JP4086277B2 - 水溶性担体−抗体複合体の製造方法および使用方法 - Google Patents
水溶性担体−抗体複合体の製造方法および使用方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体を介して、 (1)複数の抗体(または抗体断片)及び標識酵素を結合させたエンザイムイムノアッセイ(EIA)に有用な水溶性担体−抗体複合体、 (2)複数の抗体(または抗体断片)を結合し、さらに結合した抗体(または抗体断片)の芳香環を介して放射性物質を結合させたラジオイムノアッセイ(RIA)に有用な水溶性担体−抗体複合体、 (3)複数の抗体(または抗体断片)を結合させた免疫比濁法(TIA)に有用な水溶性担体−抗体複合体、 に関しそれらの製造方法、またそれらを試薬として用いた免疫学的測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査の分野において、抗原・抗体反応を利用した免疫学的検査方法は、感度、特異性が高いことから、特に体液中の微量物質の定量に多用されてきた。また、これらの免疫学的測定法で、より高感度に、より精度良く測定するために各種の改良が試みられてきた。
【0003】
最近、重合化した抗体や担体上に複数の抗体や標識物質を結合し、それを用いてEIAやTIAなどの免疫測定を行い、その高感度化を図った特許が公開されている。 例えば特許第2848457号では、抗体のオリゴマーを用いるサンドイッチイムノアッセイを行っている。分子量200,000、400,000、500,000〜800,000、800,000以上の反応性を比較すると、オリゴマー化度の増加によりフック効果が減少し、広い測定範囲が得られるとしている。しかし、抗体の架橋は重合度の調製が困難であり、さらに、抗体重合後に標識するため、高分子の酵素を標識すると抗体の抗原結合部位(パラトープ)が隠れるため、キレート剤などの低分子しか標識物質として使用できない。 特開平 9-54092号ではラジカル重合可能な重合性基を抗体に導入し、ラジカル重合した重合化抗体を免疫比濁法に応用している。しかし高分子量の重合体は得られるものの重合度の調製は困難である。 特許第 2704760号では化学的架橋剤を用いて重合したIgGの2〜3量体を用いた免疫比濁法を開示している。しかしグルタルアルデヒドで架橋しているため重合度の調整が困難である。ゲルろ過の結果では原料IgGがかなり残っており、重合度も低いのでそれほど高感度ではない。 特開2000-193665では、抗体が結合した酵素にさらに酵素を結合させてなる酵素抗体結合体を開示しており、抗体1分子に酵素が3分子結合している。この例では、抗体を重合しておらず酵素の結合数も少なく、高感度化はそれほど大きくない。 これらの例のように酵素または抗体同士を架橋剤で重合する方法は一般に、重合度の調製は困難とされている。
【0004】
また、特開2000-88850号では、チオール基を導入した担体とマレイミド基を導入した酵素を結合して酵素複合体を作製し、さらに担体に残存するアミノ基にマレイミド基を導入し、抗体断片を還元して得たチオール基(Fab'-SH)と反応させ、酵素抗体複合体を作製している。しかしこの方法は製造工程が煩雑である。実施例では、ポリ-L-リジンを担体として使用しているが、その水溶性は低い。さらに、製造の工程が多く、反応に要するトータル時間はかなり長い。そのため標識酵素の失活が考えられる。
【0005】
特表平6-509167号ではビニル基を導入した水溶性担体であるデキストラン及びそれを用いた標識抗体を記載している。実施例では、デキストランにジビニルスルホンを反応させ、ビニル基を導入し、ビニル基を介して、抗体と酵素を担体上に結合しているが、ジビニルスルホン基は反応性が低くpHをアルカリにしかつ高温処理が必要である。製造工程は多くなり、反応時間も長く作製した酵素担体抗体複合体の品質に問題があるものと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、これらの問題を解決し、少ない製造工程で短時間でしかも温和な条件で製造でき、抗体や標識酵素の結合率が高く、さらに失活の少ない水溶性担体−抗体複合体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高品質な水溶性担体−抗体複合体を得るために水溶性担体と抗体及び酵素との結合方法について検討し、反応性官能基即ち活性ハロゲン基導入水溶性担体と抗体及び酵素と結合する方法で目的を達成することを見出し、本発明の完成に至ったものである。本発明における水溶性担体−抗体複合体とは、抗体集合体、標識抗体複合体、酵素抗体結合体の総称(以下それぞれの名称で略す)である。即ち、本発明は(1)複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体の活性ハロゲン基と、抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元して得られたチオール基とを、化学結合してなる水溶性の抗体集合体。(2)複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体の活性ハロゲン基と、抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元して得られたチオール基とを、化学結合して抗体集合体とし、更に、結合した抗体を介して標識物質を結合してなる水溶性の標識抗体複合体。(3)抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元し、得られたチオール基、および酵素に導入されたチオール基または酵素に既存するチオール基を、複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体のハロゲン基と化学結合してなる、水溶性の酵素抗体結合体の製造方法および使用方法に関するものである。
【0008】
本発明でいう水溶性担体とは、カルボキシキル基またはアミノ基を導入した多糖類及びポリマーまたは、ポリアミノ酸などである。多糖類としては、デキストラン、デキストリン、アガロース、CM−セルロース、可溶性澱粉などが挙げられる。ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミンなどが、ポリアミノ酸としては、アルギニン、リジン、グルタミン酸などのホモポリマー、リジンとグリシン、リジンとセリンなどのランダムコポリマーが挙げられる。免疫測定の感度を上げるには多数の抗体を担体に結合させることが望ましい。従って、担体はある程度の大きさの分子量即ち1,000以上が必要である。担体の溶解度および粘度、さらに担体に抗体および酵素が結合した水溶性担体−抗体複合体の免疫測定における感度などより、好ましくは50万から300万分子量の担体が適している。ただし上記範囲より大きいあるいは小さい分子量のものでも本発明の目的を達成されるのであれば使用可能である。その具体例としてアミノ基を導入したデキストランが挙げられる。
【0009】
本発明でいう、活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体とは、カルボキシル基またはアミノ基を導入した多糖類およびポリマーまたは、ポリアミノ酸などに活性ハロゲン基を導入する架橋剤を結合することにより得られる。担体のアミノ基に活性ハロゲン基を導入するには、N−スクシンイミジルヨードアセテート(N-Succinimidyl iodoacetate SIA)、 N−スクシンイミジル4−ヨードアセチルアミノベンゾエート(N-Succinimidyl[4-iodoacetyl]aminobennzoate SIAB)、スルホスクシンイミジル4−ヨードアセチルアミノベンゾエート(Sulfosuccinimidyl[4-iodoacetyl]aminobennzoate Sulfo-SIAB)などを用いる方法が知られている。 これらの試薬とアミノ基を導入した水溶性担体をpH7以上で混合することで活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体が得られる。また、ヨード酢酸(Iodoacetic acid)、3-ヨードプロピオン酸(3-Iodopropionic acid)、6-ブロモヘキサン酸(6-Bromohexanoic acid)などとアミノ基を導入した水溶性担体をカルボジイミド反応により活性ハロゲン基を導入することもできる。カルボキシル基を導入した水溶性担体とヨード酢酸ヒドラジド(Iodoacetic acid hydrazide)、ヨード酢酸エチルアミン(Iodoacetic acid ethylamine)などとカルボジイミド反応により活性ハロゲン基を導入することもできる。これらの反応により担体1分子あたり数十から数百個の活性ハロゲン基の導入が可能である。
【0010】
本発明でいう抗体とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および抗体断片が適している。複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体と抗体上のジスルフィド基を2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどで還元することによりチオール化した抗体と反応させることにより抗体集合体を得る。 活性ハロゲン基とチオール基との反応により安定なチオエーテル結合が形成される。反応は適当な緩衝液媒体中pH7.5以上好ましくは7.5〜8.5の範囲内のpH条件で行う。緩衝液はpH7.5以上を維持できしかも活性ハロゲン基と反応しないものであればよい。またこの反応は4〜37℃範囲の温度で行うことができる。 この反応は温和な条件下で進みしかも結合率が高い。従って、未反応の抗体がほとんど出ず、さらなる精製工程も必要ない。さらに抗体活性も維持することが可能である。また、この反応において担体の分子量および抗体の添加量により抗体集合体の分子量を容易に調整できる。即ち、担体に抗体を反応させる際に抗体量を変化すると、抗体量に比例して抗体集合体の分子量は変化し、逆に担体の分子量を変化すると、担体の分子量に比例して抗体集合体の分子量を変化させることが可能である。親和性の弱い抗体の場合、水溶性坦体に結合する抗体の量を増やすことで抗体集合体の抗原抗体反応性を上げることが可能であり、また親和性が強い場合は、抗体量を減らし、酵素を増量し酵素活性を増幅させることが可能である。EIAの場合、抗体断片、特にF(ab')2を用いて、酵素抗体結合体を作製するとブランクが低く、非特異反応を抑制した測定試薬とすることができる。TIAの場合、抗体をそのまま用いて、抗体集合体を作製した方が高感度である。F(ab')2を用いて抗体集合体を作製することや、水溶性担体への抗体結合量を調整することで抗原抗体反応性を制御することが可能である。
【0011】
本発明では抗体集合体に酵素を結合させることによりEIA用の酵素抗体結合体を製造することができる。抗体集合体に結合させる酵素はEIA用の標識酵素として用いられている酵素であれば特に制限はない。具体的には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。酵素にチオール基を導入するには、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート、S-アセチルメルカプトコハク酸無水物、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)などを用いる方法が知られている。これらの試薬は酵素のアミノ基と反応しブロックされたチオール基が酵素に導入される。その後、前二試薬を用いた場合にはヒドロキシルアミン、後者(SPDP)を用いた場合にはDTTで処理するすることによりチオール基を生成する。本発明の酵素抗体結合体は複数の活性ハロゲン基を導入した抗体集合体と酵素に導入されたチオール基またははじめから酵素に存在するチオール基との反応により得ることができる。この反応は温和な条件下で行われるため酵素活性の失活もない。また反応は速く結合率が高い。しかも、作製した水溶性担体−抗体複合体は分解することなく長期保存に耐えうる。従って、本発明の酵素抗体結合体は従来のマレイミド基で製造した酵素抗体結合体に比べ安定性において優れておりその詳細を実施例で示す。この反応において抗体集合体の分子量と添加酵素量により酵素抗体結合体の分子量を容易に調整できる。即ち、酵素抗体結合体の分子量を調整することによりEIAにおける所望の感度を得ることが可能である。
【0012】
本発明でいう標識抗体複合体での標識物質とは、発色性物質、発蛍光性物質、ルミノール、ルシフェリン等の発光性物質、放射性物質である。その例として、放射性物質125Iが挙げられる。抗体集合体に放射性物質125Iで標識するにはRIAで通常用いられているクロラミンT法により容易に標識できる。抗体集合体の抗体量により125I標識率を容易に調整ができまたRIA測定感度の調整も可能である。
【0013】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
実施例1 水溶性坦体(アミノデキストラン)への活性ハロゲン基の導入 参考文献1)の方法により、デキストランT2000(ファルマシア製)にアミノ基を導入した。アミノデキストラン6mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)300μlに溶解し、ジメチルホルムアミド中に10mg/mlに溶解したN-(スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB、PIERCE社製)を100μl加え、37℃で1時間反応させた。反応後、PD-10(ファルマシア製)でゲル濾過し、ヨード基導入デキストラン部分を回収した。参考文献2)の方法により、ヨード基の導入数を定量した。ヨード基は、デキストラン1分子に256個導入されていた。
【0015】
実施例2 抗体断片F(ab')2の還元によるFab'-SHの作製 モノクローナル抗前立腺特異抗原(PSA)抗体N23(自家製)IgGを参考文献3)の方法によりペプシン消化し、F(ab')2を得た。10mg/mlのF(ab')2 1mlに0.2Mの2-メルカプトエチルアミン(東京化成社製)100μlを添加し、37℃で1.5時間反応させた。反応後、PD-10(ファルマシア製)でゲル濾過し、Fab'-SH部分を回収した。
【0016】
実施例3 西洋ワサビペルオキシダーゼへのSH基の導入 10mgの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP Type I-C、東洋紡製)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)1mlに溶解し、ジメチルホルムアミド中に10mg/mlに溶解したN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(PIERCE社製)100μlを加えた。30℃で1時間反応させた後、1M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸緩衝(pH8.0) 200μl、1M塩酸ヒドロキシルアミン溶液を100μl、0.1Mエチレンジアミン四酢酸−0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液を50μl順次添加し、30℃で10分反応させた。反応後、PD-10(ファルマシア製)にてゲルろ過し、SH基導入HRP部分を回収した。参考文献4)の方法により、チオール基の導入数を定量した。チオール基は、HRP1分子に2個導入されていた。
【0017】
実施例4 酵素抗体結合体の作製 実施例1で調製した1mgのヨード基導入デキストランを10mMEDTA-0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.3)500μlに溶解し、実施例2で調製した0.23mgのモノクローナル抗PSA抗体N23(自家製)Fab'-SHを添加し、30℃で1時間反応させた。さらに、実施例3で調製した4mgのチオール基導入HRPを反応液に添加し、30℃で1時間反応させた。反応液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、Superdex 200 HR 10/30(ファルマシア社製)でゲルろ過すると、ボイドピークの酵素抗体結合体部分と分子量40,000付近に未反応のHRPのピークが確認された。Fab'-SHは回収されなかった。ボイドピークの酵素抗体結合体を回収し、280nmと403nmの吸光度を測定し、Fab'およびHRPの濃度を求めた。また、参考文献5)のフェノール-硫酸反応によりデキストランを定量した。Fab'はデキストラン1分子あたり10個、HRPは134個それぞれ導入されており、平均分子量は7,820,000であった。
【0018】
実施例5 本発明の酵素抗体結合体を用いたPSAの酵素免疫測定 0.15M NaCl添加20mMリン酸緩衝液pH7.2(PBS)に、モノクローナル抗PSA抗体P2(自家製) IgGを1.0μg/mlとなるよう溶解し、市販のELISA用96穴マイクロタイタープレート(Maxisorp F96、NUNC社製、商標)の各ウェルに、100μlずつ分注し、37℃で2時間インキュベートした。各ウェルをPBSで5回洗浄後、2%BSA(SIGMA社製)を300μl加え、室温で3時間インキュベートし、プレートのブロッキングを行った。各濃度のPSA(0〜500pg/ml)を各々50μlずつ、ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベーションした。反応終了後、 PBSで3回洗浄した。 次に、実施例4で作製した酵素抗体結合体を2%BSA添加PBSで希釈しFab'濃度換算で0.2μg/mlとした。各ウェルに100μlずつ加え、37℃で30分インキュベーションした。反応終了後、0.01%Tween20添加PBSで3回洗浄した。次に、発色剤として、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(和光純薬工業社製)を添加した0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を100μlずつ加え、37℃で15分間インキュベーションした。2N-H2SO4を100μlずつ加えることによって反応停止させ、波長492nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。結果を図1に示した。
【0019】
比較例1 従来法によるHRP標識抗体を使用したPSAの酵素免疫測定法 参考文献6)に記載の方法により、実施例2で作製したモノクローナル抗PSA抗体N23(自家製)Fab'-SHを、マレイミド基導入HRPと結合させ、HRP標識抗体を作製した。平均分子量86,000で、Fab'とHRPは1:1で結合していた。実施例5の酵素標識抗体の代わりに従来法による標識抗体を用いること以外は全く同様の方法で、PSAの測定を行った。結果を図1に示した。
【0020】
実施例6 本発明の酵素抗体結合体を用いたPSAの化学発光測定 モノクローナル抗PSA抗体P2(自家製) IgGをPBSで希釈して、1.0μg/mlとした抗体溶液中にポリスチレンビーズ(直径1/4インチ、積水化学社製)を浸漬し37℃で2時間放置した。PBSで洗浄後、1%BSA含有PBSに37℃で4時間浸漬して、固相化抗体を得た。 実施例4で作製されたモノクローナル抗PSA抗体N23(自家製)酵素抗体結合体2.5μg/mlまたは、比較例1で作製された従来法によるHRP標識抗体2.5μg/mlを用いて、各濃度のPSA(0〜500pg/ml)を測定した。上記の固相化抗体(ポリスチレンビーズ)を用い、全自動化学発光酵素免疫測定装置AL-1000(栄研化学社製)により発光強度を測定した。プロトコールは、ルミスポット‘栄研’PSA(栄研化学社製、商標)の取扱い説明書に従った。結果を図2に示した。
【0021】
実施例7 抗体と酵素の結合比率を変えた酵素抗体結合体の作製 実施例4の方法において、Fab'-SHの添加量を0.23mgから0.46mg、1.15mgに増量した以外は全く同様の方法で酵素抗体結合体を作製した。Fab'とHRPの結合比率および平均分子量を表1に示した。 また、実施例1の方法において、デキストランT2000(ファルマシア製)の代わりにデキストランT500(ファルマシア製)を用いた以外は全く同様の方法でヨード基導入デキストランを作製した。参考文献2)の方法により、ヨード基の導入数を定量した。ヨード基は、デキストラン1分子に68個導入されていた。実施例4の方法において、ヨード基導入デキストランT2000の代わりに、上記のヨードド基導入デキストランT500を用いた以外は、全く同様な方法で酵素抗体結合体を作製した。Fab'とHRPの結合比率および平均分子量を表1に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例8 酵素の結合量を変えた酵素抗体結合体の作製とELISAの反応性 実施例4の方法において、チオール基導入HRPの添加量を0.8mgまたは1.6mgに変えた以外はまったく同様の方法で酵素抗体結合体を作製した。チオール基導入HRPの添加量が0.8mgの場合、Fab'はデキストラン1分子あたり10個、HRPは38個それぞれ導入されており、平均分子量は3,980,000であった。チオール基導入HRPの添加量が1.6mgの場合、Fab'はデキストラン1分子あたり10個、HRPは76個それぞれ導入されており、平均分子量は4,500,000であった。この2種類の酵素抗体結合体を用いて、実施例5に従い酵素免疫測定を行った。結果を図3に示した。
【0024】
比較例2 架橋剤Sulfo-HMCSを用いた、酵素抗体結合体の作製 実施例1の方法においてSIABの代わりに、N-(8-マレイミドカプリルオキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩(Sulfo-HMCS、同仁化学社製)を用いる以外はまったく同様の方法でマレイミド基導入デキストランを作製した。実施例4の方法において、ヨード基導入デキストランの代わりにマレイミド基導入デキストランを用いる以外はまったく同様の方法で酵素抗体結合体を作製した。
【0025】
比較例3 架橋剤SPDPを用いた、酵素抗体結合体の作製 実施例1の方法においてSIABの代わりに、N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP、PIERCE社製)を用いる以外はまったく同様の方法でピリジルジスルフィド基導入デキストランを作製した。実施例4の方法において、ヨード基導入デキストランの代わりにピリジルジスルフィド基導入デキストランを用いる以外はまったく同様の方法で酵素抗体結合体を作製した。
【0026】
実施例9 酵素抗体結合体の安定性 実施例4で作製した本発明の酵素抗体結合体、比較例1、2および3で作製した酵素抗体結合体を2%BSA添加PBS(pH7.2)で希釈しFab'濃度換算で0.2μg/mlとした。各酵素抗体結合体をプラスチック容器に1mlずつ分注し、4℃および37℃で1週間保存した。実施例5の方法においてPSAの酵素免疫測定を行った。37℃保存における残存活性を表2に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例10 抗体の還元処理 モノクローナル抗PSA抗体N23(自家製) IgGをPBSで希釈し、10mg/mlとした。IgG溶液1mlに0.2Mの2-メルカプトエチルアミン(2-ME、東京化成社製)100μlを添加し、37℃で1.5時間反応させた。反応後、PD-10(ファルマシア製)によりゲル濾過を行い、抗体部分を回収した。
【0029】
実施例11 抗体集合体の作製 実施例1で調製した1mgのヨード基導入デキストランを10mM EDTA-0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.3)500μlに溶解し、実施例10で調製した2.3mgのモノクローナル抗PSA抗体N23(自家製)の2-ME処理した抗体を添加し、30℃で1時間反応させた。反応液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、Superdex 200 HR 10/30(ファルマシア社製)でゲルろ過すると、ボイドピークの架橋抗体のピークが確認された。ボイドピークの抗体集合体を回収後、280nmの吸光度を測定し、IgGの濃度を求めた。また、参考文献5)のフェノール-硫酸反応によりデキストランを定量した。IgGはデキストラン1分子あたり29個導入されており、平均分子量は6,350,000であった。
【0030】
実施例12 放射性物質標識抗体複合体の作製 実施例11で作製した、抗体集合体(1mg/ml) 50μlをガラスチューブに取り、0.5Mリン酸緩衝液(pH7.4) 20μl、Na125I 11.1MBqを加えた。さらに、クロラミンT(1mg/ml) 20μlを加え、室温で1分間反応させた。重亜硫酸ナトリウム(2.5mg/ml)50μl加えた。Sephadex G-50 Fine(ファルマシア社製)でゲル濾過、精製し125I標識抗体複合体を得た。
【0031】
実施例13 放射性物質標識抗体複合体を用いたラジオイムノアッセイ AbビーズPSA‘栄研’(栄研化学社製)キットおよびキットの125I標識抗体の代わりに実施例12で作製された125I標識抗体複合体(トータルカウント26,784cpmに調整した)を用いて各濃度のPSA(0〜500pg/ml)をキットの取扱説明書に従い測定した。実施例12で作製された125I標識抗体複合体はキットの125I標識抗体より高感度を示した。
【0032】
実施例14 抗体の還元処理 ポリクローナル抗ヒトIgG抗体 LA-G(自家製) IgGをPBSで希釈し、10mg/mlとした。IgG溶液1mlに0.2Mの2-メルカプトエチルアミン(2-ME、東京化成社製)100μlを添加し、37℃で1.5時間反応させた。反応後、PD-10(ファルマシア製)によりゲル濾過を行い、抗体部分を回収した。
【0033】
実施例15 抗体集合体の作製 実施例1で調製した1mgのヨード基導入デキストランを10mM EDTA-0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.3)500μlに溶解し、実施例14で調製した5.3mgの2-ME処理した抗体を添加し、30℃で1時間反応させた。反応液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、Superdex 200 HR 10/30(ファルマシア社製)でゲルろ過すると、ボイドピークの抗体集合体のピークが確認された。未反応の抗体は回収されなかった。ボイドピークの抗体集合体部分を回収し、280nmの吸光度を測定しIgGの濃度を求めた。また、参考文献5)のフェノール-硫酸反応によりデキストランを定量した。IgGはデキストラン1分子あたり34個導入されており、平均分子量は7,100,000であった。図4にゲルろ過パターンを示した。
【0034】
比較例4 架橋剤ジスクシンイミジルスベレート(DSS)を用いた抗体の重合化 ポリクローナル抗ヒトIgG抗体 LA-G(自家製) IgG 5mg(自家製)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2) 1mlに溶解し、ジメチルホルムアミド中に3mg/mlに溶解したDSS(PIERCE社製)を200μl加え、30℃で1時間反応させた。1M Tris(pH7.5)100μl添加し反応を停止した。反応液をSuperdex 200 HR 10/30(ファルマシア社製)でゲルろ過するとさまざまな分子量を有する重合化抗体と未反応のIgGが回収された。図5にゲルろ過パターンを示した。
【0035】
実施例16 抗体集合体の免疫比濁法(TIA) 実施例15で作製したポリクローナル抗ヒトIgG抗体の抗体集合体(本発明)を使用して、免疫比濁法により抗原ヒトIgGとの免疫凝集能を調べた。また、比較として未処理のポリクローナル抗ヒトIgG抗体を使用した免疫比濁法を行った。第1試薬には2%デキストランT2000(ファルマシア社製)および2%PEG#6,000(キシダ化学社製)含有のPBS(pH7.2)を用いた。本発明の抗体集合体および未処理の抗体を2mg/ml にPBSで希釈して第2試薬とした。測定には7070型日立自動分析装置を使用し、標準IgG溶液20μlに、第1試薬400μlを加え、37℃、5分間インキュベートした。ついで、第2試薬を100μl添加し、37℃、5分間インキュベートした。その後、主波長340nm、副波長700nmにおける吸光度変化量を測定した。結果を図6に示した。
【0036】
参考文献1)「Bioconjugate Technique」 Academic Press発行(1996年)p623 参考文献2)「エンザイムイムノアッセイ 生化学実験法11」 東京化学同人発行(1989年)p236 参考文献3)「エンザイムイムノアッセイ 生化学実験法11」 東京化学同人発行(1989年)p106 参考文献4)「エンザイムイムノアッセイ 生化学実験法11」 東京化学同人発行(1989年)p227 参考文献5)「生化学実験講座4 糖質の化学(下) 東京化学同人発行(1979年)p370 参考文献6)「エンザイムイムノアッセイ 生化学実験法11」 東京化学同人発行(1989年)p237
【0037】
【発明の効果】
本発明の水溶性担体-抗体複合体は、EIAにおける酵素標識抗体として、RIAの標識抗体として、免疫比濁法の抗体として用いることにより、感度が高く、低い抗原濃度範囲で良好な結果を得ることが可能になる。 温和な条件下で水溶性担体-抗体複合体は製造できるので抗体並びに酵素の失活が少なく安定性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 EIAにおいて従来法より高感度であることを示す図である。
【図2】 化学発光測定において従来法より高感度であることを示す図である。
【図3】 HRP標識抗体の結合比率による反応性を示す図である。
【図4】 抗体集合体のゲルろ過を示す図である。
【図5】 架橋剤ジスクシンイミジルスペレートを用いた重合化抗体のゲル濾過を示す図である。
【図6】 TIAにおいて従来法より高感度であることを示す図である。
Claims (12)
- 水溶性担体として平均分子量が50万〜300万のカルボキシル基またはアミノ基を導入したデキストランを用い、抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元し、得られたチオール基を複数の活性ハロゲン基を導入した前記水溶性担体のハロゲン基と化学結合してなる水溶性担体−抗体複合体。
- 請求項1に記載の水溶性担体−抗体複合体の抗体あるいは抗体断片を介して標識物質を結合してなる水溶性担体−抗体複合体。
- 抗体断片がF(ab’)2、Facbであることを特徴とする請求項1に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 抗体が、1種類以上のモノクローナル抗体からなることを特徴とする請求項1に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 標識物質が酵素、発色性物質、発蛍光性物質、ルミノール、ルシフェリン等の発光性物質、放射性物質である請求項2項に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 酵素が、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 酵素に導入されたチオール基または酵素に既存するチオール基を介して更に酵素を化学結合してなる請求項7に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 放射性物質が、125Iである請求項6に記載の水溶性担体−抗体複合体。
- 以下の工程を含む水溶性担体−抗体複合体の製造方法 工程1:抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元し、得られたチオール基を、複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体のハロゲン基と化学結合する。工程2:抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元し、得られたチオール基を、複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体のハロゲン基と化学結合し、更に結合した抗体を介して標識物質を結合する。 工程3:抗体あるいは抗体断片上のジスルフィド結合を選択的に還元し、得られたチオール基、および酵素に導入されたチオール基または酵素に既存するチオール基を、複数の活性ハロゲン基を導入した水溶性坦体のハロゲン基と化学結合する。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の水溶性担体−抗体複合体を含有する免疫学的測定用試薬。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の水溶性担体−抗体複合体を使用する免疫学的測定方法。
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