JP4085528B2 - 暖房用熱交換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気発熱体を一体化した暖房用熱交換器に関するもので、車両エンジン(内燃機関)にて加熱された温水(エンジン冷却水)を熱源として空気を加熱する車両暖房用熱交換器に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の電気発熱体を一体化した熱交換器は、特開平5−69732号公報において提案されている。この従来装置によれば、温水(エンジン冷却水)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器に電気発熱体を一体化することにより、エンジン始動直後のように温水温度が低いときには、電気発熱体への通電により、電気発熱体の発生熱を空気中に放熱して空気を加熱することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報記載の従来装置では、発熱体素子と電極板から構成される電気発熱体を暖房用熱交換器のコア部と一体ろう付けしているので、高温のろう付け温度(アルミニュウムのろう付けの場合、600°C程度)の雰囲気に発熱体が晒される。このため、電気発熱体の電気的特性が著しく損なわれるという不具合がある。
【0004】
これに対し、本出願人は、先に、特願平9−215042号明細書において、熱交換器のコア部が偏平チューブとコルゲートフィンとを交互に複数ずつ積層した構造を有していることを利用して、両隣接コルゲートフィンの間に偏平チューブに代えて断面U字形状の保持板A(図14参照)をろう付けした後、このろう付け温度の低下した状態で当該保持板の両対向板部A1、A2間に電気発熱体Bを介装する構造を提案した。
【0005】
しかし、これによれば、電気発熱体Bの電気的特性を良好に確保できるものの、保持板Aの断面U字状部A3が弾性を有する。このため、電気発熱体Bを保持板Aの両対向板部A1、A2間に介装した後、当該両板部を、図15にて示す矢印方向に、加圧により、断面U字状部A3の弾性に抗して電気発熱体Bに密着させようとしても、断面U字状部A3の曲率半径が大きいと、図14において形成されていた両対向板部A1、A2と電気発熱体Bとの間の隙間A4のうち、両対向板部A1、A2が電気発熱体Bと密着しない領域(図15にて符号A5参照)として残留する。
【0006】
このため、保持板を介する電気発熱体からコア部への熱伝達が良好にはなされ難いという不具合が発生する。
【0007】
また、保持板の両板部への加圧は、通常、コア部を帯状締結部材により挟持することでなされるため、帯状締結部材が余分に必要となるという不具合もある。
【0008】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、電気発熱体の電気的特性を損なうことなく、電気発熱体を暖房用熱交換器のコア部に容易にかつ熱伝達良好に組付可能とすることを目的とする。
【0009】
また、本発明は、余分な構成部材を採用することなくかつ電気発熱体の電気的特性を損なうことなく、電気発熱体を暖房用熱交換器のコア部に容易にかつ熱伝達良好に組付可能とすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、偏平チューブ(6)とコルゲートフィン(7)との組み合わせからなる熱交換用コア部(3)の一部の部位に、電気発熱体(9)を設置する暖房用熱交換器において、
熱交換用コア部(3)のうち、電気発熱体(9)が設置される部位では、隣接するコルゲートフィン(7)の折り曲げ頂部相互の間に、V字形状の折り曲げ部からなる閉塞端部(10a、10e)を有するように形成した断面二つ折り形状の保持板(10)を、その閉塞端部(10a、10e)及び他端側の開口部(10b)にて前記偏平チューブへの熱源流体の流通方向に向くように、偏平チューブ(6)の長手方向に沿い長手状に配置し、
保持板(10)の対向する両板部(10c、10d)相互の間に所定間隔(L1 )を設定した状態で、これら両板部(10c、10d)をそれぞれコルゲートフィン(7)の折り曲げ頂部に接合し、
保持板(10)の内部に開口部(10b)から電気発熱体(9)を電気絶縁して組み付けたことを特徴としている。
【0011】
これによると、保持板の閉塞端部が断面V字形状に形成されているから、適宜な締結部材による締付け力が熱交換用コア部に作用したとき、閉塞端部が両板部を近づける方向に容易に弾性変形し、当該両板部がその全面に亘り電気発熱体の両面に一様に密着する。
【0012】
従って、両板部の各全面を介する電気発熱体からコア部への熱伝達を良好に確保しつつ、電気発熱体を保持板の内側に確実に保持固定できる。
【0013】
また、コルゲートフィンに予め保持板を接合しておき、熱交換用コア部の一体ろう付け終了後に保持板の内部に電気発熱体を組み付けることができるので、熱交換用コア部のろう付けによって電気発熱体の電気的特性を損なう恐れが全くないことは勿論である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明のように、保持板の閉塞端部は、前記両板部の内方或いは外方へ向け断面V字形状に形成されておれば、請求項1に記載の発明の作用効果を確実に達成できる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、閉塞端部の頂部の曲率半径は、保持板(10)の板厚の2倍以下に設定されていれば、閉塞端部が両板部を近づける方向により一層容易に弾性変形し、当該両板部がその全面に亘り電気発熱体の両面により一層一様に密着する。その結果、請求項1又は2に記載の発明の作用効果をより一層向上できる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明では、閉塞端部と両板部との各境界部及び閉塞端部には、薄肉部(12a、12b、12c)が形成されている。
【0017】
これによると、閉塞端部が両板部を近づける方向により一層容易に弾性変形し、当該両板部がその全面に亘り電気発熱体の両面により一層一様に密着する。その結果、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明の作用効果をより一層向上できる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1〜図8は本発明を適用した車両暖房用熱交換器の第1実施形態を示すもので、図1において、暖房用熱交換器Hは、温水入口側タンク1と、温水出口側タンク2と、この両タンク1、2の間に設けられた熱交換用コア部3とを有している。
【0032】
温水入口側タンク1には図示しない車両エンジンからの温水(エンジン冷却水)が流入する入口パイプ4が設けられ、温水出口側タンク2には温水を外部へ流出させ、エンジン側に還流させる出口パイプ5が設けられている。なお、本例の熱交換器は図1に示すように左右対称形であるので、温水入口側タンク1と温水出口側タンク2とを左右逆転してもよい。
【0033】
各タンク1、2はそれぞれタンク本体部1a、2aと、このタンク本体部1a、2aの開口端面を閉じるシートメタル1b、2bとからなり、図1の上下方向が長手方向となる周知のタンク構造である。そして、シートメタル1b、2bには偏平状のチューブ挿入穴(図示せず)が多数個、図1の上下方向に1列または複数列並んで形成されている。
【0034】
熱交換用コア部3は暖房用空気の流れ方向(図1の矢印E方向)に対して平行な偏平状に形成された偏平チューブ6を多数個図1の上下方向に並列配置している。そして、この多数個の偏平チューブ6相互の間に波形状に成形されたコルゲートフィン(フィン部材)7を配置し接合している。このコルゲートフィン7には周知のごとく暖房用空気の流れ方向Eに対して所定角度で斜めに多数のルーバ(図示せず)が切り起こし成形されており、このルーバの成形によりフィン熱伝達率を向上させている。
【0035】
偏平チューブ6の両端開口部はシートメタル1b、2bのチューブ挿入穴内にそれぞれ挿通され、接合される。また、コア部3の最外側(図1の上下両端部)のコルゲートフィン7のさらに外側にはサイドプレート8a、8bが配設され、このサイドプレート8a、8bは最外側のコルゲートフィン7およびシートメタル1b、2bに接合される。
【0036】
さらに、熱交換用コア部3の一部位に、偏平チューブ6の代わりに、電気発熱体9を設置している。図1の例では、熱交換用コア部3の4箇所(斜線部)に電気発熱体9を等間隔で設置している。
【0037】
そして、熱交換用コア部3のうち、電気発熱体9が設置される部位では、隣接する両コルゲートフィン7の各折り曲げ頂部の間に、偏平チューブ6の長手方向に延びる断面二つ折り形状の保持板10を配置している。図2、図3に示すように、この保持板10の折り曲げ部からなる閉塞端部10aが熱交換用コア部3の空気入口側に向き、他端側の開口部10bが熱交換用コア部3の空気出口側に向くように、保持板10の配置方向が設定されている。
【0038】
また、保持板10は、その対向する両平板部10c、10d相互の間に所定間隔L1 を設定し、その状態で、これら両平板部10c、10dをそれぞれコルゲートフィン7の折り曲げ頂部に接合するようにしてある。
【0039】
ここで、保持板10の折り曲げ部からなる閉塞端部10aの形状寸法について図2〜図6を参照して詳細に説明する。
【0040】
閉塞端部10aは、熱交換用コア部3の空気入口側に向け凸な断面V字形状に形成されており、この閉塞端部10aの頂部11の曲率半径Rは、次のように設定されている。
【0041】
即ち、電気発熱体9を、図5にて示すごとく、保持板10の両平板部10c、10d間に挿入する。このとき、両平板部10c、10dの各内表面と電気発熱体9の両外表面との間にはそれぞれ隙間gが形成される。
【0042】
そこで、その後、両平板部10c、10d間に図6にて示すような加圧力を付与したとき、当該両平板部10c、10dが、図6にて示すごとく、その各全面に亘り均等に弾性変形して、電気発熱体9の両面全体に亘り均一に密着し得るように、保持板10の板厚の2倍以下の値に設定されている。
【0043】
なお、保持板10の全体の厚さL2 は、偏平チューブ6の厚さL3 と略同一に設定してある。このため、偏平チューブ6の代わりに保持板10を隣接するコルゲートフィン7相互の間に設置できる。図3において、Dはコア部厚さで、空気流れ方向Eの偏平チューブ6およびコルゲートフィン7の寸法である。
【0044】
ところで、本例における熱交換器では、上記各構成部品1〜8bのすべてがアルミニュウム(アルミニュウム合金も含む)にて成形されており、また、保持板10も同様にアルミニュウムにて成形されている。保持板10は板厚0.1〜0.5mm程度の金属薄板であり、また、当該保持板10の幅(暖房空気の流れ方向Eの幅)はコア部厚さDと略同一であり、また、保持板10の長手方向の寸法(図1の左右方向の寸法)はシートメタル1b、2b間の寸法と略同一である。
【0045】
電気発熱体9は、保持板10の両平板部10c、10d間に開口部10bから挿入されて当該保持板10の内部に保持される。ここで、電気発熱体9は保持板10に対して後述の構造により電気的に絶縁して保持される。
【0046】
電気発熱体9は図2、図3及び図7にて示す構造になっている。この電気発熱体9は、板状の発熱体素子9aと、この発熱体素子9aの表裏両面に配置された細長の平板状の電極板9b、9cとからなる3層のサンドウイッチ構造を有しており、両電極板9b、9cは、その全周に亘り電気的絶縁材料からなる被覆部材9dにより発熱体素子9aと共に被覆されている。
【0047】
ここで、発熱体素子9aは所定の設定温度(例えば、200°C付近)T0 にて抵抗値が急増する正の抵抗温度特性を有する抵抗体材料(例えば、チタン酸バリウム)からなるPTCヒータ素子であり、その板厚は1.0〜2.0mm程度である。
【0048】
発熱体素子9aの両電極板9b、9cはアルミニュウム、銅、ステンレス等の導電金属材から成形されており、その板厚は0.1〜0.5mm程度である。この両電極板9b、9cの長手方向の寸法(図1の左右方向の寸法)は保持板10と略同一である。そして、この両電極板9b、9cの長手方向において発熱体素子9aは複数箇所(図1の例では4箇所)配置されている。発熱体素子9aと両電極板9b、9cは互いに圧接することにより、両者間の電気的導通を得るようにしてある。
【0049】
被覆部材9dが保持板10の両平板部10c、10dの内側面に圧接するようにして、電気発熱体9は保持板10の内部に組み付けられる。ここで、被覆部材9dは保持板10と両電極板9b、9cとの間の電気的な絶縁作用を果たすものであるが、発熱体素子9aの熱を保持板10に伝導する役割を果たすため、保持板10と両電極板9b、9cとの間の被覆部材9dの厚さt1 は25μ〜100μ程度の薄膜状にして、良好な熱伝導作用を確保している。
【0050】
一方、発熱体素子9aの側方における被覆部材9dの厚さt2 は1〜2mm程度に厚くして、発熱体素子9aの保護を図るようにしてある。被覆部材9dの具体的材質としては、高耐熱性の樹脂(例えば、ポリイミド樹脂等)が好ましい。
【0051】
上記電極板9bは正極側電極板であり、また、上記電極板9cは負極側電極板であり、それぞれ外部回路との電気接続用の端子部9e、9fが一体成形されている。この両端子部9e、9fは本例では熱交換用コア部3の後方側(空気流れ方向Eの下流側)に突出している。また、正極側電極板9bの端子部9eは図1に示すように正極側電極板9bの右側端部に形成され、負極側電極板9cの端子部9fは負極側電極板9cの左側端部に形成されている。また、図示しないが、端子部9e、9fは、左右いずれかの同一方向に形成されていてもよい。
【0052】
なお、各電気発熱体9の電極板9b、9cに一体成形された端子部9e、9fには、図示しない外部制御回路が電気接続され、この外部制御回路を介して車載電源から各電気発熱体9に通電されるようになっている。ここで、端子部9e、9fは一体成形でなく溶接等により電極板9b、9cに接合してもよいことはもちろんである。
【0053】
帯状の両締結部材12、13は、ステンレス又はばね鋼に表面処理されたような耐食性に優れた金属材料からなるもので、これら両締結部材12、13は、図1にて示すごとく、熱交換用コア部3の空気入口側の面および空気出口側の面の両方又は空気出口側のみに配置される。
【0054】
両締結部材12、13はその両端に折り曲げ形状からなる引掛け部を有しており、これら両締結部材12、13は、その各両引掛け部を、上下のサイドプレート8a、8bの長手方向の中央部に形成された係止溝部8c、8dに引掛けて、上下のサイドプレート8a、8bの間に装着される。これら締結部材12、13の装着により、電気発熱体9を保持板10の両平板部10c、10d間に圧接保持させる締付け力を熱交換用コア部3に対して作用させる。なお、図1では、コア部3の幅方向(図1の左右方向)の中央の1箇所のみに締結部材12、13を装着しているが、コア部3の幅方向の複数箇所に両締結部材12、13を装着してもよいことはいうまでもない。
【0055】
また、保持板10はV字形状の折り曲げ部からなる閉塞端部10aを有しているから、両締結部材12、13の装着を上述のように行うことで、保持板10の両平板部10c、10dをその全面に亘り電気発熱体9の両面に密着させつつ、電気発熱体9の保持固定が可能となる。
【0056】
図8は本第1実施形態の暖房用熱交換器Hを適用した車両用空調装置の概要を示す。
【0057】
この空調装置においては、車室内空気または車室外空気が、樹脂製の空調ケース14の上流側に配置された電動送風ファン15により吸い込まれて、冷凍サイクルの蒸発器(冷房用熱交換器)16に送風され、ここで送風空気は冷却、除湿される。次に、この冷風は、エアミックスドア17により暖房用熱交換器Hを通過する流れと、バイパス通路18を通過する流れとに分岐され、暖房用熱交換器Hで加熱される温風とバイパス通路18を通過する冷風の風量割合をエアミックスドア17の回動量により調整して、車室内への吹出空気温度を制御するようになっている。
【0058】
なお、エアミックスドア17を廃止して、暖房用熱交換器Hに循環する温水量を温水制御弁により制御して吹出空気温度を制御するタイプの車両用空調装置に対しても本発明は同様に適用できる。
【0059】
次に、上述の暖房用熱交換器の製造方法を説明する。
【0060】
まず、最初に図1に示す熱交換器構成を組み付けるコア組付工程を行う。すなわち、熱交換用コア部3のチューブ6とコルゲートフィン7を交互に積層するとともに、熱交換用コア部3のうち、電気発熱体9が設置される部位(図1の4箇所の斜線部)では、隣接する両コルゲートフィン7の折り曲げ頂部の間に、チューブ6の長手方向に延びる保持板10を配置する。
【0061】
ここで、この保持板10の両平板部10c、10dの間隔を所定間隔L1 に保持するために、この保持板10の内部に、この所定間隔L1 の板厚を持ったダミー板(図示せず)を挿入する。
【0062】
このダミー板は後述の一体ろう付けの工程に対する耐熱性を有し、かつアルミニュウムろう付けされない特性を持った材質(例えば、カーボン等)で形成しておく。この組付工程で、タンク1、2、パイプ4、5、およびサイドプレート8a、8bも組み付けることはもちろんである。
【0063】
次に、上述のごとく、組み付けた熱交換器組付体の組付状態を図示しない適宜の治具により保持して、ろう付け炉内に搬入し、ろう付け工程を行う。すなわち、ろう付け炉内で熱交換器組付体をろう付け温度(600°C程度)に加熱して、熱交換器各部材のアルミニウムクラッド材のろう材を溶融し、熱交換器組付体の各部材間を一体ろう付けする。
【0064】
ろう付け終了後に、熱交換器組付体をろう付け炉から搬出し、常温まで熱交換器組付体の温度が低下した後に、電気発熱体9の組付工程を行う。すなわち、電気発熱体9はそれ単独で、熱交換器組付体とは別に、板状の発熱体素子9aの表裏両面を平板状の電極板9b、9cにより挟み込んで3層のサンドウイッチ構造とし、電極板9b、9cの周囲を全周にわたって被覆部材9dにより被覆しておく。
【0065】
そして、熱交換器組付体の熱交換用コア部3における4箇所の保持板10の内側に挿入されているダミー板を取り出す。この後に、保持板10の対向する両平板部10c、10dの内側に形成される所定間隔L1 の空間に、開口部10bから閉塞端部10a側へ向かって電気発熱体9を挿入する。
【0066】
この電気発熱体9の組付の後に、両締結部材12、13の各両端の引掛け部を上下のサイドプレート8a、8bの係止溝部8c、8dに引掛けて、上下のサイドプレート8a、8bの間に両締結部材12、13を熱交換用コア部3が圧縮されるように装着する。
【0067】
これにより、電気発熱体9を保持板10の内側に圧接保持させる締付け力を熱交換用コア部3に対して作用させ得る。
【0068】
ここで、保持板10の閉塞端部10aが断面V字形状の折り曲げ部からなりかつこの折り曲げ部の頂部11の曲率半径Rが上述のごとく設定されている。
【0069】
このため、上述のように両締結部材12、13による締付け力が熱交換用コア部3に作用したとき、閉塞端部10aが両平板部10c、10dを近づける方向に容易に弾性変形し、当該両平板部10c、10dがその全面に亘り電気発熱体9の両面に一様に密着する。
【0070】
これにより、両平板部10c、10dの各全面を介する電気発熱体9からコア部3への熱伝達を良好に確保しつつ、電気発熱体9を保持板10の内側に確実に保持固定できる。また、同時に、電気発熱体9の内部において、発熱体素子9aの表裏両面が平板状の電極板9b、9cに確実に圧接するので、小さな接触抵抗で良好な電気導通状態が得られる。
【0071】
次に、上記構成において作動を説明する。車室の暖房を行うときには、図8の空調用送風ファン15が作動して、暖房用熱交換器Hのコア部3の偏平チューブ6とコルゲートフィン7との間の空隙部に矢印Eのように暖房用空気が通過する。一方、車両用エンジンのウォータポンプ(図示せず)の作動によりエンジンからの温水(熱源流体)が入口パイプ4より温水入口側タンク1内に流入する。
【0072】
そして、温水は、入口側タンク1にて多数本の偏平チューブ6に分配され、この偏平チューブ6を並列に流れる間にコルゲートフィン7を介して暖房用空気に放熱する。多数本の偏平チューブ6を通過した温水は、温水出口側タンク2に流入し、ここで集合され、出口パイプ5から温水は熱交換器外部へ流出し、エンジン側に還流する。
【0073】
一方、暖房時において、エンジンからの温水の温度が設定温度(例えば、80℃)より低いときは、外部制御回路から両電極板9b、9cの端子部9e、9f間に車載電源の電圧を加える。これにより、発熱体素子9aが通電され発熱する。発熱体素子9aの発熱は電極板9b、9c、被覆部材9d、保持板10を経て、両側のコルゲートフィン7に伝導されて、このコルゲートフィン7から暖房用空気に放熱される。
【0074】
ここで、上述のごとく、保持板10の両平板部10c、10dがその各全面に亘り電気発熱体9の両面に一様に密着しているから、発熱体素子9aの発熱は両側のコルゲートフィン7から暖房用空気に良好に放熱され得る。
【0075】
従って、保持板10の閉塞端部10aを上記構成とすることで、温水の低温時でも暖房空気を速やかに加熱して即効暖房を良好に行うことができる。
【0076】
なお、電気発熱体9の発熱体素子9aは所定の設定温度T0 にて抵抗値が急増する正の抵抗温度特性を有するPTC素子であるから、周知のごとく、その発熱温度を設定温度T0 に自己制御する自己温度制御機能を備えている。
【0077】
ところで、車両用空調装置では、図8に示すように、空調ケース14内において冷房用熱交換器16の下流側に暖房用熱交換器Hが配置されているので、冷房用熱交換器16で発生した凝縮水が空気流れとともに暖房用熱交換器Hに向かって飛散し、暖房用熱交換器Hの空気上流側の面に付着することがある。また、外気導入口より雪が空調ケース14内に入り込み、送風ファン15の作動により雪が飛散、溶融して暖房用熱交換器Hの空気上流側の面に付着することもある。
【0078】
しかし、本第1実施形態によると、保持板10の断面V字形状の折り曲げ部からなる閉塞端部10aが熱交換用コア部3の空気入口側に向き、他端側の開口部10bが熱交換用コア部3の空気出口側に向くように、保持板10の配置方向が設定されている。従って、凝縮水等が暖房用熱交換器Hの空気上流側の面に付着しても、閉塞端部10aにより凝縮水等が保持板10の内側に進入するのを確実に防止できる。
【0079】
このため、凝縮水等が電気発熱体9に付着することがないので、電気発熱体9の電気絶縁性の薄膜状の被覆部材9dに万一亀裂等が発生しても、水の付着よる電気的ショート事故等の不具合が発生することもない。
【0080】
図9は、上記第1実施形態の変形例を示している。
【0081】
この変形例においては、上記第1実施形態にて述べた保持板10において、薄肉部12aが、閉塞端部10aと平板部10cとの境界部に形成されており、一方、薄肉部12bが、閉塞端部10aと平板部10dとの境界部に形成され、また、薄肉部12cが閉塞端部10aに形成されている。なお、両薄肉部12a、12bは、上記両境界部を保持板10の内側から薄肉状に形成されている。
【0082】
また、両平板部10c、10dの開口部10b側先端部は、各符号cにて示すごとく、保持板10の内側から面取りされている。
【0083】
このように構成した本変形例では、保持板10の両平板部10c、10dがその各先端部にて上述のごとく面取りcされているから、電気発熱体9の両平板部10c、10d間への開口部10bからの挿入がより一層容易になされ得る。
【0084】
また、保持板10において、閉塞端部10aと両平板部10c、10dとの各境界部及び閉塞端部10aには、上述のごとく、各薄肉部12a、12b及び12cが形成されているから、上記第1実施形態のように両締結部材12、13による締付け力が熱交換用コア部3に作用したとき、閉塞端部10aが両平板部10c、10dを近づける方向により一層容易に弾性変形し、当該両平板部10c、10dがその全面に亘り電気発熱体9の両面により一層一様に密着する。
【0085】
これにより、保持板10の両平板部10c、10dを介する電気発熱体9からコア部3への熱伝達をより一層良好にし得る。
【0086】
(第2実施形態)
図10は本発明の第2実施形態を示している。
【0087】
この第2実施形態では、保持板10Aが、上記第1実施形態にて述べた保持板10に代えて採用されている。
【0088】
保持板10Aは、保持板10において、閉塞端部10aに代え、閉塞端部10eを設けた構成となっている。
【0089】
閉塞端部10eは、閉塞端部10aとは逆に、両平板部10c、10dの間に向けV字形状に突出するように形成されている。ここで、閉塞端部10eの頂部11aの曲率半径Rは、上記第1実施形態にて述べた閉塞端部10aの頂部11のそれと同一である。
【0090】
これにより、上記第1実施形態のように両締結部材12、13による締付け力が熱交換用コア部3に作用したとき、閉塞端部10eが上記第1実施形態と同様に両平板部10c、10dを近づける方向により容易に弾性変形し、当該両平板部10c、10dがその全面に亘り電気発熱体9の両面に一様に密着する。
【0091】
その結果、上記第1実施形態と同様に、保持板10の両平板部10c、10dを介する電気発熱体9からコア部3への熱伝達を良好にし得る。
【0092】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態を示している。
【0093】
この第3実施形態では、保持板10Bが、上記第1実施形態にて述べた保持板10に代えて採用されている。
【0094】
保持板10Bは、保持板10において、閉塞端部10aに代え、閉塞端部10fを設けた構成となっている。
【0095】
閉塞端部10fは、閉塞端部10aとは異なり、両平板部10c、10dから外方へU字形状に突出するように形成されている。
【0096】
この閉塞端部10fは、3つのスリットSを備えており、これら各スリットSは、閉塞端部10fの頂部にその長手方向に沿い所定間隔にて貫通形成されている。
【0097】
これにより、上記第1実施形態のように両締結部材12、13による締付け力が熱交換用コア部3に作用したとき、閉塞端部10fが上記第1実施形態と同様に両平板部10c、10dを近づける方向により容易に弾性変形し、当該両平板部10c、10dがその全面に亘り電気発熱体9の両面に一様に密着する。
【0098】
その結果、上記第1実施形態と同様に、保持板10の両平板部10c、10dを介する電気発熱体9からコア部3への熱伝達を良好にし得る。なお、スリットSの数、開口寸法や形成間隔は、閉塞端部10fの弾性変形を容易にし得る範囲で適宜選定すればよい。
【0099】
(第4実施形態)
図12及び図13は、本発明の第4実施形態を示している。
【0100】
この第4実施形態では、樹脂接着層10gが、図12にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた保持板10と電気発熱体9との間に形成されている。
【0101】
ここで、樹脂接着層10gの形成方法について説明する。
【0102】
まず、樹脂接着剤塗布工程S1において、樹脂接着剤を電気発熱体9の外表面(被覆部材9dの外表面)の全体に亘り所定の厚さにて塗布する。
【0103】
本第4実施形態では、上記樹脂接着剤として、次の条件を考慮したものが採用されている。
【0104】
即ち、上記樹脂接着剤は、電気発熱体9の発熱により溶解防止の点から、熱硬化性を有するものでなければならない。また、当該樹脂接着剤は、電気発熱体9の発熱温度が約160℃以上になることから、約160℃以上の耐熱温度を有するものでなければならない。しかも、電気発熱体9から保持板10への良好な熱伝達を確保する必要があることから、上記樹脂接着剤は良好な熱伝導性を有するものでなければならない。
【0105】
以上のことから、本実施形態では、上記樹脂接着剤として、熱硬化性、上記耐熱性及び良好な熱伝導性を有するシリコン系或いはアクリル系の樹脂接着剤が採用されている。
【0106】
ついで、電気発熱体挿入工程S2において、上述のように樹脂接着剤を塗布した電気発熱体9を、上記第1実施形態にて述べたようにコア部3にろう付け済みの保持板10内にその開口部10bから挿入する。
【0107】
このとき、電気発熱体9の外表面には上述のごとく上記樹脂接着剤が予め塗布されているから、電気発熱体9は、塗布樹脂接着剤のうち余分な部分を保持板10の開口部10bからはみ出させつつ、保持板10内に挿入される。
【0108】
従って、上記塗布樹脂接着剤は保持板10の内表面に一様に行き亘るようにして保持板10の内表面と電気発熱体9の外表面との間に隙間なく充填される。
【0109】
その後、樹脂接着剤拭き取り工程S3において、保持板10の開口部10bからはみ出した樹脂接着剤を拭き取った後、樹脂接着剤加熱硬化工程S4において、保持板10内に充填済みの樹脂接着剤を加熱により硬化させる。これにより、保持板10と電気発熱体9との間に樹脂接着層10gを形成することができる。
【0110】
以上によれば、樹脂接着層10gが保持板10と電気発熱体9との間に隙間なく形成されるから、保持板10の内表面と電気発熱体9の外表面との間に空気による断熱層が形成されることがない。しかも、樹脂接着層10gは良好な熱伝導性、熱硬化性及び耐熱性を有する材料からなる。
【0111】
よって、樹脂接着層10gが電気発熱体9の発熱により悪影響を受けることなく、電気発熱体9の発熱が樹脂接着層10gを介し保持板10に良好に伝達されるから、電気発熱体9の発熱の保持板10への安定した伝熱性能を確保できる。
【0112】
また、上述のように、樹脂接着層10gが保持板10と電気発熱体9との間に隙間なく形成されるから、保持板10の両平板部10c、10dは、上記第1実施形態にて述べたような両締結部材12、13による締め付け力を必要とすることなく、樹脂接着層10gを介し電気発熱体9の両外表面に一様に密着し得る。従って、両締結部材12、13が不要となり、構成部品数の低減につながる。なお、その他の構成及び作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0113】
(第5実施形態)
図14は、本発明の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、グリース充填層10hが、上記第1実施形態にて述べた保持板10と電気発熱体9との間に形成されている。グリース充填層10hのグリースは、良好な熱伝導性を有し、しかも電気発熱体9の発熱温度以上の高温まで半固体状態を維持可能なグリースを用いており、具体的にはシリコン系グリースを用いるのが好ましい。
【0114】
ここで、グリース充填層10hの形成方法について説明する。まず、グリースを電気発熱体9の外表面(被覆部材9dの外表面)の全体に亘り所定の厚さにて塗布する。ついで、グリースを塗布した電気発熱体9を、コア部3にろう付け済みの保持板10内にその開口部10bから挿入する。このとき、グリースは保持板10の内表面に一様に行き亘るようにして保持板10の内表面と電気発熱体9の外表面との間に隙間なく充填される。その後、保持板10の開口部10bからはみ出したグリースを拭き取る。これにより、保持板10と電気発熱体9との間にグリース充填層10hを形成することができる。なお、グリースは半固体であるから、第4実施形態のような樹脂接着剤の加熱硬化工程は不要である。
【0115】
グリース充填層10hの形成後、電気発熱体9の脱落防止のために、図1に示す締結部材12を、保持板10の開口部10bが位置する側に装着する。
【0116】
以上によれば、グリース充填層10hが保持板10と電気発熱体9との間に隙間なく形成されるから、保持板10の内表面と電気発熱体9の外表面との間に空気による断熱層が形成されることがない。よって、電気発熱体9の発熱がグリース充填層10hを介し保持板10に良好に伝達されるから、電気発熱体9の発熱の保持板10への安定した伝熱性能を確保できる。
【0117】
なお、上記第4、第5実施形態では、保持板10として、その閉塞端部10aがV字形状を有するものを採用した例について説明したが、これに限ることなく、保持板10の閉塞端部10aを上記第1実施形態の各変形例にて述べた閉塞端部に形成してもよく、また、当該閉塞端部10aを単なる断面半円環状の閉塞端部に形成しても、上記第4、第5実施形態と同様の作用効果を達成できる。また、このようなことは、上記第4、第5実施形態において、閉塞端部10aを一般に任意の湾曲形状としても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す暖房用熱交換器の斜視図である。
【図2】図1の電気発熱体設置部の拡大斜視図である。
【図3】図1の電気発熱体設置部の断面図である。
【図4】図1の保持板の部分斜視図である。
【図5】加圧前の保持板への電気発熱体の挿入状態を示す断面図である。
【図6】加圧後の保持板への電気発熱体の挿入状態を示す断面図である。
【図7】(a)は図1の電気発熱体の一部破断斜視図、(b)は当該電気発熱体の横断面図、(c)は当該電気発熱体の縦断面図、(d)は当該電気発熱体の平面図である。
【図8】本発明による暖房用熱交換器を適用した車両空調装置の通風系の概略断面図である。
【図9】上記第1実施形態の第1変形例を示す保持板の側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示す保持板の部分拡大斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態を示す保持板の拡大斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態を示す電気発熱体設置部の断面図である。
【図13】上記第4実施形態における樹脂接着層の形成工程を示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態を示す電気発熱体設置部の断面図である。
【図15】加圧前の断面U字状の保持板内への電気発熱体の挿入状態を示す断面図である。
【図16】加圧後の断面U字状の保持板内への電気発熱体の挿入状態を示す断面図である。
【符号の説明】
3…熱交換用コア部、6…偏平チューブ、7…コルゲートフィン、
9…電気発熱体、10…保持板、10a、10e、10f…閉塞端部、
10b…開口部、10c、10d…板部、12a、12b、12c…薄肉部、
10g…樹脂接着層、10h…グリース充填層。
Claims (4)
- 熱源流体が流通する偏平チューブ(6)を多数本並列配置するとともに、この多数本の偏平チューブ(6)の間にコルゲートフィン(7)を接合することにより熱交換用コア部(3)が構成されており、
この熱交換用コア部(3)の一部位に電気発熱体(9)を設置する暖房用熱交換器において、
前記熱交換用コア部(3)のうち、前記電気発熱体(9)が設置される部位では、隣接するコルゲートフィン(7)の折り曲げ頂部相互の間に、V字形状の折り曲げ部からなる閉塞端部(10a、10e)を有するように形成した断面二つ折り形状の保持板(10)を、その閉塞端部(10a、10e)及び他端側の開口部(10b)にて前記偏平チューブへの前記熱源流体の流通方向に向くように、前記偏平チューブ(6)の長手方向に沿い長手状に配置し、
前記保持板(10)の対向する両板部(10c、10d)相互の間に所定間隔(L1 )を設定した状態で、これら両板部(10c、10d)をそれぞれ前記コルゲートフィン(7)の折り曲げ頂部に接合し、
前記保持板(10)の内部にその開口部(10b)から前記電気発熱体(9)を電気絶縁して組み付けたことを特徴とする暖房用熱交換器。 - 前記保持板の閉塞端部は、前記両板部の内方或いは外方へ向け断面V字形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の暖房用熱交換器。
- 前記閉塞端部の頂部の曲率半径は、前記保持板(10)の板厚の2倍以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の暖房用熱交換器。
- 前記閉塞端部と前記両板部との各境界部及び前記閉塞端部には、薄肉部(12a、12b、12c)が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の暖房用熱交換器。
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