメータは過給圧を含む吸気圧である請求項1又は2に記載のエンジントルクの算出方法。
  5. 前記燃料は、燃料ポンプで加圧されて畜圧容器に一時蓄えられた後に燃料噴射弁の開弁により噴射されるものであり、
    前記パラメータは前記燃料噴射弁からの燃料の噴射圧である請求項1又は2に記載のエンジントルクの算出方法。
  6. 前記パラメータは、空気及び燃料の混合気の燃焼にともない生じて吸気通路に還流される排気還流ガスの流量である請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
  7. 前記エンジンは、同エンジンにより駆動される燃料ポンプと、前記燃料ポンプから圧送された燃料を、同燃料が燃料噴射弁から噴射される前に一時蓄える畜圧容器と、前記燃料ポンプから前記畜圧容器への燃料の圧送量を調整する調量弁とを備え、
    前記パラメータは、前記調量弁による圧送量の調整にともない変化する前記燃料ポンプの駆動トルクである請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
  8. 前記パラメータは、前記エンジンの温度上昇に応じて減少するフリクショントルクのうちアイドル時におけるフリクショントルクである請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
  9. 前記アイドル時におけるフリクショントルクは、暖機後の標準状態での燃料噴射量と、前記エンジン回転速度を所定のアイドル回転速度にするための燃料噴射量との偏差に基づき算出される請求項8に記載のエンジントルクの算出方法。
  10. 非アイドル時には、前記エンジンの温度上昇に応じた前記フリクショントルクの変化量を前記アイドル時のフリクショントルクから減算し、その減算結果を前記パラメータとして用いる請求項9に記載のエンジントルクの算出方法。
  11. 前記パラメータは、前記エンジンが搭載された車両の総走行距離である請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
  12. 前記パラメータは、前記エンジンの出力軸の総回転数である請求項1に記載のエンジントルクの算出方法。
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