JP4079731B2 - 光散乱反射板及びその作製方法、並びに反射型液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光散乱反射板や、照明器具、液晶表示装置等の表示装置などに関する技術分野に属し、レーザー微細加工技術による光散乱反射板およびその作製方法並びに反射型液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、照明器具や、液晶表示板等の表示板などの各種光利用装置では、入射光の反射を分散させる光散乱反射性が要求される。光散乱反射性を得るための方法としては、従来、各種光利用装置の反射板の表面を粗面化する方法、屈折率の高い微粒子を光散乱反射剤として分散させて反射板の表面に塗布する方法などが用いられている(特許文献1〜特許文献2参照)。しかしながら、反射板の表面を粗面化する方法では、粗面化の方向性が反射板に指向性をもたらし、反射分散の均一性が失われている。また、光散乱反射剤を反射板の表面に塗布する方法では、輝度が小さく、視認性が低下する問題等が生じていた。さらに、これらの方法では、削る、微粒子を用いるという側面から、ゴミ発生という環境面での負の要素を含んでいる。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−20305号公報
【特許文献2】
特開2000−298204号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた光散乱反射性及び輝度特性を有しているとともに、容易に製造することができる光散乱反射板及びその作製方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、視認性が良好な反射型液晶表示装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、プラスチック内部に10-12秒以下のパルスの超短パルスレーザーを照射すると、プラスチックの表面に、微小な隆起部が形成され、さらにこの隆起部側の表面に光沢性材料層を形成すると、優れた光散乱反射性を発揮する光散乱反射面を有する光散乱反射板が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、厚みが5μm〜10mmであり、光散乱反射面を有する光散乱反射板であって、下記の光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有することを特徴とする光散乱反射板を提供する。
光散乱反射面A:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に形成された、該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
光散乱反射面B:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により作製された金型に、成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して形成された、微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
【0007】
レーザーとしては、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザーを好適に用いることができる。
【0008】
レーザー照射前の状態のプラスチックとしては、100℃以上のガラス転移温度を有するプラスチックが好ましく、また、ポリマー材料と他の材料との複合体を好適に用いることができる。
【0009】
本発明は、また、前記厚みが5μm〜10mmである光散乱反射板を作製する方法であって、下記の工程A又は工程Bを具備することを特徴とする光散乱反射板の作製方法を提供する。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して、成形体表面に微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程
【0010】
前記光散乱反射板の作製方法では、プラスチック内部に外部よりパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点をライン状に移動させながら照射することができ、また、超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射することができる。工程Bで用いられる金型材料としては金属材料を、成形材料としてはプラスチック材料を好適に用いることができる。
【0011】
本発明は、さらにまた、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと、厚みが5μm〜10mmである光散乱反射板とが組み合わせられている反射型液晶表示装置において、前記光散乱反射板が、光散乱反射面として、下記の光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有することを特徴とする反射型液晶表示装置を提供する。
光散乱反射面A:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に形成された、該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
光散乱反射面B:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により作製された金型に、成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して形成された、微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。
[光散乱反射板]
本発明の光散乱反射板は、光散乱反射面として、前記光散乱反射面A又は光散乱反射Bを有している。前記光散乱反射面の形成に際して、プラスチックへのレーザー照射を利用しているので、光散乱反射面は微小な隆起構造を有しており、そのため、優れた光散乱反射性を発揮させることができる。また、輝度特性も優れている。従って、本発明の光散乱反射板を用いると、視認性が良好な反射型液晶表示装置を得ることができる。
【0013】
しかも、表面に微小隆起構造からなる光散乱反射面を有していても、研削や微粒子の塗布等の物理的に表面を凹凸状にする処理を行っていないので、製造時のゴミの発生が少なく、優れた環境性で製造することが可能である。
【0014】
具体的には、光散乱反射面Aや光散乱反射面Bは、光散乱反射板の表面に形成された微小な隆起物および光沢性材料による面であり、例えば、図1で示すことができる。図1は、光散乱反射板の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。図1において、(a)の光散乱反射板11は、その表面に、円錐状の隆起物の面上(隆起物側の表面)に形成された光沢性材料層11aからなる光散乱反射面21を有しており、(b)の光散乱反射板12は、その表面に、釣り鐘状の隆起物の面上(隆起物側の表面)に形成された光沢性材料層12aからなる光散乱反射面22を有しており、(c)の光散乱反射板13は、その表面に、カルデラ状の隆起物の面上(隆起物側の表面)に形成された光沢性材料層13aからなる光散乱反射面23を有しており、(d)の光散乱反射板14は、その表面に、テラス状の隆起物の面上(隆起物側の表面)に形成された光沢性材料層14aからなる光散乱反射面24を有しており、(e)の光散乱反射板15は、その表面に、半球状の隆起物の面上(隆起物側の表面)に形成された光沢性材料層15aからなる光散乱反射面25を有している。図1(a)〜(e)では、各種形状の隆起物は、プラスチック(11b,12b,13b,14b,15b)の表面に該プラスチックの内部から隆起して形成されたものである。また、隆起物は、該隆起物の直径と同じかそれ以上の間隔を置いて複数個形成されている。このような隆起物の底面の直径は0.3〜100μm(好ましくは1〜50μm)程度であり、高さは0.1〜50μm(好ましくは0.5〜20μm)程度である。
【0015】
より具体的には、円錐状や釣り鐘状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは0.5〜15μm)程度の範囲から選択することが望ましい。カルデラ状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択することが望ましい。テラス状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜15μm(好ましくは1〜10μm)程度の範囲から選択することが望ましい。半球状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択することが望ましい。
【0016】
また、隆起物の間隔(底面の円の中心間距離)は、特に制限されないが、好ましくは底面の直径と同じかそれ以上(例えば、直径〜直径の10倍程度、好ましくは、直径〜直径の5倍程度)である。
【0017】
なお、カルデラ状の隆起物とは、凸部の頂部が陥没している形状の隆起物を意味している。また、テラス状の隆起物とは、凸部の頂部が平面状になっている形状の隆起物を意味している。
【0018】
1つの光散乱反射板において、隆起物は複数個形成されており、該複数の隆起物側の表面上に光沢性材料層が形成されることにより良好な光散乱反射性が発揮されている。なお、隆起物の数は、特に制限されず、目的とする光散乱反射性等に応じて適宜選択することができる。
【0019】
このような光散乱反射板は、プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に微小な隆起物を形成し、該隆起物を利用するとともに、光沢性材料層を形成することにより、光散乱反射面Aや光散乱反射面Bを有する光散乱反射板を作製することができる。より具体的には、光散乱反射面Aを有する光散乱反射板は、下記の工程Aを具備する方法により作製することができ、光散乱反射面Bを有する光散乱反射板は、下記の工程Bを具備する方法により作製することができる。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して、成形体表面に微小隆起構造の転写による微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程
【0020】
より具体的には、工程Aには、下記の工程A1〜A2が含まれる。
工程A1:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起した微小の隆起物を形成する工程
工程A2:工程A1で形成された微小隆起物の面上(微小隆起物側の表面)に、光沢性材料を付着する工程
【0021】
一方、工程Bには、下記の工程B1〜B6が含まれる。
工程B1:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起した微小の隆起物を形成して金型の原型を形成する工程
工程B2:工程B1で形成された金型の原型の表面上に金型材料を被覆する工程
工程B3:工程B2で形成された金型材料被覆層を金型の原型から金型として分離する工程
工程B4:工程B3で作製された金型に、成形材料を充填する工程
工程B5:工程B4で金型に充填された充填物を、微小隆起物を有する構造体として、金型から離型する工程
工程B6:工程B5で形成された微小隆起物の面上(微小隆起物側の表面)に、光沢性材料を付着する工程
【0022】
なお、前記工程B1における金型の原型としての微小隆起物を有する構造体は、前記工程A1における微小隆起物を有するプラスチックに相当している。すなわち、光散乱反射面Aを有する光散乱反射板を形成する際の光沢性材料層を形成する前の微小隆起物を有するプラスチックを、金型の原型として用いて金型を作製し、この金型を用いて、新たな微小隆起物を有する構造体を作製し、この微小隆起物を有する構造体の隆起物の面上(微小隆起物側の表面)に光沢性材料層を形成することにより、光散乱反射面Bを有する光散乱反射板を作製することができる。従って、この新たな微小隆起物を有する構造体は、前記レーザーの照射による微小隆起物を有するプラスチックにおける隆起物が転写された複製物であると言える。そのため、このような隆起物を転写する方法を利用すると、レーザー照射によっては、その表面に内部から隆起して形成される隆起物を作製することができない材料であっても、微小隆起物を有する構造体を容易に且つ精密に作製することができる。すなわち、各種の成形材料により、光散乱反射板を製造することができる。
【0023】
また、工程Bを具備する方法では、光散乱反射面を有する光散乱反射板を量産することが容易である。すなわち、レーザー(特に、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザー)を利用して作製された微小隆起物を有するプラスチックと同一の形状を有するものを、容易に且つ精密に複製して、量産することができる。
【0024】
さらにまた、工程Bを具備する方法では、金型の原型を製造するにあたり、製造時のゴミの発生が少なく、環境汚染やリサイクルなどの環境問題が生じない。従って、環境汚染やリサイクルなどの環境問題を生じさせることなく表面の所望の部位に微小な隆起物からなる光散乱反射面を有する光散乱反射板を得ることができる。
【0025】
(レーザー照射による隆起物の形成方法)
工程A1や工程B1における微小の隆起物は、プラスチック内部にレーザーを照射することにより形成することができ、具体的には、図2で示されるように、プラスチック内部にパルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザー(以下、「超短パルスレーザー」又は「レーザー」と称する場合がある)を照射することにより、プラスチック表面に形成することができる。図2はプラスチック内部に超短パルスのレーザーを照射する一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。図2において、レーザー3は、プラスチックシート1に向けて、照射方向6の向きで、すなわちZ軸と平行な方向で、照射している。なお、レーザー3はレンズ4を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。また、プラスチックシート1はシート状の形態を有しており、該プラスチックシート1の上面1aはX−Y平面と平行な面となっているとともに、Z軸と垂直となっている。
【0026】
レーザー3は、その焦点5を移動方向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点5をライン8上をライン状に移動方向7の向きに移動させながら、レーザー3が照射されていることになる。前記移動方向7は、照射方向6に対して垂直な方向であり、且つプラスチック1の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行であり、照射方向6とは垂直となっている。さらに、ライン8は、プラスチック1の表面1aに対して平行な方向となっている。なお、レーザー3の焦点5を移動方向7にライン状に移動させる際の該焦点5の移動速度としては、特に制限されず、例えば、10〜1,000μm/秒(好ましくは100〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0027】
dはプラスチックシート1の表面1aと、レーザー3の焦点5との距離である。従って、距離dは、プラスチックシート1の表面1aからの深さに相当する。すなわち、ライン8は、プラスチックシート1の表面1aからの深さがdである位置となっている。該距離dとしては、特に制限されず、プラスチックシート1の厚さTに応じて適宜選択することができ、通常、5〜150μm程度の範囲から選択される。すなわち、超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から、例えば、5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射することができる。距離dとしては、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。なお、距離dは、もちろん、プラスチックシート1の厚さTよりも短く、通常、厚さTの半分以下であるが、半分を越えていてもよい。
【0028】
より具体的には、レーザー3を照射方向6の方向で、ライン8のうちいずれか1つのライン(ライン81とする)の一方の末端部に焦点5を合わせて、照射し、この焦点5を移動方向7の方向にライン81上をライン状にライン81の他方の末端まで移動させる。その後、このライン81上の焦点5の移動方法と同様の方法により、レーザー3の焦点5を他のライン(ライン82とする)の一方の末端に合わせて他方の末端まで該ライン82上をライン状に移動させる。さらに、このような焦点をライン8のうちいずれか1つのラインの一方の末端に合わせて他方の末端まで移動させることを必要なだけ繰り返すことにより、プラスチックの表面の隆起物(隆起部又は凸部)を形成することができる。隆起物の大きさは、例えば、レーザーの焦点の深さやその移動速度、レーザーの出力の大きさ、プラスチックを形成するポリマーの種類などにより制御することができる。
【0029】
なお、超短パルスレーザーの焦点の移動は、超短パルスレーザー及びレンズと、プラスチックとの相対位置を動かせることにより、例えば、超短パルスレーザー及びレンズ、及び/又は照射されるプラスチックを移動させることにより、行うことができる。具体的には、超短パルスレーザーの照射は、例えば、照射サンプル(照射されるプラスチック)を、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができる精密なXYZステージに載せ、3次元的に移動させることにより、サンプル任意の場所に行うことができる。また、XYZステージの移動を時間的に設定することにより、照射を3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0030】
このように、レーザーをプラスチックの内部に外部から照射して、焦点をライン状に移動させることにより、プラスチックの表面に内部からの隆起による微小隆起物を形成することができ、その結果、微小隆起物を有する構造体(プラスチック)を作製することができる。
【0031】
なお、レーザー照射により形成される隆起物は、通常、レーザーが照射される側の表面(図2では、表面1a)に形成される。また、プラスチックの表面において、隆起物が形成される位置としては、レーザーを照射するラインと対応した表面上の位置であり、例えば、図2で示されるように、レーザー3を表面1aに垂直に且つライン8上をライン状に移動させながら照射する場合、隆起物は、該隆起物の中心部位(底面の円の中心部位)がライン8の垂直上の表面1a上にくるような位置に形成される。従って、1つのライン状に形成された隆起物は間隔をあけて形成されており、該隆起物間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向と平行な方向における間隔)としては、前述のように、隆起物の直径と同じかそれ以上の間隔となっている。このような1つのライン上における隆起物間の間隔(ライン上間隔)は特に制限されない。また、もちろん、1つのライン上における隆起物の数は特に制限されず、レーザーの照射条件やプラスチックの素材等に応じて適宜選択することができる。
【0032】
また、複数のライン状に形成された隆起物の隣接するライン上における隆起物間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向に対して垂直な方向における間隔;ライン間間隔)としては、通常、ライン8の間隔Lと同等又はほぼ同等になる。
【0033】
(レーザー照射前のプラスチック)
本発明では、レーザー(特に、超短パルスレーザー)のプラスチック内部への照射が有効に行われるためには、照射されるプラスチック(レーザー照射前の状態のプラスチック)は、波長400nmから800nmの可視光の波長領域で10%以上の透過率を有することが望ましい。
【0034】
また、レーザー照射前の状態のプラスチックとしては、そのガラス転移温度は、常温(23℃)以上であることが一般的に望ましいが、100℃以上であることが最適である。100℃以上のガラス転移温度を有しているプラスチック材料を用いることにより、表面に微小隆起物を有するプラスチック構造体を高い精度で作製することができる。なお、超短パルスレーザーの照射により前記のような隆起物が形成されるメカニズムは、まだ詳細には解析されていない。
【0035】
レーザー照射前の状態のプラスチックにおいて、熱的性質は、隆起物を形成する時の形成因子として働くだけでなく、隆起物の形成後の安定性にも影響を与えるため重要である。隆起物の形成後の安定性については、プラスチックの緩和現象による構造変化が関係し、ガラス転移温度が低い材料では緩和が起こり易く生成した隆起物の構造が不安定になる。
【0036】
このようなパルスレーザー照射に使用されるプラスチックとしては、共重合体を含めた単一化学構造のポリマー材料からなるものだけでなく、異なる化学構造を有する複数のポリマー材料からなるポリマーアロイやポリマーブレンドでもよい。
【0037】
また、パルスレーザー照射に使用されるプラスチックとしては、無機化合物や金属などの他の材料を分散状態で含んだ複合体であってもよく、異なるプラスチックや他の材料からなる層を含んだ2以上の層構造からなる積層体であってもよい。
【0038】
具体的には、前記ポリマー材料の代表的な例として、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)等の熱可塑性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明の効果が失われない範囲で、プラスチックには、着色剤(顔料、染料など)、耐候剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、漂白剤、離型剤、相溶化剤などを添加・付与されていてもよい。
【0040】
(レーザー)
レーザーとしては、通常、超短パルスレーザーが用いられる。超短パルスレーザーとしては、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたフェムト秒パルスレーザーなどが好都合であり、使用されるパルス幅は10-12秒から10-15秒のオーダーのものが該当するが、通常は100フェムト秒(10-13秒)程度のものが使用される。使用波長は、可視光領域の400nmから800nm、繰り返しは1Hzから80MHzの範囲で、通常は10Hzから500kHz程度の条件で使用される。レーザーパルスの出力は、数mWから数百mW程度で使用される。なお、プラスチック材料に対して、内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、プラスチック材料に照射する際に用いられる対物レンズの開口数(光源の絞り込み)、プラスチック材料への照射位置又は焦点の深さ、レーザーの焦点の移動速度などに応じて決められる。
【0041】
また、本発明では、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする隆起物の大きさや形状等に応じて適宜選択することができ、例えば、500mW以下(例えば、1〜500mW)、好ましくは5〜300mW、さらに好ましくは10〜100mW程度の範囲から選択することができる。
【0042】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的の隆起物の大きさやその形状、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0043】
なお、図2において、レンズ4は、レーザー3の光線の焦点を絞って合わせるために用いており、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。レンズ4の開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては10〜50倍、開口数としては0.3〜0.8程度の範囲から選択される。
【0044】
このように、工程A1と工程B1とは、同様の方法(すなわち、プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による微小隆起物を形成する方法)により行うことができる。
【0045】
(金型材料被覆層の形成方法)
工程B2では、前記工程B1で形成された金型の原型の表面上に、金型材料を被覆している。該金型材料としては、有機系金型材料(例えば、プラスチック材料など)や、無機系金型材料(例えば、金属材料やその他の無機化合物など)を用いることができる。金型材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明では、金型材料としては、無機系金型材料、特に、金属材料を好適に用いることができる。該金属材料としては、特に制限されず、金型として用いて成形材料を成形することができるものであればよい。金属材料には、金属単体の他、その他の金属化合物が含まれる。なお、下記に示される無電解メッキ又は電解メッキにより金型材料被覆層(金属被覆層)を微小隆起物を有するプラスチック(金型の原型)の表面に形成する場合は、金属材料としては、前記無電解メッキ又は電解メッキを行うことができるものが好ましい。具体的には、金属材料としては、例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、カドミウム、亜鉛、スズ、鉛、クロム、アルミニウム等の金属や、真ちゅう、ニッケル−クロム合金、銅−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金、金−銅合金等の合金などが挙げられる。
【0047】
なお、前記有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、微小隆起物を有するプラスチックの溶融温度よりも低い溶融温度を有するプラスチック材料を用いてもよい。有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、金型として用いることができるプラスチック材料であれば特に制限されない。具体的には、有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)などの熱可塑性樹脂や、レジスト材料などが挙げられる。なお、有機系金型材料の使用に際して、金型の原型としての微小隆起物を有するプラスチックと有機系金型材料とが接合しないように、該微小隆起物を有するプラスチックの表面を表面処理してもよい。
【0048】
微小隆起物を有するプラスチック表面上に金型材料を被覆する方法としては、前記プラスチック表面に金型材料を被覆することができる方法であれば特に制限されない。例えば、金型材料として金属材料を用いる場合は、金型の原型(微小隆起物を有するプラスチック)の表面上に金属材料を堆積させることにより、金属材料により金型の原型の表面を被覆させて、金属材料被覆層を形成することができる。より具体的には、金属材料の被覆方法としては、例えば、無電解メッキを行う方法や、予め、微小隆起物を有するプラスチック表面に蒸着などにより導電性の賦与を行った後に電解メッキを行う方法を好適に採用することができる。なお、無電解メッキを行った後に、電解メッキが行われてもよい。無電解メッキの後に、電解メッキを行うことにより、メッキ金属層の厚みを増加させることができる。
【0049】
無電解メッキは、例えば、微小隆起物を有するプラスチックを、市販のニッケルメッキ浴に浸漬させることにより、前記プラスチックの全表面にメッキ金属を析出させて、金属被覆層を形成することができる。なお、無電解メッキを行う前にクロム酸処理などの前処理を行うことができる。
【0050】
金型材料被覆層の厚みは特に制限されず、例えば、200μm以上(例えば、0.2〜5mm)、好ましくは0.5〜3mm程度の範囲から選択することができる。金型材料被覆層の厚みが薄すぎると、金型としての強度が低下する。
【0051】
このように、工程B2では、金型の原型(微小隆起物を有するプラスチック)の表面上に金型材料を被覆させて、金型材料からなる微小構造が転写された金型材料被覆層を金型の原型の表面上に形成しているので、該金型材料被覆層の内部側の面(微小隆起物を有するプラスチックの表面と接触している面)は、微小隆起物を有するプラスチックの表面の形状に対応している。すなわち、金型材料被覆層は、前記プラスチックの表面の微小隆起物に対応する形状の微小陥没部を有している。
【0052】
(金型の分離方法)
工程B3では、前記工程B2で形成された金型材料被覆層を金型の原型から分離して、金型(微小隆起物を有する構造体形成用金型)を得ている。金型材料被覆層および金型の原型を分離させる方法としては、前記金型材料被覆層を、前記金型の原型(プラスチック部材)から分離させることができる方法であれば特に制限されず、例えば、金型材料被覆層からプラスチック部材を抜き取る方法、剥離させる方法またはエッチングにより除去する方法などを1種で又は2種以上組み合わせて採用することができる。
【0053】
なお、前記工程B1〜工程B3を含む作製方法により作製された金型の形状を他の金型材料(例えば、プラスチック材料など)により写し取って、他の金型材料(プラスチック材料等)による金型を作製して、該金型を利用して光散乱反射板を作製することもできる。例えば、前記工程B1〜工程B3を含む作製方法により得られた金属材料からなる金型(又は金属被覆層)の表面をプラスチック材料で被覆して、該被覆により形成されたプラスチック材料被覆層を、前記金属材料からなる金型(又は金属被覆層)から分離させて、プラスチック材料からなる金型を得ることができる。
【0054】
(成形材料の充填方法)
工程B4では、前記工程B3で作製された金型に、成形材料を充填している。前記成形材料としては、特に制限されず、例えば、有機系成形材料、無機系成形材料のいずれであってもよいが、有機系成形材料を好適に用いることができる。成形材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
前記有機系成形材料としては、プラスチック材料が好ましく、該プラスチック材料のなかでも特に熱可塑性樹脂が好適である。熱可塑性樹脂などのプラスチック材料としては、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)などが挙げられる。
【0056】
また、有機系成形材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ノルボルネンゴム(NOR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファゼンゴム等のゴム材料や、ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、ジエン系エラストマー等のエラストマー材料の他、導電性高分子などであってもよい。なお、有機系成形材料には、無機化合物や金属化合物などの各種材料等が含まれていてもよい。
【0057】
また、無機系成形材料としては、金属化合物(金属単体を含む)やその他の無機化合物などを適宜選択して用いることができる。なお、無機系成形材料を用いる場合、金型としては、プラスチック材料により作製された金型を用いることができる。
【0058】
成形材料を金型に充填する方法としては、特に制限されず、例えば、成形材料が熱可塑性樹脂である場合、一般的に、溶融状態の熱可塑性樹脂を金型に流し込む方法が用いられる。金型に溶融状態の熱可塑性樹脂を流し込んだ後は、冷却することにより、熱可塑性樹脂を固化することができる。
【0059】
(充填物の離型方法)
工程B5では、工程B4で金型に充填された充填物(成形材料からなる充填物)を金型から離型させることにより、微小構造が転写された微小隆起物を有する構造体(成形体)を得ている。例えば、成形材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、冷却固化された熱可塑性樹脂を金型から抜き取ったり、剥離したりすることにより、離型することができる。
【0060】
また、本発明では、工程B5で得られた、微小構造が転写された微小隆起物を有する構造体(成形体)を、金型の原型として用いて、前記工程B1〜B5を含む工程の方法と同様にして、新たな微小構造が転写された微小隆起物を有する構造体(成形体)を作製することも可能である。
【0061】
(光沢性材料層の形成方法)
工程A2や工程B6では、微小隆起物の面上(微小隆起物側の表面)に光沢性材料層を形成しており、これにより、光散乱反射面を有する光散乱反射板が作製することができる。光沢性材料としては、光沢性材料層の形成により、光沢性を発揮できる材料であれば特に制限されない。光沢性材料としては、無機系光沢性材料、有機系光沢性材料のいずれであっても用いることができる。光沢性材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
無機系光沢性材料としては、金属材料を好適に用いることができるが、雲母などの光沢性無機材料(非金属系の光沢性無機材料)も用いることができる。なお、金属材料には、金属単体の他、その他の金属化合物が含まれる。また、有機系光沢性材料には、例えば、微小構造により光沢性が発揮される光沢性有機材料が含まれる。
【0063】
光沢性材料としての金属材料としては、例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、カドミウム、亜鉛、スズ、鉛、クロム、アルミニウム等の金属や、真ちゅう、ニッケル−クロム合金、銅−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金、金−銅合金等の合金などが挙げられる。
【0064】
光沢性材料層の形成方法としては、例えば、光沢性材料として金属材料を用いた場合、蒸着方法、スパッタリング方法、イオンプレーティング方法や無電解メッキ方法の他、予め、微小隆起物を有する構造体表面に蒸着などにより導電性の賦与を行った後に電解メッキを行う方法などを好適に採用することができる。なお、これらの方法は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。例えば、無電解メッキを行った後に、電解メッキが行われてもよい。無電解メッキ方法としては、前記金型材料被覆層を形成する方法における無電解メッキ方法と同様にして行うことができる。
【0065】
光沢性材料層の厚みは、特に制限されず、例えば、10nm以上(例えば、10〜2000nm)、好ましくは10〜1000nm程度の範囲から選択することができる。
【0066】
本発明の光散乱反射板は、前述のような工程A又は工程Bを具備する方法により作製することができる。このように、光散乱反射面の形成に際して、レーザー照射を利用しているので、光散乱反射面における隆起物(隆起部又は凸部)が微小な構造であっても、精密に制御された隆起物を有する光散乱反射板を容易に作製することができる。
【0067】
光散乱反射板は、通常、板状やシート状の形態(又は形状)で製造されるが、他の形態を有していてもよい。光散乱反射板が板状又はシート状の形態を有する場合、その厚みとしては、特に制限されず、例えば、5μm〜10mm(好ましくは10μm〜5mm、さらに好ましくは20〜100μm)程度の範囲から選択することができる。このように、光散乱反射板の厚みが薄くても、レーザー照射を利用しているので、容易に且つ精密に制御された隆起物からなる光散乱反射面を形成することができる。従って、光散乱反射性が優れているとともに、輝度特性が優れている。なお、光散乱反射板の厚みには、通常、光散乱反射面における隆起物の高さは含まれていない。
【0068】
[反射型液晶表示装置]
本発明の反射型液晶表示装置は、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと、前記光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有する光散乱反射板とが組み合わせられている。具体的には、反射型液晶表示装置としては、例えば、図3で表される反射型液晶表示装置などが挙げられる。図3は本発明の反射型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図3において、9は反射型液晶表示装置、91は液晶セル、92、92aは偏光板、93は光散乱反射板、94は保護層である。図3で示される反射型液晶表示装置9では、光散乱反射板93は、液晶セル91の下部側(内面側)に設置されており、通常、光散乱反射板93の光散乱反射面側が液晶セル91側になるように設置される。なお、偏光板92、偏光板92a、保護層94は、必要に応じて設けられている。また、偏光板92および偏光板92aは、何れか一方のみが用いられていてもよく、両方が用いられていてもよい。
【0069】
光散乱反射板93は、前記光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有する光散乱反射板である。反射型液晶表示装置9の上面からの入射される入射光による光は、光散乱反射板93で光散乱反射され、これにより、反射型液晶表示装置は均一な輝度で表示されている。このように、反射型液晶表示装置では、光散乱反射板が、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと組み合わされている。なお、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルとしては、特に制限されず、例えば、図3で示されるように、液晶セルを有する液晶パネルが挙げられる。もちろん、偏光板や保護層の他、位相差板などを必要に応じて適宜用いることができる。
【0070】
本発明の反射型液晶表示装置は、前記光散乱反射板を有しているので、該光散乱反射板の光散乱反射面の微小隆起構造(微細凹凸構造)に基づいて入射光が良好に乱反射されて拡散し、指向性やギラギラした見栄えが抑制又は防止され、明暗のムラが少ない又はない反射光が形成される。すなわち、本発明の反射型液晶表示装置は、全面的に明るく且つ該明るさの均一性が良好である反射光が得られるため、視認性が優れている。
【0071】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0072】
実施例1
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が160℃のポリカーボネート(PC)シート内部(深さ25μm)に、照射波長800nm、パルス幅150フェムト秒、繰り返し200kHzのチタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザーを、照射エネルギー30mW、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約3μm径、照射方向に対して直角方向のサンプルの移動速度500μm/秒の条件で照射したところ、PCシートの表面に隆起物が形成された。次に、このPCシートの隆起物が形成された表面に、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。該光散乱反射板について、電子顕微鏡を用いて、その表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径22μm、高さ15μmの釣り鐘形状の隆起物が27μm間隔で形成されていることが観察された。
【0073】
実施例2
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が−50℃のアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂シートの内部(深さ30μm)に、実施例1と同じ超短パルスレーザーを、対物レンズ10倍を用い、照射エネルギーを20mWとしたこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、AS樹脂シートの表面に隆起物が形成された。次に、このAS樹脂シートの隆起物が形成された表面に、実施例1と同様にして、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。また、実施例1と同様にして該光散乱反射板についての表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径20μm、高さ5μm、窪み3μmのカルデラ形状の隆起物が25μm間隔で形成されていることが観察された。
【0074】
実施例3
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が105℃のポリメチルメタクリレート(PMMA)シートの内部(深さ5μm)に、実施例1と同じ超短パルスレーザーを、照射エネルギーを7mW、移動速度を25μm/秒としたこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、PMMAシートの表面に隆起物が形成された。次に、このPMMAシートの隆起物が形成された表面に、実施例1と同様にして、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。また、実施例1と同様にして該光散乱反射板についての表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径8μm、高さ3μmの円錐形状の隆起物が14μm間隔で形成されていることが観察された。
【0075】
実施例4
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が220℃のポリエーテルサルホン(PES)シートの内部(深さ5μm)に、実施例3と同じ超短パルスレーザーを、照射エネルギーを10mWとしたこと以外は実施例3と同じ条件で照射したところ、PESシートの表面に隆起物が形成された。次に、このPESシートの隆起物が形成された表面に、実施例1と同様にして、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。また、実施例1と同様にして該光散乱反射板についての表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径11μm、高さ5μmの半球形状の隆起物が17μm間隔で形成されていることが観察された。
【0076】
実施例5
実施例1と同じPCシートに、実施例1と同じ超短パルスレーザーを、照射エネルギーを10mW、焦点深さを5μmとしたこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、PCシートの表面に隆起物が形成された。次に、このPCシートの隆起物が形成された表面に、実施例1と同様にして、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。また、実施例1と同様にして該光散乱反射板についての表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径11μm、高さ4μmのテラス形状の隆起物が17μm間隔で形成されていることが観察された。
【0077】
実施例6
実施例1により得られた、表面に隆起物を有するPCシートを金型の原型として用いた。この金型の原型(表面に微小隆起物を有するプラスチック)を、濃度:98重量%の硫酸(「98%硫酸」と称する場合がある)、無水クロム酸及び98%硫酸、純水、濃度:35重量%の塩酸、純水、98%硫酸、純水に、この順で、順次浸漬して、無電解メッキ前の前処理を行った後、ニッケルによる無電解メッキを行って、表面に微小隆起物を有するプラスチックの表面上にニッケルを0.8mmの厚みまで堆積させた後、ニッケルにより被覆されたプラスチックを剥離させて、ニッケルからなる金型を得た。
【0078】
このニッケルからなる金型に、AS樹脂をテトラヒドロフランに溶解したAS樹脂溶液を流し込んで、乾燥して固化させた後、型から抜いて、厚み65μmで表面に隆起物が形成されているAS樹脂シートを得た。次に、このAS樹脂シートの隆起物が形成された表面に、実施例1と同様にして、銀を厚みが100nmとなるように蒸着して、光散乱反射板を作製した。また、実施例1と同様にして該光散乱反射板についての表面の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には直径22μm、高さ15μmの釣り鐘形状の隆起物が27μm間隔で形成されていることが観察された。
【0079】
(評価)
実施例1〜6で得られた光散乱反射板を用いて、反射型液晶表示装置を作製して、視認性を評価した。具体的には、液晶セルの下面に、偏光板、実施例1〜6で得られた各光散乱反射板を、この順で且つ光散乱反射板における光散乱反射面(隆起物側の面)が液晶セル側となるように貼り合わせ、一方、前記液晶セルの上面に偏光板を貼り合わせ、さらにその表面に保護層を形成して、図3で示されるような構造の反射型液晶表示装置を作製した。この反射型液晶表示装置について、上面から入射光を入射させて、表示面の視認性を観察したところ、いずれの実施例に係る反射型液晶表示装置でも、その反射光に指向性やギラギラした見栄えは認められず、明暗ムラのない光度の均一性に優れる反射光が観察された。従って、実施例に係る反射型液晶表示装置は優れた視認性が発揮されている。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、光散乱反射板は、優れた光拡散性、及び輝度特性を有しているとともに、容易に製造することができる。また、前記光散乱反射板を有する反射型液晶表示装置は、視認性が良好である。しかも、製造時のゴミの発生が少なく、優れた環境性で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】光散乱反射板の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。
【図2】プラスチック内部に超短パルスのレーザーを照射する一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。
【図3】本発明の反射型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11〜15 光散乱反射板
11a〜15a 光沢性材料層
11b〜15b プラスチック
21〜25 光散乱反射面
1 プラスチックシート
1a プラスチックシート1の表面(上面)
T プラスチックシート1の厚さ
3 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー
4 レンズ
5 レーザー3の焦点
6 レーザー3の照射方向
7 レーザー3の焦点5の移動方向
8 レーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のライン
d プラスチックシート1の表面1aと、レーザー3の焦点5との距離
L ライン8における近接したライン間の間隔
9 反射型液晶表示装置
91 液晶セル
92、92a 偏光板
93 光散乱反射板
94 保護層
Claims (10)
- 厚みが5μm〜10mmであり、光散乱反射面を有する光散乱反射板であって、下記の光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有することを特徴とする光散乱反射板。
光散乱反射面A:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に形成された、該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
光散乱反射面B:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により作製された金型に、成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して形成された、微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面 - レーザーが、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザーである請求項1記載の光散乱反射板。
- レーザー照射前の状態のプラスチックが、100℃以上のガラス転移温度を有するプラスチックである請求項1又は2記載の光散乱反射板。
- レーザー照射前の状態のプラスチックが、ポリマー材料と他の材料との複合体である請求項1〜3の何れかの項に記載の光散乱反射板。
- 前記請求項1〜4の何れかの項に記載の厚みが5μm〜10mmである光散乱反射板を作製する方法であって、下記の工程A又は工程Bを具備することを特徴とする光散乱反射板の作製方法。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して、成形体表面に微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物を形成し、さらに前記微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料を付着させることにより、光散乱反射面を形成する工程 - プラスチック内部に外部よりパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点をライン状に移動させながら照射する請求項5記載の光散乱反射板の作製方法。
- 超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射する請求項5又は6記載の光散乱反射板の作製方法。
- 工程Bで用いられる金型材料が金属材料である請求項5〜7の何れかの項に記載の光散乱反射板の作製方法。
- 工程Bで用いられる成形材料がプラスチック材料である請求項5〜8の何れかの項に記載の光散乱反射板の作製方法。
- 電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと、厚みが5μm〜10mmである光散乱反射板とが組み合わせられている反射型液晶表示装置において、前記光散乱反射板が、光散乱反射面として、下記の光散乱反射面A又は光散乱反射面Bを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
光散乱反射面A:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に形成された、該プラスチック内部からの隆起による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
光散乱反射面B:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により作製された金型に、成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して形成された、微小隆起構造の転写による、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmであり、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小隆起物側の表面に、厚みが10〜2000nmであるとともに金属材料からなる光沢性材料層が形成されてなる光散乱反射面
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