JP4115794B2 - 光拡散板の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光拡散板や、照明器具、液晶表示装置等の表示装置などに関する技術分野に属し、レーザー微細加工技術による光拡散板およびその作製方法並びに液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、照明器具や、液晶表示板等の表示板などの各種光利用装置では、点源又は線源の光源から発せられた光を、特定の範囲の領域(例えば、表示面全面)に均一に広げる光拡散性が要求される。光拡散性を得るための方法としては、従来、各種光利用装置の光拡散板では、成形樹脂中に光拡散剤を分散させる方法や、成形品の表面をすりガラスのように粗面化する方法などが用いられている。しかしながら、成形樹脂中に光拡散剤を分散させる方法では、反射光による光の損失を招き、また、成形品表面を粗面化する方法では、得られる光拡散性が低いなどの問題がある。
【0003】
また、光拡散性を得るための方法として、光拡散性フィルムを用いる方法も提案されている(特許文献1〜特許文献2参照)。しかしながら、従来の光拡散性フィルムでは、光拡散性、光透過性や輝度特性が低いため、視認性が低く、しかも製造が困難な場合もある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−196113号公報
【特許文献2】
特開平10−111402号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた光拡散性、光透過性及び輝度特性を有しているとともに、容易に製造することができる光拡散板及びその作製方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、視認性が良好な液晶表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、プラスチック内部に10-12秒以下のパルスの超短パルスレーザーを照射すると、プラスチックの内部には屈折率変調による光拡散部が形成され、表面には、隆起による光拡散部が形成され、しかも、これらの光拡散部は精密に形成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、厚みが5μm〜10mmであるとともに、内部及び表面に光拡散部を有する単層構造の光拡散板であって、下記の光拡散部A〜Cによる光拡散部Aと光拡散部B及び/又は光拡散部Cとの組み合わせからなる光拡散部を有することを特徴とする光拡散板の作製方法に関する。
光拡散部A:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック内部に形成された、屈折率の変調による内部光拡散部
光拡散部B:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に形成された、該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部
光拡散部C:プラスチック内部へのレーザーの照射によりプラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により作製された金型に、成形材料を充填し、この充填物を金型から離型して形成された、微小隆起構造の転写による表面光拡散部
【0008】
前記光拡散部B又は光拡散部Cの表面光拡散部としては、底面の直径0.3〜100μm、高さ0.1〜50μmの微小の隆起物であってもよく、円錐状、釣り鐘状、カルデラ状、テラス状ないしは半球状の微小の隆起物であってもよい。レーザーとしては、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザーを好適に用いることができる。
【0009】
レーザー照射前の状態のプラスチックとしては、400〜800nmの可視光波長領域において60%以上の透過率を有するプラスチックであるが好ましく、また、100℃以上のガラス転移温度を有するプラスチックが好ましく、さらにまた、ポリマー材料と他の材料との複合体を好適に用いることができる。
【0010】
本発明は、厚みが5μm〜10mmであるとともに単層構造の光拡散板を作製する方法であって、下記の工程A〜Cのうち、工程Aと工程B及び/又は工程Cとの組み合わせからなる工程を具備することを特徴とする光拡散板の作製方法を提供する。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック内部に屈折率の変調による内部光拡散部を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部を形成する工程
工程C:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填して、この充填物を金型から離型することにより、微小隆起構造の転写による表面光拡散部を形成する工程
【0011】
前記光拡散板の作製方法では、プラスチック内部に外部よりパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点をライン状に移動させながら照射することができ、また、超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射することができる。工程Cで用いられる金型材料としては金属材料を、成形材料としてはプラスチック材料を好適に用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。
[光拡散板]
本発明の光拡散板は、内部及び/又は表面に設けられた光拡散部として、前記光拡散部A〜Cから選択された少なくとも1種の光拡散部を有している。該光拡散部としては、光拡散部A〜Cから選択された少なくとも1種であれば特に制限されないが、光拡散部A〜Cから選択された少なくとも2種であることが望ましく、光拡散部Aと光拡散部B及び/又は光拡散部Cとの組み合わせ好適であり、特に、光拡散部Aと光拡散部Bとの組み合わせが最適である。光拡散部として、複数種が組み合わされていると(特に、内部光拡散部と表面光拡散部とが組み合わされていると)、より一層光拡散性を高めることができる。
【0014】
本発明では、光拡散部の形成や、光拡散板の形成に際して、プラスチックへのレーザー照射を利用しているので、光拡散部は微小な構造を有しており、そのため、優れた光拡散性を発揮させることができる。また、光拡散板の素材として、種々のものを用いることができるとともに、その厚みが薄くても精密に制御された微小な光拡散部を形成することができるので、光拡散性のみならず、光透過性および輝度特性を良好にすることが可能である。従って、本発明の光拡散板を用いると、視認性が良好な液晶表示装置を得ることができる。
【0015】
しかも、表面光拡散部を有する光拡散板であっても、研削等の物理的に表面を凹凸状にする処理を行っていないので、製造時のゴミの発生が少なく、優れた環境性で製造することが可能である。
【0016】
なお、光拡散部Aは、プラスチック内部において、レーザーの照射により屈折率が変調された部位(屈折率変調部)であり、該屈折率の変調は、密度変化、微小クラックの形成、微小気泡の形成などにより生じている。この屈折率変調部で光の屈折が生じることにより、光拡散が生じる。一方、光拡散部Bや光拡散部Cは、プラスチック表面において、レーザーの照射によりプラスチック内部から隆起した隆起物、または、この隆起物を有するプラスチックを金型の原型として用いて得られる金型を利用して形成された隆起物である。この隆起物とその外部との界面において、該隆起物の形状に由来して、光拡散が生じる。
【0017】
具体的には、光拡散部Aは、光拡散板の内部に形成された光拡散部(内部光拡散部)であり、例えば、図1で示すことができる。図1は、内部光拡散部を有する光拡散板の一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。図1で示される光拡散板11は、その内部にライン状の屈折率変調部からなる内部光拡散部21を複数有している。なお、図1では、ライン状の内部光拡散部21は平行に形成されているが、平行に形成されていなくてもよい。また、2次元的や3次元的なライン状の形態を有していてもよい。なお、屈折率変調部の屈折率と、屈折率未変調部の屈折率との差としては、0.0005以上(好ましくは0.0008以上、さらに好ましくは0.001以上)であることが望ましい。また、前記屈折率差は、0.005以上(特に0.01以上)であると、より一層効果的に光拡散性を発揮させることができる。
【0018】
一方、光拡散部B又は光拡散部Cは、光拡散板の表面に形成された光拡散部(表面光拡散部)であり、例えば、図2で示すことができる。図2は、表面光拡散部を有する光拡散板の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。図2において、(a)の光拡散板12は、その表面に円錐状の隆起物からなる表面光拡散部22を複数有しており、(b)の光拡散板13は、その表面に釣り鐘状の隆起物からなる表面光拡散部23を複数有しており、(c)の光拡散板14は、その表面にカルデラ状の隆起物からなる表面光拡散部24を複数有しており、(d)の光拡散板15は、その表面にテラス状の隆起物からなる表面光拡散部25を複数有しており、(e)の光拡散板16は、その表面に半球状の隆起物からなる表面光拡散部26を複数有している。図2(a)〜(e)では、表面光拡散部22〜26は、隆起物の直径と同じかそれ以上の間隔を置いて複数個形成されている。このような表面光拡散部の底面の直径は0.3〜100μm(好ましくは1〜50μm)程度であり、高さは0.1〜50μm(好ましくは0.5〜20μm)程度である。
【0019】
より具体的には、円錐状や釣り鐘状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは0.5〜15μm)程度の範囲から選択することが望ましい。カルデラ状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択することが望ましい。テラス状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜15μm(好ましくは1〜10μm)程度の範囲から選択することが望ましい。半球状の隆起物としては、その底面の直径は0.3〜50μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択し、その高さは0.1〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度の範囲から選択することが望ましい。
【0020】
また、表面光拡散部の間隔(底面の円の中心間距離)は、特に制限されないが、好ましくは底面の直径と同じかそれ以上(例えば、直径〜直径の10倍程度、好ましくは、直径〜直径の5倍程度)である。
【0021】
なお、カルデラ状の隆起物とは、凸部の頂部が陥没している形状の隆起物を意味している。また、テラス状の隆起物とは、凸部の頂部が平面状になっている形状の隆起物を意味している。
【0022】
1つの光拡散板において、内部光拡散部や表面光拡散部(すなわち、屈折率変調部や隆起物)は複数個形成されており、該複数の光拡散部により良好な光拡散性が発揮されている。なお、光拡散部の数は、特に制限されず、目的とする光拡散性等に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の光拡散板は、前述のように、優れた光透過性および輝度特性を有することができる。該光拡散板を液晶表示装置の光拡散板として用いる場合、光拡散板の全光線透過率としては、60%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上)であることが望ましい。また、光拡散板のヘイズ値としては、80%以上(好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上)であることが望ましい。なお、全光線透過率およびヘイズ値は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して、ヘイズメータ(積分球式光線透過率測定装置)を用いて測定することができる。
【0024】
(光拡散部A〜Bの形成方法)
光拡散部Aや光拡散部Bは、プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック内部や表面に形成することができ、具体的には、図3で示されるように、プラスチック内部にパルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザー(以下、「超短パルスレーザー」又は「レーザー」と称する場合がある)を照射することにより、プラスチックの内部に形成された屈折率変調部や、表面に形成された隆起物として形成することができる。図3はプラスチック内部に超短パルスのレーザーを照射する一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。図3において、レーザー3は、プラスチックシート1に向けて、照射方向6の向きで、すなわちZ軸と平行な方向で、照射している。なお、レーザー3はレンズ4を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。また、プラスチックシート1はシート状の形態を有しており、該プラスチックシート1の上面1aはX−Y平面と平行な面となっているとともに、Z軸と垂直となっている。
【0025】
レーザー3は、その焦点5を移動方向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点5をライン8上をライン状に移動方向7の向きに移動させながら、レーザー3が照射されていることになる。前記移動方向7は、照射方向6に対して垂直な方向であり、且つプラスチック1の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行であり、照射方向6とは垂直となっている。さらに、ライン8は、プラスチック1の表面1aに対して平行な方向となっている。なお、レーザー3の焦点5を移動方向7にライン状に移動させる際の該焦点5の移動速度としては、特に制限されず、例えば、10〜1,000μm/秒(好ましくは100〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0026】
dはプラスチックシート1の表面1aと、レーザー3の焦点5との距離である。従って、距離dは、プラスチックシート1の表面1aからの深さに相当する。すなわち、ライン8は、プラスチックシート1の表面1aからの深さがdである位置となっている。該距離dとしては、特に制限されず、プラスチックシート1の厚さTに応じて適宜選択することができ、通常、5〜150μm程度の範囲から選択される。すなわち、超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から、例えば、5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射することができる。距離dとしては、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。なお、距離dは、もちろん、プラスチックシート1の厚さTよりも短く、通常、厚さTの半分以下であるが、半分を越えていてもよい。
【0027】
より具体的には、レーザー3を照射方向6の方向で、ライン8のうちいずれか1つのライン(ライン81とする)の一方の末端部に焦点5を合わせて、照射し、この焦点5を移動方向7の方向にライン81上をライン状にライン81の他方の末端まで移動させる。その後、このライン81上の焦点5の移動方法と同様の方法により、レーザー3の焦点5を他のライン(ライン82とする)の一方の末端に合わせて他方の末端まで該ライン82上をライン状に移動させる。さらに、このような焦点をライン8のうちいずれか1つのラインの一方の末端に合わせて他方の末端まで移動させることを必要なだけ繰り返すことにより、プラスチックの内部の屈折率変調部や、プラスチックの表面の隆起物(隆起部又は凸部)を形成することができる。屈折率変調部と隆起物とは、同時に又は別々に形成することができる。屈折率変調部や隆起物の形成やその大きさは、例えば、レーザーの焦点の深さやその移動速度、レーザーの出力の大きさ、プラスチックを形成するポリマーの種類などにより制御することができる。
【0028】
なお、超短パルスレーザーの焦点の移動は、超短パルスレーザー及びレンズと、プラスチックとの相対位置を動かせることにより、例えば、超短パルスレーザー及びレンズ、及び/又は照射されるプラスチックを移動させることにより、行うことができる。具体的には、超短パルスレーザーの照射は、例えば、照射サンプル(照射されるプラスチック)を、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができる精密なXYZステージに載せ、3次元的に移動させることにより、サンプル任意の場所に行うことができる。また、XYZステージの移動を時間的に設定することにより、照射を3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0029】
このように、レーザーをプラスチックの内部に外部から照射して、焦点をライン状に移動させることにより、プラスチックの内部の屈折率変調部及び/又は表面の隆起物を形成することができ、その結果、内部光拡散部及び/又は表面光拡散部を有する光拡散板を作製することができる。すなわち、光拡散部Aを有する光拡散板は、下記の工程Aを具備する方法により作製することができ、光拡散部Bを有する光拡散板は、下記の工程Bを具備する方法により作製することができる。また、光拡散部A及び光拡散部Bを有する光拡散板は、下記の工程A及び工程Bを具備する方法により作製することができる。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック内部に屈折率の変調による内部光拡散部を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部を形成する工程
【0030】
なお、前記工程Aでは、プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック内部に屈折率の変調による内部光拡散部が形成されるとともに、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部が形成される場合がある。また、前記工程Bでは、プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部が形成されるとともに、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部が形成される場合がある。
【0031】
レーザー照射により形成される屈折率変調部は、通常、レーザーの焦点位置又は照射位置を起点にし、照射方向側に構造の変化により屈折率が変調した屈折率変調部位が連続して、焦点位置の移動方向に向かって形成されているような状態又は形態として形成される。
【0032】
一方、隆起物は、通常、レーザーが照射される側の表面(図3では、表面1a)に形成される。また、プラスチックの表面において、隆起物が形成される位置としては、レーザーを照射するラインと対応した表面上の位置であり、例えば、図3で示されるように、レーザー3を表面1aに垂直に且つライン8上をライン状に移動させながら照射する場合、隆起物22〜26は、該隆起物の中心部位(底面の円の中心部位)がライン8の垂直上の表面1a上にくるような位置に形成される。従って、1つのライン状に形成された隆起物は間隔をあけて形成されており、該隆起物間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向と平行な方向における間隔)としては、前述のように、隆起物の直径と同じかそれ以上の間隔となっている。このような1つのライン上における隆起物間の間隔(ライン上間隔)は特に制限されない。また、もちろん、1つのライン上における隆起物の数は特に制限されず、レーザーの照射条件やプラスチックの素材等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
また、複数のライン状の屈折率変調部間の間隔や、複数のライン状に形成された隆起物の隣接するライン上における隆起物間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向に対して垂直な方向における間隔;ライン間間隔)としては、通常、ライン8の間隔Lと同等又はほぼ同等になる。
【0034】
(レーザー照射前のプラスチック)
本発明では、レーザー(特に、超短パルスレーザー)のプラスチック内部への照射が有効に行われるためには、照射されるプラスチック(レーザー照射前の状態のプラスチック)は、波長400nmから800nmの可視光の波長領域で10%以上(好ましくは60%以上、さらに好ましくは85%以上、特に90%以上)の透過率を有することが望ましい。
【0035】
また、レーザー照射前の状態のプラスチックとしては、そのガラス転移温度は、常温(23℃)以上であることが一般的に望ましいが、100℃以上であることが最適である。100℃以上のガラス転移温度を有しているプラスチック材料を用いることにより、内部の屈折率変調部及び/又は表面の隆起物を有するプラスチック構造体(すなわち、光拡散板)を高い精度で作製することができる。なお、超短パルスレーザーの照射により前記のような屈折率変調部や隆起物が形成されるメカニズムは、まだ詳細には解析されていない。
【0036】
レーザー照射前の状態のプラスチックにおいて、熱的性質は、屈折率変調部や隆起物を形成する時の形成因子として働くだけでなく、屈折率変調部や隆起物の形成後の安定性にも影響を与えるため重要である。屈折率変調部や隆起物の形成後の安定性については、プラスチックの緩和現象による構造変化が関係し、ガラス転移温度が低い材料では緩和が起こり易く生成した屈折率変調部や隆起物の構造が不安定になる。
【0037】
このようなパルスレーザー照射に使用されるプラスチックとしては、共重合体を含めた単一化学構造のポリマー材料からなるものだけでなく、異なる化学構造を有する複数のポリマー材料からなるポリマーアロイやポリマーブレンドでもよい。
【0038】
また、パルスレーザー照射に使用されるプラスチックとしては、無機化合物や金属などの他の材料を分散状態で含んだ複合体であってもよく、異なるプラスチックや他の材料からなる層を含んだ2以上の層構造からなる積層体であってもよい。
【0039】
具体的には、前記ポリマー材料の代表的な例として、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)等の熱可塑性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、本発明の効果が失われない範囲で、プラスチックには、着色剤(顔料、染料など)、耐候剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、漂白剤、離型剤、相溶化剤などを添加・付与されていてもよい。
【0041】
(レーザー)
レーザーとしては、通常、超短パルスレーザーが用いられる。超短パルスレーザーとしては、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたフェムト秒パルスレーザーなどが好都合であり、使用されるパルス幅は10-12秒から10-15秒のオーダーのものが該当するが、通常は100フェムト秒(10-13秒)程度のものが使用される。使用波長は、可視光領域の400nmから800nm、繰り返しは1Hzから80MHzの範囲で、通常は10Hzから500kHz程度の条件で使用される。レーザーパルスの出力は、数mWから数百mW程度で使用される。なお、プラスチック材料に対して、内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、プラスチック材料に照射する際に用いられる対物レンズの開口数(光源の絞り込み)、プラスチック材料への照射位置又は焦点の深さ、レーザーの焦点の移動速度などに応じて決められる。
【0042】
また、本発明では、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする屈折率変調部や隆起物の大きさや形状等に応じて適宜選択することができ、例えば、500mW以下(例えば、1〜500mW)、好ましくは5〜300mW、さらに好ましくは10〜100mW程度の範囲から選択することができる。
【0043】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的の屈折率変調部や隆起物の大きさやその形状、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0044】
なお、図3において、レンズ4は、レーザー3の光線の焦点を絞って合わせるために用いており、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。レンズ4の開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては10〜50倍、開口数としては0.3〜0.8程度の範囲から選択される。
【0045】
(光拡散部Cの形成方法)
また、光拡散部Cは、例えば、プラスチック内部にレーザー(特に、超短パルスレーザー)を照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、該金型に成形材料を充填し、この充填物を金型から離型することにより、微小隆起構造の転写による隆起物として形成することができる。なお、前記金型の原型としての微小隆起物を有する構造体は、前記光拡散部Bを有する光拡散板に相当している。すなわち、表面光拡散部を有する光拡散板を、金型の原型として用いて金型を作製し、この金型を用いて、新たな光拡散板を作製することができる。従って、この新たな光拡散板は、前記レーザーの照射による光拡散板の隆起物が転写された複製物であると言える。そのため、このような隆起物を転写する方法を利用すると、レーザー照射によっては、表面光拡散部を有する光拡散板を作製することができない材料であっても、表面光拡散部を有する光拡散板を容易に且つ精密に作製することができる。すなわち、各種の成形材料により、光拡散板を製造することができる。
【0046】
しかも、表面光拡散部を有する光拡散板を量産することが容易である。すなわち、レーザー(特に、パルス幅が10-12秒以下の超短パルスのレーザー)を利用して作製された微小隆起物を有するプラスチックと同一の形状を有するものを、容易に且つ精密に複製して、量産することができる。
【0047】
さらにまた、金型の原型を製造するにあたり、製造時のゴミの発生が少なく、環境汚染やリサイクルなどの環境問題が生じない。従って、環境汚染やリサイクルなどの環境問題を生じさせることなく表面の所望の部位に微小な隆起物からなる光拡散部を有する光拡散板を得ることができる。
【0048】
光拡散部Cを有する光拡散板は、下記の工程Cを具備する方法により作製することができる。
工程C:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填して、この充填物を金型から離型することにより、微小隆起構造の転写による表面光拡散部を形成する工程
【0049】
より具体的には、工程Cには、下記の工程C1〜C5が含まれる。
工程C1:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小の隆起物を形成して金型の原型を形成する工程
工程C2:工程C1で形成された金型の原型の表面上に金型材料を被覆する工程
工程C3:工程C2で形成された金型材料被覆層を金型の原型から金型として分離する工程
工程C4:工程C3で作製された金型に、成形材料を充填する工程
工程C5:工程C4で金型に充填された充填物を、微小隆起物を有する構造体として、金型から離型する工程
【0050】
工程C1は、前記工程Bに相当しており、前記工程Bと同様にして行うことができる。
【0051】
工程C2では、前記工程C1で形成された金型の原型の表面上に、金型材料を被覆している。該金型材料としては、有機系金型材料(例えば、プラスチック材料など)や、無機系金型材料(例えば、金属材料やその他の無機化合物など)を用いることができる。金型材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明では、金型材料としては、無機系金型材料、特に、金属材料を好適に用いることができる。該金属材料としては、特に制限されず、金型として用いて成形材料を成形することができるものであればよい。金属材料には、金属単体の他、その他の金属化合物が含まれる。なお、下記に示される無電解メッキ又は電解メッキにより金型材料被覆層(金属被覆層)を微小隆起物を有するプラスチック(金型の原型)の表面に形成する場合は、金属材料としては、前記無電解メッキ又は電解メッキを行うことができるものが好ましい。具体的には、金属材料としては、例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、カドミウム、亜鉛、スズ、鉛、クロム、アルミニウム等の金属や、真ちゅう、ニッケル−クロム合金、銅−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金、金−銅合金等の合金などが挙げられる。
【0053】
なお、前記有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、微小隆起物を有するプラスチックの溶融温度よりも低い溶融温度を有するプラスチック材料を用いてもよい。有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、金型として用いることができるプラスチック材料であれば特に制限されない。具体的には、有機系金型材料としてのプラスチック材料としては、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)などの熱可塑性樹脂や、レジスト材料などが挙げられる。なお、有機系金型材料の使用に際して、金型の原型としての微小隆起物を有するプラスチックと有機系金型材料とが接合しないように、該微小隆起物を有するプラスチックの表面を表面処理してもよい。
【0054】
微小隆起物を有するプラスチック表面上に金型材料を被覆する方法としては、前記プラスチック表面に金型材料を被覆することができる方法であれば特に制限されない。例えば、金型材料として金属材料を用いる場合は、金型の原型(微小隆起物を有するプラスチック)の表面上に金属材料を堆積させることにより、金属材料により金型の原型の表面を被覆させて、金属材料被覆層を形成することができる。より具体的には、金属材料の被覆方法としては、例えば、無電解メッキを行う方法や、予め、微小隆起物を有するプラスチック表面に蒸着などにより導電性の賦与を行った後に電解メッキを行う方法を好適に採用することができる。なお、無電解メッキを行った後に、電解メッキが行われてもよい。無電解メッキの後に、電解メッキを行うことにより、メッキ金属層の厚みを増加させることができる。
【0055】
無電解メッキは、例えば、微小隆起物を有するプラスチックを、市販のニッケルメッキ浴に浸漬させることにより、前記プラスチックの全表面にメッキ金属を析出させて、金属被覆層を形成することができる。なお、無電解メッキを行う前にクロム酸処理などの前処理を行うことができる。
【0056】
金型材料被覆層の厚みは特に制限されず、例えば、200μm以上(例えば、0.2〜5mm)、好ましくは0.5〜3mm程度の範囲から選択することができる。金型材料被覆層の厚みが薄すぎると、金型としての強度が低下する。
【0057】
このように、工程C2では、金型の原型(微小隆起物を有するプラスチック)の表面上に金型材料を被覆させて、金型材料からなる微小構造が転写された金型材料被覆層を金型の原型の表面上に形成しているので、該金型材料被覆層の内部側の面(微小隆起物を有するプラスチックの表面と接触している面)は、微小隆起物を有するプラスチックの表面の形状に対応している。すなわち、金型材料被覆層は、前記プラスチックの表面の微小隆起物に対応する形状の微小陥没部を有している。
【0058】
工程C3では、前記工程C2で形成された金型材料被覆層を金型の原型から分離して、金型(微小隆起物を有する構造体形成用金型)を得ている。金型材料被覆層および金型の原型を分離させる方法としては、前記金型材料被覆層を、前記金型の原型(プラスチック部材)から分離させることができる方法であれば特に制限されず、例えば、金型材料被覆層からプラスチック部材を抜き取る方法、剥離させる方法またはエッチングにより除去する方法などを1種で又は2種以上組み合わせて採用することができる。
【0059】
なお、前記工程C1〜工程C3を含む作製方法により作製された金型の形状を他の金型材料(例えば、プラスチック材料など)により写し取って、他の金型材料(プラスチック材料等)による金型を作製して、該金型を利用して光拡散板を作製することもできる。例えば、前記工程C1〜工程C3を含む作製方法により得られた金属材料からなる金型(又は金属被覆層)の表面をプラスチック材料で被覆して、該被覆により形成されたプラスチック材料被覆層を、前記金属材料からなる金型(又は金属被覆層)から分離させて、プラスチック材料からなる金型を得ることができる。
【0060】
工程C4では、前記工程C3で作製された金型に、成形材料を充填している。前記成形材料としては、特に制限されず、例えば、有機系成形材料、無機系成形材料のいずれであってもよいが、有機系成形材料を好適に用いることができる。成形材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
前記有機系成形材料としては、プラスチック材料が好ましく、該プラスチック材料のなかでも特に熱可塑性樹脂が好適である。熱可塑性樹脂などのプラスチック材料としては、例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンの他、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン(ポリサルホン)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン類(ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなど)などが挙げられる。
【0062】
また、有機系成形材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ノルボルネンゴム(NOR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファゼンゴム等のゴム材料や、ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、ジエン系エラストマー等のエラストマー材料の他、導電性高分子などであってもよい。なお、有機系成形材料には、無機化合物や金属化合物などの各種材料等が含まれていてもよい。
【0063】
また、無機系成形材料としては、金属化合物(金属単体を含む)やその他の無機化合物などを適宜選択して用いることができる。なお、無機系成形材料を用いる場合、金型としては、プラスチック材料により作製された金型を用いることができる。
【0064】
成形材料を金型に充填する方法としては、特に制限されず、例えば、成形材料が熱可塑性樹脂である場合、一般的に、溶融状態の熱可塑性樹脂を金型に流し込む方法が用いられる。金型に溶融状態の熱可塑性樹脂を流し込んだ後は、冷却することにより、熱可塑性樹脂を固化することができる。
【0065】
工程C5では、工程C4で金型に充填された充填物(成形材料からなる充填物)を金型から離型させることにより、微小構造が転写された微小隆起物を有する構造体を得ている。例えば、成形材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、冷却固化された熱可塑性樹脂を金型から抜き取ったり、剥離したりすることにより、離型することができる。
【0066】
また、本発明では、光拡散部Cを有する光拡散板を、金型の原型として用いて、前記工程C(工程C1〜C5を含む工程)の方法と同様にして、新たな光拡散部Cを有する光拡散板を作製することも可能である。
【0067】
本発明の光拡散板は、光拡散部A〜Cの種類に応じて、前記工程A〜Cから選択された少なくとも1種の工程を具備する方法により作製することができる。このように、光拡散部の形成や、光拡散板の形成に際して、レーザー照射を利用しているので、光拡散部が微小な構造であっても、精密に制御された光拡散部を有する光拡散板を容易に作製することができる。しかも、内部光拡散型の光拡散板(内部光拡散部を有する光拡散板)であっても、また表面光拡散型の光拡散板(表面光拡散部を有する光拡散板)であっても、さらには内部光拡散型および表面光拡散型が両立されたタイプ(型)の光拡散板(内部光拡散部および表面光拡散部を有する光拡散板)であっても、容易に且つ精密に制御された微小な光拡散部を有する光拡散板を作製することができる。特に、内部光拡散型および表面光拡散型が両立されたタイプの光拡散板であっても、1つの工程で作製することも可能であり、生産性も良好である。
【0068】
光拡散板は、通常、板状やシート状の形態(又は形状)で製造されるが、他の形態を有していてもよい。光拡散板が板状又はシート状の形態を有する場合、その厚みとしては、特に制限されず、例えば、5μm〜10mm(好ましくは10μm〜5mm、さらに好ましくは20〜100μm)程度の範囲から選択することができる。このように、光拡散板の厚みが薄くても、レーザー照射を利用しているので、容易に且つ精密に制御された光拡散部を形成することができる。従って、光透過性および輝度特性が優れている。なお、光拡散板が表面光拡散部(隆起物)を有する場合、該光拡散板の厚みには、通常、隆起物である表面光拡散部の高さは含まれていない。
【0069】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと、前記光拡散部A〜Cから選択された少なくとも1種の光拡散部を内部及び/又は表面に有する光拡散板とが組み合わせられている。具体的には、液晶表示装置としては、例えば、図4〜6で表される液晶表示装置などが挙げられる。図4は本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図5、6は本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。図4〜6において、9、9a、9bは液晶表示装置、91は液晶セル、92、92aは偏光板、93は光拡散板、94はバックライトシステム、95は位相差板である。図4で示される液晶表示装置9では、光拡散板93は液晶セル91の上部側(表面側)に設置されており、光拡散板93が表面光拡散部を有する場合、通常、表面光拡散部を有する面側が液晶セル91側になるように設置される。図5で示される液晶表示装置9aでは、光拡散板93が液晶セル91の下部側(内面側)に設置されており、光拡散板93が表面光拡散部を有する場合、通常、表面光拡散部を有する面側が液晶セル91側になるように設置される。図6で示される液晶表示装置9bでは、図4で示される液晶表示装置9において、位相差板95が、液晶セル91と偏光板92との間に設置されていること以外は、図4で示される液晶表示装置9と同様である。なお、偏光板92、偏光板92a、位相差板95は、必要に応じて設けられている。また、偏光板92および偏光板92aは、何れか一方のみが用いられていてもよく、両方が用いられていてもよい。
【0070】
光拡散板93は、前記光拡散部A〜Cから選択された少なくとも1種の光拡散部を有する光拡散板である。バックライトシステム94の点灯による光は、光拡散板93で光拡散され、これにより、均一な輝度で表示されている。このように、液晶表示装置では、光拡散板が、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルと組み合わされている。なお、電気的ON/OFFにより光透過制御可能な液晶パネルとしては、特に制限されず、例えば、図4〜6で示されるように、液晶セルと、バックライトシステムとを有する液晶パネルが挙げられる。もちろん、偏光板や位相差板などを必要に応じて適宜用いることができる。
【0071】
本発明の液晶表示装置は、前記光拡散板を有しているので、全面的に明るく表示でき、また、該明るさの均一性も良好であり、視認性が優れている。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例1、実施例4及び実施例5は、本発明の範囲に含まれないが、参考として記載する。光拡散板としての特性については、全光線透過率およびヘイズ値で測定することができ、それぞれの値が大きいほど好ましく、具体的には、それぞれの値が大きいほど、透明性が高く、明るく、拡散性に優れた光拡散板(光拡散フィルム)となる。より具体的には、光拡散板を液晶表示装置の光拡散板として用いる場合、全光線透過率は60%以上であることが好ましく、また、ヘイズ値は80%以上であることが好ましい。
【0073】
実施例1
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が105℃のポリメチルメタクリレート(PMMA)シートの内部(深さ25μm)に、照射波長800nm、パルス幅150フェムト秒、繰り返し200kHzのチタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザーを、照射エネルギー31mW、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約3μm径、照射方向に対して直角方向のサンプルの移動速度500μm/秒の条件で照射したところ、内部に屈折率変調部を複数有する光拡散板が得られた。該光拡散板について、共焦点顕微鏡および電子顕微鏡を用いて、その表面および断面(内部)の形態及び形状の観察を行ったところ、表面には隆起物が観察されず、一方、内部に屈折率が変調した屈折率変調部が観察された。従って、該光拡散板は、内部光拡散部のみを有している。さらに、ヘイズメータを用いて光学特性を測定したところ、全光線透過率が91%であり、ヘイズ値が90%であった。
【0074】
実施例2
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が160℃のポリカーボネート(PC)シート内部(深さ25μm)に、実施例1と同じ超短パルスレーザーを、対物レンズ20倍を用い、照射エネルギーを30mWとしたこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、表面に微小隆起物を複数有する光拡散板が得られた。この光拡散板について、実施例1と同様にして、表面および断面(内部)の形態及び形状の観察を行ったところ、内部に屈折率が変調した屈折率変調部が観察され、また、表面には直径22μm、高さ15μmの釣り鐘形状の隆起物が27μm間隔で形成されていることが観察された。従って、該光拡散板は、表面光拡散部と、内部光拡散部とを有している。さらに、実施例1と同様にして光学特性を測定したところ、全光線透過率が90%であり、ヘイズ値が91%であった。
【0075】
実施例3
0.05mm厚さの、ガラス転移温度が−50℃のアクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂シートの内部(深さ30μm)に、実施例1と同じ超短パルスレーザーを、対物レンズ10倍を用い、照射エネルギーを20mWとしたこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、表面に隆起物(屈折率変調部)を複数有する光拡散板が得られた。この光拡散板について、実施例1と同様にして、表面および断面(内部)の形態及び形状の観察を行ったところ、内部に屈折率が変調した屈折率変調部が観察され、また、表面には直径20μm、高さ4.6μm、窪み3μmのカルデラ形状の隆起物が25μm間隔で形成されていることが観察された。従って、該光拡散板は、表面光拡散部と、内部光拡散部とを有している。さらに、実施例1と同様にして光学特性を測定したところ、全光線透過率が91%であり、ヘイズ値が92%であった。
【0076】
実施例4
実施例2により得られた、表面及び内部に光拡散部を有する光拡散板を金型の原型として用いた。この金型の原型(表面に微小隆起物を有するプラスチック)を、濃度:98重量%の硫酸(「98%硫酸」と称する場合がある)、無水クロム酸及び98%硫酸、純水、濃度:35重量%の塩酸、純水、98%硫酸、純水に、この順で、順次浸漬して、無電解メッキ前の前処理を行った後、ニッケルによる無電解メッキを行って、表面に微小隆起物を有するプラスチックの表面上にニッケルを0.8mmの厚みまで堆積させた後、ニッケルにより被覆されたプラスチックを剥離させて、ニッケルからなる金型を得た。
【0077】
このニッケルからなる金型に、AS樹脂をテトラヒドロフランに溶解したAS樹脂溶液を流し込んで、乾燥して固化させた後、型から抜いて、厚み65μmの光拡散板を得た。
【0078】
この光拡散板について、実施例1と同様にして、表面および断面(内部)の形態及び形状の観察を行ったところ、内部に屈折率が変調した屈折率変調部は観察されず、一方、表面には直径22μm、高さ15μmの釣り鐘形状の隆起物が27μm間隔で形成されていることが観察された。従って、該光拡散板は、表面光拡散部のみを有している。さらに、実施例1と同様にして光学特性を測定したところ、全光線透過率が91%であり、ヘイズ値が88%であった。
【0079】
実施例5
液晶セルの上面に、位相差板、偏光板、実施例4で得られた光拡散板を、この順で且つ光拡散板における表面光拡散部(釣り鐘形状の隆起物)側の面が液晶セル側となるように貼り合わせ、一方、前記液晶セルの下面に偏光板を貼り合わせ、該液晶セルの下面側の偏光板の下に、ライトを設置して、図6で示されるように、下側から照射する構造の透過型液晶表示装置を作製した。下側のライトを点灯したところ、表示面には優れた視認性で液晶による表示が観察された。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、光拡散板は、優れた光拡散性、光透過性及び輝度特性を有しているとともに、容易に製造することができる。また、前記光拡散板を有する液晶表示装置は、視認性が良好である。しかも、製造時のゴミの発生が少なく、優れた環境性で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】内部光拡散部を有する光拡散板の一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。
【図2】表面光拡散部を有する光拡散板の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。
【図3】プラスチック内部に超短パルスのレーザーを照射する一例を模式的に示す概略鳥瞰図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11〜16 光拡散板
21 屈折率変調部からなる内部光拡散部
22 円錐状の隆起物からなる表面光拡散部
23 釣り鐘状の隆起物からなる表面光拡散部
24 カルデラ状の隆起物からなる表面光拡散部
25 テラス状の隆起物からなる表面光拡散部
26 半球状の隆起物からなる表面光拡散部
1 プラスチックシート
1a プラスチックシート1の表面(上面)
T プラスチックシート1の厚さ
3 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー
4 レンズ
5 レーザー3の焦点
6 レーザー3の照射方向
7 レーザー3の焦点5の移動方向
8 レーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のライン
d プラスチックシート1の表面1aと、レーザー3の焦点5との距離
L ライン8における近接したライン間の間隔
9 液晶表示装置
9a、9b 液晶表示装置
91 液晶セル
92、92a 偏光板
93 光拡散板
94 バックライトシステム
95 位相差板
Claims (5)
- 厚みが5μm〜10mmであるとともに単層構造の光拡散板を作製する方法であって、下記の工程A〜Cのうち、工程Aと工程B及び/又は工程Cとの組み合わせからなる工程を具備することを特徴とする光拡散板の作製方法。
工程A:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック内部に屈折率の変調による内部光拡散部を形成する工程
工程B:プラスチック内部にレーザーを照射することにより、プラスチック表面に該プラスチック内部からの隆起による表面光拡散部を形成する工程
工程C:プラスチック内部にレーザーを照射して、プラスチック表面に該プラスチック内部から隆起して形成された微小隆起物を有する構造体を形成し、該微小隆起物を有する構造体を金型の原型として金型材料の被覆により金型を作製し、さらに該金型に成形材料を充填して、この充填物を金型から離型することにより、微小隆起構造の転写による表面光拡散部を形成する工程 - プラスチック内部に外部よりパルス幅10 -12 秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点をライン状に移動させながら照射する請求項1記載の光拡散板の作製方法。
- 超短パルスのレーザーを、プラスチック表面から5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射する請求項1又は2記載の光拡散板の作製方法。
- 工程Cで用いられる金型材料が金属材料である請求項1〜3の何れかの項に記載の光拡散板の作製方法。
- 工程Cで用いられる成形材料がプラスチック材料である請求項1〜4の何れかの項に記載の光拡散板の作製方法。
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