JP3975001B2 - 三角錐型キユーブコーナー再帰反射シート - Google Patents
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- G02B5/124—Reflex reflectors cube corner, trihedral or triple reflector type plural reflecting elements forming part of a unitary plate or sheet
Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。より詳しくは、本発明は新規な構造の三角錐型反射素子が最密充填状に配置された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車、オードバイ等の車両のナンバープレート類、衣料、救命具等の安全資材類、看板等のマーキング、可視光、レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下、三角錐型反射素子又は単に素子ともいう)によって構成される三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。
【0003】
さらに詳しくは、本発明は、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の一つの底辺を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、該底面(X−X')は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、....)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X')上の共有する底辺(x、x、....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(1)を満足する
【0004】
【数8】
【0005】
(但し、上記Rは請求項1で定義したとおりである。)
ことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。
【0006】
【従来の技術】
従来、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、その再帰反射性を利用した該シートは上記のごとき利用分野で広く利用されている。中でも三角錐型反射素子などのキューブコーナー型再帰反射素子の再帰反射原理を利用した再帰反射シートは、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつある。
【0007】
しかしながら従来公知の三角錐型再帰反射素子は、その反射原理から素子の持つ光学軸(三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を構成する互いに90゜の角度 で交差する3個の傾斜面(a面、b面、c面)から等しい距離にある該三角錐の頂点を通る軸)と入射光線とがなす角度(以下これを入射角という)が小さい角度の範囲では良好な再帰反射効率を示すが、入射角が大きくなるに連れて再帰反射効率は急激に低下する(すなわち入射角特性が劣る)。
【0008】
また三角錐型再帰反射素子の反射原理は、光がある特定の角度〔臨界角度(αc)〕以上で、その三角錐型反射素子を構成する透明媒体から空気中に透過しよ うとするときに、その界面で起こる内部全反射によるものである。この臨界角度(αc)は、三角錐型反射素子を構成する光透過性媒体の屈折率(n)及び空気の屈折率(n0)によって次のように表わされる。
【0009】
【数9】
【0010】
ここで、空気の屈折率(n0)はほぼ1に等しく一定と考えてよいから、光透過性媒体の屈折率(n)の値いが大きくなるほど臨界角度(αc)は小さくなり、光 はこの光透過性媒体と空気との界面で全反射し易くなる。光透過性媒体として合成樹脂を用いた場合一般に合成樹脂は、その屈折率が1.5程度のものが多いので、臨界角度(αc)は42゜程度と比較的大きな値になる。
【0011】
このような三角錐型反射素子を用いた再帰反射シートの表面に大きな入射角で入射した光は、該三角錐型反射素子の内部を通って該素子と空気との界面に到達するときには、該反射素子の傾斜面(反射面)に対して比較的小さな角度で到達することになり、この角度が上記臨界角度(αc)未満であるときには、この光はこの界面で全反射する ことなく該素子の背面に透過してしまう。このため三角錐型反射素子を用いる再帰反射シートは、一般に入射角特性が劣るという欠点があった。
【0012】
他方、三角錐型再帰反射素子は、該素子のほぼ全面にわたって光の入射した方向に光を反射させることができるために、マイクロ硝子球型反射素子のように球面収差などの原因によって反射光が広い角度に発散して反射することはない。しかしながら、再帰反射光のこの狭い発散角度は実用面においては、たとえば自動車のヘッドランプから発せられた光が交通標識で再帰反射したとき、その光軸から離れた位置にいる者、例えば運転者の目には達しにくいという不都合が生じ易い。このような不都合は、特に自動車と交通標識との距離が近接したときに、光線の入射軸と、運転者と反射点を結ぶ軸(観測軸)とがなす角度(観測角)が増大するためにますます増大する(すなわち観測角特性が劣る)。
【0013】
このようなキューブコーナー型再帰反射シート、特に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関しては、古くから多くの提案が知られており、種々の改良検討がなされている。
【0014】
例えば、ユンゲルセン(Jungersen)の米国特許第2,481,757号においては、薄いシートの上に様々な形の再帰反射素子を設置してなる再帰反射シート及びそれらシートの製造方法について述べられている。上記米国特許に例示されている三角錐型反射素子は、頂点を底面三角形の中心に位置した光学軸の傾斜のない三角錐型反射素子や、頂点の位置が底面三角形の中心に位置していない傾斜三角錐型反射素子が例示されており、接近してくる自動車に対して効率的に光を反射させることが記載されている。また、三角錐型反射素子の大きさとしては素子の深さとして1/10インチ(2,540μm)以内であることが記載されている。さらに、この米国特許のFig 15には、プラス(+)となる方向に傾斜している三角錐型反射素子対が図示されており、その光学軸の傾斜角(θ)は、図示されている三角錐型反射素子の底面三角形の長辺と短辺の長さの比率から求めると、約6.5゜であると推定される。
【0015】
しかしながら、上記 Jungersen の米国特許には、本発明に示されるような極 めて小さい三角錐型反射素子についての具体的な開示は存在せず、また、優れた観測角特性や入射角特性を与えるために、三角錐型反射素子がどのような大きさ及び光学軸傾斜を有することが必要かなどについては、何らの記載も示唆もされていない。
【0016】
また、スタム(Stamm)の米国特許第3,712,706号においては、薄いシート上に、底面の三角形の形状が正三角形で他の三面が直角二等辺三角形である、所謂、正規三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。この Stammの米国特許では、反射素子の反射面を、例えばアルミニウムなどの金属で蒸着処理を行い鏡面反射させて、入射角の増大に伴う再帰反射効率の低下という問題や、内部全反射条件未満の角度で入射した光が素子の界面を透過してしまい再帰反射しないという前記不具合の改善を行っている。
【0017】
しかしながら上記 Stamm の提案では、広角性の改善手段として鏡面反射原理 を採用しているために、得られる再帰反射シートの外観が暗くなったり、鏡面層に採用されているアルミニウム、銀などの金属が使用中に水や空気の浸入により酸化されてしまい、反射輝度の低下を起しがちであるなどの不具合を起しやすい。さらに、光学軸の傾斜により広角性を改善する手段に関しては全く記載されていない。
【0018】
さらに、ホープマン(Hoopman)のヨーロッパ特許第137,736(B1)号においては、薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。この特許に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の光学軸は、マイナス(−)方向に傾斜しており、その傾斜角は約7゜〜13゜であることが示されている。
【0019】
しかしながら、本発明者等が試みた光追跡法による反射輝度と光学軸傾斜との関係によれば、光学軸の傾斜角がマイナス方向に4゜を超えて大きくなるにつれて反射輝度は低下し、特に光学軸の傾きがマイナス方向に6゜を超えるような三角錐型反射素子においては、その低下量が特に著しいことがわかった。その理由は、光学軸の傾斜のない素子では、三角錐型反射素子を形成する三つのプリズム面であるa面、b面及びc面の面積が全て等しいのに対して、光学軸がマイナス方向に傾斜している素子では、その傾斜角が大きくなるに従って、a面及びb面の面積がc面の面積に比べて次第に小さくなるためであろうと考えられる。
【0020】
さらにまた、スチェッチ(Szczech)の米国特許第5,138,488号においても、同様に薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて開示されている。この米国特許においては、該三角錐型反射素子の光学軸は、お互いに向き合って対を成す二つの三角錐型反射素子が互いに共有する辺の方向に傾斜しており、その傾斜角は約2゜〜5゜であり、素子の大きさが25μmから100μmであることが規定されている。
【0021】
また、上記米国特許に対応するヨーロッパ特許第548,280(B1)号においては、 対をなす二つの三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の共通の辺を含みかつ共通平面に垂直な面と該素子の頂点との距離が、素子の光学軸の共通平面との交点と前記垂直な面との距離に等しくなく、即ち、光学軸の傾きの方向がプラス(+)又はマイナス(−)の何れでもよく、その傾斜角は約2゜〜5゜であり、かつ素子の大きさが25μmから100μmであ ることが記載されている。
【0022】
上記の様に、Szczech のヨーロッパ特許第548,280(B1)号においては、光学軸 の傾きがプラス(+)及びマイナス(−)の両方を含む約2〜5゜の範囲となっ ている。しかしながら、この Szczech の発明の範囲の光学軸の傾斜量では、十分な広角性の改善、特に入射角特性の改善が得られない。
【0023】
以上述べた従来公知の Jungersen の米国特許第2,481,757号; Stamm の米国 特許第3,712,706号;Hoopman のヨーロッパ特許第137,736(B1)号;Szczech の米国特許第5,138,488号、ヨーロッパ特許第548,280(B1)号等の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、いずれも、光の入射及び反射の中核をなす多数の三角錐型反射素子の底面が同一平面上にある点で共通しており、かように底面が同一平面にある三角錐型反射素子で構成された再帰反射シートはいずれも入射角特性が劣る、すなわち光線の該三角錐型反射素子に対する入射角が増大すると、再帰反射輝度が急激に減少するという欠点を有している。
【0024】
【発明が解決すべき課題】
一般に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに望まれる基本的な光学特性として、高輝度性、即ち、該シート正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度の高さ(大きさ)のみならず、広角性が要求され、さらに広角性に関しては、観測角特性、入射角特性、回転角特性の三性能が要求される。
【0025】
前述したとおり、従来公知の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子から構成された再帰反射シートは、いずれも、入射角特性が劣りかつ概して観測角特性も満足すべきものではなかったのに対して、本発明者らは、光追跡シュミレーションにより、互いに対称の位置に設けられている該三角錐型反射素子が共有する多数の底辺(x、x、・・・・)を含む平面(X−X')から該素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h')を、該三角錐型反射素子の前記の共有する一底辺を一辺として有するc面と実質的に直角に交差する2面(a面、b面)の底辺(z、w)を包含する面(Z−Z')から該反射素子の頂点までの高さ(h)より実質的に大とすることにより、かような三角錐型反射素子から構成された再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見し、特許出願を行った。(特願平8−295907号)
さらに本発明者らは、引き続き光追跡シュミレーションによる検討を継続して、相対峙する二つの該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、・・・・)を一辺として有する傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該第一の平面(X−X')から、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h')が、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の第二の底面(Z−Z')から、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h )よりも実質的に小となるようにすることによっても、このような三角錐型反射素子から構成された再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見して、特許出願を行った。(特願平9−330836号)
本発明者らは、さらに検討を継続した結果、上記2つの特許出願における改善は、従来光学軸の傾斜に伴って必然的に生じていた、傾斜面(c1面、c2面)の大きさが他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)に比較して相対的に拡大又は縮小するという問題点を、極力小さくすることによって達成されたことを検討した結果、該素子対の相対峙する傾斜面c1及びc2の共通の底辺(x、x、・・・・)を含む該底面(X−X')から三角錐型反射素子対の頂点(H1、H2)からまでの高さ(h)と、該素子対の実質的に同一形状の二つの傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を含む1つの水平の面(Z−Z')から、素子対の頂点(H1、H2)までの高さ(h0)との比が、光学軸の傾斜角θと特定の関係式により表される特定の範囲内である必要があることを見いだし、本発明を完成した。
【0026】
【課題を解決するための手段】
従って本発明は、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の一つの底辺を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、該底面(X−X')は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、....)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X')上の共有する底辺(x、x、....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(1)を満足する
【0027】
【数10】
【0028】
(但し、上記Rは請求項1で定義したとおりである。)
ことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。
【0029】
本発明を説明する前に、先ず従来公知の技術について説明する。
【0030】
図1〜図4には、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子と対比するために、従来技術に基づく三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を説明する平面図と断面図を示した。
【0031】
図1及び図3においては、共通する一平面上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに一つの底辺(x、x、....)を共有し、かつ多数の該再帰反射素子の該共有する底辺(x、x、....)を含む底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y')に対して実質的に対称となるように向き合った一対の三角錐型反射素子として、該素子の底面が該共通する一平面(X−X')上に最密充填状に配置されている。
【0032】
また、図2及び図4には、それぞれ図1及び図3に示されている素子群の断面線(L−L')で切断した 該三角錐型反射素子の断面図を示す。これら素子対の有している光学軸は、互いに正反対の方向に傾いている傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射シートであり、該素子の頂点(H)から底面(X−X')に下された垂線と該底面(X−X')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離を(p)とし、光学軸と該底面との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離をまでの距離を(q)とするとき、その差(q−p)が図2ではプラス(+)となるような方向に、また図4ではマイナス(−)となるような方向に、該光学軸が前記垂直な平面(Y−Y')に対して傾いている。
【0033】
これに対して図5と図6には、光学軸がプラス(+)となるような方向に前記垂直な平面(Y−Y')に対して傾いている、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を説明する平面図と断面図が示されている。
【0034】
図5においては、互いに実質的に直角に交差する3つの傾斜面を有し、共通する一底面(X−X')上に突出しているプラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の1つの底辺(x、x、....)を共有して、相対峙して1つの基盤上に最密充填状に配置されていることが示されている。
【0035】
また、図6には、図5に示されている素子群の断面線(L−L')で切断した本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子の断面図を示す。図5に示されているように、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子は、底面(X− X')上の一つの底辺(x)を互いに共有して相対峙している5角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺として、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面及びa2面、b2面)からなっている。
【0036】
本発明の一態様であるプラス傾斜の三角錐型反射素子は、図5に示されているとおり、底面(X−X')上の一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、それぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一の形状の素子対をなして、繰り返しのパターンで1つの基盤上に最密充填状に配置されているために、該共有の底辺(x)は一つの連続した直線を構成している。また、隣接した他の三角錐型反射素子対の群が共有する多数の底辺(x)は、前記の多数の底辺(x)を構成する直線と平行で、等しい繰り返しピッチをもつ平行直線群を形成する。
【0037】
従って、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子の該傾斜面(c1面、c2面)は、底辺(x)を共有して相対峙しており、底辺(x)は一つの連続した直線を構成しているために、c1面は一つの連続した平面を形成し、同様にc2面も連続した平面を形成している。さらに、図5のx線に沿って見られる四角形状の傾斜面(a1面、b1面と2つのc2面にはさまれた小さな四角形状の傾斜面)も、同様にc1面又はc2面により形成されたx線上の平面上に位置している。この結果、上記c1面又はc2面と上記小さな四角形状をもつ傾斜面により形成される面は、底辺が上記連続した直線上にあり、断面がV字状の溝を形成しているc面と同じ傾斜面をなす。
【0038】
なお本明細書における「実質的」なる用語は、極く僅かな相違をも包含する表現であり、例えば「実質的に対称」及び「実質的に同一の形状」とは、対応する辺及び/又は角が完全に同一であるものと共に、その辺又は角の大きさが、極く僅かに、相違する場合を包含する表現である。
【0039】
本発明の理解を容易にするために、図5において、
【0040】
【化1】
【0041】
として示されている一対のプラス傾斜の三角錐型反射素子の拡大平面図を図7として、またその図7においてL−L'線で示した矢印方向からの側面図を図8として示した。
【0042】
図7及び図8について説明すると、本発明の一対のプラス傾斜の三角錐型反射素子の右側の素子R1(すなわち前記図5の
【0043】
【化2】
【0044】
で表わされる素子)のc1面は、点H1−D1−A−B−E1で囲まれる五角形状の面であり、a1面は点H1−J1−F1−D1で囲まれる四角形状の面であり、またb1面は点H1−J1−G1−E1で囲まれる四角形状の面であり、a1面とb1面は実質的に同一形状であり、c1面、a1面及びb1面は互いに実質的に直角に交差している。また、面A−B−K1で表わされる右側の三角錐型反射素子R1の底面は、共通の底面(X−X')の一部をなす。
【0045】
図7及び図8において、R2で表わされる左側の三角錐型反射素子は、図5において
【0046】
【化3】
【0047】
で表わされる一対の前記素子の左側の三角錐型反射素子に該当し、その底面はA−B−K2で表わされ、底面がA−B−K2で表わされる左側の三角錐型反射素子R2は、底面がA−B−K1で表わされる右側の反射素子R1と同一形状であって、両素子が共有する底辺(A−B)(これは図5の共通する底辺x上にある)の左右に位置し、左側の素子R2は、右側の素子R1が、両者の共有する底辺(A−B)の中点(O)を中心として底面(X−X')上を180゜左側に回転した形となっている。
【0048】
従って、図7において左側の素子R2の点H2−D2−B−A−E2で表わされるc2面、点H2−J2−F2−D2で表わされるa2面及び点H2 −J2−G2−E2で表わされるb2面は、右側の素子R1の前記c1面、a1 面及びb1面とそれぞれ実質的に同一の形状をなしており、c2面、a2面及びb2面も互いに実質的に直角(90°)に交差している。
【0049】
それ故、図7の線L−L'方向からの側面図である図8において、点B−H1−J1−K1で表わされる右側の素子R1の側面図と、点B−H2− J2−K2で表わされる左側の素子R2の側面図とは、実質的に左右対称で同一形状をなしている。
【0050】
図8に示したように、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子(R1、R2)の頂点は、それぞれH1及びH2で表わされており、頂点(H1、H2)の共通する底辺xを含む底面(X−X')からの高さはhで表わされる。
【0051】
この高さhは、図7及び図8から明らかなように、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の相対峙するc1面とc2面がなすV字状の谷の、該素子の頂点H1及びH2を含む面(仮想面)からの深さに該当する。
【0052】
また、図7と図8から明瞭に理解できるように、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の四角形状の斜面a1、b1及びa2、b2は全て実質的に同一形状で、素子R1の斜面a1、b1の底辺F1−D1及びG1−E1及び素子R2の斜面a2面、b2面の底辺F2−D2及びG2−E2は、それぞれ、同一平面をなす水平の面(Z−Z')上にあり、この水平の面Z−Z'から該素子R1及びR2の頂点H1及びH2を含む面(仮想面)までの高さは第8図においてh0で示されている。
【0053】
従って、本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の傾斜面a1面、b1面及びa2面、b2面がそれぞれ隣接する他の素子の対応する斜面となす谷の、頂点H1、H2を含む面からの深さ(その谷の底部は前記傾斜面a1面、b1面及びa2面、b2面の底辺である)はh0で表わされる。
【0054】
本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子は、図5及び図7に示すとおり、該素子R1及びR2のa1面、a2面の底辺は共通の線z上にあり、またb1面、b2面の底辺は共通の線w上に位置し、そしてc1面、c2面の底辺は共通の線x上に位置する。
【0055】
また図5〜図8に示すとおり、本発明の多数のプラス傾斜の三角錐型反射素子は、既に説明したとおり、多数の該素子の対応する2つのc面が共有する底辺(x、x、....)を共有して、相対峙して、1つの基盤上に最密充填状に配置されている。
【0056】
本発明のプラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、図5〜図8を参照して説明すると、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の一つの底辺を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、該底面(X−X')は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、....)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X')上の共有する底辺(x、x、....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の五角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表した場合に、(q−p)がプラス(+)となるような方向に該光学軸が傾き、かつ上記hとh0は実質的に同一でないことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0057】
次に、光学軸がマイナス(−)となるような方向に前記垂直な平面(Y−Y')に対して傾いている、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子について説明する。
【0058】
図9と図10には、本発明のマイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を説明する平面図と断面図が示されている。図9においては、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面上の一つの底辺(x)を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されていることが示されている。また、図10には、図9に示されている素子群の断面線(L−L')で切断した本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子の断面図を示す。図9に示されているように、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子は、該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の三角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有してこれを一辺とする、前記傾斜面(c1 面、c2面)と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の二つの傾斜面 (a1面、b1面;a2面、b2面)からなっている。
【0059】
本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子は、図9に示されているとおり、底面(X−X')上の一つの底辺(x、x、....)を共有して、相対峙して、それぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一の形状の素子対をなして、繰り返しのパターンで最密充填状に配置されているが、該底面(X−X')が共通の平面である水平の面(Z−Z')よりも実質的に上方に位置しているため、該共有する底辺(x、x、....)は一つの直線上にはあるものの連続した直線を構成することはなく、一定間隔をおいて断続した破線状となっている。また、隣接した他の三角錐型反射素子対の群が共有する多数の底辺(x、x、....)は、前記の多数の底辺(x、x、....)を構成する破線状の直線と平行で、等しい繰り返しピッチをもつ破線状の平行直線群を形成する。
【0060】
従って、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子の該傾斜面(c1面、c2面)は、底辺(x、x、....)を共有して相対峙しているが、底辺(x、x、....)は、上記のとおり連続した直線を構成することはなく、一定間隔をおいた破線状態となっており、またc1面は一つの仮想平面上にはあるが、連続した平面を形成することはなく、一定間隔をおいて同一パターンで並ぶ、それぞれ独立した実質的に二等辺三角形状の列をなしており、c2面も同様である。c1面の列を包含する仮想平面とc2面の列を包含する仮想平面とは、底辺(x、x、・・・・)において交差して断面がV字状の溝を形成して、相対峙している。
【0061】
本発明の理解を容易にするために、図9において、
【0062】
【化4】
【0063】
として示されている一対のマイナス傾斜の三角錐型反射素子の拡大平面図を図11として示し、また図11においてL−L'線で示した矢印方向からの側面図を図12として示した。
【0064】
図11及び図12について説明すると、本発明の一対のマイナス傾斜の三角錐型反射素子の右側の素子R1(すなわち前記図9の
【0065】
【化5】
【0066】
で表わされる素子)のc1面は、点H1−D−Eで囲まれる三角形の面であり、a1面は点H1−F1−A−Dで囲まれる四角形状の面であり、またb1面は点H1− F1−B−Eで囲まれる四角形状の面であり、a1面とb1面は実質的に同一形状 であり、c1面、a1面及びb1面は互いに実質的に直角に交差している。また、 面A−B−F1で表わされる右側の三角錐型反射素子R1の底面は、共通面である前記水平の面(Z−Z')の一部をなす。
【0067】
図12において、R2で表わされる左側の三角錐型反射素子は、図9において
【0068】
【化6】
【0069】
で表わされる一対の前記素子の左側の三角錐型反射素子に該当し、その底面はA−B−F2で表わされ、底面がA−B−F2で表わされる左側の三角錐型反射素子R2は、底面がA−B−F1で表わされる右側の反射素子R1と実質的に同一形状 であって、両素子のc1面及びc2面が共有する底辺(D−E)(これは図3における共有の底辺x上にある)の左右に位置し、左側の素子R2は、右側の素子R1が、両者の共有する底辺(D−E)の中点(O)を中心として底面X−X'上を180゜左側に回転した形となっている。
【0070】
従って、図11において左側の素子R2の点H2−D−Eで表わされるc2面、点H2−F2−A−Dで表わされるb2面及び点H2−F2−B−Eで表わされるa2面は、右側の素子R1の前記c1面、a1面及びb1面とそれぞれ実質的に同一の形状をなしており、c2面、a2面及びb2面も互いに実質的に直角に交差している。
【0071】
それ故、図11の線L−L'方向からの側面図である図12において、点B−E−H1−F1で表わされる右側の素子R1の側面と、点B−E−H2−F2で表わさ れる左側の素子R2の側面とは、実質的に左右対称で同一形状をなしている。
【0072】
図12に示したように、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子(R1、R2)の頂点は、それぞれH1及びH2で表わされており、頂点(H1、H2)の底面(X−X')からの高さはhで表わされる。
【0073】
また、図11と図12から明瞭に理解できるように、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の四角形状の斜面a1面、b1面及びa2面、b2面はすべて実質的に同一形状で、素子R1の斜面a1面、b1面の底辺F1−A及びF1−B及び素子R2の斜面a2面、b2面の底辺F2−B及びF2−Aは、それぞれ、共通の底面である水平の面(Z−Z')上にある。
【0074】
従って、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の傾斜面a1面、b1面及びa2面、b2面がそれぞれ隣接する他の素子の対応する斜面となす谷から、頂点H1、 H2までの高さはh0で表わされる。
【0075】
さらに、図11及び図12から明らかなように、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子R1及びR2の相対峙するc1面とc2面とが共有する底辺D−Eは、底面(X−X')上にあり、この底面(X−X')から該素子R1及びR2の頂点H1及びH2までの高さは、図12においてhで示されている。そしてこの高さhは、これらc1面とc2面がなすV字状の谷の、該素子の頂点H1、H2からの深さに該当する。
【0076】
本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子においては、図9及び図11に示すとおり、該素子R1及びR2のa1面、a2面の底辺は共通の線z上にあり、またb1面、b2面の底辺は共通の線w上に位置し、そしてc1面、c2面の底辺は共通の線x上に位置する。
【0077】
また図9〜図12に示すとおり、本発明の多数のマイナス傾斜の三角錐型反射素子は、既に説明したとおり、多数の該素子の対応する2つのc面が底辺(x、x、....)を共有して、相対峙して1つの基盤上に最密充填状に配置されている。
【0078】
本発明のマイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、図9〜図12を参照して説明すると、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の一つの底辺を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、該底面(X−X')は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、....)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X')上の共有する底辺(x、x、....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の三角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表した場合に、(q−p)がマイナス(−)となるような方向に該光学軸が傾き、かつ上記hとh0は実質的に同一でないことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0079】
本発明者らは、以上述べたプラス(+)又は(−)に傾斜した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子から構成された再帰反射シートについて、その傾斜角度(θ)、及び素子の頂点(H1、H2)から上記水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)と上記底面(X−X')までの高さ(h)との関係を特定して、前述のとおり特許出願を行った。(特願平8−295907号及び特願平9−330836号)
本発明者らは、さらに検討を継続した結果、これら2つの特許出願における改善だけでは、必ずしも十分ではなく、これらの出願において着目した、光学軸の傾斜に伴って必然的に生じる、傾斜面(c1面、c2面)の大きさが他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)に比較して、相対的に拡大し又は縮小する程度を極力小さくするという着想をさらに発展させて、本発明に到達した。
【0080】
しかしながら、以上の発想に基づき、本発明者らは、三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、これらの2つの素子の相対峙する2つの傾斜面(c1面、c2面)の共通の底辺(x、x、....)を含む底面(X−X')までの高さを(h)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)との比(h/h0)が、以下に述べるように、光学軸の傾斜角θと特定の関係式を満足する場合に、特に入射角特性が改善された、優れた反射輝度を有する三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが得られることが分った。
【0081】
本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記の高さの比(h/h0)が光学軸の傾斜角(θ)と、下記式(1)の関係を満足することを特徴とする。
【0082】
【数11】
【0083】
(但し、Rは下記式で定義したとおりの数値である。)
【0084】
【数12】
【0085】
(但し、上記(q−p)の値がマイナス(−)の時、θはマイナス(−)の値を取るものとする。)
前記式(1)において、(h/h0)の値が0.5R未満と小さすぎては、c面と、a面及びb面との面積のアンバランスの改善が不十分となり、得られる再帰反射シートの正面輝度が低く、また入射角特性の改善も不十分なものとなるので好ましくない。一方、(h/h0)の値が1.5Rを超えて大きすぎては、c面と、a面及びb面との面積のアンバランスの改善の意図が行き過ぎて、プラス傾斜の場合にはc面が、a面及びb面に比べて過大になり、またマイナス傾斜の場合にはc面が、a面及びb面に比べて過小になって、0.5R未満の場合と同様に、得られる再帰反射シートの正面輝度が低く、また入射角特性の改善も不十分なものとなるので好ましくない。
【0086】
前記式(1)において、(h/h0)は、好ましくは、
【0087】
【数13】
【0088】
より好ましくは、
【0089】
【数14】
【0090】
特に好ましくは、
【0091】
【数15】
【0092】
である。なお上記式(2)〜(4)におけるRは、前記式(1)(または請求項1)で定義したとおりのものである。
【0093】
また本発明者らは、(h−h0)/h0の値、すなわち、三角錐型反射素子対の頂点(H1、H2)から水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)と底面(X−X')までの高さ(h)との差の、該高さ(h0)に対する割合、言い換えれば、深溝又は浅溝の度合いと傾斜角(θ)との関係が次式(5)を満足することがさらに好ましく、次式(6)を満足することが特に好ましいことを知った。
【0094】
【数16】
【0095】
【数17】
【0096】
〔但し、式(5)及び(6)において、Dは下記式で定義したとおりの数値である。〕
【0097】
【数18】
【0098】
本発明のプラス又はマイナスに傾斜した三角錐型キューブコーナー再帰反射シートにおいては、三角錐型反射素子対の頂点(H1、H2)から水平の面(Z−Z')に下された垂線と該水平の面(Z−Z')との交点(P)から、該素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該水平の面(Z−Z')との交点(Q)から、該素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離(q)との差(q−p)がプラス又はマイナスとなるような方向に該光学軸が前記垂直な平面(Y−Y')と3〜15゜の角度をなすように傾いているキューブコーナー型反射シートが好適である。
【0099】
本発明においては、図8及び図12を参照して説明すると、例えば三角錐型反射素子R1の頂点H1を通る光学軸が、頂点H1から上記水平の面(Z−Z')に対する垂線(H1−P)〔これは前記の底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y')と考えてもよい〕に対する角度(θ)を光学軸傾斜角といい、前記の(q−p)がプラス又はマイナスとなる方向に光学軸傾斜角(θ)を4゜〜12゜の角度をなすように傾いているキューブコーナー型再帰反射シート、特に上記の(q−p)がプラス又はマイナスとなるような方向に該光学軸が該垂直な平面(Y−Y')と5〜10゜の角度をなすように傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが好適である。
【0100】
本発明のプラス傾斜の三角錐型反射素子においては、該反射素子の頂点(H1、H2)から素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む底面(X−X')までの高さ(h)は、図8より明らかなように、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から底辺(z、w)を包含する実質的に水平な面(Z−Z')までの高さ(h0)よりも実質的に大であるために、種々の光学的特性の改善が得られる。
【0101】
この改善は、hがh0よりも実質的に大であるために、hとh0が等しい従来技術のc1の傾斜面に比べて、c1面の面積を大きくすることができるために達成することができる。特に、c1面に対して垂直に近い角度で入射した光、言い換えれば、大きな入射角の場合には、c1面の面積が増大されているために、入射角特性の改善が顕著である。
【0102】
一方、本発明のマイナス傾斜の三角錐型反射素子においては、該反射素子の頂点(H1、H2)から素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む底面(X−X')までの高さ(h)は、図12より明らかなように、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から底辺(z、w)を包含する実質的に水平な面(Z−Z')までの高さ(h0)よりも実質的に小であるために、種々の光学的特性の改善が得られる。
【0103】
この改善は、hがh0よりも実質的に小であるために、hとh0が等しい従来技術のc1の傾斜面に比べて、c1面の面積を小さくすることができるために、言い換えれば、相対的にa1面及びb1面の面積を大きくすることができるために達成することができる。特に、a1面及びb1面に対して垂直に近い角度で入射した光、言い換えれば、大きな入射角の場合には、a1面及びb1面の面積が増大されているために、入射角特性の改善が顕著である。
【0104】
本発明においては、上記のように(q−p)がプラス又はマイナスとなるように光学軸が傾斜していることによって入射角特性が改善される。従来技術による光学軸の傾斜した三角錐型反射素子においては、光学軸の傾斜のない正規三角錐型反射素子が、前述した(q−p)がプラス又はマイナスとなるようにその素子の持つ光学軸を傾斜させることにより、共有の底辺(x)をもつ傾斜面(c1面、c2面)の面積が、傾斜前の面積に比べてプラス傾斜では小さくなり、またマイナス傾斜では大きくなって、それぞれ他の2つの面a1面及びb1面との大きさの違いが顕著になり、三面反射して再帰反射する確率が低下するという欠点がある。入射した光線が三つの傾斜側面で反射して効率的に再帰反射するためには、前記のとおり三つの傾斜面の面積が等しいことが好ましい。しかしながら、従来技術における傾斜三角錐型反射素子では、傾斜角度の増大に伴い共有の底辺ももつ傾斜面(c1面、c2面)の面積が他の2面(a1面、b1面及びa2 面、b2面)に比べてその大きさの違いが顕著となるために、上記で説明した三面反射して再帰反射する確率が低下してしまう。この為に、正面から入射した光の再帰反射性能(正面反射輝度)の低下のみならず、入射角が増大した時の再帰反射性能(入射角特性)も低下する。
【0105】
(q−p)がプラス(+)となるように光学軸が傾斜すると、三角錐型反射素子の傾斜面(c1面、c2面)の面積は、光学軸が傾斜する前の面積に比較すると、光学軸傾斜角(θ)が+3゜の場合は約91%、+4゜の場合には約86%、+12゜の場合には約62%に減少し、また(q−p)がマイナス(−)となるように光学軸が傾斜すると、三角錐型反射素子の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の面積は、光学軸が傾斜する前の面積に比較すると、光学軸傾斜角(θ)が−3゜の場合は約90%、−4゜の場合には約87%、−12゜の場合には約65%に減少し、いずれの場合もこのような面積減少に伴い、正面反射輝度と入射角特性は低下することになる。
【0106】
これに対して、本発明におけるプラス傾斜の三角錐型反射素子においては、頂点(H1、H2)から底面(X−X')までの高さ(h)が、水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)よりも実質的に大であるように設計されているために、傾斜面(c1面、c2面)の面積を従来技術で形成された三角錐型反射素子の傾斜側面に比べて、大きくすることが可能である。一方、本発明におけるマイナス傾斜の三角錐型反射素子においては、頂点(H1、H2)から底面(X−X')までの高さ(h)が、水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)よりも実質的に小であるように設計されているために、二つの傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の面積を従来技術で形成された三角錐型反射素子の傾斜側面に比べて、大きくすることが可能である。
【0107】
このように、本発明による三角錐型反射素子は、特に、光学軸傾斜角(θ)を(q−p)がマイナス(−)又はプラス(+)となる方向に3゜〜15゜傾斜させることによって生ずる、三角錐型反射素子のa面及びb面とc面との面積のアンバランスによる輝度低下という欠点を改善することができる。
【0108】
以上の理由により、本発明においては、光学軸傾斜角(θ)を(q−p)がマイナス(−)又はプラス(+)となる方向に4゜〜12゜、特に5〜10゜となるように光学軸を傾斜させるのが好ましい。なお、光学軸傾斜角(θ)がマイナス(−)又はプラス(+)となる方向に15゜を超えるような角度で傾いた三角錐型反射素子においては、素子の変形が過大となり、素子のどの方向から光が入るか(回転角)により反射輝度が大きく依存するために、回転角特性が低下する傾向がある。
【0109】
本発明による三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から水平の面(Z−Z')までの高さ(h0)は、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは60〜200μmが推奨されうる。高さ(h0)が50μm未満の場合は、素子の大きさが小さくなり過ぎるために、素子の底面開口面積により定まる回折効果により、再帰反射光の発散が過大となり、正面輝度特性が低下する傾向にある。また、高さ(h0)が400μmを超える場合には、シートの厚さが過大となり、柔軟なシートが得られにくい難点がある。
【0110】
また本発明における三角錐型反射素子のプリズム面である三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される三つのプリズム面角は、実質的に直角となるが、必ずしも厳密な意味で直角(90゜)でなくてもよく、必要に応じて直角から極く僅かに角度偏差を与えるようにすることも可能である。該プリズム面角に極く僅かに角度偏差を与えることによって、得られる三角錐型反射素子からの反射光を適度に発散させることができる。しかしながらこの角度偏差を大きくし過ぎると、得られる三角錐型反射素子からの反射光が発散し過ぎて再帰反射性能が低下するので、これら三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも一つプリズム面角の大きさは、一般に89.5゜〜90.5゜、好ましくは89.7゜〜90.3゜の範囲内となるようにするのがよい。
【0111】
本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、一般に、以上述べたような三角錐型反射素子の形状が、反転された凹形状として金属製のベルト上に最密充填状に配置されたキューブコーナー成形用金型を用い、この成形用金型に、後記するような柔軟で且つ光学的透明性、均一性に優れた適宜の樹脂シートを加熱押圧して、該金型の形状を樹脂シートに反転・転写させて製造することができる。
【0112】
上記のキューブコーナー成形用金型の代表的な製造方法については、例えば前記 Stamm の米国特許第3,712,706号に詳細に記載されており、本発明においてもこの方法に準じた方法を採用することができる。
【0113】
具体的には、表面を平坦に研削した基材の上に、例えば、プラス傾斜の場合には先端角度が73.4〜81.0゜程度、マイナス傾斜の場合には先端角度が66.4〜53.7゜程度の超硬質のバイト(例えばダイアモンドバイト、タングステンカーバイド製バイト等)を用いて、2つの方向(図3のz方向及びw方向)に、目的の三角錐型反射素子の形状に即して、それぞれの方向の繰り返しピッチ及び溝の深さ(h0)、並びに相互の交差角度を定めて、その溝の深さ(h0)が同じで断面形状がV字型の平行溝を切削し、次いで、第3方向(x方向)を、例えば、プラス傾斜の場合には先端角度が64.5〜46.5゜程度、マイナス傾斜の場合には先端角度が78.5〜100.5゜程度の同様の超硬質バイトを用いて、形成されているz方向溝とw方向溝との交点を通り、これら二方向の交差角度(ここでは鋭角の方を「交差角度」という)の補角を二等分するような繰り返しピッチ(図3の線xの繰り返しピッチ)でV字型平行溝を切削することにより、凸状の微小な三角錐が最密充填状に配置されたマイクロプリズム母型を作成する。本発明においてはこの時、x方向溝の深さ(h)は、プラス傾斜の場合z方向及びw方向の溝の深さ(h0)よりも深くなるように、またマイナス傾斜の場合z方向及びw方向の溝の深さ(h0)よりも浅くなるように加減して切削する。
【0114】
本発明のプラス傾斜の反射素子の好適な態様では、z方向及びw方向の繰り返しピッチ100〜810μm、溝の深さ(h0)50〜400μm、相互の交差角度43〜55゜;そしてx方向溝の深さ(h)75〜600μm程度の範囲である。また、マイナス傾斜の反射素子の好適な態様では、z方向及びw方向の繰り返しピッチ104〜992μm、溝の深さ(h0)50〜400μm、相互の交差角度64.7〜75.1゜;そしてx方向溝の深さ(h)33〜380μm程度の範囲である。
【0115】
これらx方向、w方向及びz方向の溝の切削に際しては、一般に、それぞれの溝の断面が二等辺三角形状となるように行うが、必要に応じて、これらの三方向の溝のうち少なくとも一つの方向の溝の断面が、二等辺三角形状から僅かにずれるように切削することも可能である。その具体的方法としては、先端の形状が左右非対称のバイトを用いて切削したり、左右対称のバイトを僅かに傾けて切削するなどの方法を例示することができる。このように溝の断面を二等辺三角形状から僅かにずらすことにより、得られる三角錐型反射素子の三つの傾斜面(a1面 、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)のそれぞれのプリズム面角のう ち少なくとも一つのプリズム面角に、直角(90゜)から極く僅かに角度偏差を与 えることができ、これによって三角錐型反射素子からの反射光を完全な再帰反射の方向から適度に発散させることが可能となる。
【0116】
前記マイクロプリズム母型の作成に好適に用いることのできる基材としては、ビッカース硬さ(JIS Z 2244)が350以上、特に380以上の金属材料が好ましく、具体的には、例えば、アモルファス銅、電析ニッケル、アルミニウム等を挙げることができ、合金系材料としては、例えば、銅−亜鉛合金(真鍮)、銅−錫−亜鉛合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−亜鉛合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0117】
また前記基材としては、合成樹脂材料の使用も可能であり、切削加工時に軟化して高精度の切削が困難となるなどの不都合が生じにくい等の理由から、そのガラス転移点が150℃以上、特に200℃以上で且つロックウェル硬さ(JIS Z 2245)が70以上、特に75以上の合成樹脂からなる材料であるのが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びセルローストリアセテート系樹脂等を挙げることができる。
【0118】
上記の如き合成樹脂からの平板の作成は、通常の樹脂成形法、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、溶液キャスト法等により行うことができ、必要に応じてさらに加熱処理、延伸処理等の処理を行うことができる。かくして作成される平板の平面には、上記の方法によって製造されるプリズム母型から電鋳金型を作成する際の導電処理及び/又は電鋳加工を容易にするため、予備導電処理を施すことができる。予備導電処理としては、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニッケル、セレン等の金属を蒸着する真空蒸着法、これらの金属を用いる陰極スパッタリング法、銅やニッケルを用いる無電解メッキ法等が挙げられる。また、合成樹脂にカーボンブラック等の導電性微粉末や有機金属塩等を配合し、平板それ自体に導電性をもたせるようにしてもよい。
【0119】
次に得られたマイクロプリズム母型は、その表面に電鋳加工が施されて金属被膜が形成される。この金属被膜を母型表面から取り外すことにより、本発明の三角錐型コーナーキューブ型再帰反射シートの成形に用いるための金属製金型を作成することができる。
【0120】
金属製マイクロプリズム母型の場合には、必要に応じてその表面を洗浄した後、直ちに電鋳加工を行うことができるが、合成樹脂製マイクロプリズム母型の場合には、電鋳加工を行うに先だって、先ず母型のプリズム表面に導電性を付与させるための導電処理を施す必要がある。この導電処理としては、例えば、銀鏡処理、無電解メッキ処理、真空蒸着処理、陰極スパッタリング処理などが採用可能である。
【0121】
上記の銀鏡処理としては、具体的には、前述の方法で形成した母型の表面をアルカリ洗剤などにより洗浄してその油成分などの汚れを除去した後、タンニン酸などの表面活性化剤を用いて活性化処理を行い、次いで速やかに硝酸銀溶液を用いて銀鏡化する方法が挙げられる。この銀鏡化は硝酸銀水溶液と還元剤(ブドウ糖やグリオキザール等)水溶液の二筒式ノズルガンを用いたスプレー法、硝酸銀水溶液と還元剤水溶液との混合液中に浸漬する浸漬法などが採用しうる。また、銀鏡被膜の厚さは電鋳時の導電性が満足される範囲で薄い方が好ましく、例えば、0.1μm以下の厚さを例示しうる。
【0122】
無電解メッキ処理には、銅やニッケルがなど用いられる。無電解ニッケルメッキ液においては、ニッケルの水可溶性金属塩として硫酸ニッケルや塩化ニッケルなどを用いることができ、これに錯化剤としてクエン酸塩やリンゴ酸塩を主成分とした溶液、及び還元剤として次亜リン酸ナトリウム、ホウ素化水素ナトリウム、アミンボランなどを加えたものがメッキ液として用いられる。
【0123】
真空蒸着処理は、銀鏡処理と同様に母型表面の洗浄を行った後、真空装置に入れ、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、セレン等の金属を加熱気化させて、冷却されている該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることによって行うことができる。また、陰極スパッター処理は、平滑で所望の金属箔を装着できる陰極板と被処理材料を載せるアルミニウム又は鉄など金属製の陽極台が内部に設けられている真空装置に、真空蒸着処理と同様に処理した母型を入れて陽極台上に置き、真空蒸着の場合に用いたと同様の金属の箔を陰極に取り付けて荷電してグロー放電を起こさせ、これにより発生する陽イオン流を陰極の金属箔に衝突させることにより金属原子又は微粒子を蒸発させ、これを該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることにより行うことができる。これらの方法において形成される導電被膜の厚さとしては、例えば、30nmの厚さが例示される。
【0124】
合成樹脂製プリズム母型に、電鋳加工に際して平滑で均一な電鋳層を形成するためには、上記の導電処理は該母型の全面にわたって均一に施す必要がある。導電処理が不均一な場合には、導電性の悪い部分の電鋳層表面の平滑性が低下したり、又は電鋳層が形成されず欠損部分となってしまうなどの不具合を生じる可能性がある。
【0125】
この不具合を回避するためには、例えば、銀鏡処理の直前に処理面をアルコールなどの溶剤で処理することにより銀鏡液の濡れを改善する方法を採用しうるが、本発明において形成される合成樹脂製プリズム母型は凹部分が非常に深く鋭角なために、濡れの改善が不十分となりがちである。この凹形状に基づく導電被膜の不具合は蒸着処理などにおいても起こり易い。
【0126】
電鋳加工により得られる電鋳層の表面を均一なものとするために、しばしば活性化処理が行われる。この活性化処理としては、例えば、10重量%スルファミン酸水溶液に浸漬する方法等を採用することができる。
【0127】
銀鏡処理が行われた合成樹脂製の母型に電鋳加工を行った場合には、銀の層は電鋳層と一体化されて合成樹脂製の母型から容易に剥離されるが、無電解メッキや陰極スパッタリング処理でニッケルなどの導電被膜を形成した場合は、合成樹脂表面と該導電被膜との密着が良いために、電鋳加工後の電鋳層と合成樹脂層との剥離が困難となる場合がある。そのようなときには、電鋳加工に先だって導電被膜層の上にクロメート処理などの所謂剥離処理を行うのがよい。その場合、導電被膜層は剥離後に合成樹脂層上に残留する。
【0128】
表面に導電被膜層が形成された合成樹脂製プリズム母型は、このような各種の前処理を行った後、電鋳加工により該導電被膜層の上に電鋳層が形成される。また、金属製プリズム母型は、前記のように必要に応じてその表面を洗浄した後、該金属上に直接電鋳層が形成される。
【0129】
電鋳加工は、一般に、例えば、スルファミン酸ニッケル60重量%水溶液中、40℃、電流条件10A/dm2程度の条件下で行われる。電鋳層の形成速度としては、例えば、48時間/mm以下程度とすることにより均一な電鋳層が得られやすく、それ以上の形成速度においては表面の平滑性の欠如や電鋳層の中に欠損部分が生じるなどの不具合が起こりやすい。
【0130】
また、電鋳加工においては、金型の表面摩耗性の改善を目的として、コバルトなどの成分を加えたニッケル・コバルト合金電鋳を行うこともできる。コバルトを10〜15重量%加えることにより、得られる電鋳層のビッカース硬度Hvを300〜400にまで硬くすることが可能であるので、得られる電鋳金型を用いて合成樹脂 を成形し、本発明の三角錐型キューブコーナー型再帰反射シートを製造するに際して、該金型の耐久性を改善することが可能となる。
【0131】
このようにしてプリズム母型から作成した第1世代の電鋳金型は、さらに第2世代の電鋳金型を作成するのに用いる電鋳マスターとして、繰り返し用いることができる。従って、一つのプリズム母型から幾つもの電鋳金型を作成することが可能である。
【0132】
作成された複数個の電鋳金型は、精密に切断された後に、合成樹脂によるマイクロプリズムシートの成形を行うための最終的な金型の大きさまで組み合せ接合して用いることができる。この接合の方法としては、切断端面を単に突き合わせる方法や組み合わせた接合部分を、例えば電子ビーム溶接、YAGレーザー溶接、炭酸ガスレーザー溶接などの方法で溶接する方法などが採用可能である。
【0133】
組み合わされた電鋳金型は、合成樹脂成形用金型として合成樹脂の成形に用いられる。この合成樹脂成形の方法としては圧縮成形や射出成形を採用することができる。
【0134】
圧縮成形は、例えば、形成した薄肉状のニッケル電鋳金型、所定の厚さの合成樹脂シート及びクッション材として厚さ5mm程度のシリコーンゴム製シートを、所定の温度に加熱された圧縮成形プレスに挿入した後、成形圧の10〜20%の圧力下で30秒予熱を行った後、180〜250℃、10〜30kg/cm2程度の条件下で約2分間 加熱加圧することにより行うことができる。しかるのち、加圧状態のままで室温まで冷却して圧力を開放することにより、プリズム成形品を得ることが可能である。
【0135】
さらに、例えば、上記方法で形成した厚さ約0.5mmの薄肉電鋳金型を、前記溶 接法により接合してエンドレスベルト金型を作成し、このベルト金型を加熱ロールと冷却ロールとからなる1対のロール上に設置して回転させ、加熱ロール上にあるベルト金型に、溶融した合成樹脂をシート状の形状で供給し、1個以上のシリコーン製ロールで加圧成形を行った後、冷却ロール上でガラス転移点温度以下に冷却して、ベルト金型から引き剥がすことにより連続したシート状の製品を得ることが可能である。
【0136】
次に本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの好適な構造の一態様であるマイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートについて、その断面図である図14を参照しながら説明する。
【0137】
図13において、(1)は本発明の三角錐型反射素子(R1、R2)が最密充填状に配置された反射素子層、(2)は反射素子を保持する保持体層であり、(10)は光の入射方向である。反射素子層(1)及び保持体層(2)は一体であるのが普通であるが、別々の層を積層しても構わない。本発明における再帰反射シートの使用目的、使用環境に応じて表面保護層(4)、観測者に情報を伝達したりシー トの着色のための印刷層(5)、反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための封入密封構造を達成するための結合材層(6)、反射素子層(1)と結合材層(6)に囲まれて、反射素子の界面での再帰反射を保証するための空気層(3)、結合材層(6)を支持する支持体層(7)、及び、該再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層(8)と剥離材層(9)とを設けることができる。
【0138】
表面保護層(4)には再帰反射素子層(1)に用いたのと同じ樹脂を用いることが出来るが耐候性を向上する目的で紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などをそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることが出来る。さらに、着色剤としての各種の有機顔料、無機顔料及び染料などを含有させることが出来る。
【0139】
印刷層(5)は通常、表面保護層(4)と保持体層(2)の間、あるいは、表面 保護層(4)の上や反射素子(1)の反射面上に設置することが出来、通常グラビア印刷、スクリーン印刷及びインクジェット印刷などの手段により設置可能である。
【0140】
上記反射素子層(1)及び保持体層(2)を構成する材料としては本発明の一つの目的である柔軟性を満足するものであれば特に限定されるものではないが、光学的透明性、均一性のあるものが好ましい。本発明において使用し得る材料の例としては、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのオレフィン樹脂、セルロース系樹脂及びウレタン樹脂などを例示できる。
【0141】
本発明における反射素子層(1)は内部全反射条件を満足する臨界角度を大き くする目的でキューブコーナー再帰反射素子背面に空気層(3)を設置するのが 一般的である。使用条件下において水分の侵入による臨界角の低下及び金属層の腐食などの不具合を防止するために反射素子層(1)と支持体層(7)とは結合剤層(6)によって密封封入されるのが好ましい。この密封封入の方法としては米 国特許第3,190,178号、第4,025,159号、日本公開実用新案昭和50−28669号等に 示されている方法が採用できる。結合剤層(6)に用いる樹脂としては(メタ)ア クリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などがあげられ、接合の方法としては公知の熱融着性樹脂接合法、熱硬化性樹脂接合法、紫外線硬化性樹脂接合法、電子線硬化性樹脂接合法などが適宜採用可能である。
【0142】
本発明に用いる結合剤層(6)は支持体層(7)の全面にわたって塗布しうるし、再帰反射素子層との接合部分に印刷法などの方法により選択的に設置することも可能である。
【0143】
支持体層(7)を構成する材料の例としては再帰反射素子層を構成する樹脂や 一般のフィルム成形可能な樹脂、繊維、布、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔又は板をそれぞれ単独又は複合して用いることが出来る。
【0144】
本発明の再帰反射シートを金属板、木板、ガラス板、プラスチック板などに貼付するために用いる接着層(8)及び該接着剤のための剥離層(9)は、適宜、公知のものを選択することができる。
【0145】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を一層詳細に説明する。
【0146】
<実施例1>
表面を平坦に研削した50mm角の真鍮板の上に、第1方向(図5のz方向)と第2方向(図5のw方向)を、先端角度が77.04゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向の繰り返しピッチが169.70μm、溝の深さ(h0)が80.00μmであって、図7の<A−K1−Bで表わされる線zと線wとの交差角度が50.68゜となるように、断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0147】
しかる後に、第3方向(x方向)を、先端角度が56.53゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチ(図3の線xの繰り返しピッチ)が198.26μm、溝の 深さ(h)が92.00μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が64.66゜となるようにV字平行溝を切削して、真鍮板上に三角錐型反射素子の水平の面(Z−Z')から三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h0)が80.00μm、底面(X−X')から三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h)が92.00μmの凸形状の多数のプラス傾斜の三角錐型再帰反射素子が最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは+7゜であった。またh/h0は、92/80=1.15であるから(h−h0)/h0は0.15となる。また、
【0148】
【数19】
【0149】
となり、従ってD=R−1=0.315となった。これらのことから、得られた三角錐型反射素子は、h/h0=0.875Rで、(h−h0)/h0=0.476Dとなった。
【0150】
この真鍮製母型を用いて電鋳法により、材質がニッケルであって、形状が反転された凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成した。この成形用金型を用いて、厚さ230μmのポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスティックス株式会社製「ユーピロン E2000」)を成形温度200℃、成形圧力50kg/cm2の条件で圧縮成形下後に、加圧下で30℃まで冷却してから樹脂シートを取り出して、表面に支持体層の厚さが約150μmで、h0=80μm、h=92μm、且つ三角錐を構成する三面のプリズム面角に角度偏差を与えていないプラス傾斜の三角錐型再帰反射素子を最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0151】
<実施例2>
実施例1において、第1方向(z方向)と第2方向(w方向)を、先端角度が77.04゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向の繰り返しピッチが169.70μm、溝の深さ(h0)が80.00μmであって、第1方向と第2方向の交差角度が50.68゜となるようにフライカッティング法によって切削する代わりに、第1方向(z方向)と第2方向(w方向)を先端角度が63.11゜のダイアモンドバイトを用い、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが149.33μm、切削溝の深さ(h0)が80.00μm、第1方向と第2方向との交差角度が67.85゜となるようにフライカッティング法によって切削し、また、第3方向(x方向)の先端角度が56.53゜のダイアモンドバイトを用い、繰り返しピッチが198.26μm、溝の深さ(h)が92.00μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が64.66゜となるようにV字平行溝を切削する代わりに、第3方向(x方向)の先端角度が84.53゜のダイアモンドバイトを用い、繰り返しピッチが146.19μm、切削溝の深さ(h)が64.00μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が56.08゜となるように切削する以外は実施例1と同様にして、真鍮板上に三角錐型反射素子の水平の面(Z−Z')からの高さ(h0)が80.00μm、底面(X−X')から三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの高さ(h0)が64.00μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型反射素子の光学軸傾斜角θは−7゜であった。またh/h0=64/80=0.80、(h−h0)/h0=−0.20であり、R=0.7781、D=R−1=-0.2219であった。これらのことから、得られた三角錐型反射素子は、h/h0=1.028Rで、(h−h0)/h0=0.901Dとなった。
【0152】
以下実施例1と同様に、材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約150μmで、h0=80μm、h=64μm、且つ三角錐を構成する三面のプリズム面角に角度偏差を与えていないマイナス傾斜の三角錐型再帰反射素子を最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0153】
<比較例1>
実施例1において、第1方向と第2方向の繰り返しピッチが169.70μmとなるようにフライカッティング法によって切削する代わりに、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが164.18μmとなるようにフライカッティング法によって切削し、また、第3方向(x方向)の繰り返しピッチが198.26μm、溝の深さ(h)が92.00μmとなるようにV字平行溝を切削する代わりに、第3方向(x方向)の繰り返しピッチが191.81μm、切削溝の深さ(h)が80.00μmとなるように切削する以外は実施例1と同様にして、真鍮板上にキューブコーナー再帰反射素子の高さ(h0=h)が80.00μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この反射素子の光学軸傾斜角θは+7゜で、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜あった。
【0154】
以下実施例1と同様に、材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約150μmで、h0=h=80μmで且つ三角錐を構成する三面のプリズム面角に角度偏差を与えていないプラス傾斜の三角錐型再帰反射素子を最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0155】
<比較例2>
実施例1において、第1方向(z方向)と第2方向(w方向)を、先端角度が77.04゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向の繰り返しピッチが169.70μm、第1方向と第2方向の交差角度が50.68゜となるようにフライカッティング法によって切削する代わりに、先端角度が63.11゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向の繰り返しピッチが179.40μm、第1方向と第2方向の交差角度が67.85゜となるようにフライカッティング法によって切削し、また、第3方向(x方向)の先端角度が56.53゜のダイアモンドバイトを用い、繰り返しピッチが198.26μm、溝の深さ(h)が92.00μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が64.66゜となるようにV字平行溝を切削する代わりに、第3方向(x方向)の先端角度が84.53゜のダイアモンドバイトを用い、繰り返しピッチが160.73μm、切削溝の深さ(h)が80.00μm、第1方向及び第2方向と第3方向との交差角度が56.08゜となるように切削する以外は実施例1と同様にして、真鍮板上にキューブコーナー再帰反射素子の高さ(h0=h)が80.00μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この反射素子の光学軸傾斜角θは−7゜で、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜あった。
【0156】
以下実施例1と同様に、材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約150μmで、h0=h=80μmで且つ三角錐を構成する三面のプリズム面角に角度偏差を与えていないマイナス傾斜の三角錐型再帰反射素子を最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0157】
表1に上記実施例1〜2及び比較例1〜2で作成した三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの再帰反射輝度の測定データーを示した。実施例1及び実施例2の再帰反射シートは広範な範囲で高い反射輝度を示したが、比較例1の反射シートは特に入射角が5゜〜10゜での輝度変化が大きく、比較例2の反射シートにおいては入射角30゜における輝度低下が大きく、従って、いずれの比較例におい ても入射角特性が劣っている。
【0158】
【表1】
【0159】
【発明の効果】
本発明は、共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面上の一つの底辺(x)を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面上の共有する底辺(x)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x)を一辺とする実質的に同一の五角形状又は三角形状の傾斜面(c面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H)を起点とする前記c面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a面、b面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H)から、該底面(X−X')までの高さを(h)とし、傾斜面(a面、b面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつh/h0とθとが特定の関係式を満足することを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0160】
これにより本発明の再帰反射シートは、一般に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに望まれる基本的な光学特性である、高輝度性、即ち、該シート正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度の高さ(大きさ)のみならず、観測角特性、入射角特性、回転角特性等の広角性の改善を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術による、プラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群の平面図である。
【図2】従来技術による、図1で示されるプラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群を断面線(L−L')で切断したときの断面図である。
【図3】従来技術による、マイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群の平面図である。
【図4】従来技術による、図2で示されるマイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群を断面線(L−L')で切断したときの断面図である。
【図5】本発明を説明する、プラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群の平面図である。
【図6】本発明を説明する、図5で示されるプラス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群を断面線(L−L')で切断したときの断面図である。
【図7】本発明を説明する一対のプラス傾斜の三角錐型反射素子を拡大して示した平面図である。
【図8】本発明を説明する図7に示される一対のプラス傾斜の三角錐型反射素子を線(L−L')方向から見たときの側面図である。
【図9】本発明を説明する、マイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群の平面図である。
【図10】本発明を説明する、図9で示されるマイナス傾斜の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子群を断面線(L−L')で切断したときの断面図である。
【図11】本発明を説明する一対のマイナス傾斜の三角錐型反射素子を拡大して示した平面図である。
【図12】本発明を説明する図11に示される一対のマイナス傾斜の三角錐型反射素子を線(L−L')方向から見たときの側面図である。
【図13】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの一態様であるマイナス傾斜の再帰反射シートの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 三角錐型反射素子層、
2 保持体層
3 空気層
4 表面保護層
5 印刷層
6 結合材層
7 支持体層
8 接着剤層
9 剥離材層
10 光の入射方向
Claims (13)
- 共通する一底面(X−X')上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに該底面(X−X')上の一つの底辺を共有して、相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており、該底面(X−X')は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x、x、....)を包含する共通の一平面であり、相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X')上の共有する底辺(x、x、....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、....)に対してそれぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており、該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x、x、....)を一辺とする実質的に同一の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし、該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1面又はc2面と実質的に直角に交差する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)から成り、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)含む該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(1)を満足する
ことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(2)を満足する
請求項1記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(3)を満足する
請求項1記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(5)を満足する
請求項1記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の五角形状又は三角形状の傾斜面(c1面、c2面)の底辺(x、x、....)を含む該底面(X−X')までの高さを(h)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から、該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面、b1面;a2面、b2面)の底辺(z、w)を包含する実質的に水平の面(Z−Z')までの高さを(h0)とし、該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)から該底面(X−X')に対する垂線と底面(X−X')との交点をPとし、かつ該頂点(H1、H2)を通る光学軸と該底面(X−X')との交点をQとし、さらに上記の交点(P)及び交点(Q)から、該三角錐型反射素子の共有する底辺(x、x、....)を含み且つ該底面(X−X')に垂直な平面(Y−Y'、Y−Y'、・・・・)までの距離をそれぞれp及びqで表し、該光学軸と該垂直な平面(Y−Y')とのなす角を(θ)とした場合に、hとh0は実質的に同一でなく、かつ下記式(6)を満足する
請求項1記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から底面(X−X')に下された垂線と該底面(X−X')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む前記の垂直な平面(Y−Y')までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該底面(X−X')との交点(Q)から 該垂直な平面(Y−Y')までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となるような方向に、かつ該光学軸が該三角錐型反射素子の頂点から底面(X−X')に下される垂線(H1−P)と3゜〜15゜の角度をなすように傾いている請求項1〜6の何れか1項に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から底面(X−X')に下された垂線と該底面(X−X')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む前記の垂直な平面(Y−Y')までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該底面(X−X')との交点(Q)から 該垂直な平面(Y−Y')までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となるような方向に、かつ該光学軸が該三角錐型反射素子の頂点から底面(X−X')に下される垂線(H1−P)と4゜〜12゜の角度をなすように傾いている請求項1〜6の何れか1項に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)から底面(X−X')に下された垂線と該底面(X−X')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)を含む前記の垂直な平面(Y−Y')までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該底面(X−X')との交点(Q)から 該垂直な平面(Y−Y')までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)又はマイナス(−)となるような方向に、かつ該光学軸が該三角錐型反射素子の頂点から底面(X−X')に下される垂線(H1−P)と5゜〜10゜の角度をなすように傾いている請求項1〜6の何れか1項に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 共通する底面(X−X')上に突出した多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする一つの稜線を共有して、これを一辺とする実質的に同一形状の傾斜面(a1面、b1面)がその隣接する他の三角錐型反射素子の対応する傾斜面(a2面 又はb2面)と交差することによって形成される該傾斜面(a1面、b1面又はa2面、b2面)の多数の底辺(z、w)を包含する水平の面(Z−Z')から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの距離(h0)が40μm〜250μmである請求項1〜9のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 共通する底面(X−X')上に突出した多数の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする一つの稜線を共有して、これを一辺とする実質的に同一形状の傾斜面(a1面、b1面)がその隣接する他の三角錐型反射素子の対応する傾斜面(a2面 又はb2面)と交差することによって形成される該傾斜面(a1面、b1面又はa2面、b2面)の多数の底辺(z、w)を包含する水平の面(Z−Z')から該三角錐型反射素子の頂点(H1、H2)までの距離(h0)が50μm〜200μmである請求項1〜9のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の三つの傾斜面(a1 面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによっ て形成される少なくとも一つプリズム面角の大きさが89.5゜〜90.5゜の範囲内である請求項1〜11のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも一つプリズム面角の大きさが89.7゜〜90.3゜の範囲内である請求項1〜11のいずれかに記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
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