JP4225602B2 - 三角錐型キユーブコーナー再帰反射シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な構造の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関する。より詳しくは、本発明は新規な構造の三角錐型再帰反射素子が最密充填状に配置された新規のキューブコーナー再帰反射シートに関する。
詳しくは、本発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車、オートバイ等の車両のナンバープレート類、衣料、救命具等の安全資材類、看板等のマーキング、可視光、レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下、三角錐型再帰反射素子又は単に反射素子ともいう)によって構成されるキューブコーナー再帰反射シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、その再帰反射性を利用した該シートは上記のごとき利用分野で広く利用されている。中でも三角錐型再帰反射素子などのキューブコーナー再帰反射素子の再帰反射原理を利用したキューブコーナー再帰反射シートは、従来のマイクロ硝子球を用いた再帰反射シートに比べ光の再帰反射効率が格段に優れており、その優れた再帰反射性能により年々用途が拡大しつつある。
【0003】
しかしながら従来公知の三角錐型再帰反射素子は、その反射原理から反射素子の持つ光学軸(三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を構成する互いに90゜の角度で交差する3個の面から等しい距離にある該三角錐の頂点を通る軸)と入射光線とがなす角度(以下これを入射角という)が小さい角度の範囲では良好な再帰反射効率を示すが、入射角が大きくなるに連れて再帰反射効率は急激に低下する(すなわち入射角特性が劣る)。また、その三角錐型再帰反射素子を構成する透明媒体の屈折率と空気の屈折率との比によって定まる内部全反射条件を満足する臨界角度 (αc)未満の角度で三角錐型再帰反射素子面に入射した光源は、該反射素子の界面で全反射することなく、該反射素子の背面に透過するために、三角錐型再帰反射素子を用いる再帰反射シートは、一般に入射角特性が劣るという欠点があった。
【0004】
他方、三角錐型再帰反射素子は、該反射素子のほぼ全面にわたって光の入射した方向に光を反射させることができるために、マイクロ硝子球型反射素子のように球面収差などの原因によって反射光が広い角度に発散して反射することはない。しかしながら、反射光のこの狭い発散角度は実用面においては、例えば自動車のヘッドランプから発せられた光が交通標識で再帰反射したとき、その光軸から離れた位置にいる例えば運転者の目には達しにくいという不都合が生じ易い。このような不都合は、特に自動車と交通標識との距離が近接したときに、光線の入射軸と運転者と反射点とを結ぶ軸(観測軸)とがなす角度(観測角)が増大するためにますます増大する(すなわち観測角特性が劣る)。
【0005】
このようなキューブコーナー再帰反射シート、特に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに関しては、古くから多くの提案が知られており、種々の改良検討がなされている。
例えば、ユンゲルセン(Jungersen)の米国特許第2,481,757号においては、薄いシートの上に様々な形の再帰反射素子を設置してなる再帰反射シートおよびそれらシートの製造方法について述べられている。上記米国特許に例示されている三角錐型再帰反射素子は、頂点を平面三角形の中心に位置した光学軸の傾斜のない三角錐型再帰反射素子や、頂点の位置が平面三角形の中心に位置していない光学軸の傾斜した三角錐型再帰反射素子が例示されており、接近してくる自動車に対して効率的に光を反射させることが記載されている。また、三角錐型再帰反射素子の大きさとしては、反射素子の深さとして1/10インチ(2,540μm)以内であることが記載されている。さらに、この該米国特許のFig 15には、光学軸が垂直面に対しプラス(+)となる方向に傾斜している三角錐型再帰反射素子対が図示されており、その光学軸の傾斜角(θ)は、図示されている三角錐型再帰反射素子の平面三角形の長辺と短辺の長さの比率から求めると、約6.5゜であると推定される。
【0006】
しかしながら、上記 Jungersen の米国特許には、本発明に示されるような極めて小さい三角錐型再帰反射素子についての具体的な開示は存在せず、また、優れた観測角特性や入射角特性を与えるために、三角錐型再帰反射素子がどのような大きさ及び光学軸傾斜を有することが必要かなどについては何ら記載もされていない。
【0007】
なお本明細書において、「光学軸がプラス(+)となる方向に傾斜している」とは、後に詳述するように、本発明において特定する、一つの底辺(x)を共有して、相対峙する二つの該三角錐型再帰反射素子の共有する底辺(x,x・・・)を含む平面を平面(S−S’)とした場合に、三角錐型再帰反射素子の頂点を通る光学軸と該三角錐型再帰反射素子の平面(S−S')との交点(Q)から、該反射素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(q)〔これは交点(Q)から、該反射素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)を含む該平面(S−S')に垂直な垂直面(Lx)までの距離と同じ〕と、該反射素子の頂点から平面(S−S')に下された垂線と該平面(S−S')との交点(P)から該反射素子対が共有する底辺(x、x、・・・・)までの距離(p)〔これは交点(P)から底辺(x、x、・・・・)を含む該平面(S−S')に垂直な垂直面(Lx)までの距離と同じ〕との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に光学軸が上記垂直面(Lx)に対して傾いていることを意味するものとする。また逆に、(q−p)がマイナス(−)となるような方向に光学軸が傾いているときには、以降「光学軸が上記垂直面(Lx)に対してマイナス(−)となる方向に傾斜している」と表わすものとする。
【0008】
また、スタム(Stamm)の米国特許第3,712,706号においては薄いシート上に平面の三角形の形状が正三角形である、所謂、正三角錐型キューブコーナー再帰反射素子を、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。この Stamm の米国特許では、反射素子の反射面を、例えばアルミニウムなどの金属で蒸着処理を行って鏡面反射させることにより、入射角の増大に伴なう再帰反射効率の低下という問題や、内部全反射条件未満の角度で入射した光が反射素子の界面を透過してしまい再帰反射しないと言う欠点の改善を行っている。
【0009】
しかしながら上記 Stamm の提案では、広角性の改善手段として鏡面反射原理を採用しているために、得られる再帰反射シートの外観が暗くなったり、鏡面層に採用されているアルミニウム、銀などの金属が使用中に水や空気の浸入により酸化されてしまい、反射輝度の低下を起しがちであるなどの欠陥を起しやすい。さらに、光学軸の傾斜により広角性を改善する手段に関してはまったく記載されていない。
【0010】
さらに、ホープマン(Hoopman)のヨーロッパ特許第137,736B1号においては、薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて述べられている。この特許に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子の光学軸の傾斜は、マイナス(−)方向に傾斜しており、その傾斜角は約7゜〜13゜であることが示されている。
【0011】
さらにまた、スチェッチ(Szczech)の米国特許第5,138,488号においても、同様に薄いシート上に、底面の三角形の形状が二等辺三角形である傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、その底面が共通面上に最密充填状となるように並べられた再帰反射シートについて開示されている。この米国特許においては、該三角錐型再帰反射素子の光学軸は、お互いに向き合って対を成す二つの三角錐型再帰反射素子が互いに共有する辺の方向に傾斜しており、その傾斜角は約2゜〜5゜であり、反射素子の大きさが25μmから100μmであることが規定されている。
【0012】
また、上記特許に対応するヨーロッパ特許第548,280B1号においては、光学軸の傾きの方向が、対をなす二つの反射素子の共通の辺を含みかつ共通平面に垂直な面と反射素子の頂点との距離が、反射素子の光学軸が共通平面と交差する点と該垂直な面との距離に等しくなく、その傾斜角は約2゜〜5゜であり、反射素子の大きさが25μmから100μmであることが記載されている。
【0013】
上記の様に、Szczech のヨーロッパ特許第548,280B1号においては、光学軸の傾きがプラス(+)及びマイナス(−)の両方を含む約2゜〜5゜の範囲となっている。しかし、Szczech の上記米国特許及びヨーロッパ特許の実施例には、光学軸の傾斜角度が(−)8.2゜、(−)9.2゜及び(−)4.3゜で、反射素子の高さ(hs)が87.5μmの三角錐型再帰反射素子しか具体的には開示されていない。
【0014】
以上述べた従来公知の Jungersen の米国特許第2,481,757号; Stamm の米国特許第3,712,706号;Hoopman のヨーロッパ特許第137,736B1号;Szczech の米国特許第5,138,488号、ヨーロッパ特許第548,280B1号等の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、いずれも、光の入射及び反射の中核をなす多数の三角錐型再帰反射素子の3つの底辺が形成する三角形の少なくともいずれか2つの内角が等しい点で共通しており、かように3つの底辺が形成する三角形の少なくともいずれか2つの内角が等しい三角錐型再帰反射素子で構成された再帰反射シートは、いずれも入射角特性が劣る、すなわち光線の該三角錐型再帰反射素子に対する入射角が増大すると、再帰反射輝度が急激に減少するという欠点を有している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
一般に三角錐型キューブコーナー再帰反射シートに望まれる基本的な光学特性として、高輝度性、すなわち、該シート正面から入射した光の反射輝度に代表される反射輝度の高さ(大きさ)、及び、広角性が要求され、さらに広角性に関しては、観測角特性、入射角特性、回転角特性の三性能が要求される。
【0016】
前述したとおり、従来公知の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子から構成された再帰反射シートは、いずれも、入射角特性が低くかつ概して観測角特性も満足すべきものではなかったのに対して、本発明者等は、光追跡シュミレーションにより、互いに対称の位置に設けられている該三角錐型再帰反射素子が共有する一底辺(x,x・・・)の平面(X−X’)から該反射素子の頂点(H1,H2)までの高さ(h’)を、該三角錐型再帰反射素子の前記の共有する一底辺を一辺として有するc面と実質的に直角に交差する2面(a面、b面)の底辺(z,w)を包含する面(Z−Z’)から該反射素子の頂点までの高さ(h)より実質的に大とすることにより、かような三角錐型再帰反射素子から構成された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見し、特許出願を行った。(特願平8−295907)
【0017】
さらに、本発明者らは、引き続き光追跡シミュレーションによる検討を継続して、相対峙する2つの該三角錐型再帰反射素子の三角形状の共有する底辺(x,x・・・)を一辺として有する傾斜面(c1面,c2面)の底辺(x,x・・・)を含む該第1の平面(X−X’)から、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さ(h’)が、該三角錐型再帰反射素子の他の傾斜面(a1面,b1面,a2面,b2面)の底辺(z,w)を包含する実質的に水平の第2の底面(Z−Z’)から、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さ(h)よりも実質的に小となるようにすることによっても、このような三角錐型再帰反射素子から構成された三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見して、特許出願を行った。(特願平9−330836)
【0018】
本発明者らは、さらに検討を継続した結果、相対峙する三角錐型再帰反射素子が共有する底辺(x,x・・・)上を通り、かつ該底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)に垂直な垂直面を垂直面(Lx,Lx・・・)とし、該三角錐型再帰反射素子の他の2つの底辺(y,y・・・)及び(z,z・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な2つの垂直面をそれぞれ垂直面(Ly,Ly・・・)及び垂直面(Lz,Lz・・・)とし、かつ
(1)垂直面(Ly)と垂直面(Lz)とがなす内角をrx
(2)垂直面(Lz)と垂直面(Lx)とがなす内角をry
(3)垂直面(Ly)と垂直面(Lx)とがなす内角をrz
とした場合、3つの内角rx、ry及びrzをそれぞれ実質的に異なる値(角度)とすることにより、かような三角錐型再帰反射素子から構成された再帰反射シートの入射角特性を改善することができることを発見した。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、より詳細には、互いに直角に交差する3つの傾斜面を有する三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに、その一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、基盤上に最密充填状に配置されており、それぞれ、相対峙する二つの該三角錐型再帰反射素子は、その共有する底辺(x,x・・・)の中点を通り、多数の該底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)に垂直な線を中心にして180度回転して、それぞれ実質的に対称となるように向き合って、実質的に同一形状の三角錐型再帰反射素子対を形成しており、かつ該三角錐型再帰反射素子の底辺(x,x・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な垂直面を垂直面(Lx,Lx・・・)とし、該三角錐型再帰反射素子の他の2つの底辺(y,y・・・)及び(z,z・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な2つの垂直面をそれぞれ垂直面(Ly,Ly・・・)及び垂直面(Lz,Lz・・・)とし、かつ
(1)垂直面(Ly)と垂直面(Lz)とがなす内角をrx
(2)垂直面(Lz)と垂直面(Lx)とがなす内角をry
(3)垂直面(Ly)と垂直面(Lx)とがなす内角をrz
とした場合、3つの内角rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なると共に、
多数の、相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する多数の底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H 1 ,H 2 )までの高さをh s とし、該三角錐型再帰反射素子の他の一方の底辺(y,y・・・)を含む平面(T−T’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H 1 ,H 2 )までの高さをh t とし、かつ該三角錐型再帰反射素子のさらに他の底辺(z,z・・・)を含む平面(U−U’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H 1 ,H 2 )までの高さをh u とした場合に、h s 、h t 及びh u が全て異なることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0020】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、該三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzが、それぞれ、実質的に異なり、かつ、該3つの内角rx、ry及びrzの最大の内角を内角rmaxとすると、該内角rmaxが
63゜≦ rmax ≦88゜
である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、該三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzが、それぞれ、実質的に異なり、かつ該3つの内角rx、ry及びrzを三角座標で表した場合に、(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が
(0.492,0.242,0.266)、(0.492,0.042,0.466)及び(0.358,0.308,0.333)で囲まれた第1領域、
(0.267,0.242,0.491)、(0.467,0.042,0.491)及び(0.333,0.308,0.358)で囲まれた第2領域、
(0.242,0.267,0.491)、(0.019,0.467,0.514)及び(0.317,334,0.350)で囲まれた第3領域、
(0.242,0.492,0.266)、(0.019,0.492,0.489)及び(0.317,0.358,0.325)で囲まれた第4領域、
(0.267,0.492,0.241)、(0.467,0.492,0.041)及び(0.333,0.358,0.308)で囲まれた第5領域、
及び
(0.492,0.267,0.241)、(0.492,0.467,0.041)及び(0.358,0.334,0.308)で囲まれた第6領域、
のいずれかの領域に存在する三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0021】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、多数の、相対峙する二つの三角錐型再帰反射素子の共有する多数の底辺(x,x・・・)を含む平面を平面(S−S’)とし、
多数の該三角錐型再帰反射素子の他の多数の底辺をそれぞ底辺(y,y・・・)及び底辺(z,z・・・)とし、かつ、多数の底辺(y,y・・・)を含む平面を平面(T−T’)及び多数の底辺(z,z・・・)を含む平面を平面(U−U’)とした場合に、平面(S−S’)と、平面(T−T’)と、平面(U−U’)とが実質的に同一の平面をなすことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0022】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hsが、ht及びhuよりも実質的に大である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0023】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hsとhtとhuがそれぞれ実質的に相違し、hsが、ht及びhuよりも実質的に大である請求項5に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から平面(S−S')に下された垂線と該平面(S−S')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該平面(S−S')との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に該光学軸が前記垂直面(Lx,Lx・・・)と4゜〜12゜の角度をなすように傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0024】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hsが、ht及びhuよりも実質的に小である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hsとhtとhuがそれぞれ実質的に相違し、hsが、ht及びhuよりも実質的に小である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0025】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から平面(S−S')に下された垂線と平面(S−S')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該平面(S−S')との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(q)との差(q−p)がマイナス(−)となるような方向に該光学軸が前記垂直面(Lx,Lx・・・)と4゜〜12゜の角度をなすように傾いている三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0026】
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hsとhtとhuがそれぞれ実質的に相違し、該hs、ht及びhuの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとし、残りのものをhmidとした場合に、
1.05 < hmax/hmid < 1.5
1.05 < hmid/hmin < 1.5
である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
本発明のさらに好適な三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、上記hs、ht及びhuがいずれも50μ以上であり、かつ400μ以下である三角錐型キューブコーナー再帰反射シートである。
【0027】
また、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法は、母型基盤上に、一定の繰り返しピッチで平行な多数のV字上の溝をそれぞれ異なるx方向、y方向及びz方向の3方向に切削し、この際、該3方向のy方向の溝とz方向の溝の交差角度をrx、x方向の溝とz方向の溝の交差角度をry、x方向の溝とy方向の溝の交差角度をrzとした場合、3つの交差角度rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なる方向に該x方向、y方向及びz方向を定めて、該3方向にそれぞれ多数の該V字状の溝を切削することにより、互いに直角に交差する3つの傾斜面(a,b,c)を有する三角錐型キューブコーナー素子が、互いに、その一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、基盤上に最密充填状に配置され、それぞれ、相対峙する二つの該三角錐型キューブコーナー素子は、その共有する底辺(x,x・・・)の中点を通り、多数の該底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)に垂直な線を中心にして180度回転して、それぞれ実質的に対称となるように向き合って、実質的に同一形状の一対の三角錐型キューブコーナー素子を形成しており、かつ各三角錐型キューブコーナー素子の3つの頂角に対応する該rx、ry及びyzがそれぞれ実質的に異なる三角錐型キューブコーナー素子が多数配置され、
該x方向の溝の深さをv x 、y方向の溝の深さをv y 、z方向の溝の深さをv z とした場合、v x 、v y 及びv z が全て異なることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法である。
【0028】
本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法は、上記vxが、vy及びvzよりも実質的に大となるように該3方向に該溝を切削する三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法である。
【0029】
本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法は、上記vxが、vy及びvzよりも実質的に小となるように該3方向に該溝を切削する三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法である。
【0030】
以下本発明を適宜図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
本発明を説明する前に、まず従来公知の技術について説明する。
図1〜図4には、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子と対比するために、従来技術に基づく三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子を示した。
【0031】
図1及び図2は、前記Jungersen の米国特許第2,481,757号(以下Jungersen特許という 。)に記載された三角錐型再帰反射素子(以下、Jungersen 再帰反射素子という。)について説明した図である。図1(イ)及び(ロ)はJungersen特許に記載されたFig15及びFig17を拡大して示したものであり、図2(イ)及(ロ)は、それぞれ該Fig15及び17に示された三角錐型再帰反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の平面図及び断面図である。
【0032】
図1(イ)及び(ロ)においては、図2(ロ)で示された三角錐型再帰反射素子の共通の底面(以下共通底面(W)という。)上に突出した三角錐型再帰反射素子が、該共通底面(W)上に最密充填状に配置されている。
【0033】
また、図2(イ)及び(ロ)において、三角錐型再帰反射素子対は、上記平面(W−W’)に含まれる底辺(A−B),底辺(B−C1)及び底辺(A−C1)と稜(H1−A),稜(H1−B)及び稜(H1−C1)で画定される三角錐型再帰反射素子(R1)と、該平面(W−W’)に含まれる辺(A−B),辺(B−C2)及び辺(A−C2)と稜(H2−A),稜(H2−B)及び稜(H2−C2)で画定される三角錐型再帰反射素子(R2)とからなり、該三角錐型再帰反射素子(R1)と三角錐型再帰反射素子(R2)とは、辺(A−B)を含み、且つ該平面(W−W’)に垂直な垂直面(Lx)を対称面として対称となっている。
なお、図2(ロ)は、図2(イ)に示されている三角錐型再帰反射素子対を稜(H1−C1)及び稜(H2−C2)を含み、且つ上記平面(W−W’)に垂直な面で切断した該三角錐型再帰反射素子対の断面図である。
【0034】
上記三角錐型再帰反射素子対(R1,R2)を構成する2つの三角錐型再帰反射素子(R1,R2)の各底面の三角形(A−B−C1,A−B−C2で示される)は二等辺三角形であり、内角ryは内角rzと等しく、内角rxは内角ry及び内角rzのいずれとも異なり、且つ内角ry及び内角rzより小である。
【0035】
図2(ロ)に示されるように、該三角錐型再帰反射素子対の有している光学軸(H1−Q,H2−Q)は、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から該平面(W−W’)に下された垂線と該平面(W−W’)との交点(P)から、該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(A−B)までの距離(p)と、光学軸と該平面(W−W’)との交点(Q)から該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(A−B)までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に、該光学軸が上記垂直面(Lx)に対して傾いている。
【0036】
図3及び図4は、前記Hoopman のヨーロッパ特許第137,736B1号(以下Hoopman特許という。)に記載された三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(以下Hoopman再帰反射素子という。)について説明した図である。図3(イ)及び(ロ)はHoopman特許に記載されたFig3及びFig4を示したものであり、図4(イ)及(ロ)は、それぞれ該Fig3及び4に示された三角錐型再帰反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の平面図及び断面図である。
【0037】
図4(イ)より明らかなように、該三角錐型再帰反射素子(R1,R2)は前記Jungersen 再帰反射素子と同様に、該三角錐型再帰反射素子の、底辺(A−B)を共有する2つの三角形(A−B−C1,B−A−C2)は二等辺三角形であり、前記Jungersen 再帰反射素子の場合と同様に定義される図4(イ)に示された三角錐型再帰反射素子の内角ryと内角rzとは等しく、内角rxは内角ry及び内角rzのいずれとも異なる。
【0038】
また、図4(ロ)には、図4(イ)に示されている三角錐型再帰反射素子対を稜(C1−H1)及び稜(C2−H2)を含み、且つ上記平面(W−W’)に垂直な垂直面で切断した該三角錐型再帰反射素子対の断面図を示す。
該三角錐型再帰反射素子対の有している光学軸(H1−Q,H2−Q)は、図4(ロ)で示すとおり、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から該平面(W−W’)に下された垂線と該平面(W−W’)との交点(P)から、該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(A−B)までの距離(p)と、光学軸と該平面(W−W’)との交点(Q)から該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(A−B)までの距離(q)との差(q−p)がマイナス(−)となるような方向に、該光学軸が上記垂直面(Lx)に対して傾いている。
【0039】
これに対して、図5(イ)、(ロ)及び(ハ)には内角ry、内角rz及び内角rxがそれぞれ実質的に異なる、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子の好ましい一例が示されている。
図5(イ)は基盤上に配置された本発明の三角錐型再帰反射素子群を示した平面図であり、図5(ロ)及(ハ)は、それぞれ、該三角錐型再帰反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子の平面図及び該平面図を断面線(L−L’)で切断した断面図である。
図5においては、共通する一平面(S−S’)上に突出した本発明の三角錐型再帰反射素子が、互いに該平面(S−S’)上の一つの底辺(x、x、....)を共有して、相対峙して該平面(S−S’)上に最密充填状に配置されていることが示されている。
【0040】
図5(ロ)及び(ハ)に示されているように、上記三角錐型再帰反射素子群の一組の三角錐型再帰反射素子対は、平面(S−S’)上の一つの底辺(x)(これは、図5(ロ)の線(X−X’)上の線分(A−B)と同じ)を互いに共有して相対峙している三角錐型再帰反射素子の3角形状の傾斜面(c1面、c2面)と、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)を起点とする前記傾斜面(c1面,c2面)の上部の二辺をそれぞれ一辺として、該三角錐型再帰反射素子の一つの稜線を共有して、これを一辺とする該c1 面又はc2 面と実質的に直角に交差する、それぞれ実質的に同一の形状の傾斜面(a1面とa2面)及び(b1面とb2面)からなり、共通する底辺(x) 底辺(y,y) 底辺(z,z)は同一平面(S−S’)上に存在している。
【0041】
また、上記三角錐型再帰反射素子対を構成する2つの三角錐型再帰反射素子(R1、R2)は、該平面(S−S')上の共有する底辺(x)の中点(O)を通り該平面(S−S')に垂直な線を中心にして180度回転して、それぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一形状の三角錐型再帰反射素子対をなしている。
【0042】
更に、一対の該三角錐型再帰反射素子が共有する底辺(x)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な垂直面を垂直面(Lx,Lx・・・)とし、該三角錐型再帰反射素子の他の2つの底辺(y,y・・・)及び(z,z・・・)を通り、該平面(S−S’)に垂直な2つの垂直面をそれぞれ垂直面(Ly,Ly・・・)及び垂直面(Lz,Lz・・・)とし、かつ
(1)垂直面(Ly)と垂直面(Lz)とがなす内角をrx
(2)垂直面(Lz)と垂直面(Lx)とがなす内角をry
(3)垂直面(Ly)と垂直面(Lx)とがなす内角をrz
とした場合、本発明の三角錐型再帰反射素子は、3つの内角rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なる。
上記三角錐型再帰反射素子は、3つの内角のうち2つの内角が等しい前記Jungersen 再帰反射素子及びHoopman再帰反射素子とは異なり、その3つの内角rx、内角ry、内角rzは、それぞれ実質的に異なっており、その大きさの順序は、上記例においては、ry<rz<rxである。
【0043】
また、図5(ハ)に示されている本発明の三角錐型再帰反射素子の一態様においては、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から該平面(S−S’)に下された垂線と該平面(S−S’)との交点(P)から、該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(p)と、光学軸と該平面(S−S’)との交点(Q)から該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(q)との差(q−p)がマイナス(−)となるような方向に、該光学軸が上記垂直面(Lx)に対して傾いている。
【0044】
図6には、図5に示した三角錐型再帰反射素子とは別の態様の本発明の好ましい態様の三角錐型再帰反射素子の一例が示されており、図6(イ)及び(ロ)は、それぞれ、該三角錐型再帰反射素子群中の1対の三角錐型再帰反射素子の平面図及びその線(L−L’)に沿って切断した断面図である。
【0045】
上記三角錐型再帰反射素子は、前記図5に示された三角錐型再帰反射素子と同様、その3つの内角rx、ry及びrzはそれぞれ実質的に異なっているが、前記図5に示した三角錐型再帰反射素子とは異なり、多数の三角錐型再帰反射素子対のその共有する多数の底辺(x,x・・・)は平面(S−S’)上にあるが、その共有する多数の底辺(y,y・・・)と、その共有する多数の底辺(z,z・・・)は、平面(S−S’)とは異なり、且つ平面(S−S’)と平行な他の平面(T−T’)上にある。
【0046】
多数の三角錐型再帰反射素子対の多数の底辺(x,x・・・)を含む平面を(S−S’)とし、該素子対の多数の底辺(y,y・・・)を含む平面を平面(T−T’)とし、さらに該素子対の多数の底辺(z,z・・・)を含む平面を平面(U−U’)とすると、本発明においては、平面(S−S’)と、平面(T−T’)と(平面U−U’)は、それぞれの本発明の三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さが、異なっていてもよいし、それらの頂点(H1,H2)までの高さが同一でもよいし、或いはそれらの中の一つの平面の高さのみが異なっていても良い。
【0047】
また、多数の、相対峙する二つの三角錐型再帰反射素子の共有する多数の底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhsとし、
該三角錐型再帰反射素子の他の一方の底辺(y,y・・・)を含む平面(T−T’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhtとし、かつ該三角錐型再帰反射素子のさらに他の底辺(z,z・・・)を含む平面(U−U’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhuとした場合に、
(1) hsがht及びhuよりも大であって、かつhtがhuと等しい本発明の態様が図6の(イ)、(ロ)に示されており、さらに
【0048】
(2) hs>hu>ht
である本発明の態様が図7の(イ)及び(ロ)に示されており、さらに、
(3) hs>ht>hu
である態様が図8の(イ)、(ロ)、(ハ)に示されている。
【0049】
また、図6(ロ)に示されている本発明の態様においては、該三角錐型再帰反射素子対の有している光学軸(H1−Q,H2−Q)は、互いに上記垂直面(Lx)に関して正反対の方向に傾いている傾斜三角錐型キューブコーナー再帰反射シートであり、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から該平面(S−S’)に下された垂線と該平面(S−S’)との交点(P)から、該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(p)と、光学軸と該平面(S−S’)との交点(Q)から該三角錐型再帰反射素子対が共有する底辺(x)までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に、該光学軸が上記垂直面(Lx)に対して傾いている。
【0050】
図7及び図8には、本発明に従った三角錐型再帰反射素子の更に別の好ましい一例が示されており、図7(イ)は、基盤上に配置された三角錐型再帰反射素子群の平面図であり、図7(ロ)は、該平面図の断面線(L−L’)で切断した断面図であり、図8(イ)、(ロ)及び(ハ)はそれぞれ、該三角錐型再帰反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の平面図、断面図及び側面図である。
【0051】
図7に示した本発明の三角錐型反射素子は、図7(イ)に示されているとおり、平面(S−S')上の一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、それぞれ実質的に対称となるように向き合った実質的に同一の形状の素子対をなして、繰り返しのパターンで最密充填状に配置されているために、該共有の底辺(x)は一つの連続した直線を構成している。また、隣接した他の三角錐型反射素子対の群が共有する多数の底辺(x)は、前記の多数の底辺(x)を構成する直線と平行で、等しい繰り返しピッチをもつ平行直線群を形成する。
【0052】
したがって、上記三角錐型反射素子の該傾斜面(c1面、c2面)は、底辺(x)を共有して相対峙しており、底辺(x)は一つの連続した直線を構成しているために、c1面は一つの連続した平面を形成し、同様に、c2面も連続した平面を形成している。さらに、図7(イ)に見られるように、c1面及びc2面は5角形であり、a1面、a2面は4角形であり、b1面、b2面は三角形を形成している。
【0053】
図8(イ)について説明すると、一対の三角錐型反射素子の右側の素子R1と左側の素子R2とは、共通の底辺A−Bの中心点Oを中心として180゜回転した関係をなしている。そして、素子R1について説明すると、素子R1のc1面は、点H1−D1−A−B−E1で囲まれる五角形状の面であり、a1面は点H1−E1−G1−F1で囲まれる四角形状の面であり、またb1面は点H1−D1−F1で囲まれる三角形状の面であり、a1面とb1面は実質的に異なった形状であり、c1面、a1面及びb1面は互いに実質的に直角に交差している。
【0054】
図8(ロ)及び(ハ)に示したように、本発明の三角錐型反射素子(R1、R2)の頂点は、それぞれH1及びH2で表わされており、頂点(H1、H2)の平面(S−S')からの高さはhsで表わされる。
【0055】
この高さhsは、図8(イ)、(ロ)及び(ハ)から明らかなように、本発明の三角錐型反射素子R1及びR2の相対峙するc1面とc2面がなすV字状の谷の、該素子の頂点H1及びH2を含む面からの深さに該当する。
【0056】
本発明における三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子は、該三角錐型再帰反射素子の底辺(x,x・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な垂直面を垂直面(Lx,Lx・・・)とし、
該三角錐型再帰反射素子の他の2つの底辺(y,y・・・)及び(z,z・・・)を通り、該平面(S−S’)に垂直な2つの垂直面をそれぞれ垂直面(Ly,Ly・・・)及び垂直面(Lz,Lz・・・)とし、かつ
(1)垂直面(Ly)と垂直面(Lz)とがなす内角をrx
(2)垂直面(Lz)と垂直面(Lx)とがなす内角をry
(3)垂直面(Ly)と垂直面(Lx)とがなす内角をrz
とした場合、3つの内角rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なることを特徴とするものであって、これにより種々の光学的特性の改善が得られる。
【0057】
第9図は、本発明の三角錐型再帰反射素子の内角rx、ry及びrzを説明する三角座標である。
内角の和、rx+ry+rz=180゜であり、
(rx+ry+rz)/180゜=1であるから、
三角座標の1つの頂点Kx1に、rx/180゜=1の値を置き、
他の1つの頂点Ky1に、ry/180゜=1の値を置き、
更に他の1つの頂点Kz1に、rz/180゜=1の値を置くと、任意の三角形の3つの内角rx、ry及びrzをそれぞれrx/180゜,ry/180゜及びrz/180゜に置き換えることにより、該三角座標上に表すことができ、逆に、三角座標で表された点により該三角形の3つの内角rx、ry及びrzが一義的に決まる。
【0058】
例えば、点(Kd)で示された三角形の3つの内角rx、ry及びrzについては、図9の三角座標に示されるように、
rx/180゜は線分(Kdx−Kd)の長さの値である0.467で表され、
ry/180゜は線分(Kdy−Kd)の長さの値である0.167で表され、
rz/180゜は線分(Kdz−Kd)の長さの値である0.366で表されから、
点(Kd)は三角座標上で(0.467,0.167,0.366)と表示することができる。
なお、上記表示の一般的表示を(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)とする。
【0059】
三角錐型再帰反射素子の三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)は、実質的に直角に互いに交差しているため、3つの内角rx、ry及びrzのいずれの内角も90゜以下であるので、三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzは、上記三角座標上の点(Kx0)即ち(0,0.5,0.5)、点(Ky0)即ち(0.5,0,0.5)及び点(Kz0)即ち(0.5,0.5,0)をその3つの頂点とする逆正三角形の内部に位置した点で表される。
【0060】
前記図2(イ)で示されたJungersen 再帰反射素子若しくは前記図4(ハ)で示されたHoopman再帰反射素子等の如く、3つの内角rx、ry及びrzのいずれかの2つの内角が等しい場合には、
点(Kxs)を三角座標上の(0.5,0.25,0.25)にとり、
点(Kys)を三角座標上の(0.25,0.5,0.25)にとり、
点(Kzs)を三角座標上の(0.25,0.25,0.5)にとると、
それぞれの3つの内角rx、ry及びrzは、線分(Kx0−Kxs)、線分(Ky0−Kys)又は線分(Kz0−Kzs)上の点で表すことができる。
【0061】
本発明における三角錐型再帰反射素子は、その3つの内角rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なるため、該3つの内角rx、ry及びrzを三角座標で表した場合に、(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が、点(Kx0)即ち(0,0.5,0.5)、点(Ky0)即ち(0.5,0,0.5)及び点(Kz0)即ち(0.5,0.5,0)を3つの頂点とする逆正三角形の内部であり、かつ実質的に線分(Kx0−Kxs)、線分(Ky0−Kys)又は線分(Kz0−Kzs)上に含まれない領域に存在する。
【0062】
本発明においては、上記(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が
(0.492,0.242,0.266)、(0.492,0.042,0.466)及び(0.358,0.308,0.333)で囲まれた第1領域、
(0.267,0.242,0.491)、(0.467,0.042,0.491)及び(0.333,0.308,0.358)で囲まれた第2領域、
(0.242,0.267,0.491)、(0.019,0.467,0.514)及び(0.317,334,0.350)で囲まれた第3領域、
(0.242,0.492,0.266)、(0.019,0.492,0.489)及び(0.317,0.358,0.325)で囲まれた第4領域、
(0.267,0.492,0.241)、(0.467,0.492,0.041)及び(0.333,0.358,0.308)で囲まれた第5領域、
及び
(0.492,0.267,0.241)、(0.492,0.467,0.041)及び(0.358,0.334,0.308)で囲まれた第6領域、
のいずれかの領域に属するのが好適である。
【0063】
本発明においては、更に好ましくは、上記(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が
(0.484,0.234,0.282)、(0.484,0.084,0.432)及び(0.384,0.284,0.332)の各点で囲まれた第1領域、
(0.284,0.234,0.482)、(0.434,0.084,0.482)及び(0.334,0.284,0.382)の各点で囲まれた第2領域、
(0.234,0.284,0.482)、(0.084,0.434,0,482)及び(0.284,0.334,0.382)の各点で囲まれた第3領域、
(0.234,0.484,0.282)、(0.084,0.484,0.432)及び(0.284,0.384,0.332)の各点で囲まれた第4領域、
(0.284,0.484,0.232)、(0.434,0.484,0.082)及び(0.334,0.384,0.282)の各点で囲まれた第5領域、
及び(0.484,0.284,0.232)、(0.484,0.434,0.082)及び(0.384,0.334,0.282)の各点で囲まれた第6領域のいずれかの領域に存在する。
【0064】
図10には、本発明の三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzを三角座標で表した場合に、(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が取り得る好適な上記6領域を、前記三角座標の点(Kx0)、点(Ky0)及び点(Kz0)の各点を頂点とする逆三角形部分のみを拡大して示した。
【0065】
なお、図10において、点(N7)と点(N8)とをその両端とする線分は、前記Hoopman特許で開示された再帰反射素子における3つの内角rx、ry及びrzの値(角度)が位置する範囲であり、点(N9)と点(N10)とをその両端とする線分は、前記本発明者が出願した特許出願(特願平8−295807号)に記載された三角錐型再帰反射素子における3つの内角rx、ry及びrzの値(角度)が位置する範囲である。
【0066】
従来技術における再帰反射素子では、素子の持つ光学軸は共有の底辺(x、x、・・・・)と垂直な方向に向かっており、光学軸の傾斜の方向は(p―q)がプラスである場合もマイナスである場合も垂直面Lxに対して直角な方向に傾斜している。従って、共有の底辺(x、x、・・・・)と垂直な方向から入射した光、即ち、光学軸の傾斜方向と平行に入射した光に対しては最大の反射性能を示すが、該方向から傾斜面(a面及びb面)方向に左右に外れた方向から入射した光(即ち、回転角ωがゼロでない)に対する反射性能は劣る。また、その低下の程度はa面とb面の両方向において対称である。
【0067】
上記のような従来技術における再帰反射素子をもちいた再帰反射シートを交通標識に用いた場合の問題点を、路側標識の場合を例に以下に説明する。
【0068】
上記のような光学軸の傾斜の方向が垂直面Lxに対して直角な方向に傾斜している再帰反射素子を例えば路側標識に用い、その光学軸の傾斜方向を道路の進行方向に向かって左右に広がる方向に向けるように設置した場合(即ち、共有の底辺(x、x...)が道路面に対して垂直に向けられた場合)には、再帰反射性能は進行方向に向かって左右に増大されるようになる。従って、路側標識の左下側(右側通行の国においては右下側)を進行する運転手に対して再帰反射の性能が改善する事ができるが、再帰反射の低下の程度はa面とb面の両方向(路側標識の上下方向)において対称であるために、輝度性能の左右方向の改善は達成されても上下方向の改善はなされない。
【0069】
一方、本発明における三角錐型キューブコーナー再帰反射素子は、3つの内角rx、ryおよびrzがそれぞれ実質的に異なるために、二つの傾斜面(a1、b1 及びa2、b2 )の共通の稜線(H1、C1 及びH2、C2 )が共有する垂直面(Lx)と垂直な方向に向かわず、従って、再帰反射素子の持つ光学軸の傾斜する方向も垂直面(Lx)と垂直な方向に向かっていない。例えば、光学軸がa面方向に傾いている場合には、入射光がa面方向から入射した場合には、むしろ、b面方向から入射した場合よりも良好な再帰反射性能を示す。
【0070】
従って、本発明における再帰反射素子の光学軸はLx面に対して傾けられていると同時に、a面(またはb面方向)にも傾けられているために、それらいずれの方向に改善された再帰反射性能を示すために、本発明における再帰反射素子を路側標識に用いた場合には、道路進行方向に向かって左右の方向に対する改善とともに、上下方向に対して偏った再帰反射性能が達成される。このような改善は路側標識のみならず、頭上標識、種々の案内標識においても同様な改善が達成しうる。
【0071】
本発明のhtとhuとが等しく、かつhsがht及びhuと異なる三角錐型再帰反射素子においては、
該hsと(ht及びhu)との大である高さをhmaxとし、小であるものをhminとした場合に、
1.05 < hmax/hmin < 1.5
であることが好ましく、
1.07 < hmax/hmin < 1.3
であることが更に好ましく、
1.09 < hmax/hmin < 1.2
であることが特に好ましい。
【0072】
このようなht/hsの値を満足する三角錐型再帰反射素子対の底辺を共有している傾斜面(c1面、c2面)の面積は、他の二つの傾斜面(a1面、b1面及びa2面、b2面)の面積に対して、略等しい面積を持つことができるために、三面反射して再帰反射する光線を増大することができる。
【0073】
光学軸傾斜角(θ)が、頂点(H1,H2)から平面(S−S’)に下した垂線に対して4゜〜12゜、特に5〜10゜となるように光学軸が傾斜するのが好ましい。
【0074】
更に本発明に従うhs、ht及びhuのいずれもが実質的に異なる三角錐型再帰反射素子においては、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、仮想平面(T−T’)までの高さ(ht)が、該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から、仮想平面(U−U')までの高さ(hu)よりも実質的に大であるように設計されているために、上記と同様な理由により、底辺(x、x、....)を含み、該三角錐型再帰反射素子が配列された面に垂直な垂直面(Lx)内にあって、該三角錐型再帰反射素子が配列された面の方向に傾いた方向から入射する光線に対して、再帰反射性を高めることができる。
【0075】
上記hs、ht及びhuのいずれもが異なる三角錐型再帰反射素子においては、該hs、ht及びhuの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとし、残りのものをhmidとした場合に、
1.05 < hmax/hmid < 1.5
1.05 < hmid/hmin < 1.5
であることが好ましく、
1.07 < hmax/hmid < 1.3
1.07 < hmid/hmin < 1.3
であることが更に好ましく、
1.09 < hmax/hmid < 1.2
1.09 < hmid/hmin < 1.2
であることが特に好ましい。
【0076】
このようなht/hsの値を満足する三角錐型再帰反射素子対の底辺を共有している3つの傾斜面(c1面、c2面)の面積、傾斜面(a1面、a2面)の面積及び傾斜面(a1面、b1面及びa2面、b2面)の面積は、略等しい面積を持つことができるために、三面反射して再帰反射する光線を増大することができる。
【0077】
上記三角錐型再帰反射素子の高さhs、ht及びhuのいずれもが好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは60〜200μmであることが推奨されうる。高さhs、ht又はhuのいずれかが50μm未満の場合は、反射素子の大きさが小さくなりすぎるために、反射素子の平面開口面積により定まる回折効果により、再帰反射光の発散が過大となり、正面輝度特性が低下する。また、高さhs、ht又はhuのいずれかが400μmを超える場合には、シートの厚さが過大となり、柔軟なシートが得られにくいため好ましくない。
【0078】
また本発明における三角錐型再帰反射素子のプリズム面である三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される三つのプリズム面角は、実質的に直角となるが、必ずしも厳密な意味で直角(90゜)でなくてもよく、必要に応じて直角から極く僅かに角度偏差を与えるようにすることも可能である。該プリズム面角に極く僅かに角度偏差を与えることによって、得られる三角錐型再帰反射素子からの反射光を適度に発散させることができる。しかしながらこの角度偏差を大きくし過ぎると、得られる三角錐型再帰反射素子からの反射光が発散し過ぎて再帰反射性能が低下するので、これら三つの傾斜面(a1面、b1面、c1面)又は(a2面、b2面、c2面)が互いに交差することによって形成される少なくとも一つプリズム面角の大きさは、一般に89.5゜〜90.5゜、好ましくは89.7゜〜90.3゜の範囲内となるようにするのがよい。
【0079】
本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、一般に、以上述べたような三角錐型再帰反射素子の形状が、反転された凹形状として金属製のベルト上に最密充填状に配置されたキューブコーナー成形用金型を用い、この成形用金型に、後記するような柔軟で且つ光学的透明性、均一性に優れた適宜の樹脂シートを加熱押圧して、該金型の形状を樹脂シートに反転・転写させて製造することができる。
【0080】
上記のキューブコーナー成形用金型の代表的な製造方法については、例えば前記 Stamm の米国特許第3,712,706号に詳細に記載されており、本発明においてもこの方法に準じた方法を採用することができる。
【0081】
具体的には、例えば、表面を平坦に研削した基材の上に、先端角度が73.4〜81.0゜程度の超硬質のバイト(例えばダイアモンドバイト、タングステンカーバイド製バイト等)を用いて、2つの方向(図3のz方向及びy方向)に、該2方向の交差角度(ここでは鋭角の方を「交差角度」という)が該三角錐型再帰反射素子の内角rxと等しくなるように、目的の三角錐型再帰反射素子の形状に即して、それぞれの方向の繰り返しピッチ及び溝の深さ、並びに相互の交差角度を定めて、所定の溝の深さで断面形状がV字型の平行溝を切削する。次いで、第3方向(x方向)を、先端角度が64.5〜46.5゜程度の同様の超硬質バイトを用いて、形成されているz方向溝とy方向溝との交点を通り、x方向とz方向との交差角度を該三角錐型再帰反射素子の内角ryと等しく、且つx方向とy方向との交差角度を該三角錐型再帰反射素子の内角rzと等しくするような繰り返しピッチ(図5(イ)又は図7(イ)の線xの繰り返しピッチ)でV字型平行溝を切削することにより、凸状の微小な三角錐が最密充填状に配置されたマイクロプリズム母型を作成する。本発明においてはこの時、z方向とy方向との交差角度、即ち該三角錐型再帰反射素子の内角rx、x方向とz方向との交差角度、即ち該三角錐型再帰反射素子の内角ry及びx方向とy方向との交差角度、即ち該三角錐型再帰反射素子の内角rzが、それぞれ実質的に異なるようにする。
【0082】
前記マイクロプリズム母型の作成に好適に用いることのできる基材としては、ビッカース硬さ(JIS Z 2244)が350以上、特に380以上の金属材料が好ましく、具体的には、例えば、アモルファス銅、電析ニッケル、アルミニウム等を挙げることができ、合金系材料としては、例えば、銅−亜鉛合金(真鍮)、銅−錫−亜鉛合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−亜鉛合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0083】
また前記基材としては、合成樹脂材料の使用も可能であり、切削加工時に軟化して高精度の切削が困難となるなどの不都合が生じにくい等の理由から、そのガラス転移点が150℃以上、特に200℃以上で且つロックウェル硬さ(JIS Z 2245)が70以上、特に75以上の合成樹脂からなる材料であるのが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びセルローストリアセテート系樹脂等を挙げることができる。
【0084】
上記の如き合成樹脂からの平板の作成は、通常の樹脂成形法、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、溶液キャスト法等により行うことができ、必要に応じてさらに加熱処理、延伸処理等の処理を行うことができる。かくして作成される平板の平面には、本発明の方法によって製造されるプリズム母型から電鋳金型を作成する際の導電処理及び/又は電鋳加工を容易にするため、予備導電処理を施すことができる。予備導電処理としては、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニッケル、セレン等の金属を蒸着する真空蒸着法、これらの金属を用いる陰極スパッタリング法、銅やニッケルを用いる無電解メッキ法等が挙げられる。また、合成樹脂にカーボンブラック等の導電性微粉末や有機金属塩等を配合し、平板それ自体に導電性をもたせるようにしてもよい。
【0085】
次に得られたマイクロプリズム母型は、その表面に電鋳加工が施されて金属被膜が形成される。この金属被膜を母型表面から取り外すことにより、本発明の三角錐型コーナーキューブ型再帰反射シートの成形に用いるための金属製金型を作成することができる。
【0086】
金属製マイクロプリズム母型の場合には、必要に応じてその表面を洗浄した後、直ちに電鋳加工を行うことができるが、合成樹脂製マイクロプリズム母型の場合には、電鋳加工を行うに先だって、先ず母型のプリズム表面に導電性を付与させるための導電処理を施す必要がある。この導電処理としては、例えば、銀鏡処理、無電解メッキ処理、真空蒸着処理、陰極スパッタリング処理などが採用可能である。
【0087】
上記の銀鏡処理としては、具体的には、前述の方法で形成した母型の表面をアルカリ洗剤などにより洗浄してその油成分などの汚れを除去した後、タンニン酸などの表面活性化剤を用いて活性化処理を行い、次いで速やかに硝酸銀溶液を用いて銀鏡化する方法が挙げられる。この銀鏡化は硝酸銀水溶液と還元剤(ブドウ糖やグリオキザール等)水溶液の二筒式ノズルガンを用いたスプレー法、硝酸銀水溶液と還元剤水溶液との混合液中に浸漬する浸漬法などが採用しうる。また、銀鏡被膜の厚さは電鋳時の導電性が満足される範囲で薄い方が好ましく、例えば、0.1μm以下の厚さを例示しうる。
【0088】
無電解メッキ処理には、銅やニッケルがなど用いられる。無電解ニッケルメッキ液においては、ニッケルの水可溶性金属塩として硫酸ニッケルや塩化ニッケルなどを用いることができ、これに錯化剤としてクエン酸塩やリンゴ酸塩を主成分とした溶液、及び還元剤として次亜リン酸ナトリウム、ホウ素化水素ナトリウム、アミンボランなどを加えたものがメッキ液として用いられる。
【0089】
真空蒸着処理は、銀鏡処理と同様に母型表面の洗浄を行った後、真空装置に入れ、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、セレン等の金属を加熱気化させて、冷却されている該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることによって行うことができる。また、陰極スパッター処理は、平滑で所望の金属箔を装着できる陰極板と被処理材料を載せるアルミニウム又は鉄など金属製の陽極台が内部に設けられている真空装置に、真空蒸着処理と同様に処理した母型を入れて陽極台上に置き、真空蒸着の場合に用いたと同様の金属の箔を陰極に取り付けて荷電してグロー放電を起こさせ、これにより発生する陽イオン流を陰極の金属箔に衝突させることにより金属原子又は微粒子を蒸発させ、これを該母型表面に析出させて導電被膜を形成させることにより行うことができる。これらの方法において形成される導電被膜の厚さとしては、例えば、300μの厚さが例示される。
【0090】
合成樹脂製プリズム母型に、電鋳加工に際して平滑で均一な電鋳層を形成するためには、上記の導電処理は該母型の全面にわたって均一に施す必要がある。導電処理が不均一な場合には、導電性の悪い部分の電鋳層表面の平滑性が低下したり、又は電鋳層が形成されず欠損部分となってしまうなどの不具合を生じる可能性がある。
【0091】
この不具合を回避するためには、例えば、銀鏡処理の直前に処理面をアルコールなどの溶剤で処理することにより銀鏡液の濡れを改善する方法を採用しうるが、本発明において形成される合成樹脂製プリズム母型は凹部分が非常に深く鋭角なために、濡れの改善が不十分となりがちである。この凹形状に基づく導電被膜の不具合は蒸着処理などにおいても起こり易い。
【0092】
電鋳加工により得られる電鋳層の表面を均一なものとするために、しばしば活性化処理が行われる。この活性化処理としては、例えば、10重量%スルファミン酸水溶液に浸漬する方法等を採用することができる。
【0093】
銀鏡処理が行われた合成樹脂製の母型に電鋳加工を行った場合には、銀の層は電鋳層と一体化されて合成樹脂製の母型から容易に剥離されるが、無電解メッキや陰極スパッタリング処理でニッケルなどの導電被膜を形成した場合は、合成樹脂表面と該導電被膜との密着が良いために、電鋳加工後の電鋳層と合成樹脂層との剥離が困難となる場合がある。そのようなときには、電鋳加工に先だって導電被膜層の上にクロメート処理などの所謂剥離処理を行うのがよい。その場合、導電被膜層は剥離後に合成樹脂層上に残留する。
【0094】
表面に導電被膜層が形成された合成樹脂製プリズム母型は、このような各種の前処理を行った後、電鋳加工により該導電被膜層の上に電鋳層が形成される。また、金属製プリズム母型は、前記のように必要に応じてその表面を洗浄した後、該金属上に直接電鋳層が形成される。
【0095】
電鋳加工は、一般に、例えば、スルファミン酸ニッケル60重量%水溶液中、40℃、電流条件10A/dm2程度の条件下で行われる。電鋳層の形成速度としては、例えば、48時間/mm以下程度とすることにより均一な電鋳層が得られやすく、それ以上の形成速度においては表面の平滑性の欠如や電鋳層の中に欠損部分が生じるなどの不具合が起こりやすい。
【0096】
また、電鋳加工においては、金型の表面摩耗性の改善を目的として、コバルトなどの成分を加えたニッケル・コバルト合金電鋳を行うこともできる。コバルトを10〜15重量%加えることにより、得られる電鋳層のビッカース硬度Hvを300〜400にまで硬くすることが可能であるので、得られる電鋳金型を用いて合成樹脂を成形し、本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを製造するに際して、該金型の耐久性を改善することが可能となる。
【0097】
このようにしてプリズム母型から作成した第1世代の電鋳金型は、さらに第2世代の電鋳金型を作成するのに用いる電鋳マスターとして、繰り返し用いることができる。従って、一つのプリズム母型から幾つもの電鋳金型を作成することが可能である。
【0098】
作成された複数個の電鋳金型は、精密に切断された後に、合成樹脂によるマイクロプリズムシートの成形を行うための最終的な金型の大きさまで組み合せ接合して用いることができる。この接合の方法としては、切断端面を単に突き合わせる方法や組み合わせた接合部分を、例えば電子ビーム溶接、YAGレーザー溶接、炭酸ガスレーザー溶接などの方法で溶接する方法などが採用可能である。
【0099】
組み合わされた電鋳金型は、合成樹脂成形用金型として合成樹脂の成形に用いられる。この合成樹脂成形の方法としては圧縮成形や射出成形を採用することができる。
【0100】
圧縮成形は、例えば、形成した薄肉状のニッケル電鋳金型、所定の厚さの合成樹脂シート及びクッション材として厚さ5mm程度のシリコーンゴム製シートを、所定の温度に加熱された圧縮成形プレスに挿入した後、成形圧の10〜20%の圧力下で30秒予熱を行った後、180〜250℃、10〜30kg/cm2程度の条件下で約2分間加熱加圧することにより行うことができる。しかるのち、加圧状態のままで室温まで冷却して圧力を開放することにより、プリズム成形品を得ることが可能である。
【0101】
さらに、例えば、上記方法で形成した厚さ約0.5mmの薄肉電鋳金型を、前記溶接法により接合してエンドレスベルト金型を作成し、このベルト金型を加熱ロールと冷却ロールとからなる1対のロール上に設置して回転させ、加熱ロール上にあるベルト金型に、溶融した合成樹脂をシート状の形状で供給し、1個以上のシリコーン製ロールで加圧成形を行った後、冷却ロール上でガラス転移点温度以下に冷却して、ベルト金型から引き剥がすことにより連続したシート状の製品を得ることが可能である。
【0102】
次に本発明のキューブコーナー再帰反射シートの好適な構造の一態様について、その断面図である図11を参照しながら説明する。
【0103】
図11において、1は本発明の三角錐型再帰反射素子(R1、R2)が最密充填状に配置された反射素子層、2は反射素子を保持する保持体層であり、10は光の入射方向である。反射素子層(1)および保持体層(2)は一体であるのが普通であるが、別々の層を積層しても構わない。本発明における再帰反射シートの使用目的、使用環境に応じて表面保護層(4)、観察者に情報を伝達したりシートの着色のための印刷層(5)、反射素子層の裏面に水分が侵入するのを防止するための密封封入構造を達成するための結合材層(6)、結合材層(6)を支持する支持体層(7)、および、該再帰反射シートを他の構造体に貼付するために用いる接着剤層(8)と剥離材層(9)とを設けることができる。
【0104】
表面保護層(4)には再帰反射素子層(1)に用いたのと同じ樹脂を用いることが出来るが耐候性を向上する目的で紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などをそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることが出来る。さらに、着色剤としての各種の有機顔料、無機顔料および染料などを含有させることが出来る。
【0105】
印刷層(5)は通常、表面保護層(4)と保持体層(2)の間、あるいは、表面保護層(4)の上や反射素子(1)の反射面上に設置することが出来、通常グラビア印刷、スクリーン印刷およびインクジェット印刷などの手段により設置可能である。
【0106】
上記反射素子層(1)および保持体層(2)を構成する材料としては本発明の一つの目的である柔軟性を満足するものであれば特に限定されるものではないが、光学的透明性、均一性のあるものが好ましい。本発明において使用し得る材料の例としては、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂及びポリウレタン樹脂などを例示できる。
【0107】
本発明における反射素子層(1)は内部全反射条件を満足する臨界角度を大きくする目的でキューブコーナー再帰反射素子背面に空気層(3)を設置するのが一般的である。使用条件下において水分の侵入による臨界角の低下および金属層の腐食などの不具合を防止するために反射素子層(1)と支持体層(7)とは結合剤層(6)によって密封封入されるのが好ましい。この密封封入の方法としては米国特許第3,190,178号、第4,025,159号、日本公開実用新案昭和50−28669号等に示されている方法が採用できる。結合剤層(6)に用いる樹脂としては(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などがあげられ、接合の方法としては公知の熱融着性樹脂接合法、熱硬化性樹脂接合法、紫外線硬化性樹脂接合法、電子線硬化性樹脂接合法などが適宜採用可能である。
【0108】
本発明に用いる結合剤層(6)は支持体層(7)の全面にわたって塗布しうるし、再帰反射素子層との接合部分に印刷法などの方法により選択的に設置することも可能である。
【0109】
支持体層(7)を構成する材料の例としては再帰反射素子層を構成する樹脂や一般のフィルム成形可能な樹脂、繊維、布、ステンレスやアルミニウムなどの金属箔または板をそれぞれ単独または複合して用いることが出来る。
【0110】
本発明の再帰反射シートを金属板、木板、ガラス板、プラスチック板などに貼付するために用いる接着層(8)および該接着剤のための剥離層(9)は、適宜、公知のものを選択することができる。
【0111】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0112】
実施例1
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、
第1方向(図5(イ)のx方向)を、先端角度が113.4゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが174.3μm、溝の深さが80.0μmとなるように、断面形状がV字の平行溝を、繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0113】
しかる後に、第2方向を(図5(イ)のy方向)を、先端角度が49.3゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが211μm、溝の深さが80.0μmであって、図5(ロ)の角度(A−B−C1)で表わされる線xとの交差角度が45.7゜となるように、断面形状がV字の平行溝を、繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0114】
更に、第3方向に(図5(イ)のz方向)を、先端角度が41.9゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが239.8μm、溝の深さが80.0μmであって、図5(ロ)の角度(B−A−C1)で表わされる線xとの交差角度が 54.4゜、角度(A−C1−B)で表わされる線yとの交差角度が79.9゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0115】
真鍮板上に三角錐型再帰反射素子の平面(S−S')からの高さが80μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが、最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型再帰反射素子の3つの内角は、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0116】
この真鍮製母型を用いて電鋳法により、材質がニッケルであって、形状が反転された凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成した。この成形用金型を用いて、厚さ300μmのポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスティックス株式会社製「ユーピロン E2000」)を成形温度200℃、成形圧力50kg/cm2の条件で圧縮成形した後に、加圧下で30℃まで冷却してから樹脂シートを取り出して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、その3つの傾斜面の底辺がいずれも同一の平面(S−S’)上に存在し、該平面(S−S’)からその頂点(H1,H2)までの高さhs=80μm、3つの内角が、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7のキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0117】
実施例2
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、第1方向(x方向)を、先端角度が113.4゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが174.3μm、溝の深さが72.7μmとなるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0118】
しかる後に、第2方向(y方向)を、先端角度が49.3゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが211μm、溝の深さが80μmであって、線xとの交差角度が45.7となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0119】
更に、第3の方向(z方向)を、先端角度が41.9゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが240μm、溝の深さが80μm、線xとの交差角度が54.4゜、線yとの交差角度が79.9゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0120】
真鍮板上に三角錐型再帰反射素子の平面(S−S')からの高さ(hs)が 72.7μm、平面(T−T')からの高さ(ht)及び平面(U−U')からの高さ(hu)が80μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型再帰反射素子の3つの内角は、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0121】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hs=72.2μm、ht=hu=80μm、3つの内角が、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7のキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0122】
実施例3
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、第1方向(x方向)を、先端角度が113゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが174μm、溝の深さが72.9μmとなるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0123】
しかる後に、第2方向(y方向)を、先端角度が49.3゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが211μm、溝の深さが80μm、線xとの交差角度が45.7゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0124】
更に、第3方向(z方向)を、先端角度が41.9゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが240μm、溝の深さが88μm、線xとの交差角度が54.4゜、線yとの交差角度が79.9゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0125】
真鍮板上に三角錐型再帰反射素子の平面(S−S')からの高さ(hs)が 72.7μm、平面(T−T')からの高さ(ht)が80μm、平面(U−U')からの高さ(hu)が88μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型再帰反射素子の3つの内角は、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0126】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hs=72.2μm、ht=80μm、hu=88μm、3つの内角は、それぞれ、rx=79.9、ry=54.4、rz=45.7のキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0127】
実施例4
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、
第1方向(y方向)を、先端角度が95.3゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが161μm、溝の深さが72.7μmとなるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0128】
しかる後に、第2方向(z方向)を、先端角度が67.9゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが173μm、溝の深さが80μmであって、線yとの交差角度が42.3゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0129】
更に、第3方向(x方向)を、先端角度が44.2゜のダイアモンドバイトを用いて、繰り返しピッチが230μm、溝の深さが88μmであって、線yとの交差角度が63.6゜、線zとの交差角度が74.1゜となるように断面形状がV字の平行溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削した。
【0130】
真鍮板上に三角錐型再帰反射素子の平面(S−S')からの高さ(hs)が 88μm、平面(T−T')からの高さ(ht)が72.7μm、平面(U−U')からの高さ(hu)が80μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この三角錐型再帰反射素子の3つの内角は、それぞれ、rx=42.3、ry=74.1、rz=63.6であり、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0131】
以下、実施例1と同様に材質がニッケルの凹形状のキューブコーナー成形用金型を作成し、これを用いて実施例1と同様のポリカーボネート樹脂シートを同様の成形条件で圧縮成形して、表面に支持体層の厚さが約250μmで、hs=88μm、ht=72.7μm、hu=80μm、3つの内角が、それぞれ、rx=42.3、ry=74.1、rz=63.6でのキューブコーナーを最密充填状に配置したポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0132】
比較例1
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(z方向)と第2方向(y方向)が61.98゜で、第3方向(x方向)が86.53゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが181.24μmで第3方向の繰り返しピッチが160.29μm、また第1方向と第2方向との交差角度が68.86゜となるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上にキューブコーナー再帰反射素子の高さが80μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。この反射素子の光学軸傾斜角θは−8゜、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0133】
実施例1と同じ方法でポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0134】
比較例2
表面を平坦に研削した100mm角の真鍮板の上に、先端角度が第1方向(z方向)と第2方向(y方向)が73.44゜で、第3方向(x方向)が64.53゜のダイアモンドバイトを用いて、第1方向と第2方向との繰り返しピッチが166.92μmで第3方向の繰り返しピッチが177.23μm、また第1方向と第2方向との交差角度が56.18゜となるように断面形状がV字の溝を繰り返しのパターンでフライカッティング法によって切削し、真鍮板上に反射素子の高さが80μmの凸形状の多数の三角錐型キューブコーナーが最密充填状に配置された母型を形成した。このキューブコーナー再帰反射素子の光学軸傾斜角θは+3゜、三角錐を構成する三面のプリズム面角はいずれも90゜であった。
【0135】
実施例1と同じ方法でポリカーボネート樹脂製の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成した。
【0136】
第1表に、上記実施例1〜2、及び比較例1〜2で作成した三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの再帰反射輝度の測定データー〔反射輝度の単位は、いずれも(cd/Lx・m2)〕を示した。実施例1及び実施例2の再帰反射シートは広範な範囲で高い反射輝度を示したが、比較例1の反射シートは特に入射角が5゜〜10゜での輝度変化が大きく、比較例2の反射シートにおいては入射角30゜における輝度低下が大きく、従って、いずれの比較例においても入射角特性が劣っている。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術であるJungersen 特許に記載された図面であり、(イ)は三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの反射素子群の平面図を表すFig15であり、(ロ)は該反射素子群の断面図を表すFig17である。
【図2】上記図1に示された反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の図であり、(イ)は平面図であり、(ロ)は断面図である。
【図3】従来技術であるHoopman特許に記載された図面であり、(イ)は三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの反射素子群の平面図を表すFig3であり、(ロ)は該反射素子群の断面図を表すFig4である。
【図4】上記図3に示された反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の図であり、(イ)は平面図であり、(ロ)は断面図である。
【図5】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子の1例を説明する、その共有する底辺(x,x・・・)、底辺(y,y・・・)及び底辺(z,z・・・)がいずれも同一平面(S−S’)に包含される三角錐型再帰反射素子の図であり、(イ)は該三角錐型再帰反射素子の反射素子群の平面図であり、(ロ)は該反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の平面図であり、(ハ)は該反射素子対の断面図である。
【図6】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子の別の1例を説明する、その共有する底辺(x,x・・・)が平面(S−S’)に包含され、底辺(y,y・・・)及び底辺(z,z・・・)がいずれも該平面(S−S’)とは異なる平面(T−T’)に包含される三角錐型再帰反射素子の図であり、(イ)は三角錐型再帰反射素子対の平面図であり、(ロ)は該反射素子対の断面図である。
【図7】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを構成する三角錐型再帰反射素子の更に別の1例を説明する、その共有する底辺(x,x・・・)、底辺(y,y・・・)及び底辺(z,z・・・)がいずれもそれぞれ異なる平面に包含される三角錐型再帰反射素子群の図であり、(イ)は該三角錐型再帰反射素子群の平面図であり、(ロ)は該三角錐型再帰反射素子群の断面図である。
【図8】上記図7に示された反射素子群中の1組の三角錐型再帰反射素子対の図であり、(イ)は三角錐型再帰反射素子対の平面図であり、(ロ)は該反射素子対の断面図であり、(ハ)は側面図である。
【図9】三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzの値(角度)を表す三角座標の図である。
【図10】従来技術による三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzの値(角度)及び本発明に従う三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzの値(角度)の好適範囲を表す三角座標の部分図である。
【図11】本発明の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートの一例を説明する断面図である。
【符号の説明】
1.反射素子層
2.保持体層
3.空気層
4.表面保護層
5.印刷層
6.結合材層
7.支持体層
8.接着剤層
9.剥離材層
Claims (12)
- 互いに直角に交差する3つの傾斜面を有する三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が、互いに、その一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、基盤上に最密充填状に配置されており、それぞれ、相対峙する二つの該三角錐型再帰反射素子は、その共有する底辺(x,x・・・)の中点を通り、多数の該底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)に垂直な線を中心にして180度回転して、それぞれ実質的に対称となるように向き合って、実質的に同一形状の三角錐型再帰反射素子対を形成しており、かつ該三角錐型再帰反射素子の底辺(x,x・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な垂直面を垂直面(Lx,Lx・・・)とし、該三角錐型再帰反射素子の他の2つの底辺(y,y・・・)及び(z,z・・・)上を通り、該平面(S−S’)に垂直な2つの垂直面をそれぞれ垂直面(Ly,Ly・・・)及び垂直面(Lz,Lz・・・)とし、かつ
(1)垂直面(Ly)と垂直面(Lz)とがなす内角をrx
(2)垂直面(Lz)と垂直面(Lx)とがなす内角をry
(3)垂直面(Ly)と垂直面(Lx)とがなす内角をrz
とした場合、3つの内角rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なると共に、
多数の、相対峙する二つの三角錐型反射素子の共有する多数の底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhsとし、該三角錐型再帰反射素子の他の一方の底辺(y,y・・・)を含む平面(T−T’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhtとし、かつ該三角錐型再帰反射素子のさらに他の底辺(z,z・・・)を含む平面(U−U’)から該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1,H2)までの高さをhuとした場合に、hs、ht及びhuが全て異なることを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 該三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzが、それぞれ、実質的に異なり、かつ、該3つの内角rx、ry及びrzの最大の内角を内角rmaxとすると、該内角rmaxが
63゜≦ rmax ≦88゜
である請求項1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 該三角錐型再帰反射素子の3つの内角rx、ry及びrzが、それぞれ、実質的に異なり、かつ該3つの内角rx、ry及びrzを三角座標で表した場合に、(rx/180゜,ry/180゜,rz/180゜)が
(0.492,0.242,0.266)、(0.492,0.042,0.466)及び(0.358,0.308,0.333)で囲まれた第1領域、
(0.267,0.242,0.491)、(0.467,0.042,0.491)及び(0.333,0.308,0.358)で囲まれた第2領域、
(0.242,0.267,0.491)、(0.019,0.467,0.514)及び(0.317,334,0.350)で囲まれた第3領域、
(0.242,0.492,0.266)、(0.019,0.492,0.489)及び(0.317,0.358,0.325)で囲まれた第4領域、
(0.267,0.492,0.241)、(0.467,0.492,0.041)及び(0.333,0.358,0.308)で囲まれた第5領域、
及び
(0.492,0.267,0.241)、(0.492,0.467,0.041)及び(0.358,0.334,0.308)で囲まれた第6領域、
のいずれかの領域に存在する請求項1に記載された三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 上記hsが、ht及びhuよりも実質的に大である請求項1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から平面(S−S')に下された垂線と該平面(S−S')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該平面(S−S')との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(q)との差(q−p)がプラス(+)となるような方向に該光学軸が前記垂直面(Lx,Lx・・・)と4゜〜12゜の角度をなすように傾いている請求項4に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 上記hsが、ht及びhuよりも実質的に小である請求項1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 該三角錐型再帰反射素子の頂点(H1、H2)から平面(S−S')に下された垂線と平面(S−S')との交点(P)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(p)と、該三角錐型反射素子の光学軸と該平面(S−S')との交点(Q)から該素子対が共有する底辺(x、x、....)までの距離(q)との差(q−p)がマイナス(−)となるような方向に該光学軸が前記垂直面(Lx,Lx・・・)と4゜〜12゜の角度をなすように傾いている請求項6に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 上記hsとhtとhuがそれぞれ実質的に相違し、該hs、ht及びhuの最も大であるものをhmaxとし、最も小であるものをhminとし、残りのものをhmidとした場合に、
1.05 < hmax/hmid < 1.5
1.05 < hmid/hmin < 1.5
である請求項1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。 - 上記hs、ht及びhuがいずれも50μ以上であり、かつ400μ以下である請求項1〜8のいずれか1に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シート。
- 母型基盤上に、一定の繰り返しピッチで平行な多数のV字上の溝をそれぞれ異なるx方向、y方向及びz方向の3方向に切削し、この際、該3方向のy方向の溝とz方向の溝の交差角度をrx、x方向の溝とz方向の溝の交差角度をry、x方向の溝とy方向の溝の交差角度をrzとした場合、3つの交差角度rx、ry及びrzがそれぞれ実質的に異なる方向に該x方向、y方向及びz方向を定めて、該3方向にそれぞれ多数の該V字状の溝を切削することにより、
互いに直角に交差する3つの傾斜面(a,b,c)を有する三角錐型キューブコーナー素子が、互いに、その一つの底辺(x)を共有して、相対峙して、基盤上に最密充填状に配置され、それぞれ、相対峙する二つの該三角錐型キューブコーナー素子は、その共有する底辺(x,x・・・)の中点を通り、多数の該底辺(x,x・・・)を含む平面(S−S’)に垂直な線を中心にして180度回転して、それぞれ実質的に対称となるように向き合って、実質的に同一形状の一対の三角錐型キューブコーナー素子を形成しており、かつ各三角錐型キューブコーナー素子の3つの頂角に対応する該rx、ry及びyzがそれぞれ実質的に異なる三角錐型キューブコーナー素子が多数配置され、
該x方向の溝の深さをvx、y方向の溝の深さをvy、z方向の溝の深さをvzとした場合、vx、vy及びvzが全て異なる
ことを特徴とする三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作製するための母型の製造方法。 - 上記vxが、vy及びvzよりも実質的に大となるように該3方向に該溝を切削する請求項10に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作成するための母型の製造方法。
- 上記vxが、vy及びvzよりも実質的に小となるように該3方向に該溝を切削する請求項10に記載の三角錐型キューブコーナー再帰反射シートを作製するための母型の製造方法。
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