JP4084945B2 - 燃料計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料計に関し、特に、燃料残量によって表示スケールを切り替え可能にした燃料計に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、国内はもとより長距離走行の機会の多い海外への輸出を想定して大容量の燃料タンクを備えた車両が開発されている。この場合、部品共通化等の観点から、海外用車両に対しては国内用車両に用いられる燃料タンクを複数個搭載することによって大容量化を図るようにすることが多い。ところが、このような車両に燃料計を搭載する場合、以下に示すような様々な問題が発生する。
【0003】
図6(A)及び図6(B)はそれぞれ、燃料タンクが複数個搭載された場合の第1従来例及び第2従来例を示すブロック図である。ここでは、説明を単純化するために、2つの燃料タンクを搭載するものと想定して説明する。なお、以降の説明では燃料タンクを1つだけ搭載する車両を単燃料タンク車両と記載し、複数の燃料タンクを搭載する車両を複燃料タンク車両と記載する。
【0004】
まず、図6(A)に示す第1従来例では、2対の燃料タンク及び燃料計、すなわち、主燃料タンク91及び主燃料計92、副燃料タンク93及び副燃料計94が車載される。この主燃料計92及び副燃料計94は、回動する指針によって燃料残量を指示するアナログ式のものである。主燃料タンク91及び副燃料タンク93、主燃料計92及び副燃料計94は共に同等のものであるが、一方の対は主、他方の対は副として割り当てられている。また、これら燃料タンク91、93及び燃料計92、94は、部品共通化のために、単燃料タンク車両に使用されるものが使用される。なお、各燃料タンク91、93と燃料計92、94との間には、各種駆動回路、A/D変換器、マイクロコンピュータ等が介在するが、ここではそれらは省略している。そして、この第1従来例では、主燃料タンク91及び副燃料タンク93の燃料残量がそれぞれ独立的に、主燃料計92及び副燃料計94にて示される。
【0005】
また、図6(B)に示す第2従来例では、主燃料タンク91、副燃料タンク93、アナログ式の燃料計92′、及び燃料ポンプ切替器95が車載される。主燃料タンク91及び副燃料タンク93は、上記第1従来例と同様、それらは同等のものであるが、一方は主、他方は副として割り当てられている。また、これら燃料タンク91、93及び燃料計92′は、部品共通化のために、単燃料タンク車両に使用されるものが使用される。なお、各燃料タンク91、93と燃料計92′との間には、各種駆動回路、A/D変換器、マイクロコンピュータ等が介在するが、ここでもそれらは省略している。そして、この第2従来例では、燃料ポンプ切替器95により、主燃料タンク91又は副燃料タンク93のいずれかが選択されて、選択された方のタンクから消費される。そして、選択された方のタンクの燃料残量が燃料計92′にて示される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記第1従来例では、燃料計が燃料タンクに対応した数だけ必要となるうえ、これにともなう回路配線も複雑化する。また、複数の燃料計によりインパネ上のスペースを圧迫する等の問題も発生する。更に、図示しないが、いずれのタンクを使用するかの切替機構等も必要である。一方、第2従来例でも正副それぞれに独立した回路配線が必要であるうえ、燃料ポンプ切替器95も別途必要となる。すなわち、第1及び第2いずれの従来例も、複燃料タンク車両に適用する場合、回路配線や構造が複雑化するという問題が発生する。
【0007】
構造を簡単にするため、主燃料タンク91及び副燃料タンク93を連結して大容量化し、ひとつの燃料計にて残量表示させるというアイディアも提案されているが、単燃料タンク車両への適用も考えた場合、燃料タンクの最大容量が不明確になる。これを考慮して、燃料計に単燃料タンク及び複燃料タンクにそれぞれ対応した容量表示を入れると、燃料計のバリエーションが増加して、部品管理複雑化やコスト高を引き起こす。また、単燃料タンク時と複燃料タンク時との容量差が大きいため混乱を招く。更に、燃料残量警報は燃料残量と最大容量との比率に基づいて行っていたので、複燃料タンク時と単タンク時との燃料残量が異なるという付加的な問題もある。
【0008】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、常に燃料残量を明確に認識でき、且つ、コスト削減の効果が高く、信頼性の高い燃料計を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の燃料計は、図1に示すように、主燃料タンク1及び副燃料タンク2と、前記主燃料タンク1及び前記副燃料タンク2にそれぞれ装着されて、前記主燃料タンク1中及び前記副燃料タンク2中の燃料の液位を測定する主測定手段11及び副測定手段21とを備え、液位低下時には前記副燃料タンク2から先に液位変動し前記副燃料タンク2が空状態になった後に前記主燃料タンク1が液位変動し、液位上昇時には前記主燃料タンク1から先に液位変動し前記主燃料タンク1が満状態になった後に前記副燃料タンク2が液位変動していくように構成された車両に搭載される燃料計であって、予め定められた指示角度範囲にわたって回動する単一の指針にて燃料残量を指示する単一の燃料残量指示手段31と、前記主測定手段11及び前記副測定手段21によるそれぞれの測定結果を合成して、これに対応する燃料残量を算出する燃料残量算出手段32と、前記燃料残量を、前記主燃料タンク1又は前記副燃料タンク2のいずれにおいて液位変動しているかを判断する基準となるしきい値と比較して、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかを判断する比較判断手段33と、該比較判断手段33の結果により、前記副燃料タンク2において液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク1及び前記副燃料タンク2の合計容量に対する燃料残量に基づいて前記単一の指針の指示角度範囲を割り当て、前記主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク1の容量に対する燃料残量に基づいて前記単一の指針の指示角度範囲を割り当てて、この割り当てられた角度範囲にわたって前記単一の指針を回動させる指針制御手段34と、前記比較判断手段33の結果により、前記副燃料タンク2において液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク1及び前記副燃料タンク2の合計容量に基づくスケール表示であること表示し、前記主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク1の容量に基づくスケール表示であることを表示する識別情報表示手段35と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、主測定手段11及び副測定手段21によるそれぞれの測定結果が合成されて、これに対応する燃料残量が算出される。この燃料残量は、比較判断手段33にてしきい値と比較されて、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかが判断される。そして、副燃料タンク2において液位変動していると判断される場合には、主燃料タンク1及び副燃料タンク2の合計容量に基づいて指針の指示角度範囲を割り当て、主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合には、主燃料タンク1の容量に基づいて指針の指示角度範囲を割り当てて、この割り当てられた指示角度範囲にわたって指針が回動制御される。更に、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかを区別するための識別情報が表示される。すなわち、いずれの燃料タンクが液位変動しているかに基づいて燃料残量の表示スケールが切り替えられ、更にそれが識別情報表示手段35にて識別表示される。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の燃料計は、図1に示すように、請求項1記載の燃料計において、前記識別情報表示手段35は、前記主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合にのみ、前記識別情報として前記主燃料タンク1の略最大容量を示す意匠を表示することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合にのみ、識別情報として主燃料タンク1の略最大容量を示す意匠が表示されるので、確実にいずれの燃料タンクが液位変動しているかを認識できる。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の燃料計は、図1に示すように、請求項1又は2記載の燃料計において、前記しきい値は、前記主測定手段11及び前記副測定手段21による測定値の出力変動のない不感帯域をカバーするように設定された、主燃料タンク側しきい値A及び副燃料タンク側しきい値Bから構成され、前記指針制御手段34は、前記燃料の液位が減少して前記主燃料タンク側しきい値A以下になり前記主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク1の容量に対する燃料残量を指示するように前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させ、前記燃料の液位が増加して前記副燃料タンク側しきい値B以上になり前記副燃料タンク2において液位変動していると判断される場合には、前記合計容量に対する燃料残量を指示するように前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、しきい値は主測定手段11及び副測定手段21による測定値の出力変動のない不感帯をカバーするように、ヒステリシス領域を持たせて設定されている。したがって、複燃料タンクを用いた場合に起こり得るスケール切替点におけるチャタリング等による不安定性が解決される。
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の燃料計は、図1に示すように、請求項3記載の燃料計において、前記燃料残量算出手段32にて算出された前記燃料残量を、燃料残量不足を警告すべき予め設定された所定の燃料残量警告値Cと比較し、この比較結果に基づき燃料残量警告する燃料残量警告手段36、を更に含むことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、燃料残量が所定の燃料残量警告値Cと比較されて燃料残量警告されるので、単燃料タンク、又は複燃料タンクの使用にかかわらず燃料残量警告の基準が統一される。
【0017】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の燃料計は、図1に示すように、請求項4記載の燃料計において、前記主測定手段11及び前記副測定手段21は共に、前記液位変動に応じて抵抗値を変化させるタイプの液位センサであり、前記燃料残量は、前記主測定手段11及び前記副測定手段21のそれぞれの抵抗値の合成抵抗値に基づくことを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、液位変動に応じて抵抗値を変化させるタイプの液位センサが用いられ、燃料残量はこれらの合成抵抗値に基づくので、非常に簡易な構成で故障の少ない燃料計が得られる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項6記載の燃料計は、図1に示すように、請求項1〜5いずれか記載の燃料計において、前記主燃料タンク1及び前記副燃料タンク2の両方が使用されるか、或いは、前記これらの一方のみが使用されるかを識別する識別手段37を更に有し、前記一方のみが使用される場合には、前記指針制御手段34は、使用される燃料タンクに対応して装着された液位測定手段にて検出される液位検出出力に基づいて前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させることを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、主燃料タンク1及び副燃料タンク2の両方が使用されるか、或いは、一方のみが使用されるかを識別する識別手段37を更に有しているので、単燃料タンク車両向けに対しても容易に適合させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図2〜図5を用いて説明する。図2(A)は本発明の一実施形態を示すブロック図であり、図2(B)は図2(A)における制御部及び表示部をより詳しく示すブロック図である。
【0022】
図2(A)に示すように、本燃料計は車載され、主燃料タンク1、副燃料タンク2、制御部3、指針駆動回路4、LED駆動回路5及び表示部6を含んで構成される。
【0023】
主燃料タンク1及び副燃料タンク2は、車両の中央部から後部あたりに搭載され、ガソリン等の燃料を貯蔵する。これら主燃料タンク1及び副燃料タンク2は、例えば、それぞれ約90L(リットル)のタンク容量を有する。主燃料タンク1及び副燃料タンク2は連結され、その合計容量は約180Lであるが、副燃料タンク2から先に液位変動していくようにして車両に搭載されている。すなわち、給油口から燃料が注入されて主燃料タンク1及び副燃料タンク2が満状態にされた後、走行に伴うエンジン駆動等による燃料消費により、副燃料タンク2の液位から先に低下していく。そして、副燃料タンク2が空状態になると、次に主燃料タンク1の液位が低下する。
【0024】
給油されると、先に主燃料タンク1の液位が上昇して主燃料タンク1が満状態になると、次に副燃料タンク2の液位が上昇する。このように液位変動する最も簡単な例は、副燃料タンク2の最低部が主燃料タンク1の最高部よりも高くなるように両タンクを配置すればよい。但し、これ以外の方法であってもよい。各主燃料タンク1及び副燃料タンク2にはそれぞれ、主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21が装着されている。これら主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21は共に液位変動に応じてその抵抗値を変化させるものである。
【0025】
主燃料タンク用液位センサ11は一端が接地され、そのセンサ出力部TMは副燃料タンク用液位センサ21の一端に接続されている。また、副燃料タンク用液位センサ21の一端は車載バッテリ+Bに接続され、そのセンサ出力部TSは制御部の複燃料タンク用センサ入力部RDに接続されている。そして、液位変動にともなうセンサ11、21の合成抵抗値は、電圧値として副燃料タンク用液位センサ21のセンサ出力部TSから出力される。
【0026】
制御部3は、複燃料タンク用センサ入力部RDを介して、副燃料タンク用液位センサ21のセンサ出力部TSから供給される燃料残量に相当する電圧を受ける。実際には、センサ出力部TSから得られる電圧は、図示しないA/D変換器にてディジタル値に変換された後この制御部3に供給されるが、この点は本発明の主旨ではないので省略されている。制御部3は上記燃料残量に相当する電圧を受け、これに基づき指針駆動回路4を制御して指針制御信号を表示部6に出力させると共に、LED駆動回路5を制御してLED制御信号を表示部6に出力させる。
【0027】
詳しくは、この制御部3は、図2(B)に示すように、基本的に演算部3a及び記憶部3bから構成される。演算部3aは、記憶部3bに格納される制御プログラムにしたがって、指針駆動に関する上記指針制御信号や表示に関する上記LED制御信号等を生成する。記憶部3bは、上記制御プログラムや図5で後述する燃料残量と指針指示値との対応関係を規定したテーブル等を格納する。また、記憶部3bは、演算部3aの処理の過程で発生する各種変数を一時的に格納するワークエリアも有する。
【0028】
なお、制御部3は、単燃料タンク用センサ入力部RSも有している。この単燃料タンク用センサ入力部RSに液位センサのセンサ出力部が接続されると、制御部3はそれを検出し、指針駆動回路4を制御して単燃料タンクの容量に応じた指針制御信号を出力させる。この実施形態では、複燃料タンク用センサ入力部RDに液位センサのセンサ出力部が接続されているので、ここでは、複燃料タンクの合計容量に応じた指針制御信号が出力される。この単燃料タンク用センサ入力部RS及び複燃料タンク用センサ入力部RDは、請求項中の識別手段に相当する。なお、このような識別手段としては、制御部3に接続されるディップスイッチ等を併用するようにしてもよい。
【0029】
表示部6は、図2(A)及び図2(B)に示すように、文字板に形成された図中「90L」で示すタンク容量識別意匠6b、図中「給油機マーク」で示す燃料残量警告意匠6c、表示部筐体に内蔵されるモータ6a´、並びにタンク容量識別用LED6b´及び燃料残量警告用LED6c´を含む。このモータ6a´は、上記指針制御信号に応答して、指針6aを予め定められた指示角度範囲にわたって回動させる。この指示角度範囲は、例えば、指針振れ角である。この指針6aの挙動に関しては後述する。また、タンク容量識別用6b´及び燃料残量警告用LED6c´は、上記LED制御信号に応答して、タンク容量識別意匠6b及び燃料残量警告意匠6c、をそれぞれ点灯又は消灯させる。なお、この表示部6は、請求項中の燃料残量指示手段に相当する。
【0030】
このような構成において、主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21によるそれぞれの測定結果が合成されて、制御部3にてこれに対応する燃料残量が算出され、更に所定のしきい値と比較されて、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかが判断される。そして、副燃料タンク2において液位変動していると判断される場合には、主燃料タンク1及び副燃料タンク2の合計容量に基づいて指針6aの指示角度範囲を割り当て、主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合には、主燃料タンク1の容量に基づいて指針6aの指示角度範囲を割り当てて、この割り当てられた指示角度範囲にわたって指針6aが回動制御される。すなわち、いずれの燃料タンクが液位変動しているかに基づいて燃料残量の表示スケールが切り替えられ、更にそれが識別情報表示手段35にて識別表示される。更に、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかを区別するための識別情報が表示部6に表示される。なお、単燃料タンク用センサ入力部RSに液位センサのセンサ出力部が接続されている場合には、公知の燃料残量に基づく指針回動制御が行なわれる。
【0031】
次に、図3を用いて、上記主燃料タンク1及び副燃料タンク2、並びに主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21に関して説明を加える。図3は本発明の一実施形態に係る主燃料タンク、及び副燃料タンクの概要を示す断面図である。
【0032】
図3に示すように、主燃料タンク1及び副燃料タンク2は連結されており、上述したように、ガソリン等の燃料14を貯蔵する。それらの容量は共に、例えば、約90Lであり、合計で約180Lである。主燃料タンク1中の燃料は、この主燃料タンク1に装着されたポンプ12にて所定量づつ汲み上げられてフィルタ13を介してエンジン側に送られる。これにともない副燃料タンク2から先に液位変動していく。また、副燃料タンク2に連接される給油口から、燃料が注入される。これにともない、燃料は主燃料タンク1、副燃料タンク2の順に貯蔵されていく。なお、上記ポンプ12及びフィルタ13は、主燃料タンク1外に装着されてもよい。
【0033】
主燃料タンク1及び副燃料タンク2にはそれぞれ装着された主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21は共に同等のものであり、液位変動に応じてその抵抗値を変化させるものである。詳しくは、センサ11、21は、燃料に対して所定の浮力を有するフロート11a、21aが先端に取り付けられた金属棒からなるアーム11b、21bを備えている。アーム11b、21bは、液位変動にともなってセンサ本体部11c、21cの軸受部を中心に、それぞれ所定角度範囲θ1、θ2だけ回動可能に取り付けられている。この液位変動にともなうアーム11b、21bの回動により、アーム11b、21bの回転軸付近に設けられた電気接点とセンサ本体部に内蔵された抵抗板との接触位置が変化し、これに基づく抵抗値が液位として供給される。実際には、図2で示したように、主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21の抵抗値が合成され、この合成抵抗値が電圧値に変換されて、液位として供給される。このようなタイプの液位センサを用いることにより、リレー式の液位センサ等と比較して、非常に簡易な構成で故障の少ない燃料計が得られる。なお、上記主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21はそれぞれ、請求項中の主測定手段及び副測定手段に相当する。
【0034】
ところで、タンク形状、フロート形状、センサの配置状態、アームの回動範囲の制限等により、現実的には、この図3に示すように、主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21のいずれでも液位検出不可能な不感帯域DBが発生する。これは、ここで示すアーム式液位センサのみならず、リレー式液位センサでも発生し得るものである。例えば、ここでは、それぞれのタンク1、2が90Lで、合計容量が約180Lの場合、燃料残量が106L〜88Lの範囲で不感帯域DBが発生するものとする。この不感帯域DBは、上記様々な要因にて、常に例示した範囲であるとは限らないが、予め試験等で得ることができる。本発明では、上記表示スケール切替による視認性向上の効果に加えて、現実的に発生しがちなこの不感帯域DBも考慮して、以下に示す表示スケール切替処理を行う。
【0035】
図4は本発明の一実施形態を示し、図4(A)は本発明の一実施形態に係る表示スケール切替処理を示すフローチャートであり、図4(B)は本発明の一実施形態に係る燃料残量警告処理を示すフローチャートである。図5は、図4の処理手順に係る燃料残量、指針指示値の関係を示すグラフである。なお、ここで示す実施形態は、上記複燃料タンク用センサ入力部RDに液位センサのセンサ出力部が接続されて、複燃料タンクの容量に応じた制御が行われるものと想定する。単燃料タンク用センサ入力部RSにセンサ出力部が接続されている場合には、公知の燃料残量に基づく指針回動制御が行われるだけなので、ここではその説明を省略する。
【0036】
図4(A)の表示スケール切替処理のステップS1においては、液位に応じた入力電圧が取得される。この入力電圧は、上述したように主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21の合成抵抗に基づくものである。次に、ステップS2においては、上記取得された入力電圧に対応する燃料残量が算出される。この算出には、予め試験等により得られた入力電圧と燃料残量との関係を示す上記記憶部3bに格納されるテーブルが参照される。なお、上記ステップS2は、請求項中の燃料残量算出手段に相当する。
【0037】
次に、ステップS3において、この燃料残量がしきい値A以下であるかどうかが判定される。すなわち、ここで、燃料残量は、主燃料タンク1において液位変動しているかを判断する基準となる主燃料タンク側しきい値Aと比較される。このしきい値Aは、上記不感帯域DB(88L〜106L)を考慮して、例えば、87Lとする。そして、燃料残量がしきい値A以下と判定されると拡大スケール表示すべくステップS4に進み(ステップS3のY)、さもなければステップS6に進む(ステップS3のN)。
【0038】
ステップS4においては、燃料残量が拡大スケール表示にて指示される。詳しくは、図5に示すように、文字板上の満状態を示す意匠「F」側には主燃料タンク1の最大容量である約90Lが割り当てられ、空状態を示す意匠「E」側には約0Lが割り当てられる。そして、これにともない、燃料残量0L〜87Lにおいては、燃料残量に応じて指針指示値が比例的に変化するように、指針6aが制御される。
【0039】
そして、ステップS5においては、タンク容量識別意匠である「90L」が点灯状態にされる。詳しくは、上記LED駆動回路5を介してLED制御信号がタンク容量識別用LEDに供給され、これによって文字板上の上記意匠「90L」が照明される。そして、ステップS1に戻って上記処理が継続される。なお、このステップS5は後述のステップS8と共に、請求項中の識別情報表示手段に相当する。
【0040】
一方、ステップS6においては、燃料残量がしきい値B以上であるかどうかが判定される。すなわち、ここでは、燃料残量は上記しきい値Aより大きいと判断されているので、副燃料タンク2において液位変動しているかを判断する基準となる副燃料タンク側しきい値Bと比較される。このしきい値Bも、上記不感帯域DB(88L〜106L)を考慮して、例えば、107Lとする。そして、燃料残量がしきい値B以上と判定されるとフルスケール表示すべくステップS7に進み(ステップS6のY)、さもなければステップS9に進む(ステップS6のN)。なお、上記ステップS3及ステップS6は、請求項中の比較判断手段に相当する。
【0041】
ステップS7においては、燃料残量がフルスケール表示にて指示される。詳しくは、図5に示すように、文字板上の満状態を示す意匠「F」側には主燃料タンク1と副燃料タンク2の最大合計容量である約180Lが割り当てられ、空状態を示す意匠「E」側には約0Lが割り当てられる。ただし、87L以下の場合には、ステップS4で示したようにスケール切替されるので、実際には、図5に示すように、燃料残量107L〜180Lにおいてのみフルスケール表示に基づいて、指針6aが回動制御される。
【0042】
そして、ステップS8においては、タンク容量識別意匠である「90L」が消灯状態にされる。詳しくは、LED制御信号のタンク容量識別用LEDへの供給が停止され、これによって文字板上の上記意匠「90L」が消灯状態になる。そして、ステップS1に戻って上記処理が継続される。なお、ここで、上記意匠「90L」を消灯させると同時に、タンク容量識別意匠である「180L」を点灯させるようにしてもよい。すなわち、上記意匠「180L」に対応させてタンク容量識別用LEDをもう一つ追加することによって、上記意匠「90L」及び「180L」を選択的に点灯させるようにすることも可能である。また、逆に、フルスケール表示時に上記意匠「180L」を点灯させ、拡大スケール表示時には上記意匠「180L」を消灯させるようにしてもよい。要は、フルスケール表示と拡大スケール表示の差異が識別できるようにすればよい。但し、上記のように主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合にのみ、上記意匠「90L」を点灯させることにより、最小限の構成及び制御でありながら、表示スケールを認識できるようになる。
【0043】
なお、ステップS9においては、燃料残量が前回の表示スケールで指示される。すなわち、このステップS9は、図5に示すようなヒステリシス領域HBを設定するためのものである。このヒステリシス領域HBについて説明を加えると、図中、a1、a2で示す燃料残量増加時(液位上昇時)には、燃料残量107Lが拡大スケール表示からフルスケール表示への切替点となり、d1、d2で示すように燃料残量減少時(液位低下時)には、燃料残量87Lがフルスケール表示から拡大スケール表示からへの切替点となるように設定している。また、このヒステリシス領域HBは、図5に示すように、不感帯領域DBをカバーするように設定されている。このようなヒステリシス領域HBを設けることによって、図3で示したように複燃料タンクを用いた場合に起こり得るスケール切替点におけるチャタリングによる不安定性が解決される。なお、MB及びSBはそれぞれ、主燃料タンク用液位センサ11及び副燃料タンク用液位センサ21の測定可能領域を示す。上記ステップS4、ステップS7及びステップS9、並びに上記指針駆動回路4は、請求項中の指針制御手段に相当する。
【0044】
図4(B)の燃料残量警告処理のステップS101においては、上記燃料残量が、燃料残量不足を警告すべき予め設定された所定の燃料残量警告値Cと比較される。この燃料残量警告値Cは、例えば、12L程度とする。上記燃料残量が燃料残量警告値C以下であれば、燃料残量警告意匠を点灯状態にさせるステップS102に進み(ステップS101のY)、さもなければ燃料残量警告意匠を消灯状態にさせるステップS103に進む(ステップS101のN)。
【0045】
ステップS102においては、表示部6の文字板上の燃料残量警告意匠6cが点灯状態にされる。詳しくは、上記LED駆動回路5を介してLED制御信号が燃料残量警告用LED6c´に供給され、これによって文字板上の燃料残量警告意匠6cである「給油機マーク」が照明される。そしてステップS101に戻る。また、ステップS103においては、表示部6の文字板上の燃料残量警告意匠6cが消灯状態にされる。詳しくは、上記LED制御信号の燃料残量警告用LED6c´への供給が停止され、これによって上記「給油機マーク」が消灯状態になる。そしてステップS101に戻る。このように、燃料残量が所定の燃料残量警告値Cと比較されて燃料残量警告されるので、単燃料タンク、又は複燃料タンクの使用にかかわらず燃料残量警告の基準が統一されて、従来のような残量比率を用いていた際の混乱が防止される。この図4(B)に示す処理手順は、請求項中の燃料残量警告手段に相当する。なお、図5に示すような、燃料残量と指針指示値との関係を示すテーブルは、上記制御部に含まれる記憶部3bに格納されており、演算部3aはこのテーブルを参照しながら図4に示すような制御を行う。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、複燃料タンクが使用される場合、その燃料残量によって表示スケールが切り替えられるので、主燃料タンク1及び副燃料タンク2に燃料があるか、或いは、主燃料タンク1のみに燃料があるかにかかわらず、常に、燃料残量が明確に認識できるようになる。また、燃料残量指示手段もひとつだけでよくなるので、部品管理が容易になり、コスト削減の効果も得られ、そのうえ、誤組み付けや指示不良も削減され、信頼性も向上する。また、単燃料タンクしか使用されない場合であっても、それが識別されてそれに応じた指針回動制御が行われるので、単燃料タンク車両向けに対しても容易に適合することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では燃料タンクを2つとしているが、燃料タンクが3つ以上の場合にも本発明は同様に適用可能である。また、液位センサの種類やタンク容量識別意匠も上記実施形態で示したものに限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲で変更されたものも本発明に含まれる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、燃料残量によって表示スケールが切り替えられるので、主燃料タンク1及び副燃料タンク2に燃料があるか、或いは、主燃料タンク1のみに燃料があるかにかかわらず、常に、燃料残量が明確に認識できるようになる。また、燃料残量指示手段もひとつだけでよくなるので、部品管理が容易になり、コスト削減の効果も得られ、そのうえ、誤組み付けや指示不良も削減され、信頼性も向上する。
【0049】
請求項2記載の発明によれば、主燃料タンク1において液位変動していると判断される場合にのみ、識別情報として主燃料タンク1の略最大容量を示す意匠が表示されるので、最小限の構成及び制御でありながら、確実にいずれの燃料タンクが液位変動しているか、すなわち、表示スケールを認識できるようになる。
【0050】
請求項3記載の発明によれば、しきい値は主測定手段11及び副測定手段21による測定値の出力変動のない不感帯をカバーするように、ヒステリシス領域を持たせて設定されている。したがって、複燃料タンクを用いた場合に起こり得るスケール切替点におけるチャタリング等による不安定性が解決されて、より現実に則した燃料計が得られる。
【0051】
請求項4記載の発明によれば、燃料残量が所定の燃料残量警告値Cと比較されて燃料残量警告されるので、単燃料タンク、又は複燃料タンクの使用にかかわらず燃料残量警告の基準が統一されて、従来のような残量比率を用いていた際の混乱が防止される。
【0052】
請求項5記載の発明によれば、液位変動に応じて抵抗値を変化させるタイプの液位センサが用いられ、燃料残量はこれらの合成抵抗値に基づくので、リレー式の液位センサ等と比較して、非常に簡易な構成で故障の少ない燃料計が得られる。
【0053】
請求項6記載の発明によれば、主燃料タンク1及び副燃料タンク2の両方が使用されるか、或いは、一方のみが使用されるかを識別する識別手段37を更に有しているので、単燃料タンク車両向けに対しても容易に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料計の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は本発明の燃料計の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る主燃料タンク、及び副燃料タンクの概要を示す断面図である。
【図4】図4(A)は本発明の一実施形態に係る表示スケール切替処理を示すフローチャートであり、図4(B)は本発明の一実施形態に係る燃料残量警告処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の処理手順に係る燃料残量、指針指示値の関係を示すグラフである。
【図6】図6(A)及び図6(B)はそれぞれ、第1従来例及び第2従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 主燃料タンク
2 副燃料タンク
3 制御部
4 指針駆動回路
5 LED駆動回路
6 表示部
11 主燃料タンク用液位センサ(主測定手段)
21 副燃料タンク用液位センサ(副測定手段)
Claims (6)
- 主燃料タンク及び副燃料タンクと、
前記主燃料タンク及び前記副燃料タンクにそれぞれ装着されて、前記主燃料タンク中及び前記副燃料タンク中の燃料の液位を測定する主測定手段及び副測定手段とを備え、
液位低下時には前記副燃料タンクから先に液位変動し前記副燃料タンクが空状態になった後に前記主燃料タンクが液位変動し、液位上昇時には前記主燃料タンクから先に液位変動し前記主燃料タンクが満状態になった後に前記副燃料タンクが液位変動していくように構成された車両に搭載される燃料計であって、
予め定められた指示角度範囲にわたって回動する単一の指針にて燃料残量を指示する単一の燃料残量指示手段と、
前記主測定手段及び前記副測定手段によるそれぞれの測定結果を合成して、これに対応する燃料残量を算出する燃料残量算出手段と、
前記燃料残量を、前記主燃料タンク又は前記副燃料タンクのいずれにおいて液位変動しているかを判断する基準となるしきい値と比較して、いずれの燃料タンクにおいて液位変動しているかを判断する比較判断手段と、
該比較判断手段の結果により、前記副燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク及び前記副燃料タンクの合計容量に対する燃料残量に基づいて前記単一の指針の指示角度範囲を割り当て、前記主燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンクの容量に対する燃料残量に基づいて前記単一の指針の指示角度範囲を割り当てて、この割り当てられた角度範囲にわたって前記単一の指針を回動させる指針制御手段と、
前記比較判断手段の結果により、前記副燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンク及び前記副燃料タンクの合計容量に基づくスケール表示であること表示し、前記主燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンクの容量に基づくスケール表示であることを表示する識別情報表示手段と、を含むことを特徴とする燃料計。 - 請求項1記載の燃料計において、
前記識別情報表示手段は、前記主燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合にのみ、前記識別情報として前記主燃料タンクの略最大容量を示す意匠を表示する
ことを特徴とする燃料計。 - 請求項1又は2記載の燃料計において、
前記しきい値は、前記主測定手段及び前記副測定手段による測定値の出力変動のない不感帯域をカバーするように設定された、主燃料タンク側しきい値及び副燃料タンク側しきい値から構成され、
前記指針制御手段は、前記燃料の液位が減少して前記主燃料タンク側しきい値以下になり前記主燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記主燃料タンクの容量に対する燃料残量を指示するように前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させ、前記燃料の液位が増加して前記副燃料タンク側しきい値以上になり前記副燃料タンクにおいて液位変動していると判断される場合には、前記合計容量に対する燃料残量を指示するように前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させる
ことを特徴とする燃料計。 - 請求項3記載の燃料計において、
前記燃料残量算出手段にて算出された前記燃料残量を、燃料残量不足を警告すべき予め設定された所定の燃料残量警告値と比較し、この比較結果に基づき燃料残量警告する燃料残量警告手段、
を更に含むことを特徴とする燃料計。 - 請求項4記載の燃料計において、
前記主測定手段及び前記副測定手段は共に、前記液位変動に応じて抵抗値を変化させるタイプの液位センサであり、
前記燃料残量は、前記主測定手段及び前記副測定手段のそれぞれの抵抗値の合成抵抗値に基づく
ことを特徴とする燃料計。 - 請求項1〜5いずれか記載の燃料計において、
前記主燃料タンク及び前記副燃料タンクの両方が使用されるか、或いは、前記これらの一方のみが使用されるかを識別する識別手段を更に有し、
前記一方のみが使用される場合には、前記指針制御手段は、使用される燃料タンクに対応して装着された液位測定手段にて検出される液位検出出力に基づいて前記指針を前記指示角度範囲にわたって回動させる
ことを特徴とする燃料計。
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