JP4079397B2 - 記録再生装置のトラッキング機構及びトラッキング方法 - Google Patents

記録再生装置のトラッキング機構及びトラッキング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は記録再生装置のトラッキング機構及びトラッキング方法に関し、例えばSTMの原理を用いて高密度・大容量メモリ装置を構成する際のトラッキング機構及びトラッキング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、導体の電子構造を直接観察できる走査型トンネル顕微鏡(以後、STMと略す)が開発され[G.Binning et al.Phys.Rev.Lett,49,57(1982)]、単結晶、多結晶を問わず実空間像の高い分解能の測定ができるようになった。
以来、先端の尖ったプローブを走査することにより様々な情報を得る走査プローブ顕微鏡(SPM)や、さらに基板に電気的、化学的あるいは物理的作用を及ぼす事を目的としたSPMを応用した微細加工技術の研究開発が行われている。さらに、このようなSPM技術はメモリ技術にも応用されつつある。例えば、特開昭63−161552号公報、特開昭63−161553号公報等には、記録層として電圧電流のスイッチング特性に対してメモリ効果を持つ材料、例えばπ電子径有機化合物やカルコゲン化合物類の薄膜層を用いて、記録・再生をSPMで行う方法が開示されている。この方法を用いて記録のビットサイズを直径10[nm]とすれば、1012bit/cm2の記録密度を持つ情報処理装置が実現できる。
【0003】
さて、一般に媒体上に記録された情報を読み出す場合には、媒体上の情報列に沿って情報読み出し用のプローブを相対移動させる必要がある。
まず、情報列の位置を検出する方法として媒体上に物理的なトラックを形成し、そのトラックにプローブを沿わせる方法が知られている。
特開平1−107341号公報には記録媒体表面にトラックとしてV字型の溝を形成し、プローブ電極が常にこの溝の中央に位置するように制御する方法が開示されている。
また特開平1−133239号公報には記録媒体の下にトラックを導電体層で形成して、トラックにトラッキング信号を印加し、プローブから検出されるトラッキング信号に基づいてフィードバック制御を行う方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1−107341号公報や特開平1−133239号公報に開示されているような媒体上に物理トラックを作成する方法は、物理トラックを設ける工程が必要になる。したがって、記録媒体の作成工程が複雑になることや、物理的な加工を行うために、記録媒体や、その基板の材質に対する制限が問題となる。
【0005】
そこで、本発明は上記した従来のものにおける課題を解決し、記録媒体に物理的な加工を行うことなく、記録再生と共通の原理を用いて、ビット列を利用して高精度な制御が可能なトラッキングを行い、エラーがなく安定した情報の記録及び再生のできる記録再生装置のトラッキング機構及びトラッキング方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するため、記録再生装置のトラッキング機構及びトラッキング方法を、つぎのように構成したことを目的としている。
すなわち、本発明のトラッキング機構は、記録媒体に対しプローブを相対走査してトラッキングを行いながら前記記録媒体上に情報を記録し、前記記録媒体上に記録された情報を再生する記録再生装置のトラッキング機構であって、
前記記録媒体上を走査して該記録媒体上にトラッキングビット列を記録すると共に、該トラッキングビット列を再生するように走査する際に用いられる、一体成形された2本1組のトラッキングプローブと、
前記2本1組のトラッキングプローブの前記記録媒体の表面と平行な面内における角度を変化させることで該2本1組のトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させる角度制御手段と、
前記記録媒体上に形成された該トラッキングプローブに対応する2本1組のトラッキングビット列を再生するように走査する手段と、
前記走査による再生出力に応じて制御信号出力手段から制御信号を出力し、該制御信号に基づいて前記記録媒体とプローブとの相対位置を制御する制御信号出力手段と、
を有することを特徴としている。
また、本発明のトラッキング機構は、前記制御信号出力手段が、前記2本のトラッキングプローブからの出力を比較し、比較結果に応じた符合と絶対値を持つ信号を出力する比較演算手段であることを特徴としている。
また、本発明のトラッキング機構は、前記制御信号出力手段が、前記2本1組のトラッキングプローブからの再生出力を保持するホールド手段と、該再生出力がしきい値を超えた時に該ホールド手段をリセットするしきい値検出手段と、を有することを特徴としている。
また、本発明のトラッキング機構は、前記制御信号出力手段が、前記2本1組のトラッキングプローブからの再生出力を2値化する2値化回路を有することを特徴としている。
また、本発明のトラッキング機構は、前記制御信号出力手段が、過去の信号の履歴を積分する積分手段と、該積分手段からの信号を増幅して制御信号として出力する増幅手段と、を有することを特徴としている
【0007】
また、本発明のトラッキング方法は、記録媒体上を記録再生プローブで相対走査して該記録媒体上に情報を記録再生する記録再生装置のトラッキング方法であって、
一体成形された2本1組のトラッキングプローブで該記録媒体上を走査して該記録媒体上にトラッキングビット列を記録し、
該2本1組のトラッキングプローブの該記録媒体の表面と平行な面内における角度を変化させることで該2本1組のトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させ、
該2本1組のトラッキングプローブにより記録されたトラッキングビット列を再生するように、該2本1組のトラッキングプローブで該記録媒体上を走査し、
該トラッキングビット列の再生出力に応じて制御信号を出力し、該制御信号に基づいて記録媒体と前記プローブとの相対位置を制御しながら、該記録再生プローブで該記録媒体上を走査し情報を記録再生することを特徴としている
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記した構成により、記録媒体に形成されたビット列を利用して、前記記録媒体とプローブとの相対位置を高精度に制御しながらトラッキングを行うことができるため、従来のように記録媒体に物理トラックを作成するための物理的な加工を行う必要がなく、エラーの少ない安定した情報の記録及び再生が可能となる。
すなわち、本発明においては、トラッキングビット列を、例えば、2本1組のトラッキングプローブで生成し、この2本1組のトラッキングプローブを一体として記録媒体表面と平行な面内において角度を変化させることでトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させ、この状態でトラッキングビット列の再生動作を行い、トラッキングプローブによるトラッキングビット列の再生信号を比較することにより、データの記録再生と同じ方法によって高精度で、高速で安定したトラッキングが可能となる。
また、直前のトラッキングビットの再生信号をホールドすることにより、トラッキングビット列間のビット再生タイミングのずれへの対応や、トラッキングビット列を用いたアドレス情報やその他のデータの記録再生が可能となる。
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
まず、間隔dで並んだ2本のトラッキングプローブ101、102を用いて、トラッキングのために2列のトラッキングビット列を形成する。この後、図1に示すように2本のトラッキングプローブとトラッキングビット列の相対角度をθ変化させる。これによって、先に形成したトラッキングビット列の間隔に対する、トラッキングプローブの見かけの間隔が変化する。図1は、見かけのプローブ間隔をΔdだけ狭くした場合の例である。もちろん、見かけのプローブ間隔をΔdだけ広くしてもかまわない。
ここで、2本のトラッキングプローブで、記録媒体上をトラッキングビット列に対して平行な方向(矢印の方向)にバイアス電圧を印加した状態で走査すると、プローブがトラッキングビット103上を通過する際にプローブと記録媒体との間に電流が流れる。ここで図2に示す比較回路204を用いて2本のプローブによるトラッキングビット103の再生出力の比較を行う。
【0010】
図3に示すように、トラッキングプローブが目標通りの位置にある場合には、比較回路204からのエラー信号は出力されない。しかし、図4、図5に示すようにトラッキングビット列に対して垂直方向に誤差が生じた場合、誤差の向きに応じた極性と誤差量に応じた絶対値を持つエラー信号が比較回路204から出力される。これを用いてxy駆動ステージ608を制御する。
さらに、トラッキングビット列にアドレス情報やその他のデータを記録することも可能である。
また、間隔制御のための角度変化によって、2本のトラッキングプローブの間で記録再生走査方向の位置が大きくずれた場合、あるいは、2本のトラッキングプローブで別々のデータをトラッキングビット列として記録した場合は、一方のプローブのみがトラッキングビット103を再生する場合がある。このような場合には、直前のトラッキングビット103の再生信号を保持し、次のトラッキングビットが出現するまでの間、これを用いてトラッキングを行う機構を用いることで対処できる。
【0011】
本発明を適用する記録再生装置は前記記録再生装置に限られるものではない。磁気記録再生装置、光磁気記録再生装置、近接場光記録再生装置等、他の記録再生装置にも適用可能であるが、以下に、図6を用いて、本発明を記録再生装置に適用した例の概要を説明する。
導電性を有する基板601上の記録層602からなる記録媒体603に対し、先端に設けられている探針604が接触するように、複数のプローブ605が配置されている。各プローブ605において、探針604は、たわむ様に弾性変形を生じる弾性体606により支持されている。
ここで、弾性体606の弾性変形の弾性定数が約0.1[N/m]、弾性変形量が約1[μm]であるとすると、記録媒体に対する探針の接触力は約10-7[N]程度となる。
【0012】
制御コンピュータ614により制御された位置制御回路613からの位置制御信号を受け、記録媒体603に取り付けられたxy駆動ステージ608が駆動され、プローブ605と記録媒体603とは記録媒体603に平行な面内において相対的に2次元方向に移動する。記録媒体603に対し、プローブの605のxy方向位置を調節し、探針604先端が記録媒体603上の所望の位置になるようプローブ605が位置合わせされる。
上記の記録再生装置において記録媒体603に対しプローブ605を走査する際、プローブ605上の探針604先端は記録媒体603に対し、常に接触した状態を保つ。
【0013】
このような接触走査方式は、探針604先端を記録媒体603に対し接触させたまま走査する場合に、記録媒体603の表面に凹凸があっても、弾性体606の弾性変形によりこれを吸収するため、探針604先端と記録媒体603表面の接触力はほぼ一定に保たれ、探針604先端や記録媒体603表面が破壊することを避けられる。この方式は個々のプローブをz方向に位置合わせするピエゾ素子等の手段が不必要であるため、構成が複雑にならず、特に複数のプローブを有する装置に適している。
【0014】
また、記録媒体603に対する個々のプローブ605のz方向位置のフィードバック制御が不必要であるため、記録媒体603に対するプローブ605の高速走査が可能となる。
制御コンピュータ614により制御された角度制御回路615からの角度制御信号を受け、プローブ605に取り付けられたθ駆動ステージ607が駆動され、プローブ605と記録媒体603とのなす角度は、記録媒体603の表面と平行な面内において相対的に変化する。
制御コンピュータ614により制御された記録制御回路611から発生された記録信号が、記録系に切り替えられた切り替えスイッチ609を通し、各探針604から記録媒体603に印加される。このようにして、記録層602の探針604先端が接触する部分に局所的に記録が行われる。
【0015】
上述の装置における記録層602としては、電圧印加により流れる電流値が変化するような材料を用いる。
具体例としては、第1に、特開昭63−161552号公報、特開昭63−161553号公報に開示されているようなポリイミドやSOAZ(ビス−n−オクチルスクアリリウムアズレン)等電気メモリー効果を有するLB膜(=Langmuir−Blodgette法により作成された有機単分子の膜の累積膜)が挙げられる。この材料は、探針−LB膜−基板間にしきい値以上の電圧(5〜10[V]程度)を印加すると間のLB膜の導電性が変化(OFF状態→ON状態)し、再生用のバイアス電圧(0.01〜2[V]程度)を印加した際に流れる電流が増大するものである。
第2の具体例として、GeTe,GaSb,SnTe等の非晶質薄膜材料が挙げられる。この材料は、探針−非晶質薄膜材料−基板間に電圧を印加し、流れる電流により発生する熱で非晶質→晶質への相転移を起こさせるものである。これにより材料の導電性が変化し、再生用のバイアス電圧を印加した際に流れる電流が増大するものである。
第3の具体例として、ZnやW、Si、GaAs等の酸化性金属・半導体材料が挙げられる。この材料は、探針−酸化性金属・半導体材料間に電圧を印加すると、流れる電流により、材料表面に吸着している水や大気中の酸素と反応し、表面に酸化膜が形成される。このため材料表面の接触抵抗が変化し、バイアス電圧を印加した際に流れる電流が減少する。
【0016】
さて、上述のように記録が行われたビットの再生は次のように行う。スイッチ609により、各プローブ605からの信号配線を再生系に切り替えた後、バイアス電圧印加手段610により、探針604と基板601との間にバイアス電圧を印加し、両者の間に流れる電流を再生制御回路612において検出する。記録媒体603上の記録ビットの部分は記録がなされていない部分に比べ電流が多く(または、少なく)流れるため、再生制御回路612において、この電流の違いを検出し、再生信号とし、制御コンピュータ614に出力する。
【0017】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
以下、図面を参照しながら、前記構成の記録再生装置に対し、本発明のトラッキング機構を適用した実施例1について詳細な説明を行う。
まず、上記装置に対して、図7に示すような、100[μm]間隔で一体成形された64本のプローブからなるプローブアレイ765を取り付けた。これら64本のプローブのうち、32、33番目の記録再生プローブ732、733をそれぞれトラッキングプローブ101、102として使用し、残りの62本を記録再生プローブとして使用する。この状態で、トラッキングプローブ102の探針先端からトラッキングプローブ101の探針先端を見る向きをyの正方向とし、記録媒体603の表面に垂直にプローブアレイ765から記録媒体603を見て、反時計周りをθの正の回転方向とし、yの正方向をθの負方向にπ/2[rad]回転した向きをxの正方向とする。
【0018】
次に、プローブアレイ765で、長さ110[μm]にわたり、線速度0.1[mm/s]で図1中xの正方向に、直線状に走査を行った。走査中、トラッキングプローブ102の第1の電圧パルス印加位置をトラッキングプローブ101の第1の電圧パルス印加位置に対して、走査方向に900[nm]ずらして、走査方向について50[nm]間隔で、2本のプローブそれぞれにつき、基板601との間に2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたトラッキングビットの直径は約10[nm]であった。
次に、プローブアレイ765を図1中xの負方向に110[μm]、図1中yの正方向に100[nm]移動させてから、同様に、トラッキングビットの生成動作を行った。これを繰り返して各トラッキングプローブについて、図1中y方向に100[nm]間隔で10列のトラッキングビット列を生成した。
【0019】
次に、プローブアレイ765を元の位置に戻し、プローブアレイ765を記録媒体603に対して、記録媒体603の表面と平行な平面内において、トラッキングプローブ101の探針先端を中心として、θの正方向に0.009[rad]回転させた。これにより、2本のトラッキングプローブの図1中y方向の間隔は4[nm]小さくなり、トラッキングプローブ102の探針先端は、トラッキングプローブ101の探針先端に対して、図1中xの正方向に、900[nm]ずれた事になり、走査中、2本のプローブは同時にトラッキングビット103上を通過する事になる。
次に、トラッキングプローブ101、102を用いてトラッキングを行いながら、残りの62本の記録再生プローブを用いて、データビット列の記録動作を行った。
【0020】
ここで、図2を用いて本実施例で用いたトラッキング機構について説明する。2本のトラッキングプローブから出力されたトラッキングビット再生時の電流信号はI/V変換回路201によって電圧信号に変換され、増幅回路202によってそれぞれ増幅された後、ローパスフィルタ203を通って、比較回路204へ入力される。比較回路204は入力された信号を比較し、その差分に応じた極性、絶対値を持つ電圧信号を出力する。この電圧信号はPIDフィルタ205を通り、積分回路206で過去の履歴と足し合わされ、増幅回路207で増幅された後、位置制御信号と足し合わされて、図6におけるxy駆動ステージ608を制御する。
トラッキングプローブ101、102と基板601との間に1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら長さ100[μm]にわたって、図1中のxの正方向に走査を行った。走査中、残りの記録再生プローブを用いて、基板601との間に、あらかじめ用意したデータ列に合わせて、各プローブ最大2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたデータビットの直径は約10[nm]、ビット間隔は約50[nm]であった。次に、プローブアレイ765を図1中xの負方向に100[μm]、図1中yの正方向に100[nm]移動させてから、同様に走査を行い、記録動作を行った。この動作を繰り返し、各記録再生プローブについて10列のデータビット列を生成した。また、走査中にトラッキングプローブ101、102のトラッキングビット再生信号をモニタした結果、再生エラーは認められなかった。
【0021】
次に、トラッキングを行いながらデータビットの再生動作を行った。プローブアレイ765を元の位置に戻してから、プローブアレイ765の全プローブに1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、トラッキングプローブ101、102で上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら走査を行った。走査中、全記録再生プローブからの再生信号をモニタした。全データビットについて50回の再生動作を行った結果、再生エラーは認められなかった。また、走査中にトラッキングプローブ101、102のトラッキングビット再生信号をモニタした結果、再生エラーは認められなかった。
【0022】
[実施例2]
以下、図面を参照しながら、前記構成の記録再生装置に対し、本発明のトラッキング機構を適用した実施例2について詳細な説明を行う。
まず、上記装置に対して、図7に示すような、100[μm]間隔で一体成形された64本のプローブからなるプローブアレイ765を取り付けた。これら64本のプローブのうち、32、33番目の記録再生プローブ732、733をそれぞれトラッキングプローブ101、102として使用し、残りの62本を記録再生プローブとして使用する。この状態で、記録媒体603の表面に垂直にプローブアレイ765から記録媒体603を見て、反時計周りをθの正の回転方向とし、トラッキングプローブ102の探針先端からトラッキングプローブ101の探針先端を見る向きをθの負方向にπ/6[rad]回転した向きをyの正方向とし、yの正方向をθの負方向にπ/2[rad]回転した向きをxの正方向とする。
【0023】
次に、プローブアレイ765を記録媒体603に対して、記録媒体603の表面と平行な平面内において、トラッキングプローブ101の探針先端を中心として、θの正方向に0.0001[rad]回転させてから、プローブアレイ765で、長さ100[μm]にわたり、線速度0.1[mm/s]で図8中xの正方向に、直線状に走査を行った。走査中、トラッキングプローブ101、102を用いて、走査方向について50[nm]間隔で、あらかじめ用意した2種類のデータにあわせて、2本のプローブそれぞれにつき、基板601との間に最大2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたトラッキングビットの直径は約10[nm]であった。
【0024】
次に、プローブアレイ765を図8中xの負方向に100[μm]、図8中yの正方向に100[nm]移動させてから、同様に、トラッキングビットの生成動作を行った。これを繰り返して各トラッキングプローブについて、100[nm]間隔で10列のトラッキングビット列を生成した。
次に、プローブアレイ765を元の位置と角度に戻した。これにより、2本のトラッキングプローブの図8中y方向の間隔は5[nm]大きくなり、x方向の間隔は8.6[nm]小さくなったことになる。
次に、トラッキングプローブ101、102を用いてトラッキングを行いながら、残りの62本の記録再生プローブを用いて、データビット列の記録動作を行った。
【0025】
ここで、図9を用いて本実施例で用いたトラッキング機構について説明する。2本のトラッキングプローブから出力されたトラッキングビット再生時の電流信号はI/V変換回路201によって電圧信号に変換され、増幅回路202によってそれぞれ増幅され、ローパスフィルタ203を通った後、しきい値回路901とピークホールド回路(P/H回路)902へ入力される。しきい値回路901は、信号電圧があらかじめ定められた電圧値を超えたときにピークホールド回路(P/H回路)902に対してリセット信号を出力する。ピークホールド回路(P/H回路)902は入力された電圧の最大値を比較回路204へ出力する。本実施例においては、2本のトラッキングプローブからの信号の入力タイミングがずれる、あるいは、トラッキングビットに抜けがあるような場合、常に直前の再生信号の最大値がホールドされているため、これをトラッキングに用いる。比較回路204は、入力された信号を比較し、その差分に応じた極性と絶対値を持つ電圧信号を出力する。これにより、2つのピークホールド回路が最後にホールドした信号の差分を持つ電圧信号が得られる。この電圧信号はPIDフィルタ205を通り、積分回路206で過去の履歴と足し合わされ、増幅回路207で増幅された後、位置制御信号と足し合わされて、図6におけるxy駆動ステージ608を制御する。
【0026】
トラッキングプローブ101、102と基板601との間に1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら長さ100[μm]にわたって、図8中xの正方向に走査を行った。走査中、残りの記録再生プローブを用いて、基板601との間に、あらかじめ用意したデータ列に合わせて、各プローブ最大2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたデータビットの直径は約10[nm]、ビット間隔は約50[nm]であった。次に、プローブアレイ765を図8中xの負方向に100[μm]、図8中yの正方向に100[nm]移動させてから、同様に走査を行い、記録動作を行った。この動作を繰り返し、各記録再生プローブについて10列のデータビット列を生成した。また、走査中にトラッキングプローブ101、102のトラッキングビット再生信号をモニタした結果、再生エラーは認められなかった。
【0027】
次に、トラッキングを行いながらデータビットの再生動作を行った。プローブアレイ765を元の位置に戻してから、プローブアレイ765の全プローブに1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、トラッキングプローブ101、102で上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら走査を行った。走査中、全記録再生プローブからの再生信号をモニタした。全データビットについて50回の再生動作を行った結果、再生エラーは認められなかった。また、走査中にトラッキングプローブ101、102のトラッキングビット再生信号をモニタした結果、再生エラーは認められなかった。
さらに、トラッキングビット列生成時に用いるデータとして、アドレス情報を示すデータを用いたところ同様の結果を得た。また、この場合、記録再生動作時に、トラッキングプローブ101、102からの再生信号をモニタしたところ、各時点でのアドレス情報を得る事ができた。
【0028】
[実施例3]
以下、図面を参照しながら、前記構成の記録再生装置に対し、本発明のトラッキング機構を適用した実施例3について詳細な説明を行う。
まず、上記装置に対して、図7に示すような、100[μm]間隔で一体成形された64本のプローブからなるプローブアレイ765を取り付けた。これら64本のプローブのうち、32、33番目の記録再生プローブ732、733をそれぞれトラッキングプローブ101、102として使用し、残りの62本を記録再生プローブとして使用する。この状態で、トラッキングプローブ102の探針先端からトラッキングプローブ101の探針先端を見る向きをyの正方向とし、記録媒体603の表面に垂直にプローブアレイ765から記録媒体603を見て、反時計周りをθの正の回転方向とし、yの正方向をθの負方向にπ/2[rad]回転した向きをxの正方向とする。
【0029】
次に、プローブアレイ765で、長さ80[μm]にわたり、線速度0.1[mm/s]で図10中yの正方向に、直線状に走査を行った。走査中、トラッキングプローブ101、102を用いて、走査方向について40[nm]間隔で、あらかじめ用意したアドレス情報を示す同じデータにあわせて、2本のトラッキングプローブに同時に、基板601との間に最大2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたトラッキングビットの直径は約10[nm]であった。
次に、プローブアレイ765を図10中yの負方向に80[μm]、図10中xの正方向に100[nm]移動させてから、同様に、トラッキングビットの生成動作を行った。これを繰り返して各トラッキングプローブについて、100[nm]間隔で10列のトラッキングビット列を生成した。
【0030】
次に、プローブアレイ765を元の位置に戻し、プローブアレイ765を記録媒体603に対して、記録媒体603と平行な平面内において、トラッキングプローブ101の探針先端を中心として、θの正方向に0.00005[rad]回転させた。これにより、2本のトラッキングプローブの図10中x方向の間隔は5[nm]大きくなり、図10中y方向の間隔は0.000125[nm]大きくなった事になる。y方向の間隔の変化はトラッキングビット103の直径10[nm]に対して十分に小さいため、無視できる。
次に、トラッキングプローブ101、102を用いてトラッキングを行いながら、残りの62本の記録再生プローブを用いて、データビット列の記録動作を行った。
【0031】
ここで、図11を用いて本実施例で用いたトラッキング機構について説明する。2本のトラッキングプローブから出力されたトラッキングビット再生時の電流信号はI/V変換回路201によって電圧信号に変換され、増幅回路202によってそれぞれ増幅された後、ローパスフィルタ203を通って、2値化回路1101で2値化を行った後、比較回路204へ入力される。比較回路204は入力された信号を比較し、その差分に応じた極性を持つ定電圧信号を出力する。これにより、2つの信号の長さの差分だけの長さを持った定電圧パルスが得られる事になる。この電圧信号はPIDフィルタ205を通り、積分回路206で過去の履歴と足し合わされ、増幅回路207で増幅された後、位置制御信号と足し合わされて、図6におけるxy駆動ステージ608を制御する。
【0032】
トラッキングプローブ101、102と基板601との間に1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら長さ80[μm]にわたって、図10中yの正方向に走査を行った。走査中、残りの記録再生プローブを用いて、基板601との間に、あらかじめ用意したデータ列に合わせて、各プローブ最大2048回電圧パルスを印加した。電圧は5.5V、印加時間は0.3[μsec]である。生成されたデータビットの直径は約10[nm]、ビット間隔は約40[nm]であった。次に、プローブアレイ765を図10中yの負方向に80[μm]、xの正方向に100[nm]移動させてから、同様に走査を行い、記録動作を行った。この動作を繰り返し、各記録再生プローブについて10列のデータビット列を生成した。また、走査中にトラッキングプローブ101、102のトラッキングビット再生信号をモニタし、アドレス情報を得た。
【0033】
次に、トラッキングを行いながらデータビットの再生動作を行った。プローブアレイ765を元の位置に戻してから、プローブアレイ765の全プローブに1.5Vのバイアス電圧を印加し、線速度2[mm/s]で、トラッキングプローブ101、102で上記トラッキング機構を用いてトラッキングを行いながら走査を行った。走査中、全記録再生プローブからの再生信号をモニタし、アドレス情報を得た。全データビットについて50回の再生動作を行った結果、再生エラーは認められなかった。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、一体成形された2本1組のトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させて、該記録媒体上に形成された該トラッキングプローブに対応する2本1組のトラッキングビット列を再生するように走査し、該走査による再生出力に応じて制御信号を出力し、該制御信号に基づいて前記記録媒体とプローブとの相対位置を制御しながらトラッキングを行うように構成されているから、記録媒体に形成されたビット列を利用して、前記記録媒体とプローブとの相対位置を高精度に制御しながらトラッキングを行うことができ、従来のように記録媒体に物理トラックを作成するための物理的な加工を行う必要がなく、上記2本1組のトラッキングプローブによりエラーの少ない安定した情報の記録及び再生が可能となる。
また、本発明においては、直前のトラッキングビットの再生信号をホールドするように構成することにより、トラッキングビット列間のビット再生タイミングのずれへの対応や、トラッキングビット列を用いたアドレス情報やその他のデータの記録再生が可能となる。
また、本発明においては、トラッキングビット列にアドレス情報やその他のデータを記録し、トラッキングプローブによりそれらを再生できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1のトラッキング機構を説明する図である。
【図3】本発明のトラッキング機構の原理を説明する図である。
【図4】本発明のトラッキング機構の原理を説明する図である。
【図5】本発明のトラッキング機構の原理を説明する図である。
【図6】本発明を適用する記録再生装置の全体構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施例で用いたプローブアレイの構成を説明する図である。
【図8】本発明の実施例2を説明する図である。
【図9】本発明の実施例2のトラッキング機構を説明する図である。
【図10】本発明の実施例3を説明する図である。
【図11】本発明の実施例3のトラッキング機構を説明する図である。
【符号の説明】
101:トラッキングプローブ
102:トラッキングプローブ
103:トラッキングビット
201:I/V変換回路
202:増幅回路
203:ローパスフィルタ
204:比較回路
205:PIDフィルタ
206:積分回路
207:増幅回路
601:基板
602:記録層
603:記録媒体
604:探針
605:プローブ
606:弾性体
607:θ駆動ステージ
608:xy駆動ステージ
609:切り替えスイッチ
610:バイアス印加手段
611:記録制御回路
612:再生制御回路
613:位置制御回路
614:制御コンピュータ
615:角度制御回路
701:プローブ
702:プローブ
703:プローブ
732:プローブ
733:プローブ
763:プローブ
764:プローブ
765:プローブアレイ
901:しきい値回路
902:ピークホールド回路
1101:2値化回路

Claims (6)

  1. 記録媒体に対しプローブを相対走査してトラッキングを行いながら前記記録媒体上に情報を記録し、前記記録媒体上に記録された情報を再生する記録再生装置のトラッキング機構であって、
    前記記録媒体上を走査して該記録媒体上にトラッキングビット列を記録すると共に、該トラッキングビット列を再生するように走査する際に用いられる、一体成形された2本1組のトラッキングプローブと、
    前記2本1組のトラッキングプローブの前記記録媒体の表面と平行な面内における角度を変化させることで該2本1組のトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させる角度制御手段と、
    前記記録媒体上に形成された該トラッキングプローブに対応する2本1組のトラッキングビット列を再生するように走査する手段と、
    前記走査による再生出力に応じて制御信号出力手段から制御信号を出力し、該制御信号に基づいて前記記録媒体とプローブとの相対位置を制御する制御信号出力手段と、
    を有することを特徴とするトラッキング機構。
  2. 前記制御信号出力手段が、前記2本のトラッキングプローブからの出力を比較し、比較結果に応じた符合と絶対値を持つ信号を出力する比較演算手段であることを特徴とする請求項1に記載のトラッキング機構。
  3. 前記制御信号出力手段が、前記2本1組のトラッキングプローブからの再生出力を保持するホールド手段と、該再生出力がしきい値を超えた時に該ホールド手段をリセットするしきい値検出手段と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラッキング機構。
  4. 前記制御信号出力手段が、前記2本1組のトラッキングプローブからの再生出力を2値化する2値化回路を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラッキング機構。
  5. 前記制御信号出力手段が、過去の信号の履歴を積分する積分手段と、該積分手段からの信号を増幅して制御信号として出力する増幅手段と、を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトラッキング機構。
  6. 記録媒体上を記録再生プローブで相対走査して該記録媒体上に情報を記録再生する記録再生装置のトラッキング方法であって、
    一体成形された2本1組のトラッキングプローブで該記録媒体上を走査して該記録媒体上にトラッキングビット列を記録し、
    該2本1組のトラッキングプローブの該記録媒体の表面と平行な面内における角度を変化させることで該2本1組のトラッキングプローブの見かけの間隔を変化させ、
    該2本1組のトラッキングプローブにより記録されたトラッキングビット列を再生するように、該2本1組のトラッキングプローブで該記録媒体上を走査し、
    該トラッキングビット列の再生出力に応じて制御信号を出力し、該制御信号に基づいて記録媒体と前記プローブとの相対位置を制御しながら、該記録再生プローブで該記録媒体上を走査し情報を記録再生することを特徴とする記録再生装置のトラッキング方法。
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