JP4081223B2 - 既設まくら木の補修方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は既設まくら木の補修方法に係り、特に、繊維強化硬質樹脂発泡体を用いて成されたまくら木に好適なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、まくら木は木製やPC(Prestressed-Concrete)製のものが広く使用されている。しかし、木製のまくら木は耐用年数が短い上に、木材資源の枯渇などの問題により使用が控えられている。また、PC製のまくら木は重く敷設工事に手間が掛かる上に、コストが高く、振動吸収能が低いためにレールの分岐部などには不適当であった。そこで、これらのまくら木に代わるものとして、強度や耐久性に優れた繊維強化硬質樹脂発泡体などの合成木材を用いたまくら木が使用されるようになってきた。
【0003】
しかし、合成まくら木は長繊維と硬質発泡樹脂によって作成されているので、PC製のまくら木に比して摩耗し易い。例えば、図6(a)に示すように、本線レール(列車が通過するレール)1とガイドレール2とをタイプレート3を介してまくら木10に固定すると、タイプレート3の端部に接触している部分が列車通過時の荷重、振動によって削れてしまい、図6(b)に示すような凹みAが発生する。則ち、列車通過時の荷重などによってまくら木10下方のバラストが徐々に沈下し、まくら木10が上下する所謂「あおり現象」が生じ、この上下動によってタイプレート3との間に摩擦が生じてまくら木10の表面が摩耗する。このような凹みAは、図6(a),(b)に示したように、踏切や分岐部など、タイプレート3の中央よりも偏った部分に本線レール1が位置し、列車などの荷重がタイプレート3の端部に偏って作用する場合に顕著に現れる。
【0004】
従来は、このような凹みAが生じた場合の補修方法として、図7(a)に示すように凹みAにウレタン樹脂Cなどを注入し、その上から耐摩耗性を有するゴムシート101を覆い被せて硬化させて平面状に補修していた。また、図7(b)に示すように、断面が長三角形状の芯部材102に耐摩耗性を有する硬質ゴムシート101を貼付した補修板100を予め準備し、ウレタン樹脂Cを注入した凹みAにこの補修板100を嵌め込んで硬化させるなどの補修も行われていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、凹みAにウレタン樹脂Cを充填して硬質ゴムシート101を覆う補修方法ではウレタン樹脂Cが無発泡樹脂のため、補修したまくら木に新たなねじ釘などを打ち込んだり締結部材の下孔を開けると、塊状に硬化したウレタン樹脂Cにひび割れが発生しやすく耐久性に問題があった。また、硬質ゴムシート101を平面状に保ったまま硬化させるのが難しかった。
また、凹みAに補修板20を嵌め込む補修方法では、新たな下孔を開ける場合におけるウレタン樹脂Cのひび割れは生じないものの、芯部材102の形状をまくら木10の凹みAに応じた形状に合わせるのが難しく準備に手間が掛かるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みて提案されるもので、既設のまくら木を効率良く補修することのできる補修方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために提案される本発明は、まくら木の凹み部分を補修する既設まくら木の補修方法であって、平板部の両側端に側板部を設けた断面コ字状に形成された補修部材を用い、前記凹み部分を含む面部分をまくら木の幅方向へ所定幅および所定深さに渡って削り取り、前記側板部でまくら木の両側面を挟持しながら前記平板部を前記削り取り部に嵌め込んで接合するものである。即ち、補修部材の側板部でまくら木の両側面を挟持しながら平板部を削り取り部に嵌め込んで接合する。
【0007】
このような凹みは、タイプレートまたはレールの下方に発生し易い。則ち、列車通過時の荷重などによってまくら木下方のバラストが徐々に沈下し、まくら木が上下する所謂「あおり現象」が生じ、この上下動によってタイプレートとの間に摩擦が生じてまくら木の表面が摩耗する。このような凹みは、列車などの荷重がタイプレートの端部に偏って作用する場合に顕著に現れる。また、レールを直接まくら木に取り付ける場合も同様の摩擦によってまくら木表面に摩耗が生じる。
【0008】
平板部の両側端に側板部を設けた断面コ字状に形成された補修部材を用いることもできる。則ち、補修部材の側板部でまくら木の両側面を挟持しながら平板部を削り取り部に嵌め込んで接合する。
【0009】
また、側板部をまくら木の両側面に固定する固定部材を取り付けても良い。固定部材を取り付けると、接着剤が未硬化の状態でも側板部とまくら木とを強固に一体化できるので、補修直後においても充分な補強効果を得ることができる。
【0010】
また、補修部材の側板部の長さを平板部よりも長くした形状とすれば、長い側板部によってまくら木の側面が補強されるので、削り取り部を一層有効に補強することができる。
【0011】
更に、補修部材の上面に硬質ゴムなどの耐摩耗性を有する弾性部材を積層しておくこともでき、タイプレートやレールとの摩擦によるまくら木の摩耗を効果的に防止できる。また、弾性部材を積層しておけば、補修後すぐにタイプレートを取り付けて敷設可能である。
【0012】
本発明の補修方法は、繊維強化硬質樹脂発泡体で成る合成木材を用いて成されたまくら木および補修部材を用いる場合に好適である。特に、後述するようにガラス長繊維を長手方向へ引き揃えて補強繊維としたガラス長繊維強化硬質ウレタン発泡体などの合成木材を用いるのが適している。
【0013】
則ち、まくら木の長手方向へ合成木材の繊維方向を揃えて成したものや、繊維方向の異なる合成木材を複数積層したまくら木を補修する場合、上面部分を削り取ると合成木材に含まれる繊維が断たれて部分的に強度が低下する。
しかし、本発明の補修方法によれば、補修部材の平板部が削り取り部の上面に接合されると共に、側板部がまくら木の両側面に接合されるので、削り取り部における強度の低下を効果的に補償した補修ができる。
特に、補修部材の側板部および平板部の繊維方向をまくら木の長手方向と一致させれば、長手方向に対する強度を一層向上させることができる。
【0014】
本発明におけるまくら木および補修部材は、繊維強化硬質合成樹脂発泡体の板材で成されたものが好適である。発泡樹脂の種類としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化樹脂であって硬質のものが好適に使用される。尚、発泡樹脂中に、圧縮強度の向上や低コスト化を図るために、炭酸カルシウム、石膏、タルク、水酸化アルミニウム、クレーなどの無機充填材や、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン等の軽量骨材が添加されても良い。板材の硬質樹脂発泡材を補強する繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機質繊維や、芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維や天然繊維等の有機質繊維の何れかであればよいが、強度や経済性の面からガラス繊維が適している。繊維の形態は、ヤーン、クロス、ロービング、ロービングクロス、クロスマット等の長繊維形態のものが好適であり、必要に応じてチップ、ミドルファイバー等の短繊維やシラスバルーン等の中空充填材を併用しても良い。ガラス繊維としては、ガラスロービング、ガラスロービングクロス、ガラスマット、コンティニュアスストランドマット等の形態のものが挙げられる。この繊維は単独で使用しても良いし、2層以上積層して使用しても良く、また、長繊維と短繊維を混ぜて使用しても良い。最も好適な材料としては硬質ウレタン樹脂をガラス長繊維で補強した発泡体である(例えば、商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製)
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るまくら木の補修方法を示した斜視図である。
図1(a)は、を斜視図で示したものである。
この補修方法は図1(a)に示すように、タイプレートによってまくら木10に生じた凹みAの部分を含む上面部分を、電動カンナやフライス盤などの工具を用いてまくら木10の幅方向へ所定幅Wおよび所定深さdに渡って削り取る(図1(a)の破線で示した部分)。
【0016】
次いで、図1(b)に示すように、削り取り部11に、補修部材12を嵌め込んで接合する。補修部材12は、平板部12aの両側端に側板部12b,12bを設けた断面コ字状をしており、両側の側板部12b,12bでまくら木の両側面を挟持するようにして平板部12aを削り取り部11に嵌め込んで接合する。
これによって、図1(c)に示すような補修されたまくら木10’となり、削り取り部11が補修部材12の平板部12aと側板部12bとで補強された構造となる。
【0017】
図2は、前記した実施形態において、側板部12bに更に埋栓(固定部材)15を打設する形態を示したものである。この例では、補修部材12を削り取り部11に嵌め込んだ後に、側板部12bに下孔12dを穿孔し、穿孔した下孔12dに埋栓15を打ち込むものである。この構造によれば、側板部12bに埋栓15を打設することで、接着剤が未硬化状態でも側板部12bとまくら木10とを強固に一体化できるので、補修直後において充分な補強効果を得ることができる。
【0018】
前記実施形態では、補修部材12をまくら木10に嵌め込むと、まくら木10の両側面から側板部12bがその厚さだけ突出する。これにより、補修後にまくら木10をバラスト道床に敷設した場合、側板部12bの突出による道床抵抗が増加し、まくら木10の横方向の滑りを抑える効果を奏する。
また、前記実施形態では、補修部材12をまくら木10に嵌め込むと、側板部12bの下端面がまくら木10の下面よりも僅かに退入するようにしている。これにより、まくら木10の下部のバラストが側板部12bの下面に直接当たるような不具合を軽減している。
補修部材12の平板部12aの上面には予め耐摩耗性を有する硬質ゴムシート12cが貼付されており、この上にタイプレートを取り付けてすぐに再敷設でき、しかも耐摩耗性を向上させている。
この補修方法では、凹みを埋めるための充填樹脂などを用いていないので、補修後においてタイプレート取付用の下孔穿孔の際に、硬化した充填樹脂に亀裂が入るような不具合は生じない。
【0019】
尚、削り取り部11は、鋸やカンナなどの手工具を用いて削り取ることもできるが、予め、所定幅Wおよび所定深さdで削り取る電動工具などを用意すると共に、削り取り部11の形状に合わせた補修部材12を用意しておけば、補修現場においても作業を効率良く行うことができる。
【0020】
図3は、合成木材で成されたまくら木10および補修部材12の繊維方向を模式的に示した図である。則ち、まくら木10では合成木材に含まれる長繊維がまくら木10の長手方向へ向くように原板を切り出して成されている。また、補修部材12についてもまくら木10に嵌め込むと繊維方向が長手方向へ向くように成されている。
本発明の補修方法では、まくら木10を削ることにより繊維が切断され厚さが減少するために部分的な強度が低下する。しかし、補修部材12をまくら木10に嵌め込んで接合すると、平板部12aが削り取り部11の上面に接合され、側板部12bがまくら木10の両側面に接合される。これにより、繊維方向がまくら木の長手方向を向いた補修部材12によって削り取り部11が効果的に補強される。
【0021】
図4は、形状が異なる補修部材13を用いた補修方法を示す斜視図である。補修部材13は、図4(a)に示すように、前記した補修部材12の側板部12bがまくら木10の前後方向へ延伸された形状をしている。尚、図には示していないが、補修部材13の繊維方向も前記した補修部材12と同一である。
この補修部材13を用いた補修方法は、前記した補修方法と同一であるので重複した説明は省略する。補修部材13をまくら木10に嵌め込むと、図4(b)に示すように、長い側板部12b’,12b’によって削り取り部11の前後が補強されるので一層強度が増す。
尚、本実施形態においても前記図2に示したように側板部12b’に埋栓(固定部材)を打設することもでき、補強効果を一層向上させることができる。
【0022】
図5は、本発明に係る補修方法の参考例を示す斜視図である。尚、図には示していないが、補修部材14の繊維方向も前記した補修部材12,13と同一である。
この参考例では、補修部材14が平板部12aでなる平板で形成されており、この補修部材14をまくら木10の削り取り部11に嵌め込んで接合するものである。これにより、削り取り部11によって削られた厚さを補強して強度的な向上を図っている。
【0023】
尚、前記した本実施形態及び参考例では、まくら木および補修部材が合成木材で成されたものを例に挙げて説明したが、本発明の補修方法は木材で成されたまくら木についても好適に実施可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明の補修方法によれば、簡単な工程によって保線現場で効率良くまくら木を補修することができ、資源を有効に再利用することができる。特に、夜間作業に好適な補修方法であり、且つ、補修直後にも充分な補強効果が期待できるものである。また、この補修は工場においても効果的に実施することが可能であり、安価な補修まくら木を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)は本発明の補修方法を示す斜視図である。
【図2】 本発明の別の補修方法を示す斜視図である。
【図3】 図1で示す合成木材で成されたまくら木および補修部材の繊維方向を示す模式図である。
【図4】 本発明の別の補修方法を示す斜視図である。
【図5】 本発明の補修方法の参考例を示す斜視図である。
【図6】 (a),(b)は、まくら木に凹みが生じる状態を示す断面図である。
【図7】 (a),(b)は従来の補修方法を示す断面図である。
【符号の説明】
A 凹み
3 タイプレート
10 まくら木
12,13,14 補修部材
12a 平板部
12b 側板部
12c 弾性部材(ゴムシート)
15 固定部材(埋栓)

Claims (3)

  1. まくら木の凹み部分を補修する既設まくら木の補修方法であって、平板部の両側端に側板部を設けた断面コ字状に形成された補修部材を用い、前記凹み部分を含む面部分をまくら木の幅方向へ所定幅および所定深さに渡って削り取り、前記側板部でまくら木の両側面を挟持しながら前記平板部を前記削り取り部に嵌め込んで接合することを特徴とする既設まくら木の補修方法。
  2. 前記補修部材の側板部をまくら木の両側面に固定する固定部材を取り付けることを特徴とする請求項に記載の既設まくら木の補修方法。
  3. 前記補修部材の側板部が、平板部よりもまくら木の長手前後方向へ延伸された形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の既設まくら木の補修方法。
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