JP3702641B2 - エンジンのアイドル運転制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は,エンジンのアイドル運転状態におけるエンジン回転速度を制御するアイドル運転制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,本体内を昇降して噴孔を開閉制御する針弁と,その針弁を昇降させるため作動流体を制御する駆動電流が供給される電磁弁とを具備したインジェクタを備え,コントローラによってエンジンの運転状態に応じてインジェクタから噴射される燃料噴射時期及び燃料噴射量を制御するエンジンの電子制御燃料噴射システムが知られている。
【0003】
上記電子制御燃料噴射システムとして,例えば,作動流体をエンジンオイルとし,エンジンオイルの本体内への流入を制御する電磁弁とエンジンオイルによって作動する増圧ピストンを内部に有するインジェクタを備え,増圧室内の燃料を増圧ピストンによって増圧し,その増圧された燃料の圧力で針弁を昇降させ,針弁によって開弁された噴孔から増圧された燃料を噴射する型式のシステムと,作動流体をコモンレールに貯留された高圧燃料とし,圧力制御室を本体内に形成したインジェクタを備え,圧力制御室への高圧燃料の流入と流出とを制御し,その高圧燃料の圧力に基づいて針弁を昇降させ,針弁によって開弁された噴孔から高圧燃料を噴射する型式のシステムとが提案されている。各インジェクタには電磁弁が備わっており,電磁弁の作動をコントローラとしての電子制御装置によって制御することにより,高圧に昇圧された作動流体がインジェクタ内に供給され,インジェクタの先端に形成されている噴孔から予め決められた噴射量の燃料が予め決められた燃料噴射時期に噴射される。
【0004】
このような電子制御燃料噴射システムにおいては,非アイドル運転時には,エンジンの回転速度と負荷(例えば,アクセル開度(踏込み量))に応じてエンジンの出力特性や排気特性が最適になるように予め決められたマップ等のデータに基づいて目標燃料噴射量を決定するが,アイドル運転時にはエンジンの回転数が一定していることが望まれるので,アイドル運転時の目標回転速度を設定し,この目標回転速度とエンジンの回転速度との偏差に基づくPID制御によって,エンジンの回転速度が目標回転速度となるように目標燃料噴射量を決定している。アイドル運転時と非アイドル運転時との判定は,例えば,エンジンの回転速度とアクセル踏込み量(アクセル開度)とに基づいて行われる。アイドル運転時の目標回転速度は,エンジン温度(例えば,オイルマニホルドに設けられた温度センサによって検出されたオイル温度)に応じて予め決められてデータに基づいて設定される基本回転速度を,エアコンや暖機スイッチのオン・オフ状態等に応じて適宜補正して求められる。また,アイドル運転時の目標燃料噴射量は,エンジン温度に応じて設定されている基本燃料噴射量に,上記の回転速度偏差に基づいたPID補正量を加算することで決定される。補正して得られた目標燃料噴射量に基づいて燃料を噴射することにより,エンジンのアイドル運転状態における回転速度の周期的な変化,オフセット及び急な変化への追従遅れを防止している。
【0005】
アイドル運転時における目標燃料噴射量の補正量は,比例動作(P制御),積分動作(I制御)及び微分動作(D制御)によって得られる。即ち,上記補正量は,回転速度の偏差,その積分値及び微分値にそれぞれ所定の制御ゲインを乗じることで得られるが,この制御ゲインが一定であると種々の運転状態に応じた最適制御を実現することが難しい。例えば,上記偏差が大きい場合に対して最適化された制御ゲインでは,偏差が小さいときには制御ゲインが大き過ぎるためにエンジン回転速度にハンチングが生じ易くなり,逆に,上記偏差が小さい場合に対して最適化された制御ゲインでは,偏差が大きいときには制御ゲインが小さ過ぎるためにエンジン回転速度は目標回転速度に収束し難くなる。また,エンジン暖機前(エンジンの運転に対するフリクションが大きい)に対して最適化された制御ゲインでは,エンジン暖機後(エンジンの運転に対するフリクションが小さい)には制御ゲインが大き過ぎるためにエンジン回転速度にハンチングが生じ易く,逆に,エンジン暖機後に対して最適化された制御ゲインでは,エンジン暖機前の運転において制御ゲインが小さ過ぎるためにエンジン回転速度が目標回転速度に収束し難くなる。
【0006】
このような状況の下では,エンジン回転速度に影響を与えるエンジンの様々な運転状態に対して,それぞれ最適な制御ゲインを予め求めてメモリに記憶させておき,エンジンの運転状態を検出するセンサの検出信号に基づいて,エンジンの運転状態に応じた最適な制御ゲインを求めることが考えられる。しかしながら,このような方法では,各種の運転状態に対応した制御ゲインを予め求めておくために多くの変数やパラメータに対して実験等を繰り返す必要があり,エンジン開発コストが膨大になると共に,そのようにして求めた制御ゲインを記憶させるために大容量のメモリが必要となり,製品コストが上昇してしまうという問題がある。また,コントローラの演算量も大きくなるので,コントローラのCPUの負担も大きくなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで,エンジンがアイドル運転状態にある場合に,目標燃料噴射量をエンジンの実際の回転速度と目標回転速度との偏差に基づいてPID制御をするとき,エンジン回転速度のハンチングを防止すると共に目標回転速度への収束性を良好にして,種々の運転状態に応じて最適な制御を実現する点で解決すべき課題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記課題を解決することであり,エンジンがアイドル運転状態である場合に,エンジンの回転速度を一定にするために目標燃料噴射量をPID制御するとき,そのPID制御における制御ゲインを一定としたりエンジンの運転状態や制御状態に応じて設定される多数の定数として記憶させることなく,エンジン回転速度のハンチングやアイドル目標回転速度への収束性を良好にして,エンジンの種々の運転状態に応じて最適な制御を実現することができるエンジンのアイドル運転制御装置を提供することである。
【0009】
前記目的を達成するため、この発明によるエンジンのアイドル運転装置は、エンジンがアイドル運転状態にあるときの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段、前記目標回転速度に対応して基本燃料噴射量を算出する基本燃料噴射量算出手段、及び前記エンジンの回転速度と前記目標回転速度との偏差、該偏差が小さい場合に対して最適化された制御ゲインを基本制御ゲインとして設定し、前記偏差の積分値又は前記偏差の微分値に可変制御ゲインを乗じることにより前記基本燃料噴射量を補正する補正噴射量を求め且つ前記補正噴射量を前記基本燃料噴射量に加算して目標燃料噴射量を求める目標燃料噴射量算出手段を具備し、前記可変制御ゲインは前記エンジンの運転状態に応じて変化されるものであるエンジンのアイドル運転制御装置において、前記可変制御ゲインは、前記基本制御ゲインに、前記エンジンのオイル温度、前記偏差の大きさ、及び前記エンジンに適用される変速機のシフト位置又は前記エンジンに付設される補機の作動状態を含む前記エンジンの運転状態に応じて求められる補正係数を乗じて算出されるものであることを特徴とする。
【0012】
更に、この発明によるこのエンジンのアイドル運転制御装置において、前記可変制御ゲインは、前記偏差に乗じられる比例制御ゲイン、前記積分値に乗じられる積分制御ゲイン又は前記微分値に乗じられる微分制御ゲインであることを特徴とする。
【0013】
この発明は,上記のように構成されているので,エンジンの運転状態がアイドル運転状態である場合には,エンジンの回転速度と目標回転速度との偏差,前記偏差の積分値又は前記偏差の微分値に可変制御ゲインを乗じることにより,PID制御によって基本燃料噴射量を補正するときの補正噴射量が求められる。この補正噴射量を基本燃料噴射量に加算することにより,目標燃料噴射量が算出される。目標燃料噴射量が実際の燃料噴射量となるように,各インジェクタから燃焼室への燃料の噴射が行われるので,アイドル運転状態でのエンジンの回転速度が目標回転速度と一致するようにエンジンの回転速度制御が行われる。また,可変制御ゲインはエンジンの運転状態に応じて変化されるので,運転状態に応じた適切な制御が行われ,エンジンの回転速度のハンチングが防止されると共に回転速度の目標回転速度への収束性が改善される。
【0014】
また,エンジンの運転状態に応じて変更する場合,各PID制御における制御ゲインを各エンジンの運転状態に応じて個々に予め求めておくとすると,求める制御ゲインの個数が増大する。そこで,制御ゲインとしては基本制御ゲインのみをメモリに記憶させておき,基本制御ゲインにエンジンの各運転状態に応じてそれぞれ求められる補正係数を乗じることでPID制御における制御ゲインを決定すると,エンジンの各運転状態に応じた多数の制御ゲインを予め求めておく必要も,そのようにして求めた多数の制御ゲインを記憶させるために大容量のメモリを用意する必要もなく,更にコントローラのCPUの負担を少なくすることができ,制御装置としての製品の開発コストと製造コストを低減することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照して,この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置の一実施例を説明する。図4は,この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置が適用されるエンジンのシステムの一例を示す図である。エンジン1は,図4には1本のインジェクタ11のみが示されているが,エンジン1は高出力を得るために4気筒等の多気筒4サイクル直噴式ディーゼルエンジンである。エンジン1は,シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを有し,シリンダブロック2に形成されたシリンダライナ内を摺動自在なピストン4の往復運動とクランク軸6の回転運動とは,両者を連結するコンロッド5を介して変換される。
【0016】
エンジン1の電子制御燃料噴射システム10には,ユニット化された油圧作動型のインジェクタ11が採用されている。インジェクタ11は,シリンダヘッド3に配設されており,作動流体としてのエンジンオイルで作動し且つ燃料を予め決められた燃料噴射圧力となるように増圧して燃焼室7内に燃料を直接に噴射する。燃料ポンプ12によって比較的低圧に昇圧された燃料は,燃料供給管13を通じてインジェクタ11の内部に形成された燃料室に供給される。エンジンオイルは,高圧オイルポンプ14によって高圧に昇圧されて高圧オイルマニホルド(オイルレール)15に蓄圧され,高圧オイルマニホルド15から各インジェクタ11の加圧室に供給される。燃料室内の燃料は,加圧室に供給された高圧オイルによって駆動(ストローク)される増圧ピストンで加圧され,燃料室からの燃料の圧力に基づいて針弁がインジェクタ11の本体内を昇降することで,インジェクタ11の先端に配置されるノズルに形成された噴孔を開閉する。高圧オイルポンプ14に備わる流量制御弁16は,その吐出量を制御することにより,高圧オイルマニホルド15におけるレール圧力を制御している。流量制御弁16は,常開式又は常閉式の制御弁であり,コントローラ20(後述する)からの制御信号によってその開度(或いは開弁時間,即ち,パルス電流のデューティ比)が制御されて高圧オイルポンプ14から供給されるオイルの供給量が制御されることにより,レール圧力が制御される。インジェクタ11では,増圧ピストンが増圧室内の燃料を加圧するので,エンジン回転数に依存しない燃料噴射圧にて燃料噴射が行われる。増圧ピストンは,本体内に形成された中空穴摺動可能に嵌合されると共に圧力室内の高圧エンジンオイルの圧力を受ける受面が形成された大径部と,中空穴に摺動可能に嵌合されると共に増圧室で燃料を増圧する壁面の一部を形成する小径部とから成っている。かかるインジェクタ11の内部構造及びこのインジェクタを備えた燃料噴射システム自体については,例えば特表平6−511526号公報等に開示されているものを用いることができる。
【0017】
この電子制御燃料噴射システム10は,電子制御ユニット(ECM)としてのコントローラ20を備えている。コントローラ20には,エンジン1の運転状態を検出する各検出手段からの検出信号が入力される。コントローラ20は,これらの検出信号に基づいて,インジェクタ11の電磁弁,オイルポンプ14,及び圧力制御弁16等の制御を行う。
【0018】
具体的には,コントローラ20に入力されるエンジン1の運転状態を検出するための検出手段としては,以下のものが含まれる。エンジン1の回転速度Neを求めるためのクランク角度センサ21は,クランク軸6に固定されて回転し且つ周囲の一部に欠歯部分(3歯分)9を有する歯車8(等間隔に57歯を有する)を検出する電磁ピックアップで構成されている。欠歯部分9を検出する回数とそれに要する時間とから,クランク軸6の回転速度が求められる。アクセルペダル踏込み量(又は,アクセル開度)Acを検出するためのアクセルペダル踏込み量センサ22は,アクセルペダルの踏込みストロークを検出するポテンショメータから成る。更に,高圧オイルマニホルド15におけるレール圧力と,エンジンフリクション及び作動流体の粘性の代表値としてのオイル温度Toを検出するため,高圧オイルマニホルド15には圧力センサ24と温度センサ25とが設置されている。なお,エンジンフリクションの代表値としては,シリンダヘッド3に設けられた水温センサ23を用いてもよい。
【0019】
クランク角度センサ21が検出したクランク角度は,基準気筒又は各気筒においてピストンの圧縮上死点或いは圧縮上死点前の所定位置に到達したことを検出する各センサの検出信号と共に,駆動電流の通電開始時期及び通電期間の制御に用いられる。エンジン1の吸気管26には,吸気管26の吸気圧を検出するための吸気圧センサ27と吸気温を検出するための吸気温センサ28とが設けられている。また,吸気管26に設けられた吸入スロットル弁29の開度は,コントローラ20からの制御信号によって制御され,そのスロットル弁位置は,位置センサ30によって検出される。NOxの低減を図るために,エンジン1の排気管31と吸気管26との間には排気ガスの一部を吸気管26に再循環させるEGR(排気ガス再循環)管32が接続されている。EGR管32の途中に設けられているEGR弁33の弁リフト位置は,真空源としての真空ポンプ34による負圧を利用してコントローラ20によって制御される圧力調整弁(EVRV)35によって制御され,弁リフト負圧が圧力センサ36によって検出されている。更に,コントローラ20には,自動変速機のシフト位置センサ37,暖機運転を促進させるために操作される暖機スイッチ38,及び補機としてのエアコンを作動させるために操作されるエアコンスイッチ39からの信号も入力される。
【0020】
インジェクタ11のヘッド部には電磁弁17が備わっており,電磁弁17は,油圧回路としては,高圧オイルマニホルド15からインジェクタ11内の圧力室へ至るオイル経路中に配置されている。電磁弁17の作動をコントローラ20からの駆動電流の通電時期及び通電期間によって制御することにより,高圧作動オイルのインジェクタ11内の圧力室への供給時期及び供給期間が制御され,インジェクタ11からの燃料噴射時期と燃料噴射量とが制御される。即ち,コントローラ20は,目標燃料噴射量の演算によって算出した目標燃料噴射量に基づいて,電磁弁17への通電期間(パルス幅)を決定し,このパルス幅で電磁弁17を通電することで,燃料噴射量を制御している。なお,この発明によるアイドル運転制御装置は,上記の型式のインジェクタを備えた燃料噴射システムに限って適用されるものではなく,例えば,冒頭で説明した圧力制御室を有し燃料圧力自体でもって針弁の昇降を行う型式のインジェクタに対しても勿論適用可能である。
【0021】
図1には,この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置における目標燃料噴射量の演算概念図が示されている。エンジン1が非アイドル運転状態である場合には,基本目標燃料噴射量算出手段40が,エンジン回転速度Neとアクセル踏込み量Acとに基づいて予め決められたマップ等のデータを参照してその運転状態に応じた基本目標燃料噴射量Qbを算出する。また,エンジン1がアイドル運転状態である場合には,目標燃料噴射量算出手段41が,オイル温度To,エンジン回転速度Ne及びアイドル運転時の目標回転速度Niに基づいて目標燃料噴射量Qiを本発明によるPID制御によって算出する。アイドル判別手段42は,エンジン回転速度Neとアクセル踏込み量Acとに基づいてエンジン1がアイドル運転状態か非アイドル運転状態かを判別する。即ち,エンジン回転速度Neが予め決められた低速範囲内にあり,且つアクセル踏込み量Ac(アクセル開度)が予め決められた低踏込み量(低開度,例えば,開度0%)であるときにエンジン1はアイドル運転状態であると判定し,それ以外のときを非アイドル運転状態であると判定する。エンジン1が非アイドル運転状態のときには切換器43を作動させて基本目標燃料噴射量Qbを出力し,エンジン1がアイドル運転状態のときにはアイドル運転時における目標燃料噴射量Qiを出力し,出力された燃料噴射量(Qb又はQi)は,吸気温等に応じて補正して,最終目標燃料噴射量Qdが求められる。コントローラ20は,上記の目標燃料噴射量の演算を一定時間周期又は一定クランク角度周期で行う。また,コントローラ20は,各気筒の燃料噴射前の予め決められたクランク角度になると,割り込み処理を施して最終目標燃料噴射量Qdに基づいてインジェクタ11の電磁弁17に供給される制御電流のパルス幅を決定する。
【0022】
図5には,エンジンの回転速度Neに対する非アイドル運転状態における基本目標燃料噴射量Qbと,アイドル運転時における目標燃料噴射量Qiの特性を示すグラフが示されている。基本目標燃料噴射量Qbのグラフは,アクセル踏込み量Acが大きいほど,高いエンジン回転速度でも基本目標燃料噴射量Qbが存在している状況を示しており,運転目標燃料噴射量Qiは,エンジン回転速度Neが高いほど大きな値を示すが,オイル温度Toが高いほど燃料噴射量は少なくて済むことを示している。
【0023】
図2には,アイドル運転時の目標回転速度Niの演算概念図が示されている。基本回転速度算出手段45が,オイル温度Toに応じたアイドル運転時における基本回転速度Nbをマップ等のデータに基づいて算出する。基本回転速度Nbは,オイル温度Toが低いほど高速に設定されている。基本回転速度は,エアコンの作動状況に応じて補正される。即ち,エアコンスイッチ39がオンの場合にはエアコン補正手段46が算出した回転数の補正量が加算されて目標回転速度Nbが求められている。エアコンスイッチ39がオフの場合には,補正量はゼロであるので,基本回転速度算出手段45が算出した回転速度が目標回転速度Nbとなる。
【0024】
暖機目標回転速度算出手段47は,暖機運転を促進するときにオンとされる暖機スイッチ38のオン・オフ状態に応じて且つそのときのオイル温度Toに対応して,暖機目標回転速度Nqwを算出する。暖機目標回転速度Nqwは,目標回転速度Nbよりも高速に設定されている。最大値選択手段48が,基本目標回転速速度Nbと暖機目標回転速度Nqwとのうち高い方の回転速度を選択して最終的なアイドル運転時における目標回転速度Niを出力する。目標回転速度Niは,図2に示す目標燃料噴射量算出手段41における入力データとして用いられる。図2に示す各手段45〜48は,エンジン1の運転状態がアイドル運転状態と判定されたときのみ実行される。
【0025】
この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置における目標燃料噴射量の演算ルーチンを図3に基づいて説明する。図3には,図2に示す目標燃料噴射量算出手段41が算出するアイドル運転時における目標燃料噴射量Qiを求めるための演算フローチャートが示されている。この演算フローチャートは,次の各ステップ(S1〜S9)から成る。
(1)エンジン1の回転速度Ne及びオイル温度Toが読み込まれる(S1)。
(2)エンジン1の回転速度Neとオイル温度Toをパラメータとしたマップを参照してアイドル運転時における基本燃料噴射量Qfrを算出する(S2)。基本燃料噴射量Qfrは,エンジン1の内部抵抗(フリクション)に打ち勝って回転を維持できる燃料噴射量として予め決められている。
(3)図2のブロック図に従って求められたアイドル運転時における目標回転速度Niと実際の回転速度Neとの偏差ΔNが求められる(S3)。
(4)S3で求められた偏差ΔNの絶対値|ΔN|と,予め決められた判定値Nlvとが比較される(S4)。
【0026】
(5)S4における判定で,偏差ΔNの絶対値|ΔN|が所定の判定値Nlvを下回っている場合には,偏差ΔNが小さい場合に対して最適化された制御ゲインを基本制御ゲインとして設定する(S5)。即ち,回転速度の偏差ΔNが小さい場合の比例制御ゲインGpl,積分制御ゲインGil及び微分制御ゲインGdlを,それぞれ基本比例制御ゲインGpb,基本積分制御ゲインGib及び基本微分制御ゲインGdbに代入して,それぞれ設定する。
(6)S4における判定で,偏差ΔNの絶対値|ΔN|が所定の判定値Nlv以上である場合には,偏差ΔNが大きい場合に対して最適化された制御ゲインを基本制御ゲインとして設定する(S6)。即ち,回転速度の偏差ΔNが大きい場合の比例制御ゲインGph,積分制御ゲインGih及び微分制御ゲインGdhを,それぞれ基本比例制御ゲインGpb,基本積分制御ゲインGib及び基本微分制御ゲインGdbに代入して,それぞれ設定する。
【0027】
(7)比例,積分及び微分の各基本制御ゲインを補正するためオイル温度Toの関数として設定されている補正係数を求める(S7)。アイドル運転時にオイル温度Toの値に応じて最適なエンジン回転速度制御となるように,比例,積分及び微分の各基本制御ゲインに積算されるオイル温度Toに応じた補正係数が求められる。即ち,基本比例制御ゲインGpbを補正する補正係数Kp,基本積分制御ゲインGibを補正する補正係数Ki,及び基本微分制御ゲインGdbを補正する補正係数Kdを,それぞれオイル温度Toの関数として求めて設定する。一般に,オイル温度Toが低い程,各補正係数は段階的に高く設定されている。
(8)上記の各補正係数Kp,Ki及びKdを用いて,比例制御ゲインGp,積分制御ゲインGi及び微分制御ゲインGdを求めてメモリに記憶する(S8)。
Gp ← Gpb×Kp
Gi ← Gib×Ki
Gd ← Gdb×Kd
(9)S8で求めた比例制御ゲインGp,積分制御ゲインGi及び微分制御ゲインGdを用いて偏差ΔNに基づいて比例,積分及び微分動作による各補正噴射量(それぞれ,Gp×ΔN,Gi×∫ΔNdt,Gd×(dΔN/dt))を求め,このようにして求めた各補正噴射量をS2で求めた基本燃料噴射量Qfrに加算して,最終的なアイドル目標燃料噴射量Qiを求める(S9)。
このようにして求められた目標燃料噴射量Qiに基づいて,燃料噴射を行うことにより,偏差ΔNとオイル温度Toに対して最適な制御ゲインを用いたアイドル運転時における回転速度制御が実現される。
【0028】
この実施例では,偏差ΔNに対応した制御ゲインは,予めメモリに記憶させておいたが,S7でオイル温度Toに対して行ったように,偏差ΔNの関数として補正係数を求めて対応してもよい。また,偏差ΔNに対してその大きさに応じて2種類のゲインを用意したが,更に,ΔNの大きさに応じて3種類以上の多段階の制御ゲインを用意してもよい。図6には,回転速度の偏差ΔNの大きさに応じて,またオイル温度Toの高さに応じて,制御ゲインを変更するときの偏差ΔNとその比例制御による補正噴射量との関係の一例を示したグラフが示されている。偏差ΔNの絶対値が所定値Nlvよりも小さい領域(|ΔN|≦Nlv)では比例制御における補正係数(直線の傾き,以下同じ)Kp1 は小さく,偏差ΔNの絶対値が所定値Nlvよりも大きい領域(|ΔN|>Nlv)では比例制御における補正係数Kp2 は大きく設定されている。また,オイル温度Toが低いときには高いときと比較して補正係数Kp3 ,Kp4 は,補正係数Kp1 ,Kp2 よりも高く設定されている。積分制御及び微分制御においても,同様な考え方に基づいて補正係数Ki,Kdが予め決められている。
【0029】
更に,制御ゲインの最適化として回転速度Neとオイル温度Toでのみ行った例を挙げたが,これに限らず,他の運転状態として,例えば,自動変速機のシフト位置センサ37,暖機スイッチ38,エアコンスイッチ39で検出される変速機の変速ギヤのシフト位置やエアコン等の補機の作動状況(変速ギヤがドライブ位置にあるときや補機が作動状態にあるときには負荷が増大するため,制御ゲインを大きくして応答性を向上する)を考慮して,制御ゲインを設定することもできる。コントローラ20の演算は,一定の時間間隔ごとに行われるので,回転速度の偏差の積分値や微分値も,その一定の時間間隔での演算で求められる値である。また,PID制御は,常に比例,積分及び微分の制御動作の一部,例えば,PI制御又はPD制御であってもよい。
【0030】
【発明の効果】
この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置は,上記のように構成されているので,コントローラは,アイドル判別手段がエンジンの運転状態を前記アイドル運転状態であると判別したときには,エンジンの回転速度と目標回転速度との偏差,前記偏差の積分値又は前記偏差の微分値に可変制御ゲインを乗じることにより,PID制御によってアイドル運転時における基本燃料噴射量を補正する補正噴射量を求め,この補正噴射量を基本燃料噴射量に加算して目標燃料噴射量が算出される。可変制御ゲインはエンジンの運転状態に応じて変化されるので,運転状態に応じた適切な制御が行われ,アイドル運転状態では,制御ゲインが高過ぎることによるエンジンの回転速度のハンチングが防止できると共に,制御ゲインが低過ぎることによるエンジンの回転速度の収束性が改善される。更に,制御ゲインとしては基本制御ゲインのみをメモリに記憶させておき,基本制御ゲインにエンジンの各運転状態に応じてそれぞれ求められる補正係数を乗じることでPID制御における制御ゲインを決定すると,エンジンの各運転状態に応じた多数の制御ゲインを予め用意しておくことなく,更に多数の制御ゲインを記憶させるために大容量のメモリを必要とせず,更にコントローラのCPUの負担を少なくすることができ,制御装置としての製品の開発コストと製造コストを低減することができると共に,演算時間を要することに起因する制御の応答性が悪化するということもなく,安定したアイドル運転での回転速度制御が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置における目標燃料噴射量の演算概念図である。
【図2】この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置におけるアイドル運転時の目標回転速度の演算概念図である。
【図3】この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置における目標燃料噴射量の演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置が適用される電子制御燃料噴射システムの一例を示す図である。
【図5】アイドル運転状態と非アイドル運転状態とにおいてエンジンの回転速度に対する燃料噴射量の関係を示すグラフである。
【図6】この発明によるエンジンのアイドル運転制御装置における回転速度の偏差と該偏差に基づく比例制御における補正噴射量との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 エンジン
10 電子制御燃料噴射システム
11 インジェクタ
14 高圧オイルポンプ
15 高圧オイルマニホルド
16 流量制御弁
17 電磁弁
20 コントローラ
Ne エンジン回転数
Ac アクセル踏込み量
Ni 目標回転速度(アイドル運転時)
ΔN 偏差
Qfr 基本燃料噴射量(アイドル運転時)
Qi 目標燃料噴射量(アイドル運転時)
Qp,Qi,Qd 可変制御ゲイン
Kp,Ki,Kd 補正係数
Claims (2)
- エンジンがアイドル運転状態にあるときの目標回転速度を算出する目標回転速度算出手段、前記目標回転速度に対応して基本燃料噴射量を算出する基本燃料噴射量算出手段、及び前記エンジンの回転速度と前記目標回転速度との偏差、該偏差が小さい場合に対して最適化された制御ゲインを基本制御ゲインとして設定し、前記偏差の積分値又は前記偏差の微分値に可変制御ゲインを乗じることにより前記基本燃料噴射量を補正する補正噴射量を求め且つ前記補正噴射量を前記基本燃料噴射量に加算して目標燃料噴射量を求める目標燃料噴射量算出手段を具備し、前記可変制御ゲインは、前記エンジンの運転状態に応じて変化されるものであるエンジンのアイドル運転制御装置において、
前記可変制御ゲインは、前記基本制御ゲインに、前記エンジンのオイル温度、前記偏差の大きさ、及び前記エンジンに適用される変速機のシフト位置又は前記エンジンに付設される補機の作動状態を含む前記エンジンの運転状態に応じて求められる補正係数を乗じて算出されるものであることを特徴とするエンジンのアイドル運転制御装置。 - 前記可変制御ゲインは、前記偏差に乗じられる比例制御ゲイン、前記積分値に乗じられる積分制御ゲイン又は前記微分値に乗じられる微分制御ゲインであることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのアイドル運転制御装置。
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