JP2004035856A - エラストマー組成物及びそれを用いた紙送りローラ - Google Patents
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Abstract
【課題】紙送りローラ等に最適で、硬度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に最適なエラストマー組成物を提供し、さらには、極性の水性インク等の記録液との親和性がよく、印刷時に印刷部分にローラ痕が残ることがなく、かつ、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性に優れる上に、高い摩擦係数を有し、その高い摩擦係数が保持されることを特徴とする紙送りローラを提供する。
【解決手段】ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させて、エラストマー組成物を得る。また、上記エラストマー成分と、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比を、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)と規定し、このようなエラストマー組成物を主原料として紙送りローラ1を成形する。
【選択図】 図1
【解決手段】ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させて、エラストマー組成物を得る。また、上記エラストマー成分と、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比を、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)と規定し、このようなエラストマー組成物を主原料として紙送りローラ1を成形する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エラストマー組成物及びそれを用いた紙送りローラに関し、詳しくは、エラストマーにポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物及びこの組成物から成形される紙送りローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
異種のポリマーをブレンドし、新たな性質を生み出すポリマーアロイの分野において、ナイロンに対してポリオレフィンを配合することは、主に高衝撃化技術として利用されてきた。具体的には、ナイロン/ゴム系アロイが十分高い衝撃強度を発現するためには、ゴム粒子間距離が臨界値(0.304μm)より小さいことが必要である。従って、高衝撃強度を得るためにはナイロンマトリックス中で、ゴム粒子を細かく分散させることが重要であり、このための研究が種々なされている。
【0003】
例えば、EPMに1%程度の微量の無水マレイン酸をグラフトさせると、ナイロンマトリックス中において、極めて微細なグラフト化EPMが分散した材料が得られ、このグラフト化EPMの粒径は約数100nmとなっている。
【0004】
また、特開平7―18088号は、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系重合体のブレンドの際にポリアミド系樹脂がマトリクスとなる構造を持つ、樹脂組成物の製造方法を開示している。
【0005】
さらに、特開2000―129047号は、一定範囲の比率のポリアミド系エラストマー(A)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ゴム(B)成分から構成され、(A)がマトリックス相、(B)が分散相となることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物を開示している。
【0006】
その他、特開平9―53767号は、複合フレキシブルホースの内層を構成するポリマーアロイの組成比が、ブチル系ゴムと高分子量ポリアミドとの重量部で95/5〜50/50である組成物を開示している。
【0007】
また、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、静電気式複写機、及び普通紙ファクシミリ装置等のOA機器や自動預金支払機(ATM)等の紙送り機構において、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし、分離する等の目的でゴムローラが用いられている。このようなゴムローラは上記のような搬送物をピックアップし分離しながら紙送りをする必要があることから、優れた柔軟性と高い耐磨耗性が要求されている。
【0008】
さらに上記のようなゴムローラの中で、インクジェットプリンタにおいて使用される給紙用のゴムローラでは、記録液(水性インク)との良好な親和性(相性)を有していることが要求されている。これは、インクジェット用記録液には、水や多価アルコール等の極性成分が多く含まれており、該記録液(極性)との親和性が悪いと、紙送り時にゴムローラに接触した部分への記録液ののりが悪くなり、ローラ痕が残るという不都合が発生するためである。
【0009】
この種のゴムローラとして、従来、油展EPDMや場合によっては油展塩素化ポリエチレン等の加硫物がこれらのローラの材料として使われていた。しかし、これらの加硫ゴムは、初期摩擦係数がそれ程高くない上に、通紙枚数の増加と共に摩擦係数が低下するという問題がある。また、油展EPDMの単独加硫物、あるいは、それと極性の低い熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーとの動的架橋組成物では、全体が非極性のため、水性インク等の極性記録液との親和性が悪くなるという問題もある。
【0010】
これらの点を鑑みて、本発明者らは動的架橋の手法を用いて、熱可塑性樹脂中にゴムを微分散させて、加硫ゴム並の耐久性、弾性、柔軟性と、熱可塑性樹脂の様な成型性を併せ持つ、ゴムローラを発明し、提供している。
【0011】
例えば、本出願人は先に特願2001−297873号において、動的架橋ゴムがポリアミド系熱可塑性樹脂中に分散された熱可塑性エラストマー組成物を主原料として成形されてなることを特徴とするゴムローラを提供している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のナイロン/ゴム系アロイ材料は高衝撃強度という良好な機械的特性を示すが、紙送りローラとして用いる場合には硬度が高く、不適である。そして、上記の様に、従来の微細グラフト化EPMの粒径は約数100nmであるが、ナイロンがマトリックスとなっている。
【0013】
また、上記の特開平7―18088及び特開2000―129047に開示の組成物も、ポリアミド系樹脂又はポリアミド系エラストマーがマトリックスとなり、ゴムが分散粒子となるモルフォロジィーを有している。このように、ナイロン等のポリアミド系樹脂をマトリクスとすると、紙送りローラ等として用いた場合には、硬度が高くなりすぎて十分な搬送力が出ず、紙送りローラとして実用に適さないという問題がある。また、通常、ポリアミドは熱可塑性樹脂であるために、溶融プレスすることで流動し、相分離が進行してしまうことが欠点である。
【0014】
さらに、特開平9―53767号に開示の組成物は、ポリアミドの分散粒径が大きい場合には、このような組成物が他の物体等と接触して用いられた時に、摩耗により剥離が生じやすいという問題がある。特に、紙送りローラとして用いた場合、磨耗時にゴムと樹脂の界面からクラックが生じやすくなってしまい、また圧縮永久ひずみが大きくなるという問題がある。
【0015】
そして、前記した本出願人の先願のゴムローラはインクジェットプリンタ等でローラ痕が残ることがなく、好適に用いることができるが、摩擦係数について未だ改良の余地がある。
【0016】
また、昨今、複写機、プリンタの寿命が伸び、要求される耐久性のレベルが高くなっている上に、部品点数の削減によって高荷重下で使用されることが多くなっている。従って、ゴムローラの耐久性をさらに向上させることが要望されている。
【0017】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、従来とは発想を逆転させて、エラストマーのマトリックス中にポリアミド系熱可塑性樹脂をナノ分散化させることにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に有用な材料、特に紙送りローラ等に好適な組成物を提供することを課題としている。
また、インクジェットプリンタ等において用いられ、記録液、特に、極性の水性インクとの親和性がよく、用紙に記録液で印刷された時に、印刷部分にローラ痕が残ることがなく、かつ、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性に優れる上に、高い摩擦係数を持ち、それが保持されることを特徴とする紙送りローラを提供することも課題としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、エラストマー成分中に、相容化剤を配合しポリマーを効率的にアロイ化し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させる技術を開発することにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に有用なエラストマー組成物を得ることができ、さらに、この組成物を、OA機器や自動預金支払機(ATM)等の紙送り用のゴムローラとしたときに高い摩擦係数が得られ、かつ、この高い摩擦係数を維持でき、しかも、水溶性記録液(極性)と良好な親和性を有する紙送りローラが得られることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明では、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させてなることを特徴とするエラストマー組成物を提供している。
【0020】
上記のように本発明のエラストマー組成物中には、引裂強度等の機械的強度に優れる上に高極性であるポリアミド系熱可塑性樹脂が、平均粒径1μ未満で微分散している。また、エラストマーとポリアミド系熱可塑性樹脂との相溶性を高めるために相容化剤を配合している。このため、架橋反応を伴う溶融プレス等及び成形後もポリアミド系熱可塑性樹脂がナノ分散化しており、溶融プレス等を行ってもポリアミド系熱可塑性樹脂が流動し、相分離が進行することがない。よって、機械的強度に優れると共に極性と親和性を有する組成物が得ることができ、紙送りローラ、その他、摩耗しても常に高い摩擦係数を必要とされるもの、タイヤ等に有用に使用することができる。
【0021】
従って、例えば本発明のエラストマー組成物からなる紙送りローラは、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性に優れる上に、高い摩擦係数を持ち、それが保持される上に、水性インク等の極性記録液との親和力が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる。
【0022】
上記ポリアミド系熱可塑性樹脂が、上記エラストマー成分中に、平均粒径1μm未満で微分散しているのは、平均粒径が1μmより大きいと磨耗時にゴムと樹脂の界面からクラックが生じやすくなってしまい、また圧縮永久ひずみが大きくなってしまうためである。より好ましくは10nm以上500nm以下で微分散しているのが良い。本発明では、エラストマー成分とポリアミド系熱可塑性樹脂の界面で、相容化剤とポリアミド系熱可塑性樹脂が反応し、グラフトポリマーを生成する。そして、界面から引き抜かれたグラフトポリマーのドメインが数十nmのサイズになり、微分散される。
上記平均粒径とは、後述の実施例にて記載の方法により、走査型プローブ顕微鏡で評価して得た値である。
【0023】
また、上記相容化剤は、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂(油展樹脂の場合はオイルを除く樹脂分)の重量の0.1倍以上1.0倍以下の割合で配合されているのが良い。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないとポリアミドの界面で反応する相容化剤の量が足りず、微分散されにくいためである。一方、上記範囲より多いと材料の特性(物性)が相容化剤の影響を受ける場合があるためである。さらに、相容化剤は高価な場合が多く、コスト高になりやすいためである。
【0024】
上記エラストマーと上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の体積比を、(99.9:0.1〜70.0:30.0)、好ましくは(99.0:1.0〜86.0:14.0)とすることにより、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径を、より微細にすることができる。
上記エラストマー体積分率をこの範囲より少なくした場合、ポリアミド系熱可塑性樹脂の分散相が密となり、もしくはマトリックス相となる。他方、エラストマー体積分率をこの範囲より多くした場合、エラストマー分が多すぎてポリアミド系熱可塑性樹脂によって生み出される特性が損なわれる。
本明細書中、上記エラストマー成分の体積とは、油展ゴムの場合は、ゴム及びその油展オイルの合計である。同様に、ポリアミド系熱可塑性樹脂の体積とは、油展ポリアミド系熱可塑性樹脂の場合は、樹脂及びその油展オイルの合計である。またゴム及び樹脂共に、その中に溶解する可塑剤、相容化剤を用いる場合には、それらを加えた合計の体積である。なお、ポリアミド系熱可塑性樹脂の量が多くなるほど、粒径は大きくなりやすく、均一な微分散も行いにくくなる。
【0025】
また、上記体積比(分率)とすることにより、平均粒径を1μm未満に微分散させやすく、リアクティブブレンド手法によりアロイ化され微分散するのが好ましい。リアクティブブレンド手法とは、高性能ポリマーアロイを開発する有力な手法で、溶融混練と相容化を導く化学反応を同時に進行させる手法であり、優れた機械的特性が得られ、さらに新たな機能を付与することができる。
【0026】
上記エラストマー成分として、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMを用い、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂として各種ナイロンを用いることが好ましい。
【0027】
上記エラストマー成分としては、主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖にニ重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、耐候性に優れるという理由からエチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)を用いることが好ましい。その他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等を1種または複数種用いることができる。なお、上記エラストマー成分としては、スチレン系、オレフィン系等の各種熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0028】
また、このようなジエン系ゴムあるいはEPM、EPDMを油展する、あるいは軟化剤と共に用いることにより、低硬度を実現し、高い搬送力を有する紙送りローラを得ることができる。なお、ジエン系ゴムあるいはEPM、EPDMは、有機過酸化物等による架橋が容易である。
【0029】
上記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、汎用樹脂であり、比較的低コストである点と末端アミノ基を利用してマレイン酸変性ポリマーにグラフト化させて効率よく相容化できる点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のナイロン樹脂を好適に用いることができる。また、ブリードが発生しない範囲内で搬送力向上のためにポリアミド系熱可塑性樹脂を油展することもでき、油展する可塑剤の添加量は樹脂100重量部に対して5重量部以上150重量部以下、好ましくは10重量部以上100重量部以下であるのが良い。
【0030】
上記ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMと、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との相容化剤としてマレイン酸変性ポリマーを配合していることが好ましい。相容化剤を用いることにより、通常、相容性の小さいジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMと少量のポリアミド系熱可塑性樹脂とを効果的にアロイ化することができる。
また、上記相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーを用いることにより、マレイン酸変性ポリマーの分子中に含む無水マレイン酸の部分が、ポリアミド系熱可塑性樹脂の末端のアミノ基と反応して、グラフト化した相容化剤をつくるため、非常に効率良く、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂を相容化することができる。
【0031】
上記マレイン酸変性ポリマーとしては、エチレンエチルアクリレート(EEA)のマレイン酸変性物、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムあるいはマレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを用いると、物性の悪化が少なく、より良好な紙送りローラを作製できる。これらの中でも、特にマレイン酸変性エチレンプロピレンゴムが好適に用いられる。
【0032】
ゴムは油展ゴムで分子量が極力大きいものが好ましい。例えば、具体例として、住友化学工業株式会社製エスプレン670F、同じくエスプレン601F及び出光DMS社製ケルタン509×100等が挙げられる。
【0033】
ゴムを油展する場合、油展されるオイルの添加量は、硬度と搬送力の観点より、ゴム100重量部に対して15重量部以上600重量部以下、好ましくは25重量部以上400重量部以下であるのが良い。
【0034】
上記軟化剤としてはオイル、可塑剤が挙げられるが低極性のものが特に好適に用いられる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。特にパラフィン系オイルは揮発性が小さいため取り扱いやすく定量した量を確実に添加することができるので好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)、トリクレジルフォスフェート等をゴムとの相溶性が悪化せず、ローラ痕が残らない範囲で1種または複数種用いることができる。
【0035】
軟化剤がオイルである場合、ゴム100重量部に対して15重量部以上600重量部以下、好ましくは25重量部以上400重量部以下であるのが良い。
オイルが15重量部より小さいと紙送りローラの硬度が高くなりすぎることがあり、紙送りローラとしての適度な硬度を得にくくなるためである。一方、600重量部より大きいと、動的架橋物の表面からオイルがブリードしてきたり、あるいはオイルが架橋阻害を起こして、ゴム分が十分に架橋されず、物性が低下するという問題があることに因る。
また、軟化剤が可塑剤である場合、ゴム100重量部に対して10重量部以上500重量部以下、好ましくは、15重量部以上400重量部以下であるのが良い。
【0036】
架橋系については、ブルームを起こし難く、圧縮永久歪みも小さくなるという理由から、過酸化物架橋又は樹脂架橋が好ましい。なお、硫黄架橋としても良い。
【0037】
本発明では、特に、上記エラストマー組成物が過酸化物により架橋されていることが好ましい。上記過酸化物架橋に用いられる過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ベンゾイルパーオキサイド、2−5ジメチル2−5ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−m−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等が挙げられる。各種の過酸化物を、マトリックスにするポリアミド系熱可塑性樹脂の融点や軟化点,混練機内の滞留時間に応じて選択することができる。
通常、過酸化物の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下が好ましく、0.5重量部以上10重量部以下が特に好ましい。
【0038】
過酸化物架橋を行う場合には、疲労特性等の各種機械的物性を改良、調整したり、架橋密度を向上させる目的で、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド等の多官能性モノマー等の架橋助剤を用いても良いし、必要に応じて、樹脂架橋や硫黄架橋と併用してもよい。
【0039】
上記樹脂架橋では樹脂架橋剤が用いられるが、樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起させる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用した場合に生ずるブルームの問題が起らないので好ましい。特に、樹脂架橋剤としてフェノール樹脂を用いると給紙性能を高めることができる。その他の樹脂架橋剤としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、へキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられ、特に上記フェノール樹脂が好適である。フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。特に、ベンゼンのオルト位又はパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相容性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
通常、樹脂架橋剤の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して1重量部以上50重量部以下が好ましく、6重量部以上15重量部以下が特に好ましい。
【0040】
本発明における架橋又は部分架橋(動的架橋)は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、エラストマー組成物中にハロゲン供与性物質を配合してもよい。ハロゲン化された樹脂架橋剤としては、上記の各付加縮合型樹脂がハロゲン化されたものが挙げられる。なかでも、フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂、特にハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相容性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。
【0041】
またハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化樹脂としては、例えば塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのハロゲン供与性物質は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
架橋反応を適切に行うために架橋助剤(活性剤)を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
【0043】
即ち、本発明では、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で分散させたエラストマー組成物を主原料として成形されあることを特徴とする紙送りローラをも提供している。さらに、上記エラストマー成分と、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比が、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)であることが好ましい。
【0044】
上記エラストマー成分と上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比は、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)とすることにより、高摩擦係数を実現することができ、より搬送力が高く、さらに圧縮永久歪みが小さい紙送りローラを得ることができる。
即ち、上記エラストマー組成物中には、引裂強度等の機械的強度に優れる上に高極性であるポリアミド系熱可塑性樹脂が上記規定量で分散している。このため、水性インク等の極性記録液との親和力が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる上に、高摩擦係数、低硬度が実現でき、高い搬送力も得ることができ、給紙ローラに最適である。
【0045】
上記体積比を上記範囲としているのは、エラストマー成分の体積分率を87.5より少なくした場合、硬度が高くなりすぎて十分な搬送力が出ず、実用に適さないためである。他方、エラストマー成分の体積分率を99.5より多くした場合、ポリアミド系熱可塑性樹脂によって生み出された高搬送力の特性が損なわれ、さらには水性インク等の極性記録液との親和性の向上という効果が低下してしまうためである。
また、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)の体積比は、好ましくは(99.0:1.0〜92.5:7.5)、さらに好ましくは(98.5:1.5〜95.0:5.0)である。
【0046】
また、エラストマー組成物中には上記の配合剤以外に、必要に応じて、老化防止剤、ワックス等を配合することができる。老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ−β−ナフチル−P−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−P−フェニレンジアミンなどのアミン類、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノールなどのフェノール類等が挙げられる。なお、複数種の老化防止剤を用いることが好ましい。
上記老化防止剤の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下が好ましく、1重量部以上3重量部以下が特に好ましい。
【0047】
エラストマー組成物の機械的強度を向上させるために、必要に応じて、充填剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合する場合、充填剤はエラストマー組成物全体当たり30重量%以下とするのが好ましい。これは充填剤の配合はゴムの引っ張り強度及び引き裂き強度の改善には有効であるものの、余り多く配合するとゴムの柔軟性を大きく低下させるためである。
【0048】
上記紙送りローラの硬度はJIS6301のA型硬度計で測定したときの硬度が一般に15度〜60度、好ましくは20度〜55度、さらに好ましくは20度〜50度の範囲であるのが良い。この範囲とすると、紙送りローラを比較的小さい圧接力で紙やフィルムに押付けても紙送りローラが充分に変形し、紙やフィルムとの間に大きい接触面積を得ることができる。
【0049】
紙送りローラは円筒状に成形した状態で、その肉厚は0.5mm〜8mm、好ましくは1mm〜5mmとしている。これは、紙送りローラの強度との兼ね合いにもよるが、肉厚が小さすぎると、紙送りローラが変形しても紙との間に大きな接触面積が形成され難い。一方、肉厚が大きすぎると、ローラを変形させるために紙送りローラの紙への圧接力を大きくしなければならず、紙送りローラを紙に圧接させるための機構が大型化するためである。なお、紙送りローラの中空部には軸芯を圧入するか、あるいは接着剤で接合し固定することができる。
【0050】
また、可塑剤、その他必要に応じて相容化剤、老化防止剤等と上記ゴムとを混練機等で混入し、上記ゴムをマスターバッチとしていることが好ましい。これにより、作業性が向上すると共に、分散性を高めることができる。なお、ポリアミド系熱可塑性樹脂についても同様に、マスターバッチとすることが好ましい。
【0051】
本発明のエラストマー組成物及びその組成物からなる紙送りローラは、例えば以下の方法により作製できる。
樹脂マスターバッチの作製について説明する。2軸押し出し機、ニーダー又はバンバリーミキサー等により、ポリアミド系熱可塑性樹脂中に、相容化剤等を練り込む。混練は160℃〜280℃の温度で、1分間〜20分間行う。その後、該熱可塑性樹脂組成物を通例の方法によりペレット化し、樹脂マスターバッチのペレットを作製するのが良い。
【0052】
ゴムマスターバッチの作製方法について説明する。2軸押し出し機、ニーダー又はバンバリーミキサー等により、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDM等のゴム成分に必要に応じてパラフィンオイル等の可塑剤、相容化剤、老化防止剤、フィラー等を練り込む。混練は20℃〜250℃の温度で、1分間〜20分間行う。この組成物を通例の方法によりペレット化し、ゴムマスターバッチのペレットを作製するのが良い。なお、相容化剤は樹脂マスターバッチの中に高温中で練り込んで、それがマレイン酸変性ポリマーの場合、先にポリアミド系熱可塑性樹脂の末端のアミノ基と反応させてから、ポリマーブレンドを行っても良いし、ポリマーブレンド時にゴムマスターバッチや樹脂マスターバッチにドライブレンドして加えても良い。
【0053】
成形方法について説明する。
ゴムマスターバッチのペレット、樹脂マスターバッチのペレット、亜鉛華、老化防止剤、フィラー等の所要の添加剤を2軸押し出し機に投入し、160℃〜280℃の温度で加熱しながら1分間〜20分間混練してエラストマー成分/樹脂をブレンドした後押し出す。次いでこの押し出した混練ゴムからなるエラストマー組成物に架橋剤を、オープンロールによって混練した後、170℃〜230℃で熱プレス成形する。その後、所要寸法にカットを行い、紙送りローラとするのが良い。なお必要に応じて表面を研磨して用いても良い。
【0054】
また、紙送りローラには、紙を送る目的で紙送りの方向に回転させて使うローラ(ナジャー(1本で使用)、フィード(後述するリタードと2本セットで使用))と、紙の重送を防止する目的で紙送りの方向と逆の方向にトルクをかけて使用するローラ(リタード)の三種類があるが、各種類のローラに使用することができる。なお、紙送りローラの形状は、円筒形状、その他D字形状等の異形ローラ等の種々の形状とすることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる円筒形状の給紙用の紙送りローラ1を示し、その中空部に円柱形状の軸芯(シャフト)2を圧入して取り付けている。
【0056】
紙送りローラ1は、配合ゴムとして油展EPDMを用い、この油展EPDMにポリアミド系熱可塑性樹脂である油展ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物を主原料として成形されている。EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂の体積比は98.0:2.0であり、相容化剤としてマレイン酸変性ポリマーを用いている。
【0057】
具体的には、紙送りローラ1は、以下のようにして作製している。
まず、ニーダーにより、油展EPDM中に相容化剤、老化防止剤等を練り込み、20℃〜250℃の温度で、1分間〜20分間混練を行う。その後、このゴム組成物を通例の方法によりペレット化し、ゴムマスターバッチのペレットを作製する。なお油展EPDM中のオイルとゴム分は重量比が1:1としている。
【0058】
次にニーダーにより、油展ナイロン樹脂中に、相容化剤等を練り込み、160℃〜280℃の温度で、加熱しながら1分間〜20分間混練を行う。その後、該熱可塑性樹脂組成物を通例の方法によりペレット化し、樹脂マスターバッチのペレットを作製する。
【0059】
そして、ゴムマスターバッチのペレット、樹脂マスターバッチのペレット、亜鉛華、老化防止剤、フィラー等の所要の添加剤を2軸押し出し機HTM38(アイベック(株)製)に投入し、160℃〜280℃の温度で加熱しながら1分間〜20分間混練してゴム/樹脂をブレンドした後押し出す。次いでこの押し出した混練ゴムに過酸化物である架橋剤を、オープンロールによって混練した後、170℃〜230℃で熱プレス成形する。その後、所要寸法にカットを行い、紙送りローラ1としている。
【0060】
上記紙送りローラ1は、極性の低い油展EPDMに、機械的強度が高く極性の高いポリアミド該熱可塑性樹脂を少量で微分散させたエラストマーにより形成されている。このため、高い摩擦力を有し、その保持能力に優れている。また、低硬度と高い搬送力を得ることができ、ブリードの発生も防止することができる上に、水性インク(極性)との親和性が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる。さらには、耐磨耗性にも優れ、インクジェットプリンター用の紙送りローラに最適である。
【0061】
以下、本発明の組成物及び紙送りローラの実施例1〜実施例3、比較例1、2及び本発明の組成物の実施例4について詳述する。
本発明の紙送りローラは、下記の表1に記載の実施例1〜実施例3、比較例1、2の各々の配合のエラストマー組成物を用い、上記実施形態と方法と同様の方法により熱プレスにより成形した後、外径19.7mm、内径10mm、幅10mmにカットし、円筒形の紙送りローラを作製した。
また、本発明の組成物は、下記の表1に記載の実施例4の配合を上記実施形態と方法と同様の方法により混練、熱プレス成形して実施例4のエラストマー組成物を作製した。なお、参考として実施例4の組成物を用いて上記同様に紙送りローラを作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
表中の各配合の数値は重量部である。また、表中、ゴム1としては、EPDM(100%油展)、即ちEPDMゴム200重量部(ゴム100重量部、オイル100重量部)を使用した。ポリアミド系樹脂としては、表に示す油展ナイロン11を使用した。
【0064】
(実施例1乃至実施例3)
実施例1〜3は、表1に示される様に、エラストマー成分として100%油展EPDMを使用し、相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーであるエチレン・プロピレン共重合物のマレイン酸付加物を用いた。また、ポリアミド系熱可塑性樹脂として油展ナイロン11を使用し、ゴム(EPDM+油展オイル+相容化剤):樹脂(ナイロン+油展オイル)の体積比率を98.8:1.2〜96.0:4.0とした。また、ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させ、過酸化物架橋を行った。具体的には、実施例1〜3は、ナイロン樹脂を平均粒径0.01μm未満(10nm〜500nm)にて分散させた。いずれも、リアクティブブレンドにより作製した。
【0065】
(実施例4)
実施例4は、表1に示される様に、エラストマー成分として100%油展EPDMを使用し、相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーであるエチレン・プロピレン共重合物のマレイン酸付加物を用いた。また、ポリアミド系熱可塑性樹脂として油展ナイロン11を使用し、ゴム(EPDM+油展オイル+相容化剤):樹脂(ナイロン+油展オイル)の体積比率を86.0:14.0とした。また、ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させ、過酸化物架橋を行った。具体的には、ナイロン樹脂を平均粒径0.01μm未満(10nm〜500nm)にて分散させた。リアクティブブレンドにより作製した。
【0066】
(比較例1及び比較例2)
比較例1は、ポリアミド系熱可塑性樹脂を使用せず、実施例1〜3と同じ100%油展EPDMゴムのみを使用し、過酸化物架橋を行った。リアクティブブレンドにより作製した。
比較例2は、相容化剤を用いなかった。即ち、リアクティブブレンドしなかった。
【0067】
上記実施例1〜3、比較例1及び比較例2の紙送りローラについて後述する方法により、ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径、摩擦係数μ及び磨耗量、ローラ痕、硬度及び圧縮永久歪みについての評価・測定を行った。
また実施例4の組成物については、ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径、硬度圧縮永久ひずみについての評価・測定を行った。結果は表1中に記載した。
【0068】
(ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径)
走査型プローブ顕微鏡SPM(Scanning Probe Microscope)を用いて、実施例1〜4、比較例2の各組成物を観察し、材料のモルフォロジー及びポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径について評価した。この顕微鏡により観察された各組成物の写真を図2に示す。各写真において、海島構造のモルフォロジーが観察され、島状のポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子が、海状のEPDMからなるマトリクス中に微分散している。写真中、大きい分散粒子は数100nm程度であり、小さい分散粒子は数10nm程度である、1辺の長さは10μmである。
写真上に記載のPA11―1.2%とは、ポリアミド系熱可塑性樹脂のEDPMに対する体積分率(体積比)である。
【0069】
(摩擦係数及び磨耗量の評価)
摩擦係数を図3に示す以下の方法で測定した。すなわち、紙送りローラ21とプレート23との間に、ロードセル25に接続したA4サイズのPPC用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)24をはさみ、図3中、黒矢印で示すように、紙送りローラ21の回転軸22に荷重W(W=250gf)を加え、紙送りローラ21をプレート23に圧接させた。次いで、温度22℃、湿度55%の条件下で、上記紙送りローラ21を図3中、実線の矢印aで示す方向に、周速300mm/秒で回転させ、通紙の前後において、図3中、白矢印で示す方向に発生した力F(gf)をロードセル25によって測定した。そして、この測定値F(gf)と荷重W(250gf)とから、下記の式より摩擦係数μを求めた。この摩擦係数の測定は、通紙開始と30000枚通紙終了後のそれぞれで行った。
また、上記30000枚通紙終了前後の各紙送りローラの重量を測定することにより、磨耗量(mg)を求めた。
上記測定による30000枚通紙後の摩擦係数の値は、1.7以上が優れており、1.5以上が適であり、1.5未満は不適である。
【0070】
(数式1)
μ=F(gf)/W(gf)
【0071】
(ローラ痕評価)
さらに実施例、比較例の各紙送りローラを洗浄して、60℃で2時間放置してから、セイコーエプソン PM―770C機にセットした。印刷用紙としては、同じくセイコーエプソン(株)製のスーパーファイン専用光沢紙MJA4SP3を用いた。紙送りローラ、印刷用紙、インク等をセットした状態で、スーパーファイン画質モードのもと、青べたの印刷命令を用い、印刷された画像を以下の3段階で評価した。
記録液として使用したインクは、極性の水性インク(セイコーエプソン(株)製、カラーインクカートリッジIC5CL02W)である。
【0072】
○:ローラ痕なし。
△:ローラ痕はわずかに認められるが、高画質機でなければ実用上問題ないレベル。
×:ローラ痕がはっきり認められ、実用不可。
【0073】
(硬度の測定)
上記紙送りローラの硬度をJIS6253のA型硬度計で測定した。
【0074】
(圧縮永久歪みの測定)
上記紙送りローラの圧縮永久歪みをJIS−K6301の記載に従って測定した。数値単位は%とした。なお、圧縮永久歪みは0〜30であるのが好ましい。
【0075】
図2に示すように、実施例1〜実施例3の紙送りローラは、ポリアミド系熱可塑性樹脂が平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物であり、また表1に示すように、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂とが規定体積比で配合されているので、圧縮永久歪み、硬度、特に摩擦係数に優れ、かつローラ痕もない、優れた高性能のローラであることが確認できた。
【0076】
また、実施例4のエラストマー組成物は、図2に示すように、ポリアミド系熱可塑性樹脂が平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物であり、また表1に示すように、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂とが規定体積比で配合されているので、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に適している。
【0077】
詳細には、実施例1〜実施例3の紙送りローラは、比較例1と比べて耐磨耗性及び圧縮永久歪みは同等であり、初期摩擦係数はより高く、且つ、通紙後においても、その高い摩擦係数が保持された。
【0078】
一方、表1に示すように、比較例1はポリアミド系熱可塑性樹脂を配合していないため、通紙後の摩擦係数が不足し、またローラ痕が残り、紙送りローラとして不適であった。比較例2は、摩耗量が多く、摩擦係数も低かった。
【0079】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分中に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を1μm未満で微分散させることにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に最適であり、紙送りローラ、タイヤ等に有用な組成物を得ることができる。
【0080】
また、ポリアミド系熱可塑性樹脂を上記規定量で少量かつ分散させることにより、紙送りローラとしたときに高い摩擦係数が得られ、かつ、通紙後も、この高い摩擦係数を維持でき、しかも、水溶性(極性)記録液と良好な親和性を有する紙送りローラが得ることができる。さらに、低硬度で柔軟性があり、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性をも向上することができる。
【0081】
このように、本発明の紙送りローラは、上記の高摩擦係数、耐久性等の特性を有し、かつ極性記録液と良好な親和性を有しているので、紙送りローラとして広範囲に使用することができる。とりわけ、上記の優れた特性を活かして、薄い紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離しながら紙送りをする必要があるインジェクションプリンタ、レーザプリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、ATM等の給紙用紙送りローラとして好適であり、記録液、特に極性記録液と良好な親和性を有しているので高画質のインクジェットプリンタにおいても良好に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紙送りローラの概略図である。
【図2】本発明のエラストマー組成物の走査型プローブ顕微鏡SPMによる観察写真である。
【図3】紙送りローラの摩擦係数を測定するための装置の概略図である。
【符号の説明】
1、21 紙送りローラ
2 軸芯
22 回転軸
23 プレート
24 PPC用紙
25 ロードセル
【発明の属する技術分野】
本発明は、エラストマー組成物及びそれを用いた紙送りローラに関し、詳しくは、エラストマーにポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物及びこの組成物から成形される紙送りローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
異種のポリマーをブレンドし、新たな性質を生み出すポリマーアロイの分野において、ナイロンに対してポリオレフィンを配合することは、主に高衝撃化技術として利用されてきた。具体的には、ナイロン/ゴム系アロイが十分高い衝撃強度を発現するためには、ゴム粒子間距離が臨界値(0.304μm)より小さいことが必要である。従って、高衝撃強度を得るためにはナイロンマトリックス中で、ゴム粒子を細かく分散させることが重要であり、このための研究が種々なされている。
【0003】
例えば、EPMに1%程度の微量の無水マレイン酸をグラフトさせると、ナイロンマトリックス中において、極めて微細なグラフト化EPMが分散した材料が得られ、このグラフト化EPMの粒径は約数100nmとなっている。
【0004】
また、特開平7―18088号は、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系重合体のブレンドの際にポリアミド系樹脂がマトリクスとなる構造を持つ、樹脂組成物の製造方法を開示している。
【0005】
さらに、特開2000―129047号は、一定範囲の比率のポリアミド系エラストマー(A)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ゴム(B)成分から構成され、(A)がマトリックス相、(B)が分散相となることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物を開示している。
【0006】
その他、特開平9―53767号は、複合フレキシブルホースの内層を構成するポリマーアロイの組成比が、ブチル系ゴムと高分子量ポリアミドとの重量部で95/5〜50/50である組成物を開示している。
【0007】
また、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、静電気式複写機、及び普通紙ファクシミリ装置等のOA機器や自動預金支払機(ATM)等の紙送り機構において、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし、分離する等の目的でゴムローラが用いられている。このようなゴムローラは上記のような搬送物をピックアップし分離しながら紙送りをする必要があることから、優れた柔軟性と高い耐磨耗性が要求されている。
【0008】
さらに上記のようなゴムローラの中で、インクジェットプリンタにおいて使用される給紙用のゴムローラでは、記録液(水性インク)との良好な親和性(相性)を有していることが要求されている。これは、インクジェット用記録液には、水や多価アルコール等の極性成分が多く含まれており、該記録液(極性)との親和性が悪いと、紙送り時にゴムローラに接触した部分への記録液ののりが悪くなり、ローラ痕が残るという不都合が発生するためである。
【0009】
この種のゴムローラとして、従来、油展EPDMや場合によっては油展塩素化ポリエチレン等の加硫物がこれらのローラの材料として使われていた。しかし、これらの加硫ゴムは、初期摩擦係数がそれ程高くない上に、通紙枚数の増加と共に摩擦係数が低下するという問題がある。また、油展EPDMの単独加硫物、あるいは、それと極性の低い熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーとの動的架橋組成物では、全体が非極性のため、水性インク等の極性記録液との親和性が悪くなるという問題もある。
【0010】
これらの点を鑑みて、本発明者らは動的架橋の手法を用いて、熱可塑性樹脂中にゴムを微分散させて、加硫ゴム並の耐久性、弾性、柔軟性と、熱可塑性樹脂の様な成型性を併せ持つ、ゴムローラを発明し、提供している。
【0011】
例えば、本出願人は先に特願2001−297873号において、動的架橋ゴムがポリアミド系熱可塑性樹脂中に分散された熱可塑性エラストマー組成物を主原料として成形されてなることを特徴とするゴムローラを提供している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のナイロン/ゴム系アロイ材料は高衝撃強度という良好な機械的特性を示すが、紙送りローラとして用いる場合には硬度が高く、不適である。そして、上記の様に、従来の微細グラフト化EPMの粒径は約数100nmであるが、ナイロンがマトリックスとなっている。
【0013】
また、上記の特開平7―18088及び特開2000―129047に開示の組成物も、ポリアミド系樹脂又はポリアミド系エラストマーがマトリックスとなり、ゴムが分散粒子となるモルフォロジィーを有している。このように、ナイロン等のポリアミド系樹脂をマトリクスとすると、紙送りローラ等として用いた場合には、硬度が高くなりすぎて十分な搬送力が出ず、紙送りローラとして実用に適さないという問題がある。また、通常、ポリアミドは熱可塑性樹脂であるために、溶融プレスすることで流動し、相分離が進行してしまうことが欠点である。
【0014】
さらに、特開平9―53767号に開示の組成物は、ポリアミドの分散粒径が大きい場合には、このような組成物が他の物体等と接触して用いられた時に、摩耗により剥離が生じやすいという問題がある。特に、紙送りローラとして用いた場合、磨耗時にゴムと樹脂の界面からクラックが生じやすくなってしまい、また圧縮永久ひずみが大きくなるという問題がある。
【0015】
そして、前記した本出願人の先願のゴムローラはインクジェットプリンタ等でローラ痕が残ることがなく、好適に用いることができるが、摩擦係数について未だ改良の余地がある。
【0016】
また、昨今、複写機、プリンタの寿命が伸び、要求される耐久性のレベルが高くなっている上に、部品点数の削減によって高荷重下で使用されることが多くなっている。従って、ゴムローラの耐久性をさらに向上させることが要望されている。
【0017】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、従来とは発想を逆転させて、エラストマーのマトリックス中にポリアミド系熱可塑性樹脂をナノ分散化させることにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に有用な材料、特に紙送りローラ等に好適な組成物を提供することを課題としている。
また、インクジェットプリンタ等において用いられ、記録液、特に、極性の水性インクとの親和性がよく、用紙に記録液で印刷された時に、印刷部分にローラ痕が残ることがなく、かつ、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性に優れる上に、高い摩擦係数を持ち、それが保持されることを特徴とする紙送りローラを提供することも課題としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、エラストマー成分中に、相容化剤を配合しポリマーを効率的にアロイ化し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させる技術を開発することにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に有用なエラストマー組成物を得ることができ、さらに、この組成物を、OA機器や自動預金支払機(ATM)等の紙送り用のゴムローラとしたときに高い摩擦係数が得られ、かつ、この高い摩擦係数を維持でき、しかも、水溶性記録液(極性)と良好な親和性を有する紙送りローラが得られることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明では、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させてなることを特徴とするエラストマー組成物を提供している。
【0020】
上記のように本発明のエラストマー組成物中には、引裂強度等の機械的強度に優れる上に高極性であるポリアミド系熱可塑性樹脂が、平均粒径1μ未満で微分散している。また、エラストマーとポリアミド系熱可塑性樹脂との相溶性を高めるために相容化剤を配合している。このため、架橋反応を伴う溶融プレス等及び成形後もポリアミド系熱可塑性樹脂がナノ分散化しており、溶融プレス等を行ってもポリアミド系熱可塑性樹脂が流動し、相分離が進行することがない。よって、機械的強度に優れると共に極性と親和性を有する組成物が得ることができ、紙送りローラ、その他、摩耗しても常に高い摩擦係数を必要とされるもの、タイヤ等に有用に使用することができる。
【0021】
従って、例えば本発明のエラストマー組成物からなる紙送りローラは、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性に優れる上に、高い摩擦係数を持ち、それが保持される上に、水性インク等の極性記録液との親和力が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる。
【0022】
上記ポリアミド系熱可塑性樹脂が、上記エラストマー成分中に、平均粒径1μm未満で微分散しているのは、平均粒径が1μmより大きいと磨耗時にゴムと樹脂の界面からクラックが生じやすくなってしまい、また圧縮永久ひずみが大きくなってしまうためである。より好ましくは10nm以上500nm以下で微分散しているのが良い。本発明では、エラストマー成分とポリアミド系熱可塑性樹脂の界面で、相容化剤とポリアミド系熱可塑性樹脂が反応し、グラフトポリマーを生成する。そして、界面から引き抜かれたグラフトポリマーのドメインが数十nmのサイズになり、微分散される。
上記平均粒径とは、後述の実施例にて記載の方法により、走査型プローブ顕微鏡で評価して得た値である。
【0023】
また、上記相容化剤は、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂(油展樹脂の場合はオイルを除く樹脂分)の重量の0.1倍以上1.0倍以下の割合で配合されているのが良い。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないとポリアミドの界面で反応する相容化剤の量が足りず、微分散されにくいためである。一方、上記範囲より多いと材料の特性(物性)が相容化剤の影響を受ける場合があるためである。さらに、相容化剤は高価な場合が多く、コスト高になりやすいためである。
【0024】
上記エラストマーと上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の体積比を、(99.9:0.1〜70.0:30.0)、好ましくは(99.0:1.0〜86.0:14.0)とすることにより、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径を、より微細にすることができる。
上記エラストマー体積分率をこの範囲より少なくした場合、ポリアミド系熱可塑性樹脂の分散相が密となり、もしくはマトリックス相となる。他方、エラストマー体積分率をこの範囲より多くした場合、エラストマー分が多すぎてポリアミド系熱可塑性樹脂によって生み出される特性が損なわれる。
本明細書中、上記エラストマー成分の体積とは、油展ゴムの場合は、ゴム及びその油展オイルの合計である。同様に、ポリアミド系熱可塑性樹脂の体積とは、油展ポリアミド系熱可塑性樹脂の場合は、樹脂及びその油展オイルの合計である。またゴム及び樹脂共に、その中に溶解する可塑剤、相容化剤を用いる場合には、それらを加えた合計の体積である。なお、ポリアミド系熱可塑性樹脂の量が多くなるほど、粒径は大きくなりやすく、均一な微分散も行いにくくなる。
【0025】
また、上記体積比(分率)とすることにより、平均粒径を1μm未満に微分散させやすく、リアクティブブレンド手法によりアロイ化され微分散するのが好ましい。リアクティブブレンド手法とは、高性能ポリマーアロイを開発する有力な手法で、溶融混練と相容化を導く化学反応を同時に進行させる手法であり、優れた機械的特性が得られ、さらに新たな機能を付与することができる。
【0026】
上記エラストマー成分として、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMを用い、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂として各種ナイロンを用いることが好ましい。
【0027】
上記エラストマー成分としては、主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖にニ重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、耐候性に優れるという理由からエチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)を用いることが好ましい。その他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等を1種または複数種用いることができる。なお、上記エラストマー成分としては、スチレン系、オレフィン系等の各種熱可塑性エラストマーを用いても良い。
【0028】
また、このようなジエン系ゴムあるいはEPM、EPDMを油展する、あるいは軟化剤と共に用いることにより、低硬度を実現し、高い搬送力を有する紙送りローラを得ることができる。なお、ジエン系ゴムあるいはEPM、EPDMは、有機過酸化物等による架橋が容易である。
【0029】
上記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、汎用樹脂であり、比較的低コストである点と末端アミノ基を利用してマレイン酸変性ポリマーにグラフト化させて効率よく相容化できる点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のナイロン樹脂を好適に用いることができる。また、ブリードが発生しない範囲内で搬送力向上のためにポリアミド系熱可塑性樹脂を油展することもでき、油展する可塑剤の添加量は樹脂100重量部に対して5重量部以上150重量部以下、好ましくは10重量部以上100重量部以下であるのが良い。
【0030】
上記ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMと、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との相容化剤としてマレイン酸変性ポリマーを配合していることが好ましい。相容化剤を用いることにより、通常、相容性の小さいジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMと少量のポリアミド系熱可塑性樹脂とを効果的にアロイ化することができる。
また、上記相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーを用いることにより、マレイン酸変性ポリマーの分子中に含む無水マレイン酸の部分が、ポリアミド系熱可塑性樹脂の末端のアミノ基と反応して、グラフト化した相容化剤をつくるため、非常に効率良く、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂を相容化することができる。
【0031】
上記マレイン酸変性ポリマーとしては、エチレンエチルアクリレート(EEA)のマレイン酸変性物、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムあるいはマレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを用いると、物性の悪化が少なく、より良好な紙送りローラを作製できる。これらの中でも、特にマレイン酸変性エチレンプロピレンゴムが好適に用いられる。
【0032】
ゴムは油展ゴムで分子量が極力大きいものが好ましい。例えば、具体例として、住友化学工業株式会社製エスプレン670F、同じくエスプレン601F及び出光DMS社製ケルタン509×100等が挙げられる。
【0033】
ゴムを油展する場合、油展されるオイルの添加量は、硬度と搬送力の観点より、ゴム100重量部に対して15重量部以上600重量部以下、好ましくは25重量部以上400重量部以下であるのが良い。
【0034】
上記軟化剤としてはオイル、可塑剤が挙げられるが低極性のものが特に好適に用いられる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。特にパラフィン系オイルは揮発性が小さいため取り扱いやすく定量した量を確実に添加することができるので好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)、トリクレジルフォスフェート等をゴムとの相溶性が悪化せず、ローラ痕が残らない範囲で1種または複数種用いることができる。
【0035】
軟化剤がオイルである場合、ゴム100重量部に対して15重量部以上600重量部以下、好ましくは25重量部以上400重量部以下であるのが良い。
オイルが15重量部より小さいと紙送りローラの硬度が高くなりすぎることがあり、紙送りローラとしての適度な硬度を得にくくなるためである。一方、600重量部より大きいと、動的架橋物の表面からオイルがブリードしてきたり、あるいはオイルが架橋阻害を起こして、ゴム分が十分に架橋されず、物性が低下するという問題があることに因る。
また、軟化剤が可塑剤である場合、ゴム100重量部に対して10重量部以上500重量部以下、好ましくは、15重量部以上400重量部以下であるのが良い。
【0036】
架橋系については、ブルームを起こし難く、圧縮永久歪みも小さくなるという理由から、過酸化物架橋又は樹脂架橋が好ましい。なお、硫黄架橋としても良い。
【0037】
本発明では、特に、上記エラストマー組成物が過酸化物により架橋されていることが好ましい。上記過酸化物架橋に用いられる過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ベンゾイルパーオキサイド、2−5ジメチル2−5ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−m−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等が挙げられる。各種の過酸化物を、マトリックスにするポリアミド系熱可塑性樹脂の融点や軟化点,混練機内の滞留時間に応じて選択することができる。
通常、過酸化物の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下が好ましく、0.5重量部以上10重量部以下が特に好ましい。
【0038】
過酸化物架橋を行う場合には、疲労特性等の各種機械的物性を改良、調整したり、架橋密度を向上させる目的で、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド等の多官能性モノマー等の架橋助剤を用いても良いし、必要に応じて、樹脂架橋や硫黄架橋と併用してもよい。
【0039】
上記樹脂架橋では樹脂架橋剤が用いられるが、樹脂架橋剤は加熱等によってゴムに架橋反応を起させる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用した場合に生ずるブルームの問題が起らないので好ましい。特に、樹脂架橋剤としてフェノール樹脂を用いると給紙性能を高めることができる。その他の樹脂架橋剤としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、へキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられ、特に上記フェノール樹脂が好適である。フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。特に、ベンゼンのオルト位又はパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相容性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
通常、樹脂架橋剤の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して1重量部以上50重量部以下が好ましく、6重量部以上15重量部以下が特に好ましい。
【0040】
本発明における架橋又は部分架橋(動的架橋)は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、エラストマー組成物中にハロゲン供与性物質を配合してもよい。ハロゲン化された樹脂架橋剤としては、上記の各付加縮合型樹脂がハロゲン化されたものが挙げられる。なかでも、フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂、特にハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相容性に優れるとともに、反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。
【0041】
またハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化樹脂としては、例えば塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのハロゲン供与性物質は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
架橋反応を適切に行うために架橋助剤(活性剤)を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
【0043】
即ち、本発明では、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で分散させたエラストマー組成物を主原料として成形されあることを特徴とする紙送りローラをも提供している。さらに、上記エラストマー成分と、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比が、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)であることが好ましい。
【0044】
上記エラストマー成分と上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比は、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5)〜(87.5:12.5)とすることにより、高摩擦係数を実現することができ、より搬送力が高く、さらに圧縮永久歪みが小さい紙送りローラを得ることができる。
即ち、上記エラストマー組成物中には、引裂強度等の機械的強度に優れる上に高極性であるポリアミド系熱可塑性樹脂が上記規定量で分散している。このため、水性インク等の極性記録液との親和力が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる上に、高摩擦係数、低硬度が実現でき、高い搬送力も得ることができ、給紙ローラに最適である。
【0045】
上記体積比を上記範囲としているのは、エラストマー成分の体積分率を87.5より少なくした場合、硬度が高くなりすぎて十分な搬送力が出ず、実用に適さないためである。他方、エラストマー成分の体積分率を99.5より多くした場合、ポリアミド系熱可塑性樹脂によって生み出された高搬送力の特性が損なわれ、さらには水性インク等の極性記録液との親和性の向上という効果が低下してしまうためである。
また、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)の体積比は、好ましくは(99.0:1.0〜92.5:7.5)、さらに好ましくは(98.5:1.5〜95.0:5.0)である。
【0046】
また、エラストマー組成物中には上記の配合剤以外に、必要に応じて、老化防止剤、ワックス等を配合することができる。老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ−β−ナフチル−P−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−P−フェニレンジアミンなどのアミン類、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノールなどのフェノール類等が挙げられる。なお、複数種の老化防止剤を用いることが好ましい。
上記老化防止剤の配合量は、エラストマー成分(油展ゴムの場合はオイルを除くゴム分)100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下が好ましく、1重量部以上3重量部以下が特に好ましい。
【0047】
エラストマー組成物の機械的強度を向上させるために、必要に応じて、充填剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合する場合、充填剤はエラストマー組成物全体当たり30重量%以下とするのが好ましい。これは充填剤の配合はゴムの引っ張り強度及び引き裂き強度の改善には有効であるものの、余り多く配合するとゴムの柔軟性を大きく低下させるためである。
【0048】
上記紙送りローラの硬度はJIS6301のA型硬度計で測定したときの硬度が一般に15度〜60度、好ましくは20度〜55度、さらに好ましくは20度〜50度の範囲であるのが良い。この範囲とすると、紙送りローラを比較的小さい圧接力で紙やフィルムに押付けても紙送りローラが充分に変形し、紙やフィルムとの間に大きい接触面積を得ることができる。
【0049】
紙送りローラは円筒状に成形した状態で、その肉厚は0.5mm〜8mm、好ましくは1mm〜5mmとしている。これは、紙送りローラの強度との兼ね合いにもよるが、肉厚が小さすぎると、紙送りローラが変形しても紙との間に大きな接触面積が形成され難い。一方、肉厚が大きすぎると、ローラを変形させるために紙送りローラの紙への圧接力を大きくしなければならず、紙送りローラを紙に圧接させるための機構が大型化するためである。なお、紙送りローラの中空部には軸芯を圧入するか、あるいは接着剤で接合し固定することができる。
【0050】
また、可塑剤、その他必要に応じて相容化剤、老化防止剤等と上記ゴムとを混練機等で混入し、上記ゴムをマスターバッチとしていることが好ましい。これにより、作業性が向上すると共に、分散性を高めることができる。なお、ポリアミド系熱可塑性樹脂についても同様に、マスターバッチとすることが好ましい。
【0051】
本発明のエラストマー組成物及びその組成物からなる紙送りローラは、例えば以下の方法により作製できる。
樹脂マスターバッチの作製について説明する。2軸押し出し機、ニーダー又はバンバリーミキサー等により、ポリアミド系熱可塑性樹脂中に、相容化剤等を練り込む。混練は160℃〜280℃の温度で、1分間〜20分間行う。その後、該熱可塑性樹脂組成物を通例の方法によりペレット化し、樹脂マスターバッチのペレットを作製するのが良い。
【0052】
ゴムマスターバッチの作製方法について説明する。2軸押し出し機、ニーダー又はバンバリーミキサー等により、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDM等のゴム成分に必要に応じてパラフィンオイル等の可塑剤、相容化剤、老化防止剤、フィラー等を練り込む。混練は20℃〜250℃の温度で、1分間〜20分間行う。この組成物を通例の方法によりペレット化し、ゴムマスターバッチのペレットを作製するのが良い。なお、相容化剤は樹脂マスターバッチの中に高温中で練り込んで、それがマレイン酸変性ポリマーの場合、先にポリアミド系熱可塑性樹脂の末端のアミノ基と反応させてから、ポリマーブレンドを行っても良いし、ポリマーブレンド時にゴムマスターバッチや樹脂マスターバッチにドライブレンドして加えても良い。
【0053】
成形方法について説明する。
ゴムマスターバッチのペレット、樹脂マスターバッチのペレット、亜鉛華、老化防止剤、フィラー等の所要の添加剤を2軸押し出し機に投入し、160℃〜280℃の温度で加熱しながら1分間〜20分間混練してエラストマー成分/樹脂をブレンドした後押し出す。次いでこの押し出した混練ゴムからなるエラストマー組成物に架橋剤を、オープンロールによって混練した後、170℃〜230℃で熱プレス成形する。その後、所要寸法にカットを行い、紙送りローラとするのが良い。なお必要に応じて表面を研磨して用いても良い。
【0054】
また、紙送りローラには、紙を送る目的で紙送りの方向に回転させて使うローラ(ナジャー(1本で使用)、フィード(後述するリタードと2本セットで使用))と、紙の重送を防止する目的で紙送りの方向と逆の方向にトルクをかけて使用するローラ(リタード)の三種類があるが、各種類のローラに使用することができる。なお、紙送りローラの形状は、円筒形状、その他D字形状等の異形ローラ等の種々の形状とすることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる円筒形状の給紙用の紙送りローラ1を示し、その中空部に円柱形状の軸芯(シャフト)2を圧入して取り付けている。
【0056】
紙送りローラ1は、配合ゴムとして油展EPDMを用い、この油展EPDMにポリアミド系熱可塑性樹脂である油展ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物を主原料として成形されている。EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂の体積比は98.0:2.0であり、相容化剤としてマレイン酸変性ポリマーを用いている。
【0057】
具体的には、紙送りローラ1は、以下のようにして作製している。
まず、ニーダーにより、油展EPDM中に相容化剤、老化防止剤等を練り込み、20℃〜250℃の温度で、1分間〜20分間混練を行う。その後、このゴム組成物を通例の方法によりペレット化し、ゴムマスターバッチのペレットを作製する。なお油展EPDM中のオイルとゴム分は重量比が1:1としている。
【0058】
次にニーダーにより、油展ナイロン樹脂中に、相容化剤等を練り込み、160℃〜280℃の温度で、加熱しながら1分間〜20分間混練を行う。その後、該熱可塑性樹脂組成物を通例の方法によりペレット化し、樹脂マスターバッチのペレットを作製する。
【0059】
そして、ゴムマスターバッチのペレット、樹脂マスターバッチのペレット、亜鉛華、老化防止剤、フィラー等の所要の添加剤を2軸押し出し機HTM38(アイベック(株)製)に投入し、160℃〜280℃の温度で加熱しながら1分間〜20分間混練してゴム/樹脂をブレンドした後押し出す。次いでこの押し出した混練ゴムに過酸化物である架橋剤を、オープンロールによって混練した後、170℃〜230℃で熱プレス成形する。その後、所要寸法にカットを行い、紙送りローラ1としている。
【0060】
上記紙送りローラ1は、極性の低い油展EPDMに、機械的強度が高く極性の高いポリアミド該熱可塑性樹脂を少量で微分散させたエラストマーにより形成されている。このため、高い摩擦力を有し、その保持能力に優れている。また、低硬度と高い搬送力を得ることができ、ブリードの発生も防止することができる上に、水性インク(極性)との親和性が良くなり、ローラ痕が残ることなく、良好な画像を得ることができる。さらには、耐磨耗性にも優れ、インクジェットプリンター用の紙送りローラに最適である。
【0061】
以下、本発明の組成物及び紙送りローラの実施例1〜実施例3、比較例1、2及び本発明の組成物の実施例4について詳述する。
本発明の紙送りローラは、下記の表1に記載の実施例1〜実施例3、比較例1、2の各々の配合のエラストマー組成物を用い、上記実施形態と方法と同様の方法により熱プレスにより成形した後、外径19.7mm、内径10mm、幅10mmにカットし、円筒形の紙送りローラを作製した。
また、本発明の組成物は、下記の表1に記載の実施例4の配合を上記実施形態と方法と同様の方法により混練、熱プレス成形して実施例4のエラストマー組成物を作製した。なお、参考として実施例4の組成物を用いて上記同様に紙送りローラを作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
表中の各配合の数値は重量部である。また、表中、ゴム1としては、EPDM(100%油展)、即ちEPDMゴム200重量部(ゴム100重量部、オイル100重量部)を使用した。ポリアミド系樹脂としては、表に示す油展ナイロン11を使用した。
【0064】
(実施例1乃至実施例3)
実施例1〜3は、表1に示される様に、エラストマー成分として100%油展EPDMを使用し、相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーであるエチレン・プロピレン共重合物のマレイン酸付加物を用いた。また、ポリアミド系熱可塑性樹脂として油展ナイロン11を使用し、ゴム(EPDM+油展オイル+相容化剤):樹脂(ナイロン+油展オイル)の体積比率を98.8:1.2〜96.0:4.0とした。また、ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させ、過酸化物架橋を行った。具体的には、実施例1〜3は、ナイロン樹脂を平均粒径0.01μm未満(10nm〜500nm)にて分散させた。いずれも、リアクティブブレンドにより作製した。
【0065】
(実施例4)
実施例4は、表1に示される様に、エラストマー成分として100%油展EPDMを使用し、相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーであるエチレン・プロピレン共重合物のマレイン酸付加物を用いた。また、ポリアミド系熱可塑性樹脂として油展ナイロン11を使用し、ゴム(EPDM+油展オイル+相容化剤):樹脂(ナイロン+油展オイル)の体積比率を86.0:14.0とした。また、ナイロン樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させ、過酸化物架橋を行った。具体的には、ナイロン樹脂を平均粒径0.01μm未満(10nm〜500nm)にて分散させた。リアクティブブレンドにより作製した。
【0066】
(比較例1及び比較例2)
比較例1は、ポリアミド系熱可塑性樹脂を使用せず、実施例1〜3と同じ100%油展EPDMゴムのみを使用し、過酸化物架橋を行った。リアクティブブレンドにより作製した。
比較例2は、相容化剤を用いなかった。即ち、リアクティブブレンドしなかった。
【0067】
上記実施例1〜3、比較例1及び比較例2の紙送りローラについて後述する方法により、ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径、摩擦係数μ及び磨耗量、ローラ痕、硬度及び圧縮永久歪みについての評価・測定を行った。
また実施例4の組成物については、ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径、硬度圧縮永久ひずみについての評価・測定を行った。結果は表1中に記載した。
【0068】
(ポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径)
走査型プローブ顕微鏡SPM(Scanning Probe Microscope)を用いて、実施例1〜4、比較例2の各組成物を観察し、材料のモルフォロジー及びポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子径について評価した。この顕微鏡により観察された各組成物の写真を図2に示す。各写真において、海島構造のモルフォロジーが観察され、島状のポリアミド系熱可塑性樹脂の粒子が、海状のEPDMからなるマトリクス中に微分散している。写真中、大きい分散粒子は数100nm程度であり、小さい分散粒子は数10nm程度である、1辺の長さは10μmである。
写真上に記載のPA11―1.2%とは、ポリアミド系熱可塑性樹脂のEDPMに対する体積分率(体積比)である。
【0069】
(摩擦係数及び磨耗量の評価)
摩擦係数を図3に示す以下の方法で測定した。すなわち、紙送りローラ21とプレート23との間に、ロードセル25に接続したA4サイズのPPC用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)24をはさみ、図3中、黒矢印で示すように、紙送りローラ21の回転軸22に荷重W(W=250gf)を加え、紙送りローラ21をプレート23に圧接させた。次いで、温度22℃、湿度55%の条件下で、上記紙送りローラ21を図3中、実線の矢印aで示す方向に、周速300mm/秒で回転させ、通紙の前後において、図3中、白矢印で示す方向に発生した力F(gf)をロードセル25によって測定した。そして、この測定値F(gf)と荷重W(250gf)とから、下記の式より摩擦係数μを求めた。この摩擦係数の測定は、通紙開始と30000枚通紙終了後のそれぞれで行った。
また、上記30000枚通紙終了前後の各紙送りローラの重量を測定することにより、磨耗量(mg)を求めた。
上記測定による30000枚通紙後の摩擦係数の値は、1.7以上が優れており、1.5以上が適であり、1.5未満は不適である。
【0070】
(数式1)
μ=F(gf)/W(gf)
【0071】
(ローラ痕評価)
さらに実施例、比較例の各紙送りローラを洗浄して、60℃で2時間放置してから、セイコーエプソン PM―770C機にセットした。印刷用紙としては、同じくセイコーエプソン(株)製のスーパーファイン専用光沢紙MJA4SP3を用いた。紙送りローラ、印刷用紙、インク等をセットした状態で、スーパーファイン画質モードのもと、青べたの印刷命令を用い、印刷された画像を以下の3段階で評価した。
記録液として使用したインクは、極性の水性インク(セイコーエプソン(株)製、カラーインクカートリッジIC5CL02W)である。
【0072】
○:ローラ痕なし。
△:ローラ痕はわずかに認められるが、高画質機でなければ実用上問題ないレベル。
×:ローラ痕がはっきり認められ、実用不可。
【0073】
(硬度の測定)
上記紙送りローラの硬度をJIS6253のA型硬度計で測定した。
【0074】
(圧縮永久歪みの測定)
上記紙送りローラの圧縮永久歪みをJIS−K6301の記載に従って測定した。数値単位は%とした。なお、圧縮永久歪みは0〜30であるのが好ましい。
【0075】
図2に示すように、実施例1〜実施例3の紙送りローラは、ポリアミド系熱可塑性樹脂が平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物であり、また表1に示すように、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂とが規定体積比で配合されているので、圧縮永久歪み、硬度、特に摩擦係数に優れ、かつローラ痕もない、優れた高性能のローラであることが確認できた。
【0076】
また、実施例4のエラストマー組成物は、図2に示すように、ポリアミド系熱可塑性樹脂が平均粒径1μm未満で微分散させたエラストマー組成物であり、また表1に示すように、EPDMとポリアミド系熱可塑性樹脂とが規定体積比で配合されているので、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に適している。
【0077】
詳細には、実施例1〜実施例3の紙送りローラは、比較例1と比べて耐磨耗性及び圧縮永久歪みは同等であり、初期摩擦係数はより高く、且つ、通紙後においても、その高い摩擦係数が保持された。
【0078】
一方、表1に示すように、比較例1はポリアミド系熱可塑性樹脂を配合していないため、通紙後の摩擦係数が不足し、またローラ痕が残り、紙送りローラとして不適であった。比較例2は、摩耗量が多く、摩擦係数も低かった。
【0079】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分中に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を1μm未満で微分散させることにより、機械的強度が高く、また、極性のものとの親和性が要求される用途に最適であり、紙送りローラ、タイヤ等に有用な組成物を得ることができる。
【0080】
また、ポリアミド系熱可塑性樹脂を上記規定量で少量かつ分散させることにより、紙送りローラとしたときに高い摩擦係数が得られ、かつ、通紙後も、この高い摩擦係数を維持でき、しかも、水溶性(極性)記録液と良好な親和性を有する紙送りローラが得ることができる。さらに、低硬度で柔軟性があり、耐久性と高荷重下での耐磨耗特性をも向上することができる。
【0081】
このように、本発明の紙送りローラは、上記の高摩擦係数、耐久性等の特性を有し、かつ極性記録液と良好な親和性を有しているので、紙送りローラとして広範囲に使用することができる。とりわけ、上記の優れた特性を活かして、薄い紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離しながら紙送りをする必要があるインジェクションプリンタ、レーザプリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、ATM等の給紙用紙送りローラとして好適であり、記録液、特に極性記録液と良好な親和性を有しているので高画質のインクジェットプリンタにおいても良好に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紙送りローラの概略図である。
【図2】本発明のエラストマー組成物の走査型プローブ顕微鏡SPMによる観察写真である。
【図3】紙送りローラの摩擦係数を測定するための装置の概略図である。
【符号の説明】
1、21 紙送りローラ
2 軸芯
22 回転軸
23 プレート
24 PPC用紙
25 ロードセル
Claims (7)
- ゴムあるいは/及び熱可塑性エラストマーからなるエラストマー成分に、相容化剤を配合し、ポリアミド系熱可塑性樹脂を平均粒径1μm未満で微分散させてなることを特徴とするエラストマー組成物。
- 上記相容化剤は、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の重量の0.1倍以上1.0倍以下の割合で配合されている請求項1に記載のエラストマー組成物。
- 上記エラストマー成分と、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂の体積比が、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.9:0.1)〜(70.0:30.0)である請求項1又は請求項2に記載のエラストマー組成物。
- 上記エラストマーとして、ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMを用い、上記ポリアミド系熱可塑性樹脂として各種ナイロンを用いている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエラストマー組成物。
- 上記ジエン系ゴム、あるいはEPM、EPDMと上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との相容化剤として、マレイン酸変性ポリマーを配合している請求項4に記載のエラストマー組成物。
- 過酸化物により架橋されている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエラストマー組成物。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のエラストマー組成物を主原料として成形され、
上記エラストマー成分と上記ポリアミド系熱可塑性樹脂との体積比が、(上記エラストマー成分:上記ポリアミド系熱可塑性樹脂)=(99.5:0.5〜87.5:12.5)であることを特徴とする紙送りローラ。
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