JP4224183B2 - 合成枕木の接続構造並びに接続方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道軌道等の分岐部などに用いられる長尺枕木を得るための合成枕木の接続構造並びに接続方法であって、特に、長繊維で補強した樹脂からなるいわゆる合成木材からなる合成枕木の接続構造及び接続方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鉄道軌道の分岐部においては、分岐部の種類(片開き分岐、両開き分岐、振り分け分岐、乗り越し分岐、複分岐、3分岐、3線式分岐、ダイヤモンドクロッシング、シーサースクロッシングなど)に応じ、6〜9mもの長さの長尺枕木が必要とされる。
【0003】
しかし、過密市街地、高架線部、あるいは防音壁などで囲まれた場所においては、上記6〜9mもの長尺の枕木を一体物で取り扱うと作業性の低下が余儀なくされ、特に、枕木の交換作業が極めて困難となる。
【0004】
そこで、旧来より、枕木の端部を突き合わせ、この部分をボルト挿通孔の開いた鉄板で上下から挟み、この鉄板と枕木を挿通してボルトナットで締結する枕木の接続構造が使用されている。
【0005】
ところで、本願出願人は、枕木として、汎用のブナ材などに代え、長繊維で補強した熱硬化性樹脂発泡体からなる合成木材を用いたものを製造販売しており、かかる合成木材を用いた場合においても優れた曲げ強度が得られるように、現在までに種々の改良を行っている(例えば、特開平6−248604号公報、特開平6−240601号公報、特開平5−98601号公報、特開平5−51901号公報、特開平4−149302号公報参照)。
【0006】
しかし、これら合成枕木の従来の接続構造の場合、合成枕木の長手方向の位置によって曲げ強度に大きな差が生じているが、シーサースクロッシング等では、枕木毎に軌道の位置が長手方向にずれるため、合成枕木同士の接続部を個々の枕木毎に現場において位置決めしなければならないという不便があり、このようにして位置決めしなければ強度不足が懸念されることになる。
【0007】
かかる問題を改善するため、本願出願人は、既に特許第2809997号公報に開示された技術を提案している。この合成枕木の接続構造によれば、合成枕木同士を、無垢の合成枕木本来の曲げ強度に匹敵する十分な曲げ強度で接続できるとともに、最も強度不足が懸念される継ぎ目部分に曲げ応力が加わるような場合であっても十分な曲げ強度を発揮することができ、上下いずれの方向からも曲げ応力が作用する場合であっても、全体的に十分かつ比較的均等な曲げ強度を得ることができ、そのため、かかる構造の長尺枕木を敷設する際に、軌道が継ぎ目部分に重ならないように枕木毎に現場で位置決めするといった煩わしさもなく施工できるという利点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した特許第2809997号公報に開示された接続構造では、金属製のボルト及び座金が接続部上面に露呈しており、枕木にタイプレート等を固定するためのねじ釘や犬釘の打ち込みに支障をきたす。特に、シーサークロッシング等においては、枕木毎のタイプレートの取付位置が一定でなく、現場において任意の位置にねじ釘等を打ち込むことができることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、曲げ強度の最も弱い位置でも十分な曲げ強度を確保することができ、現場において接続位置を位置決めするという煩雑さを解消し得るものでありながら、接続強度を確保するための部材に金属を用いることなく、例えば合成木材製の部材の接着や合成木材製ピンの打ち込みのみで十分な曲げ強度を得ることのできる合成木材製枕木の接続構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明は、2本以上の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部を突き合わせて接着することにより接続される合成枕木の接続構造であって、上記合成枕木の接続される端部同士が互いに相補形状の接続部であり、該接続部は該端部から長手方向に所定の長さに亘って設けられており、上記合成枕木の接続部を覆うように接続部よりも長い補強部材が上記合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に設けられ、該補強部材は双方の合成枕木の表面に接着されていることを特徴とするものである。なお、相補形状の接続部は種々の形態とすることができ、凹凸嵌合やテーパー面突き合わせなどによって両接続部を接合した状態で枕木本来の断面形状とほぼ同じ断面を有する柱状を呈するものであればよい。また、補強部材は、長方形状の底板若しくは側板からなるものとしてもよく、また、底板部と側板部とを一体成形してなるアングル状の部材により構成してもよい。また、補強部材の繊維方向は枕木長手方向に沿ったものとするのが好ましい。また、本発明では、各部材の接合に接着剤を用いているが、施工後、接着剤が硬化して所期の接着強度を発揮するまでの間(例えば一昼夜)、シャコ万などの締結工具を用いて補強部材を合成枕木に締結しておき、所期の接着強度が得られた後に上記締結工具を取り外すことができる。なお、本明細書において、「枕木の長手方向」は鉄道軌道と直交する方向であり、「枕木の幅方向」は鉄道軌道に平行な方向であり、「枕木の厚み方向」は上下方向をいうものとする。
【0011】
上記本発明の接続構造によれば、次の作用を奏することができる。即ち、補強部材の材質を合成枕木と同種の合成木材としているので、ボルト等の金属製の固定治具を用いなくとも、プラスチック用接着剤によって大きな接着強度が得られ、接続部の全範囲にわたって実用的に十分な曲げ強度を得ることが可能となる。したがって、シーサースクロッシングなどに用いられた場合でも、構造部材に金属を使用していないので任意の位置にねじ釘や犬釘を打ち込むことができ、レール支持用のタイプレートの取付け作業に支障をきたすこともない。
【0012】
また、合成枕木の接続部同士の接着面が長手方向に所定の幅を有しているので、合成枕木に埋設された長繊維の切断位置が長手方向に分散することになり、長手方向任意位置での縦断面における大部分の長繊維に引っ張り応力支承作用を得ることができ、大きな曲げ強度を得ることが可能となる。そして、接続部の先端近傍において引っ張り応力を支承し得る長繊維が最も少なくなるため、該部分の曲げ強度が比較的小さくなるが、該部分の下面側若しくは両側面側に補強板を配設することにより、該補強板の長繊維によっても引っ張り応力を支承させることが可能となり、この引張力を枕木に伝達する作用を奏する補強板と合成木材との接着面の接着強さを上記したように十分大きくすることにより、簡単な構造で施工容易なものでありながら実用強度を得ることが可能である。
【0013】
なお、合成枕木としては、長繊維で補強した樹脂柱状体からなるものを使用できる。また、対の合成枕木の接続部形状は、例えば、一方の合成枕木の端部を略垂直な先端端面を有するテーパー面に加工するとともに、他方の合成枕木の端部を一方の合成枕木のテーパー面に相補する形状の略垂直な先端端面を有するテーパー面に加工し、これら合成枕木を先端端面において突き合わせ、これら端面同士を接着剤で接着することができ、その他、種々の嵌合形状やテーパー形状としても良い。
【0014】
上記本発明の接続構造において、補強部材と各枕木とにわたって樹脂成形品からなる補強ピンを打ち込むことができる。これによれば、補強部材を合成枕木に接着する接着剤が硬化して十分な接着強度を発揮する前においても、上記補強ピンによって補強部材と合成枕木との接着面の剪断強度を持たせることができ、また、補強ピンも樹脂成形品、好ましくは合成木材からなるものとしているので、この補強ピンを打ち込んだ部位にねじ釘等を打ち込むことも可能となる。なお、上記樹脂成形品としては、合成枕木や補強部材と同種の合成木材(長繊維強化樹脂発泡体)からなるものが好ましいが、熱硬化性樹脂のみにより成形されたものなど適宜のものを用いることができる。より一層の強度向上を図るためには、補強部材を両側面及び上下側面の2以上の面に接着し、各面に接着した補強部材といずれか一方又は双方の枕木とにわたって上記補強ピンを打ち込むことが好ましい。
【0015】
また、補強部材及び対の枕木の双方にわたって樹脂成形品からなる補強ピンを打ち込むことも可能である。これによれば、補強部材と合成枕木との接着面のみならず、対の合成枕木同士の接着面の剪断強度をも補強ピンによって向上することができ、より一層の曲げ強度の向上を図ることが可能となる。かかる補強ピンは、特に、対の合成枕木の接続部同士の接合面が、長手方向に沿って厚み方向に傾斜するテーパー面である場合や、両接続部が上下に嵌合する構造の場合に好適に用いることが可能である。
【0016】
上記した接続構造は、種々の方法によって施工することができ、例えば補強部材は、施工現場において合成枕木に接着することもでき、予めいずれか一方の合成枕木に工場等において接着固定しておくこともできる。好ましい合成枕木の接合方法は、接続される2本の合成枕木の長手方向端部をそれぞれ互いに相補形状に形成し、いずれか一方の合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に、合成木材からなる補強部材を予め接着しておき、他方の合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に面接し得るように一方の合成枕木の端部から突出させておき、現場施工時に2本の合成枕木の端部接合面同士を接着すると共に、他方の合成枕木と上記補強部材とが面接する面を接着し、更に補強部材表面から合成枕木に達するように樹脂成形品からなる補強ピンを打ち込むことを特徴とするものである。これによれば、補強部材と一方の合成枕木とは、工場等において予め接着しているので、現場施工時には既に十分な接着強度が得られており、他方の合成枕木との接合強度は、補強ピンによって補強し得るから接着剤が硬化する前においても実用的な曲げ強度が得られる。
【0017】
上記接合方法において、好ましくは、一方の合成枕木に一の補強部材を予め接着しておくとともに、他方の合成枕木にも、一の補強部材とは配設位置の異なる他の補強部材を予め接着しておく。これによれば、施工直後でも、いずれかの補強部材が合成枕木に強固に接着されているため、十分大きな曲げ強度を得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明は、2本以上の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部を突き合わせて接着することにより接続される合成枕木の接続構造であって、上記合成枕木の接続される端部同士が互いに相補形状の接続部であり、該接続部は該端部から長手方向に所定の長さに亘って設けられており、上記合成枕木の接続部を構成する双方の合成枕木に亘って樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれていることを特徴とするものである。これによれば、対の合成枕木の接続部同士を接着する接着剤が硬化して十分な接着強度を発揮する前においても、上記補強ピンによって接続部同士の接着面の剪断強度を持たせることができ、また、補強ピンも樹脂成形品、好ましくは合成木材からなるものとしているので、この補強ピンを打ち込んだ部位にねじ釘等を打ち込むことも可能となる。なお、補強ピンは接着剤を表面に塗布した後に打ち込むことが好ましく、これによれば補強ピンの軸方向の引っ張り強度を最大限に発揮させることが可能となり、より一層の合成木材同士の接続部の曲げ強度の向上を図ることができる。
【0019】
さらに、合成枕木の接続部同士の接着面が長手方向に所定の幅を有しているので、合成枕木に埋設された長繊維の切断位置が長手方向に分散することになり、長手方向任意位置での縦断面における大部分の長繊維に引っ張り応力支承作用を得ることができ、大きな曲げ強度を得ることが可能となる。なお、接続部の先端近傍において引っ張り応力を支承し得る長繊維が最も少なくなるため、該部分の曲げ強度が比較的小さくなるが、該部分の下面側若しくは両側面側に、両枕木にわたって合成木材からなる補強板を接着することにより、該補強板の長繊維により引っ張り応力を支承させることが可能となり、この引張力を枕木に伝達する作用を奏する補強板と合成木材との接着面の接着強さは同種の材料であるから大きくなり、簡単な構造で施工容易なものでありながら実用強度を得ることが可能である。
【0020】
かかる接続構造において、複数の補強ピンが、合成枕木同士の接合面と複数の補強ピンとの交点が合成枕木の長手方向にずれるようにかつ幅方向若しくは厚み方向のいずれか一方向にもずれるように打ち込まれているものとすることができる。これによれば、曲げ強度の最も小さくなる長手方向位置(即ち、接続部の先端部近傍)に大きな集中荷重が作用する場合において、枕木の長手方向位置によって曲げ応力が変化するため、破壊に耐えうる接着強度も長手方向位置によって異なってくるが、上記長手方向にずれた複数の交点を幅方向及び/又は厚み方向にもずらしておくことにより、枕木に生じた曲げ応力をいずれかの補強ピンの軸方向応力(引っ張り又は圧縮)として伝達することができ、ピンの引っ張り・圧縮強度は剪断強度よりも一般的に大きいため、効果的に接続部の曲げ強度を向上することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、対の金属を使用しない合成枕木の互いに接合される長手方向端部がそれぞれ互いに相補形状の接続部とされ、該接続部は長手方向に所定の幅を有し、これら両接続部の接合面同士を突き合わせ状態で接着してなる合成枕木の接続構造において、枕木の下面側及び/又は両側面側に合成木材からなる補強部材が設けられ、該補強部材は、対の枕木の双方の表面に接着され、補強部材の長手方向幅は、枕木の前記接続部の長手方向幅よりも大きくなされ、平面視において補強部材の長手方向両端部の内側に前記接続部が位置されているものとすることもできる。ここで、補強部材と各枕木とにわたって樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれているものとしたり、また、補強部材及び対の枕木の双方にわたって樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれているものとすることもできる。
【0023】
また、本発明は、対の合成枕木の互いに接合される長手方向端部がそれぞれ互いに相補形状の接続部とされ、該接続部は長手方向に所定の幅を有し、これら両接続部の接合面同士を突き合わせ状態で接着してなる合成枕木の接続構造において、樹脂成形品からなる補強ピンが、対の合成枕木の両接続部の双方にわたって打ち込まれているものとすることもできる。ここで、前記補強ピンは複数設けられ、対の合成枕木同士の接合面といずれか2以上の補強ピンとの複数の交点が、横方向にずれているとともに、枕木幅方向(前後方向)及び厚さ方向(上下方向)のうち少なくとも一の方向にずれているものとすることもできる。
【0024】
また、本発明は、対の金属を使用しない合成枕木の互いに接合される長手方向端部がそれぞれ互いに幅方向に相補形状の接続部とされ、該接続部は長手方向に所定の幅を有し、これら両接続部の接合面同士を突き合わせ状態で接着してなる合成枕木の接続構造において、前記両接続部の少なくとも長手方向両端側の接合面が、縦断面において凹凸嵌合構造を呈しているものとすることもできる。
【0025】
また、本発明の合成枕木の接合方法は、対の金属を使用しない合成枕木の互いに接合すべき長手方向端部をそれぞれ互いに相補形状に形成し、いずれか一方の合成枕木の下面及び/又は両側面に合成木材からなる補強部材を予め接着しておき、該補強部材は、他方の合成枕木の下面及び/又は両側面に面接し得るように一方の合成枕木の端部から突出させておき、現場施工時に、対の合成枕木の接合すべき端部の接合面同士を突き合わせ状態で接着するとともに、前記補強部材を他方の合成枕木の下面及び/又は両側面に接着し、該補強部材と少なくとも他方の合成枕木とにわたって樹脂成形品からなる補強ピンを打ち込むものとすることもできる。
【0026】
なお、上記した本発明において、補強部材の原材料としては、合成枕木と同じものを用いることができる。また、合成枕木や補強部材の原材料となる合成木材は、長手方向に向けて埋設した長繊維で補強した樹脂(これを「合成木材」という)により形成することができ、より好ましくはガラス長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した熱硬化性樹脂発泡体により形成することができる。また、上記合成木材単体から合成枕木を形成してもよいが、合成木材や樹脂発泡体などからなる板材を上下に積層してなる複合材により合成枕木を形成することもできる。なお、合成枕木の密度は、一般的には0.6〜1.0g/cm3であり、補強材である長繊維の含有量は40〜60重量%程度のものとすることができる。長繊維としては、無機質、有機質のいずれを使用してもよいが、ガラス繊維を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂発泡体としては、硬質ポリウレタン樹脂や硬質ポリエステル樹脂を好適に使用できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る合成枕木の接続構造並びに接合方法を示している。図において、1a,1bは一対の合成枕木を示している。この合成枕木1a,1bとしては、ガラス長繊維補強樹脂複合材からなる柱状体を好適に用いることができる。なお、合成枕木1a,1bの補強長繊維方向は長手方向(枕木長手方向)に揃えられている。これら合成枕木1a,1bの互いに接合される長手方向端部はそれぞれ互いに相補形状の接続部2a,2bとなされている。本実施形態では、両合成枕木1a,1bの接続部2a,2b同士の接合面は、互いに雄雌関係のテーパー面に加工されているとともに、接続部2a,2bの先端面は略垂直に加工されている。而して、該接合面は枕木1a,1bの長手方向に所定の幅を有している。
【0029】
より詳細には、一方の合成枕木1aの接続部2aは、その下面が先端側にしたがって徐々に上方に傾斜するテーパー面に形成されている。このテーパー面の上方傾斜角は、図示例では9°としているが、所望の角度とすることができる。また、テーパー面の厚み方向幅は、枕木1aの厚み方向幅の約3分の1程度が好ましい。また、接続部2aの先端面は、枕木1aの上端部に位置している。他方の合成枕木1bの接続部2bは、その上面が先端側にしたがって徐々に下方に傾斜するテーパー面に形成されており、このテーパー面は一方の合成枕木1aのテーパー面に適合する角度で形成されている。なお、テーパー面を境にして切断端が対向する長繊維間の張力伝達は、一方の繊維の張力が、上記切断端の間に位相的にブリッジする他の繊維に樹脂をマトリックスとして伝達され、この他の繊維から他方の繊維に伝達される経路が主体となり、この張力伝達の効率は繊維端の間に他の繊維が深くラップするほど大となる。従って、張力伝達の効率上は、テーパー角が小さいほど有利である。
【0030】
そして、対の合成枕木1a,1bの両接続部2a,2bの接合面(即ち、上記テーパー面並びに略垂直面)に接着剤を塗布し、これら接合面同士を突き合わせて接着している。なお、接着剤としては、合成枕木1a,1b同士の接合面を接着することができるものであれば特に限定されるものではなく、合成枕木を構成する長繊維や熱硬化性樹脂発泡体などの材質に応じて適宜選定することができる。例えば、合成枕木がガラス長繊維と硬質ウレタン樹脂発泡体とによって構成されている場合、接着剤としてはエポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0031】
対の合成枕木1a,1bの下面側には、合成木材からなる補強板3が設けられている。この補強板3は平面視長方形状の板材であって、その補強材である長繊維方向が長手方向に揃えられているものを用いている。この補強板3は、対の合成枕木1a,1bの双方の下面に接着剤により接着されている。補強板3の長手方向幅は、上記接続部2a,2bの長手方向幅(図示例ではテーパー面の長手方向寸法)よりも大きくなされている。さらに、平面視において上記接続部2a,2bは補強板3の長手方向両端部の内側中央に位置されている。したがって、補強板3は、下面側に露呈する対の合成枕木1a,1b同士の継ぎ目を跨いで両枕木1a,1bに接着されているとともに、該補強板3は、上面側に露呈する対の合成枕木1a,1b同士の継ぎ目をも平面視において跨いだ状態で接着されている。
【0032】
また、本実施形態では、接続部2a,2bよりも長手方向外側の部位で、補強板3と各枕木1a,1bとにわたってガラス繊維強化樹脂からなる補強ピン4が厚み方向に打ち込まれているとともに、補強板3及び対の枕木1a,1bの両接続部2a,2bの双方にわたってガラス繊維強化樹脂からなる補強ピン5が厚み方向に打ち込まれている。なお、補強ピン4,5を打ち込む際に、補強ピン4,5に接着剤を塗布しておくことで、該ピン4,5の軸方向強度を有効利用して合成枕木同士の接続部の曲げ強度の一層の向上を図ることができる。
【0033】
上記補強ピン5は、長手方向複数箇所(図示例では2箇所)に打ち込まれており、枕木1a,1bの接続部2a,2b同士の接合面と図1(b)において左側の補強ピン5との交点と、該接合面と右側の補強ピン5の交点とは、該接合面が長手方向に沿って上下に傾斜しているために、これら交点は厚み方向にも変位している。
【0034】
上記実施形態に係る接続構造では、図1(b)に集中荷重Pを作用させている部位において破壊荷重が最も小さくなるが、本願発明者らの試験によれば、13tf以上の破壊荷重を得ることができた。
【0035】
上記接続構造は、適宜の施工手順によって施工することができるが、好ましくは、次の接合方法を用いることができる。即ち、図3に示すように、補強板3を一方の合成枕木1aの下面に工場等において予め接着しておき、該補強板3が、現場施工時に他方の合成枕木1bの下面に面接し得るように一方の合成枕木1aの端部から突出させておく。また、上記補強ピン4,5を打ち込む位置に厚み方向の孔6を穿設しておく。そして、現場施工時に、合成枕木1a,1bの接合すべき端部の接合面に接着剤を塗布してこれら接合面同士を突き合わせることにより接着する。この際、一方の合成枕木1aに対し、他方の合成枕木1bを水平方向にスライドさせつつ近接させることで上記突き合わせを行うことができ、他方の合成枕木1bの接続部2bの先端を適宜切断して該先端部が一方の枕木1aの接続部2aの基端部に突き当たらないようにしておくことによって、テーパー面同士を確実に面接することができるとともに、テーパー面の楔効果によって強固な接続を行うことが可能になる。さらに、上記補強板3と他方の枕木1bとの当接面にも接着剤を塗布しておき、これら当接面同士を接着する。その後、上記補強ピン4,5を順次孔6に打ち込むことによって施工が完了する。なお、この場合において、補強板3と一方の枕木1aとを貫通する補強ピン4は、工場等において予め打ち込んでおくことも可能である。また、施工後の接着強度が確実に発現するように、補強板3を枕木1a,1b側にシャコ万などの締結工具によって接着剤が硬化するまで押さえ付けておくことが好ましい。
【0036】
かかる接合方法によれば、現場における接着面積を少なくすることができるので、作業工数の削減を図り、枕木の敷設や更正を迅速に行うことができるとともに、一方の枕木1aと補強板3とは施工時に既に強固に接着された状態となるとともに、現場にて接着した部位は、補強ピン4の剪断強度や引っ張り強度によって強度を持たせることができ、施工後すぐに実用的な強度が得られるので、夜間作業に好適に実施することが可能である。
【0037】
なお、補強板3は、他方の合成枕木1b側に予め接着しておき、これに一方の合成枕木1aを位置決めして接着することもできる。
【0038】
次に、図4及び図5に示す実施の形態に係る接続構造について説明するが、上記実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0039】
本実施形態では、補強部材が上記第1実施形態と異なる。即ち、本実施形態の補強部材は、両枕木1a,1bの下面側から後側面側にわたって設けられた断面L字状の第1の補強部材3aと、両枕木1a,1bの前側面側に設けられた長方形板状の第2の補強部材3bとからなる。第1の補強部材3aは、枕木1a,1bの下面に幅方向全長にわたって面接し且つ第2の補強部材3bの下端面にも面接する底板部7と、枕木1a,1bの後側面に厚み方向全長にわたって面接する後板部8とが一体的に成形されたものである。また、接続部2a,2bの長手方向外側の補強ピン4は、上記第1実施形態と同様に枕木1a,1bの上方から第1の補強部材3aの底板部7にまで貫通するように打ち込まれているとともに、第2の補強部材3bと一方の合成枕木1aにわたって貫通するように一方の合成枕木1aの前側方からも補強ピン4が打ち込まれており、さらに、第1の補強部材3aの後板部8と他方の合成枕木1bにわたって貫通するように他方の合成枕木1bの後側方からも補強ピン4が打ち込まれている。
【0040】
この実施形態に係る接続構造によれば、厚み方向に長尺の断面を有する側板となる第2補強部材3b及び後板部8によって大きな断面二次モーメントが得られ、より一層の曲げ強度の向上を図ることが可能となる。また、これら第2補強部材3b及び後板部8は、合成枕木1a,1b同士の継ぎ目を跨いで両枕木1a,1bの側面に接着されているから、接着面全体にわたってに過大な応力が作用することが防止され、接着剤の凝集破壊や界面破壊が生じることが防止される。
【0041】
この実施形態の接続構造も種々の接合方法によって得ることができ、例えば、図6〜図8に示すように、一方の合成枕木1a側に第1補強部材3aを予め接着しておくとともに、他方の合成枕木1b側に第2補強部材3bを予め接着しておき、施工現場において両合成枕木1a,1bの接合面、第1補強部材3aと他方の合成枕木1bとの接合面、並びに、第2補強部材3bと一方の合成枕木1aとの接合面にそれぞれ接着剤を塗布して突き合わせることにより接着し、ピン打ち込み用の孔6に補強ピン4,5を順次打ち込むことによって施工することが可能である。なお、各補強部材3a,3bを現場施工時に両枕木1a,1bに対して接着することも可能である。
【0042】
また、図4に示した実施形態では、接続部2a,2bの長手方向外側で他方の枕木1bと底板部7とにわたって貫通する補強ピンを設けていないが、勿論、必要に応じて図9に示すようにかかる補強ピンを打ち込むこともできる。
【0043】
図10に示す実施形態に係る接続構造では、両合成枕木1a,1bの接続部2a,2b同士の接合面は、長手方向に変位する2つの幅方向に沿う垂直面10と、枕木1a,1bの幅方向略中央に位置する長手方向に沿う垂直面11とからなる。上記垂直面10の一方は幅方向中央位置から前端部にまで連続し、垂直面10の他方は幅方向中央位置から後端部にまで連続し、両垂直面10は、上記垂直面11を介して連続している。即ち、各接続部2a,2bは略柱状であって、枕木1a,1bを幅方向中央で分割した断面形状を呈し、一方の接続部2aは後部側に位置し、他方の接続部2bは前部側に位置され、これらを組み合わせることによって枕木1a,1bと同じ断面積を得るようにしている。
【0044】
また、両合成枕木1a,1bの下面側及び両側面側(前後側面側)には、それぞれ合成木材からなる補強板3c,3d,3eが設けられている。これら補強板3c,3d,3eは、その長手方向幅が等しく、全体として上方開口コ字状の補強部材を構成している。また、各補強板3c,3d,3eと合成枕木1a,1bとにわたる補強ピン4の所望の箇所に打ち込まれており、接着面に過大な剪断応力が作用することを補強ピン4によって回避し得るようにしている。
【0045】
本実施形態の接続構造も適宜の接合方法によって得ることができ、例えば、図11〜図13に示すように、一方の枕木1aに後面側の補強板3eを予め接着し、他方の枕木1bに前面側の補強板3c及び下面側の補強板3dを予め接着しておく。さらに、枕木1bの接続部2bの上記長手方向の垂直面11側に位置決めピン12を打ち込んでおくとともに、これに対向する枕木1aの接続部2aの側面に位置決めピン挿通穴13を形成しておく。さらに、補強ピン4の打ち込み箇所に適宜ピン打ち込み孔6を穿孔しておく。
【0046】
そして、施工現場において各接着面に接着剤を塗布し、上記位置決めピン12が穴13に嵌め込まれるように対の枕木1a,1bを幅方向から突き合わせることにより両枕木1a,1bを接着する。その後、補強ピン打ち込み孔6に順次補強ピン4を打ち込むことにより施工が完了する。
【0047】
図14に示す実施の形態に係る接続構造は、図10に示す接続構造において、さらに枕木1a,1bの上面にも補強板3fを接着したものである。この上面補強板3fの幅方向寸法は、枕木1a,1bの幅方向寸法に、前後の補強板3d,3eの板厚を加えた寸法とされ、上面補強板3fの前後両端部が、前後の補強板3d,3eの上端面に接着している。さらに、本実施形態では、特に厚み方向に打ち込まれた補強ピン4が、上面側の補強板3fから下面側の補強板3cにわたって貫通されており、かかる補強ピンと4つの補強板とによって不静定ラーメン構造が得られるから、接続部の曲げ強度を十分大きくすることができる。
【0048】
この接続構造も適宜の方法によって得ることができ、例えば、図15〜図17に示すように、上面側及び下面側の補強板3c,3fのうちのいずれか一方と、幅方向両側面側の補強板3d,3eのうちのいずれか一方の2つの補強板3e,3fを一方の枕木1aに予め接着しておき、残る2つの補強板3c,3dを他方の枕木1bに予め接着しておき、現場においてかかる枕木1a,1b並びに各補強板3c,3d,3e,3fの接着面に接着剤を塗布して突き合わせることにより接着することができる。また、図14に示す接続構造にすることにより、破壊強度は20tfとなり、実用強度を得ることができた。また施工直後から十分な強度を得ることが可能となる。
【0049】
図18及び図19に示す実施形態に係る接続構造は、図4に示す接続構造において、下面側及び幅方向両側面側にそれぞれ板状の補強板3c,3d,3eを配設して各補強板3c,3d,3eを両枕木1a,1bに接着するとともに、枕木1a,1bの上面側に露呈する継ぎ目を跨いで両枕木1a,1bの上面に接着される上面補強板3fを設けたものである。この上面補強板3fは、両枕木1a,1bの上面に設けた凹部14に嵌着され、補強板3fの上面が枕木1a,1bの上面と面一となるようにしている。
【0050】
この接続構造を得るための接合方法としては、例えば、図20〜図22に示すように、一方の枕木1a側に後面補強板3eと下面補強板3cを予め接着しておくとともに、他方の合成枕木1b側に前面補強板3dを予め接着しておき、施工現場において両合成枕木1a,1bの接合面、補強板3c,3eと他方の合成枕木1bとの接合面、並びに、補強板3dと一方の合成枕木1aとの接合面にそれぞれ接着剤を塗布して突き合わせることにより接着し、さらに、予め方形板状に加工した上面補強板3fの下面に接着剤を塗布して上記凹部14に嵌着する。なお、各補強板同士の接合部分にも接着剤を塗布して接着することが好ましい。そして、ピン打ち込み用の孔6に補強ピン4,5を順次打ち込むことによって施工が完了する。
【0051】
図23に示す実施の形態に係る接続構造は、図10に示す接続構造において、両合成枕木1a,1bの双方の上面に亘って接着される上面補強板3fを配設したものである。この補強板3fは、両枕木1a,1bの接続部2a,2bの上部に形成された凹部14に嵌着され、その上面が枕木1a,1bの上面と面一状となるようにしている。また、厚み方向の補強ピン4は、上下の補強板3c,3fにわたって貫通しているため、これら4つの補強板と補強ピン4とによる補強構造によって、ボルト等を用いずとも十分大きな曲げ強度を得ることが可能である。
【0052】
この接続構造も、図24〜図26に示すように、各補強板を適宜いずれか一方の枕木に予め接着しておくことで、現場施工時には各補強板を他方の枕木に接着するのみでよく、接着作業面積を低減することにより作業時間の短縮を図ることができるとともに、施工直後から十分な強度を得ることが可能となる。尚、この時の破壊強度は19tfであった。
【0053】
図27に示す実施形態に係る接続構造は、両枕木1a,1bの接続部2a,2bが図10に示す接続構造と同様のであって、下面側の補強板3cのみを接着し、補強ピンを打ち込んでいないものである。かかる接続構造によっても、最も強度の弱い部位における破壊荷重Pとして12tfが得られ、実用強度を得ることができた。
【0054】
図28に示す実施形態に係る接続構造は、図27に示す接続構造の位置決めピン12に代えて、両枕木1の双方の接続部2a,2bの側面に形成した凹部16に嵌合される略柱状の埋め込みブロック15を用いたものである。このブロック15としては、合成枕木1と同種の材料を用いるのが好ましく、長繊維強化熱硬化性樹脂発泡体から構成することが好ましい。また、本実施形態では、ブロック15の嵌合を容易に行えるようにするとともに、長繊維の切断位置を長手方向にずらすことによる曲げ強度の向上をも図るために、長手方向の垂直面11を幅方向に傾斜するテーパー面により構成している。
【0055】
本実施形態によれば、上記ブロック15によってテーパー面11に沿う方向の剪断強度を十分に大きくすることができ、これにより接続部分の曲げ強度をも大きく向上させることができる。
【0056】
図29に示す実施形態に係る接続構造は、図27に示す接続構造の改良であって、接続部2a,2b同士の接合面を構成する幅方向の垂直面10が長手方向の4箇所に分散され、接続部2a,2bが先端側にしたがって段階的に幅方向幅が小さくなるように形成されている。下面側に接着した補強板3cと一方の合成枕木1aとにわたって打ち込まれた補強ピン4が、接続部2aよりも基端側(長手方向外側)と接続部2a内とに設けられている。
【0057】
かかる接続構造では、補強板3cは予め工場等において他方の合成枕木1b側に接着しておき、現場作業において該補強板3cを一方の合成枕木1aの下面に接着するとともに、上記補強ピン4を打ち込むことが好ましい。これによれば、補強板3cと他方の枕木1bとは予め接着されているから現場施工直後においても十分大きな接着強度が得られ、補強板3cと一方の枕木1aとを接着する接着剤が完全に硬化する前においても、上記補強ピン4によってその接着面に作用する剪断応力を支承するため、十分な曲げ強度を得ることが可能となる。
【0058】
図30に示す実施形態では、補強ピン4を接続部2a,2bの長手方向外側でそれぞれ打ち込んでいる。これによれば、補強板3cを現場施工により両枕木1a,1bの下面に接着した場合でも、施工後に十分な曲げ強度が得られる。
【0059】
図31に示す実施形態では、補強板3cと各枕木1a,1bとにわたって打ち込まれた補強ピンは設けておらず、一方の枕木1a(1b)の接続部2a(2b)の先端部と他方の枕木1b(1a)の接続部2b(2a)の基端部とにわたって補強ピン5を打ち込んでいる。これによれば、引っ張り応力を支承することができる長繊維が少なくなることにより曲げ強度が低下する接続部先端近傍において、補強ピン5を介して一方の枕木の長繊維から他方の枕木の長繊維へと効率的に引っ張り応力を伝達することができ、補強板3cによる補強効果とも相俟って、長尺枕木の長手方向全長にわたって大きな曲げ強度を得ることが可能となる。
【0060】
さらに、図32に示すように、下面側の補強板3cと枕木1aとにわたる補強ピン4を打ち込むことによって、施工直後でも十分実用的な曲げ強度を得ることが可能になる。
【0061】
図33に示す実施形態に係る接続構造は、図10に示した接続構造において、下面側の補強板3cと枕木1a,1bとにわたる補強ピンを打ち込んでいないとともに、幅方向両側面側の補強板3d,3eは、いずれか一方の枕木1a,1bに対してのみ補強ピン4による補強がなされている点である。かかる接続構造を採用する場合には、各補強板3d,3eを、補強ピン4を打ち込まない側の枕木に予め接着しておくことが好ましい。
【0062】
図34に示す実施形態に係る接続構造では、補強部材は、枕木1a,1bの前側面に接着される板状部と下面の前部側に接着される板状部とから断面L字状に一体成形された第1の補強部材3gと、枕木1a,1bの後側面に接着される板状部と下面の後部側に接着される板状部とから断面L字状に一体成形された第2の補強部材3hの2つの部材によって構成されている。各補強部材3g,3hの接着面の剪断応力を支承させるために、既に説明したような補強ピンを適宜箇所に打ち込むことができ、図示例では、第1の補強部材3gと一方の枕木1aとにわたる補強ピン4と、第2の補強部材3hと他方の枕木1bとにわたる補強ピン4とが幅方向に打ち込まれている。なお、この場合には現場施工前に予め工場等において第1の補強部材3gを他方の枕木1b側に、第2の補強部材3hを一方の枕木1a側に接着しておくことが好ましい。
【0063】
さらに、枕木1a,1bの下面側における第1の補強部材3gと第2の補強部材3hとの突き合わせ部20は、枕木1a,1bの両接続部同士の接合面を構成する長手方向に沿う垂直面10に対して幅方向にずらしている。このように、各部材の接合面を幅方向や長手方向にずらすことにより、任意のポイントにおいていずれかの部材が曲げ応力や引っ張り応力を支承し、最小曲げ強度を大きくすることができる。
【0064】
図35に示す実施形態に係る接続構造は、図33に示す接続構造から下面側の補強板を除いたものであり、かかる構造によっても最小破壊荷重として12tfの強度が得られた。
【0065】
図36に示す実施形態に係る接続構造は、枕木1a,1bの表面に接着される補強部材を設けておらず、樹脂成形品(好ましくは合成木材)からなる補強ピン5が、対の合成枕木1a,1bの両接続部2a,2bの双方にわたって打ち込まれているものである。図示例の補強ピン5は、接続部2a,2bの先端部の両側面側から幅方向に打ち込まれているが、接続部2a,2bの接合面構造に応じて厚み方向などの適宜の方向に打ち込むことが可能である。また、本実施形態の接続部2a,2b同士の接合面は、幅方向に沿う複数の垂直面11を備え、これら垂直面11は長手方向に変位して配置されている。また、接合面は、各垂直面11の端部間をつなぐ長手方向に沿う垂直面10を備えており、本実施形態では、この垂直面10は長手方向と平行となされているが、図37に示すように幅方向に傾斜するテーパー面とすることもでき、さらに、補強ピン5は、図38に示すように長手方向に複数打ち込むことができ、厚み方向に複数列打ち込むことも可能である。また、図39に示すように、接合面の両端側の垂直面11をテーパー面とすることも可能である。この場合、テーパー面の長手方向範囲内で補強ピン5を打ち込むことが好ましく、これによれば、各補強ピン5と接合テーパー面との複数の交点が、幅方向並びに長手方向にずれることとなり、補強ピン5による効果的な補強を行うことが可能になる。
【0066】
図40〜図43は、対の合成枕木1a,1bの互いに接合される長手方向端部がそれぞれ互いに幅方向に相補形状の接続部2a,2bとされ、該接続部2a,2bは長手方向に所定の幅を有し、これら両接続部2a,2bの接合面同士を突き合わせ状態で接着してなり、且つ、前記両接続部2a,2bの接合面の少なくとも一部が、縦断面において凹凸嵌合構造を呈している接続構造の各種実施形態を示している。
【0067】
図40に示す実施形態では、各枕木1a,1bの接続部2a,2bの先端面の厚み方向中途部に方形凹部21が形成されるとともに、該凹部21に対向する他の枕木1b,1aの端面の厚み方向中途部にもほぼ同じ形状の方形凹部22が形成され、これら凹部21,22に合成木材からなる方形ブロック23を接着剤を塗布して嵌着することによって、上記凹凸嵌合構造を得たものである。なお、接続部2a,2b同士の接合面は、枕木1a,1bの幅方向ほぼ中央に位置して幅方向に傾斜するテーパー面からなる垂直面10と、該垂直面10の両端から幅方向外方に延びる垂直面11とからなり、上記ブロック23は、幅方向の垂直面11の厚み方向ほぼ中央に位置されている。
【0068】
図41に示す実施形態では、一方の枕木1aの接続部2aの接合端面の厚み方向中途部に、接合面の全長にわたる凹部22が形成され、他方の枕木1bの接続部2aの接合端面の厚み方向中途部に、前記凹部22に嵌合し得る方形凸部24が接合面の全長にわたって形成され、該凸部24を凹部22に嵌合した状態で接着してなるものである。
【0069】
図42に示す実施形態では、図40に示す接続構造における垂直面10をテーパー面とせず、長手方向に平行とした点以外は異なるところがないので、同符号を付して詳細説明を省略する。
【0070】
図43に示す実施形態では、接続部2a,2bを、先端側にしたがって幅方向幅が段階的に小さくなる階段状の形状とし、その先端部の厚み方向中途部に先端側に突出する方形凸部25を形成するとともに、これに対応する他の枕木の端面に、凸部25を嵌合し得る方形凹部22を形成しておき、かかる構造の接続部2a,2b同士の接合面に接着剤を塗布して突き合わせ、上記凸部25を凹部22に嵌合している。
【0071】
これら図40〜図43に示す各実施形態によれば、いわば2方向の嵌合構造とし、合成枕木1a,1bの長繊維間の引っ張り応力の伝達経路を接続部2a,2bの先端部近傍においても確保することによって、補強板などを設けずとも所望の曲げ強度を得ることができる。
【0072】
なお、上記枕木、補強部材及び補強ピンは、好ましくは、ガラス繊維強化プラスチック発泡体(合成木材)からなるものとすることが好ましい。この発泡体における発泡樹脂の種類としては、例えば、ウレタン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂であって硬質のものが好適に使用される。なお、発泡樹脂中に、圧縮強度の向上や低コスト化を図るために、炭酸カルシウム、石膏、タルク、水酸化アルミニウム、クレー等の無機充填材や、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン等の軽量骨材が添加されていてもよい。
【0073】
また、発泡体を補強する繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機質繊維、天然繊維、合成繊維等の有機質繊維のいずれであってもよいが、強度や経済性の面からガラス繊維が適している。ガラス繊維としては、ガラスロービング、ガラスロービングクロス、ガラスマット、コンティニュアスストランドマット等の形態のものが挙げられる。この繊維は単独で使用してもよいし、二層以上積層してもよく、また、長繊維と短繊維を混ぜて使用してもよい。なお、ガラス長繊維を長手方向に引き揃えて補強繊維とした、ガラス長繊維強化硬質ウレタン発泡体(例えば、積水化学工業株式会社製、商品名「エスロンネオランバーFFU」など)を採用するのが、軽量化、耐久性および加工性の確保のために最も好ましい。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、ボルトなどの金属製の固定部材を用いずとも、合成木材などの切削や穿孔容易な部材のみで長尺分岐枕木を構成することができ、シーサースクロッシングなどにおいて枕木の長手方向の任意の位置にタイプレートを固定するためのねじ釘等を打ち込むことが可能であり、現場に応じて接続部の位置を調整するといった煩雑な作業を行う必要がなく、かつ、最小曲げ強度を少なくとも実用に耐えうる程度にまで向上することが可能である。特に、補強部材として合成枕木と同種の材料を用いることにより、これら部材間の優れた接着強度を得ることができ、さらに、補強ピンによって接着面の剪断強度を施工直後でも確保することができ、夜間における限られた時間内での枕木更正に好適に実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】同接続構造の施工に用いられる合成枕木の分解図であって、(a)は一方の合成枕木の正面図、(b)は他方の合成枕木の正面図である。
【図3】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】図4(a)のA−A線断面図である。
【図6】第2実施形態に係る接続構造の施工に用いられる一方の合成枕木を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図7】同接続構造の施工に用いられる他方の合成枕木を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】同接続構造の施工に用いられる一方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図12】同接続構造の施工に用いられる他方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図13】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図15】同接続構造の施工に用いられる一方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図16】同接続構造の施工に用いられる他方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図17】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図18】本発明の第6実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図19】図18のB−B線断面図である。
【図20】第6実施形態に係る接続構造の施工に用いられる一方の合成枕木を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図21】同接続構造の施工に用いられる他方の合成枕木を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図22】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図23】本発明の第7実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図24】同接続構造の施工に用いられる一方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図25】同接続構造の施工に用いられる他方の合成枕木を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図26】同接続構造を施工する接合方法を説明するための対の合成枕木の分解斜視図である。
【図27】本発明の第8実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図28】本発明の第9実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図29】本発明の第10実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図30】本発明の第11実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図31】本発明の第12実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図32】本発明の第13実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図33】本発明の第14実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図34】本発明の第15実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図35】本発明の第16実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図36】本発明の第17実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図37】本発明の第18実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図38】本発明の第19実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図39】本発明の第20実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図40】本発明の第21実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図41】本発明の第22実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図42】本発明の第23実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図43】本発明の第24実施形態に係る合成枕木の接続構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
1a,1b 合成枕木
2a,2b 相補形状の接続部
3,3a,3b,・・・ 補強部材
4 補強部材と合成枕木とにわたって打ち込まれた補強ピン
5 互いに接続される対の合成枕木にわたって打ち込まれた補強ピン

Claims (5)

  1. 2本以上の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部を突き合わせて接着することにより接続される合成枕木の接続構造であって、
    上記合成枕木の接続される端部同士が互いに相補形状の接続部であり、該接続部は該端部から長手方向に所定の長さに亘って設けられており、
    上記合成枕木の接続部を覆うように接続部よりも長い補強部材が上記合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に設けられ、該補強部材は双方の合成枕木の表面に接着され
    補強部材表面から合成枕木に達するように樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれていることを特徴とする合成枕木の接続構造。
  2. 2本以上の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部を突き合わせて接着することにより接続される合成枕木の接続構造であって、
    上記合成枕木の接続される端部同士が互いに相補形状の接続部であり、該接続部は該端部から長手方向に所定の長さに亘って設けられており、
    上記合成枕木の接続部を覆うように接続部よりも長い補強部材が上記合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に設けられ、該補強部材は双方の合成枕木の表面に接着され、
    補強部材表面から接続部を構成する一方の合成枕木を貫通し、他方の合成枕木に達するまで樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれていることを特徴とする合成枕木の接続構造。
  3. 2本以上の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部を突き合わせて接着することにより接続される合成枕木の接続構造であって、
    上記合成枕木の接続される端部同士が互いに相補形状の接続部であり、該接続部は該端部から長手方向に所定の長さに亘って設けられており、
    上記合成枕木の接続部を構成する双方の合成枕木に亘って樹脂成形品からなる補強ピンが打ち込まれていることを特徴とする合成枕木の接続構造。
  4. 複数の補強ピンが、合成枕木同士の接合面と複数の補強ピンとの交点が合成枕木の長手方向にずれるようにかつ幅方向若しくは厚み方向のいずれか一方向にもずれるように打ち込まれていることを特徴とする請求項に記載の合成枕木の接続構造。
  5. 接続される2本の金属を使用しない合成枕木の長手方向端部をそれぞれ互いに相補形状に形成し、いずれか一方の合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に、合成木材からなる補強部材を予め接着しておき、他方の合成枕木の上面、下面若しくは両側面の少なくとも一面に面接し得るように一方の合成枕木の端部から突出させておき、現場施工時に2本の合成枕木の端部接合面同士を接着すると共に、他方の合成枕木と上記補強部材とが面接する面を接着し、更に補強部材表面から合成枕木に達するように樹脂成形品からなる補強ピンを打ち込むことを特徴とする合成枕木の接続方法。
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