JP4078798B2 - パンタグラフ支障物検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は画像処理によりパンタグラフ支障物を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
パンタグラフ支障物とは、走行する鉄道車両のパンタグラフに接触して、走行に支障をきたす障害物のことであり、例えばトロリ線を固定する曲線引き金具等の支持物が車両に異常接近したり、自車両とは関係ないトロリ線が近接すると、これらが支障物となる。
【0003】
従来より、これら支障物の検出手段として、検測車や車両限界測定車などと呼ばれる専用の測定車(以降、測定車と呼ぶ)が知られており、営業運転の合間を縫って一定周期毎に運用されている。
【0004】
これら測定車には、車体の傾きやレールの変位等、各種状態を測定するセンサが多数取り付けられており、そのセンサの1つとして、支障物の検出センサがある。
【0005】
支障物のセンサには、接触センサ、レーザセンサ、光切断センサなどがあり、それぞれ以下の特徴がある。
(1) 接触センサは、耐電圧の高いセンサを直接パンタグラフに取り付け、支障物がパンタグラフに接触したかどうかを測定するセンサである。測定車の一種には、金属棒を測定車の周囲に針ネズミのように取り付け、物理的な接触を測定するものもある。
(2) レーザセンサは、レーザの照射形状によりスポット式レーザ、スキャン式レーザ、レンズ型レーザ(扇形に照射)などがあり、反射波の位相差や照射したレーザ形状の変形により測定対象までの絶対的な距離を測定するセンサである。
(3) 光切断センサは、縞状の光を測定対象に投光し、測定対象の凹凸に沿った縞の変形を受光して、測定対象面の3次元的な形状を測定するセンサである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
測定車は本来、経済的且つ効率的な運用が要求されているために、必要最低限の測定頻度で運用され、且つ、測定車台数の余裕がない。従って、緊急以外、あるいは、当初予定のスケジュール以外では測定車を使用できず、測定車による支障物検出は制限が多い。
【0007】
接触センサを用いた支障物検出は信頼性が極めて高いが、下記の問題点がある。
▲1▼接触センサが接触するまで支障物の存在が分からない。
▲2▼測定車が高速走行で測定すると、支障物と接触センサが高速で衝突する。従って、2次障害を発生させないためにも、測定車は高速で走行できない。
【0008】
レーザセンサを用いた支障物検出には、下記の問題点がある。
▲1▼スポット式レーザとスキャン式レーザは、測定点までの距離を1点だけ測定するセンサであるので、高速走行する測定車からはパンタグラフの近傍を広範囲に測定することができない。
▲2▼レンズ型レーザ(扇形照射)は、通常 CLASS-C以上(JIS-C-6802規格)の強いレーザなので、人が立ち入る場所では、安全上使用できない。
【0009】
光切断センサの使用は、センサから投光された光が直射日光下では見えないため、夜間に限られる。従って、支障物の発生が予測される熱膨張の著しい真夏の日中に、使用できない。
【0010】
従って、本発明の課題は、上記問題点を解消するパンタグラフ支障物検出技術を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための第1の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、パンタグラフ近傍を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した画像を処理する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、モデルマッチング又はパターンマッチングにより、前記画像中のパンタグラフを検出し、該パンタグラフの位置、高さを求め、前記画像中から直線を検出し、前記パンタグラフと交差して延びる直線をトロリー線として検出して、該トロリー線の位置、角度を求めた上で、支障物の検出を行うことを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第2の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第1の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置において、前記画像を記録する映像記録部と、記録した前記画像を再生する映像再生部とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第3の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第1の発明又は第2の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置において、前記画像処理部は、前記画像中の高い輝度が短時間に発生し消滅する場所をアークとして検出することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第4の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第1の発明から第3の発明のいずれかひとつに係るパンタグラフ支障物検出装置において、パンタグラフ近傍を撮影するカメラをさらにもう1台設置し、2台のカメラを車両進行方向と直交する向きに配置して、前記パンタグラフ近傍を2台の前記カメラで撮影することを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第5の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第1の発明から第3の発明のいずれかひとつに係るパンタグラフ支障物検出装置において、パンタグラフ近傍を撮影するカメラをさらにもう1台設置し、2台のカメラを車両進行方向と平行する向きに配置して、前記パンタグラフ近傍を前記2台のカメラで撮影することを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第6の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第4の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置において、前記2台のカメラは、前記パンタグラフ近傍をステレオ撮影し、前記画像処理部は、前記カメラで撮影した左右画像をステレオ計測することを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第7の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第6の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置において、前記画像処理部は、前記左右画像の視差を測定して、わたり線の離隔距離を求めることを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第8の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置は、第6の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置において、前記画像処理部は、前記パンタグラフから仮想的に延伸した直線と前記トロリ線との交点の前記左右画像における差からわたり線の離隔距離を測定することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図16を参照して、本発明を説明する。
【0022】
[発明の基本的な考え方]
本発明の基本的な考え方は、測定車に限らず任意の車両、例えば営業車の屋根にカメラ(例えばITVカメラ)を設置し、このカメラでパンタグラフ付近の映像を撮影し、この映像を画像処理することにより、パンタグラフの高さとトロリ線の偏位等を検出することである。
【0023】
[実施形態例1:基本的構成その1(オンライン画像処理)]
【0024】
図1に本実施形態例1に係るパンタグラフ支障物検出装置の構成を示し、図2にその画像処理のフローチャートを示す。
【0025】
図1に示すパンタグラフ支障物検出装置は、1台のITVカメラ2と、画像処理部3から構成される。カメラ2は、パンタグラフ付近を撮影するために例えば営業車の屋根1に設置されている。画像処理部3は、カメラ2の映像出力をオンラインで画像処理することによりパンタグラフとトロリ線(ともに図示省略)の位置を測定する。画像処理部3は測定値を結果記録部4に出力し、記録する。撮影用の照明(図示省略)は通常ハロゲンランプを使用するが、カメラ2上の照度が必要であって、可視光の光量を大きくできない場合には、赤外線照明を使用しても良い。また、画像処理部3及び結果記録部4はオンライン処理のため、通常、車両内に設置される。
【0026】
画像処理部3における画像処理を、図2を参照して、以下に説明する。
(1) 予め、パンタグラフのモデルを登録しておく(ステップS1)。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS2)。
(3) 周知のモデルマッチング法により画像中のパンタグラフを検出し、検出したパンタグラフの位置と角度を求めて記録する(ステップS3、S5)。
(4) 周知のエッジ検出法と特徴検出法により画像から直線を検出して、パンタグラフから交差して延びる直線の位置と角度を求めてトロリ線として記録する(ステップS4、S5)。
(5) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(3)(4)を実行する。このような処理(5) →(2)(3)(4) を映像出力が終了するまで繰り返す。
(6) 上記(3)(4)で得られた位置と角度において、時系列的な位置の連続性、角度の連続性が取れない直線を削除したり、あるいは、特異な直線を削除して、時系列で連続した直線をトロリ線と判断して出力する(ステップS6)。これにより、パンタグラフの高さとトロリ線の偏位が測定でき、これから支障物の検出が可能となる。
【0027】
ここで、モデルマッチング法では、例えば特開平7−271979号公報に開示のように、モデル画像と撮影した入力画像とを比較し、その同異を判定したり、同異から所望の要素を検出する。エッジ検出法では、例えば特開平8−014820号公報に開示のように、濃淡の階調がある画像から濃淡変化の大きい点をエッジとして検出する。特徴抽出法では、例えば特開平7−271979号公報に開示のように、画像を構成する直線や曲線を要素として抽出する。
【0028】
このように、本例では、カメラ2と周辺装置(画像処理装置3及び結果記録部4)を車両に取り付けて、画像処理装置3によりパンタグラフの高さとトロリー線の偏位をオンライン処理で測定する。これにより、以下の利点がある。
(1)営業車にITVカメラ2、画像処理装置3及び結果記録部4を取り付けることが可能な構成であるから、この場合は、測定車に比べて装置製造費用、あるいは、その購買費用が安価である。
(2)営業車の走行(営業走行)のついでに測定することができるので、専用の運転手が必要な測定車に比べて、測定費用が安価である。
(3)従来のような接触センサを使用せず、非接触な画像処理を用いるので、支障物が衝突する前に支障物を検出でき、障害の予防保全ができる。
(4)従来のような接触センサを使用せず、非接触な画像処理を用いるので、高速走行が可能である。
(5)従来のレーザセンサは1点を測定するが、画像処理を用いることによりパンタグラフ付近の広域を、走行中に1度に測定することができる。
(6)画像処理を用いるので、レーザセンサのような高出力による制約がない。
(7)光切断センサを使用せず、画像処理を用いるので、昼夜両方で測定できる。特に、支障物の発生が予想される熱膨張の著しい真夏の日中でも、支障物を測定できる。
【0029】
[実施形態例2:基本的構成その2(オフライン画像処理)]
本実施形態例2は、実施形態例1とは目的及びフローチャート(図2)は同じであるが、図3に示すように、装置構成を車載部と測定部に2分し、オフラインで画像処理する点が異なる。
【0030】
即ち、図3に示すパンタグラフ支障物検出装置は、2台のITVカメラ2のうち1台と、映像記録部5と、映像再生部6及び画像処理部3から構成される。カメラ2は営業車等の屋根1に設置されており、パンタグラフ付近を撮影する。映像記録部5は車両の適宜な場所に設置されており、カメラ2の映像出力をリアルタイムに記録する。映像再生部6は地上あるいは車両内など、適当な場所に設置されており、映像記録部5の映像をオフラインで再生する。画像処理部3及び結果記録部4も地上あるいは車両内など、適当な場所に設置されており、画像処理部3は映像再生部6で再生した映像をオフラインで図2と同様に画像処理して、パンタグラフの位置と角度及びトロリ線の位置と角度から、パンタグラフとトロリ線の偏位を測定する。
【0031】
本例では、車載部のカメラ2で撮影したパンタグラフ付近の映像出力を映像記録部5に記録しておき、この記録した映像を都合の良い時間帯や場所で、映像再生部5により再生し、画像処理部3によりオフラインで画像処理してパンタグラフの高さとトロリ線の偏位を測定し、測定値を結果記録部4に記録する。
【0032】
従って、本例は、リアルタイムに検出結果が要求されない場合に有効であり、以下の利点がある。
(1)画像処理装置3に高い処理能力が要求されない。
(2)営業車等に設置する車載部(カメラ2及び映像記録部5)には時間的な制約があるが、測定部(映像再生部6、画像処理部3及び結果記録部4)には時間的な制約がない。従って、複数n組の車載部に対して測定部を1組設けることにより、測定部の稼働率を上げることができる。
【0033】
図1においても、カメラ2と画像処理部3間の無線の信号授受によりオンライン処理が可能な場合は、カメラ2のみを車両に設置し、画像処理部3及び結果記録部4を地上等適宜な場所に設置しても良い。
【0034】
[実施形態例3:カメラ2台の横置構成]
本実施形態例3の目的は測定車に限らず営業車等任意の車両の屋根にカメラ(例えばITVカメラ)を車両進行方向に横置きに2台設置し、このカメラでパンタフラフ付近の映像をステレオ撮影し、この映像を画像処理することにより、パンタグラフ支障物を検出することである。
【0035】
図4に本実施形態例3に係るパンタグラフ支障物検出装置の構成を示し、図5にその画像処理のフローチャートを示す。
【0036】
図4に示すパンタグラフ支障物検出装置は、2台のITVカメラ2と、画像処理部3から構成される。2台のカメラ2は、パンタグラフ7付近を撮影するために営業車等の屋根1に、車両進行方向に直角な方向に並べて横置きに設置されている。画像処理部3は、2台のカメラ2の映像出力を入力し、画像処理することによりパンタグラフ7付近の支障物らしきものの位置を測定し、その測定値を結果記録部4に出力する。結果記録部4では、予め設定した閾値により、パンタグラフ7に近接している支障物を記録する。
【0037】
画像処理部3における画像処理を、図5を参照して、以下に説明する。
(1) 予め、パンタグラフのモデル登録と、パンタグラフの離隔距離の閾値を設定しておく(ステップS11)。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS12)。
(3) 周知のモデルマッチング法によりパンタグラフを検出し、ステレオ計測により、パンタグラフの3次元座標を求めて、記録する(ステップS13、ステップS15)。
(4) 周知のエッジ検出法によりパンタグラフ付近の輪郭を検出し、ステレオ計測により、輪郭の3次元座標を求めて記録する(ステップS14、ステップS15)。
(5) 上記(3) のパンタグラフの3次元座標と上記(4) 輪郭の3次元座標との差から、パンタグラフの離隔距離を計算する(ステップS16)。
(6) 上記(5) で計算した離隔距離が上記(1) で設定した閾値以下であれば、支障物と判定して結果記録部4に記録する。(ステップS17)。
(7) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(3) 〜(6) を実行する。この処理((7) →(2)(3)(4)(5)(6))は映像出力が終了するまで繰り返す。
【0038】
本例は画像処理により支障物の位置を検出するものであり、例えばパンタグラフ7からトロリ線、パンタグラフ7からトロリ支持物までの相対距離を測定することができる。
【0039】
本例では、画像処理部3が車両に設置されているので、オンラインの画像処理が可能である。もちろん、図3に示したと同様、2台のカメラ2と映像記録部5を車両に設置し、これとは別の場所に、映像再生部6、画像処理部3及び結果記録部4を設置して、オフラインで画像処理を行う構成とすることもできる。
【0040】
[実施形態例4:カメラ2台の縦置構成]
本実施形態例4は、実施形態例3と目的及びフローチャート(図5)は同じであるが、図6あるいは図7に示すように、2台のITVカメラ2の設置位置が車両進行方向に対して平行な縦置である点が異なる。
【0041】
2台のカメラ2の設置位置については、図6に示す例では、パンタグラフ7の直下に1台のカメラ2がパンタグラフ7に向けて設置され、そこから車両進行方向に一定距離離れた位置にもう1台のカメラ2が同方向に向けて設置される。図7に示す例では、パンタグラフ7を挟んで、2台のカメラ2が対向して設置される。
【0042】
本例は、カメラ2の設置位置に制約がない場合に有効であり、車両進行方向に直交する曲線引き金具(図示省略)などを、精度良く位置測定することができる。
【0043】
[実施形態例5:パンタグラフの位置検出]
本実施形態例5は画像中のパンタグラフの位置検出を目的としており、実施形態例1におけるモデルマッチング法の代わりに、パターンマッチング法を使用してパンタグラフを検出する点が異なる。従って、パンタグラフ支障物検出装置の構成は図1と同じであるが、そのうち、画像処理部3は図2とは異なり、図8に示すフローチャートが適用される。
【0044】
図8を参照して、画像処理部3における画像処理を以下に説明する。
(1) 予め、パンタグラフの濃淡値をパターンとして登録しておく(ステップS21)。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS22)。
(3) 周知のパターンマッチング法、例えば正規化相関から上記(2) の静止画像と上記(1) のパターンとがマッチングする座標と角度を求める(ステップS23)。この際、パターンマッチングで得られる複数の座標と角度を候補として保存する。
(4) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(3) を実行する。このような処理(4) →(2)(3)を映像出力が終了するまで繰り返す。
(5) 上記(3) で得られた座標のうち、時系列的な統計から特異点を削除したり、あるいは、位置の連続性が取れない座標を削除して、連続した位置と角度を求め出力する(ステップS24)。これにより、パンタグラフの高さが測定でき、これから支障物の検出が可能となる。
【0045】
ここで、正規化相関では、例えば特開平8−043024号公報に開示のように、濃淡のパターンと入力した濃淡画像の各部分との相関を正規化して、相関の強い部分がパターンに一致していると判定する。
【0046】
上記(1) のパタンや上記(3) の正規化相関では濃淡値を使用しているが、周知のLOG法やデリーチ法など、エッジ情報を使用して、パターンマッチングを行っても良い。
【0047】
本例は例えば正規化相関によるパターンマッチング法を使用してパンタグラフを検出するため、検出位置の精度が良い利点がある。
【0048】
[実施形態例6:トロリ線位置検出]
本実施形態例6は画像中のトロリ線の位置検出を目的としており、実施形態例1におけるモデルマッチング法の代わりに、パタンマッチング法を使用してトロリ線の偏位を検出する点が異なる。従って、パンタグラフ支障物検出装置の構成は図1と同じであるが、そのうち、画像処理部3は図2とは異なり、図9に示すフローチャートが適用される。
【0049】
図9を参照して、画像処理部3における画像処理を以下に説明する。
(1) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS31)。
(2) 周知のエッジ検出(例えばLOG法)、ハブ変換により画像から直線とそれの位置と角度を取得する(ステップS32)。この際、得られる複数の直線(位置と角度)を候補として保存する。
(3) 上記(1) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(2) を実行する。このような処理(3) →(1)(2)を映像出力が終了するまで繰り返す。
(4) 上記(2) で得られた直線の位置と角度において、時系列的な統計から、時系列的な位置の連続性や角度の連続性が取れない直線を削除したり、あるいは、特異な直線を削除して、時系列で連続した直線を出力する(ステップS33)。これにより、トロリ線の偏位が測定でき、これから支障物の検出が可能となる。
【0050】
上記(2) ではLOG法でエッジ検出を行っているが、それの代わりに、垂直成分抽出に特化したフィルタを使用してエッジ検出を行っても良い。
【0051】
本例は簡単な構成でトロリ線の偏位を検出することができる利点がある。
【0052】
[実施形態例7:トロリ線支持物の位置検出]
本実施形態例7では、画像処理を使用してトロリ支持物の位置を測定する。即ち、パンタグラフ支障物検出装置の構成は図1と同様であり、図10に示すように、車両屋根1上にカメラ2(本例では、ステレオ計測用のもの、あるいは2台のカメラが使用される)が設置され、これは図示しないが、図1に示したように画像処理部3に接続され、画像処理部3は結果記録部4に接続される。図10中、8はトロリ線支持物、9は代表点、10は平面、11はトロリ線、12は電車線柱である。
【0053】
画像処理部3は、カメラ2の映像出力からトロリ線支持物8の代表的な点9(通常、複数点)をステレオ計測し、この点9を用いてトロリ線支持物8の形状を平面10に投影して、トロリ線支持物8とパンタグラフとの相対距離を測定し、測定値を結果記録部4に出力して記録する。
【0054】
ここで、代表的な点9とは、トロリ線支持物8が垂直なエッジを多く持つ箇所であり、平面10とは、ステレオ計測した点を通過し、且つ、車両進行方向に直交する平面である。
【0055】
画像処理部3における画像処理は概ね図9に準じるので、図9を参照して以下に説明する。
(1) カメラの出力映像から、静止画像を取得する。
(2) パンタグラフの位置を前述した実施形態例5の方法で取得する。
(3) 周知のエッジ検出で、トロリ線から延びるエッジで垂直エッジが多い点を代表点としてステレオ計測する。
(4) 上記(3) で計測した代表点を通過し、車両進行方向に直交する平面を求め、この平面にトロリ線支持物の輪郭を投影する。
(5) 検出したパンタグラフと、平面に近似したトロリ線支持物の輪郭との距離(離隔距離)を取得し、記録する。
(6) 上記(1) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(2) 〜(5) を実行する。この処理(6) →(1) 〜(5) を映像出力が終了するまで繰り返す。
【0056】
本例は、図1の基本的な構成と同様の装置構成で実現でき、トロリ線支持物8とパンタグラフとの離隔距離を測定することができる。この場合、画像処理をオンラインで行っても良く、あるいは、オフラインで行っても良い。例えば、図3に示したように、カメラ2と画像処理装置3との間に映像記録部5と映像再生部6を設けてオフライン画像処理を行うことができる。
【0057】
[実施形態例8:アーク検出]
本実施形態例8では、画像処理を利用してパンタグラフからトロリ線が離隔して発生するアークを検出するものである。即ち、「画像中に高い輝度が短時間に発生し消滅する場所は、パンタグラフとトロリ線との交点に現れる」という条件を利用して、アークを検出する。
【0058】
本例のパンタグラフ支障物検出装置の構成は図1と同様であり、図11に示すように、車両屋根1上にカメラ2が設置され、これは画像処理部3に接続され、画像処理部3は結果記録部4に接続されている。
【0059】
画像処理部3は、カメラ2の映像出力から上述した「画像中に高い輝度が短時間に発生し消滅する場所は、パンタグラフとトロリ線との交点に現れる」という条件を利用して、アークを検出し、その検出結果を結果記録部4に出力して記録する。
【0060】
図12を参照して、画像処理部3における画像処理を、以下に説明する。
(1) 予めアーク輝度の閾値を設定しておく(ステップS41)。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS42)。
(3) 画像中で上記(1) のアーク輝度閾値よりも明るい点状の部分を抽出し、抽出した部分の面積、中心座標、周囲形状、パンタグラフとトロリ線との交点を求め記録する(ステップS43)。
(4) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(2)(3)を実行する。このような処理(4) →(1) 〜(3) を映像出力が終了するまで繰り返す。
(5) 上記(3) で得られた記録から、所定の面積の部分が所定の時間で発生し消滅し、且つ、その中心座標がパンタグラフとトロリ線との交点近傍であれば、同部分をアークと判断し、その結果を出力する(ステップS44)。
【0061】
本例は、図1の基本的構成と同じ簡単な装置構成で実現でき、画像中に見えるアークを自動的に検出することができる。この場合、画像処理をオンラインで行っても良く、あるいは、オフラインで行っても良い。例えば、図3に示したように、カメラ2と画像処理装置3との間に映像記録部5と映像再生部6を設けてオフライン画像処理を行うことができる。
【0062】
[実施形態例9:わたり線の離隔距離測定]
本実施形態例9では、画像処理により、トロリ線、特にわたり線とパンタグラフ間の離隔距離を測定するものである。わたり線とは、現在まで集電していたトロリ線から、次に集電するトロリ線が切り換わる際の、トロリ線である。
【0063】
本例は、図13に示すように、直線L1をパンタグラフ7を通る線、直線L2を2台のカメラ2間の焦点を結ぶ線とするとき、「直線L1、直線L2が平行で、且つ、これらの直線L1、L2を通過する平面(図示省略)する平面上にカメラ2の焦点が存在しないこと」を、わたり線離隔距離測定の条件としている。この条件は、パンタグラフ7とカメラ2を同じ車両の屋根1に並行に設置すれば、車両走行中のカントによる車両の傾きがあっても、常に直線L1、L2の位置関係が保たれることと、カメラ2は常識的にはパンタグラフ7に下しか設置できないことから、容易に満たされる条件である。
【0064】
図13では、このような条件を満足するように、屋根1に2台のカメラ2を設置し、これに図示しないが、図1に示すように画像処理部3が接続され、画像処理部3に結果記録部4が接続される。
【0065】
本例の特徴は、画像処理部3が、図14に示される視差dを測定することにより、トロリ線(わたり線)の離隔距離を求める点である。図14中、(a)は左側カメラの画像を示し、(b)は右側カメラの画像を示している。また、11aはパンタグラフ7から離隔するトロリ線、11bはパンタグラフ7に接触するトロリ線を示す。11cは左側カメラから見えるトロリ線を右側カメラの画像中に示したものであり、トロリ線がパンタグラフ7から離隔すると、例えばトロリ線11cとトロリ線11a、11b間にエッジが生じ、視差dとなる。
【0066】
一般に、視差dはレンズ中心を原点として求めるが、本例では、パンタグラフ7の端点を原点とした左右の位置の差から求めることとしている。この場合、視差dはトロリ線がパンタグラフ7に接触していれば0であり、パンタグラフ7に接近するほど0に近づく。
【0067】
画像処理部3は、カメラ2の映像出力から視差dを測定することにより、トロリ線の離隔距離を求め、その結果を結果記録部4に出力して記録する。
【0068】
図15を参照して、画像処理部3における画像処理を、以下に説明する。
(1) 予めモデルと、視差の閾値を設定しておく(ステップS51)。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する(ステップS52)。
(3) 周知のモデルマッチングにより、パンタグラフを検出する(ステップS53)。
(4) 周知のエッジ検出法により、パンタグラフ上部に生じるエッジを抽出する(ステップS54)。
(5) 上記(4) で抽出したエッジから視差dを求め、設定した視差閾値以下となる視差とそのエッジ位置を記録する(ステップS55、ステップS56)。
(6) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(2) 〜(5) を実行する。この処理(6) →(1) 〜(5) を映像出力が終了するまで繰り返す。
【0069】
本例は、図13を参照して示した上記の条件が満たされる場合に有効であり、単純な視差だけで、わたり線の離隔距離を測定でき、そのため、計算量が少ないという利点がある。この場合、画像処理をオンラインで行っても良く、あるいは、オフラインで行っても良い。例えば、図3に示したように、カメラ2と画像処理装置3との間に映像記録部5と映像再生部6を設けてオフライン画像処理を行うことができる。
【0070】
[実施形態例10:わたり線の離隔距離測定]
本実施形態例10では、実施形態例9と目的、装置構成(図13)及びフローチャート(図15)は同じであるが、図16に示すように、パンタグラフ7から仮想的に延伸した直線Lvによって、わたり線(トロリ線)の離隔距離を測定する点が異なる。
【0071】
図16中、(a)は左側カメラの画像を示し、(b)は右側カメラの画像を示している。また、11aはパンタグラフ7から離隔するトロリ線、11bはパンタグラフ7に接触するトロリ線を示す。11cは左側カメラから見えるトロリ線を右側カメラの画像中に示したものであり、トロリ線がパンタグラフ7から離隔すると、トロリ線11cと仮想的直線Lvとの交点と、トロリ線11a、11bとと仮想的直線Lvとの交点がずれる。
【0072】
本例では、図16に示すように、画像処理部3は、パンタグラフ7上に直線Lvを仮想的に引き、トロリ線11a、11bが現れた際に、この仮想的直線Lvとそのトロリ線11a、11b及びトロリ線11cとの交点を求め、この交点の差から視差dを測定することにより、トロリ線11の離隔距離を求め、その結果を結果記録部4に出力して記録する。
【0073】
図15に準じて、本例の画像処理部3における画像処理を以下に説明する。
(1) 予めモデルと、視差の閾値を設定しておく。
(2) カメラの出力映像から、静止画像を取得する。
(3) 周知のモデルマッチングにより、パンタグラフを検出する。
(4) 周知のエッジ検出法により、パンタグラフ上に引いた仮想的直線とトロリ線との交点を抽出する。
(5) 上記(4) で抽出した交点の差から視差dを求め、設定した視差閾値以下となる視差とその交点位置を記録する。
(6) 上記(2) へ戻り、次の静止画像を取得し、上記(2) 〜(5) を実行する。この処理(6) →(1) 〜(5) を映像出力が終了するまで繰り返す。
【0074】
本例は、トロリ線の視差dがパンタグラフ7の幅を越えている場合に有効であり、単純な視差から、常にわたり線の離隔距離を測定できる利点がある。この場合、画像処理をオンラインで行っても良く、あるいは、オフラインで行っても良い。例えば、図3に示したように、カメラ2と画像処理装置3との間に映像記録部5と映像再生部6を設けてオフライン画像処理を行うことができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、第1の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、下記の効果がある。
(1)営業車にカメラ、画像処理装置を取り付けることが可能な構成であるから、測定車に比べて装置製造費用、あるいは、その購買費用が安価である。
(2)営業車の走行(営業走行)のついでに測定することができるので、専用の運転手が必要な測定車に比べて、測定費用が安価である。
(3)従来のような接触センサを使用せず、非接触な画像処理を用いるので、支障物が衝突する前に支障物を検出でき、障害の予防保全ができる。
(4)従来のような接触センサを使用せず、非接触な画像処理を用いるので、高速走行が可能である。
(5)従来のレーザセンサは1点を測定するが、画像処理を用いることによりパンタグラフ付近の広域を、走行中に1度に測定することができる。
(6)画像処理を用いるので、レーザセンサのような高出力による制約がない。
(7)光切断センサを使用せず、画像処理を用いるので、昼夜両方で測定できる。特に、支障物の発生が予想される熱膨張の著しい真夏の日中でも、支障物を測定できる。
また、パターンマッチング法を使用してパンタグラフを検出した場合、検出位置の精度が良く、さらに、簡単な構成でトロリ線の偏位を検出することができる。
【0076】
第2の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、リアルタイムに検出結果が要求されない場合に有効であり、下記の効果がある。
(1)画像処理装置に高い処理能力が要求されない。
(2)営業車等に設置する車載部には時間的な制約があるが、測定部(画像処理部)には時間的な制約がない。従って、複数n組の車載部に対して測定部を1組設けることにより、測定部の稼働率を上げることができる。
【0077】
第3の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、簡単な構成で実現できアークを自動的に検出することができる。
【0078】
第4の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、パンタグラフからトロリ線、パンタグラフからトロリ支持物までの相対距離を測定することができる。
【0079】
第5の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、カメラの設置位置に制約がない場合に有効であり、車両進行方向に直交する曲線引き金具などを、精度良く位置測定することができる。
【0080】
第6の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、簡単な構成でトロリ線支持物とパンタグラフとの離隔距離を測定することができる。
【0081】
第7の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、単純な視差だけで、わたり線の離隔距離を測定できる。そのため、計算量が少ない。
【0082】
第7の発明に係るパンタグラフ支障物検出装置によれば、トロリ線の視差がパンタグラフの幅を越えている場合に有効であり、単純な視差から、常にわたり線の離隔距離を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態例に係る画像処理のフローを示す図。
【図3】本発明の第2実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図4】本発明の第3実施形態例に係る装置構成を示す面。
【図5】本発明の第3実施形態例に係る画像処理のフローを示す図。
【図6】本発明の第4実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図7】本発明の第4実施形態例に係る他の装置構成を示す図。
【図8】本発明の第5実施形態例に係る画像処理のフローを示す面。
【図9】本発明の第6実施形態例に係る画像処理のフローを示す図。
【図10】本発明の第7実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図11】本発明の第8実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図12】本発明の第8実施形態例に係る画像処理のフローを示す図。
【図13】本発明の第9実施形態例に係る装置構成を示す図。
【図14】本発明の第9実施形態例に係る発明の原理を示す図。
【図15】本発明の第9実施形態例に係る画像処理のフローを示す図。
【図16】本発明の第10実施形態例に係る発明の原理を示す図。
【符号の説明】
1 屋根
2 カメラ
3 画像処理部
4 結果記録部
5 映像記録部
6 映像再生部
7 パンタグラフ
8 トロリ線支持物
9 代表点
10 平面
11 トロリ線
Claims (8)
- パンタグラフ近傍を撮影するカメラと、前記カメラで撮影した画像を処理する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、
モデルマッチング又はパターンマッチングにより、
前記画像中のパンタグラフを検出し、該パンタグラフの位置、高さを求め、
前記画像中から直線を検出し、前記パンタグラフと交差して延びる直線をトロリー線として検出して、該トロリー線の位置、角度を求めた上で、
支障物の検出を行う
ことを特徴とするパンタグラフ支障物検出装置。 - 前記画像を記録する映像記録部と、
記録した前記画像を再生する映像再生部と
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - 前記画像処理部は、前記画像中の高い輝度が短時間に発生し消滅する場所をアークとして検出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - パンタグラフ近傍を撮影するカメラをさらにもう1台設置し、2台のカメラを車両進行方向と直交する向きに配置して、前記パンタグラフ近傍を2台の前記カメラで撮影する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - パンタグラフ近傍を撮影するカメラをさらにもう1台設置し、2台のカメラを車両進行方向と平行する向きに配置して、前記パンタグラフ近傍を前記2台のカメラで撮影する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - 前記2台のカメラは、前記パンタグラフ近傍をステレオ撮影し、
前記画像処理部は、前記カメラで撮影した左右画像をステレオ計測する
ことを特徴とする請求項4に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - 前記画像処理部は、前記左右画像の視差を測定して、わたり線の離隔距離を求める
ことを特徴とする請求項6に記載のパンタグラフ支障物検出装置。 - 前記画像処理部は、前記パンタグラフから仮想的に延伸した直線と前記トロリ線との交点の前記左右画像における差からわたり線の離隔距離を測定する
ことを特徴とする請求項6に記載のパンタグラフ支障物検出装置。
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