JP4084690B2 - 切断刃 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刃先における刃角が60°以下の薄刃を具備する切断刃に関し、特に刃立性および耐摩耗性に優れた超硬合金製切断刃に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂フィルム、磁気テープ、紙、金属箔、金属薄板等の長尺シート状の被切削物を連続的に切断するための図1に示すようなスリッタ用丸刃やセラミックグリーンシート裁断用の切断刃等の薄刃を具備する切断刃材料として、炭化タングステン−コバルト系超硬合金が多く用いられている。例えば特許文献1では、Coを8〜20質量%含有するとともに、Cr、TaおよびVの1種以上の炭化物を添加して炭化タングステン粒子の平均粒径を1μm以下に制御した超微粒超硬合金からなり刃角θが10〜20°と極薄刃をセラミックグリーンシート裁断用の薄刃として用いることにより刃先の硬度、強度が向上して耐欠損性および耐摩耗性に優れた薄刃が得られると記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、Cr、TaおよびVの炭化物または炭窒化物を総量で0.2〜3質量%と、コバルトを4〜10質量%とを含有し、残部が平均粒径1μm以下のWC粒子からなる超微粒超硬合金製ドリルについて、その抗磁力を34200〜46200A/m(430〜580Oe)、特に39000〜43800A/m(490〜550Oe)に制御することにより、ドリルの耐チッピング性を高めてドリルの穴開け寿命を向上できることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3では、平均粒径0.1〜1μmのWC粒子を含む超微粒超硬合金を作製するに当たり、通電加圧焼成により20分以下の短時間加圧焼成してCo相を不均一な分布とし、抗磁力Hcを15900〜27100A/m(200〜340Oe)と低く制御することによって、超硬合金を高硬度のまま靭性を高めて、精密金型として好適であることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−86387号公報
【特許文献2】
特開平8−243820号公報
【特許文献3】
特開平11−181540号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、切断刃の場合、特許文献1のようにWC粒子の粒径、Co量および他の添加物量を制御するのみでは合金組織を完全に均一とすることができず、また、特許文献3のようにCo相の不均一な分布が存在すると、Coプールや異常に粒成長したWC粒子、粒成長抑制剤として添加した金属炭化物相(第3相)の出現、またはη相や遊離炭素の存在等、合金中の不均一な部分に起因して、薄刃の刃先先端を凹凸のないシャープエッジとする刃立性および刃先先端の耐摩耗性が低下してしまい、特に軟質で薄い被切断材を切断する場合等においてはナイフの切れ味が低下して、被切断材の切断面にダレやバリ、変形が発生したり、切断面が切断ではなく破断されるようになって被切断材の一部が粉として脱落した切削粉が発生するという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のように合金の抗磁力を34200〜46200A/m(430〜580Oe)と高くすると、合金中の組織の均一性は高まるものの、薄刃の刃先先端が加工時に欠けやすく刃先先端が部分的に抜け落ちて不均質となることから、先端切刃の刃立性が損なわれて被切断材に断続的に大きな応力がかかって薄刃の耐欠損性および耐摩耗性が低下してしまう結果、薄刃の寿命が短くなるという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、先端切刃の刃立性および耐摩耗性がともに向上した薄刃を具備する切断刃を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、刃先における刃角θが60°以下で、刃先先端が曲率半径5μm以下のシャープエッジをなす薄刃に用いる超微粒超硬合金として、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%と、Coを8〜15質量%との割合で含有し、残部が平均粒径0.1〜0.5μmのWC粒子からなり、抗磁力が23900〜38200A/mの超硬合金にて形成するとともに、前記刃先先端におけるCoプールの最大幅が1μm以下であることにより、超微粒超硬合金組織が均一で刃先加工に耐えうる靭性とを有して薄刃の刃先先端における刃立性を向上できるとともに、刃先先端の耐摩耗性を兼ね備える超硬合金となることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、前記超硬合金を粉砕し、#20メッシュを通した粉砕粉末を50℃の希塩酸(HCl:H2O=1:1)中で24時間溶解してろ過したろ液中に、ろ液中の総金属量に対してタングステンを10〜25質量%の割合で含有することによって、結合相の強化を図り超硬合金の抗折強度を向上させて刃立性および耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の切断刃の好適例である樹脂フィルム、磁気テープ、紙、金属箔、金属薄板等の長尺シート状の被切削物を連続的に切断するためのスリッタ用丸刃について、(a)正面図、(b)丸刃2、3の中心O、Pを通る軸Sにおける刃先部分の拡大断面図である図1を基に説明する。
【0013】
図1によれば、スリッタ用丸刃1は、概略円板形状の2枚の丸刃である第1刃(下刃)2と第2刃(上刃)3との刃先2a、3aが所定間隔(オーバーラップ量)Dだけ重なった状態で平行に配設されており、各丸刃2、3は各々の中心を固定されて、その軸を中心にそれぞれが回転するようにセッティングされている。
【0014】
本発明によれば、スリッタ用丸刃1のうち第2刃(上刃)3のように刃先における刃角θが60°以下、特に45°以下、さらには10〜30°で、刃先先端が曲率半径5μm以下、特に3μm以下のシャープエッジをなす薄刃を具備することが大きな特徴であり、これによって、被切断材にかかる応力を小さくできて切断面の寸法精度が高くかつダレやバリのない良好な加工面とすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、薄刃(上刃3)が、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%、特に0.5〜2質量%と、Coを8〜15質量%、特に9〜13質量%との割合で含有し、残部が平均粒径0.1〜0.5μm、特に0.1〜0.4μmのWC粒子からなり、抗磁力が23900〜38200A/m(300〜480Oe)、特に27900〜33400A/m(350〜420Oe)の超硬合金からなることが大きな特徴であり、これによって、超微粒超硬合金組織の均一性および刃先研磨加工に耐えうる靭性とを兼ね備えて薄刃3の刃先先端における刃立性を向上できるとともに、刃先先端の耐摩耗性を両立する超硬合金となる。
【0016】
すなわち、薄刃(上刃3)をなす超硬合金の抗磁力が23900A/m(300Oe)より低いと薄刃(上刃3)の耐摩耗性および刃立性がともに低下してしまい、逆に薄刃(上刃3)をなす超硬合金の抗磁力が38200A/m(480Oe)を超えると薄刃(上刃3)の刃立性が低下する。
【0017】
ここで、上記超硬合金を用いた薄刃3は、走査型電子顕微鏡で観察した刃先先端3aの凹凸の最大幅が3μm以下、特に2μm以下、さらに1μm以下であることが望ましく、また、前記刃先先端におけるCoプールの最大幅が1μm以下、特に0.8μm以下、さらに0.5μm以下であることが重要であり、これによって図2(a)に示すように刃先先端3aにおける刃立性を高めることができ、かつ耐摩耗性に優れた超硬合金となる。
【0018】
なお、上記超硬合金において、Co含有量が8%未満では刃先先端3aの刃立性が充分でなく不均一なカッティングとなる。逆に、Co含有量が15%を越えると切断刃としての硬度が不十分で,耐摩耗性が低下する。また、WC粒子の平均粒径が0.1μmより小さいと合金組織中にCoプール等の凝集が起こって薄刃の刃立性が低下し、逆にWC粒子の平均粒径が0.5μmより大きいと刃先先端3aにおいて図2(b)に示すような大きな凹凸が生じてしまい、やはり薄刃3の刃立性が低下してしまう。
【0019】
また、本発明によれば、前記超硬合金中に、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%、特にバナジウムを炭化物換算による総量で0.2〜2.5質量%とクロムを炭化物換算による総量で0.2〜2.5質量%の割合で含有することによって、炭化タングステン粒子の全体的な粒径(平均粒径)を効果的に制御することができるとともに、結合相の強化を図って全体的な抗折強度および耐欠損性を高めることができ、かつ薄刃3の刃立性および耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、薄刃(上刃3)をなす超硬合金1を粉砕し、#20メッシュを通した粉砕粉末を50℃の希塩酸(HCl:H2O=1:1)中で24時間溶解してろ過したろ液中に、ろ液中の総金属量に対してタングステンを10〜25質量%の割合で含有することによって、結合相の強化を図り超硬合金の抗折強度を向上して刃立性をさらに安定化することができる。
【0021】
さらに、被切断材が薄刃(上刃3)と接触して剥離不良による巻き込み、耐溶着性、切屑の滑り性を重視する条件でカッティングを行う場合には、薄刃(上刃3)主面(特に下刃2と対向する面5、F1、6)表面を算術平均粗さ(Ra)が0.1〜0.4μmの梨地状態に制御することが望ましく、被切断材の摩擦低減、切屑排出性の点では、薄刃(上刃3)主面(特に下刃2と対向する面5、F1)表面を算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、特に0.03μmの鏡面状態に制御することが望ましい。
【0022】
さらに、本発明の切断刃は、上述した超硬合金の表面に、周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物、特に(Tiab)Cxyz(ただし、M:Al、Zr、Cr、Siの群から選ばれる少なくとも1種、0<a≦1、0≦b<1、a+b=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、cBNおよびAl23の群から選ばれる少なくとも1種の硬質被覆層、またはフッ素樹脂コート層を単層または複数層形成したものであってもよい。
【0023】
上記被覆層の中でも、薄刃(上刃3)主面(特に下刃2と対向する面3A)表面を算術平均粗さ(Ra)が0.03μm以下の鏡面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)を成膜した場合には被切断材の滑り性もよく、かつ摩擦低減、切屑処理性にも優れた切断刃1となる。
【0024】
また、図1において、上刃3の重なり面側F1に位置する刃先3aに重なり面F1側の刃先3aの角部を切り取るようなテーパー5を形成してあり、下刃2および上刃3の刃先2a、3aが接触することを防止できる結果、刃先2a、3aそれぞれの寿命を延命できるとともに、刃先2a、3aが重なり始める点Aを通る軸T1における下刃2と上刃3との配置に示す横拡大側面図である図1(c)、および点Bを通る軸T2における下刃2と上刃3との配置に示す横拡大側面図である図1(b)に示すように、微小幅の所定幅のクリアランス(上刃3の刃先と下刃2との距離)Eを長期間にわたり精度良く設定することができる。
【0025】
すなわち、上記のように所定の微小幅に制御されたクリアランス値に調整してセッティングされたスリッタ用丸刃1の下刃2および上刃3を図1(a)に示すように、各々の丸刃2、3の中心を軸として互いに逆方向に回転させつつ、被切断材(図示せず)がスリッタ用丸刃1の側面方向を垂直に横切るように連続的に送ることにより、点Aから点B、特に点Aにおいて、下刃2と上刃3とが近似的に重なる部分、換言すれば被切断材のうち各々の刃先2a、3a間に形成された所定幅のクリアランスE部分に入り込んだ部分に所望の有効な剪断応力が付与されて、被切削物を連続的に小さい力で鋭利な剪断面にカッティングすることができる。
【0026】
ここで、本発明によれば、サブμm〜数μmオーダーの所定量のクリアランスを容易に設定できる点で、上刃3の刃先3aのテーパー角θ1が0°15′〜40°であることが望ましい。
【0027】
また、刃先2a、3a間の切れ味を高め、かつカッティングした後の被切削物が傾くことにより丸刃2、3から無理な力を受けず逃げられるようにするために、図1(b)の下刃2の概略側面図に示すように、上刃3の重なり面F1が中央3bから刃先3aに向かって傾き角θ2=2〜10°だけ傾いた凹形状をなしていることが望ましい。
【0028】
つまり、下刃2の刃先2aと上刃3の刃先3aとのなす角θ3、すなわち第1刃2の軸線Lと上刃3の刃先3aのテーパー5とのなす角θ3(θ1−θ2)は0〜30°であることが望ましく、これによって、図1(b)から明らかなようにクリアランスE=(2/D)×tanθ3の微少幅、特に0.005〜0.1mmのクリアランスEを精度良く、かつ容易に設定することができる。ここで、軸線Lは下刃2の中心Pを通って対向する刃先(2a、2a’)間を通る直線を指す。
【0029】
なお、従来刃先以外の所が、接触しないように軸と直角の刃先面より内側へ、数度の逃げ(アンダーカット)がとってあり、下刃2の重なり面F2に位置する刃先2aにもテーパー7が形成されていることが望ましい。また、下刃2の刃先2aより所定距離内側に切り欠き8を形成することによって、刃先を砥石で研磨する際に、加工性が良いという効果がある。
【0030】
なお、図1における下刃2も上刃3と同じ超微粒超硬合金にて形成してももちろん良い。また、図1はスリッタ用の丸刃について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲーベル刃やギャング刃、板刃、繊維切断用ナイフ等の特殊形状刃のような薄刃を具備する切断刃についても好適に使用可能である。
【0031】
(製造方法)
上述した切断刃を製造するには、まず、例えば平均粒径0.05〜0.4μmの炭化タングステン(WC)粉末を82〜91.7質量%、平均粒径0.3〜1.0μmの炭化バナジウム(VC)粉末、平均粒径0.3〜2.0μmの炭化クロム(Cr32)粉末、平均粒径0.3〜2.0μmの炭化クロム(TaC)粉末を合計で0.3〜3.0質量%、特に炭化バナジウム粉末を0.2〜2.5質量%、特に0.2〜0.6質量%と、炭化クロム粉末を0.2〜2.5質量%、特に0.2〜0.8質量%と、炭化タンタル粉末を0.5質量%以下と、、平均粒径0.2〜0.6μmの金属コバルト(Co)を8〜15質量%、さらには所望により、金属タングステン(W)粉末、あるいはカーボンブラック(C)を混合する。
【0032】
ここで、本発明によれば、上記原料粉末のうち、炭化タングステン粉末、炭化クロム粉末、炭化バナジウム粉末、炭化タンタル粉末および金属コバルト粉末の平均粒径を上記範囲に制御することが重要であり、上記原料粉末の平均粒径が上記範囲から逸脱すると上記焼成温度で焼結体を緻密化させることができず後述する焼成温度が1380℃を超えることによって上述した超硬合金の組織を達成することができない。
【0033】
次に、上記混合に際して、メタノール等の有機溶媒をスラリーの固形分比率が60〜80質量%となるように添加するとともに、適切な分散剤を添加し、粉砕メディアとして平均粒径0.1〜0.4μmの炭化タングステン粒子を主体とする超硬合金製の平均直径2〜4mmの粉砕ボールを用いて10〜20時間アトライタ粉砕することにより混合粉末の均一化を図った後、混合粉末に有機バインダを添加して成形用の混合粉末を得る。
【0034】
本発明によれば、上記原料組成とともに、上記混合に際して、スラリーの状態(固形分比率)および粉砕メディア・混合条件を制御することが重要であり、これによって過粉砕や粒子の凝集等が生じることなく、超硬合金の組織を均質化して上述したWC粒子の異常粒、異相や粗大なCoプールの生成を抑制した組織とすることができる。
【0035】
次に、上記混合粉末を用いて、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の薄刃形状に成形した後、0.1〜5Paの真空中、1320〜1380℃の温度で0.2〜2時間真空焼成した後、アルゴンガスを5MPa以上導入して前記真空焼成温度よりも5〜50℃低い温度で0.5〜2時間熱間静水圧プレス焼成を施し、5〜10℃/分の冷却速度で1000℃以下の温度まで冷却することにより本発明の超硬合金を作製することができる。
【0036】
ここで、上記焼成条件のうち、焼成温度が1320℃より低いと合金を緻密化させることができず強度低下を招き、逆に焼成温度が1380℃を超えると、炭化タングステン粒子が粒成長して硬度、強度が低下する。また、熱間静水圧プレス焼成の温度と真空焼成温度との差が5℃より小さいと粗大なWC粒子が生成して抗磁力が23900A/m(300Oe)より低くなるとともに、刃立性が低下してしまい、逆にこの温度差が50℃より大きいと、ボイドが発生しやすく抗磁力が23900A/m(300Oe)よりも低下するとともに強度低下の原因となる。
【0037】
なお、超硬合金に前記被覆層を形成するには、所望により、超硬合金の表面を研磨、洗浄した後、従来公知のPVD法やCVD法等の薄膜形成法を用いて成膜すればよい。また、フッ素樹脂コーティング層を形成する場合には塗布法、ディッピング法、ロールコーター法等の方法にて成膜することが望ましい。なお、被覆層の厚みは0.1〜20μmであることが望ましい。
【0038】
【実施例】
表1に示す平均粒径の炭化タングステン(WC)粉末、金属コバルト(Co)粉末、炭化バナジウム(VC)粉末、炭化クロム(Cr32)粉末および炭化タンタル(TaC)粉末を表1に示す比率(質量%、表中wt%と表記。)で添加し、溶媒としてメタノールをスラリーの固形分比率が表1の割合となるように添加し、粉砕メディアとして、炭化タングステン粒子の平均粒径が0.3μmの超微粒子超硬合金からなる直径3mmのボールを加えて、表1に示す時間アトライタ粉砕・混合し、乾燥した後、プレス成形により所定のドーナツ円板形状に成形し、焼成温度より500℃以上低い温度から10℃/分の速度で昇温して、表1に示す条件で真空焼成および熱間静水圧プレス焼成(Sinter HIP)して超硬合金を作製した。なお、表1中、ΔT(℃)は真空焼成と熱間静水圧プレス焼成との温度差を示し、冷却速度は熱間静水圧プレス焼成後1000℃以下に冷却するまでの冷却速度を示した。
【0039】
【表1】
Figure 0004084690
【0040】
得られた超硬合金の任意断面5箇所について、透過型電子顕微鏡により100,000倍の反射電子像を観察し、1μm×1.5μmの任意領域について、炭化タングステン粒子の平均粒径を測定した。
【0041】
また、上記超硬合金を粉砕し#20メッシュを通した粉砕粉末1gに塩酸(HCl:H2O=1:1)溶液を加え、スターラーにて攪拌し24時間50℃で加熱溶解した溶液をろ過した。この溶液に希塩酸(HCl:H2O=1:1)溶液を加えて50ml定容とし、このろ液について、ICP法によってろ液中のタングステンを含む各金属の含有量および含有比率を測定した。
【0042】
さらに、上記超硬合金をJISR1601に準じた3点曲げ強度測定用の試料形状に加工した試料を作製して3点曲げ強度を測定するとともに、JISR1625に準じてワイブル係数を算出した。
【0043】
次に、表1に示された超硬合金からなる薄刃(上刃3)主面(図1の面5、F1、6)表面に対してダイヤモンド砥石を用いて研削し、刃角30°、算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以下の鏡面とした。なお、試料No.1〜4について刃先先端の状態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれも刃先先端の凹凸の最大幅が1μm以下、刃先先端におけるCoプールの最大幅が0.5μm以下であるのに対して、試料No.5、7〜9については刃先先端の凹凸の最大幅が3μm以上、刃先先端におけるCoプールの最大幅が1μm以上と刃立性が悪いものであった。そして、これら薄刃(上刃)と同じ材質で作製した下刃を用いてアルミ箔を用いて下記条件でスリッティングテストを行った。
<条件>
テープスピード:100m/分
上下刃のオーバーラップ量:0.5mm
スリッティングテスト中、随時被切断材の加工面状態を顕微鏡で観察して切断面にバリや変形が発生した時点を寿命として評価した。結果は表2に示した。
【0044】
【表2】
Figure 0004084690
【0045】
表2の結果より、スラリー中の固形分比率および粉砕時間が所定の範囲から外れる試料No.6、真空焼成温度が1380℃を超える試料No.7、真空焼成温度と同じ温度で熱間静水圧プレス焼成を行った試料No.8、および合金のCo量が15質量%を超えるとともに真空焼成温度と熱間静水圧プレス焼成温度との温度差(ΔT)が50℃を超える試料No.9では、いずれも超硬合金の抗磁力が23900A/mより低く、切断刃の寿命が短いものであった。
【0046】
また、金属コバルト粉末、炭化クロム粉末および炭化バナジウム粉末原料の平均粒径が所定の範囲から外れるとともにCo量が8質量%より少ない試料No.5では、抗磁力が38200A/mより高くなり、刃立性が損なわれて切断刃の寿命はやはり低いものであった。
【0047】
これに対して、本発明に従い、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%と、原料粉末の性状(特に平均粒径)、原料混合粉末の混合、粉砕条件、焼成条件を所定の範囲に制御した試料No.1〜4では、いずれもCoを8〜15質量%との割合で含有するとともに炭化タングステン粒子の平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲内にあり、抗磁力が23900〜38200A/mの超硬合金では優れたスリッティング特性を示すものであった。
【0048】
【発明の効果】
以上,詳述したように、本発明の切断刃は、薄刃に用いる超微粒超硬合金として、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%と、Coを8〜15質量%とを含んで、残部が平均粒径0.1〜0.5μmのWC粒子からなり、抗磁力が23900〜38200A/mの超硬合金にて形成するとともに、前記刃先先端におけるCoプールの最大幅が1μm以下であることにより、超微粒超硬合金組織の均一化および刃先加工に耐えうる靭性とを有して薄刃の刃先先端における刃立性を向上できるとともに、刃先先端の耐摩耗性を兼ね備える超硬合金となることから、例えば、磁気テープ等のスリッタナイフとして優れた切断性能を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の切断刃の一例であるスリッタの構造を示す模式図である。
【図2】切断刃の刃立性を説明するための概念図である。
【符号の説明】
1 スリッタ用丸刃
2 第1刃(下刃)
3 第2刃(上刃(薄刃))

Claims (2)

  1. 刃先における刃角が60°以下で、刃先先端が曲率半径5μm以下のシャープエッジをなす薄刃を具備する切断刃であって、少なくとも前記薄刃が、Cr、VおよびTaの群から選ばれる少なくとも1種を炭化物換算による合計で0.3〜3.0質量%と、Coを8〜15質量%との割合で含有し、残部が平均粒径0.1〜0.5μmのWC粒子からなり、抗磁力が23900〜38200A/m(300〜480Oe)の超硬合金からなるとともに、前記刃先先端におけるCoプールの最大幅が1μm以下であることを特徴とする切断刃。
  2. 前記超硬合金を粉砕し、#20メッシュを通した粉砕粉末を50℃の希塩酸(HCl:HO=1:1)中で24時間溶解してろ過したろ液中に、ろ液中の総金属量に対してタングステンを10〜25質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1記載の切断刃。
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