JP4115739B2 - 熱可塑性エラストマー組成物を用いた給紙部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物を用いた給紙部材およびその製造方法に関し、詳しくは、耐摩耗性と摩擦係数を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構には、給紙ローラや該給紙ローラと対向配置される紙葉類の重送防止部材等の給紙部材が使用されている。このような給紙部材は、生産性が良く、物性にも優れる点から熱可塑性エラストマー組成物により形成されるものが多い。
【0003】
このような熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム成分と熱可塑性樹脂成分を緊密に混合した後に架橋剤を添加する方法や、ゴム成分とその架橋剤を予め均一状態になるまで低温で混練した後に熱可塑性樹脂等の必要な材料を投入する方法等により製造されている。
【0004】
近年、上記のような給紙ローラ、紙用類の重送防止部材に代表される給紙部材等の事務機器用部材に適した熱可塑性エラストマー組成物の耐摩耗性等の物性を向上させるため、種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特開平8−143200号では、ウレタン系熱可塑性エラストマーとEPDMゴムと硫黄架橋剤とからなるブレンドゴム組成物を用い、摩擦係数が大きく且つ耐摩耗性に優れたゴムローラが提案されている。
【0006】
また、特開平10−130362号では、熱可塑性ポリウレタン(TPU)と、非極性であるPPとEPDMを動的架橋した混合物とをブロックコポリマー相容化剤と共に配合したブレンド物が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−143200号のゴムローラは、反応速度の遅い硫黄架橋剤により架橋されているため、加硫速度が遅く、ゴム成分の機械的物性を十分に向上させることができないという問題がある。さらには、極性の異なるウレタン系熱可塑性エラストマーとEPDMゴムとの配合であるため、両者の界面が破壊され、組成物が白化したり、十分な混練ができないという問題がある。
【0008】
また、特開平10−130362号のブレンド物は、ポリプロピレンを用いているため耐摩耗性が悪い上に、摩擦係数が低くなるという問題がある。さらに、これらのブレンド物を単に混合することが記載されているだけであり、動的架橋を行っていないため、適度な耐摩耗性等の物性値を得られないという問題がある。
【0009】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、摩擦係数が高く、耐摩耗性に優れた紙葉類の重送防止部材あるいは給紙ローラからなる給紙部材を提供し、混練の工程を簡略化でき、生産性に優れる該給紙部材の製造方法を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、熱可塑性エラストマー組成物を用いてなる紙葉類の重送防止部材あるいは紙送りローラである給紙部材であって、
上記熱可塑性エラストマー組成物は、EPDMからなるゴムと、ウレタン系エラストマーと、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤とを含み、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて動的架橋されてなることを特徴とする給紙部材を提供している。
【0011】
上記のように本発明の給紙部材を形成する熱可塑性エラストマー組成物は、互いに極性の異なるEPDMからなるゴム成分とウレタン系エラストマー成分とを、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と共に配合している上に、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて動的架橋を行っている。このため、互いに極性の異なるゴム成分と熱可塑性成分とを相容化させ効果的にアロイ化することができる上に、加硫速度も良好でありゴム成分等の機械的物性を十分に向上させることができる。特に、耐候性等に優れる非極性のEPDMと、耐摩耗性等に優れる極性のウレタン系エラストマーとの組み合わせが可能となり、摩擦係数が高く、耐摩耗性に優れた給紙部材を得ることができる。
【0012】
上記ゴムは、EPDM100%とすることが最も好ましく、EPDMと他のゴムとをブレンドする場合、全ゴムに占めるEPDMの比率は50重量%以上、さらには80重量%以上が好ましい。この理由は、EPDMは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、従って最終製品、例えばローラの耐候性を高めることができるためである。また、EPDMは、その配合量により摩擦係数の調節が容易とされる。なお、EPDMは、ゴム成分のみからなる非油展タイプでも良いし、ゴム成分とともに親展油を含む油展タイプでも良く、また第3成分も特に限定されるものではない。
【0014】
ウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、耐摩耗性の向上と高い摩擦係数の両立を可能とすることができる。ウレタン系熱可塑性エラストマーは、エステル系、エーテル系等が挙げられるが、いずれのタイプのものを用いても良い。環境依存性の点からはエーテル系が好ましい。
【0015】
上記のように、耐摩耗性と高摩擦係数の点からは、上記ゴムをEPDMとし、上記熱可塑性樹脂あるいは/及び熱可塑性エラストマーをウレタン系熱可塑性エラストマーとするのが最適である。
【0016】
上記ゴム100重量部に対して、上記ウレタン系エラストマーを10重量部以上の割合で配合していることが好ましい。これにより耐摩耗性を要求される給紙部材としての摩擦係数等の種々の物性を向上することができる。なお、より好ましくは10重量部以上200重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上100重量部以下が良い。
【0017】
上記相容化剤は、上記ゴムと上記ウレタン系エラストマーとの合計重量の2%以上、上記ウレタン系エラストマーの重量未満の割合で配合されている。これにより、ウレタン系ラストマー組成物中のゴム成分のゴム相と熱可塑性成分の樹脂相との界面の相容性を効率良く高めることができる。
上記範囲としているのは、上記範囲より配合量が少ないと十分な相容化剤の効果を得にくいためである。一方、上記範囲より配合量が多いと各種力学物性が低下する恐れがあるためである。なお、好ましくは、上記相容化剤は、架橋剤等の種類にもよるが、上記ゴムと上記ウレタン系エラストマーとの合計重量の2%以上20%以下の割合で配合するのが良い。
【0018】
上記相容化剤としては、両成分の構造と同じか、あるいは両成分と相溶性を有する構造を含むという理由により、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂を用いている。その他、一般的な従来公知の相溶化剤を併用することができるが、極性と非極性の構造を有するものが好ましい。相容化剤は、反応型相容化剤と非反応型相容化剤とが挙げられる。反応型相容化剤は、酸無水環、エポキシ環、カルボン酸基等がポリマー主鎖あるいは側鎖についており、少ない使用量で効果を得ることができ、生産性を向上させる目的に適しており、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、スチレン/無水マレイン酸共重合物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合物へのスチレン(またはMMA)グラフト共重合物等が挙げられる。非反応型相容化剤は、混練り、成形条件も容易で、安価である上に、良好な物性を得やすく、摩擦係数、耐摩耗性を向上させやすく、ポリエチレン/ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロック共重合物、ポリエチレン/ポリスチレン(またはPMMA)グラフト共重合物等が挙げられる。具体的には、日本油脂(株)SS300(オレフィン系熱可塑性エラストマー(非反応型))、日本油脂(株)IE200(EPR+エポキシ(反応型))。日本油脂(株)モディパーA6600(EVA+アクリル酸(非反応型))等を用いることができる。
【0019】
上記樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起こさせる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用する場合に比べ、ブルームが生じにくく圧縮永久ひずみも小さいため、精度維持や耐久性に優れる点で好ましい。特に、フェノール樹脂が好ましい。
【0020】
その他の樹脂架橋剤としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられ、複数種を用いても良い。
フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。特に、ベンゼンのオルト位又はパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。樹脂架橋剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して1重量部以上50重量部以下、好ましくは3重量部以上15重量部以下が良い。
【0021】
また、本発明における動的架橋は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、エラストマー組成物中にハロゲン供与性物質を配合してもよい。ハロゲン化された樹脂架橋剤としては、上記の各付加縮合型樹脂がハロゲン化されたものが挙げられる。なかでも、フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂、特にはハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。
【0022】
またハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化樹脂としては、例えば塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのハロゲン供与性物質は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記樹脂架橋剤以外に、ブルームを起こし難く、圧縮永久歪みが小さい等の理由により過酸化物架橋剤(パーオキサイド架橋剤)も好ましく用いることができる。過酸化物架橋剤は、使用する材料や押出条件等により適当な反応速度になるものを適宜選択可能であるが、2軸押出機による180℃〜220℃程度での架橋に最適であり、架橋密度を高めることができる。特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。過酸化物架橋剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0.5重量部以上20重量部以下、好ましくは1重量部以上10重量部以下が良い。
【0024】
過酸化物架橋剤としては2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3や2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等、各種の過酸化物を必要に応じて選択することができる。なお、過酸化物架橋を行う場合は、疲労特性等の各種の機械的物性を改良、調整したり、架橋密度を向上させる目的で、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパンメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)等の架橋助剤を用いてもよく、必要に応じて、樹脂架橋剤と併用してもよい。
【0025】
また、架橋反応を適切に行うために架橋活性剤を用いてもよい。架橋活性剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。なお、必要に応じて、可塑剤やオイル等の軟化剤、老化防止剤、ワックス等を配合しても良い。
【0026】
また、上記熱可塑性エラストマー組成物を用いた給紙部材の製造方法として、
EPDMからなるゴムと、ウレタン系エラストマーと、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤とを同時に混練して動的架橋した熱可塑性エラストマー組成物とし、
上記熱可塑性エラストマー組成物をシート状に成形した後、スライスまたは研磨し、紙葉類の重送防止部材としていることを特徴とする給紙部材の製造方法、並びに、
上記熱可塑性エラストマー組成物をチューブ状に成形した後、表面を研磨し、紙送りローラとしていることを特徴とする給紙部材の製造方法を提供している。
【0027】
このように、互いに極性の異なるゴム成分と熱可塑性成分とを、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と共に配合しているため、両者の界面が破壊することなく両者を効果的にアロイ化することができる上に、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて動的架橋を行っているため、加硫速度も良好であり生産性も高めることができる。さらに、上記配合によれば、1つの工程で同時に混練して動的架橋を行うことができるため、混練工程を簡略化することができ、生産性、作業性を高めることができる。特に、2軸押出機を用いて短時間で混練することが好ましい。
【0028】
本発明の給紙部材は、上記熱可塑性エラストマー組成物を用い、複写機、プリンター、ファクシミリ等の給紙機構に使用される分離シート、分離パッド、分離ローラ等の紙葉類(PPC用紙、OHP用フィルム等)の重送防止部材を形成している。これにより、紙葉類を1枚ずつ確実に分離し画像形成機構に送り出す紙葉類重送防止部材の強度、高摩擦係数等を維持しながら、耐摩耗性を向上することができる。
【0029】
あるいは、本発明の給紙部材は、上記熱可塑性エラストマー組成物を用い、トレイに蓄えられたPPC用紙、OHP用フィルム等の紙葉類を画像形成機構に送り出す給紙ローラを形成している。これにより、給紙ローラの強度、高摩擦係数等を維持しながら、耐摩耗性を向上することができる。
【0030】
上記紙葉類の重送防止部材や給紙ローラからなる給紙部材の硬度はJIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法)で10度〜95度の範囲であるのが好ましい。詳細には、給紙ローラとする場合には10度〜50度が好ましく、分離パッド等とする場合には50度〜95度が好ましい。
また、良好な給紙性能を得るためには、実機耐久試験における3万枚通紙後の部材の摩耗量が15×10−3cm3以下であることが好ましい。さらに、ヘイドン14型試験機を用いた摩擦係数測定(荷重1.96N、速度10mm/sec)における摩擦係数が0.90以上であることが好ましい。
【0031】
本発明の紙葉類の重送防止部材あるいは給紙ローラからなる給紙部材は、下記のような方法により作成できる。
例えば、全ての原料を2軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等のゴム混練装置に投入して1つの工程で同時に混練する。混練温度が約160℃〜230℃で加熱し、0.5分〜10分程度混練してゴムを動的架橋した後、ゴム混練装置より押し出している。この押し出した熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを単軸押出機にてシート状に成形し、このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みのシートとすることにより紙葉類の重送防止部材としている。
【0032】
また、上記熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出成形してチューブ状に成形する。この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして給紙ローラとしている。
なお、射出成形機のかわりに樹脂用単軸押出機によってチューブ状に押し出し、それをカットすることによって給紙ローラとすることもできる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態の紙葉類の重送防止部材あるいは給紙ローラからなる給紙部材を形成する熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系共重合ゴムとして非極性である非油展のEPDM100重量部と、熱可塑性成分として極性を有するウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)43重量部と、相容化剤としてアクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂6.4重量部と、樹脂架橋剤として2種の反応性フェノール樹脂を各々1.4重量部、4.2重量部とを含んでいる。
【0034】
上記熱可塑性エラストマー組成物は、以下に示す製造方法により製造している。
上記全材料及び架橋剤等の任意に配合する薬品等を2軸押出機の同一投入口より同時に投入して、200℃の温度で加熱し、1つの工程で混練している。この状態で、200rpmにて混練し、動的架橋を行っている。
【0035】
上記のように動的架橋された熱可塑性エラストマー組成物をペレット化し、該ペレットを単軸押出機にてシート状に成形し、このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みのシートとすることにより紙葉類の重送防止部材としている。
【0036】
また、上記ペレットを射出(インジェクション)成形機により射出成形してチューブ状に成形し、この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして給紙ローラとすることもできる。
【0037】
図1は、本発明の紙葉類の重送防止部材としての分離シート、及び給紙ローラが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。この給紙機構は、給紙ローラ2とトレイ4とを備えている。トレイ4は、その上面の給紙ローラ2寄りに分離シート6を備えている。トレイ4の上面には、多数枚の紙葉類8が重ねられて蓄えられている。トレイ4の給紙ローラ2寄りは、その下面に当接するバネ(図示されず)によって上方に押し上げられ、給紙ローラ2に向かって押し付けられている。分離シート6と給紙ローラ2との間には、紙葉類8の先端部分10が挟まれている。給紙ローラ2が図中の矢印Rで示される方向に回転することにより、紙葉類8が1枚ずつ画像形成機構に向けて送り出される構成としている。
なお、トレイと給紙ローラとが離間しており、給紙ローラと対向する位置に分離パッドや分離ローラが設けられる給紙機構においても本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた給紙部材を用いることができる。
【0038】
以下、本発明の実施例、比較例について詳述する。
下記の表1に示すように、各実施例、比較例について、表1に記載の配合と架橋剤等の所要の配合剤を用いて、後述する方法により熱可塑性エラストマー組成物からなるペレット状の生成物を製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
表中の各配合の数値単位は重量部である。また表中の各配合の記載は以下の通りである。
ゴム(オレフィン系共重合ゴム)
・4770R:EPDM(デュポンダウエラストマージャパン製NORDEL IP NDR4770R(非油展ゴム))(非極性)
・670F:EPDM(住友化学製、エスプレン670F(パラフィンオイル100%油展(ゴム:オイル=50:50)))(非極性)
【0041】
相容化剤
・928DサニガムP−7395(GOODYEAR製)、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂
【0042】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)
・エラストラン1195E(エステル系、硬度95A)(BASFジャパン製)(極性)
エラストランET385(エーテル系、硬度85A)(BASFジャパン製)(極性)
【0043】
オレフィン樹脂
・BC6:ポリプロピレン(日本ポリケム製PP BC6)(非極性)
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー
セプトン4077:SEEPS(クラレ社製、セプトン4077)(極性小、非極性のものと混合可)
【0044】
樹脂架橋剤
・タッキロール250−III(田岡化学社製)プロミネーティッドアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
・タッキロール201(田岡化学社製)アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
過酸化物架橋剤
・パーヘキシン25B(日本油脂製)2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3
【0045】
(実施例1)
表1に記載の全配合をタンブラーにてドライブレンドし、HTM−38(アイベック2軸押出機)にて、200℃、200rpmで1つの工程で同時に混練及び動的架橋し、ペレット状の生成物を得た。この生成物を単軸押出機(φ50)(笠松加工研究所)にて200℃、20rpmでシート状に成形した。このシートをスライスまたは研磨することで、必要な厚みの試験用のシートを得た。
【0046】
(実施例2)
ウレタン系熱可塑性エラストマーのみを実施例1と変更した。その他は、実施例1と同様とした。
【0047】
(実施例3)
樹脂架橋剤ではなく、過酸化物架橋剤を用いると共に、相容化剤とウレタン系熱可塑性エラストマーの配合量を実施例1に対して変更した。その他は、実施例1と同様とした。
【0048】
(比較例1)
非極性の油展EPDM(ゴム:オイル=1:1)と非極性のポリプロピレンとの配合とした。
(比較例2)
非極性の非油展EPDMと非極性のポリプロピレン、スチレン系熱可塑性エラストマーとの配合とした。
(比較例3)
非極性の非油展EPDMと極性のウレタン系熱可塑性エラストマーの配合としたが、相容化剤を配合しなかった。
【0049】
上記各実施例、比較例の各試験用シートについて摩擦係数、耐摩耗性評価、硬度測定(JIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法))を行った。
【0050】
(摩擦係数測定)
ヘイドン14型試験機を用いた摩擦係数測定(荷重1.96N、速度10mm/sec)を行った。サンプルは、10mm×30mmとした。初期状態での摩擦係数が0.90以上を良好とした。
【0051】
(耐摩耗性評価)
ヒューレットパッカード社製、レーザープリンタレーザージェット2200のCST分離パッドに各実施例、比較例のシートを取り付け、30K(30000枚)通紙後の重量変化を摩耗量とした。紙はキャノン製PPC用紙(A4)を使用した。摩耗量が15×10−3cm3以下を良好とした。
【0052】
表1に示すように、実施例1〜3は、非極性のEPDMゴムと、極性のウレタン系熱可塑性エラストマーとをアクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と共に配合し、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて架橋しているため。初期の摩擦係数が0.90以上である上に、摩耗量も15×10−3cm3以下であり、高摩擦係数と良好な耐摩耗性を実現していることが確認できた。
【0053】
一方、比較例1は、ポリプロピレンを用いているため、摩耗量が非常に多く、耐摩耗性が悪かった。比較例2は、非極性のゴム相と樹脂相との配合であり、摩擦係数が低く、摩擦係数と摩耗量の両立を実現できなかった。比較例3は、相容化剤を配合していないため、EPDMとウレタン系熱可塑性エラストマーが互いに混ざり合うことができず作製不能であった。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、互いに極性の異なるEPDMからなるゴム成分とウレタン系エラストマーからなる熱可塑性成分とを、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と共に配合しているため、互いに極性の異なるゴム成分と熱可塑性成分とを相容化させ効果的にアロイ化することができる。さらに、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて動的架橋を行っているため、加硫速度も良好でありゴム成分等の機械的物性を十分に向上させることができる。
【0055】
よって、物性の異なる材料同士を配合することができ、特に、耐候性等に優れる非極性のEPDMゴムと、耐摩耗性等に優れる極性のウレタン系エラストマーとを組み合わせた配合が可能となり、摩擦係数が高く、耐摩耗性に優れた給紙部材を得ることができる。
【0056】
また、本発明の製造方法によれば、互いに極性の異なるEPDMゴムとウレタン系エラストマーとを1つの工程にて同時に混練して動的架橋することで、混練工程を簡略化し作業性を高めることができる。よって、製造効率が飛躍的に向上し、生産に要するエネルギーやコストも減少するので、生産性や製品コストを低減することができる。
【0057】
従って、本発明の熱可塑性エラストマーを用いてなる紙葉類重送防止部材及び給紙ローラは、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共に、高摩擦係数を維持しながら、耐摩耗性に優れており、かつ経済上有利であり、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた紙葉類の重送防止部材(分離シート)及び給紙ローラを備えた給紙機構を示す図である。
【符号の説明】
2 給紙ローラ
4 トレイ
6 分離シート
8 紙葉類
10 先端部分
Claims (5)
- 熱可塑性エラストマー組成物を用いてなる紙葉類の重送防止部材あるいは紙送りローラである給紙部材であって、
上記熱可塑性エラストマー組成物は、EPDMからなるゴムと、ウレタン系エラストマーと、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤とを含み、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤を用いて動的架橋されてなることを特徴とする給紙部材。 - 上記ウレタン系エラストマーは上記ゴム100重量部に対して30重量部以上100重量部以下の割合で配合されると共に、
上記相容化剤は、上記ゴムとウレタン系エラストマーとの合計重量の2%以上、上記ウレタン系エラストマーの重量未満の割合で配合され、かつ、
上記樹脂架橋剤としてアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が上記ゴム100重量部に対して3重量部以上15重量部以下の割合で配合され、または、上記過酸化物架橋剤として2,5−ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3が上記ゴム100重量部に対して1重量部以上10重量部以下の割合で配合されている請求項1に記載の給紙部材。 - JIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法)で測定した硬度が10度〜95度の範囲であり、ヘイドン14型試験機を用いた摩擦係数測定(荷重1.96N、速度10mm/sec)における摩擦係数が0.90以上である請求項1または請求項2に記載の給紙部材。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の給紙部材の製造方法であって、
EPDMからなるゴムと、ウレタン系エラストマーと、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤とを同時に混練して動的架橋した熱可塑性エラストマー組成物とし、
上記熱可塑性エラストマー組成物をシート状に成形した後、スライスまたは研磨し、紙葉類の重送防止部材としていることを特徴とする給紙部材の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の給紙部材の製造方法であって、
EPDMからなるゴムと、ウレタン系エラストマーと、アクリル酸エステル系の熱可塑性樹脂からなる相容化剤と、樹脂架橋剤または過酸化物架橋剤とを同時に混練して動的架橋した熱可塑性エラストマー組成物とし、
上記熱可塑性エラストマー組成物をチューブ状に成形した後、表面を研磨し、所要寸法にカットして紙送りローラとしていることを特徴とする給紙部材の製造方法。
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