JP4075569B2 - プリント配線板製造用材料及びプリント配線板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄型で高容量のプリント配線板を形成するためのプリント配線板製造用材料及びこれを用いたプリント配線板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の機能の増大、高機能化が急速に進行する中で、電子部品の超小型化や実装の高密度化が進み、電子機器の小型化、軽量化、薄型化が急速に進んでいる。その中で、プリント配線板の配線パターンの細密化やプリント配線板上の容量を用いるバイパスコンデンサの複合回路化などの要求から、高誘電率かつ薄板状の絶縁層を有するプリント配線板が必要とされている。
【0003】
従来より、高誘電率の絶縁層を有するプリント配線板を製造するにあたっては、絶縁層となる絶縁基板を無機物、例えば、アルミナや窒化アルミニウムなどで形成したセラミック基板(無機基板)を用いることが行なわれている。このようなセラミック基板は絶縁基板の誘電率が10程度であり、誘電率が5程度であるエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等からなる有機基板に比べると、厚みが薄くても高誘電率や高体積抵抗率を有して絶縁性に優れるものである。しかし、セラミック基板は有機基板と比べて孔あけなどの加工性が劣り、実用に供することが難しかった。
【0004】
また、薄板状の絶縁層を有するプリント配線板を製造するにあたっては、絶縁層となる絶縁基板を有機基板で形成したものを用いることが行なわれており、例えば、FR−4グレードで厚み50μmのものが用いられている。しかし、このような有機基板は誘電率が5程度であって、セラミック基板に比べると低誘電率であったり低体積抵抗率であったりして絶縁性が低いものであった。そこで、二酸化チタン系セラミック等の無機充填材を絶縁層に添加することが行われているが(例えば、特許文献1参照)、さらに、高い絶縁性を有する絶縁層を形成することができるプリント配線板製造用材料の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−225665号公報(特許請求の範囲等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、厚みが薄くても加工性及び絶縁性に優れる絶縁層を形成することができるプリント配線板製造用材料及びこれを用いて製造されるプリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るプリント配線板製造用材料Aは、無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層1をキャリア2の表面に形成したプリント配線板製造用材料において、熱硬化性樹脂組成物中の無機誘電体粒子の体積分率を40〜80vol%とし、無機誘電体粒子の構成要素としてMn、V、Cr、Co、Fe、Cu、Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含有して成ることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1に加えて、無機誘電体粒子が固有の誘電率で100以上の誘電率を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1又は2に加えて、無機誘電体粒子がチタン酸化合物系セラミック、ジルコン酸化合物系セラミック、スズ酸化合物系セラミックから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項4に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至3のいずれかに加えて、無機誘電体粒子からアクセプタ型元素を除いた基本構成要素の無機化合物の100モルに対して、0.05〜5.0モルのアクセプタ型元素を含有する無機誘電体粒子を用いて成ることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項5に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至4のいずれかに加えて、無機誘電体粒子の平均粒径が0.01〜5μmであることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項6に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至5のいずれかに加えて、キャリア2として金属箔2bと樹脂フィルム2aの少なくとも一方を用いて成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項7に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至6のいずれかに加えて、無機誘電体粒子の平均粒径が、0.01μm以上0.5μm未満の粒子と、平均粒径0.5μm以上5μm以下の粒子との2種類以上の粒子から成ることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項8に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至7のいずれかに加えて、キャリア2として用いられる金属箔2bの表面粗度Rzが3μm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項9に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項1乃至8のいずれかに加えて、キャリア2の表面に無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3を形成すると共に無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層1を上記無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3の表面に形成して成ることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項10に係るプリント配線板製造用材料Aは、請求項9に加えて、キャリア2の表面に樹脂層3を塗工あるいは噴霧により形成して成ることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項11に係るプリント配線板は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の樹脂層1を硬化して絶縁層4を形成して成ることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項12に係るプリント配線板の製造方法は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料Aの片面に回路形成した後、この回路形成した面に樹脂シート5と導電箔6を順次積層成形し、さらに回路形成することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項13に係るプリント配線板の製造方法は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料Aの片面に回路形成した後、この回路形成した面を互いに対向させて二枚のプリント配線板製造用材料Aを配し、その間に樹脂シート5を配して積層成形し、さらに回路形成することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項14に係るプリント配線板の製造方法は、回路9を形成した基板7の表面に樹脂8を塗工し、この基板7の回路9の表面が塗工した樹脂8の表面と略同一になるよう平滑にし、さらに、上記請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料Aを重ね合わせた後、成形することにより多層化することを特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
本発明のプリント配線板製造用材料Aは、無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層1をキャリア2の表面に形成したものである。このようなプリント配線板製造用材料としては、図1(a)に示すようにキャリア2の片面に樹脂層1を形成したものを例示することができる。キャリア2としては耐熱性があり且つ樹脂層1を支持する強度があるフィルム状のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の樹脂フィルム2a、及びアルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔等の金属箔(金属製フィルム)2bを挙げることができる。キャリア2として上記のような金属箔2bを用いた場合、本発明のプリント配線板製造用材料は樹脂付き金属箔として形成することができる。金属箔2bのキャリア2は、プリント配線板製造用材料を搬送したりする際の取り扱い性を向上させると共にプリント配線板の回路形成用の導体層として用いられるものである。一方、樹脂フィルム2aのキャリア2はプリント配線板製造用材料を搬送したりする際の取り扱い性を向上させるために用いられるものである。上記のキャリア2の厚みは特に制限はないが、例えば、5〜100μmに形成することができる。
【0023】
また、本発明で用いられる金属箔2bの表面粗度Rzは3μm以下であることが好ましい。金属箔2bの表面粗度Rzが3μm以下であることにより、絶縁層の厚みが5μmから50μmのプリント配線板を形成した際に、金属箔2bと絶縁層の密着性を高くすることができ、絶縁層の高い絶縁性を確保することができるからである。従って、金属箔2bの表面粗度Rzが3μmより大きいと、金属箔2bと絶縁層の密着性を高くすることができず、絶縁層の高い絶縁性を確保することができなくなる恐れがある。尚、金属箔2bの表面粗度Rzは小さいほど好ましいので、特に下限は限定されないが、現在入手可能な金属箔2bの表面粗度Rzは1.4μmであるので、この値が金属箔2bの表面粗度Rzの実質的な下限値となる。
【0024】
本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物は熱硬化性樹脂と無機誘電体粒子を含有して調製されるものである。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂(PPO樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂、BT樹脂、ポリブタジエン樹脂などを用いることができるが、高周波域の用途では、高周波で損失の少ない低tanδ樹脂が好ましく、例えば、PPO樹脂が用いられる。また、比誘電率の大きな樹脂、例えば、エポキシ樹脂などは、比誘電率の点では好ましいが、誘電損失が大きく、高周波領域で低損失を求められる用途にはそぐわない。また、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いると、その他の熱硬化性樹脂より密着性の良い樹脂層1及び絶縁層及び積層板を得ることができて好ましい。
【0025】
本発明で用いる無機誘電体粒子はその構成要素としてMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含むものであって、具体的には、Mn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を組成中に含有したチタン酸化合物系セラミック、Mn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を組成中に含有したジルコン酸化合物系セラミック、Mn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を組成中に含有したスズ酸化合物系セラミックから選ばれるいずれか一つあるいはこれらの二つ以上の混合物である。すなわち、本発明で用いる無機誘電体粒子は、無機誘電体粒子からアクセプタ型元素を除いた基本構成要素の無機化合物であるチタン酸化合物系セラミックあるいはジルコン酸化合物系セラミックあるいはスズ酸化合物系セラミックにアクセプタ型元素が少量配合(添加)されて、基本構成要素の無機化合物の組成中にアクセプタ型元素が含有された状態となっている。
【0026】
そして、アクセプタ型元素の含有により無機誘電体粒子の電子伝導が抑制され、この無機誘電体粒子を含むプリント配線板の絶縁層の絶縁性が向上すると考えられる。特に、Mn元素を含む化合物を無機誘電体粒子に含有させることは、絶縁層の絶縁性の向上の点でより好ましい。
【0027】
基本構成要素の無機化合物としては、チタン酸化合物系セラミック、ジルコン酸化合物系セラミック、スズ酸化合物系セラミックから選ばれるいずれか一つを用いたりあるいは複数種混合して用いることができる。基本構成要素のチタン酸化合物系セラミックとしては二酸化チタン系セラミック、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸鉛系セラミック、チタン酸ストロンチウム系セラミック、チタン酸カルシウム系セラミック、チタン酸ビスマス系セラミック、チタン酸マグネシウム系セラミック、チタン酸カドミウム系セラミックなどを例示することができる。尚、上記のチタン酸バリウム系セラミックとしては、BaTi0.7Zr0.3O3などのBaTixZr(1−x)O3の組成を有するものやLa0.15Ba0.85Ti0.92Zr0.08などのLaxBa(1−x)TiyZr(1−y)の組成を有するものやLa0.15Ba0.85Ti0.92Zr0.08O3などのLaxBa(1−x)TiyZr(1−y)O3の組成を有するものなどを例示することができる(但し、0.12≦x≦0.17、0.07≦y≦0.12、0.19≦x+y≦0.265)。また、基本構成要素のジルコン酸化合物系セラミックとしては、ジルコン酸カルシウム系セラミック、ジルコン酸バリウム系セラミック、ジルコン酸鉛系セラミックなどを例示することができる。また、基本構成要素のスズ酸化合物系セラミックとしてはスズ酸カルシウム系セラミック、スズ酸ストロンチウム系セラミック、スズ酸バリウム系セラミックなどを例示することができる。
【0028】
上記のような無機誘電体粒子は、無機誘電体粒子からMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を除いた基本構成要素の無機化合物の100モルに対して0.05〜5.0モルのMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含有する(基本構成要素の無機化合物の全モルに対して0.05〜5.0モル%のMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含有する)のが好ましい。無機誘電体粒子のMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素の含有量が基本構成要素の無機化合物100モルに対して0.05〜5.0モルの範囲から逸脱すると、絶縁層の誘電率や体積抵抗率が低下する傾向にあり、厚みが薄くても絶縁性の高い絶縁層を形成することができなくなる恐れがある。
【0029】
また、上記の無機誘電体粒子は固有の誘電率を有するものであって、誘電率が100以上であることが好ましい。無機誘電体粒子の誘電率が100未満であれば、厚みが薄くても絶縁性の高い絶縁層を得ようとすると、無機誘電体粒子を熱硬化性樹脂組成物に多量に配合しなければならず、絶縁層の加工性が低下する恐れがあり、逆に、少ない配合量にすると高い誘電率を有する絶縁層を形成することができない恐れがある。尚、無機誘電体粒子の誘電率の上限は特に設定されないが、現在入手可能なもので最も高い誘電率は20000であるので、この値が本発明の無機誘電体粒子の誘電率の上限となる。
【0030】
さらに、無機誘電体粒子の平均粒径は0.01〜5μmであることが好ましい。無機誘電体粒子の平均粒径が5μmを超えると、樹脂層1の薄膜化が困難となり、厚みの薄い絶縁層が形成しにくくなる恐れがあり、無機誘電体粒子の平均粒径が0.01μm未満では無機誘電体粒子を熱硬化性樹脂と混合し、ワニスを調製する際、ワニス粘度が増して無機誘電体粒子の均一分散の妨げとなり、均質な絶縁層を形成することができない恐れがあり、また、プリント配線板製造における成形時に樹脂層1の溶融粘度が上がり過ぎて成形性が低下する恐れがある。また、粒径の異なる複数種の無機誘電体粒子を用いることができ、これにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性をあまり損なうことなく、熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機誘電体粒子の充填量を上げることができるのでより好ましい。
【0031】
また、本発明において、無機誘電体粒子としては、平均粒径が0.01μm以上0.5μm未満の粒子と、0.5μm以上5μm以下の粒子との2種類以上の粒子からなることが好ましい。すなわち、単一平均粒径の無機誘電体粒子ではなく平均粒径が異なる2種類以上の無機誘電体粒子を併用するものであり、これにより、平均粒径の大きな無機誘電体粒子の間に平均粒径の小さな無機誘電体粒子を入り込ませることができ、樹脂層1中に充填する無機誘電体粒子の充填率を上げることができるものであり、高い絶縁性を有するプリント配線板の絶縁層を容易に形成することができるものである。平均粒径が0.01μm以上0.5μm未満の粒子と、0.5μm以上5μm以下の粒子との配合比率は特に限定はないが、例えば、無機誘電体粒子の全質量のうち平均粒径が0.01μm以上0.5μm未満の粒子の配合量を5〜45質量%とし、その残部を0.5μm以上5μm以下の粒子とすることができる。
【0032】
尚、本発明では、走査型電子顕微鏡観察により、粒子径とその相対粒子量との分布を測定し、その平均値を無機誘電体粒子の平均粒径として定義しているものである。
【0033】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じてジシアンジアミド等の硬化剤、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の硬化促進剤、エポキシシランカップリング剤等のカップリング剤を配合することができる。
【0034】
そして、上記の熱硬化性樹脂と無機誘電体粒子及び必要に応じて硬化剤や硬化促進剤やカップリング剤を均一に混合することによって本発明で用いる熱硬化性樹脂組成物を調製することができる。この熱硬化性樹脂組成物中における無機誘電体粒子の体積分率は40〜80vol%とする。熱硬化性樹脂組成物中における無機誘電体粒子の体積分率が40vol%より少ないと、プリント配線板製造用材料の樹脂層1から形成される絶縁層の誘電率が低くなり、厚みが薄くても高誘電率のプリント配線板を得ることができない。また、熱硬化性樹脂組成物中における無機誘電体粒子の体積分率が80vol%より多いと、プリント配線板製造用材料の樹脂層1から形成される絶縁層が脆くなってその強度が低くなり、プリント配線板の取り扱い性が低下する恐れがある。
【0035】
また、硬化剤は熱硬化性樹脂の1当量に対して0.8〜1.2当量となるように配合するのが好ましい。また、硬化促進剤は熱硬化性樹脂100質量部に対して0.05〜0.1質量部配合するのが好ましく、さらに、カップリング剤はフィラー100質量部に対して0.5〜3.0質量部配合するのが好ましい。
【0036】
そして、図1に示すようなプリント配線板製造用材料を形成するにあたっては次のようにして行なう。まず、上記の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解あるいは分散させることによって樹脂ワニスを調製する。溶剤としてはメチルエチルケトン(MEK)やN,N−ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。また、樹脂ワニスの塗工性などを考慮すると、樹脂ワニス中の熱硬化性樹脂組成物の濃度は60〜90質量%にするのが好ましい。
【0037】
次に、キャリア2の片面に樹脂ワニスを塗工した後、乾燥させたりあるいは乾燥後に加熱等により樹脂ワニス中の熱硬化性樹脂を半硬化状態(Bステージ状態)にしたりしてキャリア2の片面に樹脂層1を形成することによって、本発明のプリント配線板製造用材料を形成することができる。樹脂層1の厚みは5〜50μmにするのが好ましい。樹脂層1の厚みが5μmより小さいと、本発明のプリント配線板製造用材料を用いて形成されるプリント配線板の絶縁層が薄くなり過ぎて高誘電率や高体積抵抗率を有する絶縁性の絶縁層を形成するのが困難であり、樹脂層1の厚みが50μmよりも大きくなると、本発明のプリント配線板製造用材料を用いて形成されるプリント配線板の絶縁層の厚みを薄く形成することができなくなる恐れがある。
【0038】
図1(b)には本発明のプリント配線板製造用材料Aの他例を示す。このプリント配線板製造用材料Aは二枚のキャリア2の間に樹脂層1を形成したものであり、その他の構成は図1(a)のものと同様にすることができる。このようなプリント配線板製造用材料Aは一方のキャリア2の片面に上記と同様にして樹脂層1を形成した後、樹脂層1の表面に他方のキャリア2を重ね合わせることによって形成することができる。また、キャリア2は両方とも樹脂フィルム2aあるいは金属箔2bであってもよし、一方が樹脂フィルム2aで他方が金属箔2bで形成するようにしてもよい。
【0039】
図1(c)には本発明のプリント配線板製造用材料Aの他例を示す。このプリント配線板製造用材料Aは図1(b)に示すものにおいて、キャリア2の表面にさらに他のキャリア2を重ね合わせて形成したものであり、その他の構成は図1(b)のものと同様にすることができる。このプリント配線板製造用材料Aの場合、例えば、樹脂層1の表面に接触しているキャリア2が金属箔2bで形成し、この金属箔2bのキャリア2の表面に重ね合わせられるキャリア2は樹脂フィルム2aで形成することができる。
【0040】
図1(d)には本発明のプリント配線板製造用材料Aの他例を示す。このプリント配線板製造用材料Aは図1(a)に示すものにおいて、キャリア2の表面にさらに他のキャリア2を重ね合わせて形成したものであり、その他の構成は図1(a)のものと同様にすることができる。このプリント配線板製造用材料Aの場合、例えば、金属箔2bのキャリア2の表面に重ね合わせられるキャリア2は樹脂フィルム2aで形成することができる。
【0041】
図2には本発明のプリント配線板製造用材料Aの他例を示す。このプリント配線板製造用材料Aは、キャリア2の片面に無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3を形成した後、無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる上記と同様の樹脂層1を無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3の表面に形成したものであり、その他の構成は図1(a)のものと同様にすることができる。従って、キャリア2の片面には無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3と無機誘電体粒子を含有する樹脂層1とがこの順で積層されていることになる。
【0042】
このようにキャリア2と無機誘電体粒子を含有する樹脂層1との間に無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3を介在させることによって、本発明のプリント配線板製造用材料を用いて形成されるプリント配線板を成形した後に、キャリア2と絶縁層との密着性を高めることができ、層間剥離等の破損を少なくすることができるものである。
【0043】
上記の無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3は、無機誘電体粒子を含有する樹脂層1で用いられる熱硬化性樹脂と同様のものを使用することができる。また、上記の無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3は、キャリア2に対して、コンマコータ等による塗工あるいはスプレー等による噴霧により形成されることが好ましく、これにより、無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3を薄く形成することができ、本発明のプリント配線板製造用材料を用いて形成されるプリント配線板の絶縁層の比誘電率の低下を最小にし、且つ密着力を向上させることができるものである。尚、無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3の厚みは特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜1μmにすることができる。
【0044】
上記のように形成されるプリント配線板製造用材料を用いてプリント配線板を製造するにあたっては各種の方法を採用することができる。キャリア2として金属箔2bを用いたプリント配線板製造用材料の場合は、プリント配線板製造用材料を加熱あるいは加熱加圧して樹脂層1を硬化させて絶縁層を形成することによって、両面あるいは片面金属箔張り積層板を形成し、この積層板の金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施すことによってプリント配線板を形成することができる。また、内層用コア材などの他のプリント配線板の表面に樹脂層1が接触するようにしてプリント配線板製造用材料を重ね合わせ、この重ね合わせたものを加熱あるいは加熱加圧して樹脂層1を硬化させて絶縁層を形成することによって、内層回路を有する両面あるいは片面金属箔張り積層板を形成し、この積層板の金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施すことによって多層プリント配線板を形成することができる。
【0045】
また、キャリア2として樹脂フィルム2aを用いたプリント配線板製造用材料の場合はキャリア2を樹脂層1あるいは他のキャリア2(金属箔2bのキャリア2)から剥離した後、上記と同様にして樹脂層1を硬化させたり他のプリント配線板に重ね合わせたりするものである。さらに、金属箔2bのキャリア2を有さないプリント配線板製造用材料Aの場合は樹脂層1の硬化により絶縁層を形成した後、アディティブ法などの回路形成を絶縁層に施すことによりプリント配線板を製造することができる。
【0046】
尚、樹脂層1を硬化させるにあたっては、例えば、温度160〜180℃、圧力0〜3MPaの条件を採用することができる。
【0047】
図3に、本発明のプリント配線板製造用材料Aを用いた多層プリント配線板の製造方法を示す。ここで用いたプリント配線板製造用材料Aは図1(c)に示すものであって、無機誘電体粒子を含有する樹脂層1の両面に接触させて設けたキャリア2として銅箔等の金属箔2bを用い、一方の金属箔2bと接触させて設けたキャリア2として樹脂フィルム2aを用いたものである。
【0048】
そして、まず、加熱等によりプリント配線板製造用材料Aの樹脂層1を硬化させて絶縁層4を形成することによって両面銅張り積層板を作製した後、図3(a)に示すように、樹脂フィルム2aで覆われていない一方の金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施すことにより、絶縁層4の片面に内層回路となる回路(回路パターン)10を形成する。ここで、他方の金属箔2bは樹脂フィルム2aに保護されており、絶縁層4の片面のみの回路形成ができるものであり、こうすることにより上記回路形成時では回路形成を施さない金属箔2bに変形や割れを生じにくくすることができるものである。次に、回路10を形成した片面においてプリント配線板製造用材料Aに樹脂シート5と導電箔6とをこの順で重ね合わせ、この後、加熱加圧等により成形して樹脂シート5を硬化させることによって、プリント配線板製造用材料Aと樹脂シート5の硬化物からなる絶縁層11と導電箔6とを積層一体化する。ここで、樹脂シート5及び導電箔6としては従来からプリント配線板の製造に用いられている公知のものを使用することができ、例えば、樹脂シート5としてはエポキシ樹脂含浸ガラス布基材等のプリプレグを用いることができ、また、導電箔6としては銅箔等の金属箔を用いることができる。また、上記の積層一体化する際の加熱加圧の条件も従来と同様にすることができ、例えば、温度160〜180℃、圧力0〜3MPaの条件を採用することができる。
【0049】
次に、プリント配線板製造用材料Aの樹脂フィルム2aを未回路形成の金属箔2bから剥離して金属箔2bを露出させると共にこの金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施して図3(b)に示すように絶縁層4の他の片面に内層回路となる回路(回路パターン)12を形成する。次に、図3(c)に示すように、金属箔2bから形成した回路12側の片面に上記と同様の樹脂シート5と導電箔6とをこの順で重ね合わせ、この後、上記と同様にして、加熱加圧等により成形して樹脂シート5を硬化させることによって、プリント配線板製造用材料Aと樹脂シート5の硬化物からなる絶縁層13と導電箔6とを積層一体化する。
【0050】
この後、プリント配線板製造用材料Aの両外側に絶縁層11、13を介して積層された導電箔6にサブトラクティブ法などの回路形成を施して外層となる回路(回路パターン)14を形成することによって、図3(d)に示すように、本発明のプリント配線板製造用材料Aをコア材料とした多層プリント配線板を形成することができる。
【0051】
このように本発明のプリント配線板製造用材料Aは従来から用いられている通常のプリント配線板加工性設備を使用して多層プリント配線板を形成することができる。尚、図3(d)に示す多層プリント配線板をコア材料として用いてさらに多層のプリント配線板を製造することができる。
【0052】
図4に、本発明のプリント配線板製造用材料Aを用いた多層プリント配線板の製造方法の他例を示す。ここで用いたプリント配線板製造用材料Aは図1(c)に示すものであって、無機誘電体粒子を含有する樹脂層1の両面に接触させて設けたキャリア2として銅箔等の金属箔2bを用い、一方の金属箔2bと接触させて設けたキャリア2として樹脂フィルム2aを用いたものである。
【0053】
そして、まず、加熱等によりプリント配線板製造用材料Aの樹脂層1を硬化させて絶縁層4を形成することによって両面銅張り積層板を作製した後、図4(a)に示すように、樹脂フィルム2aで覆われていない一方の金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施すことにより、絶縁層4の片面に内層回路となる回路(回路パターン)10を形成する。ここで、他方の金属箔2bは樹脂フィルム2aに保護されており、絶縁層4の片面のみの回路形成ができるものであり、こうすることにより上記回路形成時では回路形成を施さない金属箔2bに変形や割れを生じにくくすることができるものである。次に、上記のように回路10を形成したプリント配線板製造用材料Aを二枚用意し、回路10を形成した面を互いに対向させて二枚のプリント配線板製造用材料Aを配置すると共にこの二枚のプリント配線板製造用材料Aの間に上記と同様の樹脂シート5を配置し、二枚のプリント配線板製造用材料Aと樹脂シート5とを重ね合わせる。この後、加熱加圧等により成形して樹脂シート5を硬化させることによって、図4(b)に示すように、二枚のプリント配線板製造用材料Aと樹脂シート5の硬化物からなる絶縁層11とを積層一体化する。この積層一体化する際の加熱加圧の条件は上記と同様に設定することができる。
【0054】
次に、プリント配線板製造用材料Aの樹脂フィルム2aを金属箔2bから剥離して金属箔2bを露出させると共にこの金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施して外層となる回路(回路パターン)14を形成することによって、図4(c)に示すような多層プリント配線板を形成することができる。
【0055】
このように本発明のプリント配線板製造用材料Aは従来から用いられている通常のプリント配線板加工性設備を使用して多層プリント配線板を形成することができると共に多層プリント配線板に必要な容量に応じて容易に多層化を図ることができるものである。尚、図4(c)に示す多層プリント配線板をコア材料として用いてさらに多層のプリント配線板を製造することができる。
【0056】
図5に、本発明のプリント配線板製造用材料Aを用いた多層プリント配線板の製造方法の他例を示す。ここで用いたプリント配線板製造用材料Aは図1(a)に示すものであって、キャリア2として銅箔等の金属箔2bを用いたものであり、樹脂付き金属箔として形成されている。
【0057】
そして、まず、予め両表面に内層回路となる回路(回路パターン)9を形成した内層用の基板(コア材料)7の表面に液状の樹脂8を全面に亘って塗工し、加熱等により塗工した樹脂8を硬化させる。ここで樹脂8としてはプリント配線板製造用材料Aの樹脂層1に用いた熱硬化性樹脂と同様のものを使用することができる。次に、硬化した樹脂8を研磨等することにより、基板7の回路9の表面と塗工した樹脂8の表面とが略同一になるよう平滑にする。次に、図5(a)に示すように、上記のプリント配線板製造用材料Aの樹脂層1を基板7の表面に接触するようにして両側に重ね合わせた後、加熱加圧等により成形してプリント配線板製造用材料Aの樹脂層1を硬化させて絶縁層4を形成することによって、図5(b)に示すように、二枚のプリント配線板製造用材料Aと基板7とを積層一体化する。この積層一体化する際の加熱加圧の条件は上記と同様に設定することができる。次に、プリント配線板製造用材料Aの金属箔2bにサブトラクティブ法などの回路形成を施して外層となる回路(回路パターン)14を形成することによって、図5(c)に示すような多層プリント配線板を形成することができる。
【0058】
このように本発明のプリント配線板製造用材料Aは従来から用いられている通常のプリント配線板加工性設備を使用して多層プリント配線板を形成することができると共に樹脂8により外層と内層の間に形成される絶縁層の厚みを均一化することができ、単位面積当たりの電気容量値をほぼ一定値にすることができるものである。尚、図5(c)に示す多層プリント配線板をコア材料として用いてさらに多層のプリント配線板を製造することができる。
【0059】
そして、本発明のプリント配線板はMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を構成要素とする無機誘電体粒子を体積分率で40〜80vol%含有する樹脂層1を硬化させて絶縁層4を形成するので、Mn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を構成要素としない無機誘電体粒子を含む絶縁層に比べて絶縁性改善(絶縁抵抗を高くすること)と低周波数での誘電損失の低減を図ることができ、厚みが薄くても誘電率や体積抵抗率の高い絶縁性に優れ、しかも高電気容量の絶縁層を形成することができるものである。また、絶縁層は樹脂の硬化物で形成されるので、セラミックで形成される絶縁層よりもレーザ等での加工性を高めることができるものである。
【0060】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0061】
(無機誘電体粒子の作製)
BaCO3、La2O3、TiO2、ZrO2、MnOの各粉末を乾式法で混合し、この混合物を1300℃で焼成して焼結体を形成し、この焼結体を粉砕することによって平均粒径が1μmの無機誘電体粒子を形成した。この無機誘電体粒子は基本構成要素としてLa0.15Ba0.85Ti0.92Zr0.08O3の組成を有するものであり、Mnの含有量を異ならせて6種類のものを作製した。すなわち、基本構成要素100モルに対してMnを含まないもの(0モルのもの)、0.05モル含むもの、0.1モル含むもの、0.2モル含むもの、0.3モル含むもの、0.5モル含むものをそれぞれ作製した。尚、各無機誘電体粒子のMnの含有量と誘電率を表1、2に示す。また、アクセプタ型元素の含有量は無機誘電体粒子からアクセプタ型元素を除いた基本構成要素(元素)の全量(100モル)に対するモル%で示す。
【0062】
(実施例1〜5)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製の「YDB−500」エポキシ当量500)を88質量部と、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製の「YDCN−701」エポキシ当量220)を9.7質量部と、ジシアンジアミドを2.3質量部と、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.097質量部と、エポキシシランカップリング剤を2質量部と、Mnを含有する無機誘電体粒子を400質量部とを混合して熱硬化性樹脂組成物を調製した。尚、熱硬化性樹脂組成物中の無機誘電体粒子の体積分率を表1に示す。
【0063】
次に、50質量%のMEKと50質量%のN,N−ジメチルホルムアミドとを混合した溶剤を上記の熱硬化性樹脂組成物に加えて樹脂濃度が90質量%の樹脂ワニスを調製した。次に、厚み18μmで表面粗度Rzが7μmの銅箔の表面に上記の樹脂ワニスをコンマコータにより塗工し、これを乾燥することにより厚さ30μmの樹脂層1を形成して図1(a)に示すプリント配線板製造用材料Aを形成した。
【0064】
次に、上記のプリント配線板製造用材料の樹脂層1の表面に厚み18μmの銅箔を重ね合わせ、これを180℃、3MPa、90分間の条件で加熱加圧することによって両面銅張り積層板を形成した。
【0065】
(実施例6〜12)
アクセプタ型元素として、表1、2のものを添加した以外は実施例1〜5と同様にしてプリント配線板製造用材料及び両面銅張り積層板を形成した。
(実施例13)
BaCO3、La2O3、TiO2、ZrO2、MnOの各粉末を乾式法で混合し、この混合物を1300℃で焼成して焼結体を形成し、この焼結体を粉砕することによって平均粒径が1μmと0.1μmの無機誘電体粒子を形成した。平均粒径およびアクセプタ元素、体積分率としては、表2のとおりとした。また、使用した無機誘電体粒子の全質量のうち、平均粒径が1μmの無機誘電体粒子は75質量%、平均粒径が0.1μmの無機誘電体粒子は25質量%とした。それ以外は実施例1と同様にしてプリント配線板製造用材料A及び両面銅張り積層板を形成した。
(実施例14)
樹脂層1の厚みを10μmにし、銅箔として表面粗度が3μmのものを用いた以外は、実施例13と同様にしてプリント配線板製造用材料A及び両面銅張り積層板を形成した。
(実施例15)
実施例13において、無機誘電体粒子を含有しない熱硬化性樹脂組成物を調製し、これに溶剤を加えて樹脂濃度が10質量%の樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスをコンマコータにより塗工し、これを乾燥することにより厚さ0.5μmの無機誘電体粒子を含有しない樹脂層3を形成した。次に、この樹脂層3の表面に実施例13と同様にして無機誘電体粒子を含有する樹脂層1を形成することによって、図2に示すプリント配線板製造用材料Aを形成した。この後、実施例13と同様にしてプリント配線板製造用材料A及び両面銅張り積層板を形成した。
【0066】
(比較例1)
Mnを含有しない無機誘電体粒子を用いた以外は実施例1〜5と同様にしてプリント配線板製造用材料及び両面銅張り積層板を形成した。
【0067】
(比較例2)
樹脂層1の厚みを60μmにした以外は比較例1と同様にしてプリント配線板製造用材料及び両面銅張り積層板を形成した。
【0068】
上記の実施例1〜15と比較例1、2で作製した両面銅張り積層板について、体積抵抗率及び電気容量を測定すると共に加工性を評価した。体積抵抗率の測定はIPC−TM−650に基づいて測定した。また、電気容量は自動平衡ブリッジ法に基づいて測定した。厚みはマイクロメーターにより、測定し、測定した容量と厚みより両面銅張り積層板の誘電率を算出した。また、加工性は、回路形成、スルーホール穴あけ、スルーホールメッキを行い加工が問題なく行えるか、また断面観察を行い穴あけ加工がなされているかを評価した。結果を表1、2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1、2から明らかなように、実施例1〜13、15と比較例1はプリント配線板製造用材料の樹脂層1(両面銅張り積層板の絶縁層)の厚みが同じであるにもかかわらず、実施例1〜13、15の方が比較例1よりも体積抵抗率が高くなって絶縁層4の絶縁性が優れるものである。実施例14は、比較例1より厚みが薄いにもかかわらず体積抵抗率が高くなっており、絶縁層4の絶縁性が優れるものである。また、比較例2はプリント配線板製造用材料の樹脂層1(両面銅張り積層板の絶縁層4)の厚みが実施例1〜15よりも厚いので、実施例1〜15と比較例2の体積抵抗率はほぼ同等になることもあるが、電気容量は比較例2の方が低くなり、実施例1〜15は高電気容量の絶縁層4を形成することができるものである。また、単一の平均粒径の無機誘電体粒子を用いた実施例1〜12では積層板の絶縁層4に若干の空隙が見られたが、平均粒径が異なる2種類の無機誘電体粒子を用いた実施例13〜15では充填率が高いにもかかわらず積層板の絶縁層4に空隙が見られなかった。
【0072】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層をキャリアの表面に形成したプリント配線板製造用材料において、熱硬化性樹脂組成物中の無機誘電体粒子の体積分率を40〜80vol%とし、無機誘電体粒子の構成要素としてMn,V,Cr,Co,Fe,Cu,Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含有するので、樹脂層を硬化させて絶縁層を形成することによって、アクセプタ型元素を構成要素として含有する無機誘電体粒子を絶縁層に体積分率40〜80vol%の割合で含有させることができ、この無機誘電体粒子により絶縁層の誘電率や体積抵抗値を高くすることができて厚みが薄くても絶縁性に優れる絶縁層を形成することができるものである。しかも、絶縁層は樹脂で形成されているので、セラミックの絶縁層に比較して加工性に優れるものである。
【0073】
また、本発明の請求項2の発明は、無機誘電体粒子が固有の誘電率で100以上の誘電率を有するので、樹脂層中の無機誘電体粒子の配合量が少なくても高い誘電率を有する絶縁層を形成することができ、無機誘電体粒子の配合量が増加することによる絶縁層の加工性の低下を防止しながら絶縁性の高い絶縁層を形成することができるものである。
【0074】
また、本発明の請求項3の発明は、無機誘電体粒子がチタン酸化合物系セラミック、ジルコン酸化合物系セラミック、スズ酸化合物系セラミックから選ばれる少なくとも一つであるので、他の無機誘電体粒子を用いるよりも絶縁層の誘電率をより一層高くすることができるものである。
【0075】
また、本発明の請求項4の発明は、無機誘電体粒子からアクセプタ型元素を除いた基本構成要素の無機化合物の100モルに対して、0.05〜5.0モル含有する無機誘電体粒子を用いるので、絶縁層の誘電率や体積抵抗率を高く維持することができ、厚みが薄くても絶縁性の高い絶縁層を形成することができるものである。
【0076】
また、本発明の請求項5の発明は、無機誘電体粒子の平均粒径が0.01〜5μmであるので、樹脂層の厚みを均一にすることができると共に熱硬化性樹脂組成物中での無機誘電体粒子の分散性を高めることができ、均質な絶縁層を形成することができるものである。
【0077】
また、本発明の請求項6の発明は、キャリアとして金属箔と樹脂フィルムの少なくとも一方を用いて成るので、金属箔をキャリアとして用いることによってこの金属箔をプリント配線板の回路形成用の導体として利用することができ、キャリアと回路形成用の導体とを兼用して部品点数の減少を図って低コスト化を図ることができるものである。また、樹脂フィルムをキャリアとして用いることによって金属箔に比べて軽量化が図れ、取り扱い性を向上させることができるものである。
【0078】
また、本発明の請求項7の発明は、無機誘電体粒子が、平均粒径0.01μm以上0.5μm未満の粒子と、平均粒径0.5μm以上5μm以下の粒子との2種類以上の粒子から成るので、無機誘電体粒子を絶縁層に高充填化することができ、高誘電率で厚みが薄くても絶縁性に優れる絶縁層を形成することができるものである。
【0079】
また、本発明の請求項8の発明は、キャリアとして用いられる金属箔の表面粗度Rzが3μm以下であるので、金属箔と絶縁層の密着性を高くすることができ、厚みが薄くても絶縁性に優れる絶縁層を形成することができると共にプリント配線板の層間剥離を少なくすることができるものである。
【0080】
また、本発明の請求項9の発明は、キャリアの表面に無機誘電体粒子を含有しない樹脂層を形成すると共に無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を上記無機誘電体粒子を含有しない樹脂層の表面に形成するので、無機誘電体粒子を含有しない樹脂層によりキャリアと絶縁層との密着性を高くすることができ、高誘電率で厚みが薄くても絶縁性に優れる絶縁層を形成することができると共にプリント配線板の層間剥離を少なくすることができるものである。
【0081】
また、本発明の請求項10の発明は、キャリアの表面に樹脂層を塗工あるいは噴霧により形成するので、無機誘電体粒子を含有しない樹脂層を薄くて容易に形成することができ、作業効率を向上させることができるものである。
【0082】
また、本発明の請求項11の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の樹脂層を硬化して絶縁層を形成するので、無機誘電体粒子により絶縁層の誘電率や体積抵抗値を高くすることができて厚みが薄くても絶縁性に優れる絶縁層を形成することができるものである。しかも、絶縁層は樹脂で形成されているので、セラミックの絶縁層に比較して加工性に優れるものである。
【0083】
また、本発明の請求項12の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の片面に回路形成した後、この回路形成した面に樹脂シートと導電箔を順次積層成形し、さらに回路形成するので、通常のプリント配線板加工性設備を使用して多層プリント配線板を形成することができ、容易に回路形成を行うことができるものである。
【0084】
また、本発明の請求項13の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の片面に回路形成した後、この回路形成した面を互いに対向させて二枚のプリント配線板製造用材料を配し、その間に樹脂シートを配して積層成形し、さらに回路形成するので、高容量の絶縁層を複数有する多層のプリント配線板を容易に形成することができるものである。
【0085】
また、本発明の請求項14の発明は、回路を形成した基板の表面に樹脂を塗工し、この基板の回路の表面が塗工した樹脂の表面と略同一になるよう平滑にし、さらに、上記請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料を重ね合わせた後、成形することにより多層化するので、基板の表面に塗工した樹脂により絶縁層の厚みを均一化することができ、プリント配線板の単位面積当たりの電気容量値をほぼ一定値にすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリント配線板製造用材料における実施の形態の一例を示す(a)乃至(d)は一部の断面図である。
【図2】本発明のプリント配線板製造用材料における他の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図3】本発明のプリント配線板の製造方法における実施の形態の一例を示し、(a)乃至(d)は断面図である。
【図4】本発明のプリント配線板の製造方法における他の実施の形態の一例を示し、(a)乃至(c)は断面図である。
【図5】本発明のプリント配線板の製造方法における他の実施の形態の一例を示し、(a)乃至(c)は断面図である。
【符号の説明】
1 樹脂層
2 キャリア
3 樹脂層
4 絶縁層
5 樹脂シート
6 導電箔
7 基板
8 樹脂
9 回路
A プリント配線板製造用材料
Claims (14)
- 無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層をキャリアの表面に形成したプリント配線板製造用材料において、熱硬化性樹脂組成物中の無機誘電体粒子の体積分率を40〜80vol%とし、無機誘電体粒子の構成要素としてMn、V、Cr、Co、Fe、Cu、Ni及びMoから選択された1種又は2種以上のアクセプタ型元素を含有して成ることを特徴とするプリント配線板製造用材料。
- 無機誘電体粒子が固有の誘電率で100以上の誘電率を有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板製造用材料。
- 無機誘電体粒子がチタン酸化合物系セラミック、ジルコン酸化合物系セラミック、スズ酸化合物系セラミックから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板製造用材料。
- 無機誘電体粒子からアクセプタ型元素を除いた基本構成要素の無機化合物の100モルに対して、0.05〜5.0モルのアクセプタ型元素を含有する無機誘電体粒子を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- 無機誘電体粒子の平均粒径が0.01〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- キャリアとして金属箔と樹脂フィルムの少なくとも一方を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- 無機誘電体粒子が、平均粒径0.01μm以上0.5μm未満の粒子と、平均粒径0.5μm以上5μm以下の粒子との2種類以上の粒子から成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- キャリアとして用いられる金属箔の表面粗度Rzが3μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- キャリアの表面に無機誘電体粒子を含有しない樹脂層を形成すると共に無機誘電体粒子を含有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を上記無機誘電体粒子を含有しない樹脂層の表面に形成して成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料。
- キャリアの表面に樹脂層を塗工あるいは噴霧により形成して成ることを特徴とする請求項9に記載のプリント配線板製造用材料。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の樹脂層を硬化して絶縁層を形成して成ることを特徴とするプリント配線板。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の片面に回路形成した後、この回路形成した面に樹脂シートと導電箔を順次積層成形し、さらに回路形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料の片面に回路形成した後、この回路形成した面を互いに対向させて二枚のプリント配線板製造用材料を配し、その間に樹脂シートを配して積層成形し、さらに回路形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
- 回路を形成した基板の表面に樹脂を塗工し、この基板の回路の表面が塗工した樹脂の表面と略同一になるよう平滑にし、さらに、上記請求項1乃至10のいずれかに記載のプリント配線板製造用材料を重ね合わせた後、成形することにより多層化することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
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