JP4086668B2 - フェノール系樹脂およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエポキシ樹脂の原料や感熱インキ材料として有用なフェノール系樹脂、及びその効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール系樹脂は一般に、それ自体で、熱硬化性樹脂、レジスト、感熱材料など様々な分野に利用されている。またエポキシ樹脂やポリカーボネートなどの原料としても用いられている。エポキシ樹脂原料の分野でのフェノール系化合物としてはビスフェノールAやフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが一般に知られている。
【0003】
その硬化物において優れた耐熱性、耐湿性(耐水性)、接着性を示す、フェノール系樹脂として特許文献1、 特許文献2にはフェノール類とその骨格に少なくとも1つのホルミル基を有するフランあるいはチオフェン誘導体との重縮合物が記載されている。また、本発明者らはホルミル基を有するピリジン誘導体とフェノール類の重縮合物が接着性・耐湿性に優れることを見出し特願2002−329038号として特許出願した。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−237060号公報
【特許文献2】
特開平13−302750号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、ホルミル基を有する化合物とフェノール類との重縮合反応は、ホルミル基を有する化合物に対して過剰のフェノール類を添加し、反応終了後、未反応のフェノール類を加熱減圧下で除去した後、溶融状態で反応器から目的物を取り出して行う。しかしながらこのホルミル基を有するピリジン誘導体とフェノール類の重縮合物は、結晶性が高く、その融点が非常に高温であるため容器から取り出すことが極度に困難である。本発明は、このように結晶性が高く、高融点の化合物を容易に製造する方法を提供することを目的の一つとする。また、本発明の他の目的は、接着性・耐湿性に優れるフェノール系樹脂を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、下記式(1)で表される化合物において、式(2)で表される成分の割合が高くになった場合に、目的物を容易かつ安全に単離することが可能な方法を求めて鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)下記式(1)
【0008】
【化5】
Figure 0004086668
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。Qはそれぞれ独立して、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。jは1〜3の整数を表す。nは繰り返し数を表し、1〜15の整数を示す。)
で表されるフェノール系樹脂であって、下記式(2)
【0009】
【化6】
Figure 0004086668
(式(2)中R、Q、i及びjは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される成分が占める割合が85重量%以上である結晶性フェノール系樹脂、(2)下記式(3)
【0010】
【化7】
Figure 0004086668
【0011】
(式(3)中、Q及びjは式(1)におけるのと同じ意味を示す。)
で表される化合物1モルに対し下記式(a)
【0012】
【化8】
Figure 0004086668
【0013】
(式(a)中R及びiは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表されるフェノール誘導体を10〜60モルの範囲で縮合反応させた後、加熱減圧下で過剰の該フェノール誘導体を除去し、次いで有機溶剤を加え、結晶を析出させることを特徴とする結晶性フェノール系樹脂の製造方法。、
(3)結晶性フェノール系樹脂の結晶析出工程後、系中に更に水を加える上記(2)記載の結晶性フェノール系樹脂の製造方法
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性フェノール化合物は、式(3)で表されるホルミル基を有するピリジン誘導体とフェノール類とを重縮合して得ることができる。
一般式(3)で表されるピリジン誘導体としては、ピリジンカルボキシアルデヒド、メチルピリジンカルボキシアルデヒド等のアルキル化ピリジンカルボキシアルデヒドなどが挙げられるが、式(3)で表されるピリジン誘導体であるならば、これらに限定されるものではない。式(3)のピリジン誘導体において、ホルミル基の位置は特に制限はなく、置換基の種類によって一義的に決まる場合もあるが、Qが水素原子である場合、2位または4位に置換しているものが好ましい。
【0015】
重縮合反応において使用されるフェノール類としては、ベンゼンに少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に制限はない。具体例としては、フェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の無置換フェノール類、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、アリルフェノール、アミノフェノール等の置換フェノール類等が挙げられる。本発明においては、これらのうちフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールが好ましいが、m−クレゾールを採用すると生成物の軟化点が高くなる傾向が見られる。また、これらフェノール類は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
フェノール類の使用量は、式(3)の化合物1モルに対して通常10〜60モル、好ましくは4.5〜7.0モルである。
【0016】
重縮合反応に際しては、必要により酸触媒もしくは塩基性触媒を用いる。
酸触媒としては種々のものが使用できるが硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機あるいは無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等のフリーデルクラフツ型触媒等が挙げられる。なかでも塩化第二錫、硫酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は触媒の種類により異なるが、式(3)の化合物に対して0.01〜1.1重量%の範囲内で適正量を添加すれば良い。
【0017】
塩基性触媒を用いる場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属塩、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソブチルアミン、ピリジン、ピペリジン等のアミン誘導体、およびジメチルアミノエチルアルコール、ジエチルアミノエチルアルコールなどアミノアルコール誘導体を用いることができるが、なかでも水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミノエチルアルコール、ジエチルアミノエチルアルコールが好ましい。金属水酸化物を用いる場合は固体を用いてもその水溶液を用いてもかまわないが、固体で用いることがより好ましい。これら塩基性触媒の使用量は触媒の種類により異なるが、式(3)の化合物中のホルミル基に対して通常0.1〜2.0当量、好ましくは0.3〜1.2当量の範囲内で適正量を添加すれば良い。
【0018】
反応温度は通常40〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応時間は通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。反応は、全原料を一括投入して昇温しながら行っても、フェノール類を予め一定の温度に保った状態で、これにピリジン誘導体を逐次添加しても良い。また、反応は無溶媒でも実施できるが、反応に直接関与しないトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、あるいはメタノール、エタノールのような低級アルコール等の有機化合物を溶媒として用いることもできる。有機溶剤の使用量としては通常仕込んだフェノール類の重量の10〜300重量%であり、好ましくは20〜250重量%である。
【0019】
反応を確実なものとするため、反応中生成する水はディーンスターク管等を備えた器具を使用し、トルエン等の有機溶媒を用い、共沸脱水により系外へ除去するか、反応に直接関与しない脱水剤を反応系内に共存させて除去しても構わない。
【0020】
反応終了後、酸、もしくは塩基性触媒等の不純物を水洗することによって取り除く。この時、酸もしくは塩基性触媒を中和した後、水洗を行うことが好ましい。その後、未反応フェノール類や溶媒を回収することにより目的とするフェノール系樹脂を得ることができる。なお、塩基性触媒として、アミン誘導体またはアミノアルコール誘導体等の下記する工程で回収可能な化合物を用いた場合、反応終了後、未反応フェノール化合物と共に回収できるので、上記中和・水洗工程が必要ないので好ましい。未反応フェノール類や溶媒の回収は常圧下または減圧下で留去するのが好ましい。また水蒸気を吹き込んで、水蒸気蒸留で留去することも可能である。フェノール類の蒸留回収の温度は通常100〜180℃であり、減圧度は0.1kPa〜25kPa程度とするのがよい。
【0021】
次いで、有機溶剤を加え、可溶分を溶解させる。ここで使用し得る有機溶剤としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の水不溶性溶媒が挙げられる。有機溶剤の使用量は、仕込んだ式(3)で表される化合物の重量の通常10〜300重量%、好ましくは20〜250重量%である。
【0022】
このようにして、可溶分を溶解させながら、溶媒中で残留物を粉砕、ろ過すれば本発明の結晶性フェノール系樹脂を得ることができるが、粉砕工程後に更に撹拌下で水を加えると粒状の結晶塊が溶媒と水の界面で凝集するので、目的物の単離が更に容易になり好ましい。加える水の量は通常上記で溶解に要した有機溶剤の重量に対して50〜400重量%であり、好ましくは100〜250重量%である。次いでこれを減圧ろ過、加熱乾燥することにより目的とする化合物を得ることができる。
なお、生成物中に含まれる未反応のフェノール類および高分子量の式(1)の化合物を十分に除去するため、更に生成物をトルエン、クロロベンゼン等の有機溶媒で結晶の表面を洗浄した後、加熱乾燥することが望ましい。
【0023】
このようにして得られた本発明の結晶性フェノール系樹脂は、式(1)で表されるフェノール系樹脂中に、式(2)の化合物を、通常80重量以上、好ましくは85重量%以上含有する。本発明の結晶性フェノール系樹脂は、アルカリ金属水酸化物の存在下にエピクロルヒドリンと反応させエポキシ樹脂とすることができる。また、感熱インキ材料としても好適に使用可能である。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において部は重量部を意味する。また、軟化点はJIS K−7234に準じた方法で測定した。
【0025】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付け、これに窒素ガスパージを施しながら、メタクレゾール270部、トリエチルアミン55.5部を仕込み、撹拌、溶解させた。その後、加熱還流下(約110〜120℃)、2−ピリジンカルボキシアルデヒド53.5部を120分かけて滴下し、さらに130℃で10時間攪拌した。反応終了後、過剰のメタクレゾールおよびトリエチルアミン等を減圧下に留去することで136.5部の下記式(4)
【0026】
【化9】
Figure 0004086668
【0027】
(式(4)中nは繰り返し数を表す。)
で表されるフェノール樹脂(A)が得られた。得られたフェノール樹脂(A)の軟化点は199.2℃であった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析の結果では、前記式(4)で表される樹脂のうちn=1の構造式で表される成分の割合は55重量%であった。
【0028】
次いで得られた生成物に400部のメチルイソブチルケトンを加え、十分に粉砕および溶解させたところ白色の粉末状結晶が析出した。更にこの懸濁溶液に水を加えたところ、メチルイソブチルケトン溶液と水の界面に比較的粒径が大きい白色固体を集めることができた。これを減圧濾取し、トルエン20部で固体表面を洗浄した後、乾燥し白色粉末状結晶の本発明のフェノール系樹脂52.5部が得られた。GPC分析の結果では前記式(4)で表される樹脂のうちn=1の構造式で表される成分の割合は89重量%であり、融点を測定したところ融点に達する前に232℃で熱分解反応が見られた。
【0029】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付け、これに窒素ガスパージを施しながら、フェノール188部、トリエチルアミン22部を仕込み、撹拌、溶解させた。その後、加熱還流下(約110〜120℃)、4−ピリジンカルボキシアルデヒド21.4部を60分かけて滴下し、さらに130℃で10時間攪拌した。反応終了後、過剰のフェノールおよびトリエチルアミン等を減圧留去することで41部の下記式(5)
【0030】
【化10】
Figure 0004086668
【0031】
(式中nは繰り返し数を表す。)
で表されるフェノール樹脂(B)が得られた。得られたフェノール樹脂(B)はGPC分析の結果において前記式(5)で表される樹脂のうちn=1の構造式で表される成分の割合は74重量%であった。
次いで得られた生成物に100部のメチルイソブチルケトンを加え、十分に粉砕および溶解させ、更にこの懸濁溶液に水を加えたところ、メチルイソブチルケトン溶液および水の界面に比較的粒径が大きい白色固体を集めることができた。これを減圧濾取し、トルエン7部で固体表面を洗浄した後、乾燥し白色粉末状結晶のフェノール樹脂化合物22部が得られた。GPC分析の結果では前記式(5)で表される樹脂のうちn=1の構造式で表される成分の割合は88重量%であり、融点を測定したところ225−230℃であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法は結晶性の高融点化合物を容易に単離することができ、作業現場における効率に優れたものである。本発明の結晶性フェノール系樹脂は、エポキシ樹脂の原料や感熱インキの材料として有用である。

Claims (1)

  1. 下記式(3)
    Figure 0004086668
    (式(3)中、Qはそれぞれ独立して、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。jは1〜3の整数を表す。)
    で表される化合物1モルに対し下記式(a)
    Figure 0004086668
    (式(a)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。iは1〜3の整数を表す。)
    で表されるフェノール誘導体を10〜60モルの範囲で縮合反応させた後、加熱減圧下で過剰の該フェノール誘導体を除去し、次いで有機溶剤を加えて結晶を析出させ、析出した結晶を粉砕後、系中に更に水を加えて溶剤と水の界面で析出した結晶を凝集させることを特徴とする下記式(1)
    Figure 0004086668
    (式(1)中、R、Q、i及びjは式(3)及び式(2)におけるのと同じ意味を示す。nは繰り返し数を表し、1〜15の整数を示す。)
    で表される結晶性フェノール系樹脂の製造方法であって、下記式(2)
    Figure 0004086668
    (式(2)中、R、Q、i及びjは式(3)及び式(2)におけるのと同じ意味を表す。)
    で表される成分が占める割合が85重量%以上である結晶性フェノール系樹脂の製造方法
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