以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
[光学体の構成]
図1Aは、第1の実施形態に係る光学体の一構成例を示す断面図である。図1Bは、図1Aの光学体を被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。光学体1は、いわゆる指向反射性能を有する。光学体1は、内部に凹凸形状の界面を有する光学層2と、この光学層2の界面に設けられた波長選択反射層3とを備える。光学層2は、凹凸形状の第1の面を有する第1の光学透明層4と、凹凸形状の第2の面を有する第2の光学透明層5とを備える。光学層2の内部の界面は、対向配置された凹凸形状の第1の面と第2の面とにより形成されている。具体的には、光学体1は、凹凸面を有する第1の光学透明層4と、第1の光学透明層4の凹凸面上に形成された波長選択反射層3と、波長選択反射層3が形成された凹凸面を埋めるように、波長選択反射層3上に形成された第2の光学透明層5とを備える。光学体1は、太陽光などの光が入射する入射面S1と、この入射面S1より入射した入射光のうち、光学体1を透過した光が出射される出射面S2とを有する。
光学体1は、内壁部材、外壁部材、窓材、壁材などに適用して好適なものである。また、光学体1は、ブラインド装置のスラット(日射遮蔽部材)やロールカーテンのスクリーン(日射遮蔽部材)として用いても好適なものである。さらに、光学体1は、障子などの建具(内装部材又は外装部材)の採光部に設けられる光学体として用いても好適なものである。
光学体1は、必要に応じて、光学層2の出射面S2に第1の基材4aをさらに備えるようにしてもよい。また、光学体1は、必要に応じて、光学層2の入射面S1に第2の基材5aをさらに備えるようにしてもよい。なお、第1の基材4a及び/又は第2の基材5aを光学体1に備える場合には、第1の基材4a及び/又は第2の基材5aを光学体1に備えた状態において、後述する透明性及び透過色などの光学特性を満たすことが好ましい。
光学体1は、必要に応じて貼合層6をさらに備えるようにしてもよい。貼合層6は、光学体1の入射面S1及び出射面S2のうち、窓材10に貼り合わされる面に形成される。この場合、光学体1は貼合層6を介して被着体である窓材10の屋内側又は屋外側に貼り合わされる。貼合層6としては、例えば、接着剤(例えば、UV硬化型樹脂、2液混合型樹脂)を主成分とする接着層又は粘着剤(例えば、感圧粘着材(PSA:Pressure Sensitive Adhesive))を主成分とする粘着層を用いることができる。貼合層6が粘着層である場合、貼合層6上に形成された剥離層7をさらに備えることが好ましい。このような構成にすることで、剥離層7を剥離するだけで、貼合層6を介して窓材10などの被着体に対して光学体1を容易に貼り合わせることができる。
光学体1は、第2の基材5aと、貼合層6及び/又は第2の光学透明層5の接合性を向上させる観点から、第2の基材5aと、貼合層6及び/又は第2の光学透明層5との間に、プライマー層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。また、同様の箇所の接合性を向上させる観点から、プライマー層に代えて又はプライマー層とともに、公知の物理的前処理を施すことが好ましい。公知の物理的前処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられる。
光学体1は、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1又は出射面S2上、又はその面と波長選択反射層3との間に、バリア層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。バリア層の材料としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiOx)、及びジルコニアの少なくとも1種を含む無機酸化物、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリフッ化ビニル樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物(EVOH)の少なくとも1種を含む樹脂材料などを用いることができる。また、バリア層の材料としては、例えば、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al2O3、SiO2−Cr2O3−ZrO2からなる複合酸化物(SCZ)、SiO2−In2O3−ZrO2からなる複合酸化物(SIZ)、TiO2、及びNb2O5の少なくとも1種を含む誘電体材料を用いることもできる。
上述のように、光学体1が入射面S1又は出射面S2にバリア層をさらに有する場合には、バリア層が形成された第2の光学透明層5又は第1の光学透明層4が以下の関係を有することが好ましい。すなわち、バリア層が形成された基材5a又は基材4aの水蒸気透過率を、第2の光学透明層5又は第1の光学透明層4のものよりも低くすることが好ましい。これにより、光学体1の入射面S1又は出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散をさらに低減することができるからである。このようにバリア層を備えることで、入射面S1又は出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。これにより、光学体1の耐久性を向上させることができる。
光学体1は、表面に耐擦傷性などを付与する観点から、ハードコート層8をさらに備えるようにしてもよい。ハードコート層8は、光学体1の入射面S1及び出射面S2のうち、窓材10などの被着体に貼り合わされる面とは反対側の面に形成することが好ましい。ハードコート層8の鉛筆硬度は、耐擦傷性の観点から、好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上である。ハードコート層8は、樹脂組成物を塗布、硬化して得られる。この樹脂組成物としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのオルガノシラン系熱硬化型樹脂、エーテル化メチロールメラミンなどのメラミン系熱硬化樹脂、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの多官能アクリレート系紫外線硬化樹脂などが挙げられる。ハードコート層8を形成する樹脂組成物は、必要に応じて、光安定剤、難燃剤及び酸化防止剤などの添加剤をさらに含有するようにしてもよい。
このように、ハードコート層8を形成すれば、光学体1に耐擦傷性を付与することができるので、例えば光学体1を窓材10の内側に貼り合わせた場合には、光学体1の表面を人が触ったり、又は光学体1の表面を掃除したときにも傷の発生を抑制したりすることができる。また、光学体1を窓材10の外側に貼り合わせた場合にも、同様に傷の発生を抑制することができる。
光学体1の入射面S1又は出射面S2には、防汚性などを付与する観点から、撥水性又は親水性を有する層をさらに備えてもよい。このような機能を有する層は、例えば、防汚剤を有する独立の防汚層として形成してもよいし、ハードコート層8などの各種機能層に防汚剤を含有することで防汚機能をもたせてもよい。防汚剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1個以上の(メタ)アクリル基、ビニル基、又はエポキシ基を有するシリコーンオリゴマー及び/又はフッ素含有オリゴマーを用いることが好ましい。シリコーンオリゴマー及び/又はフッ素オリゴマーの配合量は、固形分の0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。配合量が0.01質量%未満であると、防汚機能が不十分となる傾向がある。一方、配合量が5質量%を超えると、塗膜硬度が低下する傾向がある。防汚剤としては、例えば、DIC株式会社製のRS−602、RS−751−K、サートマー社製のCN4000、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC−HP、信越化学工業株式会社製のX−22−164E、チッソ株式会社製のFM−7725、ダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL350、デグサ社製のTEGORad2700などを用いることが好ましい。例えばハードコート層8に防汚機能をもたせる場合、防汚性が付与されたハードコート層8の純粋接触角は、好ましくは70°以上、より好ましくは90°以上である。また、例えばハードコート層8上に防汚層を独立して形成する場合、ハードコート層8と防汚層との間の密着性を向上する観点からすると、ハードコート層8と防汚層との間に、カップリング剤層(プライマー層)をさらに有することが好ましい。
光学体1は、窓材10などの被着体に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、可撓性を有することが好ましい。したがって、光学体1には、可撓性を有するフィルムやシートが含まれるものとする。
光学体1は、透明性を有していることが好ましい。透明性としては、後述する透過写像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。第1の光学透明層4と第2の光学透明層5との屈折率差は、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。
第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5のうち、窓材10などと貼り合わせる側となる光学層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、粘着材を主成分とする第1の光学透明層4又は第2の光学透明層5により、光学体1を窓材10などに貼り合わせることができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲を満たすことが好ましい。
第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とは、可視領域において透明性を有する同一材料、例えば同一樹脂材料からなることが好ましい。第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上させることができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する層の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、波長選択反射層3を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、遠くの電灯など点光源に近い物を観察すると回折パターンが顕著に観察される傾向がある。なお、屈折率の値を調整するために、第1の光学透明層4及び/又は第2の光学透明層5に添加剤を混入させてもよい。
第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とは、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合は前者だけを指すことがあるが、第1の実施形態に係る光学体1では両者を備えることが好ましい。例えば、現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することを目的としている。そのため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができる。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、第1の実施形態に係る光学体1は、指向反射する特定の波長以外の光を透過させる。そのため、この透過波長を主に透過する光学体1を透過体に接着して、その透過光を観察するためには、光の散乱がないことが好ましい。ただし、その用途によっては、第2の光学透明層5に意図的に散乱性を持たせることも可能である。
光学体1は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体、例えば、窓材10に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。窓材10としては、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。建築用窓材に光学体1を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材10に光学体1を適用することが好ましい。このような位置の窓材10に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。光学体1は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、窓材10は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。光学層2は、可視領域において透明性を有することが好ましい。このように透明性を有することで、光学体1を窓ガラスなどの窓材10に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができるからである。また、貼り合わせる面としてはガラスの内面のみならず、外面にも使用することができる。
また、光学体1は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と光学体1との界面(すなわち、光学体1の最表面)に光吸収塗膜を設けることもできる。また、光学体1は、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学体1と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、紫外線カット層については、光学体1よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学体1の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学体1の間の貼合層中に、紫外線吸収剤を添加するようにしてもよい。
また、光学体1の用途に応じて、光学体1に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5の少なくとも一方が、可視領域における特定の波長帯の光を主として吸収する構成とすることが好ましい。
図2は、光学体1に対して入射する入射光と、光学体1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学体1は、光Lが入射する入射面S1を有する。光学体1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した入射光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過することが好ましい。また、光学体1は、上記特定波長帯以外の光L2に対して透明性を有するのが好ましい。その透明性としては、後述する透過写像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。なお、図2において、θは、入射面S1に対する垂線l1と、入射光L又は反射光L1とのなす角である。また、φは、入射面S1内の特定の直線l2と、入射光L又は反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。
ここで、入射面S1内の特定の直線l2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学体1の入射面S1に対する垂線l1を軸として光学体1を回転したときに、入射光と同一象限への反射強度が最大になる軸である(図3A参照)。ただし、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l2として選択するものとする。なお、入射光と同一象限とは、本明細書では、特定の直線l2と交差する入射面S1内の直線と、垂線l1とを含む面を境とする入射光側である。好ましくは、入射光と同一象限は、特定の直線l2が垂線となる面、すなわち特定の直線l2と直交する面を境とする入射光側とするとよい。また、θの極性は、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。また、φの極性は、直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
選択的に指向反射する特定波長帯の光及び透過させる特定の光は、光学体1の用途により異なる。例えば、窓材10に対して光学体1を適用する場合、選択的に指向反射する特定波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体1をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射を有し、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。また、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
光学体1において、指向反射する方向は、入射光と同一象限とするとよい。これにより、光学体1を窓材10に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。光学体1は、赤外線センサーや赤外線撮像のように、特定の方向から赤外線をセンシングする必要がないので、再帰反射方向を入射方向と厳密に同一方向とする必要はない。
本実施形態に係る光学体1は、後述するように、第1の光学透明層4の凹凸面がひし形に交差する稜線部を持つ複数の四角錐状の凹部により形成されている。これにより、光学体1は、入射面S1に入射角(θ=60°、φ=0°)で入射した入射光のうち、反射角(θ=0°〜90°、φ=−90°〜90°)の方向への特定波長帯の光の反射率をR1とし、反射角(θ=−90°〜90°、φ=−90°〜90°)の方向への特定波長帯の光の反射率をR2とするとき、
R1≧R2×0.5 ・・・(1)
を満たしている。したがって、光学体1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができる。これにより、周辺の建物への影響を軽減することができ、ヒートアイランド現象を低減できる。つまり、ヒートアイランド現象は、一般に太陽の仰角(高度)が60°以上になると助長される傾向にある。本実施形態に係る光学体1は、ヒートアイランド現象が開始される入射角θ=60°において入射面S1で反射される特定波長帯の光のうち、50%以上の光を入射光と同じ象限に反射させることができるので、ヒートアイランド現象を低減できる。
光学体1において、透過性を持つ波長帯に対する透過写像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。透過写像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過写像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。透過写像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
光学体1において、透過性を持つ波長帯に対するヘイズは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下とするとよい。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
光学体1の入射面S1、好ましくは入射面S1及び出射面S2は、透過写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1及び出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。測定条件は、JIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置及び測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
光学体1の透過色は、なるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層2及び波長選択反射層3を透過し、出射面S2から出射される透過光及び反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすとよい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えたりするため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、5°以上60°以下の入射角度θで入射面S1又は出射面S2から入射し、光学体1により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値及び色座標yの差の絶対値は、光学体1の両主面のいずれにおいても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下とするとよい。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1及び出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
正反射近傍での色変化を抑制するためには、好ましくは5°以下、更に好ましくは10°以下の傾斜角を有する平面が含まれないことが好ましい。また、波長選択反射層3が樹脂で覆われている場合、入射光が空気から樹脂に入射する際に屈折するため、より広い入射角の範囲で正反射光近傍での色調変化を抑制することができる。その他、正反射以外への反射色が問題になる場合は、問題となる方向に指向反射しないように、光学体1を配置することが好ましい。
以下、光学体1を構成する第1の光学透明層4、第2の光学透明層5及び波長選択反射層3について順次説明する。
(第1の光学透明層、第2の光学透明層)
第1の光学透明層4は、例えば、波長選択反射層3を支持し、かつ保護するためのものである。第1の光学透明層4は、光学体1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第1の光学透明層4の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第1の面)である。波長選択反射層3は該凹凸面上に形成される。
第2の光学透明層5は、波長選択反射層3が形成された第1の光学透明層4の第1の面(凹凸面)を包埋することにより、波長選択反射層3を保護するためのものである。第2の光学透明層5は、光学体1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第2の光学透明層5の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第2の面)である。第1の光学透明層4の凹凸面と第2の光学透明層5の凹凸面とは、互いに凹凸を反転した関係にある。
第1の光学透明層4の凹凸面は、ひし形に交差する稜線部を持つ複数の四角錐状の凹部4cが最稠密充填状態で2次元配列されて形成されている。第2の光学透明層5の凹凸面は、ひし形に交差する稜線部を持つ複数の四角錐状の凸部5cが2次元配列されて形成されている。第1の光学透明層4の四角錐状の凹部4cと第2の光学透明層5の四角錐状の凸部5cとは、凹凸が反転している点のみが異なるので、以下では第1の光学透明層4の四角錐状の凹部4cについて説明する。
図3Aは、第1の光学透明層4に形成された四角錐状の凹部4cの形状例を示す平面図である。図3Bは、図3Aに示す四角錐状の凹部4cの形状例を示す斜視図である。図3Cは、図3Aに示す四角錐状の凹部4cが形成された第1の光学透明層4の拡大断面図である。図3A及び図3Bに示すように、四角錐状の凹部4cは、第1の方向の直線l3(破線で示す)に沿って平行に並ぶ複数の稜線部4d1と、直線l3と交差する第2の方向の直線l4(破線で示す)に沿って平行に並ぶ稜線部4d2とにより最稠密充填状態で2次元配列されて形成されている。各々の四角錐状の凹部4cは、四角錐面を形成する第1の斜面T1、第2の斜面T2、第3の斜面T3及び第4の斜面T4と、ひし形の開口面とを有している。稜線部4d1は、隣接する四角錐状の凹部4cの第2の斜面T2と第4の斜面T4とで形成される。同様に、稜線部4d2は、隣接する四角錐状の凹部4cの第1の斜面T1と第3の斜面T3とで形成される。
ここで、直線l3と直線l4との成す角、すなわち稜線部4d1と稜線部4d2との交差角度(内角)θ1は、稜線部4d1と稜線部4d2とによってひし形が形成できれば特に制限はない。しかし、四角錐状の凹部4cを後述するように金型を用いる転写法により形成する場合は、金型の製作上の観点からすると、25°≦θ1≦120°とするのが好ましい。波長選択反射層3は四角錐状の凹部4c上に成膜させるため、波長選択反射層3の形状は、四角錐状の凹部4cの表面形状と同様の形状を有することになる。また、稜線部4d1の頂角η1及び稜線部4d2の頂角η2、すなわち隣接する四角錐状の凹部4cの第2の斜面T2と第4の斜面T4との成す角度、及び隣接する四角錐状の凹部4cの第1の斜面T1と第3の斜面T3との成す角度は、金型の製作上及び上式(1)を満たす上では、60°≦η1(η2)≦120°とするとよい。稜線部4d1及び稜線部4d2は、加工誤差を含む尖状であってもよいし、球面形状や非球面状の湾曲形状であってもよい。稜線部4d1及び稜線部4d2が球面形状や非球面状の湾曲形状に形成されている場合、頂角ηは湾曲部より手前の部分の辺の開き角度とする。
また、図3Aにおいて、四角錐状の凹部4cの2次元配列方向の一方をZ方向、他方をY方向、Z方向及びY方向に直交する方向をX方向とする3次元の直交座標系を定義する。なお、図3Aにおいては、ひし形の開口面の一方の対角線はZ方向と一致し、他方の対角線はY方向と一致している。図3Aにおいて四角錐状の凹部4cのY方向のピッチPy及びZ方向のピッチPzは、好ましくは5μm以上5mm以下、より好ましくは5μm以上250μm未満、さらに好ましくは20μm以上200μm以下とするとよい。ピッチPy及びピッチPzが5μm未満であると、四角錐状の凹部4cの形状を所望のものとすることが難しい上、波長選択反射層3の波長選択特性は一般的には急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると回折が生じて高次の反射まで視認されるため、透明性が悪く感じられる傾向がある。一方、ピッチPy及びピッチPzが5mmを超えると、指向反射に必要な四角錐状の凹部4cの形状を考慮した場合、必要な膜厚が厚くなりフレキシブル性が失われ、窓材10などの剛体に貼りあわせることが困難になる。また、ピッチPy及びピッチPzを250μm未満にすることにより、さらにフレキシブル性が増し、ロール・ツー・ロールでの製造が容易となり、バッチ生産が不要となる。窓などの建材に光学体1を適用するためには、数m程度の長さが必要であり、バッチ生産よりもロール・ツー・ロールでの製造が適している。さらに、ピッチPy及びピッチPzを20μm以上200μm以下とした場合には、より生産性が向上する。
図3Cは、四角錐状の凹部4cのZ方向の対角線に沿った拡大断面図を示している。四角錐状の凹部4cは、当該凹部4cのひし形の開口面の重心4fを通る垂線l1に関して非対称な形状としてもよい。この場合、四角錐状の凹部4cの主軸lmは、垂線l1に対して角度θ2傾くことになる。以下、この角度θ2を傾斜角度θ2とも言う。ここで、主軸lmとは、四角錐状の凹部4cの最下点4eとひし形の開口面の重心4fとを通る直線を意味する。傾斜角度θ2の方向は、地面に対して略垂直に配置された窓材10に光学体1を貼り合わせた場合、窓材10の上方側(上空側)とするとよい。図3Cでは、四角錐状の凹部4cの主軸lmが、Z(+)方向に傾いた例が示されている。したがって、この場合、図3Aに示すように、四角錐状の凹部4cの第1の斜面T1の面積をS1、第2の斜面T2の面積をS2、第3の斜面T3の面積をS3、第4の斜面T4の面積をS4とすると、S1(=S2)<S3(=S4)、となる。また、本実施形態において、特定の直線l2は、図3Aに示すように、ひし形の開口面の一方の対角線と平行なZ方向の直線(破線で示す)として定義される。
このように、四角錐状の凹部4cを上方に傾けると、例えば上方から入射角60°で入射する入射光は、入射する方向(方位角)に応じて、殆どが面積の大きい第3の斜面T3及び/又は第4の斜面T4に入射することになる。そして、第3の斜面T3に入射した入射光のうち特定波長帯の光の殆どは、第3の斜面T3で一回反射されて入射光と同一象限に反射される。同様に、第4の斜面T4に入射した入射光についても、特定波長帯の光の殆どは、第4の斜面T4で一回反射されて入射光と同一象限に反射される。ここで、傾斜角度θ2は、適宜設定することができる。例えば、上方から入射する入射光のうち特定波長帯の光を波長選択反射層3による1回の反射によって入射光と同一象限に効率的に戻すためには、θ2≦25°、とするとよい。θ2>25°となると、入射角が大きくなるに従って特定波長帯の光を下方に反射させる割合が高くなるからである。
第1の光学透明層4は、100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていることが好ましい。具体的には、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であり、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上である樹脂を含んでいることが好ましい。なお、第1の光学透明層4は、1種類の樹脂構成されているのが好ましいが、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。また、必要に応じて、添加剤が混入されていてもよい。
このように100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていると、熱又は熱と加圧とを伴うプロセスが第1の光学透明層4の凹凸面(第1の面)を形成後に存在する場合でも、設計した界面形状をほぼ保つことができる。これに対して、100℃での貯蔵弾性率の低下が大きく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異なる樹脂を主成分としていると、設計した界面形状からの変形が大きくなり、光学体1にカールが生じたりする。
ここで、熱を伴うプロセスには、アニール処理などのように直接的に光学体1又はその構成部材に対して熱を加えるようなプロセスのみならず、薄膜の成膜時及び樹脂組成物の硬化時などに、成膜面が局所的に温度上昇して間接的にそれらに対して熱を加えるようなプロセスや、エネルギー線照射により金型の温度が上昇し、間接的に光学体に熱を加えるようなプロセスも含まれる。また、上述した貯蔵弾性率の数値範囲を限定することにより得られる効果は、樹脂の種類に特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂及びエネルギー線照射型樹脂のいずれでも得ることができる。
第1の光学透明層4の貯蔵弾性率は、例えば以下のようにして確認することができる。第1の光学透明層4の表面が露出している場合には、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。また、第1の光学透明層4の表面に第1の基材4aなどが形成されている場合には、第1の基材4aなどを剥離して、第1の光学透明層4の表面を露出させた後、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。
高温下での弾性率の低下を抑制する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂にあっては、側鎖の長さ及び種類などを調整する方法が挙げられ、熱硬化型樹脂及びエネルギー線照射型樹脂にあっては、架橋点の量及び架橋材の分子構造などを調整する方法が挙げられる。ただし、このような構造変更によって樹脂材料そのものに求められる特性が損なわれないようにすることが好ましい。例えば、架橋剤の種類によっては室温付近での弾性率が高くなり、脆くなってしまったり、収縮が大きくなりフィルムが湾曲したり、カールしたりすることがあるので、架橋剤の種類を所望とする特性に応じて適宜選択することが好ましい。
第1の光学透明層4が、結晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、ガラス転移点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、ガラス転移点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
第1の光学透明層4が、非晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、融点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、融点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
ここで、製造プロセス中の最高温度とは、製造プロセス中における第1の光学透明層4の凹凸面(第1の面)の最高温度を意味している。上述した貯蔵弾性率の数値範囲及びガラス転移点の温度範囲は、第2の光学透明層5も満たしていることが好ましい。
すなわち、第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である樹脂を含んでいることが好ましい。室温25℃において光学体1に可撓性を付与することができるので、ロール・ツー・ロールでの光学体1の製造が可能となるからである。
第1の基材4a及び第2の基材5aは、例えば、透明性を有している。基材の形状としては、光学体1に可撓性を付与する観点から、フィルム状を有することが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではない。第1の基材4a及び第2の基材5aの材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。第1の基材4a及び第2の基材5aの厚さは、生産性の観点から38〜100μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。第1の基材4a及び第2の基材5aは、エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、後述するように、第1の基材4a又は第2の基材5aと波長選択反射層3との間に介在させたエネルギー線硬化型樹脂に対して、第1の基材4a又は第2の基材5a側からエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化型樹脂を硬化させることができるからである。
第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5は、例えば、透明性を有する。第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5は、例えば、樹脂組成物を硬化することにより得られる。樹脂組成物としては、製造の容易性の観点からすると、光又は電子線などにより硬化するエネルギー線硬化型樹脂又は熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型樹脂としては、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物が最も好ましい。樹脂組成物は、第1の光学透明層4又は第2の光学透明層5と波長選択反射層3との密着性を向上させる観点から、リン酸を含有する化合物、コハク酸を含有する化合物、ブチロラクトンを含有する化合物をさらに含有することが好ましい。リン酸を含有する化合物としては、例えばリン酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはリン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーを用いることができる。コハク酸を含有する化合物としては、例えば、コハク酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはコハク酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーを用いることができる。ブチロラクトンを含有する化合物としては、例えば、ブチロラクトンを含有する(メタ)アクリレート、好ましくはブチロラクトンを官能基に有する(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有している。また、紫外線硬化型樹脂組成物が、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤及び酸化防止剤などをさらに含有するようにしてもよい。
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。ここで、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
光重合開始剤としては、公知の材料から適宜選択したものを使用できる。公知の材料としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で又は併用して用いることができる。重合開始剤の配合量は、固形分中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、光硬化性が低下し、実質的に工業生産に適さない。一方、10質量%を超えると、照射光量が小さい場合に、塗膜に臭気が残る傾向にある。ここで、固形分とは、硬化後のハードコート層12を構成する全ての成分をいう。具体的には例えば、アクリレート及び光重合開始剤などを固形分という。
樹脂はエネルギー線照射や熱などによって構造を転写できるものが好ましく、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性樹脂など上述の屈折率の要求を満たすものであればどのような種類の樹脂を使用しても良い。
硬化収縮を低減するために、オリゴマーを添加してもよい。硬化剤としてポリイソシアネートなどを含んでもよい。また、第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5との密着性を考慮して水酸基やカルボキシル基、リン酸基を有するような単量体、多価アルコール類、カルボン酸、シラン、アルミ、チタンなどのカップリング剤や各種キレート剤などを添加しても良い。
樹脂組成物が、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。この架橋剤としては、環状の架橋剤を用いることが特に好ましい。架橋剤を用いることで、室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。なお、室温での貯蔵弾性率が大きく変化すると、光学体1が脆くなり、ロール・ツー・ロール工程などによる光学体1の作製が困難となる。環状の架橋剤としては、例えば、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。
第1の基材4a又は第2の基材5aは、第1の光学透明層4又は第2の光学透明層5より水蒸気透過率が低いことが好ましい。例えば、第1の光学透明層4をウレタンアクリレートのようなエネルギー線硬化型樹脂で形成する場合には、第1の基材4aを第1の光学透明層4より水蒸気透過率が低く、かつ、エネルギー線透過性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂により形成することが好ましい。これにより、入射面S1又は出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学体1の耐久性を向上させることができる。なお、厚み75μmのPETの水蒸気透過率は、10g/m2/day(40℃、90%RH)程度である。
第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5の少なくとも一方が、極性の高い官能基を含み、その含有量が第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とで異なることが好ましい。第1の光学透明層4と第2の光学透明層5との両方が、リン酸化合物(例えば、リン酸エステル)を含み、第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とにおける上記リン酸化合物の含有量が異なることが好ましい。リン酸化合物の含有量は、第1の光学透明層4と第2の光学透明層5とにおいて、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上異なる。
第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5の少なくとも一方が、リン酸化合物を含む場合、波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学透明層4又は第2の光学透明層5と接する面に、酸化物もしくは窒化物、酸窒化物を含むことが好ましい。波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学透明層4又は第2の光学透明層5と接する面に、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化ニオブを含む層を有することが特に好ましい。これらの光学層と波長選択反射層3との密着性が向上するためである。また、波長選択反射層3がAg等の金属を含む場合に、腐食防止効果が高いからである。また、この波長選択反射層3は、Al、Gaなどのドーパントを含有していても良い。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。
第1の光学透明層4及び第2の光学透明層5の少なくとも一方が、光学体1や窓材10などに意匠性を付与する観点からすると、可視領域における特定の波長帯の光を吸収する特性を有することが好ましい。樹脂中に分散させる顔料は、有機系顔料及び無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料とすることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2又はCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr2O3など)、ピーコックブルー((CoZn)O(AlCr)2O3)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)2O3)、紺青(CoO・Al2O3・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl2O3)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
(波長選択反射層)
波長選択反射層3は、入射面に入射した入射光のうち、特定波長帯の光を指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光を透過するものである。波長選択反射層3は、非晶質高屈折率層と、金属層とが交互に積層されていてもよい。ただし、波長選択反射層3の最表面が高屈折率層である場合、最表面の高屈折率層は、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。
第1の光学透明層4の凹凸形状の第1の面上に、結晶質の高屈折率層を形成すると、高屈折率層が均一な厚みにならないので、その上に形成される金属層も均一に成膜されずに、日光吸収が大きくなる。本発明者らは鋭意検討した結果、第1の光学透明層4の凹凸形状の第1の面上に、非晶質高屈折率層を形成すると、非晶質高屈折率層が均一の厚みになり、その上に形成される金属層も均一に成膜され、日光吸収が小さくなることを見出した。
波長選択反射層3の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。波長選択反射層3の平均厚みが20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
((金属層))
金属層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、合金などが挙げられる。金属単体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどが挙げられる。合金としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ag系、Cu系、Al系、Si系又はGe系の材料が好ましく、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFeがより好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、Ti、Ndを添加することが好ましい。
金属層の平均厚みとしては、5.0nm〜23.0nmであることが好ましい。金属層の平均厚みが5.0nmより小さいと表面が平滑でも、光が透過して反射しないことがあり、23.0nmを超えると光が透過しないことがある。
金属層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透過型電子顕微鏡による断面測定、蛍光X線膜厚計、X線反射率法などが挙げられる。
金属層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
((非晶質高屈折率層))
非晶質高屈折率層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する非晶質な高屈折率層である。非晶質高屈折率層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属酸化物、金属窒化物などが挙げられる。金属酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アルミニウムなどが挙げられる。金属窒化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンなどが挙げられる。
非晶質高屈折率層は、更に添加する元素や量を制御して非晶質膜になりやすい材料を適用することが好ましい。そのような材料としては、例えば、In2O3とIn2O3に対して10質量%〜40質量%のCeO2とを含有する複合金属酸化物、ZnOとZnOに対して20質量%〜40質量%のSnO2とを含有する複合金属酸化物、及びZnOとZnOに対して10質量%〜20質量%のTiO2とを含有する複合金属酸化物などが挙げられる。非晶質性については、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、層の断面画像の観察により確認することができる。ここで高屈折率とは、例えば、屈折率1.7以上を指す。
非晶質高屈折率層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜200nmが好ましく、15nm〜150nmがより好ましく、20nm〜130nmが特に好ましい。
非晶質高屈折率層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
(その他の層)
その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、機能層などが挙げられる。
(機能層)
機能層は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb2O5などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする薄膜を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
又は、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の印加により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープ又は脱ドープにより、反射特性が変わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態及び/又はその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウム及びニッケルの合金材料、マグネシウム及びチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
具体的な機能層の構成としては、例えば、第2の光学透明層5上に、上述の金属層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta2O5などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。又は、第2の光学透明層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極の間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープ又は脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるために、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、第2の光学透明層5上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中の針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶が四方八方を向き、波長選択反射状態にしたりすることができる。
[光学体の機能]
図4は、光学体1の機能の一例を説明するための断面図である。図4に示すように、光学体1をZ(+)方向を上方として設置した場合、光学体1に上空から入射した太陽光(入射光)Lのうち近赤外線L1の一部は、波長選択反射膜3で反射されて、入射した方向と同一象限に指向反射される。これに対して、可視光L2は、光学体1を透過する。本実施形態に係る光学体1は、第1の光学透明層4に四角錐状の凹部4cが形成され、その凹部4c上に波長選択反射層3が成膜されているので、上方向から入射した入射光を上方向に反射させる割合を多くすることが可能である。これにより、入射角60°で上空から入射する近赤外線L1の一部を、波長選択反射膜3による1回の反射で入射光と同一象限に指向反射させることが可能となり、最終的な反射成分を2回以上反射させる形状よりも多くすることができる。例えば、ある波長に対する波長選択反射層の反射率が80%とすると、2回反射の場合の上空反射率は64%となるが、1回反射で済めば上空反射率は80%となる。
図5A〜図5Cは、光学体1の機能の一例を説明するための平面図である。図5A〜図5Cにおいて、光学体1はZ(+)方向を上方として設置されている。図5Aは、光学体1に入射角(θ=60°、φ=0°)の上空から入射光Lが入射した場合を示している。この場合、入射光Lの殆どは、四角錐状の凹部4cの第3の斜面T3及び第4の斜面T4に対応する波長選択反射層に入射する。そして、第3の斜面T3に対応する波長選択反射層に入射した入射光Lのうち特定波長帯の光L1は、図5Aの平面視において右上空に選択的に反射される。一方、第4の斜面T4に対応する波長選択反射層に入射した入射光Lのうち特定波長帯の光L1は、第3の斜面T3の場合とは反対の対称な左上空に選択的に反射される。これにより、光学体1は、入射光と同一象限への特定波長帯の光L1を、反射角θo(−90°<θo<90°)の全方向の反射率R2に対して50%以上の反射率R1(R1≧R2×0.5)で反射させる。
また、入射角(θ=60°、φ≠0°)の上空から入射光Lが入射する場合は、φの極性及び値によって、第3の斜面T3及び第4の斜面T4に対応する波長選択反射層で選択的に反射される特定波長帯の光L1の割合が変化する。そして、図5Bに示すように、入射光Lが第3の斜面T3に対応する波長選択反射層にのみ入射する入射角(θ=60°、−φ)で右上空から入射する場合、特定波長帯の光L1は、入射光と同じ右上空に選択的に反射される。同様に、図5Cに示すように、入射光Lが第4の斜面T4に対応する波長選択反射層にのみ入射する入射角(θ=60°、+φ)で左上空から入射する場合、特定波長帯の光L1は、入射光と同じ左上空に選択的に反射される。
[光学体の全体形状]
図6は、第1の実施形態に係る光学体1の全体形状の一例を示す斜視図である。図6に示すように、光学体1は、全体として帯状又は矩形状の形状を有していることが好ましい。このような形状とすることで、光学体1をロール・ツー・ロール工程により容易に作製することができる。また、ロール状などに光学体1を巻回することで、取り扱いを容易とすることができる。以下では、帯状又は矩形状を有する光学体1の長手方向を長手方向DL、短手方向(幅方向ともいう。)を短手方向DWと称する。また、図3Aに示したY方向を凹部配列方向Dyと称し、Z方向を凹部配列方向Dzと称する。
四角錐状の凹部4cは、凹部配列方向Dzが光学体1の長手方向DLと平行となり、凹部配列方向Dyが光学体1の短手方向DWと平行となるように、第1の光学透明層4に最稠密充填状態で2次元配列されて形成されていることが好ましい。これにより、建築物の高さ方向と、帯状又は矩形状の光学体1の長手方向DLとが略平行の関係となるように、帯状又は矩形状の光学体1を建築物の窓材などに貼り合わせるだけで、光学体1の反射機能を有効に発現させることができる。
[光学体の貼り合わせ方法]
図7A及び図7Bは、第1の実施形態に係る光学体1の貼り合わせ方法の一例を説明するための概略図である。ビルディングなどの近年の高層建築物に設けられた窓材10は、横幅に比べて縦幅の方が大きい矩形状のものが一般的である。したがって、以下では、このような形状を有する窓材10に対して光学体1を貼り合わせる例について説明する。
まず、ロール状に巻回された光学体(いわゆる原反)1から、帯状の光学体1を巻き出し、貼り合わせる窓材10の形状に合わせて適宜裁断し、矩形状の光学体1を得る。この矩形状の光学体1は、図7Aに示すように、対向する1組の長辺Laと、対向する1組の短辺Lbとを有する。矩形状の光学体1の長辺Laと、光学体1の入射面内における四角錐状の凹部4cの凹部配列方向Dyとが略直交している。すなわち、矩形状の光学体1の長手方向DLと、光学体1の入射面内における四角錐状の凹部4cの凹部配列方向Dyとが略直交している。
次に、裁断した光学体1の一方の短辺Lbを、矩形状の窓材10の上端に位置する短辺10aに位置合わせする。この際、光学体1は、図3AのZ(+)方向が、高層建築物などの建築物の高さ方向DHとなるように位置合わせする。次に、矩形状の光学体1を貼り合わせ層6などを介して窓材10の上端から下端に向かって順次貼り合わせる。これにより、光学体1の他方の短辺Lbが、矩形状の窓材10の他端に位置する短辺10bに位置合わせされる。次に、必要に応じて、窓材10に貼り合わされた光学体1の表面を押圧などして、窓材10と光学体1との間に混入した気泡を脱気する。以上により、矩形状の光学体1は、図3AのZ方向(すなわち特定の直線l2)が建築物の高さ方向DHと略平行で、Z(+)方向が窓材10の上端側に向くように窓材10に貼り合わされる。
[光学体の貼り合わせ方向]
図8A、図8Bは、貼り合わせ方向による光学体1の反射機能の相違を説明するための概略図である。
図8Aは、光学体1の凹部配列方向Dzが建築物の高さ方向DHと略平行で、図3Aに示したZ(+)方向が窓材10の上端側に向くように、光学体1を窓材10に貼り合わせた建築物500の例を示している。すなわち、図8Aは、上述の光学体の貼り合わせ方法により、光学体1を窓材10に対して貼り合わせた例を示すものである。このように光学体1を窓材10に貼り合わせれば、光学体1の反射機能を有効に発現させることができる。したがって、上方向から窓材10に入射した入射光の多くを、入射光と同じ象限の上方向に効率よく反射することができる。すなわち、窓材10の入射光と同一象限への上方反射率を向上させることができる。
図8Bは、光学体1の凹部配列方向Dzが建築物の高さ方向DHと略平行で、図3Aに示したZ(+)方向が窓材10の下端側に向くように、光学体1を窓材10に貼り合わせた建築物600の例を示している。この場合、上方向から窓材10に入射した入射光は、下方向に反射される割合が増加してしまう。すなわち、窓材10の入射光と同一象限への上方反射率が低下してしまう。そのため、このように光学体1を窓材10に貼り合わせた場合は、光学体1の反射機能を有効に発現させることができなくなる。
[光学体の製造装置]
図9は、第1の実施形態に係る光学体1を製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。図9に示すように、この製造装置は、ラミネートロール31、32、ガイドロール33、塗布装置35及び照射装置36を備える。
ラミネートロール31、32は、反射層付き光学層9と、第2の基材5aとをニップ可能に構成されている。ここで、反射層付き光学層9は、第1の光学透明層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜したものである。なお、反射層付き光学層9として、第1の光学透明層4の波長選択反射層3が成膜された面と反対側の他主面上に第1の基材4aが形成されていてもよい。この例では、第1の光学透明層4の一主面上に波長選択反射層3が成膜され、他主面上に第1の基材4aが形成された場合が示されている。ガイドロール33は、帯状の光学体1を搬送できるように、この製造装置内の搬送路に配置されている。ラミネートロール31、32及びガイドロール33の材質は特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。
塗布装置35は、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布する樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー及びダイなどのコーターを適宜使用することができる。照射装置36は、例えば、電子線、紫外線、可視光線又はガンマ線などの電離線を照射する照射装置である。この例では、照射装置36として紫外線を照射するUVランプを用いた場合が図示されている。
[光学体の製造方法]
以下、図9〜図13を参照して、第1の実施形態に係る光学体の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造プロセスの一部又は全部は、生産性を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行われることが好ましい。
まず、図10Aに示すように、例えばバイト加工又はレーザー加工などにより、四角錐状の凹部4cと同一の凹凸形状の金型又はその金型の反転形状を有する金型(レプリカ)20を形成する。
ここで、例えば金型20をバイト加工により形成する場合、図3A〜図3Cに示した稜線部4d1に相当する方向に断面三角形状の溝を形成するバイトの断面形状は、例えば図11Aに示すようになる。同様に、稜線部4d2に相当する方向に断面三角形状の溝を形成するバイトの断面形状は、例えば図11Bに示すようになる。
図11Aに示すバイト21は、斜辺21a、斜辺21b及び上辺21cを有する。斜辺21aと斜辺21bとの成す角度は、四角錐状の凹部4cの稜線部4d1を形成する頂角η1に相当する。また、斜辺21aと上辺21cとのなす角度をα1とし、斜辺21bと上辺21cとのなす角度をβ1(<α1)とすると、斜辺21aは四角錐状の凹部4cの第2の斜面T2を形成する辺に相当し、斜辺21bは四角錐状の凹部4cの第4の斜面T4を形成する辺に相当する。角度α1は、光学体1を窓材10などの被着体に貼り合わせた場合に、上方側(上空側)となる傾斜角である。
同様に、図11Bに示すバイト22は、斜辺22a、斜辺22b及び上辺22cを有する。斜辺22aと斜辺22bとの成す角度は、四角錐状の凹部4cの稜線部4d2を形成する頂角η2に相当する。また、斜辺22aと上辺22cとのなす角度をα2とし、斜辺22bと上辺22cとのなす角度をβ2(<α2)とすると、斜辺22aは四角錐状の凹部4cの第1の斜面T1を形成する辺に相当し、斜辺22bは四角錐状の凹部4cの第3の斜面T3を形成する辺に相当する。角度α2は、光学体1を窓材10などの被着体に貼り合わせた場合に、上方側(上空側)となる傾斜角である。
図11A及び図11Bにおいて、頂角η1及び頂角η2は、同じ頂角ηとしてもよい。同様に、角度α1及び角度α2も同じ角度αとしてもよいし、角度β1及び角度β2も同じ角度βとしてもよい。頂角η、角度α及び角度βは、例えばη=90°とする直角二等辺三角形を基準形状として設定することができる。この場合、上述した四角錐状の凹部4cの最下点4eの傾斜角度θ2は、
θ2=|α−45°|=|45°−β|
で定義される。なお、基準形状は、直角二等辺三角形に限らず、任意の二等辺三角形とすることができる。
次に、図10Bに示すように、例えば溶融押し出し法又は転写法などを用いて、上記金型20の凹凸形状をフィルム状の樹脂材料に転写する。転写法としては、型にエネルギー線硬化型樹脂を流し込み、エネルギー線を照射して硬化させる方法、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法又は樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)などが挙げられる。これにより、図10Cに示すように、一主面に四角錐状の凹部4cを有する第1の光学透明層4が形成される。
また、図10Cに示すように、第1の基材4a上に、第1の光学透明層4を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、フィルム状の第1の基材4aをロールから供給し、該基材上にエネルギー線硬化型樹脂を塗布した後に型に押し当て、型の形状を転写し、エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる方法が用いられる。なお、樹脂は、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。
次に、図12Aに示すように、第1の光学透明層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜して反射層付き光学層9を形成する。波長選択反射層3の成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられ、これらの成膜方法から、四角錐状の凹部4cの形状などに応じて適宜選択することが好ましい。次に、図12Bに示すように、必要に応じて、波長選択反射層3に対してアニール処理41を施す。アニール処理の温度は、例えば100℃以上250℃以下の範囲内である。
次に、図12Cに示すように、未硬化状態の樹脂42を波長選択反射層3上に塗布する。樹脂42としては、例えば、エネルギー線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂などを用いることができる。エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化樹脂が好ましい。次に、図13Aのように、樹脂42上に第2の基材5aを被せることにより、積層体を形成する。次に、図13Bに示すように、例えばエネルギー線43又は加熱43により樹脂42を硬化させるとともに、積層体に対して圧力44を加える。エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線、電子線などを用いることができ、生産設備の観点から、紫外線が好ましい。積算照射量は、樹脂の硬化特性、樹脂や基材11の黄変抑制などを考慮して適宜選択することが好ましい。積層体に加える圧力は、0.01MPa以上1MPa以下の範囲内であることが好ましい。0.01MPa未満であると、フィルムの走行性に問題が生じる。一方、1MPaを超えると、ニップロールとして金属ロールを用いる必要があり、圧力ムラが生じ易く好ましくない。以上により、図13Cに示すように、波長選択反射層3上に第2の光学透明層5が形成され、光学体1が得られる。
ここで、図9に示す製造装置を用いて、光学体1の形成方法について具体的に説明する。まず、図示しない基材供給ロールから第2の基材5aを送出し、送出された第2の基材5aは、塗布装置35の下を通過する。次に、塗布装置35の下を通過する第2の基材5a上に、塗布装置35により電離線硬化樹脂34を塗布する。次に、電離線硬化樹脂34が塗布された第2の基材5aをラミネートロールに向けて搬送する。一方、図示しない光学層供給ロールから反射層付き光学層9を送出し、ラミネートロール31、32に向けて搬送する。
次に、第2の基材5aと反射層付き光学層9との間に気泡が入らないように、搬入された第2の基材5aと反射層付き光学層9とをラミネートロール31、32により挟み合わせ、第2の基材5aに対して反射層付き光学層9をラミネートする。次に、反射層付き光学層9によりラミネートされた第2の基材5aを、ラミネートロール31の外周面に沿わせながら搬送するとともに、照射装置36により第2の基材5a側から電離線硬化樹脂4に電離線を照射し、電離線硬化樹脂34を硬化させる。これにより、第2の基材5aと反射層付き光学層9とが電離線硬化樹脂34を介して貼り合わされ、目的とする長尺の光学体1が作製される。次に、作製された帯状の光学体1を、図示しない巻き取りロールにより巻き取る。これにより、帯状の光学体1が巻回された原反が得られる。
硬化した第1の光学透明層4は、上述の第2の光学透明層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であることが好ましい。ここで、プロセス温度tとは、例えば、ラミネートロール31の加熱温度である。第1の光学透明層4は、例えば、第1の基材4a上に設けられ、第1の基材4aを介してラミネートロール31に沿うように搬送されるため、実際に第1の光学透明層4にかかる温度は、経験的に(t−20)℃程度であることが分かっている。したがって、第1の光学透明層4の(t−20)℃における貯蔵弾性率を3×107Pa以上にすることにより、熱又は熱と加圧とにより光学層内部の界面の凹凸形状が変形することを抑制することができる。
また、第1の光学透明層4は、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であることが好ましい。これにより、室温において可撓性を光学体に付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学体1を作製することが可能となる。
なお、プロセス温度tは、光学層又は基材の使用樹脂の耐熱性を考慮すると、200℃以下であることが好ましい。ただし、耐熱性の高い樹脂を用いることにより、プロセス温度tを200℃以上に設定することも可能である。
第1の実施形態に係る光学体1によると、上述のように第1の光学透明層4に四角錐状の凹部4cを形成することで、例えば上方から入射した入射光のうち特定波長帯の光の殆どは、波長選択反射層3による1回反射で入射光と同一象限に効率よく戻すことができる。したがって、入射光を3回の反射で上空へ戻すコーナーキューブに比して、波長選択反射層3の光吸収量を低減し、発熱を抑制することができるので、安全性の向上及び省エネルギー化(例えばCO2排出量の低減化)を実現することが可能となる。
また、四角錐状の凹部4cの主軸lmを、垂線l1を基準にして上方に傾けることで、入射光と同一象限への高い上方反射率を得ることができる。また、コーナーキューブを用いた場合と比して、膜厚を小さくすることができる。したがって、光学体1を低廉化することが可能となる。
なお、図11A及び図11Bに示した頂角η1、頂角η2、及び角度α1、角度α2(又は角度β1、角度β2)は、適宜設定してもよい。これにより、例えば各四角錐状の凹部4cの最下点4cを、図3Aの平面視において、当該四角錐状の凹部4cのZ方向の対角線に対してY方向に傾けてもよい。このようにすれば、窓材10の取り付け向きに応じて、特定波長帯の光をより効率よく入射光と同一象限に戻すことが可能となる。
<変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
図14は、第1の実施形態の変形例を示す断面図である。図14に示すように、本変形例に係る光学体1は、波長選択反射層3が形成された第1の光学透明層4の凹凸面のうちの凸形状頂部の位置が、第2の光学透明層5の入射面S1とほぼ同一の高さとなるように形成されている。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の透明光学層4の四角錐状の凹部4cの稜線部4d1及び稜線部4d2が球面状に形成されている点において、第1の実施形態とは異なっている。したがって、四角錐状の凹部4c上に成膜される波長選択反射膜3も、稜線部4d1及び稜線部4d2に対応する部分が球面状に形成される。
図15は、第2の実施形態に係る光学体1の第1の透明光学層4に形成される四角錐状の凹部4cの形状例を示す斜視図である。図15において、四角錐状の凹部4cの稜線部4d1及び稜線部4d2は、球面状に形成されている。球面の曲率半径Srは、適宜選択できるが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下するとよい。曲率半径Srが10μmを超えると、光学体1を窓材10に貼り付けた場合、上方からの入射光に対する下方への反射率が高くなって、入射光と同一象限への上方反射率が低下するからである。
第2の実施形態によると、稜線部4d1及び稜線部4d2が球面状に形成されているので、球面のレンズ作用によって稜線部4d1及び稜線部4d2での回折光の発生を低減することができる。したがって、透過写像鮮明度を向上させることが期待される。
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1の透明光学層4の四角錐状の凹部4cの稜線部4d1及び稜線部4d2が非球面状に形成されている点において、第1の実施形態とは異なっている。したがって、四角錐状の凹部4c上に成膜される波長選択反射膜3も、稜線部4d1及び稜線部4d2に対応する部分が非球面状に形成される。
図16は、第3の実施形態に係る光学体1の第1の透明光学層4に形成される四角錐状の凹部4cの形状例を示す斜視図である。図16において、四角錐状の凹部4cの稜線部4d1及び稜線部4d2は、非球面状に形成されている。非球面形状は、例えば下式(2)により形成される。
第3の実施形態によると、稜線部4d1及び稜線部4d2が球面状に形成されているので、入射光の入射角に応じて非球面のレンズ作用により稜線部4d1及び稜線部4d2での回折光の発生を効率よく低減させることができる。したがって、透過写像鮮明度をより向上させることが期待される。
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、上述の実施形態とは異なっている。光学体1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。散乱体は、例えば、光学層2の表面、光学層2の内部、及び波長選択反射層3と光学層2との間のうち、少なくとも1箇所に設けられている。光散乱体は、好ましくは、波長選択反射層3と第1の光学透明層4との間、第1の光学透明層4の内部及び第1の光学透明層4の表面のうちの少なくとも一箇所に設けられている。光学体1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、室内側及び室外側のどちらにも適用可能である。光学体1を室外側に対して貼り合わせる場合、波長選択反射層3と窓材などの支持体との間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。波長選択反射層3と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学体1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、波長選択反射層3との間に光散乱体を設けることが好ましい。
図17Aは、第4の実施形態に係る光学体1の第1の構成例を示す断面図である。図17Aに示すように、第1の光学透明層4は、樹脂と微粒子11とを含んでいる。微粒子11は、第1の光学透明層4の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子11としては、例えば有機微粒子及び無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子11としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子11としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子又はスチレン、アクリルやそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
図17Bは、第4の実施形態に係る光学体1の第2の構成例を示す断面図である。図17Bに示すように、光学体1は、第1の光学透明層4の表面に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
図17Cは、第4の実施形態に係る光学体1の第3の構成例を示す断面図である。図17Cに示すように、光学体1は、波長選択反射層3と第1の光学透明層4との間に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
第4の実施形態によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学体1を曇らせて、光学体1に対して意匠性を付与することができる。
<第5の実施形態>
図18は、第5の実施形態に係る光学体の一構成例を示す断面図である。第5の実施形態は、光学体1の入射面S1及び出射面S2のうち、被着体に貼り合わされる面とは反対側の露出面上に、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層51をさらに備えている点において、上述の実施形態とは異なっている。自己洗浄効果層51は、例えば、光触媒を含んでいる。光触媒としては、例えば、TiO2を用いることができる。
上述したように、光学体1は特定波長帯の入射光を選択的に反射し、特定波長帯以外の入射光を透過する。光学体1を屋外や汚れの多い部屋などで使用する際には、表面に付着した汚れにより光が散乱され透過性及び反射性が失われてしまうため、表面が常に光学的に透明であることが好ましい。そのため、表面が撥水性や親水性などに優れ、表面が自動的に洗浄効果を発現することが好ましい。
第5の実施形態によれば、光学体1が自己洗浄効果層51を備えているので、撥水性や親水性などを入射面に付与することができる。したがって、入射面に対する汚れなどの付着を抑制し、指向反射特性の低減を抑制できる。
<第6の実施形態>
上述の実施形態では、光学体としての光学体1を窓材などに貼り合わせて適用する場合を例として説明したが、光学体自体を窓材として構成してもよい。図19は、第6の実施形態に係る窓材の一構成例を示す断面図である。本実施形態は、第1の光学透明層としての窓材61上に波長選択反射層3を直接形成している点において、上述した実施形態とは異なっている。窓材61は、その一主面にひし形に交差する稜線部を持つ複数の四角錐状の凹部61cが最稠密充填状態で2次元配列されて形成されている。凹部61cが形成された窓材61の一主面上には、波長選択反射層3、第2の光学透明層62が順次積層されている。第2の光学透明層62は、透過写像鮮明度や全光線透過率を向上するとともに、波長選択反射層3を保護するためのものでもある。第2の光学透明層62は、例えば、熱可塑性樹脂、又は活性エネルギー線硬化性樹脂を主成分とする樹脂を硬化してなるものである。
第6の実施形態によれば、窓材61に予め指向反射の機能を付与することができる。なお、窓材61は、第2の光学透明層62としてもよい。この場合は、例えば窓材としての第2の光学透明層62上に四角錐状の凸部が形成され、この凸部上に波長選択反射層3を介して第1の光学透明層が形成される。
<第7の実施形態>
第1〜5の実施形態に示した光学体1は、窓材以外の内装部材や外装部材などに適用することが可能である。また、光学体1は、壁や屋根などのように固定された不動の内装部材及び外装部材のみならず、季節や時間変動などに起因する太陽光の光量変化に応じて、太陽光の透過量及び/又は反射量を内装部材又は外装部材を動かして調整し、屋内などの空間に取り入れ可能な装置にも適用可能である。第7の実施形態では、このような装置の一例として、日射遮蔽部材を巻き取る又は巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールカーテンについて説明する。
図20Aは、第7の実施形態に係るロールカーテンの一構成例を示す斜視図である。図20Aに示すように、日射遮蔽装置であるロールカーテン71は、スクリーン72と、ヘッドボックス73と、芯材74とを備える。ヘッドボックス73は、チェーン75などの操作部を操作することにより、スクリーン72を昇降可能に構成されている。ヘッドボックス73は、その内部にスクリーンを巻き取り及び巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン72の一端が結合されている。また、スクリーン72の他端には芯材74が結合されている。スクリーン72は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールカーテン71を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましく、例えば矩形状に選ばれる。
図20Bは、図20AのB−B線断面図である。図20Bに示すように、スクリーン72は、基材81と、光学体1とを備え、可撓性を有しているこが好ましい。光学体1は、基材81の両主面のうち、外光を入射させる入射面側(窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。光学体1と基材81とは、例えば、接着層又は粘着層などの貼合層により貼り合される。なお、スクリーン72の構成はこの例に限定されるものではなく、光学体1をスクリーン72として用いるようにしてもよい。
基材81の形状としては、例えば、例えば、シート状、フィルム状及び板状などを挙げることができる。基材81としては、ガラス、樹脂材料、紙材及び布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材及び布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。光学体1としては、上述の第1〜第5の実施形態に係る光学体1のうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、光学体の実施例について比較例とともに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<光学体の作製>
まず、バイト(切削工具)を用いた切削加工により、Ni−P製の金型ロール上に、該金属ロールの軸方向と交差する異なる角度方向から溝を付与して、最稠密充填状態で2次元配列されたひし形の四角錐状の凸部を形成した。ここで、金属ロールの軸方向と交差する異なる角度方向とは、図3Aに示した稜線部4d1及び稜線部4d2の方向に相当する角度方向である。次に、この金型ロールとニップロールとの間に平均厚み75μmのPETフィルム(A4300、東洋紡社製)を通紙し、金型ロールとPETフィルムとの間にウレタンアクリレート(アロニックス、東亞合成社製、硬化後屈折率1.533)を供給してニップしながら走行させ、PETフィルム側からUV光を照射して、樹脂を硬化させることでひし形の四角錐状の凹部を付与したフィルム(第1の光学透明層)を作製した。なお、四角錐状の凹部は、稜線部4d1及び稜線部4d2のそれぞれの頂角ηが等しく、図3AのZ方向における、ひし形の開口面の対角線に関して対称である。
次に、第1の光学透明層の四角錐状の凹部が付与された面上に、真空スパッタ法により、〔ZTO(46.8nm)/AgNdCu(10nm)/ZTO(106.4nm)/AgPdCu(10nm)/ZTO(46.8nm)〕をこの順で成膜して、波長選択反射層を形成した。ここで、「ZTO」とは、SnO2を30質量%程度添加したZnOを意味する。なお、銀合金層であるAgNdCu層(金属層)の成膜には、Ag/Nd/Cu=99.0at%/0.4at%/0.6at%の組成を含有する合金ターゲットを使用した。ZTO層(高屈折率層)の成膜には、基材であるPETフィルムの成膜面の背面側を60℃に保持されたロールで支持した状態で成膜した。以上により、波長選択反射層付き第1の光学透明層を得た。
成膜後、ニップロール間に、波長選択反射層付き第1の光学透明層の波長選択反射層が形成されている凹部形状面と、平均厚み50μmのPETフィルム(A4300、東洋紡社製)とを対向させ、その間に第1の光学透明層の凹部形状の形成に用いた樹脂と同じ樹脂(アロニックス、東亞合成社製、硬化後屈折率1.533)を供給してニップしながら走行させることで、気泡を押し出した。その後、PETフィルム越しにUV光を照射して樹脂を硬化させた。これにより、第2の光学透明層を形成して、光学体を得た。その後、光学体を厚さ3mmの透明ガラスに貼り付けてサンプルを作製した。
上述のようにして作製されるサンプルにおいて、実施例1〜7及び比較例1〜5として、稜線部の交差角度θ1を30°〜120°、四角錐状の凹部の最下点の傾斜角度θ2を10°〜30°、稜線部の形状を尖状又は非球面状の場合の上方反射率R1(%)と全方向反射率R2(%)との関係を調査した。なお、以下の説明において、尖状の稜線部形状には、積極的な面取り処理等を施さない場合の加工誤差が含まれる。また、非球面の稜線部形状は、上式(2)に従って形成されたものである。
<上方反射率R1(%)及び全方向反射率R2(%)>
ORA社(Optical Research Associates)製照明設計解析ソフトウェアLight Toolsを用いてシミュレーションを行い、入射角(θ=60°、φ=0°)で入射する光(波長300nm〜2500nm)のうち、反射角(θ=0°〜90°、φ=−90°〜90°)の方向に反射する近赤外光(波長780nm〜2100nm)の上方反射率R1と、反射角(θ=−90°〜90°、φ=−90°〜90°)の方向に反射する近赤外光の全角度の反射合計である全方向反射率R2とを算出した。なお、各サンプルにおいて、入射光は、光学体の四角錐状の凹部の最下点を上方に位置させて、上方から入射角60°で入射させた。
<総合判定>
以下の評価基準に基づいて、実施例1〜7及び比較例1〜5の総合判定を行った。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:R1≧R2×0.5
×:R1<R2×0.5
表1から、稜線部の交差角度ηを30°≦η≦120°、四角錐状の凹部の最下点の傾斜角度θ2をθ2≦25°とすると、R1≧R2×0.5を満たすことが分かる。また、稜線部形状を非球面とすると、稜線部が尖状の場合と比較して全方向反射率R2を低くできる。したがって、入射光と異なる象限に反射される近赤外光による影響を低減することができる。
(実施例8)
上述の実施例1〜7と同様にして、図15に示した第2の実施形態に係る光学体を有するサンプルを作製した。このサンプルの光学体の稜線部の交差角度θ1は〜30°、四角錐状の凹部の最下点の傾斜角度θ2は10°、稜線部の頂角ηは90°で形状は球面状である。
本実施例では、ORA社製照明設計解析ソフトウェアLight Toolsを用いて、上記サンプルの球面の稜線部形状の曲率半径Srを0μmから10μmの範囲で変化させてシミュレーションを行い、入射角(θ=60°、φ=0°)で入射する光(波長300nm〜2500nm)のうち、近赤外光(波長780nm〜2100nm)の上方反射率R1と、反射強度が最大となる反射角θoutとを算出した。なお、入射光は、光学体の四角錐状の凹部の最下点を上方に位置させて、上方から入射角60°で入射させた。その結果を図21に示す。
また、曲率半径SrがSr=0μm、Sr=5μm、Sr=10μmのそれぞれの場合において、入射角(θ=0°〜75°、φ=0°)を変化させてシミュレーションを行い、全方向反射率R2、上方反射率R1、及び下方反射率R3を算出した。その結果を図22A、図22B及び図22Cに示す。図22AはSr=0μmの場合の結果を示し、図22BはSr=5μmの場合の結果を示し、図22CはSr=10μmの場合の結果を示す。
図21から明らかなように、入射角(θ=60°、φ=0°)の場合、反射角θoutは、曲率半径Srが0μmから10μmの範囲で入射角と同じ60°近傍にある。これに対し、上方反射率R1は、曲率半径Srの増加に伴って低下する。例えば、Sr=0μmのときの上方反射率R1は約36%であるが、Sr=5μmではR1≒33.5%となり、Sr=10μmではR1≒30.5%となる。このことから、曲率半径Srが10μmを超えると、上方反射率R1は30%を下回ることが想定される。また、図22A〜図22Cから明らかなように、全方向反射率R2は、入射角(θ=0°〜50°、φ=0°)付近において、曲率半径Srが大きいほど高くなる。また、下方反射率R3は、入射角(θ=0°〜75°、φ=0°)に亘って、曲率半径Srが大きいほど入射角θが大きくなるに従って高くなる。したがって、上式(1)を満たすためには、曲率半径Srは好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とするとよいことが分かる。このことは、上記した実施形態や実施例において、稜線部形状を非球面状とする場合も同様である。
(実施例9)
実施例1、2、4〜7の光学体は、稜線部形状が尖状で、曲率半径Srが0となっている。本発明者らは、この場合の光学体を光学顕微鏡で観察すると、例えば図23に概略図を示すように、四角錐状の凹部4c内に微小な気泡91が白濁して観察される場合があることが判明した。これらの微小な気泡91は、図9に示した製造装置を用いる包埋プロセスにおいて、反射層付き光学層9を電離線硬化樹脂34により包埋する際に、気泡が押し出しきれずに残存したものと推測される。このような光学体は、残存する気泡91が極めて微小であることから、光学体の全体的な光学特性には殆ど影響しないが、品質の低下を招く場合がある。また、気泡が全く残存しないようにするには、例えば図9の包埋プロセスにおける装置の改良や包埋ライン速度の低速化等の変更を要し、製造コストの高騰を招く場合があることが予想される。
そこで、本発明者らは、交差する稜線部に高低差を有する光学体の各種のサンプルを作製して、気泡の有無を光学顕微鏡で観察した。交差する稜線部のそれぞれの形状は、Sr=0の尖状である。交差する稜線部の高低差とは、図3Aにおいて、稜線部4d1と稜線部4d2との間のX方向における距離である。以下、高低差をΔXと表記する。高低差ΔXは、例えば図10Aに示した金型20を形成する際の図11A及び図11Bに示したバイト21及びバイト22のそれぞれの切込み深さの差によって生じるものである。
サンプルは、稜線部の交差角度θ1が30°、四角錐状の凹部の最下点の傾斜角度θ2が10°、稜線部の頂角ηが90°、図3Aに示した四角錐状の凹部4cのY方向のピッチPy及びZ方向のピッチPzがそれぞれ67μmである。また、サンプルは、稜線部4d1及び稜線部4d2のそれぞれの稜線高さの設計値、すなわち、例えば図10Aに示した金型20を形成する際の図11A及び図11Bに示したバイト21及びバイト22のそれぞれの切込み深さの設計値が、それぞれ32μmである。サンプルは、設計値の稜線高さに相当する一方の稜線部に対して、他方の稜線部が+X方向又は−X方向に0.1μm、0.2μm、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μmの高低差ΔXを有するものとした。また、図9に示した製造装置を用いる包埋プロセスにおいて、反射層付き光学層9を包埋する電離線硬化樹脂34は、ウレタンアクリレート(アロニックス、東亞合成社製、硬化後屈折率1.533)で、粘度が300cPと1500cPとの2種類とした。また、包埋プロセスにおける包埋ライン速度は、1.5m/minと10m/minとの2条件とした。
表2は、これらのサンプルにおける気泡の有無の観察結果を示す。表2において、×印は気泡が観察された結果を示し、○印は気泡が観察されなかった結果を示す。
また、ORA社製照明設計解析ソフトウェアLight Toolsを用いて、入射角(θ=60°、φ=0°)で入射する光(波長300nm〜2500nm)のうち、近赤外光(波長780nm〜2100nm)の上方反射率R1と、反射強度が最大となる反射角θoutとを算出した。入射光は、四角錐状の凹部の最下点が上方に位置するサンプルの垂直設置状態で、上方から入射角60°で入射させた。その結果を図24に示す。同様の入射光を、φ=0°で入射角θが70°から75°の範囲で上方から入射させた場合の近赤外光の上方反射率R1と、反射強度が最大となる反射角θoutとを算出した。その結果を図25に示す。なお、図24及び図25は、高低差ΔXが3.0μmまでの場合の上方反射率R1及び反射角θoutのシミュレーション結果を示す。また、図24及び図25において、+ΔXは設計値の稜線高さに相当する一方の稜線部よりも他方の稜線部が高い場合を示しており、−ΔXは設計値の稜線高さに相当する一方の稜線部よりも他方の稜線部が低い場合を示している。
上記の結果から、交差する稜線部のそれぞれの稜線部形状が、曲率半径Sr=0の尖状である場合は、表2から明らかなように、高低差ΔXが0.2μm<ΔXを満足すれば、気泡の混入のない光学体が得られることが分かる。これは、包埋プロセスにおいて、反射層付き光学層9の凹部の気泡が高低差ΔXから逃げ易くなるためと考えられる。また、図24及び図25において、上方反射率R1及び反射角θoutは、+ΔX及び−ΔXで略同じであり、入射角60°では、図24から明らかなように、0.2μm<ΔXにおいて反射角θoutが60°以上であるとともに、上方反射率R1も30°以上である。同様に、入射角70°−75°の範囲では、図25から明らかなように、0.2μm<ΔXにおいて反射角θoutが50°以上であるとともに、上方反射率R1も30°以上である。したがって、Sr=0の場合は、0.2μm<ΔXを満足すれば、上式(1)を満たす所望の光学特性を有する光学体が得られることが分かる。また、このような構成の光学体の場合は、包埋ライン速度を低速化することもないので、製造コストの高騰を招くことなく、品質の向上が可能となる。
(実施例10)
実施例8では、光学体の稜線部形状が球面の場合、曲率半径Srは10μm以下が好ましいとした。しかし、交差する稜線部の高低差がない場合、つまり実施例9で説明した交差する稜線部の高低差ΔXがΔX=0の場合は、曲率半径Srが極端に小さいと、包埋プロセスにおいて気泡が逃げにくくなって、図23に示したように微小な気泡91が光学体に残存することが推測される。そのため、実施例9で説明したように、品質の低下を招いたり、製造コストの高騰を招いたりする場合があることが予想される。
そこで、本発明者らは、交差する稜線部の高低差ΔXがΔX=0で、稜線部の球面形状の曲率半径Srが異なる複数のサンプルを作製して、気泡の有無を光学顕微鏡で観察した。サンプルは、稜線部の交差角度θ1が30°、四角錐状の凹部の最下点の傾斜角度θ2が10°、稜線部の頂角ηが90°、稜線高さが32μm、図3Aに示した四角錐状の凹部4cのY方向のピッチPy及びZ方向のピッチPzがそれぞれ67μmである。サンプルは、稜線部の球面形状の曲率半径Srが0.1μm、0.2μm、0.3μm、1.0μm、2.0μm、3.0μmのものとした。また、図9に示した製造装置を用いる包埋プロセスにおいて、反射層付き光学層9を包埋する電離線硬化樹脂34は、ウレタンアクリレート(アロニックス、東亞合成社製、硬化後屈折率1.533)で、粘度が300cPと1500cPとの2種類とした。また、包埋プロセスにおける包埋ライン速度は、1.5m/minと10m/minとの2条件とした。
表3は、これらのサンプルにおける気泡の有無の観察結果を示す。表3において、×印は気泡が観察された結果を示し、○印は気泡が観察されなかった結果を示す。
表3から明らかなように、交差する稜線部の高低差ΔXがΔX=0の場合、それぞれの稜線部の球面形状は、曲率半径Srが0.3μm≦Srを満足すれば、気泡の混入のない光学体が得られることが分かる。これは、包埋プロセスにおいて、反射層付き光学層9の凹部の気泡が稜線部の球面形状に沿って逃げ易くなるためと考えられる。したがって、上記の実施例8を考慮すると、ΔX=0の場合は、0.3μm≦Sr≦10μm、を満足すれば、上式(1)を満たす所望の光学特性を有する光学体が得られることが分かる。また、このような構成の光学体の場合は、包埋ライン速度を低速化することもないので、製造コストの高騰を招くことなく、品質の向上が可能となる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の各構成は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態では、ロールカーテンの駆動方式が手動式である場合を例として説明したが、ロールカーテンの駆動方式を電動式としてもよい。
また、上述の実施形態では、光学体がフィルム状である場合を例として説明したが、光学体の形状はフィルム状に限定されるものではなく、プレート状、ブロック状などでもよい。
上述の実施形態では、光学体を窓材及びロールカーテンのスクリーンに適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、建具、ブラインド装置のスラットなどの内装部材又は外装部材にも適用可能である。
本発明に係る光学体が適用される内装部材又は外装部材としては、例えば、光学体自体により構成された内装部材又は外装部材、指向反射体が貼り合わされた透明基材などにより構成された内装部材又は外装部材などが挙げられる。このような内装部材又は外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材又は外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材又は外装部材による室内側への散乱反射も殆どないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材に適用することも可能である。
また、上述の実施形態では、日射遮蔽部材を巻き取る又は巻き出すことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置(例えばロールカーテン)に本発明に係る光学体を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
また、本発明に係る光学体をブラインド装置に適用する場合、ブラインド装置は横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に限らず、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対しても適用可能である。