JP2006123232A - 誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔及びその誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔を用いて得られたプリント配線板 - Google Patents

誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔及びその誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔を用いて得られたプリント配線板 Download PDF

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一浩 山崎
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隆 障子口
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Abstract

【課題】通常のプリント配線板製造プロセスを使用して、誘電層の膜厚均一性に優れ、下部電極を形成した内層回路面との良好な密着性を得ることの出来る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を提供する。
【解決手段】下部電極等の内層回路を形成した基板に張り合わせて用いる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板製造用の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔であって、当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、導電層の片面に前記誘電体フィラー含有樹脂層を備え、当該誘電体フィラー含有樹脂層は前記導電層と接する誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜と、当該フィラー含有半硬化樹脂膜の上に設ける高流動性樹脂膜の2層構造を備えることを特徴とした誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔等を採用する。そして、このときの高流動性樹脂膜は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%〜25%であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本件出願に係る発明は、誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔及びその誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔を用いて得られたプリント配線板に関する。特に、キャパシタ回路を内蔵するプリント配線板の製造において好適なものを提供する。
近年、プリント配線板の小型化、省電力化を目的に、設計上キャパシタ回路をプリント配線板の層内に内蔵形成する事が求められてきた。このプリント配線板は、その内層に1以上の層を誘電層を形成し、その誘電層の両面に位置する内層回路にキャパシタとしての上部電極及び下部電極が対抗配置され用いられてきた。
キャパシタは、可能な限り大きな電気容量を持つことが基本的な品質として求められる。キャパシタの容量(C)は、C=εε(A/d)の式(εは真空の誘電率)から計算される。特に、最近の電子、電気機器の軽薄短小化の流れから、プリント配線板にも同様の要求が行われることになり、一定のプリント配線板面積の中で、キャパシタ電極の面積を広く採ることは殆ど不可能であり、表面積(A)に関しての改善に関しては限界がある事は明らかである。従って、キャパシタ容量を増大させるためには、キャパシタ電極の表面積(A)及び誘電体層の比誘電率(ε)が一定とすれば、誘電体層の厚さ(d)を薄くする必要がある。この誘電層は、特許文献1に開示されているように、誘電体フィラーと樹脂成分(以下、「バインダー樹脂成分」と称する。)とを混合したものを金属箔の片面に塗布して、誘電層付金属箔の形に具現化して形成される場合がある。係る方法は、誘電層の厚さを容易にコントロール可能であり、特許文献2に開示の樹脂層付銅箔と同様の使用方法が可能となる利点がある。
従って、誘電層付金属箔を用いてキャパシタ回路を内蔵するプリント配線板を製造しようとすると、余分な設備投資を行うことなく、一般的なプリント配線板の製造プロセスを応用することが求められてきた。即ち、図7〜図9に示した製造方法を採用するのが理想的である。即ち、図7(a)に示した内層コア材22(図面中ではコア材絶縁層23の両面に下部電極7が形成されたもの)を用い、図7(b)に示すように誘電体フィラーを含んだ層のみを備える誘電層付金属箔26を重ねて熱間プレス加工することで、この両面に高誘電率材料を用いた誘電層2と第1導電層6を張り合わせ、図8(c)に示す如き状態となることが期待される。
以上の工程がうまくいくとすれば、外層に位置する第1導電層6を、エッチングする等して、キャパシタの上部電極8となる回路を含むように加工し、図8(d)に示す状態とできる。このとき、回路部以外の領域の誘電層は露出した状態となる。
次に、上部電極8の上に、プリプレグ及び金属箔を公知の方法で用いて、絶縁層と第2導電層を形成する。そして、外層に位置する第2導電層6’を、エッチングする等して、キャパシタの上部電極8となる回路を含む外層回路に加工し、図9(e)に示す、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板25’が得られるはずである。
特開2002−277922号公報 再公表WO97/02728号公報
しかしながら、上記誘電層付金属箔の誘電層は、キャパシタとしての電気容量を高くするため、誘電層中の誘電体フィラーの含有量が80wt%を超え、残部がバインダー樹脂成分となる。従って、樹脂成分量が少なく、張り合わせ加工を行うときの熱間プレス加工時のレジンフローが殆ど期待出来ない。この結果、上記の一般的なプリント配線板の製造プロセスを転用して、内蔵キャパシタ層を備えるプリント配線板を製造しようとすると、図7(b)に示した内層コア材2の両面に高誘電率材料を用いた誘電層2と第1導電層6の張り合わせ状態に大きな問題が発生していた。一般的に、誘電層2に含まれる樹脂量が少ないため、張り合わせ時のレジンフローが少なく、下部電極間のギャップをうまく埋設することができず、図8(c)に図示したような理想的な状態には出来なかった。
しかも、図7〜図9に示した内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板の製造方法は、通常の多層プリント配線板の製造方法を、そのまま転用したものであり、誘電層が多層プリント配線板の全面に亘って広がっており、キャパシタ回路以外の電源ライン、信号伝達ラインの下部及び周辺にも誘電層が存在することになる。この誘電層は、高誘電率であるためシグナル信号等の電送時に誘電損失が大きくなるという問題があり、回路間の寄生容量も大きくなり回路設計上の問題となっていた。また、この誘電層に対し、インダクタ等の他の回路素子を埋め込もうとしても不可能な場合が多く、回路設計に一定の制約を受けるのが通常であった。
以上のことから、通常のプリント配線板製造プロセスを使用することを前提として、誘電層の膜厚均一性に優れ、下部電極を形成した内層回路面との良好な密着性を得ることの出来る誘電層付金属箔が求められてきたのである。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下の述べる誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いることにより、従来の最も一般的なプリント配線板の製造プロセスを採用出来るものとしたのである。
本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、「下部電極等の内層回路を形成した基板に張り合わせて用いる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板製造用の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔であって、当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、導電層の片面に前記誘電体フィラー含有樹脂層を備え、当該誘電体フィラー含有樹脂層は前記導電層と接する誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜と当該フィラー含有半硬化樹脂膜の上に設ける高流動性樹脂膜の2層構造を備えることを特徴とした誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔。」である。
そして、当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の高流動性樹脂膜は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%〜25%であることが好ましいのである。
さらに、誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の高流動性樹脂膜の厚さは、下部電極等の内層回路の高さ(Tμm)、基板の下部電極等の内層回路の存在面の残銅率(R%)としたとき、1.15×{T×(100−R)/100}(μm)〜1.30×{T×(100−R)/100}(μm)である事が好ましいのである。
そして、以上に述べた本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いることで、通常のプリント配線板製造プロセスの使用が可能となり、しかも、高品質のキャパシタ回路を内蔵するプリント配線板を得ることが可能となるのである。
本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、通常のプリント配線板製造プロセスを使用して、内蔵キャパシタ回路を備えた高品質のプリント配線板の製造を可能とする。本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の誘電体フィラー含有樹脂層は、金属箔と接するフィラー含有半硬化樹脂層と、当該フィラー含有半硬化樹脂層の上に設ける高流動性樹脂膜の2層構造を備えることで、誘電層の膜厚を任意且つ均一に形成することが可能であり、高流動性樹脂膜の存在により下部電極を形成した内層回路面との良好な密着性を得ることの出来るようになるからである。
以下、実施の形態と実施例とを通じて、本件発明をより詳細に説明する。以下において、「誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔」と「内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造」、「内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板」に分けて実施形態を説明することとする。
A.誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔
通常、下部電極を含む内層回路を備えたコア材は、絶縁層の表面から内層回路が突出した凹凸表面である。そこで、図1(B)から分かるように、誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔1の半硬化状態の誘電層2が、誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜3(図面中の誘電体フィラー4は、黒点として極めて模式的に示している。)と高流動性樹脂膜5との2層構造を備えたものを用いるのである。なお、図面中では、導電層の形成には金属箔を用い、その金属箔6の誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜との接触面には、微細銅粒21等の粗化処理を設けた状態をイメージして示している。
誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の製造: この誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔1は、図1に示すようにして得られる。即ち、誘電体フィラー含有樹脂溶液を、金属箔6の張り合わせ面に所定の厚さとなるように塗布し、誘電体フィラー含有樹脂溶液膜20を形成し、乾燥させることで図1(A)に示すように、金属箔6の上に半硬化状態の誘電体フィラー含有半硬化樹脂層3を形成する。そして、更に高流動性樹脂のみを塗布し乾燥させることで、図1(B)に示すように高流動性樹脂膜5を半硬化状態で形成することで得られるのである。ここで、銅箔の張り合わせ面は、誘電体層との接着に用いる面であり、通常は樹脂内に食い込みアンカー効果を発揮させるための微細銅粒21等の粗化処理を備えたものである。しかし、用途によっては、粗化処理を省略した金属箔を使用することも可能である。また、キャパシタ層を構成する際の導電層の構成に銅箔等の金属箔を用いる場合は、誘電体層の厚さを均一に維持するため、可能な限り平坦な製品を用いることが好ましい。従って、ベリーロープロファイル(VLP)銅箔、圧延銅箔、圧延ニッケル箔等を用いることが好ましい。
金属箔6に塗布した誘電体フィラー含有樹脂溶液膜20の乾燥には、単なる風乾、加熱乾燥若しくはこれらを組み合わせて用いる等の手法を採用することが可能であり、乾燥雰囲気も大気乾燥、減圧乾燥等を工程に会わせて任意に採用することが可能である。このようにして、金属箔6の上に半硬化状態の誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜3’を、キャパシタ回路としての設計に合わせた任意の厚さで形成することが可能となるのである。更に、半硬化状態とした誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜の上に、高流動性樹脂膜を構成する所定量の樹脂を塗布し、上述と同様に乾燥させ、半硬化状態の高流動性樹脂膜5とするのである。この高流動性樹脂膜5の厚さは、内層回路の高さ(厚さ)に応じて任意に調整するものである。
高流動性樹脂膜のレジンフロー: そして、当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の高流動性樹脂膜は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%〜25%である流動性を持つことが好ましいのである。レジンフローが1%未満の場合には、下部電極を含む内層回路の欠陥のない被覆が困難となるのである。但し、レジンフローが25%を超えると、熱間プレス成型時に大きくなり過ぎたレジンフローの影響で、プレス圧を急激に上昇させるとレイアップした状態での層間ズレを起こしやすく、徐々に加圧圧力を上昇させるとの加圧制御が煩雑となるのである。また、レジンフローが25%を超えると、誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を重ねて保管したときに誘電体フィラー含有樹脂層と金属箔とが密着して一時的な張り合わせられるブロッキング現象を引き起こすことが多くなるのである。従って、プレス作業の容易化が図れ且つ安定した密着性が確保出来るという観点からすると、より好ましくはレジンフローが1%〜15%の範囲が好ましいのである。更にプレス作業が容易という観点から、好ましくは、レジンフローが1%〜10%の範囲である。なお、このレジンフローは、以下に述べる方法で測定したものであり、単に通常のプレス作業で測定されるものではない。
本件発明におけるレジンフローは、MIL規格のMIL−P−13949Gに準拠して測定したときの値で判断している。即ち、本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の高流動性樹脂膜を構成する樹脂組成物を金属箔の片面に10μm厚さで塗布し乾燥させ半硬化樹脂層としたレジンフロー測定用の樹脂層付金属箔を製造し、ここから10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときのレジンフロ−を測定し、数1に従って計算して求めたのである。
Figure 2006123232
高流動性樹脂膜の厚さ: さらに、誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の高流動性樹脂膜の厚さは、下部電極等の内層回路の高さ(Tμm)、基板の下部電極等の内層回路の存在面の残銅率(R%)としたとき、T×(100−R)/100(μm)以上である事が好ましいのである。本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、内層回路上に張り合わせてキャパシタとして誘電層を構成するものであり、誘電層は薄いほど電気容量も高くなる。従って、高流動性樹脂の厚さは、プレス加工により張り合わされた後、限りなく0μmに近くなり、且つ、良好な密着性が得られることが好ましい。従って、下部電極等の内層回路の高さ(Tμm)、基板の下部電極等の内層回路の存在面の残銅率(R%)としたとき、理論的な高流動性樹脂膜の厚さは、T×(100−R)/100(μm)あれば、下部電極形状を含む内層回路の回路間ギャップを完全に埋設することが可能となるのである。しかしながら、上述のようにレジンフローが15%〜25%の範囲を想定しているのであるから、レジンフローを考慮して、1.15×{T×(100−R)/100}(μm)〜1.30×{T×(100−R)/100}(μm)の範囲とすることが好ましいのである。なお、この高流動性樹脂膜の厚さは、1mあたりの完全平面に塗布したと考えたときの換算厚さである。
誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜の製造: ここで、誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜の形成に用いる誘電体フィラー含有樹脂溶液に関して説明する。まず、誘電体フィラー含有樹脂溶液の製造に用いるバインダー樹脂について説明する。本件発明で用いるバインダー樹脂は、エポキシ樹脂、硬化剤、溶剤に可溶な芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、及び、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤からなるものである。
本件発明で用いる「エポキシ樹脂」とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の群から選ばれる一種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
このエポキシ樹脂は、誘電体フィラーを誘電層の形状に成形するためのバインダー樹脂の主体をなすものであり、20重量部〜80重量部の配合割合で用いられる。但し、ここでは、以下に述べる硬化剤を含むものとして考えている。従って、硬化剤を含む状態での当該エポキシ樹脂が20重量部未満の場合には、熱硬化性を十分に発揮せず誘電体フィラーのバインダーとしての機能及び銅箔との密着性を十分に果たし得ず、80重量部を越えるとバインダー樹脂溶液としたときの粘度が高くなりすぎて粉体である誘電体フィラーの均一な分散が困難となるとともに、後に述べる芳香族ポリアミド樹脂ポリマーの添加量とのバランスがとれず、硬化後の十分な靭性が得られなくなる。
そして、エポキシ樹脂の「硬化剤」とは、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン等のアミン類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA等のフェノール類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のノボラック類、無水フタル酸等の酸無水物等である。エポキシ樹脂に対する硬化剤の添加量は、それぞれの当量から自ずと導き出されるものであるため、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。従って、本件発明では、硬化剤の添加量を特に限定していない。
次に、「芳香族ポリアミド樹脂ポリマー」とは、芳香族ポリアミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものである。ここで、芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮重合により合成されるものである。このときの芳香族ジアミンには、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシレンジアミン、3,3’−オキシジアニリン等を用いる。そして、ジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸等を用いるのである。
そして、この芳香族ポリアミド樹脂と反応させるゴム性樹脂とは、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、形成する誘電体層の耐熱性を確保する際には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、芳香族ポリアミド樹脂と反応して共重合体を製造するようになるため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。
芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを構成することとなる芳香族ポリアミド樹脂とゴム性樹脂とは、芳香族ポリアミド樹脂が25wt%〜75wt%、残部ゴム性樹脂という配合で用いることが好ましい。芳香族ポリアミド樹脂が25wt%未満の場合には、ゴム成分の存在比率が大きくなりすぎ耐熱性に劣るものとなり、一方、75wt%を越えると芳香族ポリアミド樹脂の存在比率が大きくなりすぎて、硬化後の誘電体層の硬度が高くなりすぎ、脆くなるのである。
この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーには、まず溶剤に可溶であるという性質が求められる。バインダー樹脂溶液を調整し、ここに誘電体フィラーを分散させ誘電体含有樹脂溶液とするのであるが、このとき誘電体フィラーの含有量がバインダー樹脂の含有量に比べ多いため、誘電体フィラーの粉体間には僅かのバインダー樹脂溶液しか存在しないことになる。そこで、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー成分が溶剤に可溶なものであれば、バインダー樹脂溶液中で効率よく均一に分散し、偏在を防止できるためである。
そして、この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーは、20重量部〜80重量部の配合割合で用いる。芳香族ポリアミド樹脂ポリマーが20重量部未満の場合には、銅張積層板の製造を行う一般的プレス条件で硬化させ形成した誘電体層が脆くなる傾向が出る。一方、80重量部を越えて芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを添加しても特に支障はないが、80重量部迄は、最終的に得られる誘電体層の強度の上昇に寄与するが、80重量部を越えて芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを添加してもそれ以上に誘電体層の強度は向上しないのである。従って、経済性を考慮すれば、80重量部が上限値であると言えるのである。
「必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤」とは、3級アミン、イミダゾール等である。本件発明では、この硬化促進剤の配合割合は、特に限定を設けていない。なぜなら、硬化促進剤は、銅張積層板製造の工程での生産条件性等を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めて良いものであるからである。
誘電体フィラーは、誘電層の中に分散して存在させるものであり、最終的にキャパシタ形状に加工したときのキャパシタの電気容量を増大させるために用いるのであり、キャパシタの要求電気容量を満足させる限り、いかなる材質の誘電体フィラー成分を用いても問題はない。しかしながら、この誘電体フィラーには、BaTiO、SrTiO、Pb(Zr−Ti)O(通称PZT)、PbLaTiO・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBiTa(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いることが現在の技術レベルから好ましいものである。
そして、この誘電体フィラーとしては、粉体としての工業生産精度を考慮すると、ペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の内、チタン酸バリウムを用いることが好ましい。このときの誘電体フィラーには、仮焼したチタン酸バリウム又は未仮焼のチタン酸バリウムのいずれをも用いることが出来る。高い誘電率を得ようとする場合には仮焼したチタン酸バリウムを用いることが好ましい。
また更に、チタン酸バリウムの誘電体フィラーが、立方晶の結晶構造を持つものであることがより好ましい。チタン酸バリウムのもつ結晶構造には、立方晶と正方晶とが存在するが、立方晶の構造を持つチタン酸バリウムの誘電体フィラーの方が、正方晶の構造のみを持つチタン酸バリウムの誘電体フィラーを用いた場合に比べて、最終的に得られる誘電体層の誘電率の値が安定化するのである。従って、少なくとも、立方晶と正方晶との双方の結晶構造を併有したチタン酸バリウム粉を用いることが好ましい。
以上述べてきたバインダー樹脂と誘電体フィラーとを混合して誘電体フィラー含有樹脂組成物とするのである。このときの、バインダー樹脂と誘電体フィラーとの配合割合は、誘電体フィラーの含有率が75wt%〜85wt%、残部バインダー樹脂とすることが望ましい。誘電体フィラーの含有率が75wt%未満の場合には、誘電体としての電気特性が著しく劣化しする。一方、誘電体フィラーの含有率が85wt%を越えると、バインダー樹脂の含有率が15wt%未満となり、誘電体フィラー含有樹脂とそこに張り合わせるコア材との密着性が損なわれ、プリント配線板製造用としての要求特性を満足する銅張積層板の製造が困難となるのである。
高流動性樹脂膜の製造: そして、高流動性樹脂膜を構成する樹脂には、一般的にはエポキシ樹脂を用いることになる。プリント配線板用途において広く用いられているからである。従って、ここで高流動性樹脂膜を構成する樹脂としては、熱硬化性を備えた樹脂であり、且つ、電気、電子材料の分野でプリント配線板に使用可能なものであれば特に限定は要さないのである。この高流動性樹脂膜は、溶剤を用いて液体状にしたものを誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜表面に塗布する方法、又は、半硬化状態の樹脂フィルムをラミネートするように張り付ける方法等により形成される。溶剤を用いて液体状にする場合は、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を配合し、メチルエチルケトン等の溶剤を用いて粘度調整を行い用いることになる。
B.内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造方法
本件発明に係るキャパシタ回路を内蔵するプリント配線板(以下、単に「プリント配線板」と称する。)の製造方法を、図2〜図4を主に用い、図5〜図8を補助的に用いて説明する。なお、本件発明においては、図面を多用して説明を行うが、その図面中でキャパシタ部と層間の回路との電気的導通を確保するためのビアホール等は定法に基づき任意の時点及び形状に形成出来るのである。従って、これらの層間導通手段の記述は省略し、本件発明が技術的思想として明瞭に理解出来るように、ラミネート手順及び誘電層の除去手順を主に説明するものとしている。背景技術で用いた図面も同様である。
本件発明に係る内蔵キャパシタ回路を備える多層プリント配線板の製造方法は、以下の工程A〜工程Eを備える。従って、工程順に説明する事とする。なお、ここで明記しておくが、以下に述べる製造方法は、最も典型的且つ一般的な製造方法を採用しているに過ぎず、以下の技術的思想を含む内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造方法の全てに適用出来るものである。
(工程A)
この工程では、絶縁層の両面に内層回路(キャパシタの下部電極を含む)を備えたコア材の表面に、本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いて、誘電層及び第1導電層を設けるのである。
ここで用いるコア材22は、図2(a)に示すものであり、コア材絶縁層23には、従来から用いられてきたガラス−エポキシ樹脂基材、ガラス−ポリイミド樹脂基材等を用いて構成されるもの等の全てのものを適用出来る。そして、内層回路には、キャパシタ電極の一端面となる電極形状を含むものである。一組のキャパシタ電極の一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶが、本件明細書では、内層回路の表面に形成したキャパシタ電極を下部電極7と称することとする。
下部電極を含む内層回路の形成は、一般的に当該コア材の絶縁層の両面に金属箔が張り合わせられた両面金属張積層板を用い、その両面の金属箔をエッチングすることにより、キャパシタの下部電極7を含む内層回路が形成されるのである。また、スルーホールやビアホールを用いて、内層回路の両面にある内層回路同士の層間導通を確保する場合には、内層回路エッチングする前に、定法に応じての層間導通形成が行われる。
そして、図2(b)に示すように当該コア材の両面に本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を重ね合わせて張り合わせることで、誘電層2及び第1導電層(金属箔)6を形成し、図3(c)に示す状態となるのである。このときの誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔1が、半硬化状態の誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜3と高流動性樹脂膜5との2層構造を備えたものである。
(工程B)
そして、外層に位置する前記第1導電層(=金属箔6)を上部電極8に加工し、上部電極以外の領域の誘電層2を露出させる工程である。この第1導電層6を上部電極に加工するには、第1導電層6にエッチング法を用いるのが一般的である。エッチング法で加工する場合には、エッチングレジストとして使用可能なドライフィルム、液体レジスト等を用いて、第1導電層上にエッチングレジスト層を設け、そのエッチングレジストにレジストパターンを露光、現像し、エッチング液を用いて第1導電層の不要部を溶解除去して、図3(d)に示すように上部電極8を形成するのである。このときの上部電極8は、誘電層2を介して、内層回路に形成した下部電極7に対峙する位置に設けられることになる。
(工程C)
この工程は、必要に応じて行う任意工程である。即ち、通常のプリント配線板製造プロセスを採用すると、図7〜図9から分かるように、誘電層がプリント配線板の全面に渡って存在し、キャパシタ回路以外の電源ライン、信号伝達ラインの下部及び周辺にも誘電層が存在することになる。この誘電層は高誘電率であるため、誘電層の近傍に存在するシグナルラインの信号電送時に誘電損失が大きくなるという問題があった。また、この誘電層に対し、インダクタ等の他の回路素子を埋め込もうとしても不可能な場合が多く、回路設計に一定の制約を受けるのが通常であった。
そこで、キャパシタ回路部以外の領域の露出した誘電層2を除去する誘電層除去工程を必要に応じて設けるのである。このときの誘電層2の除去方法として、2つの方法が考えられる。一つはデスミア処理を用いる方法、もう一方はブラスト処理を用いるのが好ましいのである。
前者のデスミア処理を用いる場合に関して説明する。デスミア処理とは、プリント配線板のスルーホールとなる貫通孔をドリル加工した時等に生じるバリ状の樹脂(スミア)を除去するためのデスミア処理液を用いる処理のことであり、この薬剤は広く市販されているものを使用することが可能である。このデスミア処理液を用いて、回路間ギャップ等に露出した誘電層の有機成分を溶解させ、誘電層除去を行うのである。誘電層は、上述のように有機成分が少なく、当該有機成分は容易にデスミア処理液にて溶解可能である。このデスミア処理を行う場合には、エッチングに用いたレジスト層を予め剥離しておくことが望ましい。そして、図4(e)に示したように不要部分の誘電層が除去できるのである。
後者のブラスト処理とは、ドライブラスト処理及びウエットブラスト処理の双方を意図している。しかしながら、ブラスト処理を行った後の研磨面の仕上がり状況及び回路面の損傷の軽減化を考慮すると、ウエットブラスト処理を採用することが好ましい。このウエットブラスト処理とは、微粒粉体である研磨剤を水に分散させたスラリー状の研磨液を、高速水流として被研磨面に衝突させ、微細領域の研磨をも可能としたものである。このウエットブラスト処理は、ドライな環境で行うブラスト処理に比べて極めて緻密で損傷の少ない研磨が可能という点で特徴を有する。このウエットブラスト処理を用いて、回路間ギャップ等に露出した誘電層を研磨して除去することで、不要な誘電層の除去を行うのである。ブラスト処理では、研磨剤の衝突による回路部の損傷を防止するため、図6に示したプロセスで露出した誘電層の除去を行うことが好ましい。上部電極のエッチングが終了した後、図6(I)に示すようにエッチングレジスト層10を剥離しないまま用いて、ブラスト処理を行い図6(II)に示す状態とする。このようにすれば、エッチングレジスト層10が衝突する研磨剤の緩衝層となり回路の損傷を防止出来るのである。そして、その後レジスト剥離を行うことで、図6(III)(=図4(e))の状態となるのである。
(工程D)
この工程では、露出した誘電層を除去して、深くなった上部電極間ギャップを埋設し、図4(f)に示すように、上部電極の上に絶縁層9及び第2導電層6’を設けるのであり、第2導電層張り合わせ工程と称する。このときの絶縁層及び第2導電層を構成する方法に関しては、特に限定はなく、プリプレグと金属箔とを同時に張り合わせる方法、樹脂層付銅箔を張り合わせる方法等を採用する事が可能である。
(工程E)
この工程では、第2導電層6’をエッチング加工し、ビアホールを形成する等して外層回路10に加工するのである。このときの第2導電層6’のエッチング方法等に関しては、第1導電層6のエッチングと同様であるため、重複した説明を避け、ここでの説明は省略する。また、ビアホール等の形成方法に関しても定法を用いることができる。この外層回路10(ビアホール形成を行った状態として示す)の形成が終了した状態を示すのが、図5(g)であり、プリント配線板25となる。
C.内蔵キャパシタ回路を備える多層プリント配線板
以上の工程を経て、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板25が得られるのである。このプリント配線板は、本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付銅箔を用いて、通常のプリント配線板製造プロセスにより得られた高品質の製品となる。そして、上記工程C.を設けることで、内蔵キャパシタ部以外に誘電層が存在せず、キャパシタ回路部が絶縁層の構成樹脂に包み込まれ、誘電層と絶縁層との密着性の問題が生じることもなく、内層部でのデラミネーションの発生も少なくなる。しかも、この製造方法を採用する限り、誘電層の膜厚均一性が良好で、キャパシタ回路の位置精度も良好なものとなる。以下に、実施例及び比較例とを示すこととする。。
(コア材の製造)
定法に基づいて、50μm厚さのFR−4プリプレグの両面に18μm厚さの電解銅箔を張り合わせ、両面銅張積層板を得た。そして、この両面銅張積層板の両面の銅箔を、整面及び酸洗して清浄化し乾燥させた。その両面の銅箔表面に、ドライフィルムを張り合わせ、エッチングパターンを露光し、現像した。そして、銅エッチング液でエッチングし、下部電極形状を含む内層回路を形成し、アルカリ溶液でレジスト剥離を行い、水洗し、乾燥し、図2(a)に示すコア材とした。このときの内層回路7の高さは25μmであった。
(誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の製造)
まず、樹脂溶液を製造した。この樹脂溶液を製造するにあたり、25重量部のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、25重量部の溶剤に可溶な芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、と溶剤としてのシクロペンタノンとの混合ワニスとして市販されている日本化薬株式会社製のBP3225−50Pを原料として用いた。そして、この混合ワニスに、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂に明和化成株式会社製のMEH−7500及び硬化促進剤として四国化成製の2E4MZを添加して以下に示す配合割合を持つ樹脂混合物とした。
樹脂組成: フェノールノボラック型エポキシ樹脂 39重量部
芳香族ポリアミド樹脂ポリマー 39重量部
ノボラック型フェノール樹脂 22重量部
硬化促進剤 0.1重量部
この樹脂混合物を、更にメチルエチルケトンを用いて樹脂固形分を30重量%に調整ですることで、樹脂溶液とした。そして、この樹脂溶液に、以下に示す粉体特性を持つ誘電体フィラーであるチタン酸バリウム粉(平均一次粒径0.25μm、体積累積粒径(D50)0.5μm)を混合分散させ、誘電体フィラー含有樹脂溶液とした。このときの誘電体フィラー含有樹脂溶液は、バインダー樹脂溶液83.3重量部、チタン酸バリウム粉100重量部の組成とした。
以上のようにして製造したフィラー含有樹脂溶液を、図6(A)に示すようにエッジコーターを用いて、電解銅箔6の張り合わせ面(微細銅粒21による粗化処理の施された面)に所定の厚さの誘電体フィラー含有樹脂膜20を形成するように塗布し、5分間の風乾を行い、その後140℃の加熱雰囲気中で3分間の乾燥処理を行い半硬化状態の20μm厚さの誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜2を形成した。なお、このときに用いた電解銅箔は、35μm厚のものであり、張り合わせ面の平均粗さが2.1μmであった。
ここでは、樹脂成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、東都化成社製)30重量部、o−クレゾール型エポキシ樹脂(商品名:ESCN−195XL80、住友化学社製)50重量部、エポキシ樹脂硬化剤として固形分25%のジメチルホルムアルデヒド溶液の形でジシアンジアミド(ジシアンジアミドとして4重量部)を16重量部、硬化促進剤として2−エチル4−メチルイミダゾール(商品名:キャゾール2E4MZ、四国化成社製)を0.1重量部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアルデヒドとの混合溶剤(混合比:メチルエチルケトン/ジメチルホルムアルデヒド=4/6)に溶解して固形分60%としたエポキシ樹脂組成物としたものである。そして、このエポキシ樹脂組成物を一旦半硬化状態とし、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローは10%であった。
このエポキシ樹脂組成物を、誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜2の上に、所定厚さ均一に塗布して、室温で30分間放置して、熱風乾燥機を用いて150℃の温風を2分間衝風することで、一定量の溶剤を除去し、半硬化状態に乾燥させた。このときのエポキシ樹脂組成物の塗布量は、乾燥後の樹脂厚として15μm(1.20×{25×(100−50)/100}として算出した厚さ)となるようにした。
(工程A)
この工程では、上記コア材及び誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いて、コア材の両面に誘電層及び第1導電層を設けた。ここで、コア材の両面に、誘電層及び第1導電層を設けるため、図2(b)に示すように、当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔1の誘電体層2を内層回路面に当接させ、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形し、誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔1をコア材2に張り合わせ、図3(c)に示す状態とした。このプレス加工後の高流動性樹脂層は、十分なレジンフローを有しているためプレス加工により、1μm以下の厚さとなっていた。
(工程B)
この上部電極形成工程では、図3(c)に示す第1導電層6を上部電極(キャパシタの上部電極を含む)に加工し、回路部以外の領域の誘電層を露出させた。そのため、当該第1導電層6の表面に、エッチングレジストとしてドライフィルムをラミネートしエッチングレジスト層とし、そのエッチングレジスト層にレジストパターンを露光、現像し、エッチング液を用いて第1導電層6の不要部を溶解除去し、レジスト剥離を行い、図3(d)に示すように上部電極を形成した。このときの上部電極には、キャパシタの上部電極8となる回路形状が含まれており、上部電極は、誘電層2を介して、内層に形成した下部電極7と対象の形状及び位置となるようにした。
(工程C)
この誘電層除去工程では、回路部以外の領域の露出した誘電層の除去を行い、図4(e)に示す状態とした。このときの誘電層の除去方法は、図6に示したプロセスに従い、ウエットブラスト処理を用いた。このウエットブラスト処理は、中心粒径が14μmの微粒粉体であるアルミナ研磨剤を水に分散させたスラリー状の研磨液(研磨剤濃度14vol%)を、0.20MPaの水圧で長さ90mm、幅2mmのスリットノズルから高速水流として被研磨面に衝突させ、不要な誘電層の研磨除去を行ったのである。このウエットブラスト処理が終了すると、エッチングレジストの剥離を行い、水洗し、乾燥し、図2(d)と同様の状態となるのである。
(工程D)
この第2導電層張り合わせ工程では、露出した誘電層を除去して、深くなった回路間ギャップを埋設し、図4(f)に示すように、上部電極8の上に絶縁層9及び第2導電層6’を設けた。このときの絶縁層9及び第2導電層を構成する方法は、100μm厚さのプリプレグ(図面中では、骨格材の記述を省略している)を上部電極上に重ね、更にその上に電解銅箔を重ね合わせて、180℃×60分の加熱条件下で熱間プレス成形することにより行った。
(工程E)
この外層回路形成工程では、第2導電層6’をエッチング加工し、ビアホール形成等して、外層回路10に加工した。このときの第2導電層6’のエッチング方法及びビアホール形成等に関しては、第1導電層6のエッチングと同様であるため、重複した説明を避けるため、ここでの説明は省略する。以上のようにして、図5(g)に示す如き内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板25を製造したのである。
そして、この実施例で得られた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板25を260℃の半田バス中に60秒間浸漬ける試験を行い、層間剥離が生じるか否かを確認した。その結果、内層での剥離を示唆するミーズリング現象及びデラミネーション現象は発生していなかった。
比較例
この比較例では、実施例1の誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜2の上に設ける高流動性樹脂膜3の形成を省略した点が実施例1と異なるのみであり、最終的に図9(e)に示す、内蔵キャパシタ回路を備えたプリント配線板を得た。
そして、実施例1と同様に得られた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板を260℃の半田バス中に60秒間浸漬ける試験を行い、層間剥離が生じるか否かを確認した。その結果、内層での剥離を示唆するデラミネーション現象の発生がブリスター状に複数箇所で認められた。
本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いることで、通常のプリント配線板製造プロセスを用いての内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板の製造が容易に行えるようになる。従って、通常のプリント配線板製造ラインを、そのまま使用することが可能であり、余分な設備投資が不要となる。しかも、そのプリント配線板製造ラインに、内蔵キャパシタ回路を製造した同一平面内の不必要な部位の誘電層を除去する工程を設けることも可能で、信号回路のシグナル信号電送時の誘電損失は小さく、インダクタ等の他の回路素子を埋設配置することの出来る配線板を効率よく得ることが出来るようになる。よって、本件発明に係る誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いて得られた内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板は、極めて高品質のものとなる。
誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔の製造フローを表す模式断面図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 ブラスト処理を用いる場合の誘電層の除去方法手順を示した模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。 キャパシタ回路を内蔵する多層プリント配線板の製造フローを表す模式図。
符号の説明
1 誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔
内蔵キャパシタ回路を備える多層プリント配線板
2 誘電層
3 誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜
4 誘電体フィラー(粒子)
5 高流動性樹脂膜
6 金属箔(第1導電層)
7 下部電極(内層回路)
8 上部電極
9 絶縁層
10 外層回路
20 誘電体フィラー含有樹脂溶液膜
21 微細銅粒(粗化処理)
22 コア材
23 コア材絶縁層
24 エッチングレジスト層
25 プリント配線板

Claims (4)

  1. 下部電極等の内層回路を形成した基板に張り合わせて用いる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板製造用の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔であって、 当該誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔は、導電層の片面に前記誘電体フィラー含有樹脂層を備え、当該誘電体フィラー含有樹脂層は前記導電層と接する誘電体フィラー含有半硬化樹脂膜と当該フィラー含有半硬化樹脂膜の上に設ける高流動性樹脂膜の2層構造を備えることを特徴とした誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔。
  2. 高流動性樹脂膜は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%〜25%である請求項1に記載の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔。
  3. 高流動性樹脂膜の厚さは、下部電極等の内層回路の高さ(Tμm)、基板の下部電極等の内層回路の存在面の残銅率(R%)としたとき、1.15×{T×(100−R)/100}(μm)〜1.30×{T×(100−R)/100}(μm)である請求項1又は請求項2に記載の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の誘電体フィラー含有樹脂層付金属箔を用いて得られる内蔵キャパシタ回路を備えるプリント配線板。
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