近年、電子機器の小型化、高性能化及び高速化のために、半導体装置に対しても小型化、薄型化、高速化、多端子化及び高密度実装化が要求されるようになっている。そこで、これらの要求に対応するため、小型の多端子パッケージとして各種のCSP(チップサイズパッケージ)が開発されている。
特に、素子電極と外部金属端子とを接続する金属配線を半導体ウェハ上に形成した後に、最終工程でチップに分割されるウェハレベルCSPは、ベアチップと同等の究極の小型化、薄型化パッケージを実現する技術として近年注目されている。
以下、従来のウェハレベルCSPと呼ばれる半導体装置及びその製造方法について、図8及び図9を参照しながら説明する。
図8は従来の半導体装置10を模式的に示す斜視図である。該図では、金属配線と外部金属電極とが露出するように、樹脂層の半分程度を切り開いて示している。また、さらに一部では樹脂層に加えて絶縁層も切り開いて示している。
図9は図8のIX−IX線における断面図である。
図8及び図9に示すように、従来の半導体装置10においては、半導体素子11表面上に、外部との電気的接続を行なうための複数の素子電極12が形成されている。尚、図示はしていないが、半導体素子11はトランジスタ等を含む半導体集積回路を内部に備えている。半導体素子11の表面上には、パッシベーション膜13及び絶縁層14が積層されていると共に、該積層膜において、素子電極12の上に開口部が形成されている。尚、パッシベーション膜13は、半導体集積回路を保護する目的で半導体素子11の表面上に形成されている。絶縁層14の上には金属配線15が形成されていると共に、絶縁層14の開口部において金属配線15は素子電極12と電気的に接続されている。尚、絶縁層14の上には金属配線15の一部として、外部電極形成用ランド16が形成されている。該外部電極形成用ランド16上には外部金属電極17が形成され且つ該外部金属電極17は金属配線15と電気的に接続されている。
外部金属電極17の上面が露出するように樹脂層18が形成されており、半導体素子11、絶縁層14、金属配線15及び外部金属電極17を封止している。外部金属電極17の上に、外部金属端子19が形成されている。
図8及び図9に示す従来の半導体装置10において、素子電極12と外部金属端子19とは電気的に接続されている。具体的には、素子電極12と接続され且つ絶縁層14上に形成された金属配線15と、金属配線15の一部である外部電極形成用ランド16と、外部電極形成用ランド16上に形成された外部金属電極17を順に介して、素子電極12と外部金属端子19とが電気的に接続される。
また、外部金属端子19によって実装基板等の外部装置(図示せず)と本実施形態の半導体装置10とが固定されていると共に、外部金属端子19によって外部装置と素子電極12とが電気的に接続されている。
また、絶縁層14及び樹脂層18によって、半導体素子11の保護及び電気的絶縁が行われている。さらに、絶縁層14及び外部金属電極17は、本実施形態の半導体装置10を実装した後に該半導体装置10と外部装置との間の熱膨張率の差等により生じた応力が該半導体装置10にかかった際、この応力を緩和する機能を有する。
次に、従来の半導体装置10の製造方法について説明する。
まず、トランジスタ等を含む半導体集積回路(図示せず)を内部に備えた複数の半導体素子11を有する半導体ウェハを準備する。各半導体素子11上には、素子電極12を予め形成しておくと共に、素子電極12を露出させるような開口部を有するパッシベーション膜13を予め形成しておくものとする。
パッシベーション膜13上に、例えば感光性の絶縁材料を塗布し、乾燥した後に、露光及び現像することで、素子電極12を露出させた開口部を有する絶縁層14を形成する。次に素子電極12から絶縁層14上に亘って、金属配線15及び金属配線15の一部である外部電極形成用ランド16を形成する。さらに、金属配線15の一部である外部電極形成用ランド16上に、外部金属電極17を形成する。次に絶縁層14、金属配線15、外部電極形成用ランド16及び外部金属電極17を封止する樹脂層18を形成する。このとき、外部金属電極17の上面が露出するように樹脂層18を形成する。次に、外部金属電極17の表面上に外部金属端子19を形成する。
最後に、複数の半導体装置10の集合体となっている半導体ウェハを所定のスクライブラインに沿ってダイシングすることにより、複数の個片化された半導体装置10を形成する。以上の製造工程で、図8及び図9に示す半導体装置10が得られる。これにより、半導体素子11と同一サイズの半導体装置10が製造されるので、究極の小型化が実現できるのである。
特開2001−156200号公報(請求項1、6)
しかしながら、前記従来の半導体装置10には、放熱性が悪くて熱抵抗が高いという課題がある。
この課題は、次の2つのことを原因として起こる。第1の原因は、半導体装置10が非常に小型・薄型化されているため、QFN(クワッドフラットノンリードパッケージ)やQFP(クワッドフラットパッケージ)に代表されるようなリードフレーム型パッケージに比べると周囲への熱放射性が悪いことである。また、第2の原因は、金属配線15及び外部金属電極17の幅及び厚さが非常に小さく、リードフレーム型パッケージのリードフレームと比較すると、熱伝導体として非常に重要な役目を担う金属部の面積及び体積が非常に小さいことである。具体的には、リードフレームは厚さが200〜300μm程度であるのに対して、従来の半導体装置10の金属配線15の厚さは5〜10μm程度、外部金属電極17の厚さは100μm程度と薄い。特に、高い放熱性を要求される電源IC等においては大きな課題である。
放熱性の問題については、半導体素子11の裏面に放熱板を形成するという解決手法もあるが、この手法では組立工程が増加し、材料費及び組立費用が増加することになる。
また、従来の半導体装置10では、外部金属端子19の配列ピッチが狭ピッチ化すると共に多端子化するにつれて、半導体装置を実装基板等の外部装置に実装した後の実装強度及び実装信頼性が低下するという課題がある。外部金属端子19の配列ピッチが0.5mmピッチ以下になると、必然的に外部金属端子19の大きさ及び直径も小さくなり、外部装置への実装方法も困難になるためである。
半導体装置を外部装置に実装した後に、アンダーフィルを補強材として使用することによって前記の問題点を解決する手法もあるが、この手法では実装工程が増加し、材料費及び実装費用が増加することになる。また、アンダーフィルは半導体装置の周囲に塗布領域が必要となるため、結果的に実装面積が大きくなり、小型化された従来の半導体装置の優位性を低下させる。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、高密度実装を可能とし且つ放熱性及び実装信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子上に形成された素子電極と、半導体素子上に形成され且つ素子電極の上に開口部を有する絶縁層と、絶縁層上に形成され且つ開口部において素子電極と電気的に接続された配線と、配線上に形成され且つ配線と電気的に接続された外部電極と、絶縁層における配線の形成領域以外の他の領域の上に形成された放熱層と、外部電極及び放熱層のそれぞれの上面が露出するように半導体素子、絶縁層、配線、外部電極及び放熱層を封止する樹脂層と、外部電極上に形成された外部端子とを備えている。
本発明の半導体装置によると、放熱層が半導体装置内部に組み込まれており、該放熱層によって、半導体素子から発生した熱を半導体装置の外まで放熱する経路が確保されている。このため、放熱性が高く熱抵抗の低い半導体装置が実現されている。
放熱性を高めるために半導体素子の裏面に放熱板を有するような構造構造をとる手法では、該放熱板を形成するために追加の材料や組立工程を必要とする。これに対し、本発明の半導体装置では放熱層が半導体装置内部に組み込まれているため、追加の材料や組立工程は不要であり、したがって追加の材料費及び組立費用も必要ない。
また、外部装置に対して本発明の半導体装置を実装する際に本発明の放熱層を使用することによって、具体的には前記放熱層と外部装置上の金属パターンを接合することによって、より放熱性を向上させることもできる。
また、外部端子によって外部装置に実装した場合、外部電極上に形成される外部端子が狭ピッチ化や多端子化に伴って小さくなることから、狭ピッチ化や多端子化に伴って実装強度及び実装信頼性が低下する。これに対し、本発明の放熱層は狭ピッチ化や多端子化に伴って小さくする必要はなく、任意の大きさで形成できる。このため、本発明の放熱層を外部装置に対する実装に利用すれば、放熱性の向上に加えて実装強度及び実装信頼性も向上できる。このようにして実装しても、アンダーフィルを用いて実装強度及び実装信頼性を向上する手法とは異なり、実装面積が増加することはない。そのため、高密度の実装が可能である。さらに、前記のようにして本発明の半導体装置を実装しても、アンダーフィルを用いる手法では必要になる追加の材料費及び組立費用は必要ない。
尚、本発明の放熱層の上面は、樹脂層の表面と面一に形成されているか、又は樹脂層の表面から凸状に突出するように形成されることが好ましい。
また、放熱層上に形成された放熱用端子をさらに備えていることが好ましい。
このようにすると、熱伝導体としての重要な役割を担う部分の表面積及び体積が増すため、半導体素子から発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。
また、絶縁層と放熱層との間に形成された放熱層形成用ランドをさらに備えていることも好ましい。
このようにすると、放熱層形成用ランドを放熱層を形成する際に利用できる。
また、放熱層形成用ランドと複数形成されている素子電極のうちの一部の素子電極とを接続することが好ましい。
このようにすると、放熱層形成用ランドと配線とを介して放熱層を一部の素子電極と接続することができる。その結果、半導体素子内部の集積回路で発生した熱を直接放熱する経路を確保することができ、半導体素子で発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。また、該接続によって電気的な接続も行なわれる場合は、放熱層を集積回路のGND端子(グランド端子)としても利用できる。
また、放熱層形成用ランドと複数形成されている外部電極のうちの一部の外部電極とを接続することが好ましい。
また、放熱層形成用ランドと配線とを介して放熱層を一部の外部電極と接続することができる。その結果、放熱に関与する部分の面積及び体積を増すことができ、また放熱経路を増やすことができることから、半導体素子で発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。
また、絶縁層上に、素子電極と電気的に接続されていない放熱用ダミー配線が形成されていることが好ましい。
このようにすると、該ダミー配線を放熱層形成用ランドと接続することで、放熱に関与する部分の面積及び体積を増やし、且つ放熱経路を増やすことができる。その結果、半導体素子で発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体素子上に素子電極を形成する工程と、半導体素子上に、素子電極を露出させる開口部のある絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に、開口部において素子電極と電気的に接続された配線を形成する工程と、配線上に、配線と電気的に接続された外部電極を形成する工程と、絶縁層における配線の形成領域以外の他の領域の上に放熱層を形成する工程と、外部電極及び放熱層のそれぞれの上面が露出するように半導体素子、絶縁層、配線、外部電極及び放熱層を封止する樹脂層を形成する工程と、外部電極上に外部端子を形成する工程とを備えている。
本発明の半導体装置の製造方法によると、絶縁層上に放熱層を形成することによって、放熱層を半導体装置内部に組み込んだ構造を持つ本発明の半導体装置を製造することができる。この結果、該放熱層によって、半導体素子から発生した熱を半導体装置の外まで放熱する経路を確保できるため、放熱性が高く熱抵抗の低い半導体装置を製造できる。
尚、絶縁層を形成する工程の後で且つ樹脂層を形成する工程より前に、絶縁層と放熱層との間に放熱層形成用ランドを形成する工程をさらに備えていても良い。
このようにすると、放熱層形成工程において、放熱層形成用ランドを利用することができる。
また、配線を形成する工程と、放熱層形成用ランドを形成する工程とを同一の工程において行なうことが好ましい。すなわち、配線形成工程において、配線と同一材料からなる放熱層形成用ランドを形成することが好ましい。
このようにすると、新たな製造工程を追加することなく放熱層形成用ランドが形成できる。
また、外部電極を形成する工程と、放熱層を形成する工程とを同一の工程によって行なうことが好ましい。すなわち、外部電極を形成する工程において、外部電極と同一材料からなる放熱層を形成することが好ましい。
このようにすると、新たな製造工程を追加することなく放熱層が形成できる。
また、前記放熱層を形成する工程の後に、放熱層上に、放熱用端子を形成する工程をさらに備えていても良い。
このようにして放熱用端子を形成すると、熱伝導体としての重要な役割を担う部分の表面積及び体積が増すため、半導体素子から発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。
また、外部端子を形成する工程と、放熱用端子を形成する工程とを同一の工程によって行なうことが好ましい。すなわち、外部端子形成工程において、外部端子と同一材料からなる放熱用端子を形成することが好ましい。
このようにすると、新たな製造工程を追加することなく放熱用端子が形成できる。
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法を用いると、新たな製造工程を追加する必要なく本発明の半導体装置を製造することができる。
本発明の半導体装置は、半導体装置の内部に組み込まれた放熱層を備えているため、放熱性の優れた熱抵抗の低い半導体装置を実現できると共に、実装の費用及び工程を増加させることなく高密度実装を可能としている。
また、放熱層が外部装置実装時の補強ランドの役目を果たすため、実装強度及び実装信頼性も向上する。さらに、放熱層と外部装置上の金属パターンとが接合されることによって、放熱性もさらに向上する。
さらに、本発明の半導体装置の製造方法によれば、放熱層を外部電極と同時に形成することにより、新たな製造工程を追加することなく、低コストで本発明の半導体装置が製造できる。
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る半導体装置を模式的に示す斜視図である。該図は、金属配線、外部金属電極及び金属放熱層の一部が露出するように、樹脂層の半分程度を切り開いて示している。また、さらに一部では樹脂層に加えて絶縁層も切り開いて示している。
図2は図1のII−II線における断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の半導体装置100においては、半導体素子101表面上に、外部との電気的接続を行なうための複数の素子電極102が形成されている。尚、図示はしていないが、半導体素子101はトランジスタ等を含む半導体集積回路を内部に備えている。半導体素子101の表面上には、パッシベーション膜103及び絶縁層104が積層されていると共に、該積層膜における素子電極102の上に開口部が形成されている。尚、パッシベーション膜103は、半導体集積回路を保護する目的で半導体素子101の表面上に形成されている。絶縁層104の上には金属配線105が形成されていると共に、絶縁層104の開口部において金属配線105は素子電極102と電気的に接続されている。また、絶縁層104の上には金属配線105の一部として外部電極形成用ランド106が形成されている。該外部電極形成用ランド106上には外部金属電極107が形成され且つ外部金属電極107は金属配線105と電気的に接続されている。尚、金属配線105及び外部電極形成用ランド106は、どちらも薄膜金属層108と厚膜金属層109とが積層された構成となっている。
絶縁層104における金属配線105の形成領域以外の他の領域の上に、金属配線105と同一の材料からなる放熱層形成用ランド110が形成されている。これと共に、該放熱層形成用ランド110の上に、金属放熱層111が形成されている。
外部金属電極107及び金属放熱層111の上面が露出するように樹脂層112が形成されており、半導体素子101、絶縁層104、金属配線105、外部金属電極107、放熱層形成用ランド110及び金属放熱層111を封止している。外部金属電極107の上に、外部金属端子113が形成されている。外部金属端子113としては、例えば半田ボール又は半田印刷バンプなどが用いられる。
図1及び図2に示す本実施形態の半導体装置100において、素子電極102と外部金属端子113とは電気的に接続されている。具体的には、素子電極102と接続され且つ絶縁層104上に形成された金属配線105と、金属配線105の一部である外部電極形成用ランド106と、外部電極形成用ランド106上に形成された外部金属電極107とを順に介して、素子電極102と外部金属端子113とが電気的に接続される。
また、外部金属端子113によって実装基板等の外部装置(図示せず)と本実施形態の半導体装置100とが固定されていると共に、外部金属端子113によって外部装置と素子電極102とが電気的に接続されている。
また、絶縁層104及び樹脂層112によって、半導体素子101の保護及び電気的絶縁が行われている。さらに、絶縁層104及び外部金属電極107は、本実施形態の半導体装置100を実装した後に該半導体装置100と外部装置との間の熱膨張率の差等により生じた応力が該半導体装置100にかかった際、この応力を緩和する機能を有する。
次に、本実施形態における半導体装置の製造方法について、図3(a)〜(d)、図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)を参照しながら説明する。図3(a)〜(d)、図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)は、図1及び図2に示す半導体装置の構造を実現するための各製造工程を模式的に示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、トランジスタ等を含む半導体集積回路(図示省略)を内部に備えた複数の半導体素子101を有する半導体ウェハ100Aを準備する。各半導体素子101上には、素子電極102を予め形成しておくと共に、素子電極102を露出させるような開口部を有するパッシベーション膜103を予め形成しておくものとする。
尚、114はスクライブラインであり、製造工程の最後に半導体ウェハ100Aは該スクライブライン114に沿ってダイシングされ、複数の個片の半導体装置100となる。
次に、パッシベーション膜103の上にスピンコート法により感光性を有する絶縁材料、例えばエステル結合型ポリイミドを塗布した後、該絶縁材料を乾燥させ、続いて露光及び現像を順次行なう。この工程で絶縁材料における素子電極102上に形成された部分を選択的に除去し、複数の素子電極102を露出させる開口部を有する絶縁層104を形成する。
尚、感光性を有する絶縁層104の材料としては、エステル結合型ポリイミドの他にアクリレート系エポキシ等のポリマーでもよく、感光性材料であれば特に限定されない。また、感光性を有する絶縁層104は、スピンコート法による塗布及びそれに続く乾燥という方法に代えて、あらかじめフィルム状に形成された材料を用いる方法によって形成してもよい。その場合、フィルム状絶縁材料を半導体素子101上に貼り付けた後、露光及び現像によって該絶縁材料に開口部を形成して素子電極102を露出させる。
次に、図3(b)に示すように、絶縁層104の上及びその開口部から露出している素子電極102の上全面に亘って、薄膜金属層108を形成する。具体的には、例えば、スパッタリング法により、厚さ0.2μm程度のTiW膜と厚さ0.5μm程度のCu膜との積層膜を薄膜金属層108として形成してもよい。
尚、スパッタリング法以外の方法、例えば真空蒸着法、CVD法又は無電解メッキ法等の薄膜形成技術を用いて薄膜金属層108を形成しても良い。また、薄膜金属層108に使用する金属の種類も前述のTiW膜又はCu膜には限定されない。
次に、スピンコート法を用いてポジ型感光性レジスト樹脂又はネガ型感光性レジスト樹脂を薄膜金属層108上に塗布した後、該レジスト樹脂を乾燥させ、続いて露光及び現像を順次行なう工程によって、図3(c)に示すように第1のメッキレジスト膜115を形成する。該第1のメッキレジスト膜115は、金属配線105、外部電極形成用ランド106及び放熱層形成用ランド110のそれぞれの形成領域に開口部を持つ。
尚、スピンコート法に代えて、フィルム状にあらかじめ形成された材料を薄膜金属層108上に張り付けることによって第1のメッキレジスト膜115を形成しても良い。
続いて、パターン形成された第1のメッキレジスト膜115のパターン開口部において、電解メッキ等の厚膜形成技術により、例えば、厚さが5〜10μm程度のCu膜からなる厚膜金属層109を薄膜金属層108上に選択的に形成する。尚、厚膜金属層109の材料も厚さも特に限定されるものではない。
また、厚膜金属層109は金属配線105、外部電極形成用ランド106及び放熱層形成用ランド110の主要部分となる。
次に、第1のメッキレジスト膜115を溶融除去した後、薄膜金属層108及び厚膜金属層109をポジ型感光性レジスト膜又はネガ型感光性レジストで覆い、周知の露光及び現像技術により、図3(d)に示すように第2のメッキレジスト膜116を形成する。ここでも、感光性を有するレジスト膜の形成において、スピンコートによる塗布及び乾燥を用いても良いし、又はあらかじめフィルム状に形成された材料を用いても良い。尚、該第2のメッキレジスト膜116は、外部金属電極107及び金属放熱層111のそれぞれの形成領域に開口部を持つ。
続いて、パターン形成された第2のメッキレジスト膜116のパターン開口部において、厚膜金属層109上に外部金属電極107及び金属放熱層111を選択的に形成する。具体的な形成方法や材料は特に限定されるものではないが、例えば、電解メッキにより、厚さが100μm程度のCu膜よりなる外部金属電極107及び金属放熱層111を選択的に形成する。
なお、外部金属電極107の断面形状(第2のメッキレジスト膜116に形成されるパターン開口部の形状)は、後に形成する樹脂層と外部金属電極107との密着面積を大きくすることを目的に、多角形や星形に形成することも可能である。
外部金属電極107及び金属放熱層111の形成後、図4(a)に示すように、第2のメッキレジスト膜116を溶融除去する。さらに、薄膜金属層108を溶融除去できるエッチングを施す。例えば、薄膜金属層108を構成するCu膜に対しては塩化第二鉄溶液を用いて薄膜金属層108、厚膜金属層109、外部金属電極107及び金属放熱層111の全面にエッチングを施す。またTiW膜に対しては過酸化水素水を用いて薄膜金属層108、厚膜金属層109、外部金属電極107及び金属放熱層111の全面にエッチングを施す。本実施形態では外部金属電極107、金属放熱層111、薄膜金属層108及び厚膜金属層109のいずれにもCuが使われているが、薄い薄膜金属層108が外部金属電極107、金属放熱層111及び厚膜金属層109よりも先行して除去される。この工程で薄膜金属層108が除去されることにより、厚膜金属層109と、その直下にあってエッチングされずに残る一部の薄膜金属層108とによって、金属配線105、外部電極形成用ランド106及び放熱層形成用ランド110が形成される。
ここで、例えば、Cuメッキにて形成された金属配線105の厚さが5μmであるとすると、Line/Space=20/20μmの配線形成が可能である。つまり、金属配線105の厚さが5μmのとき、幅20μmの隙間を開けて複数並んだ幅20μmの配線を形成することができる。
次に、図4(b)に示すように、半導体ウェハ100A、絶縁層104、金属配線105、外部電極形成用ランド106、放熱層形成用ランド110、外部金属電極107及び金属放熱層111を封止する樹脂層112を形成する。このとき、外部金属電極107及び金属放熱層111のそれぞれの上面が露出するように樹脂層112を形成する。
具体的には、一つの封止型117を用いることにより、例えばエポキシ系樹脂からなる厚さ50〜100μmの樹脂層112を半導体装置100が複数形成された半導体ウェハ100Aを覆うように形成する。このようにすると、樹脂層112によって、金属配線105、外部電極形成用ランド106、放熱層形成用ランド110が外部から保護されると共に、外部金属電極107の側面及び金属放熱層111の側面も外部から保護される。
次に、外部金属電極107の表面上に酸化防止処理を施した後、外部金属電極107上に半田ペーストを印刷した後に溶融させることで、図5(a)に示すように、外部金属端子113を形成する。
また、金属放熱層111上に放熱用端子118を形成することが好ましい。この場合、金属放熱層111の表面上に酸化防止処理を施し、金属放熱層111上に例えば半田ペーストを印刷、溶融させる等の方法で放熱用端子118を形成する。
尚、外部金属端子113及び放熱用端子118としては、半田ボール又は半田印刷バンプ若しくは無電解メッキによるバンプ等を用いてもよい。また、絶縁材料である樹脂層112表面上には外部金属端子113及び放熱用端子118を形成しない。
最後に、図5(b)に示すように、複数の半導体装置100の集合体となっている半導体ウェハ100Aを所定のスクライブライン114に沿ってダイシングすることにより、複数の個片化された半導体装置100を形成する。以上の製造工程で、図1及び図2に示す半導体装置100が得られる。
以上説明したように、本実施形態によると、金属放熱層111が半導体装置100内部に組み込まれており、該金属放熱層111によって、半導体素子101から発生した熱を半導体装置100の外まで放熱する経路が確保されている。このため、放熱性が高く熱抵抗の低い半導体装置100が実現されている。
放熱性を高めるために半導体素子101の裏面に放熱板を有するような構造構造をとる手法では、該放熱板を形成するために追加の材料や組立工程を必要とする。これに対し、本発明の半導体装置100では金属放熱層111が半導体装置100内部に組み込まれているため、追加の材料や組立工程は不要であり、したがって追加の材料費及び組立費用も必要ない。
また、外部装置に対して半導体装置100を実装する際に金属放熱層111を使用することによって、具体的には金属放熱層111と外部装置上の金属パターンを接合することによって、より放熱性を向上させることもできる。
また、外部金属端子113によって外部装置に実装した場合、外部金属電極107上に形成される外部金属端子113が狭ピッチ化や多端子化に伴って小さくなることから、狭ピッチ化や多端子化に伴って実装強度及び実装信頼性が低下する。これに対し、金属放熱層111は狭ピッチ化や多端子化に伴って小さくする必要はなく、任意の大きさで形成できる。このため、金属放熱層111を外部装置に対する実装に利用すれば、放熱性の向上に加えて実装強度及び実装信頼性も向上できる。このようにして実装しても、アンダーフィルを用いて実装強度及び実装信頼性を向上する手法とは異なり、実装面積が増加することはない。そのため、高密度の実装が可能である。さらに、金属放熱層111を外部装置に対する実装に利用しても、アンダーフィルを用いる手法では必要になる追加の材料費及び組立費用は必要ない。
また、金属放熱層111は外部金属電極107と同一の工程で形成できる。外部金属電極107を形成する工程は従来の半導体装置の製造工程においても存在する工程であるため、従来の半導体装置を製造するときに比べて新しい工程を追加することなく金属放熱層111を形成できる。
また、放熱層形成用ランド110は、金属配線105及び外部電極形成用ランド106と同一工程で形成できる。金属配線105及び外部電極形成用ランド106を形成する工程は、従来の半導体装置の製造工程においても存在する工程である。そのため、従来の半導体装置を製造するときに比べて新しい工程を追加することなく放熱層形成用ランド110を形成できる。
尚、図2では金属放熱層111は樹脂層112と面一で形成されており、好ましい形状ではあるが、この形状は必須のものではない。他の形状として、例えば金属放熱層111は樹脂層112から凸状に突出して形成されていることも好ましい。また、金属放熱層111が樹脂層112よりも凹んだ形状に形成されている構成を除外するものではない。
また、金属放熱層111上には、外部金属端子113と同一の材料よりなる放熱用端子118をさらに備えていると、放熱に関係する金属部分の表面積及び体積が増すことから、半導体素子101から発生した熱を効率的に発散させる効果が顕著に得られる。さらに、放熱用端子118を介して外部装置に実装することができる。
放熱用端子118は、外部金属端子113と同一の工程で形成できる。外部金属端子113を形成する工程は、従来の半導体装置の製造工程においても存在する工程である。そのため、従来の半導体装置を製造するときに比べて新しい工程を追加することなく放熱用端子118を形成できる。
また、本実施形態では放熱層形成用ランド110を金属配線105と同一の材料で形成した。しかし、放熱層形成用ランド110を金属配線105と別の材料で形成しても差し支えは無い。
また、本実施形態では放熱用端子118を外部金属端子113と同一の材料で形成した。しかし、放熱用端子118を外部金属端子113と別の材料で形成しても差し支えは無い。
また、本実施形態において、配線、外部電極、放熱層及び外部端子のそれぞれの材料として金属を用いて、金属配線105、外部金属電極107、金属放熱層111及び外部金属端子113を形成した。しかし、これらの材料として金属を使用することは必須事項ではなく、他の伝導性材料を用いても良い。
以下、図6(a)〜(c)に金属放熱層111の代表的形状及び配置を示す。図6(a)〜(c)はいずれも、半導体装置100を外部金属端子113の側から見た平面図である。
金属放熱層111は外部金属端子113の配列の中央部に配置し、金属放熱層111の形状を四角形とするのが基本的な構成である。但し、樹脂層112への応力集中による樹脂層クラック及びヒビの発生を防止するため、金属放熱層111のコーナー部をR形状とすることが好ましい。図6(a)はこの場合の金属放熱層111の形状及び配置を示す。
また、図6(b)に示すように、金属放熱層111を円形としても良い。樹脂層112への応力集中による樹脂層クラック及びヒビの発生を防止するためには、円形とするのがより優れている。あるいは、図6(c)に示すように菱形としても良い。この場合もコーナーはR形状とする。この形状は、樹脂の未充填及びボイド発生を防止するため、樹脂層112形成時の樹脂流動方向を考慮したものである。その他、金属放熱層111の形状としては、樹脂層112との密着性確保の観点から多角形としても良く、金属放熱層111の形状は特に限定されない。
尚、図6(a)〜(c)において、後述する放熱用端子118が金属放熱層111の全面に亘って形成されている場合には、外部金属端子113の側から見ると、金属放熱層111ではなく放熱用端子118が見えることになる。
また、金属放熱層111の配置位置としては、外部金属端子113配列の中央部だけに限るものではなく、外部金属端子113配列の周辺部等であってもよい。
また、本実施形態では金属放熱層111は、素子電極102、外部金属電極107、金属配線105と接続されることなく独立して形成した。しかし、放熱性を向上させるためには放熱層形成用ランド110と複数形成されている金属配線105のうちの一部の金属配線105とを接続する方が好ましい。このようにすると、放熱層形成用ランド110と金属配線105とを介して、金属放熱層111を複数形成されている素子電極102のうちの一部の素子電極102と接続する事が出来る。その結果、半導体素子101内部の集積回路から発生した熱を直接放熱する経路が確保されるため、放熱性がさらに向上する。また、このような構成にすると、金属放熱層111を集積回路のGND端子(グランド端子)としても活用できる。
また、同様に放熱層形成用ランド110と一部の金属配線105とを接続することによって、金属放熱層111と複数形成されている外部金属電極107のうちの一部の外部金属電極107とを接続することも好ましい。これは放熱層形成用ランド110、金属配線105及び外部電極形成用ランド106を介して行なわれる。このようにすると、放熱経路を増やすことができるので、放熱性が向上する。
また、例えば図7(a)及び(b)に示すように、絶縁層104上の何も形成されていない空きスペース(金属配線105及び放熱層形成用ランド110の形成されていないスペース)に、放熱層形成用ランド110と接続された放熱用ダミー金属配線119を形成するのが好ましい。図7(a)及び(b)はいずれも、半導体装置100を金属放熱層111が形成されている側から見た模式的な平面図である。
このようにすると、放熱用ダミー金属配線119は放熱層形成用ランド110を介して金属放熱層111と接続されることになり、放熱に関与する金属部の面積及び体積が増えるため、放熱性を向上できる。
放熱用ダミー金属配線119の形状は特に限定するものではない。例えば図7(a)に示すように、素子電極102が半導体素子101の外周部に形成されている場合にも放熱用ダミー金属配線119は形成できるし、又は例えば図7(b)に示すように、素子電極102が半導体素子101上の全面に亘って形成されている場合にも放熱用ダミー金属配線119は形成できる。
尚、図7(a)及び(b)のいずれも、樹脂層112、外部金属端子113及び放熱用端子118の図示を省略している。また、図7(a)及び(b)において、素子電極102の形成位置を波線で示している。
ここで、金属配線105、外部電極形成用ランド106及び放熱層形成用ランド110を形成する工程と同一の工程で放熱用ダミー金属配線119を形成することができる。その結果として、新たな工程を追加することなく、放熱用ダミー金属配線119の形成を実現できる。
尚、本実施形態では放熱層形成用ランド110が形成されている。このため、金属配線105や放熱用ダミー金属配線119を金属放熱層111と接続する際には、放熱層形成用ランド110を介して行われている。しかし、放熱層形成用ランド110は必須の要素ではない。放熱層形成用ランド110を形成しない場合は、金属配線105又は放熱用ダミー金属配線119を放熱層形成用ランド110を介して金属放熱層111と接続するのに代えて、金属配線105又は放熱用ダミー金属配線119を直接金属放熱層111と接続すればよい。
また、本実施形態において、放熱用ダミー配線の材料として金属を用い、放熱用ダミー金属配線119を形成した。しかし、放熱用ダミー配線の材料として金属を使用することは必須事項ではなく、他の伝導性材料を用いても良い。