JP4084038B2 - 熱可塑性エラストマー組成物、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、及び該組成物を用いた紙葉類の重送防止部材、並びに給紙ローラ - Google Patents
熱可塑性エラストマー組成物、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、及び該組成物を用いた紙葉類の重送防止部材、並びに給紙ローラ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、及び該組成物を用いた紙葉類の重送防止部材、並びに給紙ローラに関し、詳しくは、熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を改良すると共に、熱可塑性エラストマー組成物の生産性を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構にはゴムローラ(給紙ローラ)が使用されている。上記給紙ローラは、生産性が良く、物性にも優れるため熱可塑性エラストマーにより形成されるものが多く、給紙ローラと対向配置される紙用類の重送防止部材も同様に熱可塑性エラストマーから形成されている。
【0003】
従来、このような熱可塑性エラストマーは、ゴム成分と熱可塑性樹脂成分を緊密に混合した後に架橋剤を添加する方法や、ゴム成分とその架橋剤を予め均一状態になるまで低温で混練した後に熱可塑性樹脂等の必要な材料を投入する方法等により製造されている。
【0004】
近年、上記のような給紙ローラ、紙用類の重送防止部材等の事務機器用部材に適した熱可塑性エラストマーの物性やその生産性を向上させるため、熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法について種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特開平5−78529号では、加工性を向上するために、融点がもっとも高いポリオレフィンとゴムを混合してゴム成分を動的加硫した熱可塑性エラストマー組成物を形成した後、該熱可塑性エラストマー組成物中に低融点ポリオレフィンを混合したことを特徴とする、ポリオレフィンと硬化ゴムとのブレンドからなる熱可塑性エラストマーの製造方法が提案されている。
【0006】
また、特開2000−273322号では、強度や生産効率を向上のために、表面に充填剤が付着した粒状ゴム及び樹脂組成物を規定の重量比で混練してなる熱可塑性エラストマーが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−78529号の熱可塑性エラストマーの製造方法では、熱可塑性エラストマーの十分な耐磨耗性が得られないという問題がある。また、練り時間がかかったり、材料の投入量を減量しなければならず生産性に劣るという問題がある。
【0008】
また、特開2000−273322号の熱可塑性エラストマーは、耐磨耗性が悪いため、給紙ローラや紙葉類の重送防止部材として用いると磨耗量が多くなり、給紙性能や耐久性に問題が生じる。
【0009】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、耐磨耗性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供し、かつ、混練の工程を簡略化でき、生産性に優れる上に、製造する熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を向上できる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供し、耐磨耗性、耐久性に優れた紙葉類の重送防止部材、給紙ローラを提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも1種以上のオレフィン系共重合ゴムと、分子内にエチレンブロックを有する少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂とを含み、
上記オレフィン系共重合ゴムが動的架橋され、動的架橋により分散されたオレフィン系共重合ゴムの平均粒子径が2μm以上100μm以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物を提供している。
【0011】
本発明者は鋭意研究の結果、上記のように特定のゴムと熱可塑性樹脂とを混合して動的架橋された組成物において、動的架橋により分散されたオレフィン系共重合ゴムの平均粒子径を規定し、エラストマー中のゴム相と樹脂相との界面の接触面積を調整することで、熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を向上できることを見出した。よって、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共に、耐磨耗に優れており、かつ部材としての強度も維持しているため、紙葉類の重送防止部材や給紙ローラ等として好適に用いることができる。
【0012】
動的架橋により分散されたオレフィン系共重合ゴムの平均粒子径(直径)が2μm以上100μm以下、好ましくは2μm以上60μm以下、さらに好ましくは2μm以上40μm以下としている。これにより、熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を向上することができる。また、該ゴムの分散状態は、必ずしも均一である必要はなく、不均一でも良い。具体的には、後述するように、分散がある程度不均一であり、あまり均一に分散しすぎないように、常圧下、あるいは圧力をかけずに押し出されて成形されるのが好ましい。
【0013】
上記オレフィン系共重合ゴムとしては、種々のオレフィン系共重合ゴムの内から1種類以上を適宜選択することができる。
上記オレフィン系共重合ゴムとしては、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、又はEPDMを主成分とする他のゴムとの混合物であることが好ましい。
本発明においてはオレフィン系共重合ゴムをEPDMを100%とすることが最も好ましく、EPDMと他のゴムとをブレンドする場合、全ゴムに占めるEPDMの比率は、50重量部以上、さらに、80重量部以上が好ましい。この理由は、EPDMは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、従って最終製品、例えばローラの耐候性を高めることができるためである。
【0014】
上記ゴムオレフィン系共重合ゴムとしては、EPDMの他に、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、1,2―ポリブタジエン、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルフォン化ポリエチレン、ポリトランスペンテナマー(PTPR)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、塩素化ポリエチレン(CPE)等が挙げられる。
【0015】
上記分子内にエチレンブロックを有する熱可塑性樹脂としては、分子内にエチレンブロックを有する熱可塑性樹脂の内から1種類以上を適宜選択することができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリテトランアクリロニトリル樹脂(PTMT)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルスチレン(AS)等が挙げられる。特に、オレフィン系共重合ゴムと共に用いるため、極性の低い樹脂の方が相溶性が良いという理由により好ましく、オレフィン系樹脂であるポリプロピレンが好ましい。
【0016】
上記オレフィン系共重合ゴム100重量部に対して、上記熱可塑性樹脂を20重量部以上80重量部以下、好ましくは30重量部以上60重量部以下の割合で配合していることが好ましい。これにより耐磨耗性を要求される部材等としての種々の物性を向上することができる。
【0017】
上記分子内にエチレンブロックを有する熱可塑性樹脂100重量部に対して、ポリマー主鎖中にアミド結合を有する熱可塑性樹脂を100重量部未満、好ましくは30重量部未満、さらに好ましくは5重量部未満の割合で含んでいるのが良い。このように、耐磨耗性を損なわない範囲で、ポリマー主鎖中にアミド結合を有する熱可塑性樹脂を含むことにより、引張強度の向上や帯電防止効果を得ることができる。なお、ポリマー主鎖中にアミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂である6ナイロン又は66ナイロン等が好ましい。
【0018】
また、上記熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、架橋剤等の種々の添加剤を配合しても良い。例えば、架橋剤としては、公知の架橋剤を使用でき、例えば、樹脂架橋剤としては、反応性フェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。
また硫黄及び加硫促進剤を使用してもよく、又は配合する熱可塑性樹脂と反応しないパーオキサイドを使用しても良い。
【0019】
架橋方法としては、樹脂架橋が以下の理由から好ましい。すなわち樹脂架橋では樹脂架橋剤が用いられるが、樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起させる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用した場合に生ずるブルームの問題が起らないので好ましい。特に、樹脂架橋剤としてフェノール樹脂を用いると摩耗性等の給紙性能を高めることができる。
【0020】
その他の樹脂架橋剤としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられ、特に上記フェノール樹脂が好適である。フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。特に、ベンゼンのオルト位又はパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。樹脂架橋剤の配合量は、ゴム100重量部に対して1重量部以上20重量部以下が好ましく、8重量部以上15重量部以下が特に好ましい。
【0021】
また、本発明における動的架橋は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、エラストマー組成物中にハロゲン供与性物質を配合してもよい。ハロゲン化された樹脂架橋剤としては、上記の各付加縮合型樹脂がハロゲン化されたものが挙げられる。なかでも、フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂、特にはハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。
【0022】
また、ハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化樹脂としては、例えば塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのハロゲン供与性物質は単独で用いられてもよく、ニ種以上が併用されてもよい。
【0023】
架橋反応を適切に行うために架橋助剤(活性剤)を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
【0024】
上記オレフィン系共重合ゴム100重量部に対して、オイル、可塑剤等の軟化剤を1重量部以上200重量部以下の割合で配合することもでき、硬度等を調整することができる。具体的には、オイルを添加する場合は1重量部以上200重量部以下、好ましくは30重量部以上150重量部以下とするのが良く、可塑剤を添加する場合は1重量部以上20重量部以下とするのが良い。
上記オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等を用いることができる。なお、油展タイプのゴムを用いる場合には、ゴム中のオイルの添加重量は、軟化剤の添加重量(オイル量)として扱う。
【0025】
上記熱可塑性エラストマー組成物中には、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでいても良く、上記オレフィン系ゴム100重量部に対して、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを10重量部以上50重量部以下配合することができる。
【0026】
また、本発明は、少なくとも1種以上のオレフィン系共重合ゴムと、分子内にエチレンブロックを有する少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂と、架橋剤とを混合し、1つの工程にて常圧下で混練して動的架橋を行い、上記オレフィン系共重合ゴムを、その平均粒子径が2μm以上となり、不均一な状態で分散させて熱可塑性エラストマー組成物を製造することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供している。
【0027】
このように、上記特定のゴムと樹脂とを1つの工程にて常圧下で同時に混練して動的架橋することで、混練工程を簡略化することができ、生産性を向上することができる。また、本製造方法によれば、材料の投入量を制限されることがないため、必要量を架橋し効率良く熱可塑性エラストマーを得ることができる。また、上記ゴムの平均粒子径を適度な大きさで分散できるため、熱可塑性エラストマーの耐磨耗性を向上することができる。具体的には、運転時の圧力を変えることで粒子径の大きさを調整することが可能であり、常圧下においても混練時の弁の開閉等により圧力を多少変化させ、粒子径をコントロールすることができる。
【0028】
上記エチレンブロックを有する熱可塑性樹脂の融点以上で該エチレンブロックを有する熱可塑性樹脂より粘度が高い熱可塑性組成物を、上記動的架橋後に混合していることが好ましい。これにより、本発明の熱可塑性エラストマーの耐磨耗性を維持しながら、効率良く引張強度の向上や帯電防止効果を得ることができる。上記熱可塑性組成物としてはポリマー主鎖中にアミド結合を有している熱可塑性樹脂が好ましい。
【0029】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物部、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を用い、紙葉類の重送防止部材及び給紙ローラ等の事務機器用部材は、例えば、下記のような方法により作成できる。
即ち、全ての原料を2軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等のゴム混練装置に投入して1段階の工程にて混練する。混練温度、約160℃〜230℃で加熱し、0.5分〜10分程度混練してゴムを動的架橋した後、ゴム混練装置より押し出している。
この押し出した熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを単軸押出機にてシート状に成形し、このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みのシートとすることにより紙葉類重送防止部材としている。
【0030】
また、上記の熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出成形してチューブ状に成形する。この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして給紙用ゴムローラ(給紙ローラ)としている。
なお、射出成形機のかわりに樹脂用単軸押出機によってチューブ状に押し出し、それをカットすることによってゴムローラとすることもできる。
【0031】
さらに、本発明は、上記熱可塑性エラストマー組成物を用いてなることを特徴とする紙葉類の重送防止部材を提供している。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用い、複写機、プリンター、ファクシミリ等の給紙機構に使用される分離シート、分離パッド、分離ローラ等の紙葉類(PPC用紙、OHP用フィルム等)の重送防止部材を形成することができる。これにより、紙葉類を1枚ずつ確実に分離し画像形成機構に送り出す紙葉類重送防止部材の強度、耐久性等を維持しながら、耐磨耗性を向上することができる。
【0032】
さらには、本発明は、上記熱可塑性エラストマー組成物を用いてなることを特徴とする給紙ローラを提供している。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用い、トレイに蓄えられたPPC用紙、OHP用フィルム等の紙葉類を画像形成機構に送り出す給紙ローラを形成することができる。これにより、給紙ローラの強度、耐久性等を維持しながら、耐磨耗性を向上することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物及び熱可塑性エラストマー組成物の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系共重合ゴムであるEPDM100重量部と、分子内にエチレンブロックを有する熱可塑性樹脂であるオレフィン系樹脂27重量部(ポリプロピレン)と、樹脂架橋剤である反応性フェノール樹脂とを含んでいる。なお、本実施形態のEPDMは、油展ゴムとし、ゴム:オイル=1:1としている。
【0034】
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、以下に示す本発明の熱可塑性エラストマーの製造方法により製造している。
上記全材料及び架橋剤等の任意に添加する薬品等を混練機の同一投入口より同時に投入して、常圧下で200℃の温度で加熱し、1段階の工程で混練している。
この状態で、200rpmにて、1分間混練し、ゴムを動的架橋し、熱可塑性樹脂中に不均一に分散させた後、押し出し、熱可塑性エラストマー組成物を製造している。上記動的架橋により分散されたEPDMの平均粒子径は2μm以上40μm以下の範囲としている。
【0035】
本実施形態の組成物製造時においては、全配合を1段階で練ることができ、工程が簡略化できる上に、投入量を従来以上にし、かつ圧力を掛けずに製造可能であるので、従来方法よりも生産性が良好である上に、分散するゴムの平均粒子径を2μm以上の適度な大きさにできるため、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を向上することができる。
【0036】
また、上記熱可塑性エラストマー組成物を動的架橋した後に、上記ポリプロピレンの融点以上でポリプロピレンより粘度が高い樹脂であるナイロン樹脂を混合して混練することもできる。
【0037】
さらに、本発明は、上記熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを単軸押出機にてシート状に成形し、このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みのシートとすることにより紙葉類重送防止部材とすることができる。また、該ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出成形してチューブ状に成形し、この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして給紙ローラとすることができる。
【0038】
図1は、本発明の紙葉類重送防止部材としての分離シート、及び給紙ローラが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。この給紙機構は、給紙ローラ2とトレイ4とを備えている。トレイ4は、その上面の給紙ローラ2寄りに分離シート6を備えている。トレイ4の上面には、多数枚の紙葉類8が重ねられて蓄えられている。トレイ4の給紙ローラ2寄りは、その下面に当接するバネ(図示されず)によって上方に押し上げられ、給紙ローラ2に向かって押し付けられている。分離シート6と給紙ローラ2との間には、紙葉類8の先端部分10が挟まれている。給紙ローラ2が図中の矢印Rで示される方向に回転することにより、紙葉類8が1枚ずつ画像形成機構に向けて送り出される構成としている。
なお、トレイと給紙ローラとが離間しており、給紙ローラと対向する位置に分離パッドや分離ローラが設けられる給紙機構に用いることもできる。
【0039】
以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の実施例、比較例について詳述する。
下記の表1に示すように、各実施例、比較例について、表1に記載の配合と架橋剤等の所要の添加剤を用いて、ゴムの粒子径が表1に示す値となるようにゴムを分散させ、後述する方法により熱可塑性エラストマー組成物からなるペレット状の生成物を製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
表中の各配合の数値単位は重量部である。また表中の各配合の記載は以下の通りである。
ゴム(オレフィン系共重合ゴム)
・4770R:EPDM(デュポンダウエラストマージャパン製NORDEL IP NDR4770R(非油展ゴム))
・670F:EPDM(住友化学製、エスプレン670F(パラフィンオイル100%油展(ゴム:オイル=50:50)))
【0042】
分子内にエチレンブロックを有する熱可塑性樹脂(オレフィン樹脂)
・BC6:ポリプロピレン(日本ポリケム製PP BC6)
・ミペロン:超高分子量ポリエチレン(三井化学製、UHMWPE ミペロンXM−220)
【0043】
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー
・セプトン2063:SEPS(クラレ社製、セプトン2063)
ポリマー主鎖中にアミド結合を有している熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂)
・LA0010:ナイロン樹脂(宇部興産製LA0010(6ナイロン+PE))
【0044】
樹脂架橋剤
・タッキロール250−III(田岡化学社製)プロミネーティッドアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
・タッキロール201(田岡化学社製)アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
亜鉛華
・酸化亜鉛:三井金属製酸化亜鉛
【0045】
(実施例1)
表1に記載の全配合をタンブラーにてドライブレンドし、HTM−38(アイベック2軸押出機)にて、常圧下、圧力をかけずに200℃、200rpmにて1段階の工程で混練及び動的架橋し、ペレット状の生成物を得た。この生成物を2軸押し出し機HTM38(アイベック(株)製)を用いて口金をリボン形状に取り替えて、200℃、20rpmでシート状に成形した。このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みの試験用のシートを得た。ゴムの粒子径が2μm以上40μm以下になるようにゴムを不均一に分散させた。
【0046】
(実施例2)
ゴムとBC6、ミペロン、架橋剤を配合し、実施例1と同様の方法で混練及び動的架橋を行った後に、セプトン、LA0010を加えてペレット状の生成物を得た。その他は実施例1と同様とした。ゴムの粒子径が2μm以上40μm以下になるようにゴムを不均一に分散させた。
【0047】
(比較例1)
ゴムとBC6とを混練した後に、架橋剤を加えて動的架橋を行った。その他は実施例1と同様とした。ゴムの粒子径が0.5μm以上2μm未満になるようにゴムを均一に分散させた。
(比較例2)
表1に記載の全配合を実施例1と同様の方法で混練及び動的架橋を行った。ゴムの粒子径が0.5μm以上2μm未満になるようにゴムを均一に分散させた。
【0048】
上記各実施例、比較例の各試験用シートについて耐磨耗性評価を行った。なお、ゴムの平均粒子径は下記の方法により測定した。
【0049】
(ゴムの粒子径の測定評価)
SII製SPM(走査型プローグ顕微鏡)にて試験用シート中のゴムの粒子径を測定した。測定機内蔵の画像解析より求めた。
【0050】
(耐磨耗性評価)
キャノンレーザープリンタLBP−470CのCST分離パッドに各実施例、比較例のシートを取り付け、30K(30000枚)通紙後の重量変化を磨耗量とした。紙はキャノン製PPC用紙(A4)を使用した。
【0051】
表1に示すように、実施例1と比較例1は同配合であるが、動的架橋後のゴムの平均粒子径が異なっており、平均粒子径が2μm以上40μm以下である実施例1は、平均粒子径が0.5μm以上2μm未満である比較例1に比べ磨耗量が少なく、耐磨耗性に優れていた。実施例2、比較例2についても、同様に平均粒子径が2μm以上40μm以下と、ある程度大きい実施例2の方が磨耗量が少なく、耐磨耗性に優れていた。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、動的架橋により分散されたオレフィン系共重合ゴムの平均粒子径を規定し、エラストマー中のゴム相と樹脂相との界面の接触面積を調整しているため、熱可塑性エラストマー組成物の耐磨耗性を向上することができる。
【0053】
また、本発明の製造方法によれば、上記特定のゴムと樹脂とを1つの工程にて常圧下で同時に混練して動的架橋することで、混練工程を簡略化することができる。さらに、配合材料の投入量を従来以上にすることができ、かつ圧をかけずに製造可能であるので、製造効率が飛躍的に向上し、生産に要するエネルギーやコストも減少するので、生産性や製品コストを低減することができる。
【0054】
従って、本発明の熱可塑性エラストマーを用いてなる紙葉類重送防止部材及び給紙ローラは、強度、耐久性を維持しながら、耐磨耗性に優れており、かつ経済上有利であり、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた紙葉類重送防止部材(分離シート)及び給紙ローラを備えた給紙機構を示す図である。
【符号の説明】
2 給紙ローラ
4 トレイ
6 分離シート
8 紙葉類
10 先端部分
Claims (7)
- 少なくとも1種以上のオレフィン系共重合ゴムと、分子内にエチレンブロックを有する少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂とを含み、
上記オレフィン系共重合ゴムが動的架橋され、動的架橋により分散されたオレフィン系共重合ゴムの平均粒子径が2μm以上100μm以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。 - 上記オレフィン系共重合ゴム100重量部に対して、上記熱可塑性樹脂を20重量部以上80重量部以下の割合で配合すると共に、架橋剤として樹脂架橋剤を1重量部以上20重量部以下の割合で配合している請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、ポリマー主鎖中にアミド結合を有する熱可塑性樹脂を100重量部未満の割合で含んでいる請求項1または請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 少なくとも1種以上のオレフィン系共重合ゴムと、分子内にエチレンブロックを有する少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂と、架橋剤とを混合し、1つの工程にて常圧下で混練して動的架橋を行い、上記オレフィン系共重合ゴムを、その平均粒子径が2μm以上となるように分散させて熱可塑性エラストマー組成物を製造することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
- 上記エチレンブロックを有する熱可塑性樹脂の融点以上で該エチレンブロックを有する熱可塑性樹脂より粘度が高い熱可塑性組成物を、上記動的架橋後に混合している請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いてなることを特徴とする紙葉類の重送防止部材。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いてなることを特徴とする給紙ローラ。
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