JP3975039B2 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子 - Google Patents
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- G02B5/124—Reflex reflectors cube corner, trihedral or triple reflector type plural reflecting elements forming part of a unitary plate or sheet
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。より詳しくは、本発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車、オードバイ等の車両のナンバープレート類、衣料、救命具等の安全資材類、看板等のマーキング、可視光、レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な再帰反射体を構成する、三角錐型キューブコーナー再帰反射素子などの再帰反射素子(以下単に、再帰反射素子若しくは単に反射素子ともいう)及びその集合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射体はよく知られており、その再帰反射性を利用した該反射体は上記のごとき利用分野で広く利用されている。中でも三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下、単に三角錐型反射素子又はCC反射素子ともいう)などの内部全反射原理を利用した三角錐型キューブコーナー再帰反射体(以下、CC再帰反射体ともいう)は、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射体に比べ、光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつある。
【0003】
しかしながら従来公知の三角錐型再帰反射素子は、その反射原理から素子の持つ光学軸(三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を構成する互いに90°の角度で交差する3個の面から等しい距離にある該三角錐の頂点を通る軸)と入射光線とがなす角度(以下これを入射角という)が小さい角度の範囲では良好な再帰反射効率を示すが、入射角が大きくなるに連れて再帰反射効率は急激に低下する(すなわち入射角特性が劣る)。また、その三角錐型反射素子を構成する透明媒体の屈析率と空気の屈折率との比によって定まる内部全反射条件を満足する臨界角度(αc)未満の角度で三角錐型反射素子面に入射した光源は、該素子の界面で全反射することなく、該素子の背面に透過するために、三角錐型反射素子を用いる再帰反射シートは、一般に入射角特性が劣るという欠点があった。
【0004】
他方、三角錐型再帰反射素子は、該素子のほぼ全面にわたって光の入射した方向に光を反射させることができるために、マイクロ硝子球型反射素子のように球面収差などの原因によって反射光が広い角度に発散して反射することはない。しかしながら、反射光のこの狭い発散角度は実用面においては、例えば自動車のヘッドランプから発せられた光が交通標識で再帰反射したとき、その光軸から離れた位置にいる例えば運転者の目には達しにくいという不都合が生じ易い。このような不都合は、特に自動車と交通標識との距離が近接したときに、光線の入射軸と運転者と反射点とを結ぶ軸(観測軸)とがなす角度(観測角)が増大するためにますます増大する(すなわち観測角特性が劣る)。
【0005】
このようなキューブコーナー型再帰反射シート、特に三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートに関しては、古くから多くの提案が知られており、種々の改良検討がなされている。
【0006】
例えば、ユンゲルセン (Jungersen) の米国特許第 2,310,790 号においては、薄いシートの上に様々な形の再帰反射素子を設置してなる再帰反射シートおよびそれらシートの製造方法について述べられている。上記米国特許に例示されている三角錐型反射素子は、頂点を底面三角形の中心に位置した光学軸の傾斜のない(すなわち、底面に対して光学軸が垂直である)三角錐型反射素子や、頂点の位置が底面三角形の中心に位置していない光学軸の傾斜した三角錐型反射素子が例示されており、接近してくる自動車に対して効率的に光を反射させることが記載されている。また、三角錐型反射素子の大きさとしては、素子の深さとして1/10 インチ(2,540 μm)以内であることが記載されている。また、そのFig15 には、図示されている三角錐型反射素子の底面三角形の長辺と短辺の長さの比率から求めると、光学軸の傾斜角度(θ)が約 6.5°である三角錐型反射素子が示されている。
【0007】
しかしながら、上記 Jungersen の米国特許には、本発明に示されるような極めて小さい三角錐型反射素子についての具体的な開示は存在せず、また、優れた観測角特性や入射角特性を与えるために、三角錐型反射素子がどのような大きさ及び光学軸の傾斜を有することが必要かなどについては何らの記載も示唆もされていない。
【0008】
なお本明細書において、「光学軸がプラス(+)となる方向に傾斜している」とは、後に詳述するように、三角錐型反射素子の光学軸と該三角錐型反射素子の底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から、該素子対が共有する底辺(x、x、…)までの距離(q)〔これは交点(Q)から、該素子対が共有する底辺(x、x、…)を含む該底面(Sx−Sx’)に垂直な平面(Lx−Lx)までの距離と同じ]と、該素子の頂点から底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、…)までの距離(p)〔これは交点(P)から該垂直な平面(Lx−Lx)までの距離と同じ〕との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に光学軸が傾いていることを意味するものとする。また逆に、(q−p)がマイナス(−)となるような方向に光学軸が傾いているときには、以降「光学軸がマイナス(−)となる方向に傾斜している」と表示するものとする。
【0009】
また、スタム(Stamm)の米国特許第 3,712,706 号においては薄いシート上に底面の三角形の形状が正三角形である、所謂、正三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(したがって、その光学軸は底面に対して垂直である)を、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。このStamm の米国特許では、光学軸の傾斜により広角性を改善する手段に関してはまったく記載されていない。
【0010】
また、ホープマン(Hoopman)のヨーロッパ特許第 137,736B1 号においては、薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。この特許に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の光学軸の傾斜は、マイナス(−)方向に傾斜しており、その傾斜角は約7°〜13°であることが示されている。
【0011】
さらに、スチェッチ(Szczech)の米国特許第 5,138,488 号においても、同様に薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて開示されている。この米国特許においては、該三角錐型反射素子の光学軸は、お互いに向き合って対を成す二つの三角錐型反射素子が互いに共有する辺の方向に傾斜しており、その傾斜角は約2°〜5°であり、素子の大きさが 25μmから 100μmであることが規定されている。
【0012】
また、上記特許に対応するヨーロッパ特許第 548,280B1 号においては、光学軸の傾きの方向が、対をなす二つの素子の共通の辺を含みかつ共通平面に垂直な面と素子の頂点との距離が、素子の光学軸が共通平面と交差する点と該垂直な面との距離に等しくなく、その傾斜角は約2°〜5°であり、素子の大きさが 25μmから 100μmであることが記載されている。
【0013】
上記の様に、Szczech のヨーロッパ特許第 548,280B1 号においては、光学軸の傾きがプラス(+)及びマイナス(−)の両方を含む約2°〜5°の範囲となっている。しかし、Szczech の上記米国特許及ぴヨーロツパ特許の実施例には、光学軸の傾斜角度が−8.2°、−9.2°及び−4.3°で、素子の高さ(h)が 87.5μmの三角錐型反射素子しか具体的には開示されていない。
【0014】
以上述べた従来公知の Jungersen の米国特許第 2,310,790 号;Stamm の米国特許第 3,712,706 号;Hoopman のヨーロッパ特許第137,736B1 号;Szczech の米国特許第 5,138,488 号、ヨーロッパ特許第548,280B1 号等の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、いずれも、光の入射及び反射の中核をなす多数の三角錐型反射素子の底面が同一平面上にある点で共通しており、かように底面が同一平面にある三角錐型反射素子で構成された再帰反射シートは、いずれも入射角特性が劣る、すなわち光線の該三角錐型反射素子に対する入射角が増大すると、再帰反射輝度が急激に減少するという欠点を有している。
【0015】
一般に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに望まれる基本的な光学特性として、高輝度性、すなわち、該シート正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度の高さ(大きさ)、及び、広角性が要求され、さらに広角性に関しては、観測角特性、入射角特性、回転角特性の三性能が要求される。
【0016】
前述したとおり、従来公知の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子から構成された再帰反射シートは、いずれも、入射角特性が低くかつ概して観測角特性も満足すべきものではなかったのに対して、本発明者らは、近年において、該三角錐型反射素子の底面(X−X’)上に一底辺を有する面(c面)の該素子の頂点(H1、H2)からの深さ(h’)〔頂点(H1、H2)の底面(X−X’)からの高さと同じ〕を、該三角錐型反射素子の該c面と実質的に直角に交差する2面(a面、b面)の底辺(z、w)を包含する面(仮想面Z−Z’)の該頂点からの深さ(h)より実質的に大とすることにより、かような三角錐型反射素子から構成された再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見した。この本発明者らの発明は、1998年4月30日に国際公開されたWO98/18028号公報に発表されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特に入射角特性及び回転角特性が改善された三角錐キューブコーナー再帰反射素子(CC反射素子)を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的及び利益は、共通する一底面(Sx−Sx’)の上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(Sx−Sx’)上の1つの底辺(x)を共有して、相対峙して該底面(Sx−Sx’)上に最密充填状に配置されており、該底面(Sx−Sx’)は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの三角錐型反射素子は該底面(Sx−Sx’)上の共有する底辺(x、x、・・・・)を含み、かつ該底面(Sx−Sx’)に垂直な平面(Lx−Lx、Lx−Lx、・・・・)に対して実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となる方向に、該光学軸と該垂線のなす角度が0.5〜1.5度となるように傾いていることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射素子によって達成される。
【0019】
本発明においては、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線に対して、該頂点を経由する光学軸が、(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となる方向に、0.6〜1.4゜傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が好ましい。
【0020】
本発明においては、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)となる方向に、0.6〜1.4゜傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、さらに、好適である。
【0021】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hxが、hy及びhzよりも実質的に大である三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0022】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hyとhzが実質的に同一であって、hxがhy及びhzよりも実質的に大である三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0023】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がマイナス(−)となる方向に、傾いており、かつ相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hyとhzが実質的に同一であって、hxがhy及びhzよりも実質的に小である三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0024】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、上記hxとhyとhzのいずれかの少なくとも2つが実質的に相違し、該hx、hy及びhzの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとした場合に、
1.03 < hmax/hmin < 1.3
である三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0025】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、上記hx、hy及びhzがいずれも50μm以上であり、かつ500μm以下である三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0026】
本発明の更に好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、上記hx、hy及びhzがいずれも60〜200μmである三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0027】
本発明においては、該三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも1つのプリズム面角の大きさが89.5゜〜90.5゜の範囲内で、90.000゜から僅かに偏差している三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が好適である。
【0028】
本発明においては、さらに、前記の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子がシート状をなしている三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが好ましい。
【0029】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
図1-A及び図1-Bには、本発明の一対の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(CC反射素子)R1及びR2の一態様が示されており、図1-Aはその一反射素子の平面図であり、図1-Bは図1-Aの点C2、H2、H1、C1を包含し、かつ多数の各対をなす反射素子が共有する底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の底面(Sx−Sx’)に対して垂直な反射素子R1及びR2の断面図である。
【0030】
また、図1-A及び図1-Bにおいて、H1及びH2は、それぞれ該反射素子R1及びR2のキューブコーナーの頂点を表し、該反射素子R1及びR2は共有する一底面(Sx−Sx’)上に突出しており、互いに該底面(Sx−Sx’)上の一つの底辺(x、x、・・・・)を共有して相対峙して、該底面(Sx−Sx’)上に最密充填上に配置されたCC再帰反射体における一組のCC反射素子対を構成している。
【0031】
また、図1-Bの点線(H1−P)は、該反射素子R1の頂点H1から底面(Sx−Sx’)に対して直角をなす垂線を示し、点線(H1−Q)は該反射素子R1の頂点H1を通る光学軸を示し、従って、該反射素子R1の傾きはθで表されている。
【0032】
また、図1-Aにおける線x−xは、該一組のCC反射素子R1及びR2が共有する一底面(Sx−Sx’)上において、該反射素子R1及びR2が共有する一底辺(x、x、・・・・)を示し、図1-Bにおいて、該反射素子の頂点から該底面(Sx−Sx’)に対する垂線との交点はPで示され、また該反射素子R1の頂点H1を経由する光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点はQで示される。
【0033】
また、図1-Bにおいて、線Lx−Lxは、該反射素子R1及びR2が共有する一底面(Sx−Sx’)上の、該両素子R1及びR2が共有する一底辺(x)上の、該共有する一底面(Sx−Sx’)に対して垂直な面を示す。
【0034】
反射素子R1及びR2は、底面(Sx−Sx’)に垂直な上記平面(Lx−Lx)に対して実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、後述する図3-A、図3-B、及び図4-A、図4-Bも同様である。
【0035】
本発明において、反射素子、例えば該反射素子R1の光学軸(H1−Q)の傾き〔共有する底面(Sx−Sx’)に対する傾き〕がプラス(+)であるということは、(q−p)がプラス(+)であること、マイナス(−)であるということは、(q−p)がマイナス(−)であることを意味し、また、(q−p)が0の場合は、該光学軸が、多数の対をなす反射素子の底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の底面(Sx−Sx’)に対して直角をなすことを意味する。
【0036】
本発明は、三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、0.5〜1.5゜傾いている光学軸を有することを特徴とするものであり、特に0.6〜1.4゜傾いている光学軸を有するものが好適である。なお、図1-Bにおいて、光学軸の傾きθは、傾斜状態を理解しやすくするために、本発明のCC反射素子の傾き0.5〜1.5゜の値ではなく、約5゜程度に強調して示しており、後述する図3-B、図4-Bも同様である。
【0037】
本発明においては、光学軸の傾き〔すなわち、前記の(q−p)〕がプラス(+)の方向に傾いても、或いはマイナス(−)の方向に傾いてもよいが、光学軸がにプラス(+)となる方向に傾いている方が好適である。
【0038】
したがって、本発明においては、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)となる方向に、0.6〜1.4゜傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が好適である。
【0039】
本発明者等の研究によれば、このような本発明の反射素子は、特に入射角特性のみならず、回転角特性が優れていることが分かった。
【0040】
図2、図3-A及び図3-Bには、本発明の一対の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(CC反射素子)R1及びR2の他の一態様が示されており、図2は反射素子が配置されたCC再帰反射体の平面図であり、図3-Aは図2に示されたCC再帰反射体の一組の素子対を示した平面図であり、図3-Bは図3-Aの点C2、H2、H1、C1を包含し、かつ多数の各対をなす反射素子が共有する底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の底面(Sx−Sx’)に対して垂直な反射素子R1及びR2の断面図である。
【0041】
図2において、a1、b1、c1、及びa2、b2及びc2は配置された多数の反射素子、例えば図2-Aの反射素子R1及びR2の各傾斜面を示し、xは隣接する反射素子、例えばR1及びR2の各傾斜面(c1面)と傾斜面(c2面)とが共有する底辺を示し、yはR1及びR2とは別個の隣接する反射素子の傾斜面(b1面)と傾斜面(b2面)とが共有する底辺を示し、zはさらに別個の隣接する反射素子の傾斜面(a1面)と(a2面)とが共有する底辺を示す。上記底辺(x、x、・・・・)を共有して隣接する反射素子は、上記底辺(x、x、・・・・)を含み、かつ該底面(Sx−Sx’)に垂直な平面(Lx−Lx、Lx−Lx、・・・・)に対して実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなし、相対峙して該底面(Sx−Sx’)上に最密充填状に配置されている。
【0042】
図3-A及び図3-Bにおいて、点線Sx−Sx’は多数の該底辺(x、x、・・・・)を包含する底面を示し、点線Sy−Sy’は多数の該底辺(y、y、・・・・)を包含する底面を示し、点線Sz−Sz’は多数の該底辺(z、z、・・・・)を包含する底面を示す。また、hxは、相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さを示し、hyは他の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さを示し、hzは該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さを示している。
【0043】
本態様例では、底面(Sx−Sx’)は、底面(Sy−Sy’)及び底面(Sz−Sz’)よりも低い位置にあり、かつ、底面(Sy−Sy’)と底面(Sz−Sz’)とは同一平面上にある。すなわち、hxが、hy及びhzよりも大であって、かつhyとhzとは同一である。
【0044】
それ故、傾斜面(a1面、a2面)及び傾斜面(b1面、b2面)は傾斜面(c1面、c2面)によってわずかに切り取られた形状をなし、傾斜面(a1面、a2面)及び傾斜面(b1面、b2面)は四角形状、傾斜面(c1面、c2面)は五角形状をなしている。
【0045】
図3-Bより明らかなように、図1に示したCC反射素子と同様、該CC反射素子対の有している光学軸(H1−Q、H2−Q)は、該CC反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から、該CC反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(p)と、光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該CC反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に、0.5〜1.5゜傾いている。
【0046】
図4-A及び図4-Bには、本発明の一対の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(CC反射素子)R1及びR2の更に他の一態様が示されており、図4-Aはその一反射素子の平面図であり、図4-Bは図4-Aの点C2、H2、H1、C1を包含し、かつ多数の各対をなす反射素子が共有する底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の底面(Sx−Sx’)に対して垂直な反射素子R2及びR1の断面図である。
【0047】
本態様例では、多数の該底辺(x、x、・・・・)を包含する底面(Sx−Sx’)は、多数の該底辺(y、y、・・・・)包含する底面(Sy−Sy’)及び多数の該底辺(z、z、・・・・)包含する底底面(Sz−Sz’)よりも高い位置にあり、かつ、底面(Sy−Sy’)と底面(Sz−Sz’)とは同一平面上にある。すなわち、hxが、hy及びhzよりも小であって、かつhyとhzとは同一である。
【0048】
それ故、傾斜面(c1面、c2面)は傾斜面(a1面、a2面)及び傾斜面(b1面、b2面)によってわずかに切り取られた形状をなし、傾斜面(a1面、a2面)、傾斜面(b1面、b2面)はいずれも四角形であり、傾斜面(c1面、c2面)は三角形である。
【0049】
また、図4-Bより明らかなように、該CC反射素子対の有している光学軸(H1−Q、H2−Q)は、該CC反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から、該CC反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(p)と、光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該CC反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(q)との差(q−p)がマイナス(−)となるような方向に、0.5〜1.5゜傾いている。
【0050】
本発明のCC反射素子は、相対峙する二つのCC反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該CC反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該CC反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該CC反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該CC反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該CC反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hx、hy及びhzが同一でもよいし、異なっていてもよいが、入射角特性の観点からすると、該光学軸が(q−p)がプラス(+)となる方向に傾いている場合には、hxが、hy及びhzよりも実質的に大であることが好ましい。
【0051】
また、光学軸が(q−p)がマイナス(−)となる方向に傾いている場合には、hxが、hy及びhzよりも実質的に小であることが好ましい。
【0052】
また、上記hxとhyとhzのいずれかの少なくとも2つが実質的に相違し、該hx、hy及びhzの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとした場合に、
1.03 < hmax/hmin < 1.3
であることが好ましく、
1.05 < hmax/hmin < 1.2
であることが更に好ましい。
【0053】
上記のhmax/hminの値を満足するCC反射素子は、該CC反射素子の3つの傾斜面(c1面、c2面)の面積、傾斜面(a1面、a2面)の面積及び傾斜面(b1面、b2面)の面積を、略等しい面積とすることができるために、三面反射して再帰反射する光線量を増大することができる。
【0054】
上記CC反射素子の高さhx、hy及びhzのいずれもが好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは60〜200μmであることが推奨される。高さhx、hy又はhzのいずれかが50μm未満の場合は、反射素子の大きさが小さくなりすぎるために、反射素子の平面開口面積により定まる回折効果により、再帰反射光の発散が過大となり、正面輝度特性が低下する。また、高さhx、hy又はhzのいずれかが500μmを超える場合には、シートの厚さが過大となり、柔軟なシートが得られにくいため好ましくない。
【0055】
また本発明におけるCC反射素子のプリズム面である三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される三つのプリズム面角は、実質的に直角となるが、必ずしも厳密な意味で直角(90.000゜)でなく、直角から極く僅かに角度偏差を与えるようにすることが好ましい。該プリズム面角に極く僅かに角度偏差を与えることによって、得られるCC反射素子からの反射光を適度に発散させることができる。しかしながらこの角度偏差を大きくし過ぎると、得られるCC反射素子からの反射光が発散し過ぎて再帰反射性能が低下するので、これら三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも一つプリズム面角の大きさは、一般に89.5゜〜90.5゜、好ましくは89.7゜〜90.3゜の範囲内で、90.000゜から僅かに偏差するのが好ましい。
【0056】
本発明の三角錐型キューブコーナー型再帰反射素子(CC反射素子)は、多数のCC反射素子を集合させてCC再帰反射体として利用するが、多数のCC反射素子をシート状に加工して三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成し、目的の物体、例えば車輌、交通標識上に設置して使用してもよく、また、多数のCC反射素子を直接目的の物体上に形成して利用してもよく、その利用される形態に制限はないが、一般にシート状に加工されて利用される。
【0057】
次に本発明のCC反射素子が配置された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの好適な構造の一態様について、その断面図である図5を参照しながら説明する。
【0058】
図5において、lは本発明の三角錐型反射素子(R1、R2)が最密充填状に配置された反射素子層、2はCC反射素子を保持する保持体層であり、10は光の入射方向である。反射素子層(l)およぴ保持体層(2)は一体であるのが普通であるが、別々の層を積層しても構わない。本発明における再帰反射シートの使用目的、使用環境に応じて表面保護層(4)、観察者に情報を伝達したりシートの着色のための印刷層(5)、CC反射素子の裏面に水分が侵入するのを防止するための密封封入構造を達成するための結合材層(6)、結合材層(6)を支持する支持体層(7)、および、該再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層(8)と剥離材層、例えば剥離フィルム(9)とを設けることができる。
【0059】
表面保護層(4)には反射素子層(1)に用いたのと同じ樹脂を用いることが出来るが耐候性を向上する目的で表面保護層(4)中に紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などをそれぞれ単独あるいは組み合わせて配合してもよい。さらに、着色剤としての各種の有機顔科、無機顔科および染料などを含有させることが出来る。
【0060】
印刷層(5)は通常、表面保護層(4)と保持体層(2)の間、あるいは、表面保護層(4)の上やCC反射素子(l)の反射面上に設置することが出来、通常グラビア印刷、スクリーン印刷およびインクジェット印刷などの手段により設置可能である。
【0061】
上記反射素子層(1)および保持体層(2)を構成する材料としては本発明の一つの目的である柔軟性を満足するものであれば特に限定されるものではないが、光学的透明性、均一性のあるものが好ましい。本発明において使用し得る材料の例としては、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂及びポリウレタン樹脂などを例示できる。
【0062】
本発明における反射素子層(1)は内部全反射条件を満足する臨界角度を大きくする目的でキューブコーナー再帰反射素子背面に空気層(3)を設置するのが一般的である。使用条件下において水分の侵入による臨界角の低下および金属層の腐食などの不具合を防止するために、反射素子層(1)と支持体層(7)とは結合剤層(6)によって密封封入されるのが好ましい。この密封封入の方法としては米国特許第 3,190,178 号、第 4,025,159 号、日本公開実用新案昭和 50-28669 号等に示されている方法が採用できる。結合剤層(6)に用いる樹脂としては(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などがあげられ、接合の方法としては公知の熱融着性樹脂接合法、熱硬化性樹脂接合法、紫外線硬化性樹脂接合法、電子線硬化性樹脂接合法などが適宜採用可能である。
【0063】
本発明に用いる結合剤層(6)は支持体層(7)の全面にわたって塗布しうるし、再帰反射素子層との接合部分に印刷法などの方法により選択的に設置することも可能である。
【0064】
支持体層(7)を構成する材料の例としては再帰反射素子層を構成する樹脂や一般のフィルム成形可能な樹脂、繊維、布、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔または板をそれぞれ単独または複合して用いることができる。
【0065】
本発明の再帰反射シートを金属板、木板、ガラス板、プラスチック板などに貼付するために用いる接着層(8)および該接着剤のための剥離層(9)は、適宜、公知のものを選択することができる。
【0066】
本発明のCC反射素子が配置された三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートは、一般に、前記図5に示したCC反射素子を上、下反転させて、光線10が表面保護層(1)の上方から入射するように使用される。したがって、以上述べたようなCC反射素子の形状が、反転された凹形状として金属製のベルト上に最密充填状に配置されたキューブコーナー成形用金型を用い、この成形用金型に、後記するような柔軟で且つ光学的透明性、均一性に優れた適宜の樹脂シートを加熱押圧して、該金型の形状を樹脂シートに反転・転写させて製造することができる。
【0067】
上記のキューブコーナー成形用金型の代表的な製造方法については、例えば前記 Stamm 特許に詳細に記載されており、本発明においてもこの方法に準じた方法を採用することができる。
【0068】
具体的には、例えば、表面を平坦に研削した基材の上に、先端角度が67.5〜73.5゜程度の超硬質のバイト(例えばダイアモンドバイト、タングステンカーバイド製バイト等)を用いて、2つの方向(図2のy方向及びz方向)に、目的のCC反射素子の形状に即して、それぞれの方向の繰り返しピッチ及び溝の深さ(hy、hz)、並びに相互の交差角度を定めて、断面形状がV字型の平行溝を切削し、次いで、第3方向(x方向)を、先端角度が69.0〜72.0゜程度の同様の超硬質バイトを用いて、形成されているy方向溝とz方向溝との交点を通り、これら二方向の交差角度(ここでは鋭角の方を「交差角度」という)の補角を二等分するような繰り返しピッチ(図2の線xの繰り返しピッチ)でV字型平行溝を切削することにより、凸状の微小な三角錐が最密充填状に配置されたマイクロプリズム母型を作成する。
【0069】
本発明における好適な態様では、y方向及びz方向の繰り返しピッチ210.3〜214.2μm、溝の深さ(hy、hz)50〜500μm、相互の交差角度 59.1〜60.9°;そしてx方向の溝のピッチ208.6〜216.4μm、深さ(hx)38.5〜650μm程度の範囲である。
【0070】
これらx方向、y方向及びz方向の溝の切削に際しては、一般に、それぞれの溝の断面が二等辺三角形状となるように行うが、必要に応じて、これらの三方向の溝のうち少なくとも一つの方向の溝の断面が、二等辺三角形状から僅かにずれるように切削することも可能である。その具体的方法としては、先端の形状が左右非対称のバイトを用いて切削したり、左右対称のバイトを僅かに傾けて切削するなどの方法を例示することができる。このように溝の断面を二等辺三角形状から僅かにずらすことにより、得られるCC反射素子の三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)のそれぞれのプリズム面角のうち少なくとも一つのプリズム面角に、直角( 90°)から極く僅かに角度偏差を与えることができ、これによってCC反射素子からの反射光を完全な再帰反射の方向から適度に発散させることが可能となる。
【0071】
前記マイクロプリズム母型の作成に好適に用いることのできる基材としては、ビッカース硬さ(JlS Z 2244)が 300 以上、特に 380 以上の金属材料が好ましく、具体的には、例えば、アモルファス銅、電析ニッケル、アルミニウム等を挙げることができ、合金系材料としては、例えば、銅−亜鉛合金(真鍮)、銅−錫−亜鉛合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケルー亜鉛合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0072】
また前記基材としては、合成樹脂材料の使用も可能であり、切削加工時に軟化して高精度の切削が困難となるなどの不都合が生じにくい等の理由から、そのガラス転移点が 150℃以上、特に 200℃以上で且つロックウェル硬さ(JlS Z 2245)が 70 以上、特に 75 以上の合成樹脂からなる材料であるのが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルフオン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びセルローストリアセテート系樹脂等を挙げることができる。
【0073】
上記の如き合成樹脂からの平板の作成は、通常の樹脂成形法、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、溶液キャスト法等により行うことができ、必要に応じてさらに加熱処理、延伸処理等の処理を行うことができる。かくして作成される平板の平面には、上記の方法によって製造されるプリズム母型から電鋳金型を作成する際の導電処理及び/又は電鋳加工を容易にするため、予備導電処理を施すことができる。予備導電処理としては、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニツケル、セレン等の金属を蒸着する真空蒸着法、これらの金属を用いる陰極スパッタリング法、銅やニッケルを用いる無電解メッキ法等が挙げられる。また、合成樹脂にカーボンブラック等の導電性微粉末や有機金属塩等を配合し、平板それ自体に導電性をもたせるようにしてもよい。
【0074】
次に得られたマイクロプリズム母型は、その表面に電鋳加工が施されて金属被膜が形成される。この金属被膜を母型表面から取り外すことにより、本発明の三角錐型コーナーキューブ型再帰反射シートの成形に用いるための金属製金型を作成することができる。
【0075】
金属製マイクロプリズム母型の場合には、必要に応じてその表面を洗浄した後、直ちに電鋳加工を行うことができるが、合成樹脂製マイクロプリズム母型の場合には、電鋳加工を行うに先だって、先ず母型のプリズム表面に導電性を付与させるための導電処理を施す必要がある。この導電処理としては、例えば、銀鏡処理、無電解メッキ処理、真空蒸着処理、陰極スパッタリング処理などが採用可能である。
【0076】
上記の銀鏡処理としては、具体的には、前述の方法で形成した母型の表面をアルカリ洗剤などにより洗浄してその油成分などの汚れを除去した後、タンニン酸などの表面活性化剤を用いて活性化処理を行い、次いで速やかに硝酸銀溶液を用いて銀鏡化する方法が挙げられる。この銀鏡化は硝酸銀水溶液と還元剤(ブドウ糖やグリオキザール等)水溶液の二筒式ノズルガンを用いたスプレー法、硝酸銀水溶液と還元剤水溶液との混合液中に浸漬する浸漬法などが採用しうる。また、銀鏡被膜の厚さは電鋳時の導電性が満足される範囲で薄い方が好ましく、例えば、0.1μm以下の厚さを例示しうる。
【0077】
無電解メッキ処理には、銅やニッケルがなど用いられる。無電解ニッケルメッキ液においては、ニッケルの水可溶性金属塩として硫酸ニッケルや塩化ニッケルなどを用いることができ、これに錯化剤としてクエン酸塩やリンゴ酸塩を主成分とした溶液、及び還元剤として次亜リン酸ナトリウム、ホウ素化水素ナトリウム、アミンボランなどを加えたものがメッキ液として用いられる。
【0078】
真空蒸着処理は、銀鏡処理と同様に母型表面の洗浄を行った後、真空装置に入れ、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、セレン等の金属を加熱気化させて、冷却されている該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることによって行うことができる。また、陰極スパッター処理は、平滑で所望の金属箔を装着できる陰極板と被処理材科を載せるアルミニウム又は鉄など金属製の陽極台が内部に設けられている真空装置に、真空蒸着処理と同様に処理した母型を入れて陽極台上に置き、真空蒸着の場合に用いたと同様の金属の箔を陰極に取り付けて荷電してグロー放電を起こさせ、これにより発生する陽イオン流を陰極の金属箔に衝突させることにより金属原子又は微粒子を蒸発させ、これを該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることにより行うことができる。これらの方法において形成される導電被膜の厚さとしては、例えば、300Åの厚さが例示される。
【0079】
合成樹脂製プリズム母型に、電鋳加工に際して平滑で均一な電鋳層を形成するためには、上記の導電処理は該母型の全面にわたって均一に施す必要がある。導電処理が不均一な場合には、導雷性の悪い部分の電鋳層表面の平滑性が低下したり、又は電鋳層が形成されず欠損部分となってしまうなどの不具合を生じる可能性がある。
【0080】
この不具合を回避するためには、例えば、銀鏡処理の直前に処理面をアルコールなどの溶剤で処理することにより銀鏡液の濡れを改善する方法を採用しうるが、本発明において形成される合成樹脂製プリズム母型は凹部分が非常に深く鋭角なために、濡れの改善が不十分となりがちである。この凹形状に基づく導電被膜の不具合は蒸着処理などにおいても起こり易い。
【0081】
電鋳加工により得られる電鋳層の表面を均一なものとするために、しばしば活性化処理が行われる。この活性化処理としては、例えば、10重量%スルファミン酸水溶液に浸漬する方法等を採用することができる。
【0082】
銀鏡処理が行われた合成樹脂製の母型に電鋳加工を行った場合には、銀の層は電鋳層と一体化されて合成樹脂製の母型から容易に剥離されるが、無電解メッキや陰極スパッタリング処理でニッケルなどの導電被膜を形成した場合は、合成樹脂表面と該導電被膜との密着が良いために、電鋳加工後の電鋳層と合成樹脂層との剥離が困難となる場合がある。そのようなときには、電鋳加工に先だって導電被膜層の上にクロメート処理などの所謂剥離処理を行うのがよい。その場合、導電被膜層は剥離後に合成樹脂層上に残留する。
【0083】
表面に導電被膜層が形成された合成樹脂製プリズム母型は、このような各種の前処理を行った後、電鋳加工により該導電被膜層の上に電鋳層が形成される。また、金属製プリズム母型は、前記のように必要に応じてその表面を洗浄した後、該金属上に直接電鋳層が形成される。
【0084】
電鋳加工は、一般に、例えば、スルファミン酸ニッケル 60 重量%水溶液中、40℃、電流条件 10A/dm2 程度の条件下で行われる。電鋳層の形成速度としては、例えば、48 時間/mm 以下程度とすることにより均一な電鋳層が得られやすく、それ以上の形成速度においては表面の平滑性の欠如や電鋳層の中に欠損部分が生じるなどの不具合が起こりやすい。
【0085】
また、電鋳加工においては、金型の表面摩耗性の改善を目的として、コバルトなどの成分を加えたニッケル・コバルト合金電鋳を行うこともできる。コバルトを10〜15重量%加えることにより、得られる電鋳層のビッカース硬度Hvを 300〜400 にまで硬くすることが可能であるので、得られる電鋳金型を用いて合成樹脂を成形し、本発明の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを製造するに際して、該金型の耐久性を改善することが可能となる。
【0086】
このようにしてプリズム母型から作成した第l世代の電鋳金型は、さらに第2世代の電鋳金型を作成するのに用いる電鋳マスターとして、繰り返し用いることができる。従って、一つのプリズム母型から幾つもの電鋳金型を作成することが可能である。
【0087】
作成された複数個の電鋳金型は、精密に切断された後に、合成樹脂によるマイクロプリズムシートの成形を行うための最終的な金型の大きさまで組み合せ接合して用いることができる。この接合の方法としては、切断端面を単に突き合わせる方法や組み合わせた接合部分を、例えば電子ビーム溶接、YAGレーザー溶接、炭酸ガスレーザー溶接などの方法で溶接する方法などが採用可能である。
【0088】
組み合わされた電鋳金型は、合成樹脂成形用金型として合成樹脂の成形に用いられる。この合成樹脂成形の方法としては圧縮成形や射出成形を採用することができる。
【0089】
圧縮成形は、例えば、形成した薄肉状のニッケル電鋳金型、所定の厚さの合成樹脂シート及びクッション材として厚さ5mm 程度のシリコーンゴム製シートを、所定の温度に加熱された圧縮成形プレスに挿入した後、成形圧の 10〜20%の圧力下で 30 秒予熱を行った後、180〜250℃、10〜30kg/cm2 程度の条件下で約2分間加熱加圧することにより行うことができる。しかるのち、加圧状態のままで室温まで冷却して圧力を開放することにより、プリズム成形品を得ることが可能である。
【0090】
さらに、例えば、上記方法で形成した厚さ約 0.5mm の薄肉電鋳金型を、前記溶接法により接合してエンドレスベルト金型を作成し、このべルト金型を加熱ロールと冷却ロールとからなるl対のロール上に設置して回転させ、加熱ロール上にあるベルト金型に、溶融した合成樹脂をシート状の形状で供給し、l個以上のシリコーン製ロールで加圧成形を行った後、冷却ロール上でガラス転移点温度以下に冷却して、ベルト金型から引き剥がすことにより連続したシート状の製品を得ることが可能である。
【0091】
【実施例】
実施例
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、第1方向(第2図のy方向)と第2方向(第2図のz方向)を、先端角度が68.53゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向及び第2方向の繰り返しピッチが210.88μm、溝の深さ(hy、hz)が100μmであって、第1方向と第2方向との交差角度が58.76゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0092】
しかる後に、第3方向(x方向)を、先端角度が71.52゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチ(第1図の線xの繰り返しピッチ)が214.92μm、溝の深さ(hx)が100μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が60.62゜となるようにV字平行溝を切削して、真鍮板上に三角錐型反射素子の仮想面(Sx−Sx')からの高さ(hx)が100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは+1゜であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0093】
この真鍮製母型を用いて電鋳法により、材質がニッケルであって、形状が反転された凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成した。この成形用金型を用いて、厚さ200μmのポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスティックス株式会社製「ユーピロン E2000」)を成形温度200℃、成形圧力50kg/cm2の条件で圧縮成形した後に、加圧下で30℃まで冷却してから樹脂シートを取り出して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hx=hy=hz=100μmのキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0094】
実施例2
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(y方向)と第2方向(z方向)が68.53゜で、第3方向(x方向)が71.52゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが210.88μm、切削溝の深さ(hy、hz)が100μm、第1方向と第2方向との交差角度が58.76゜であり、また第3方向の繰り返しピッチが214.92μm、切削溝の深さ(hx)が110μmとなるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上に三角錐型反射素子の仮想面(Sy−Sy')からの高さ(hy)が100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは+1゜であった。またhmax/hminは110/100=1.100であった。
【0095】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hy=hz=100μm、hx=110μmのキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0096】
実施例3
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、第1方向と第2方向を、先端角度が72.53゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向及び第2方向の繰り返しピッチが213.5μm、溝の深さ(hy、hz)が100μmであって、第1方向と第2方向との交差角度が61.21゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0097】
しかる後に、第3方向(x方向)を、先端角度が69.52゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチ(第1図の線xの繰り返しピッチ)が209.67μm、溝の深さ(hx)が100μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が59.40゜となるようにV字平行溝を切削して、真鍮板上に三角錐型反射素子の仮想面(Sx−Sx')からの高さ(hx)が100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは-1゜であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0098】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hx=hy=hz=100μmのキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0099】
実施例4
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(y方向)と第2方向(z方向)が72.53゜で、第3方向(x方向)が69.52゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが213.50μm、切削溝の深さ(hy、hz)が100μm、第1方向と第2方向との交差角度が61.21゜であり、また第3方向の繰り返しピッチが209.67μm、切削溝の深さ(hx)が90μmとなるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上に三角錐型反射素子の仮想面(Sy−Sy')からの高さ(hy)が100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは−1゜であった。またhmax/hminは100/90=1.11であった。
【0100】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hy=hz=100μm、hx=90μmのキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0101】
比較例1
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(y方向)と第2方向(z方向)および第3方向(x方向)が70.53゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向および第3方向の繰り返しピッチが212.13μm、また第1方向と第2方向との交差角度が60.00゜となるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上にキューブコーナー再帰反射素子の高さが100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この反射素子の光学軸傾斜角θは0゜、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0102】
実施例1と同じ方法でポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0103】
比較例2
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(y方向)と第2方向(z方向)が62.53゜で、第3方向(x方向)が74.37゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが207.68μmで第3方向の繰り返しピッチが225.42μm、また第1方向と第2方向との交差角度が54.86゜となるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上に反射素子の高さが100μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。このキューブコーナー再帰反射素子の光学軸傾斜角θは+4゜、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0104】
実施例1と同じ方法でポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを作成した。
【0105】
表1に、上記実施例1〜4及び比較例1、2で作成した三角錐型再帰反射シートについて再帰反射係数を測定し、その値を示した〔反射輝度の単位は、いずれも(cd/ Lx・m2)〕。
【0106】
再帰反射係数の測定はJIS Z8714 再帰反射体―光学的特性―測定法に規定された測光的測定方法に基づいて行い、観測角と入射角の組合せを0.2°/5°、0.2°/30°として測定した。また測定試料の回転角については、第3方向のV溝の方向を0°と定め、測定試料をその方向から90°回転させた方向を回転角90°として測定を行った。
【0107】
上記実施例1〜4および比較例1,2で作成した三角錐型再帰反射シートについて入射角特性を見るために、観測角を0.2°と一定にし、入射角を5゜,10゜,15゜,20゜,25゜および30°と変えて各試料の再帰反射係数を測定し、図6に、入射角を横軸とし、縦軸には各入射角における再帰反射係数を入射角5゜における再帰反射係数で除した値を輝度変化率として示した。
【0108】
又上記試料について回転角特性を見るために、観測角を0.2°、入射角を5゜と一定にし、回転角を0°から180°と変えて各試料の再帰反射係数を測定し、図7に、回転角を横軸とし、縦軸には、各回転角における再帰反射係数をそれぞれの試料について最大値を示す再帰反射係数で除した値を輝度変化率として示した。
【0109】
下記表1、図6及び図7より明らかなように、本発明に基づく実施例1〜4に示した再帰反射シートはいずれも高い入射角においても再帰反射係数の低下は少なく、また回転角の変化に対しても再帰反射係数の変化が少ないのに対し、比較例1で作成した再帰反射シートは入射角15゜以上で著しい輝度低下が見られ、また比較例2で作成した反射シートは回転角90゜における輝度低下が顕著であった。
【0110】
【表1】
【0111】
【発明の効果】
本発明は、共通する一底面(Sx−Sx’)の上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(Sx−Sx’)上の1つの底辺(x)を共有して、相対峙して該底面(Sx−Sx’)上に最密充填状に配置されており、該底面(Sx−Sx’)は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの三角錐型反射素子は該底面(Sx−Sx’)上の共有する底辺(x、x、・・・・)を含み、かつ該底面(Sx−Sx’)に垂直な平面(Lx−Lx、Lx−Lx、・・・・)に対して実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となる方向に、該光学軸と該垂線のなす角度が0.5〜1.5度となるように傾いていることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射素子である。
【0112】
これにより本発明の再帰反射シートは、一般に三角錐型反射素子に望まれる基本的な光学特性である、高輝度性、即ち、該三角錐型反射素子正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度が優れることのみならず、入射角特性、回転角特性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1-A)は3つの底辺(x、y、z)が同一の底面上にあり、光学軸の傾きがプラス(+)となる方向に傾いている本発明のCC反射素子対の平面図であり、(1-B)は該CC反射素子対の断面図である。
【図2】3つの底辺(x)、底辺(y)及び底辺(z)のうち、底辺(x)が他の底辺(y)及び底辺(z)よりも深く形成され、光学軸の傾きがプラス(+)となる方向に傾いている本発明のCC反射素子対が配置されたCC再帰反射体の平面図である。
【図3】(3-A)は図2に示したCC再帰反射体における1組のCC反射素子対の平面図であり、(3-B)は該CC反射素子対の断面図である。
【図4】(4-A)は3つの底辺(x)、底辺(y)及び底辺(z)のうち、底辺(x)が他の底辺(y)及び底辺(z)よりも浅く形成され、光学軸の傾きがマイナス(−)となる方向に傾いている本発明の1組のCC反射素子対の平面図であり、(4-B)は該CC反射素子対の断面図である。
【図5】本発明のCC反射素子が配置された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの一態様の構造を示す断面図である。
【図6】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で作成した三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの入射角特性を示す図である。
【図7】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で作成した三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの回転角特性を示す図である。
【符号の説明】
1 反射素子層
2 保持体層
3 空気層
4 表面保護層
5 印刷層
6 結合材層
7 支持体層
8 接着剤層
9 剥離材層
Claims (11)
- 共通する一底面(Sx−Sx’)の上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(Sx−Sx’)上の1つの底辺(x)を共有して、相対峙して該底面(Sx−Sx’)上に最密充填状に配置されており、該底面(Sx−Sx’)は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、・・・・)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの三角錐型反射素子は該底面(Sx−Sx’)上の共有する底辺(x、x、・・・・)を含み、かつ該底面(Sx−Sx’)に垂直な平面(Lx−Lx、Lx−Lx、・・・・)に対して実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となる方向に、該光学軸と該垂線のなす角度が0.5〜1.5度となるように傾いていることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線に対して、該頂点を経由する光学軸が、(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となる方向に、0.6〜1.4゜傾いている請求項1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がプラス(+)となる方向に、0.6〜1.4゜傾いている請求項1又は2のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hxが、hy及びhzよりも実質的に大である請求項1〜3のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hyとhzが実質的に同一であって、hxがhy及びhzよりも実質的に大である請求項1〜4のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 該三角錐型反射素子の光学軸が、該光学軸と該底面(Sx−Sx’)との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)と、該素子の頂点(H1、H2)から該底面(Sx−Sx’)に下された垂線と該底面(Sx−Sx’)との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)との差(q−p)がマイナス(−)となる方向に、傾いており、かつ相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を含む底面(Sx−Sx’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhxとし、該三角錐型反射素子の他の一方の底辺(y、y、・・・・)を含む底面(Sy−Sy’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhyとし、かつ該三角錐型反射素子のさらに他の底辺(z、z、・・・・)を含む底面(Sz−Sz’)から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さをhzとした場合に、hyとhzが実質的に同一であって、hxがhy及びhzよりも実質的に小である、請求項1又は2のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 上記hxとhyとhzのいずれかの少なくとも2つが実質的に相違し、該hx、hy及びhzの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとした場合に、
1.03 < hmax/hmin < 1.3
である請求項1〜6のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。 - 上記hx、hy及びhzがいずれも50μm以上であり、かつ500μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 上記hx、hy及びhzがいずれも60〜200μmである請求項1〜7のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 該三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも1つのプリズム面角の大きさが89.5゜〜90.5゜の範囲内で、90.000゜から僅かに偏差している請求項1〜9のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子。
- 前記の相対峙する二つの三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が互いに底辺(x、x、・・・・)を共有しながら、最密充填状に配置されてシート状をなしている請求項1〜10のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
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