JP4076746B2 - 軌道検測車の計測機器取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道狂いを自動的に検測してデータを処理する軌道検測車に関し、特に走行中の気圧変化によって車両の構体などが変形したりしても、それに影響されない正確な測定を可能にした軌道検測車の計測機器取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両が走行する2本のレール(軌道)は、車両を円滑に誘導する役割を果している。しかし軌道は、車両からの繰り返し荷重を受けている間に、次第に2本のレールが上下、左右方向へ変形して軌道狂いが生じる。軌道狂いとしては、例えば水準狂い、高低狂い、通り狂いなどがあるが、水準狂いとは左右レールの高低差をいい、高低狂いとはレール鉛直方向における3点の相対変位をいい、また通り狂いとはレール水平方向における3点の相対変位をいう。こうした軌道狂いは、その上を走行する車両に上下方向及び左右方向の揺れを生じさせ、車両の乗り心地を悪くするばかりでなく、車両を安全走行させる上での障害にもなる。
【0003】
そのため、軌道の保守点検は極めて重要であり、軌道狂いの確認を行う軌道検測車を定期的に走行させている。その軌道検測車は、走行しながら自動的にレールの高低等を測定し、この測定データを処理することによって軌道不整を検出する。ここで、軌道検測車における計測機器の機器取付構造について、その一従来例を図6に示す。図6は、軌道検測車を輪切りにした状態の図である。軌道検測車100は、車両を構成する台枠101の上下に複数の計測機器111〜115が一組となり、車輪102,102が位置する車軸の位置に合わせ、一車両の前後4箇所に配置されている。
【0004】
一組の計測機器111〜115のうち、台枠101上の両サイドに配置された計測機器111,112は、軌道検測車の車体自身の曲げ、ねじれ変形を測定し、車体の変形による測定値の誤差を補正するための光学式変位センサ(レーザ基準装置)である。台枠101上の中央に配置された計測機器113は、ローリングによる車体の傾斜角を検出するジャイロである。そして、台枠101の下に吊設された両サイドの計測機器114,115は、軌道検測車100の走行車輪両端の軸箱と車体の相対変位を測定することにより、レールの高さ方向の変位を測るための変位計(高低変換器)である。軌道検測車100は、4組から構成されるこうした各計測機器111〜115によって軌道狂いのための測定系が構成されている。
【0005】
軌道狂いの検測は、各計測機器111〜115によって検出された測定データが演算処理され、所定の検測データとして得られる。例えば、水準狂いの場合には、図7に示すように、計測機器111,112の測定値から車体と車軸の成す角Φが求められ、その角度Φと計測機器113によって測定した車体のロール角θとを利用して水準の狂い量が算出される。また、高低狂いの場合には、図8に示すように、前後に並ぶ3箇所のレーザ基準装置111a,111b,111dによって求められる車体の曲げと、高低変換器114,115の出力から3点の相対変位Zが求められ、高低の狂い量が算出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、軌道検測は、各計測機器の測定値を比較することによって求めた値から算出されるため、各計測機器同士の相対的な位置関係が一定であることが、正確な狂い量を得るための条件となっている。しかしながら、従来から各計測機器111〜115の距離や角度の相対的な位置関係が変化してしまい、測定精度が低下して正確な検測データが得られないという問題があった。その主な原因としては、計測機器111〜115が取り付けられている車内が気密になっているため、トンネルを通過する際に生じる圧力変化などによって、構体103が図6の破線で示すように撓んで変形してしまうからである。
【0007】
特に、トンネル内で対向車両とすれ違うような場合には、車内の圧力が相対的に上昇して構体103が図示するように撓み、それが最大の撓み量で10mm近くにもなった。そうした場合、従来の軌道検測車100は、計測機器111〜115が台枠101に取付金具や防振ゴムによって取り付けられているだけであったため、構体103に伴って台枠101にも変形が生じてしまうと、各計測機器111〜115同士の相対的な位置関係が変化してしまっていた。そして、計測機器同士の変位量は、大きい場合には例えば1.8mmものズレがみられた。軌道狂いの確認には0.1mm単位での検測が行われるため、各計測機器同士の相対的位置の変化が大きい場合には検測値の誤差も大きくなってしまう。そして、鉄道の高速化が進む中、軌道検測車も邪魔にならないように高速で走らせようとすれば、構体103などの撓み量がより大きくなって各計測機器111〜115同士の相対的位置の変化量も大きくなる。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、計測機器同士の相対的な位置の変化を測定精度に影響を及ぼさない程度に抑える軌道検測車の計測機器取付構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る軌道検測車の計測機器取付構造は、軌道検測のための計測機器を複数搭載し、各計測機器によって得られた測定データからレールの変位を検出する軌道検測車であって、台枠の中梁に固定された台座と、その台座に固定され、前記計測機器が取り付けられる機器取付梁と、その機器取付梁の両端を車両の構体に支持させる振動抑制要素をもった支持部材とを有するものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、計測機器が取り付けられた機器取付梁が、変位し難い中梁でのみ支持されるため、各計測機器同士の相対的な位置の変化は極めて小さい範囲内に抑えることが可能になり、車体の変形が測定精度に影響を及ぼさないようにできる。
【0010】
また、本発明に係る軌道検測車の計測機器取付構造は、振動抑制要素が、前記機器取付梁と構体から突設されたブラケットとの間に、2枚の樹脂スリ板を与圧バネの荷重をかけて挟み込んだものであることが好ましい。
【0011】
よって、本発明によれば、機器取付梁自身の撓みによる計測機器同士の相対的な位置の変化を防止することができ、また、機器取付梁が振動抑制要素によって構体側に連結されていても、樹脂スリ板の摺動抵抗によって構体の変形による振動が機器取付梁へ伝達されずに吸収され、測定精度への影響はない。特に、樹脂スリ板の摺動抵抗によって振動を吸収するようにしたため、微少な振幅による振動も確実に吸収できる。
【0012】
また、本発明に係る軌道検測車の計測機器取付構造は、軌道検測のための計測機器を複数搭載し、各計測機器によって得られた測定データからレールの変位を検出する軌道検測車であって、車両の構体に対して両端を支持させて床面から浮かせた機器取付梁に、前記計測機器を取り付けるようにしたものであることを特徴とする。
よって、本発明によれば、車体変形時に作用する荷重は台枠のみが受け、機器取付梁は測定機器の荷重のみを受けるため撓みも生じにくい。従って、各計測機器同士の相対的な位置の変化は極めて小さい範囲内に抑えることが可能であり、車体の変形が測定精度に影響を及ぼさないようにできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る軌道検測車の計測機器取付構造の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の計測機器取付構造を示したものであり、前記従来例と同様に車軸位置に並ぶ一組の計測機器を示している。本実施形態では、台枠21へ直接計測機器を取り付けることはせずに、台枠21に固定した機器取付梁1を介して取り付けるようにした。そして、特にその機器取付梁1については、台枠21を構成する2本の中梁22,22に台座2,2を固定し、その台座2,2による2点で支持させるようにしている。
【0014】
ここで図2は、台枠の一般的な構造を示した斜視図である。台枠21には、2本の中梁22,22が、台枠21の前後にある台車を取り付けるための枕梁23,23に固定され、長手方向に沿って中央部分に並行に設けられている。そして、こうした2本の中梁22,22に対して台座2,2がそれぞれ固定され、その台座2,2と一体の機器取付梁1が、車両の床面(台枠21)から浮いた状態で水平に組立られる。機器取付梁1には、その両端に台枠21を貫通したアーム3,3を床下まで垂設されている。そして、5つの計測機器31〜35を従来と同様の配置で、機器取付梁1と両方のアーム3,3とに取り付ける。
【0015】
こうした一組の計測機器31〜35は、機器取付梁1の両サイドに配置された計測機器31,32が、軌道検測車の車体の曲げ、ねじれによる変形を検出する変位センサ(レーザ基準装置)である。機器取付梁1の中央に配置された計測機器33は、ローリングによる車体の傾斜角を検出するジャイロである。また、アーム3,3に吊設された計測機器34,35は、車輪両端の軸箱と車体の相対変位を測定する変位計(高低変換器)である。そして、軌道検測車は、こうした一組の計測機器31〜35が車軸の位置に合わせて一車両の前後4箇所に設けられ、各計測機器からなる軌道狂い測定系が構成されている。
【0016】
従って、こうした取付構造をとった本実施形態によれば、全ての計測機器31〜35が取り付けられた機器取付梁1が中梁22,22でのみ支持されるため、構体25や台枠21が変形したとしても(図6参照)各計測機器31〜35の相対的な位置の変化は極めて小さい。具体的には、各計測機器31〜35同士の相対的な位置の変化を測定したところ、前記従来例の場合には最も大きく変位したときで1.8mmものズレがあったのに対し、本実施形態では最大でも0.2mm程度でしかなかった。
【0017】
これは、台枠21における中梁22,22は、台枠21全体が変形しても2本の中梁22,22は変位し難い構造となっているからである。そして、たとえ中梁22,22が変位したとしても極めて僅かであり、その中梁22,22に台座2,2を介して固定された機器取付梁1の変形は更に僅かなものとなると考えられる。よって、こうした取付構造で計測機器31〜35を設置することで、各計測機器31〜35同士の相対的位置の変化がほとんど生じないか、或いは測定精度への影響がほとんどないレベルとすることができた。
【0018】
次に、図3は、計測機器の取付構造の第2実施形態を示すものである。これは、前記第1実施形態の変形例であり、同様に台枠21へ直接計測機器31〜35を取り付けることはせずに、台枠21に固定した機器取付梁1を介して取り付けるようにしたものである。即ち、機器取付梁1が、台枠21を構成する2本の中梁22,22に固定した台座2,2によって2点で支持され、車両の床面(台枠21)から浮いた状態で水平に設置されている。そして、その機器取付梁1の両端には台枠21を貫通したアーム3,3が床下まで垂設され、計測機器31〜35がやはり同様の5箇所に配置して取り付けられる。そして、更に本実施形態では、その機器取付梁1自身が、車両が走行する際の上下振動加速度を受けて曲げによる振動を生じないように、構体25との間にダンパー要素をもった支持部材5,5で両端が支えられている。図4は、支持部材5を示した拡大図であり、図4(a)は正面図で、図4(b)は側面図である。
【0019】
この支持部材5は、図4(a)に示すように構体25から水平にブラケット11が突設され、その先端部分で機器取付梁1が連結されている。そして、ブラケット11と機器取付梁1との間には、図4(b)に示すように2枚の樹脂スリ板12,12が挟み込まれ、ブラケット11からの振動を摩擦抵抗によって吸収するようになっている。支持部材5は、そうした樹脂スリ板12,12とともに隙間調整用のライナ13を挟み、ブラケット11側から与圧バネ14の荷重をかけるようにしてボルト締めされている。支持部材5には、こうしてダンパー要素が構成されている
【0020】
従って、支持部材5,5を追加した本実施形態の機器取付構造によれば、全ての計測機器31〜35が取り付けられた機器取付梁1が中梁22,22で支持されるため、前記第1実施形態のものと同様に、構体25や台枠21が変形したとしても(図6参照)、各計測機器31〜35同士の相対的な位置の変化は測定に影響のない極めて僅か範囲に抑えることができる。そして、更に本実施形態では、支持部材5,5で機器取付梁1の両端を支持するようにしたので、機器取付梁1自身の撓みによる相対的な位置の変化も防ぐことができる。よって、各計測機器31〜35同士の相対的な位置の変化がほとんど起きないため、高いレベルで軌道狂いの検測を行うことができる。
【0021】
ところで本実施形態では、機器取付梁1をダンパー要素をもった支持部材5,5で構体25側に連結しているが、構体25の撓みによる振動が機器取付梁1へ伝達されるのを断って測定への影響を防止している。これは、樹脂スリ板12,12の摩擦抵抗によって振動を吸収するようにしたので、例えば一般的な油圧式ダンパなどでは微少な変位ではヒステリシスの中に入ってしまって振動を吸収できない可能性があるが、本実施形態によれば微少な振幅による変位も確実に吸収できる。また、支持部材5,5のダンパー要素は、ボルトの締め付けによって、与圧バネ14の荷重による樹脂スリ板12,12同士の摩擦抵抗を、ブラケット11と機器取付梁1との間の振動振幅に応じて調節することができる。
【0022】
次に、図5は、計測機器取付構造の第3実施形態を示すものである。これは、前記各実施形態と同様に機器取付梁7に計測機器31〜35を取り付けて設置するようにしたものであるが、その機器取付梁7は、中梁22,22に支持させるのではなく、両端を構体25に固定して両端支持させるようにしたものである。機器取付梁6は、形状を合わせた両端の固定部分を構体25に溶接し、台枠21から浮いた状態で水平に設置され、その機器取付梁6の両端には台枠21を貫通したアーム7,7が床下まで垂設されている。そして、計測機器31〜35がやはり同様の位置に取り付けられる。
【0023】
従って、こうした取付構造をとった本実施形態によれば、構体25が図6の破線で示すように変形した場合にも、台枠21で構成される床が荷重を主に受けることになるため、機器取付梁6の撓み量は極めて小さいものとなる。よって、本形態にように計測機器31〜35を取り付ければ、各計測機器31〜35同士の相対的な位置の変化がほとんど起きないレベルになって、測定精度への影響を防止することができる。
【0024】
以上、軌道検測車の計測機器取付構造について実施形態を説明したが、本発明は、これに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、台枠の中梁に固定した台座によって支持した機器取付梁に計測機器を取り付け、その機器取付梁の両端を振動抑制要素をもった支持部材で車両の構体に支持させるようにしたので、計測機器同士の相対的な位置の変化を測定精度に影響を及ぼさない程度に抑えた軌道検測車の計測機器取付構造を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の計測機器取付構造を示した図である。
【図2】台枠の一般的な構造を示した斜視図である。
【図3】第2実施形態の計測機器取付構造を示した図である。
【図4】支持部材を示した拡大図であり、図4(a)は正面図で、図4(b)は側面図である。
【図5】第3実施形態の計測機器取付構造を示した図である。
【図6】従来の計測機器取付構造を示した軌道検測車を輪切りにした状態の図である。
【図7】水準狂いの検測を概念的に示した図である。
【図8】高低狂いの検測を概念的に示した図である。
【符号の説明】
1 機器取付梁
2 台座
3 アーム
10 台枠
11 中梁
31〜35 計測機器
Claims (3)
- 軌道検測のための計測機器を複数搭載し、各計測機器によって得られた測定データからレールの変位を検出する軌道検測車の当該計測機器取付構造において、
台枠の中梁に固定された台座と、その台座に固定され、前記計測機器が取り付けられる機器取付梁と、その機器取付梁の両端を車両の構体に支持させる振動抑制要素をもった支持部材とを有するものであることを特徴とする軌道検測車の計測機器取付構造。 - 請求項1に記載の軌道検測車の計測機器取付構造において、
振動抑制要素は、前記機器取付梁と構体から突設されたブラケットとの間に、2枚の樹脂スリ板を与圧バネの荷重をかけて挟み込んだものであることを特徴とする軌道検測車の計測機器取付構造。 - 軌道検測のための計測機器を複数搭載し、各計測機器によって得られた測定データからレールの変位を検出する軌道検測車の当該計測機器取付構造において、
車両の構体に対して両端を支持させて床面から浮かせた機器取付梁に、前記計測機器を取り付けるようにしたものであることを特徴とする軌道検測車の計測機器取付構造。
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