JP4084281B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
近年、高画質化の要求が強く、トナーの球形化、小粒径化等が検討され、その一つとして乳化重合凝集法が知られている。この方法は、乳化重合により樹脂分散液を製造し、これに着色剤分散液等を混合してトナー粒径に相当する大きさの凝集粒子を得、これを加熱融合し、トナーを得る方法である。
さらに、乳化重合凝集法により得られたトナーにおいて、耐機械的ストレス性の向上を課題として、トナー粒子の表面硬度や平滑性を高めたり、荷電制御剤、離型剤等の添加剤が表面に露出しないように、トナー表面にビニル系樹脂微粒子を付着させることが知られている(特許文献1参照)。この技術により、耐ストレス性等は向上するが、荷電制御剤等のトナーの帯電量を制御する成分のトナー表面濃度は適正に制御されにくいため安定な帯電性は得られておらず、また、荷電制御剤の分散が困難なためトナーの粒度分布がブロードになりやすく、その向上が望まれている。
特開平10―26842号公報(請求項1、〔0021〕)
本発明の目的は、粒径分布のシャープな、帯電性に優れた小粒径トナーを製造することができる方法を提案することにある。
本発明は、
〔1〕 少なくとも第1の樹脂粒子からなる凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を調製する工程、
〔2〕 工程〔1〕で得られた凝集粒子分散液を、第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液と混合して、前記凝集粒子に前記第2の樹脂粒子を付着させた複合粒子を形成する工程、並びに
〔3〕 工程〔2〕で形成された複合粒子を加熱して融合させる工程
を有するトナーの製造方法であって、前記工程〔2〕の第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液が自己分散型水系ポリエステル分散体であるトナーの製造方法
に関する。
本発明により、粒径分布のシャープな、帯電性に優れた小粒径トナーを得ることができる。
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも、以下の工程〔1〕、工程〔2〕及び工程〔3〕を有するものである。
工程〔1〕においては、少なくとも第1の樹脂粒子からなる凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を調製する。
凝集粒子は、少なくとも第1の樹脂粒子を含む分散液から形成される。
第1の樹脂粒子としては、ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等からなる粒子が挙げられるが、これらの中では、定着性、帯電安定性及び製造性の観点から、ビニル系樹脂粒子及び/又はポリエステル粒子が好ましく、ビニル系樹脂粒子がより好ましい。
ビニル系樹脂粒子としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン若しくはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、等のエチレン性モノカルボン酸及びそのエステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のエチレン性モノカルボン酸誘導体;マレイン酸等のエチレン性ジカルボン酸;ビニルケトン類;ビニルエーテル類、ビニリデンハロゲン化物;N−ビニル化合物類等の原料モノマーの単独重合体及び共重合体等が挙げられ、これらの中では、スチレンと(メタ)アクリル酸及びそのアルキル(炭素数1〜12)エステルとの共重合体が、トナーの特性上好ましい。
なお、軟化点や分子量調整のため、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン類が添加されていてもよい。
ビニル系樹脂粒子の分散液としては、シード重合法や乳化重合法、好ましくは乳化重合法により製造された水系ビニル系樹脂粒子の分散液を用いることが好ましく、かかる水系ビニル系樹脂粒子の分散液は、例えば、界面活性剤の存在下、ビニル系樹脂の原料モノマーを水中で乳化し、これに水溶性重合開始剤を添加し、適度な温度に加熱して重合させることにより得られる。分散液中のビニル系樹脂粒子の含有量は、固形分換算にして、10〜50重量%程度が好ましい。
界面活性剤としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキル(炭素数12〜18)トリメチルアンモニウムクロライド、セチルピリジウムクロライド等のアミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等のノニオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの中ではアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活等のイオン性界面活性剤が好ましく、第2の樹脂粒子として用いられるポリエステル粒子が好ましくはアニオン性であることから、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物、過酸化水素等の水溶性ラジカル発生剤等が挙げられる。
さらに、ビニル系樹脂の原料モノマーとともに、必要に応じて、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和結合を2個以上有する化合物等を架橋剤として使用することもできる。
ビニル系樹脂の軟化点は100〜180℃が好ましいが、軟化点が135〜180℃の高軟化点樹脂と軟化点が100〜135℃の低軟化点樹脂が2/8〜8/2の重量比で併用されていることがより好ましい。高軟化点樹脂の重量平均分子量は50,000〜1,000,000が好ましく、低軟化点樹脂の重量平均分子量は10,000〜50,000が好ましい。ビニル系樹脂のガラス転移点は、50〜80℃が好ましい。
ポリエステルの原料モノマーとしては、公知のアルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の公知のカルボン酸成分が挙げられる。なお、該ポリエステルは、ウレタン結合、エポキシ結合等で変性されていてもよいが、変性されていないものが好ましい。
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール等の脂肪族アルコール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられ、これらの中では、定着性及び帯電性の観点から、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物が好ましく、その含有量は、アルコール成分中、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましい。
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
本発明において、3価以上の原料モノマーの含有量は、全原料モノマー中、30モル%以下であるのが好ましく、5モル%以下であるのが好ましく、0モル%であるのが特に好ましい。
さらに、アルコール成分及びカルボン酸成分には、末端基の制御及び分子量の制御の観点から、1価のアルコール又は1価のカルボン酸化合物が含有されていてもよいが、その含有量は、各成分中、10モル%以下であるのが好ましい。
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分を、必要に応じて不活性ガス雰囲気中、エステル触媒の存在下で、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜230℃で縮重合させて得られる。さらに、得られた樹脂を適当な溶剤に溶解させ、さらには中和後、ホモジナイザー等の分散機を用い、又は転相乳化法により、水中にポリエステル粒子を分散させ、前記溶剤を除去して得られた溶液を、ポリエステル粒子の分散液として用いることもできる。なお、分散の際、前記した各種界面活性剤を併用してもよい。
ポリエステルの軟化点は80〜165℃が好ましいが、軟化点が135〜180℃の高軟化点樹脂と軟化点が90〜135℃の低軟化点樹脂が併用されていることがより好ましい。ポリペプチドのガラス転移点は50〜85℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。
第1の樹脂粒子の粒径は、トナーの粒度分布及び遊離粒子の発生の観点から、重量平均粒径にして、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。
第1の樹脂粒子の含有量は、分散液中、1〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
第1の樹脂粒子を含む分散液には、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性体、無機粒体、滑剤、研磨材、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を原料として配合してもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられる染料、顔料等のすべてが使用可能であり、カーボンブラック;アセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料;アセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料;ポリアゾ系黄色顔料;黄色染料;C.I.ピグメント・レッド184等の赤色又は紅色顔料;赤色系染料;銅フタロシアニン及びその誘導体の青色系染顔料;緑色顔料等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上混合して用いることができ、本発明により製造するトナーは、黒トナー、モノカラートナー、フルカラートナー等のカラートナーのいずれであってもよい。着色剤の使用量は、凝集粒子分散液中、50重量%以下が好ましく、0.5〜40重量%がより好ましい。
離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;脂肪酸アミド類;植物系ワックス;動物系ワックス;鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して含有されてもよい。
荷電制御剤としては、例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロム等の錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料等が挙げられる。なお、本発明に用いられる荷電制御剤は、凝集時や融合時の安定性に影響するイオン強度の制御及び廃水汚染減少の観点から、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。荷電制御剤の含有量は、トナーの粒度分布の観点から、トナー中、1重量%以下が好ましく、0重量%、即ち添加されていないことがより好ましい。
無機粒体としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム等が挙げられる。
着色剤以外の添加剤の使用量は本発明の目的を阻害しない程度であればよいが、その総量が、凝集粒子分散液中、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.5〜2重量%程度となるように使用することが好ましい。
なお、前記添加剤は、そのまま分散液に添加して分散させても、予め、他の分散媒中に分散させた分散液の状態で、第1の樹脂粒子の分散液に混合してもよいが、特に着色剤及び離型剤は、後者の態様で分散液に混合するのが好ましい。
分散媒中の添加剤の分散径は、トナーの粒度分布及び遊離粒子の発生の観点から、重量平均粒径にして、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。例えば、離型剤の場合、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に水中に分散させ、離型剤の融点以上に加熱し、ホモジナイザー、圧力吐出型分散機等を用い強剪断力下で処理することにより、容易に1μm以下の微粒子にすることができる。
凝集粒子の形成は、例えば、少なくとも第1の樹脂粒子を含む分散液のイオン性と反対極性のイオン性活性剤水溶液を添加し、以下のようにして行うことができる。具体的には、第1の樹脂粒子がカルボキシル基の塩を有していたり、又はアニオン性界面活性剤の含有等により分散液がアニオン性を呈している場合は、カチオン性界面活性剤を混合する。着色剤や離型剤の分散液を配合する順番は、そのイオン性等に応じて適宜決定すればよいが、第1の樹脂粒子を含む分散液と同一のイオン性のものをかかる分散液と先に混合し、その後、相反するイオン性の分散液を添加するのが好ましい。少なくとも第1の樹脂粒子を含む分散液と相反するイオン性の界面活性剤を添加した分散液を攪拌すると、イオン性界面活性剤の相互作用により、分散液中で樹脂粒子等が凝集し、凝集粒子が形成される。前記攪拌は、より安定した状態で凝集粒子を形成する観点から、分散液に含まれる樹脂粒子のガラス転移点以下の温度で行うことが好ましい。なお、前記攪拌手段としては、特に制限はないが、反応装置に備えられた公知の攪拌装置、回転剪断型ホモジナイザー、ミキサー等のそれ自体公知の分散装置等を用いることができる。また、凝集粒子の含有量は、凝集粒子分散液中、40重量%以下程度が好ましい。
凝集粒子の平均粒径は、得ようとするトナーの重量平均粒径と同等程度が好ましく、例えば、重量平均粒径にして、好ましくは1〜20μm、より好ましくは5〜10μmである。平均粒径の制御は、例えば、相反するイオン性活性剤のバランスや温度と前記攪拌混合の条件とを適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。
工程〔2〕においては、工程〔1〕で得られた凝集粒子分散液を、第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液と混合して、前記凝集粒子に前記第2の樹脂粒子を付着させた複合粒子を形成する。
本発明は、工程〔2〕の第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液として自己分散型水系ポリエステル分散体を用いる点に1つの特徴を有する。本発明において、自己分散型水系ポリエステル分散体は、乳化剤等を用いずとも、水系溶媒中に自己分散し得るポリエステル粒子が分散した樹脂粒子分散液をいう。かかる自己分散型水系ポリエステル分散体の使用により、耐環境性等に悪影響を及ぼす活性剤の使用量を抑制することができ、また、自己分散型水系ポリエステル分散体中のポリエステル粒子を工程〔1〕で得られた凝集粒子に付着させることにより、トナー表面が帯電性に優れたポリエステルにより被覆されるため、帯電性が良好なトナーが得られる。
本発明に用いられる自己分散型水系ポリエステル分散体としては、ポリエステル、ポリエステルのイオン性基を中和する中和物質、具体的には酸物質又は塩基物質、好ましくは塩基物質、有機溶剤及び水を含有した混合物より前記有機溶剤を留去して得られるものが好ましく、具体的には、ポリエステルを有機溶剤に溶解させ、塩基物質を添加して該ポリエステルのカルボキシル基をイオン化し、次いで水を添加した後、有機溶剤を留去して水系に転相して得られるものがより好ましい。ポリエステル分散体におけるポリエステルの含有量は、固形分換算にして、3〜40重量%程度が好ましい。
ポリエステルは、第1の樹脂粒子として用いられるポリエステルとして例示したものと同様のものを用いることができる。
ポリエステルの軟化点は、好ましくは80〜130℃、より好ましくは90〜120℃であり、ガラス転移点は、好ましくは50〜85℃、より好ましくは55〜70℃である。
また、ポリエステルの酸価は、5〜50mgKOH/gが好ましく、10〜30mgKOH/gがより好ましく、水酸基価は5〜70mgKOH/gが好ましく、15〜40mgKOH/gがより好ましい。
さらに、ポリエステルの数平均分子量は、トナー製造時における樹脂粒子の凝集性の観点から、2,500以上が好ましく、自己分散型水系ポリエステル分散体製造時の転相工程における粘度調整の観点から、70,000以下が好ましく、3,000〜10,000がより好ましく、3,000〜5,000が特に好ましい。
ポリエステルの軟化点、酸価、水酸基価、分子量等は、原料モノマーの種類とその比率、反応時間、反応温度等により調整することができる。
塩基物質としてはイオン性基、例えばカルボキシル基をイオン化するものであれば特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物、各種アミン類等が挙げられ、これらの中では、水酸基を有していてもよい、モノ、ジ、トリエチルアミン等のアミン類が好ましい。塩基物質の使用量は、少なくともポリエステルの酸価を中和できる量であれば特に限定されない。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフランが好ましい。有機溶剤の使用量は、ポリエステル100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましい。
また、水の使用量は、ポリエステル100重量部に対して、300〜5000重量部が好ましい。この場合、水に金属石ケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等を、ポリエステル100重量部に対して1〜20重量部程度さらに添加して、ポリエステル粒子の平均粒径を調整してもよい。
また、有機溶剤の留去は、例えば、減圧下、25〜70℃で行うことが好ましく、有機溶剤の含有量を、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下に調整することが望ましい。また、得られた処理液のpHを6〜10に調整することがさらに好ましい。pHの調整には、前述の塩基物質等を用いることができる。
自己分散型水系ポリエステル分散体中のポリエステル粒子の分散径は、トナーの粒度分布及び遊離粒子の発生の観点から、重量平均粒径にして、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。
自己分散型水系ポリエステル分散体の配合量は、第2の樹脂粒子であるポリエステル粒子のトナー中の含有量が50重量%以下、好ましくは10〜40重量%となるように、調整することが好ましい。
凝集粒子分散液と第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液との混合は、第1の樹脂粒子のガラス転移点以下の温度で、ホモジナイザー等により混合後、5分〜5時間、放置又は攪拌機等により穏やかに攪拌して行うことができる。凝集粒子分散液と樹脂粒子分散液との混合により、凝集粒子に第2の樹脂粒子が付着して、複合粒子が形成される。
工程〔3〕においては、工程〔2〕で形成された複合粒子を加熱して融合させる。
複合粒子の加熱温度は、複合粒子に含まれる樹脂のガラス転移点から樹脂の分解温度までの温度が好ましく、樹脂の種類によって異なるため一概には決定できないが、具体的には、樹脂のガラス転移点から180℃までの温度がより好ましく、樹脂のガラス転移点から100℃までの温度が特に好ましい。
加熱は、攪拌下で行うことが好ましく、複合粒子の融合に要する時間は、加熱温度が高いほど短く、加熱温度が低いほど長くなる。従って融合に要する時間は、加熱温度によって異なるため一概には決定できないが、30分〜10時間程度が好ましい。
なお、複合粒子を安定化する観点から、さらに活性剤を添加することが好ましい。
本発明においては、トナーの帯電性を制御する観点から、工程〔2〕及び/又は工程〔3〕において、さらに酸処理を行うことが好ましい。かかる酸処理により、系中の活性剤や自己分散型水系ポリエステル分散体中のポリエステルが有するカルボン酸塩の一部又は全てがカルボキシル基に転換される。ここで、カルボン酸塩とは、カルボキシル基を中和した基をいう。
酸処理に用いられる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。
得られるトナー中、ポリエステルが有するカルボン酸塩が多いほど、トナーの負帯電性が高くなり、耐環境性が低下する。これに対し、未中和のカルボキシル基が多いほど、逆にトナーの負帯電性は低くなるが、帯電の立ち上がりは速くなる傾向がある。従って、酸処理に用いる酸の使用量はトナーに求める帯電挙動に応じて適宜調整することが好ましい。
工程〔3〕により得られた融合粒子を分離し、適宜洗浄、乾燥し、必要に応じてさらに分級することにより、トナーを得ることができるが、トナーの表面には、さらにシリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機粒体や、ビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を、乾燥状態での攪拌により、外添してもよい。
本発明により得られるトナーの重量平均粒径は、3〜15μm程度が好ましい。特に、本発明のように乳化重合凝集法を利用した方法では、重量平均粒径が4〜10μmの小粒径トナーを製造する場合であっても、粒度分布がシャープなトナー、粒径の変動係数が好ましくは10〜25%、より好ましくは15〜23%のトナーを製造することができる。
本発明により得られるトナーは、例えば、そのまま単独で非磁性一成分現像剤として、またはキャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。
〔軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
〔ガラス転移点及び融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定し、最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度を樹脂のガラス転移点とし、最大ピーク温度を離型剤では融点とする。
〔酸価及び水酸基価〕
JIS K0070に従って測定する。
〔平均分子量〕
以下のGPC法により、分子量分布を測定する。
測定装置:CO−8010(東ソー製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー製)
試料濃度:0.5g/100mlテトラヒドロフラン
溶離液:テトラヒドロフラン(40℃)
流速:1ml/分
標準試料:単分散ポリスチレン
〔樹脂分散液中の樹脂粒子の重量平均粒径〕
コールターカウンターN4(ベックマン・コールター(株)製)で測定する。
〔トナー(凝集粒子)の重量平均粒径〕
コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)で測定する。
ビニル系樹脂粒子分散液の製造例1
イオン交換水1000gにアニオン性界面活性剤(ペレックスSS−L、花王(株)製)6gを溶解し、80℃に昇温し、窒素置換した。
窒素置換した溶液に、スチレン240g及びn−ブチルアクリレート60gを混合したモノマーとイオン交換水10gに過硫酸アンモニウム3gを溶解させた溶液との混合液を90分かけて滴下した後、1時間放置し、重合を終了して、ビニル系樹脂粒子分散液A(ビニル系樹脂の含有量:23重量%(固形分換算))を得た。
得られた樹脂粒子分散液中に分散するビニル系樹脂粒子の重量平均粒径は85nm、軟化点は165℃、ガラス転移点は60℃、重量平均分子量(Mw)は100,000であった。
ビニル系樹脂粒子分散液の製造例2
イオン交換水1000gにアニオン性界面活性剤(ペレックスSS−L、花王(株)製)6gを溶解させ、80℃に昇温し窒素置換した。
スチレン240g、n−ブチルアクリレート60g及びラウリルメルカプタン15gを混合したモノマーとイオン交換水10gに過硫酸アンモニウム3gを溶解させた溶液との混合液を90分かけて滴下した後、1時間放置し、重合を終了して、ビニル系樹脂分散液B(ビニル系樹脂の含有量:23重量%(固形分換算))を得た。
得られた樹脂分散液中に分散するビニル系樹脂粒子の重量平均粒径は90nm、軟化点は128℃、ガラス転移点は58℃、重量平均分子量(Mw)は30,000であった。
ポリエステルの製造例
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1050g、フマル酸340g及びハイドロキノン1.5gをガラス製2リットル容の四つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、マントルヒーター中で、窒素気流下にて210℃で攪拌しつつ反応させた。ASTM D36−86に従って測定した軟化点により重合度を追跡し、軟化点が100℃に達した時点で反応を終了し、ポリエステルAを得た。
得られた樹脂は淡黄色の固体であり、軟化点は105℃、ガラス転移点は61℃、酸価は21.5mgKOH/g、水酸基価は23.8mgKOH/g、数平均分子量は3,500であった。
自己分散型水系ポリエステル分散体の製造例
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた反応器にメチルエチルケトン600gを投入し、ポリエステルA 100gを室温にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、トリエチルアミン5gを添加して中和し、続いてイオン交換水2000gを添加した後、250r/minの攪拌速度で、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去し、自己分散型水系ポリエステル分散体A(ポリエステルの含有量:4.8重量%(固形分換算))を得た。得られた樹脂分散体中に分散するポリエステル粒子の重量平均粒径は100nmであった。
着色剤分散液の製造例
銅フタロシアニン(大日精化社製)50g、ノニオン性界面活性剤(エマルゲン150、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、銅フタロシアニンを溶解させ、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、銅フタロシアニンが平均粒径200nmで分散した着色剤分散液Aを得た。
離型剤分散液の製造例
パラフィンワックス(HNP0190、日本精蝋(株)製、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、パラフィンワックスが平均粒径550nmで分散した離型剤分散液Aを得た。
荷電制御剤分散液の製造例
荷電制御剤(ボントロンE−84、オリエント化学工業社製)50g、ノニオン性界面活性剤(エマルゲン150、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤が平均粒径500nmで分散した荷電制御剤分散液Aを調製したが、分散液体には粗大粒子の残留が観測された。
比較例1
ビニル系樹脂粒子分散液A 130g、ビニル系樹脂粒子分散液B 260g、着色剤分散液A 25g、離型剤分散液A 25g及びカチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製)2gを丸型のステンレス製フラスコ中でホモジナイザーを用いて混合し、分散させた後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。さらに、48℃で1時間保持した後、重量平均粒径が5.6μmの凝集粒子が形成されていることが確認された。
凝集粒子が形成された凝集粒子分散液に、アニオン性界面活性剤(ペレックスSS−L、花王(株)製)3gを添加した後、前記ステンレス製フラスコに還流管を装着し、攪拌を継続しながら、95℃まで加熱し、5時間保持して、凝集粒子を融合させた。その後、冷却し、融合粒子をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、トナーを得た。
得られたトナーの重量平均粒径は5.9μm、重量粒度分布の変動係数は19.8%であった。
実施例1
比較例1と同様にして凝集粒子分散液を得た。得られた凝集粒子分散液に、自己分散型水系ポリエステル分散体A 210gを添加し丸型のステンレス製フラスコ中でホモジナイザーを用いて30分間攪拌して混合した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で1時間保持した後、凝集粒子表面にポリエステル粒子が付着した、重量平均粒径が5.8μmの複合粒子が形成されていることが確認された。
複合粒子が形成された溶液に、アニオン性界面活性剤(ペレックスSS−L、花王(株)製)3gを添加した後、前記ステンレス製フラスコに還流管を装着し、攪拌を継続しながら、95℃まで加熱し、5時間保持して、複合粒子を融合させた。その後、冷却し、融合粒子をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、トナーを得た。
得られたトナーの重量平均粒径は6.0μm、重量粒度分布の変動係数は20.5%であった。
実施例2
実施例1と同様にして、複合粒子を形成させた。複合粒子が形成された溶液に、5%塩酸2.6gを添加し、15分間フラスコ内を攪拌した。さらに、アニオン性界面活性剤(ペレックスSS−L、花王(株)製)3gを添加した後、前記ステンレス製フラスコに還流管を装着し、攪拌を継続しながら、95℃まで加熱し、5時間保持して、複合粒子を融合させた。その後、冷却し、融合粒子をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、トナーを得た。
得られたトナーの重量平均粒径は5.9μm、重量粒度分布の変動係数は22.5%であった。
実施例3
5%塩酸の使用量を2.0gに変更した以外は、実施例2と同様にして、トナーを得た。
得られたトナーの重量平均粒径は5.9μm、重量粒度分布の変動係数は21.5%であった。
比較例2
ビニル系樹脂分散液A等とともに、荷電制御剤分散液A 10gをさらに使用した以外は、比較例1と同様にして、トナーを得た。
得られたトナーの重量平均粒径は6.3μm、重量粒度分布の変動係数は30.7%であった。
試験例〔帯電性〕
実施例1〜3、比較例1、2で得られたトナー3gを、シリコーンコートフェライトキャリア(FL93−100、ハウダーテック社製)97gと混合し、ボールミルにより、1分間及び10分間攪拌し、それぞれの帯電量をq/mメーター(エピング社製)を用い測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004084281
以上の結果より、比較例のトナーと対比して、実施例のトナーは粒度分布のシャープな小粒径トナーであり、かつ帯電性にも優れていることが分かる。
本発明により得られるトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる。

Claims (5)

  1. 〔1〕 少なくとも第1の樹脂粒子からなる凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を調製する工程、
    〔2〕 工程〔1〕で得られた凝集粒子分散液を、第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液と混合して、前記凝集粒子に前記第2の樹脂粒子を付着させた複合粒子を形成する工程、並びに
    〔3〕 工程〔2〕で形成された複合粒子を加熱して融合させる工程
    を有するトナーの製造方法であって、第1の樹脂粒子がビニル系樹脂粒子であり、前記工程〔2〕の第2の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液が自己分散型水系ポリエステル分散体であるトナーの製造方法。
  2. 自己分散型水系ポリエステル分散体が、ポリエステル、中和物質、有機溶剤及び水を含有した混合物より前記有機溶剤を留去して得られる樹脂分散体である請求項1記載の製造方法。
  3. 第2の樹脂粒子のトナー中の含有量が50重量%以下である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 程〔3〕において、工程〔2〕で形成された複合粒子を酸処理した後、加熱して融合させる請求項1〜いずれか記載のトナーの製造方法。
  5. 工程〔1〕において、第1の樹脂粒子を含む分散液と相反するイオン性の界面活性剤を添加した分散液を分散液に含まれる樹脂粒子のガラス転移点以下の温度で攪拌することにより、少なくとも第1の樹脂粒子からなる凝集粒子を形成する請求項1〜4いずれか記載のトナーの製造方法。
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