JP3890845B2 - エンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃焼室内に噴射される燃料噴射量が少なくなるときに白煙等を発生するに至る燃焼状態の悪化を防止するエンジンの燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディーゼルエンジン等のエンジンにおいては、シリンダ内の温度が非常に低いことは、燃焼状態の悪化の原因になることが良く知られている。即ち、エンジン温度が着火温度に達することができないと、エンジンが失火状態となったり不完全燃焼を起こし、排気ガスに白煙や青煙等を生じる等の燃焼状態の悪化につながる。また、高地、即ち、大気圧が低い場合も実質的な空気吸入量が減少するため、同様の燃焼状態が悪化して、白煙等の原因となる。燃焼室における燃料の燃焼開始は、通常、着火遅れが存在しているために、ピストンが上死点から下降開始した後である。そこで、燃料噴射時期を早めて、燃料を上死点(最圧縮状態)付近で行わせることにより、燃焼温度を上昇させることで、白煙の発生をある程度解消することも従来から知られている。
【0003】
一方、燃料噴射装置の性能の向上により、インジェクタから1回毎に噴射される燃料噴射量を小さな値の噴射量に制御することが可能になり、燃料噴射量を決定するマップも、エンジンの運転状態に応じて、小さい値の燃料噴射量に対応したマップが用意されるようになっている。
【0004】
最近のこのような燃料噴射制御装置の開発が進められるに伴って、以下のような問題点が生じている。即ち、燃焼条件が厳しくなると、インジェクタから1回毎に噴射される燃料噴射量が少ないほど失火や不完全燃焼が生じ易くなる傾向にある。また、一旦、失火や不完全燃焼のようにエンジンの燃焼状態が悪化すると、熱発生量の自然な回復は望めず、悪化した燃焼状態が継続されるという問題もある。近年における燃料噴射装置の技術の一層の発達により、燃料噴射量がより少ない微小噴射が可能になるのと引き換えに、燃焼する燃料量が少ないことに起因して熱発生量が低下し、燃焼室内の温度が充分上昇せず、運転状態によっては白煙が発生するという状況が新たに発生している。熱発生量は、吸入空気圧力や吸入空気温度が低いほど、また単位時間当たりの吸入空気量が増加するほど燃焼室内の熱を奪うため、少なくなる傾向にある。更に、近年の排気ガス低減要求の高まりにより、更なる白煙対策が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、燃料噴射量が少なくなるときに、燃料噴射量を増量して燃焼室内での熱発生量を増やす対策を採用するのでは、燃料消費率が上昇することにつながるのみである。白煙等の燃焼悪化は、ある程度の回転速度でエンジンが運転されており、しかも必要な燃料噴射量が少ないという運転状況で生じている。このような運転状況は、例えば、車両が長い下り坂を走行するときのように、エンジン回転速度がある程度上昇し且つ負荷が少なくなって必要な燃料噴射量が減少するときに生じる。従って、このようなエンジンの運転状態に着目して、燃料噴射量を増量することなく、白煙や青煙等が排出されないように新たな対策を講じる点で解決すべき課題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は、上記課題を解決することであり、ある程度の回転速度でエンジンが運転されており、目標燃料噴射量が少なくなるときに、エンジンの排気ガスに白煙が生じる等の燃焼状態の悪化を防止することができるエンジンの燃料噴射制御装置を提供することである。
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するため、以下のように構成されている。即ち、この発明によるエンジンの燃料噴射制御装置は、エンジンの運転状態を検出する検出手段、前記検出手段が検出した前記エンジンの運転状態に基づいて目標燃料噴射量を算出する目標燃料噴射量算出手段、前記エンジンの運転状態に基づいて燃焼状態の悪化をもたらさない燃料噴射量の下限値としての制限燃料噴射量を演算する制限燃料噴射量演算手段、前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量よりも小さい値であるか否かを比較する燃料噴射量比較手段、前記エンジンの運転状態が前記エンジンの運転状態について予め求められた閾値によって、燃焼状態を悪化させる状態であるか否かを判断する燃焼状態判断手段、及び燃料噴射の停止を指令する燃料噴射停止指令手段を具備してなるエンジンの燃料噴射制御装置であって、前記検出手段で検出した大気圧、大気温度、及びエンジン温度に基づいて、それぞれに対応した個別制限燃料噴射量を演算し、それをマップとして備え、それぞれに対応して演算された前記個別制限燃料噴射量のうち、最大値を示す前記個別制限燃料噴射量を前記制限燃料噴射量として選択し、前記燃料噴射量比較手段によって前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量より小さい値で、且つ前記燃焼状態判断手段によって前記エンジンの運転状態が燃焼状態を悪化させる状態にあると判断されるとき、前記燃料噴射停止指令手段が燃料噴射の停止を指令するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明は、低大気圧時、低大気温時、低水温時等のエンジンの燃焼が悪化する状況下で、微小の燃料噴射量を与える場合において、燃料噴射量がある燃料噴射量を下回り、且つエンジンの運転状態がある条件を満たした場合において、燃料噴射を行わないようにするものである。この発明は、上記のように構成されているので、検出手段が検出したエンジンの運転状態に基づいて、目標燃料噴射量算出手段が目標燃料噴射量を逐次算出していると共に、制限燃料噴射量演算手段が燃焼状態の悪化をもたらさない燃料噴射量の下限値としての制限燃料噴射量を逐次演算している。燃料噴射停止手段は、目標燃料噴射量算出手段が算出した目標燃料噴射量と制限燃料噴射量演算手段が演算した制限燃料噴射量との比較に基づいて、エンジンの運転状態がエンジンの燃焼状態を悪化させると判断されるときに燃料噴射を停止させるので、排気ガスに白煙や青煙が含まれることはなくなる。なお、エンジンの燃焼室への燃料の噴射を停止しても、エンジンの運転状態は、アイドル運転時の回転速度よりも高い回転速度で下り坂道を走行しているような状態であるので、直ちにエンジンの運転や車両の走行に支障が生じることはない。
【0009】
このエンジンの燃料噴射制御装置において、前記制限燃料噴射量演算手段は、大気圧、大気温度、及びエンジン温度の少なくとも一つを前記エンジンの運転状態として前記制限燃料噴射量を演算する。大気圧、大気温度、及びエンジン温度は、同じ燃料量の燃料が燃焼室内で燃焼したときの熱発生量に大きく影響する。従って、制限燃料噴射量演算手段は、燃焼状態の悪化をもたらさない燃料噴射量の下限値としての制限燃料噴射量を、大気圧、大気温度、及びエンジン温度の少なくとも一つに基づいて演算する。
【0010】
前記制限燃料噴射量演算手段は、複数の前記エンジンの運転状態のそれぞれに対応して演算された個別制限燃料噴射量のうち、最大値を示す前記個別制限燃料噴射量を前記制限燃料噴射量として選択する。大気圧、大気温度、及びエンジン温度等の複数のエンジンの運転状態にそれぞれ基づいて求めた個別の制限燃料噴射量は、一般に、異なる値を示す。白煙を生じさせる可能性をすべて除くため、個別の制限燃料噴射量のうち最大値を前記制限燃料噴射量として選択する。
【0011】
前記制限燃料噴射量演算手段は、前記エンジンの運転状態と前記制限燃料噴射量との関係を複数点においてプロットされたマップとして備えており、隣接するプロット点間における前記エンジンの運転状態に対応した前記制限燃料噴射量を前記隣接するプロット間の線形補完によって演算する。エンジンの運転状態と制限燃料噴射量との関係は、コントローラ内において記憶に必要な容量を少なくする観点から、複数点をプロットしたマップとして記憶されている。従って、一般には、エンジンの運転状態に対応した制限燃料噴射量は、隣接するプロット点間の線形補完によって演算される。
【0012】
前記燃料噴射停止手段は、前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量よりも小さい値であるか否かを比較する燃料噴射量比較手段、前記エンジンの運転状態が前記エンジンの運転状態について予め求められた閾値によって定められる燃焼状態悪化領域にあるか否かを判断する燃焼状態判断手段、及び燃料噴射の停止を指令する燃料噴射停止指令手段を具備し、前記燃料噴射量比較手段によって前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量よりも小さい値であると比較され、且つ前記燃焼状態判断手段によって前記エンジンの運転状態が前記燃焼状態悪化領域にあると判断されるとき、前記燃料噴射停止指令手段が燃料噴射の停止を指令する。燃料噴射量比較手段の比較結果が、目標燃料噴射量が制限燃料噴射量よりも小さい値になった場合には、排気ガスに白煙が含まれる可能性があるが、直ちに燃料噴射を停止するのではなく、燃焼状態判断手段によって、エンジンの運転状態が前記エンジンの燃焼状態を悪化させる領域にあるか否かが判断される。前記燃焼状態悪化領域は、前記エンジンの運転状態が大気圧である場合には、前記閾値としての所定大気圧力値よりも低い前記大気圧の領域であり、前記エンジンの運転状態が大気温度である場合には、前記閾値としての所定大気温度値よりも低い前記大気温度の領域であり、前記エンジンの運転状態がエンジン温度である場合には、前記閾値としての所定エンジン温度値よりも低い前記エンジン温度の領域である。圧力及び温度とも低い方が燃焼室内での熱発生量が低下するので、燃焼状態悪化領域は、各閾値よりも小さい値の領域になる。
【0013】
この燃焼状態判断手段は、制限燃料噴射量を演算するためのマップに、エンジン温度や大気圧に閾値を導入するためのものである。即ち、マップでは、メッシュ内で線形補完をして制限燃料噴射量を演算している。閾値としての所定の温度や圧力以上では、微小な燃料噴射量でも熱発生量が充分確保されて燃焼状態が悪化することがないので、制限燃料噴射量に基づいて燃料噴射の停止をする必要がない。その場合に、マップ上において、制限燃料噴射量をその閾値でいきなりゼロに急減させる設定をすると、その閾値に僅かに低い温度や圧力の領域では制限燃料噴射量の線形補完が不適当になる。そのため、制限燃料噴射量を定めたマップとは別に、エンジンの燃焼状態悪化領域にあるか否かを定めるために、エンジン温度や大気圧等のエンジンの運転状態について、閾値を考慮している。燃料噴射停止指令手段は、インジェクタへの出力を直接停止してもよいが、目標燃料噴射量をゼロ又は過大な負の値として設定してもよい。
【0014】
前記燃焼状態判断手段は、大気圧が所定大気圧力値よりも低い場合、大気温度が所定大気温度値よりも低い場合、又はエンジン温度が所定エンジン温度値よりも低い場合の少なくとも一つの場合を考慮して前記エンジンの運転状態が前記エンジンの燃焼状態を悪化させる状態であると判断する。
【0015】
前記燃焼状態判断手段は、前記エンジンの回転速度が所定の回転速度以下のときには、前記エンジンの運転状態が前記エンジンの燃焼状態を悪化させる状態であるとは判断しない。エンジンの回転速度が所定の回転速度以下の場合に、この発明による燃料噴射を停止させる制御を行うと、エンジンが停止してしまう可能性があるので、目標燃料噴射量が制限燃料噴射量より少なくても、燃料噴射を停止させる制御は行われない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、この発明によるエンジンの燃料噴射制御装置の実施例を説明する。図1はこの発明によるエンジンの燃料噴射制御装置の一実施例を示すブロック図、図2は図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置における燃料噴射制御フローの一例を示すフローチャート、図3はこの発明による燃料噴射制御装置による燃料噴射制御が実行されるエンジンの運転領域の一例を示すマップ、図4は各種のエンジン運転状態に応じてそれぞれ制限燃料噴射量が設定されているマップ、図5はこの発明によるエンジンの燃料噴射制御装置が適用される燃料噴射システムの一例を示す概略図である。
【0017】
この発明によるエンジンに燃料噴射制御装置が適用される燃料噴射システムの一例を図5に基づいて簡単に説明する。図5に示す燃料噴射システムは、6気筒エンジンに適用されたコモンレール式燃料噴射システムである。燃料タンク4内の燃料は、燃料フィルタ5、フィードポンプ6及び燃料管7を通じて燃料サプライポンプ8に吸い上げられる。燃料サプライポンプ8は、例えばエンジンによってプランジャが往復駆動される所謂、プランジャ式燃料供給ポンプであり、燃料をエンジンの運転状態等に基づいて定められる高圧に昇圧して燃料管9を通じてコモンレール2に供給する。コモンレール2内の高圧燃料は、燃料供給管3を通じて各インジェクタ1に供給される。燃料サプライポンプ8及びインジェクタ1からの余剰の燃料は、それぞれ戻し管11を通じて燃料タンク4に戻される。
【0018】
電子制御ユニットであるコントローラ12には、検出手段15からの検出信号として、アクセルペダルの踏込み量のようなアクセル開度センサが検出する負荷信号としてのアクセル開度Ac、気筒判別センサやクランク角センサが検出したエンジン回転数Ne、エンジン温度としての冷却水温を検出する水温センサが検出した冷却水温Tw、コモンレール2に配設された圧力センサ13が検出したコモンレール2内の燃料圧力の、エンジンの運転状態を表す各信号が入力される。コントローラ12には、これらの信号以外にも、吸気管内圧力を検出するための吸気管内圧力センサ等からの検出信号が入力される。
【0019】
コントローラ12は、これらのエンジンの運転状態に基づいて、予めマップ等でメモリに記憶されている関係や式から燃料サプライポンプ8や各インジェクタ1の作動条件を決定する。コントローラ12は、制御信号ライン16を通じて出力した制御信号により燃料サプライポンプ8(例えば、付属して配設される流量制御弁14)を制御してコモンレール2の圧力を制御する。インジェクタ1からの燃料噴射により燃料が消費されてレール圧力は低下しようとするが、燃料サプライポンプ8の作動を制御することにより、レール圧力は一定に維持される。また、運転状態に適合するようにレール圧力を変更することができる。インジェクタ1から噴射される燃料噴射量は、レール圧力にも依存している。燃料の噴射圧力はコモンレール2におけるレール圧力に略等しいので、レール圧力を制御することにより噴射圧力を制御し、燃料噴射量を制御することができる。
【0020】
コントローラ12は、また、制御信号ライン17を通じて出力した制御信号により各インジェクタ1を制御し、エンジン出力がエンジンの運転状態に即した最適出力になるように、各インジェクタ1からの燃料の噴射時期・期間及び噴射量等の燃料噴射条件を制御する。燃料噴射条件の制御は、コモンレール2におけるレール圧力と各インジェクタ1に設けられた電磁弁の作動とを制御することにより行われる。電磁弁が作動されるときに、インジェクタ1に供給されている作動流体(別のオイル系統から供給されるエンジンオイル又はコモンレール2から供給されている燃料)の圧力作用によって、インジェクタ1に設けられているニードル弁(図示せず)がリフトして、燃料がインジェクタ1の先端に形成されている噴孔から噴射される。一般に、インジェクタ1からの燃料噴射量とコントローラ12から電磁弁のソレノイドに供給される噴射パルス幅との関係が、レール圧力をパラメータとして示されている。噴射パルス幅に応じて燃料噴射量が定められ、噴射パルスがオン又はオフとなる時期を制御することによって、噴射タイミングを制御することができる。
【0021】
コモンレール燃料噴射システムでは、エンジンの運転状態に応じて予め決められた燃料噴射量及び燃料噴射時期がマップ化してコントローラ12に記憶され、このマップ化して記憶された燃料噴射量及び燃料噴射時期から現在のエンジンの運転状態に対応した目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期が求められ、求められた目標燃料噴射量及び目標燃料噴射時期と現在の燃料噴射量及び燃料噴射時期との偏差に基づいてインジェクタ1の燃料噴射弁が電子的に制御される。
【0022】
図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置によれば、検出手段15は、エンジンの運転状態として、エンジン回転速度Ne、アクセル開度Ac、エンジン温度としての冷却水温Tw、大気圧Pa、及び大気温度Taを検出する。検出手段15が検出したエンジンの運転状態に基づいて、目標燃料噴射量算出手段20は、目標燃料噴射量Qtを算出する。また、制限燃料噴射量演算手段21は、検出手段15が検出したエンジンの運転状態に基づいて、燃焼状態の悪化をもたらさない燃料噴射量の下限値としての制限燃料噴射量Qrを演算する。
【0023】
目標燃料噴射量算出手段20が算出した目標燃料噴射量Qtと、制限燃料噴射量演算手段21が演算した制限燃料噴射量Qrは、燃料噴射停止手段22に入力される。燃料噴射停止手段22は、入力された目標燃料噴射量Qtと制限燃料噴射量Qrとの比較に基づいてエンジンの運転状態がエンジンの燃焼状態を悪化させると判断されるときに燃料噴射を停止させる。
【0024】
燃料噴射停止手段22は、目標燃料噴射量Qtが制限燃料噴射量Qrよりも小さい値であるか否かを比較する燃料噴射量比較手段23、目標燃料噴射量Qtが制限燃料噴射量Qrよりも小さい値であるとの燃料噴射量比較手段23の比較結果に応答してエンジンの運転状態がエンジンの燃焼状態を悪化させるか否かを判断する燃焼状態判断手段24、及びエンジンの運転状態がエンジンの燃焼状態を悪化させる状態であるとの燃焼状態判断手段24の判断結果に応答して、燃料噴射の停止を出力する燃料噴射停止指令手段25から成る。燃料噴射停止指令手段25は、インジェクタ1(図5)への出力を直接停止してもよいが、目標燃料噴射量Qtをゼロ又は過大な負の値として設定してもよい。
【0025】
制限燃料噴射量Qrは、一般には、マップを参照することにより算出される。マップは、現在では、エンジン温度を表す冷却水温Twと制限燃料噴射量Qrとの関係を定めたマップが考えられる。しかしながら、大気温度Ta、大気圧力Pa、燃料温度Tf等と制限燃料噴射量Qrとの関係を定めるマップであってもよい。そのような、マップの例が、図4に示されている。一般に、冷却水温Tw、大気温度Ta、大気圧力Pa、及び燃料温度Tfが高い値になるほど、燃料が燃焼したときの熱発生量が増加する傾向となるので、正常な燃焼状態を行う下限値としての制限燃料噴射量Qrは少ない量となる。
【0026】
マップ以外には、エンジン運転状態である特定のパラメータを変数とする関数によって算術的に演算してもよい。また、固定値にエンジン運転状態である特定のパラメータの値に応じて、適宜の補正係数を乗じることによって演算してもよい。複数のエンジン運転状態をパラメータとして、制限燃料噴射に用いることもできる。複数のエンジン運転状態を制限燃料噴射に用いるときは、それぞれのエンジン運転状態に応じて制限燃料噴射量を定めるマップが用意される。この場合には、各マップを参照するかどうかの判定を行うのが好ましい。その場合、エンジンの燃焼状態が正常に行われるように、参照する複数のマップから求めた制限燃料噴射量のうち最大の値を示す制限燃料噴射量を選択するのが好ましい。或いは、補正係数によって、各制限燃料噴射量に重み付けを施したり、統計的な処理を施すことも、一方法である。
【0027】
この発明による燃料噴射制御が行われる範囲が、図3に示されている。図3は、アクセル操作量Acをパラメータとしたエンジン回転速度Neと燃料噴射量Qとの関係を示すマップである。この発明による燃料噴射制御が行われるのは、図3においてハッチングで示された、エンジン回転速度Neが所定のエンジン回転速度Ne0 (アイドル運転時の回転速度Neiよりも大きい回転速度が好ましい)より大きく且つ燃料噴射量Qが比較的少ない範囲Aである。エンジン回転速度Neが比較的高い状態では、吸入空気の圧力損失の増加による体積効率の低下が生じ、シリンダ内への新気の吸入量が低下し、圧縮行程におけるシリンダ内の温度上昇も低下する。このような状況になると、微小量ながらも噴射した燃料が失火又は不完全燃焼となり、そのまま白煙となってエンジン外部に排出される可能性がある。従って、この範囲Aでこの発明による燃料噴射制御が実行される。一方、この発明による燃料噴射制御は、エンジン回転速度Neが所定の回転速度Ne0 より遅い運転状態では行われない。そのような運転状態においてこの発明による燃料噴射制御を実行して燃料噴射が停止されると、燃料噴射の停止に伴ってドライバビリティの悪化を引き起こしたり、エンジンそのものの運転が停止されてしまう等の問題があるからである。
【0028】
次に、図2を参照して、この発明による燃料噴射制御フローを説明する。この発明による燃料噴射制御が開始されると、先ず、エンジンの運転状態が燃料噴射制御のための各パラメータとして読み込まれる(ステップ1)。ステップ1で求められたエンジンの運転状態に基づいて、目標燃料噴射量算出手段20によって目標燃料噴射量Qtが演算される(ステップ2)。ステップ1で求められたエンジンの運転状態に基づいて、制限燃料噴射量演算手段21によって、これ以下では燃料噴射を行うと燃焼状態が悪化してしまう正常燃焼状態の下限値として、制限燃料噴射量Qrが算出される(ステップ3)。
【0029】
ステップ2で演算された目標燃料噴射量Qtと、ステップ3で算出された制限燃料噴射量Qrとを比較して、目標燃料噴射量Qtが制限燃料噴射量Qrよりも小さいか否かを比較する(ステップ4)。この燃料噴射量の比較は、燃料噴射停止手段22の燃料噴射量比較手段23によって行われる。ステップ4における比較結果が否と(目標燃料噴射量Qtが制限燃料噴射量Qr以上である)された場合には、燃料噴射が実行される(ステップ6)。一方、ステップ4における比較結果が是(目標燃料噴射量Qtが制限燃料噴射量Qrよりも小さい)とされた場合には、現在のエンジンの運転状態が、そのエンジンの運転状態に特有の閾値によって、制限燃料噴射量を考慮した燃料噴射制御を行うべきであるとして予め決められた領域にあるか否かの判定が行われる(ステップ5)。この判定は、燃料噴射停止手段22の燃焼状態判断手段24によって行われる。
【0030】
ステップ5において否(現在のエンジンの運転状態が制限燃料噴射量を考慮した燃料噴射制御領域にない)と判定された場合には、燃料噴射が実行される(ステップ6)。ステップ5において是(現在のエンジンの運転状態が制限燃料噴射量を考慮した燃料噴射制御領域にある)と判定された場合には、燃料噴射が停止される(ステップ7)。燃料噴射の停止は、例えば、目標燃料噴射量を強制的にゼロ噴射量又は大きな負値の噴射量に設定することにより行われる。ステップ6又は7が実行された後、燃料噴射制御は、このフローを離脱し、メインのフローに復帰する。例えば、あるディーゼルエンジンにおいて、制限燃料噴射量Qrが10mm3 以下である場合に、水温0℃以下及びエンジン回転速度800rpm以上のときには、燃焼状態が悪化(白煙を生じる)と判断して、燃料噴射を停止する制御が行われる。
【0031】
図2に示すフローチャートのステップ5について更に説明する。有限個数の点を結んで作成された図4に示すマップに基づく制御では、あるエンジン運転状態、例えば、エンジンの冷却水温Twn においていきなり制限燃料噴射量Qrを零にすることは不可能である。即ち、現状では、マップは、複数の点(冷却水温Tw1 ,Tw2 ,Tw3 ,・・,Twn - 1 ,Twn ・・に対する制御燃料噴射量Qr1 ,Qr2 ,Qr3 ,・・,Qrn - 1 ,Qrn ・・)をプロットすることで定めており、それ以外の冷却水温における制御燃料噴射量は、隣接するプロット間、即ち、座標メッシュに対する線形補完の手法によって求められている。
【0032】
しかしながら、冷却水温Twがある冷却水温Twn 以上であるときは、エンジン温度が燃焼悪化をもたらすほどエンジン温度が低くなく、微小な燃料噴射量であっても燃料噴射を停止するという燃料噴射の制限をする必要がない。閾値としての冷却水温Twn より水温が低い領域Bが、燃焼状態を悪化させる領域として設定される。冷却水温Twn より水温が高い領域Cでは、制限燃料噴射量Qrがゼロ噴射量であるので、マップ上の制限燃料噴射量Qrに関わりなく、目標燃料噴射量Qtに基づいて燃料噴射制御を行うことが考えられる。
【0033】
そこで、冷却水温Twn を閾値として制限燃料噴射量Qrをマップ上でいきなりゼロ噴射量に設定することも考えられる。そうすると、冷却水温Twn より次に低い冷却水温Twn - 1 との間の冷却水温Twでの制限燃料噴射量は、制限燃料噴射量Qrn - 1 とゼロ噴射量との直線補完で求めることになり、図4(a)に点線で示すように、技術的に根拠がなく、現実的にも噴射制御することが不可能な非常に微小な制限燃料噴射量になる。従って、冷却水温Twn を閾値として制限燃料噴射量Qrを階段状に変更するときには、ステップ4とは別に、再度、エンジンの運転状態が、燃焼状態が悪化する領域にあるか否かを判断する必要があり、そのためにステップ5が設けられている。また、冷却水温Twn を閾値とした制限燃料噴射量Qrの階段的な設定をマップとは別に行うことにより、ソフトウェアによって閾値としての冷却水温Twn を任意に設定することが可能となり、燃料噴射制御の融通性を向上させることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように構成されたこの発明によるエンジンの燃料噴射制御装置によれば、低大気圧時、低大気温時、低水温時等のエンジンの燃焼状態が悪化する状況下で、微小の燃料噴射量を与える場合において、目標燃料噴射量算出手段によって算出された目標燃料噴射量が、制限燃料噴射量演算手段によって演算された制限燃料噴射量を下回り、且つエンジンの運転状態がエンジンの燃焼状態を悪化させる条件を満たした場合において、燃料噴射を停止させているので、エンジンが失火したり不完全燃焼をしたりすることがなく、排気ガスに白煙や青煙が含まれることはなくなる。この発明によるエンジンの燃料噴射制御装置によれば、ある程度の回転速度でエンジンが運転されていれば、目標燃料噴射量が少なくなるときに、強制的に燃料噴射を停止しているので、エンジンの排気ガスに白煙が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンの燃料噴射制御装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置における燃料噴射制御フローの一例を示すフローチャートである。
【図3】図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置による燃料噴射制御が実行されるエンジン運転状態の領域の一例を示すマップである。
【図4】図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置において、各エンジン運転状態に対する制限燃料噴射量の変化を示すマップである。
【図5】図1に示すエンジンの燃料噴射制御装置が適用される燃料噴射システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
15 検出手段
20 目標燃料噴射量算出手段
21 制限燃料噴射量演算手段
22 燃料噴射停止手段
23 燃料噴射量比較手段
24 燃焼状態判断手段
25 燃料噴射停止指令手段
Q 燃料噴射量
Qt 目標燃料噴射量
Qr 制限燃料噴射量
Pa 大気圧
Ta 大気温度
Tw 冷却水温(エンジン温度)
Twn 冷却水温の閾値
A 燃焼状態悪化領域
Ne エンジンの回転速度
Nei アイドル運転回転速度
Ne0 所定の回転速度
Claims (1)
- エンジンの運転状態を検出する検出手段、前記検出手段が検出した前記エンジンの運転状態に基づいて目標燃料噴射量を算出する目標燃料噴射量算出手段、前記エンジンの運転状態に基づいて燃焼状態の悪化をもたらさない燃料噴射量の下限値としての制限燃料噴射量を演算する制限燃料噴射量演算手段、前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量よりも小さい値であるか否かを比較する燃料噴射量比較手段、前記エンジンの運転状態が前記エンジンの運転状態について予め求められた閾値によって、燃焼状態を悪化させる状態であるか否かを判断する燃焼状態判断手段、及び燃料噴射の停止を指令する燃料噴射停止指令手段を具備してなるエンジンの燃料噴射制御装置であって、
前記検出手段で検出した大気圧、大気温度、及びエンジン温度に基づいて、それぞれに対応した個別制限燃料噴射量を演算し、それをマップとして備え、それぞれに対応して演算された前記個別制限燃料噴射量のうち、最大値を示す前記個別制限燃料噴射量を前記制限燃料噴射量として選択し、前記燃料噴射量比較手段によって前記目標燃料噴射量が前記制限燃料噴射量より小さい値で、且つ前記燃焼状態判断手段によって前記エンジンの運転状態が燃焼状態を悪化させる状態にあると判断されるとき、前記燃料噴射停止指令手段が燃料噴射の停止を指令するようにしたことを特徴とするエンジンの燃料噴射制御装置。
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