JP4078884B2 - 内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置 - Google Patents
内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌の内燃機関及び発進クラッチに係り、更に詳細には内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
車輌の駆動系に設けられた発進クラッチの制御装置の一つとして、例えば特開平8−318762号公報に記載されている如く、実際のエンジン回転数Neとエンジンの燃料カットよりの復帰回転数Neoとを比較し、実際のエンジン回転数Neが復帰回転数Neoよりも所定値以上小さいときには、発進クラッチを直結状態より半クラッチ状態にするよう構成され、上記所定値は車速の変化速度及びエンジン回転数の変化速度に応じて変化される発進クラッチの制御装置が既に知られている。
【0003】
かかる発進クラッチの制御装置によれば、燃料カットよりの復帰時に於けるトルクの変動に起因するショックを低減すると共に、惰行時にはエンジン回転数の低回転数域までエンジンの燃料カットを継続することができ、燃費の向上とエンジンブレーキの有効利用とを両立させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記公開公報に記載された制御装置に於いては、発進クラッチの係合状態に関係なくエンジンの燃料カットよりの復帰時期が設定されており、例えば燃料カットよりの復帰回転数Neoが発進クラッチの係合状態に応じて低回転数側へ変化される訳ではいため、燃費の向上及びエンジン回転数の低下抑制に関し改善の余地がある。
【0005】
本発明は、従来の発進クラッチの制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、発進クラッチの係合状態や作動状況に応じて内燃機関の燃料カットよりの復帰や燃料カットの実行が行われるよう内燃機関及び発進クラッチを協調制御することにより、従来に比して燃費の向上及び内燃機関の回転数の低下抑制を効果的に達成することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、車輌の駆動系に設けられた発進クラッチと車輌の減速時に燃料カットされる内燃機関とを協調制御する内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置にして、前記発進クラッチの入力回転数が前記発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下したときには燃料カットを禁止することを特徴とする内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置(請求項1の構成)によって達成される。
【0007】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1の構成によれば、発進クラッチの入力回転数が発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下したときには燃料カットが禁止され内燃機関に対し燃料の供給が行われるので、駆動輪の減速トルクが発進クラッチを介して内燃機関へ伝達されることに起因して内燃機関の回転数が過剰に低下することを確実に防止することができる。
【0008】
また上記請求項2の構成によれば、発進クラッチの入力回転数が発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下した状況が所定時間以上継続したときに、燃料カットが禁止され内燃機関に対し燃料の供給が行われるので、内燃機関の回転数が過剰に低下することを一層確実に防止することができる。
【0009】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、協調制御装置は駆動輪の減速トルクが内燃機関へ伝達されることを抑制すべく発進クラッチの係合圧の低減された状況に於いて発進クラッチの入力回転数が発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下したときに燃料カットを禁止するよう構成される(好ましい態様1)。
【0010】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、協調制御装置は駆動輪の減速トルクが内燃機関へ伝達されることを抑制すべく発進クラッチの係合圧が低減された状況に於いて発進クラッチの入力回転数が発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下した状況が所定時間以上継続したときに燃料カットを禁止するよう構成される(好ましい態様2)。
【0011】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、協調制御装置は発進クラッチの係合圧が高いほど所定値が小さくなるよう、発進クラッチの係合圧に応じて所定値を可変設定するよう構成される(好ましい態様3)。
【0012】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、協調制御装置は発進クラッチの係合圧が高いほど所定時間が長くなるよう、発進クラッチの係合圧に応じて所定時間を可変設定するよう構成される(好ましい態様4)。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、発進クラッチは内燃機関と変速機との間の動力伝達経路に位置するよう構成される(好ましい態様5)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、変速機は無段変速機構と前後進切換装置とを含み、発進クラッチは前後進切換装置の前進クラッチであるよう構成される(好ましい態様6)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、変速機は無段変速機構と前後進切換装置とを含み、発進クラッチは内燃機関と前後進切換装置との間の動力伝達経路に位置するよう構成される(好ましい態様7)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、発進クラッチは変速機と駆動輪との間の動力伝達経路に位置するよう構成される(好ましい態様8)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、発進クラッチは自動変速機の発進クラッチであるよう構成される(好ましい態様9)。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施の形態(以下単に実施形態という)について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明による協調制御装置の実施形態が適用される車輌の動力伝達装置を示すスケルトン図である。尚簡略化の目的で、図1に於いては前後進切換装置の上半分のみが図示されている。
【0026】
図1に於いて、動力伝達装置10は例えば横置き型FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車に好適なものとして構成されており、走行用動力源としての内燃機関であるエンジン12を備えている。エンジン12の出力は、前後進切換装置16、ベルト式無段変速機構構(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22へ伝達され、更に図1には示されていない一対のユニバーサルジョイントを介して左右の駆動輪24L、24Rへ伝達される。
【0027】
前後進切換装置16は車輌の前後進を切換える装置であり、図示の実施形態に於いてはダブルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されている。エンジン12のクランク軸12aに連結された前後進切換装置16の入力軸26はサンギヤ16sに連結され、ベルト式無段変速機構構18の入力軸36はキャリア16cに連結されている。
【0028】
キャリア16cとサンギヤ16sとの間には油圧式の前進クラッチ38が配設されており、図には示されていないが前進クラッチ38のクラッチ板は油圧シリンダのピストンにより駆動され、油圧シリンダのピストンは戻しばねにより前進クラッチ38の解放位置へ付勢されている。特に図には示されていないシフトレバーがD、2、Lレンジなどの前進走行レンジに設定されると、油圧シリンダの油圧Pcltが油圧制御回路39によって増大され、ピストンが戻しばねのばね力に抗して前進クラッチ38の係合位置へ向けて駆動され、これにより前進クラッチ38が係合せしめられて入力軸26が入力軸36に直結され、前後進切換装置16が入力軸36と一体に回転することにより前進方向の駆動力がベルト式無段変速機構構18等を介して駆動輪24R、24Lへ伝達される。
【0029】
これに対しシフトレバーがRレンジである後進走行レンジに設定されると、リングギヤ16rとハウジングの如き非回転部材との間に配設された油圧式の後進ブレーキ40が油圧制御回路39によって制御されることにより係合せしめられリングギヤ16rが非回転部材に連結されると共に、前進クラッチ38が油圧制御回路39によって制御されることにより解放され、入力軸36は入力軸26とは逆方向へ回転し、これにより後進方向の駆動力がベルト式無段変速機構構18等を介して駆動輪24R、24Lへ伝達される。尚図示の実施形態に於いては、後述の如く、前進クラッチ38は発進クラッチとして使用される。
【0030】
ベルト式無段変速機構18は、入力軸36に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ装置42と、出力軸44に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ装置46と、それらの可変プーリ装置42、46のV溝に巻き掛けられた伝動ベルト48とを有し、動力伝達部材として機能する伝動ベルト48と可変プーリ装置42、46のV溝の壁面との間の摩擦力を介して動力の伝達を行うようになっている。
【0031】
入力側可変プーリ装置42はそのV溝幅、即ち伝動ベルト48の巻き掛かり径(有効径)を変更するための入力側油圧シリンダ42cを有し、油圧シリンダ42cに対し給排される作動油の油圧Paは油圧制御回路52によって制御され、これにより可変プーリ装置42のV溝幅が変化して伝動ベルト48の巻き掛かり径が変更され、変速比γ(=入力側回転速度Nin/出力側回転速度Nout)が無段階に連続的に変化せしめられる。
【0032】
同様に、出力側可変プーリ装置46はそのV溝幅を変更するための出力側油圧シリンダ46cを有し、油圧シリンダ46c内の油圧Pbも油圧制御回路52により調圧され、これにより伝動ベルト48に対する出力側可変プーリ装置46の挟圧力が調節されることによって伝動ベルト48の張力が調節され、伝動ベルト48が可変プーリ装置42及び46に対し滑ることが防止される。尚油圧制御回路39及び52は電子制御装置54により制御される。
【0033】
電子制御装置54には回転数センサ60により検出されたエンジン回転数Neを示す信号、スロットル開度センサ62により検出されたスロットル開度θを示す信号、車速センサ64により検出された車速Vを示す信号、アイドルスイッチ(SW)66よりのON−OFF信号がエンジン制御装置68を介して入力され、制動制御に関する情報が制動制御装置70より入力される。
【0034】
また電子制御装置54には回転数センサ72により検出されたベルト式無段変速機構18の入力軸36の回転速度Ninを示す信号、シフトポジション(SP)センサ74により検出されたシフトレンジを示す信号、トルクセンサ76により検出された入力軸36のトルク(前進クラッチ38の出力軸のトルク)Toutを示す信号、圧力センサ78により検出された前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧Pcltを示す信号、温度センサ80により検出された前進クラッチ38のクラッチオイルの温度Toilを示す信号が入力される。
【0035】
エンジン制御装置68は、図には示されていないアクセルペダルの踏込量等に応じて燃料噴射装置12b等を制御することによりエンジン12の出力を制御し、また予め設定された減速時燃料カットの開始条件(例えば車輌が減速状態にあり且つエンジン回転数Neが基準値以上である)が成立すると共に、電子制御装置54より燃料カットの許可信号が入力されているときには、同じく予め設定された燃料カットの終了条件(復帰条件)が成立するまで、燃料噴射装置12bによる燃料供給を停止する燃料カットを行い、燃費の向上及び失火による触媒過熱を防止するようになっている。
【0036】
特に図示の実施形態に於いては、エンジン制御装置68は、燃料カットの開始条件が成立しても、電子制御装置54より燃料カット禁止信号が入力されているときには燃料カットを実行せず、燃料カットの実行中に電子制御装置54より燃料カット禁止信号が入力されると燃料カットを終了し燃料の供給を再開する。またエンジン制御装置68は、例えば車輌の減速時にエンジン回転数Neが基準値以下に低下した場合の如く所定の条件が成立すると、電子制御装置54へ前進クラッチ38の解放を要求する信号を出力する。
【0037】
またエンジン制御装置68は、燃料カットの実行中に燃料カットよりの復帰要求(燃料供給再開要求)信号が電子制御装置54より入力されると、エンジン12に対する燃料噴射装置12bによる燃料の供給を再開し、また燃料カットの実行中に電子制御装置54より燃料の非同期噴射要求信号が入力されると、燃料噴射装置12bを制御することによりエンジン12に対し燃料を非同期噴射し、燃料カットを終了させる。
【0038】
制動制御装置70は、図には示されていない圧力センサにより検出されるマスタシリンダ圧力等に基づき図には示されていない制動力制御用の油圧制御回路を制御することにより各車輪の制動力を運転者の制動要求に応じて制御すると共に、何れかの車輪の制動スリップが過剰であるときには、当該車輪の制動スリップが適正な値になるよう油圧制御回路を制御することによって当該車輪の制動圧を増減制御するアンチスキッド制御(所謂ABS制御)を行う。
【0039】
電子制御装置54は後述の如く前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧を制御することによって前進クラッチ38の係合状態を制御すると共に、図には示されていない前後進切換制御ルーチンに従って前進クラッチ38及び後進ブレーキ40の係合状態を制御する。また電子制御装置54は図には示されていない変速制御ルーチンに従ってベルト式無段変速機構18の入力側回転速度Ninが車輌の走行状態により定まる目標入力側回転速度Nintになるよう制御する。
【0040】
特に図示の実施形態に於いては、電子制御装置54は、シフトポジションセンサ74により検出されたシフトレンジがNレンジ、Pレンジ又はRレンジにあるときには前進クラッチ38を解放するが、シフトレンジがDレンジの如き前進走行レンジにあるときには、原則としてスロットル開度θに基づき前進クラッチ38の目標伝達トルクTclttを演算すると共に、温度センサ80により検出された前進クラッチ38のオイルの温度Toilに基づき係数αを演算し、下記の式1に従って目標伝達トルクTclttを達成するに必要な目標伝達トルク発生油圧Pclttを演算する。尚下記の式1に於いて、係数Aは前進クラッチ38の油圧シリンダの断面積であり、Wは前進クラッチ38の戻しばねの荷重である。
Pcltt=(α・Tcltt+W)/A ……(1)
【0041】
また電子制御装置54は、トルクセンサ76により検出された出力トルクToutと目標伝達トルクTclttとの偏差ΔTp(=Tout−Tcltt)に基づきその積分値ΔTi及び微分値ΔTdを演算し、Kp、Ki、Kdをそれぞれ比例項の係数、積分項の係数、微分項の係数とする下記の式2に従ってPIDフィードバック制御量Ppidを演算する。
Ppid=Kp・ΔTp+Ki・ΔTi+Kd・ΔTd ……(2)
【0042】
そして電子制御装置54は、油圧制御回路39に対する指示油圧Pcltaと圧力センサ78により検出された実油圧PcltとのオフセットΔPclt(=Pclta−Pclt)を演算すると共に、下記の式3に従って目標伝達トルク発生油圧PclttとPIDフィードバック制御量PpidとオフセットΔPcltとの和として指示油圧Pcltaを演算し、該指示油圧Pcltaに基づき前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧を制御する。
Pclta=Pcltt+Ppid+ΔPclt ……(3)
【0043】
また電子制御装置54は、車輌が所謂「コースト状態」、即ちアイドルスイッチ66がON状態にあり且つエンジン12が被駆動状態(例えば車速Vの微分値Vdが負の値である状態)にあるときには、ベルト式無段変速機構18の変速比γがその最大値γmaxになるよう制御すると共に、該無段変速機構18の制御に同期して例えば車速Vの微分値Vdの大きさに応じて前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧を低減するコースト制御を行い、これにより車輌の減速時に駆動輪よりエンジン12へ減速トルクが伝達されることを抑制する。
【0044】
また電子制御装置54は、コースト制御の実行中であり燃料カットが実行されている状況に於いて、車輌が急減速制動状態になったり、エンジン回転数Neが急激に低下したり、エンジン制御装置68より前進クラッチ38の係合圧Pcltの減圧要求があったときには、係合圧Pcltを迅速に低下させて前進クラッチ38を迅速に解放する。
【0045】
更に電子制御装置54は、図2に示された協調制御ルーチンに従ってエンジン12の燃料カット及び前進クラッチ38を協調制御する。特に電子制御装置54は、前進クラッチ38が完全係合状態にある場合又はコースト制御中である場合には原則としてエンジン制御装置68へ燃料カットの許可信号を出力するが、コースト制御中である場合に於いて、エンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力軸回転数Ncout(=Nin)よりも所定値以上低下した状況が所定時間以上継続したときには、エンジン制御装置68へ燃料カットよりの復帰要求(燃料供給再開要求)信号を出力する。
【0046】
また電子制御装置54は、図2に示された協調制御ルーチンに従って、車輌が急減速状態にある場合、少なくとも駆動輪についてアンチスキッド制御が行われている場合、駆動輪の制動スリップが大きい場合の如く、車輌が急減速制動状態にある状況や、エンジン回転数Neが急激に低下する状況や、エンジン制御装置68より前進クラッチ38の係合圧低下要求信号が入力された状況に於いては、エンジン制御装置68へ燃料の非同期噴射要求信号を送信する。尚この場合のコースト制御は、前進クラッチにより伝達されるトルクが実質的に0になる程度にまで前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧を迅速に低下させることにより行われる。
【0047】
尚図には詳細に示されていないが、電子制御装置54、エンジン制御装置68及び制動制御装置70はCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有しこれらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路を含む一般的な構成のものであってよい。
【0048】
次に図2に示されたフローチャートを参照して、図示の実施形態に於いて前進クラッチ38を発進クラッチとして行われる内燃機関及び発進クラッチの協調制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる協調制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0049】
まずステップ10に於いては回転数センサ60により検出されたエンジン回転数Neを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはシフトポジションセンサ74により検出されたシフトポジションがDレンジの如き走行レンジであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ160へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
【0050】
ステップ30に於いてはアイドルスイッチ66がON状態にあるか否かの判別、即ち運転者により図は示されていないアクセルペダルが踏み込まれていないか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ160へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ40へ進む。
【0051】
ステップ40に於いては例えば圧力センサ78により検出された前進クラッチ38の係合圧Pclttが基準値以上であるか否かの判別により、又は前進クラッチ38の入力側回転数(Ne)と出力側回転数(Ncout)との比較により、前進クラッチ38が完全係合状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのままステップ60へ進み、否定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
【0052】
ステップ50に於いてはコースト制御の実行中であるか否かの判別、即ち車輌が減速状態にありエンジン12のストールを防止するために前進クラッチ38の係合圧が低減される制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ160へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ60へ進む。
【0053】
ステップ60に於いては車輌が急減速制動状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進み、否定判別が行われたときにはステップ70へ進む。尚車輌が急減速制動状態にあるか否かの判別は、例えば車速Vの時間微分値が負の基準値以下であるか否かの判別、駆動輪についてアンチスキッド制御が実行されているか否かの判別、駆動輪の減速スリップが基準値以上であるか否かの判別により行われてよい。
【0054】
ステップ70に於いては例えばエンジン制御装置68より入力されるエンジン回転数Neの変化率が負の基準値以下であるか否かの判別により、エンジン回転数Neが急激に低下しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進み、否定判別が行われたときにはステップ80へ進む。
【0055】
ステップ80に於いてはエンジン制御装置68より前進クラッチ38の係合圧Pcltの減圧要求があったか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進み、否定判別が行われたときにはステップ90へ進む。
【0056】
ステップ90に於いてはエンジン回転数NeがNcout−No以下であるか否かの判別、即ちエンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力側回転数Ncout(=Nin)よりも所定値No以上小さい状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ100に於いてカウンタのカウント値Cが1インクリメントされ、否定判別が行われたときにはステップ110に於いてカウント値Cが0にリセットされる。尚所定値Noは正の定数であってもよいが、前進クラッチ38の係合圧Pcltが高いほど小さくなるよう係合圧Pcltに応じて正の値に可変設定される。
【0057】
ステップ120に於いてはカウンタのカウント値Cが基準値Co(正の一定の整数)以上であるか否かの判別、即ちエンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力側回転数Ncoutよりも所定値No以上小さい状況が所定時間以上継続したか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ130に於いてエンジン制御装置68へ燃料カット禁止信号が送信され、否定判別が行われたときにはステップ140に於いてエンジン制御装置68へ燃料カット許可信号が送信される。
【0058】
ステップ150に於いてはエンジン制御装置68へ燃料の非同期噴射要求を送信し、これにより燃料カットより復帰させて燃料噴射装置12bによる燃料噴射が再開され、ステップ160に於いてはカウンタのカウント値Cが0にリセットされる。
【0059】
かくして図示の実施形態によれば、車輌が急激ではない通常の減速を開始し、車輌がコースト状態、即ち駆動輪の減速トルクがエンジン12へ伝達される状態になると、電子制御装置54によってコースト制御が開始され、ベルト式無段変速機構18の変速比γがその最大値γmaxになるようベルト式無段変速機構18が制御されると共に、該無段変速機構18の制御に同期して前進クラッチ38の油圧シリンダの油圧が低減され、前進クラッチ38が完全係合状態より解放状態へ向けて制御される。
【0060】
そしてこの場合にはステップ40に於いて否定判別が行われると共にステップ50に於いて肯定判別が行われ、ステップ60〜90に於いて否定判別が行われ、これによりステップ140に於いて電子制御装置54よりエンジン制御装置68へ燃料カット許可信号が送信され、予め設定された燃料カットの開始条件が成立した段階に於いてエンジン制御装置68により燃料カットが開始される。
【0061】
車輌の通常減速時に燃料カットが開始されると、エンジン回転数Neが漸次低下するので、ステップ90に於いて肯定判別が行われるようになり、ステップ90に於いて肯定判別がCo回以上行われると、ステップ120に於いて肯定判別が行われ、ステップ130に於いてエンジン制御装置68へ燃料カット禁止信号が送信され、これにより燃料噴射装置12bによるエンジン12に対する燃料噴射が再開される。
【0062】
従ってコースト制御が開始され、前進クラッチ38の係合圧Pcltが低下されることによって前進クラッチの解放が開始された後に燃料カットよりの復帰が行われるので、前進クラッチ38の係合状態に関係なくエンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力側回転数Ncoutよりも所定値No以上小さい状況が所定時間以上継続したときに燃料カットよりの復帰が行われる場合に比して、エンジン12の回転数Neの過剰低下を招来することなく低車速域まで燃料カットを行うことができ、これにより燃費を確実に向上させることができ、燃費の向上とエンジンブレーキの有効利用との両立を図ることができる。
【0063】
また前進クラッチの解放が開始された後に燃料カットよりの復帰が行われるので、燃料カットよりの復帰によりエンジン12に対する燃料の供給が再開されその出力トルクが増大される際にエンジン12より前進クラッチ38を経て駆動輪へ伝達されるトルクを低減することができ、従って前進クラッチ38の係合状態に関係なくエンジン回転数Neと前進クラッチ38の出力側回転数Ncoutよりも所定値No以上小さい状況が所定時間以上継続したときに燃料カットよりの復帰が行われる場合に比して、燃料供給の再開時に於けるショックを低減することができる。
【0064】
特に図示の実施形態によれば、ステップ90に於ける判別の所定値Noは前進クラッチ38の係合圧Pcltが高いほど小さくなるよう正の値に可変設定されるので、前進クラッチ38によるトルクの伝達がされ易いほどステップ90に於いて肯定判別が行われ難くいことにより燃料カットよりの復帰が行われ難く、従って所定値Noが正の定数である場合に比して確実に低車速域まで燃料カットを行うことができる。
【0065】
またステップ90に於いてエンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力側回転数Ncoutよりも所定値No以上小さい状況が所定時間以上継続したときに燃料カットよりの復帰が行われるので、エンジン12の回転数Neの過剰低下を確実に回避することができると共に、エンジン回転数Neが前進クラッチ38の出力側回転数Ncoutよりも所定値No以上小さいと判定されると直ぐに燃料カットよりの復帰が行われる場合に比して、確実に低車速域まで燃料カットを行うことができる。
【0066】
また図示の実施形態によれば、車輌が減速状態にあり、これによりコースト制御が実行されると共に燃料カットが実行される状況に於いて、車輌が急減速制動状態になったり、エンジン回転数Neが急激に低下したり、エンジン制御装置68より前進クラッチ38の係合圧Pcltの減圧要求があったときには、ステップ50に於いて肯定判別が行われると共に、ステップ60〜80の何れかに於いて肯定判別が行われ、ステップ150に於いてエンジン制御装置68へ燃料の非同期噴射要求が送信され、燃料噴射装置12bによる燃料噴射が再開されるので、エンジン12の回転数Neが過剰に低下することを確実に防止することができる。またこの場合、前進クラッチ38が迅速に解放されるので、このことによってもエンジン回転数Neの過剰低下を確実に防止することができる。
【0067】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0068】
例えば上述の実施形態に於いては、発進クラッチとしての前進クラッチ38は駆動源としてのエンジン12と変速機である無段変速機構18との間に設けられているが、発進クラッチは変速機と駆動輪との間に設けられてもよく、その場合には変速機の変速比をγとして上記式1は下記の式4に置き換えられ、また上記ステップ90に於ける判別はエンジン回転数Neが(Ncout−No)/γ以下であるか否かの判別により行われる。
Pcltt=(α・Tcltt・γ+W)/A ……(4)
【0069】
また上述の実施形態に於いては、発進クラッチは前後進切換装置16の前進クラッチ38であるが、発進クラッチは前後進切換装置16の前進クラッチ38とは独立にエンジン12と前後進切換装置16との間又は変速機と駆動輪との間に設けられてもよい。
【0070】
また上述の実施形態に於いては、変速機構はベルト式の無段変速機構18であるが、変速機構は例えばトロイダルコーン式の無段変速機構の如く当技術分野に於いて公知の任意の無段変速機構であってもよく、また変速機は自動変速機であってもよく、特に変速機が自動変速機である場合には、発進クラッチは自動変速機の発進クラッチであってもよい。
【0071】
また上述の実施形態に於いては、ステップ120に於ける判別の基準値Coは定数であるが、基準値Coは例えば前進クラッチ38の係合圧Pcltが高いほど大きくなるよう係合圧Pcltに応じて正の値に可変設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置の実施形態が適用される車輌の動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図2】実施形態に於ける内燃機関及び発進クラッチの協調制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
12…エンジン
14…トルクコンバータ
16…前後進切換装置
18…ベルト式無段変速機構
39、52…油圧制御回路
54…電子制御装置
60…回転数センサ
62…スロットル開度センサ
64…車速センサ
66…アイドルスイッチ
68…エンジン制御装置
70…制動制御装置
72…回転数センサ
74…シフトポジションセンサ
76…トルクセンサ
78…圧力センサ
80…温度センサ
Claims (2)
- 車輌の駆動系に設けられた発進クラッチと車輌の減速時に燃料カットされる内燃機関とを協調制御する内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置にして、前記発進クラッチの入力回転数が前記発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下したときには燃料カットを禁止することを特徴とする内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置。
- 前記発進クラッチの入力回転数が前記発進クラッチの出力回転数よりも所定値以上低下した状況が所定時間以上継続したときに燃料カットを禁止することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関及び発進クラッチの協調制御装置。
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