JP4075214B2 - 積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法および製造装置 - Google Patents

積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサーの電極に用いられるニッケル粉末の製造方法および製造装置に関する。なお、本明細書では、積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末を「粉末」という。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサーは、内部が誘電体と内部電極とが交互に積み重なった積層体からなり、端部に外部電極と呼ばれる電極を取り付けた構造となっている。ここで、誘電体の素材は、一般に、チタン酸バリウムや、鉛を含むペロブスカイト型酸化物が用いられる。
【0003】
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして作製する。
【0004】
(1)粉末化した誘電体をドクターブレード法によりシート状に形成する。
【0005】
(2)シート状誘電体(誘電体シートと一般に呼ばれる)の表面に内部電極用ニッケルペーストをスクリーン印刷法にて転写し、乾燥する。
【0006】
(3)乾燥したシート状部材を所定枚数重ね、圧縮し圧着する。
【0007】
(4)圧着した積層体を電気炉(ベルト炉を一般に用いる)に装入し、1300℃程度の温度で焼成して有機ビヒクルを燃焼・熱分解させ(脱バインダと一般に呼ばれる)、引き続き誘電体やニッケルペースト中の粉末を焼結させる。
【0008】
(5)焼結体の両端を磨き、電極を露出させた後、外部電極用ニッケルペーストにその磨かれた端面を浸し、乾燥する。
【0009】
(6)乾燥した焼結体を再び電気炉に装入し、900℃程度で焼成して有機ビヒクルの燃焼と電極の焼結とを連続して行う(外部電極の形成)。
【0010】
(7)(6)で得られた焼結体は、外部電極に半田をのせ易くするため、外部電極表面にニッケルめっきなどを施し、積層セラミックコンデンサーを完成する。
【0011】
なお、上記方法における内部電極用および外部電極用ニッケルペーストは、一般に、粉末、有機ビヒクル、希釈溶剤などから構成され、有機ビヒクルに粉末をロールミルなどで混練し希釈溶剤を加えることにより製造される。
【0012】
上記積層セラミックコンデンサーに用いられる粉末には種々の特性が要求されている。特に重要とされる特性としては、粒子結晶性、分散性、充填性、平均粒径および粒度分布である(粒子結晶性を以下「結晶性」という)。結晶性、分散性、充填性はいずれも、高い方が優れる。これらについて、以下、(1)〜(5)で詳しく述べる。
【0013】
(1)結晶性
粉末の結晶性が重視されるのは、焼成時における粉末の焼結挙動に結晶性が大きく影響するためである。結晶性の低い粉末は、脱バインダのために雰囲気に少量加える酸素によって酸化し易い。酸化した粉末は、焼結性が極端に悪化するので、焼結が満足に進まず、従って電極として機能せず目的とする静電容量が得られない。また、酸化が生じない条件で脱バインダしても、結晶性の低い粉末は、高い焼結性のために過焼結となって島状に孤立してしまい、従って電極として機能せず目的とする静電容量が得られない。
【0014】
(2)分散性
分散性の悪い粉末は、3本ロールミルなどによって混練しペースト化しても、凝集状態のままで存在する場合が多い。そのため、焼成後の電極表面に突起となってしまう場合が多い。このような突起があると、積層セラミックコンデンサーとしての耐電圧特性を大きく劣化させてしまう。
【0015】
(3)充填性
充填性が重視されるのは、内部電極の膜形成性に大きく影響するためである。充填性の低い粉末を内部電極に用いた場合には、内部電極印刷後の乾燥膜中に空隙が多数残留してしまう。このような乾燥膜を焼成すると、内部電極膜中に空隙が多数残留する。そのため、設計した電極面積が得られず、目的とする静電容量が得られない。
【0016】
(4)平均粒径
(a)内部電極の薄膜化と平均粒径
積層セラミックコンデンサー用電極に使用される粉末の平均粒径は、一般に0.1〜1.0μmである。しかるに近年は、積層セラミックコンデンサーの小型化、高容量化を達成することを目的として、内部電極膜厚は1.5〜0.8μm程度と薄膜化されてきているために、平均粒径が0.1〜0.6μm程度の粉末が特に使用されている。
【0017】
平均粒径が0.1μm未満では、デラミネーションやクラックなどの内部構造欠陥が発生しやすくなったり、積層セラミックコンデンサーの耐電圧特性を大きく劣化させたりする。一方、平均粒径が上記上限を超えると、内部電極膜厚より大きい粒径の粒子が含まれるために内部電極膜が薄膜化できないばかりでなく、設計した電極面積が得られ難くなる。
【0018】
従って、粉末は、平均粒径が0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.6μmのものが用いられる。
【0019】
(b)誘電体層の収縮挙動と平均粒径
積層セラミックコンデンサーに用いる誘電体層および内部電極層の焼成時における収縮挙動は、それらの組成、焼成雰囲気などによって変わる場合が多い。内部電極と誘電体層との収縮挙動にミスマッチが大きいと、焼成途中において素体内部に応力が発生し、内部構造欠陥が発生してしまう場合がある。そのため、内部電極層の収縮挙動を誘電体層の収縮挙動に適応させる必要がある。しかるに、内部電極層の収縮挙動は、使用する粉末の平均粒径によって変化する。従って、粉末は、誘電体層の収縮挙動に適応する平均粒径をもつものを用いることが必要となる。
【0020】
(5)粒度分布
(a)耐電圧特性と粒度分布
粒度分布が広すぎる(粒度分布幅が大きすぎる)と、主な粉末粒子と比べて異常に粒径の大きい粒子(以下、粗大粒子といい、前記内部電極膜厚より大きい粒径の粒子も粗大粒子に含まれる)が粉末に混入している。粗大粒子は、焼成後の電極面上に突起として残り、積層セラミックコンデンサーの耐電圧特性が大きく劣化してしまう。従って、粉末は、粒度分布が広すぎないものを用いることが必要である。
【0021】
(b)誘電体層の収縮挙動と粒度分布
焼成時の内部電極層収縮挙動は、使用する粉末の粒度分布によっても変化する。従って、粉末は、誘電体層の収縮挙動に適応する粒度分布をもつものを用いることが必要となる。
【0022】
粉末の製造方法としては、例えば特開平4―365806号公報および特開平10−219313号公報に記載の気相化学反応法や、特開平10−102108号公報に記載の噴霧熱分解反応法が提案されている。これらの製造方法によれば、高い結晶性、分散性および充填性を有する粉末が得られる。
【0023】
(1)特開平4―365806号公報に記載の方法
この方法は、塩化ニッケル蒸気と該塩化ニッケル蒸気のキャリアガスとを混合して、塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する第1工程、該混合ガスを1453℃未満で水素還元してニッケル粒子を生成させる第2工程、および該ニッケル粒子を回収する第3工程からなる。
【0024】
しかしながら、この方法は、次の(a)、(b)の問題点を有していた。
【0025】
(a)誘電体層の収縮挙動に適応する粒度分布、つまり所望の粒度分布をもつ粉末を製造することが全くできなかった。
【0026】
(b)水素還元により生成した粉末に前記粗大粒子が多く含まれて、粒度分布が広がりすぎるとともに見かけの平均粒径が大きくなるので、該粗大粒子を分離除去する(例えば分級する)必要がさらに生じる。また、粗大粒子を生成するのにも水素ガスが消費されるので、水素ガスの反応効率が悪い。従って、粉末の生産性が低かった。
【0027】
粉末の生産性を上げるために、一般に、(a)大型の装置を用いる、(b)塩化ニッケル蒸気分圧を大きくする、(c)キャリアガス供給速度を増加させることにより生産速度を増加させるという方法が考えられる。しかし、(a)および(c)の方法では、所望の粒度分布をもつ粉末が相変わらず全く製造し難いばかりでなく、粉末の生産性がさらに悪くなった。また、(b)の方法では、塩化ニッケル蒸気分圧を0.3より大きくできない。
【0028】
(2)特開平10−219313号公報に記載の方法
固体ニッケルと塩素ガスとを接触させ塩化ニッケル蒸気を生成させ、塩素ガス、キャリアガスとともに反応部へ流入させ、次いで、反応部で水素ガスと反応を行わせて粉末を生成させる。
【0029】
しかしながら、この方法は、次の(a)、(b)の問題点を有している。
【0030】
(a)反応部において粉末を生成させるために、塩化ニッケル蒸気と塩素ガスとの混合気体中に水素ガスを混合する。このとき、水素ガスと塩素ガスとの混合により生じた水素・塩素混合ガスは爆発性を示す。この混合ガスの爆発限界値は、水素容量で5.8〜88.5%と非常に広く、従って反応中においては常に爆発の危険を伴っている。
【0031】
(b)反応部に供給している水素ガスは、塩化ニッケル蒸気との反応に消費されるのみならず、塩素ガスと反応して塩酸を生成するという反応にも消費されるので、塩化ニッケル蒸気との反応に必要とされる量よりも過剰に供給する必要がある(水素ガスの反応効率が悪い)。
【0032】
(3)特開平10−102108号公報に記載の方法
ニッケル塩を含む溶液を噴霧して液滴にし、ニッケル塩の分解温度よりも高い温度まで該液滴を加熱してニッケル塩を熱分解することにより、粉末を生成させる。しかし、この方法では、次の(a)〜(c)の問題点を有している。
【0033】
(a)生成する粉末の粒度は、噴霧によって生成する液滴粒子の粒度に大きく影響を受ける。従って、生成する粉末の粒度をコントロールするためには、液滴の粒度をコントロールする必要がある。しかし、液滴を生成させる方法、例えばスプレーノズルや超音波などを用いる方法では、液滴の粒度をコントロールすることが非常に難しい。
【0034】
(b)熱分解中においては、ニッケル塩の熱分解が高い温度となっている液滴表面からおこって、粒子状のニッケル殻が形成される。そのため、ニッケル殻の中央部には蒸散しきれなかった水分などが閉じこめられてしまう。内部に取り残された水分は、熱分解か進行すると、上記ニッケル殻をうち破って蒸散する場合があり、その結果、表面に穴が開いたり、内部が空洞となったりした粒子が生成してしまう。このような粒子からなる粉末を積層セラミックコンデンサー用電極に用いた場合、焼成途中においての焼結による収縮量が大きくなるために、内部応力が発生して内部構造欠陥が発生してしまう。
【0035】
(c)生産性を向上させるために液滴粒子濃度を増加させると、生成した粒子同士の融着などが生じ、粉末の分散性を極端に悪化させてしまう。従って生産性を向上させることが非常に難しい。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、結晶性・分散性・充填性の高い粉末が安全に(爆発の危険がなく)得られる上記気相化学反応法による製造方法を改良し、0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.6μmの範囲以内の所望の平均粒径および広すぎない所望の粒度分布をもつ粉末を良好な生産性で製造する方法、およびその装置を提供することを課題とする。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、次の(1)〜(6)の事項を見いだし、本発明に到達した。
【0038】
(1)生産性を悪くする粗大粒子は、塩化ニッケル蒸気が水素ガスと反応して生成するニッケル粒子より粒径が異常に大きい。よって、固体粒子が反応部へ流入し、反応部で水素ガスと反応してニッケルとなったものなどであると推察される。この固体粒子には、(a)塩化ニッケル蒸気が低い温度のアルゴンガスと接触し冷却されて再固化した固体塩化ニッケル粒子、(b)蒸発する前にアルゴンガスによって飛散した固体塩化ニッケル粒子、(c)上記(b)の固体塩化ニッケル粒子中の酸化ニッケル粒子(後述)などが挙げられる。
【0039】
(2)アルゴンガスを加熱することにより、(a)粗大粒子の量を著しく減少させることができる、(b)アルゴンガスの供給速度を増加させて、生産速度を増加させることができる。従って、粒度分布の広すぎない粉末を著しく生産性を向上させて製造することができる。
【0040】
(3)アルゴンガスの加熱温度を上げるほど、平均粒径が小さく、粒度分布が狭い粉末を得ることができる。
【0041】
(4)塩化ニッケル蒸気分圧が大きくなるほど、塩化ニッケル蒸気から生成するニッケル粒子の粒径は大きくなるので、アルゴンガスの加熱温度を上げることにより、塩化ニッケル蒸気分圧を従来より上げて、つまり生産性を従来より向上させて、従来と同様の平均粒径をもつ粉末を製造することができる。
【0042】
(5)アルゴンガスの加熱温度および塩化ニッケル蒸気分圧を適宜変化させることにより、所望の平均粒径および粒度分布をもつ粉末を得ることができる。
【0043】
(6)反応を継続的に行っていると、生成した粉末が水素ガスの供給管に付着し、該供給管内部を塞いでいくことが生産性を低下させる原因の一つになっている。
【0044】
すなわち、本発明の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法は、塩化ニッケル蒸気と該塩化ニッケル蒸気のキャリアガスとを混合して、塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製するA工程、該混合ガスを1453℃未満で水素還元してニッケル粒子を生成させるB工程、および該ニッケル粒子を回収するC工程からなるニッケル粉末の製造方法において、(1)200〜1400℃に加熱した不活性ガスを該キャリアガスとし、該混合ガスの塩化ニッケル蒸気分圧を0.35〜0.90とした該A工程を第1工程とし、(2)該第1工程における該混合ガスに含まれる固体粒子を該混合ガスから開口径が40〜150μmの濾過器を用いて分離除去する工程を第2工程とし、(3)該第2工程から受けた分離除去ガスを該B工程における混合ガスとし、水素還元温度を800℃以上とした該B工程を第3工程とし、および(4)該C工程を第4工程とすることを特徴とする。
【0045】
さらに、濾過器の開口径が50〜100μmであることが好ましい。また、不活性ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスであることが好ましい
【0046】
さらに、第1工程におけるキャリアガスが200〜1300℃に加熱されるか、あるいは、第1工程におけるキャリアガスが800℃以上に加熱されることが好ましい。また、第1工程における混合ガスの塩化ニッケル蒸気分圧が0.35〜0.60であることが好ましい
【0047】
さらに、水素還元温度が900〜1250℃であることが好ましい。また、水素還元のために水素ガスを供給する供給管が、200℃以下に冷却されるか、あるいは、100℃以下に冷却されることが好ましい。また、水素還元のために供給する水素ガス量は、塩化ニッケルを還元する化学量論量の1.0〜3.0倍であることが好ましい。また、水素ガス量は、塩化ニッケルを還元する化学量論量の1.5〜2.5倍であることが好ましい。また、水素還元してニッケル粒子を生成させ、次に該ニッケル粒子を含むガスを冷却した後、該ニッケル粒子を回収することが好ましい
【0050】
あるいは、(1)塩化ニッケル蒸気のキャリアである不活性ガスを加熱する温度制御可能な加熱器を有する加熱部と、(2)固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器を有する蒸発部と、(3)該加熱キャリアガスを導入する導入管を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する混合部と、(4)該混合部から受けた該混合ガスから、含まれる固体粒子を開口径が40〜150μmの濾過器を用いて捕捉して分離除去する固気分離器を有する捕捉部と、(5)該捕捉部から受けた該分離除去ガスを水素還元してニッケル粒子を生成させるための水素ガスを供給する供給管、および該水素還元の反応温度に加熱する温度制御可能な加熱器を有する反応部と、(6)該水素還元後のガスから該ニッケル粒子を分離回収する固気分離器を有する回収部とからなる。
【0051】
あるいは、(1)塩化ニッケル蒸気のキャリアである不活性ガスを加熱する温度制御可能な加熱器を有する加熱部と、(2)該加熱キャリアガスを導入する導入管、および固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する蒸発・混合部と、(3)該蒸発・混合部から受けた該混合ガスから、含まれる固体粒子を開口径が40〜150μmの濾過器を用いて捕捉して分離除去する固気分離器を有する捕捉部と、(4)該捕捉部から受けた該分離除去ガスを水素還元してニッケル粒子を生成させるための水素ガスを供給する供給管、および該水素還元の反応温度に加熱する温度制御可能な加熱器を有する反応部と、(5)該水素還元後のガスから該ニッケル粒子を分離回収する固気分離器を有する回収部とからなる。蒸発・混合部は、蒸発部および混合部を兼ね、蒸発部および混合部に代えて設けられる。すなわち、蒸発・混合部は、加熱キャリアガスを導入する導入管、および固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する
【0052】
さらに、不活性ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスであることが好ましい。また、捕捉部の固気分離器は、50〜100μmの開口径をもつ濾過器であることが好ましい。また、水素還元後のガスを冷却し、回収部に送る冷却部を有することが好ましい。
【0053】
【発明の実施の形態】
(1)粉末の製造方法
(a)不活性ガスの使用
窒素やアルゴンなどの水素ガスと反応性を持たない不活性ガスを、塩化ニッケルのキャリアガスに用いる。そのため、水素ガスと混ざって爆発する危険性がない。
【0054】
(b)キャリアガスの加熱
100〜1400℃、好ましくは200〜1300℃、より好ましくは800℃以上の温度に加熱したキャリアガスを塩化ニッケル蒸気と混合する。キャリアガスの加熱温度が増大するほど、平均粒径が小さく、かつ粒度分布が狭い粉末が得られる。従って、所望の平均粒径または粒度分布をもつ粉末を得ることができる、言い換えれば、平均粒径または粒度分布のコントロール性よく粉末を得ることができる。その理由は次の(i)〜(iii)のように推察される。
【0055】
(i)キャリアガスを加熱することにより、前記固体粒子のうちの再固化固体塩化ニッケル粒子の粒径を小さくできる(粒径の小さくなった再固化固体塩化ニッケル粒子を、以下「固体微粒子」という)。
【0056】
(ii)キャリアガスの加熱温度が増大するほど、固体微粒子の生成量および粒径が減少する。
【0057】
(iii)固体微粒子を水素還元して得られる粉末は、微粒子化しているものの、塩化ニッケル蒸気から生成した粉末より粒径が比較的大きい。
【0058】
また、上記のように加熱したキャリアガスを用いることにより、生産性が格段に向上する。その理由は次の(i)〜(iv)の通りである。
【0059】
(i)粗大粒子の量を著しく減少させることができる。
【0060】
(ii)粗大粒子を生成するのに消費されていた水素ガスの反応効率が上がる。
【0061】
(iii)所望の平均粒径の粉末を得るために、キャリアガスを加熱しない場合に比べてより高い塩化ニッケル蒸気分圧領域で反応させることができる。何故なら、(イ)塩化ニッケル蒸気分圧が増大するほど、粉末の平均粒径は大きくなる、(ロ)キャリアガスの加熱温度が増大するほど、平均粒径が小さい粉末が得られるからである。
【0062】
(iv)キャリアガス供給速度を増加させることにより生産速度を増加させることができる。何故なら、キャリアガスを加熱しない場合と違って、キャリアガス自体が既に所望の温度に加熱されていて、平均粒径または粒度分布のコントロール性が失われないからである。なお、特開平4―365806号公報に記載の方法において粉末の生産性を上げるために、(イ)大型の装置を用いる、(ロ)キャリアガス供給速度を増加させることにより生産速度を増加させようとすると、前述したように粉末の生産性がさらに悪くなったのは、炉壁から遠い部分のキャリアガスほどその温度が上がりづらくなるからである。
【0063】
キャリアガスを特に800℃以上に加熱した場合には、次のような顕著な効果をもたらす。すなわち、反応部で加熱を行わなくてもその温度が維持でき、もしくは上昇する。このことにより、炉体に与えるエネルギーが少なくてすみ、大幅なコストダウンを行うことが可能となる。これは、塩化ニッケルと水素ガスとの反応が発熱反応であるからである。
【0064】
キャリアガス温度が100℃未満では、上記キャリアガス加熱による作用効果が充分に得られない。一方、キャリアガス温度が1400℃を超えると、キャリアガスを加熱するために供給するエネルギーがより多く必要となり、経済的に不利となる。
【0065】
(c)塩化ニッケル蒸気分圧
平均粒径が0.1〜1.0μmの粉末を生成させるために、塩化ニッケル蒸気分圧は、全圧を1.0としたときに、0.35〜0.90とする。とりわけ0.1〜0.6μm程度といった小粒径の粉末を得るためには、全圧を0.35〜0.60とする。塩化ニッケル蒸気分圧が0.35未満では生産性が約1/2以下に低下する。一方、0.90を超えると、平均粒径が過大になりやすくなる。
【0066】
塩化ニッケル蒸気分圧の調整は、供給するキャリアガス量や塩化ニッケル原料量、および塩化ニッケルを蒸発させる温度などによって行うことができる。
【0067】
塩化ニッケル蒸気分圧が増大するほど、粉末の平均粒径は増大する。従って、所望の平均粒径をもつ粉末を得ることができる。
【0068】
(d)固体粒子の捕捉
調製した塩化ニッケル・キャリア混合ガスに含まれる固体粒子を捕捉することにより、工程が簡略できるとともに、水素ガス反応効率が上がって、一層生産性が向上する。固体粒子の主なものは、前述したように(i)蒸発する前にキャリアガスによって飛散した固体塩化ニッケル粒子、(ii)該(i)の固体塩化ニッケル粒子中の酸化ニッケル粒子などである。なお、再固化固体塩化ニッケル粒子は、上記(b)で述べたように有効に利用される。
【0069】
固体粒子に酸化ニッケル粒子が含まれる理由を次に述べる。すなわち、原料である固体塩化ニッケルは、その性質として吸湿性が非常に大きい。そのためハンドリング途中などで水分を吸収し、蒸発させるための加熱時において、塩化ニッケルと吸湿した水分との加水分解反応が生じ、酸化ニッケル粒子が生成してしまう。
【0070】
固体粒子を捕捉するために、金属メッシュや、セラミックなどによって構成される多孔質薄壁材、ハニカムフィルターなどの濾過器を用いることができる。材質には特に制限がないがコンタミネーションや耐熱性などの点を考慮すると、生成させる粉末と同一材質のニッケルが望ましい。濾過器の開口径は40〜150μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。開口径が小さすぎる場合、圧力損失が大きくなってしまい、大きすぎる場合には固体粒子の捕捉能力が大きく低下してしまう。
【0071】
固体粒子を捕捉することにより、工程が簡略化できるとともに、水素ガス反応効率が上がる理由は次の通りである。すなわち、固体粒子はその粒径が10〜50μm程度と非常に大きい。このような固体粒子が反応部に侵入すると、水素と反応して、塩化ニッケル蒸気と水素との反応によって生成する粒子よりも粒径が3〜5μm程度の非常に大きい粗大粒子となる。そのため反応後回収される粉末の平均粒径は非常に大きく、また粒度分布は非常に広くなってしまう。このような粉末から粗大粒子を分離除去しようとすると、そのための工程が必要になる。また、粗大粒子を生成させるに要した水素ガスが無駄になって、水素ガス反応効率が低下する。
【0072】
(e)供給管の冷却
水素ガスを供給する供給管を、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下に冷却すると、長時間におよぶ粉末の製造を実現でき、生産性について著しい改善効果を確保できる。
【0073】
その理由は次の通りである。すなわち、供給管は生成した粉末へのコンタミネーションを抑制するために、粉末と同一材質のニッケルとする場合が多く、そのため粉末は供給管に付着しやすい状態にある。供給管を冷却しないで反応を継続的に行っていると、生成した粉末が該供給管に付着する。供給管に最初に付着した粉末を基体としてその上に粉末がさらに接触・付着する。粉末生成反応温度では粉末の焼結性は著しく大きくなるために粉末の焼結が進行し、該供給管内部を塞いでいくと考えられる。最悪の場合、供給管内をすべて閉塞させてしまって、粉末の生成反応をそれ以上続けることができなくなるばかりでなく、反応部内圧が上昇し、反応部ひいては装置の破壊という事態を招いてしまう場合もある。これに対して、供給管の表面を上記温度以下に冷却しておくと、粉末は該供給管に接触しても焼結性が著しく低く抑えられるため、該供給管とほとんど焼結しない。そればかりでなく、ガスの流れや重力の働きにより供給管から剥がれやすくなる。水素ガス供給管の温度が200℃を超えると、生成した粉末の付着抑制効果が非常に乏しくなる。
【0074】
(f)水素ガス供給量
供給する水素ガスは、キャリアガスが不活性であるので、キャリアガスと反応せず、そのため良好な反応効率で水素ガスを使うことができる。
【0075】
特に、混合ガスに含まれる固体粒子を捕捉して該混合ガスから分離除去すると、水素ガスは該固体粒子とも反応せず、そのため塩化ニッケル蒸気と固体微粒子との反応に必要な量だけ供給すればよい。言い換えれば、一層良好な反応効率で水素ガスを使うことができる。
【0076】
水素ガス供給量は、塩化ニッケルを還元する化学量論量の1.0〜3.0倍が好ましく、1.5〜2.5倍がより好ましい。水素ガスを過剰に供給すると、反応部内にて大きな水素の流れをもたらし、塩化ニッケル蒸気との混合が不均一となって生成する粉末の、とりわけ粒度分布を悪化させる。また、消費されない水素を供給することとなるので不経済である。供給する水素ガス量が上記化学量論量よりも少ない場合には、塩化ニッケルと水素ガスとの化学反応が十分に行われず、粉末の収率や純度が悪化する。
【0077】
(g)反応温度
反応温度としては、塩化ニッケル蒸気が反応部で再固化して固体塩化ニッケルになることのない温度が必要であり、かつ反応完結に十分な温度であればよい。本発明者の実験によれば、反応部の温度は800℃以上、1453℃(ニッケルの融点)未満が必要となる。反応部を加熱する加熱炉および反応部部材などの耐久性、経済性、また加熱に要するエネルギーコストなどの経済性を考慮すると、900〜1250℃程度がより好ましい。
【0078】
800℃よりも低い場合には、塩化ニッケルの再固化が生じてしまう。また塩化ニッケルと水素ガスとの化学反応が十分に行われず、反応効率が悪化し、生産性が悪くなるという問題を生ずる。一方、反応部の温度が1453℃以上では、生成した粉末が液滴で存在し、異常に粒成長した粒子が発生したり、反応部内壁に付着する粉末量が増大したりして、粉末の収率が悪化してしまう。
【0079】
(h)上記本発明方法により、(i)高い結晶性・分散性・充填性、(ii)0.1〜1.0μm、特に0.1〜0.6μmの範囲以内の所望の平均粒径、(iii)広すぎない所望の粒度分布、および(iv)球状の粒子形状をもつ粉末を、安全に(爆発の危険がなく)、良好な生産性で製造することができる。
【0080】
(2)粉末の製造装置
図1は本発明の積層セラミックコンデンサー用粉末の製造装置の一実施例の模式図である。
【0081】
図1の製造装置は、(a)塩化ニッケル蒸気のキャリアである不活性ガスを加熱する温度制御可能な加熱器11を有する加熱部10と、(b)収容器21に収容された固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器22を有する蒸発部20と、(c)該加熱キャリアガスを導入する導入管31を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する混合部30と、(d)混合部30から受けた該混合ガスから、含まれる固体粒子を捕捉して分離除去する濾過器41を有する捕捉部40と、(e)捕捉部40から受けた該分離除去ガスを水素還元するための水素ガスを供給するとともに、自身が冷却される冷却ジャケット51aをもつ供給管51、および該水素還元の反応温度に加熱する温度制御可能な加熱器52を有する反応部50と、(f)反応部50のガスを冷却する冷却部60と、(g)冷却部60で冷却したガスから該ニッケル粒子を分離回収する固気分離器71を有する回収部70とからなる。
【0082】
次に、図1の製造装置の動作を説明する。
【0083】
加熱部10の加熱器11によってキャリアガスを所望温度まで加熱する。なお、キャリアガスの温度を熱電対12で測定する。
【0084】
蒸発部20の収容器21に原料である固体塩化ニッケルを入れ、目的とする温度まで収容器21内を加熱し塩化ニッケル蒸気を発生させる。なお、収容器21内の温度を熱電対23で測定する。一方、加熱部10の加熱器11によって加熱されたキャリアガスを混合部30の導入管31から混合部30に導入し、塩化ニッケル蒸気と混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する。
【0085】
上記混合ガスは、捕捉部40の濾過器41を通過する。この際、濾過器41は、含まれる固体粒子を捕捉して上記混合ガスから分離除去する。
【0086】
上記分離除去ガスを反応部50に導入するとともに、冷却ジャケット51aにより200℃以下に冷却された供給管51より水素ガスを供給する。反応部50は加熱器52により所望温度に加熱されているので、上記分離除去ガス中の塩化ニッケル蒸気および固体微粒子と水素ガスとが混合、接触し化学反応を起こして粉末が生成する。なお、反応部50内の温度を熱電対53で、供給管51の温度を熱電対54で測定する。
【0087】
生成した粉末を含む反応部50のガスは冷却部60を経て、回収部70に送られ、円筒濾紙などの固気分離器71によって粉末とガスとの固気分離を行い、粉末を回収する。
【0088】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をより詳しく説明する。
【0089】
和光純薬(株)製NiCl2 ・6H2 Oを180℃において72時間乾燥させ結晶水を除いたものを原料に用いた。また、製造装置は図1のもので、詳細は次の通りである。
【0090】
(1)加熱部10
加熱部10は、混合部30より手前に配し、保温された配管によって混合部30の導入管31に接続されている。熱電対12によってキャリアガス加熱温度をモニタリングした。
【0091】
(2)蒸発部20および混合部30
蒸発部20および混合部30は、直径30cm、高さ1mの空洞円柱の構造をなしている。熱電対23によって塩化ニッケル蒸気温度をモニタリングした。
【0092】
(3)捕捉部40
濾過器41にニッケルメッシュを用いた。
【0093】
(4)反応部50
反応部50は、蒸発部20および混合部30の円柱側面の中央に、直径10cm、長さ2mの空洞円柱をつなぎあわせた構造をなしている。熱電対53によって反応温度をモニタリングした。
【0094】
供給管51は、材質がニッケルで、外径24mm・内径8mmのものを用いた。これが、直径8mmの吹き出し口となって水素ガスを供給する構造となっている。冷却ジャケット51aを通す冷却剤には水を用いた。ただし、参考例1ではシリコン油を用い、参考例2では何も流さなかった。熱電対54によって供給管51の温度をモニタリングした。
【0095】
(5)回収部70
固気分離器71には円筒濾紙を用いた。
【0096】
[実施例1〜11、参考例1〜5、比較例1〜4]
アルゴンガスを所定温度に加熱し25Nリットル/分で混合部30に供給し、蒸発部20において原料塩化ニッケルを蒸発させて得られた塩化ニッケル蒸気と混合部30で混合した。そして、所定の塩化ニッケル蒸気分圧の塩化ニッケル・アルゴン混合ガスを調製した。
【0097】
所定開口径の濾過器41を有する補足部40上記混合ガス経させ、固体粒子が分離除去された分離除去ガスを、所定温度に保持された反応部50に移送した。
【0098】
反応部50では、所定温度に冷却された供給管51から10Nリットル/分で供給される水素ガスと、上記分離除去ガスとを所定温度で5時間継続して反応させた。
【0099】
反応部50で生成した粉末は、冷却部60から回収部70に移送した。回収部70で粉末とガスとを分離し、粉末を回収した。
【0100】
回収した粉末は水洗を行い、120℃にて5時間、真空乾燥を行い、製品粉末を得た。
【0101】
以上の粉末製造における主な製造条件を表1に示す。なお、実施例1、2、9では、反応に必要な熱は、反応部50の調整器52からの加熱によらず、反応による発熱を利用した。これにより反応部温度は所定温度に維持できた。
【0102】
製造した粉末の評価は次のように行った。
【0103】
(1)平均粒径
SEM(走査型電子顕微鏡)にて粉末を観察し、10000倍のSEM写真から粒子100個以上を測長し、個数基準の積算粒度分布における50%粒子径(通常、d50と示す)を平均粒径とした。
【0104】
(2)粒子形状
SEM(走査型電子顕微鏡)にて粉末を観察し、10000倍のSEM写真から球形のものを○、非球形のものを△、ネッキングなどの数個の粒子が結合した状態のものが見られるものを×とした。
【0105】
(3)粒度分布
マイクロトラック(株)製粒度分布測定装置(HRA−X100型)にて粉末の粒度分布を測定し、積算粒度分布において積算値が10体積%となる粒子径d10および同積算値が90体積%となる粒子径d90を求め、粒度分布比d90/d10を算出した。この値が大きいほど粒度分布は広いことになる。
【0106】
(4)充填性
粉末の充填性は真密度値により評価した。セイシン企業(株)製全自動粉粒体真比重測定装置(オート・トゥルー・デンサーMAT−5000型)にて粉末の真密度を測定した。この値が高いほど充填性は高いことになる。
【0107】
(5)結晶性
結晶性は、X線回折によって結晶子径の算出を行うことにより評価した。X線回折装置には、理学電機(株)製のRotaflex Rad−rVB型を用いた。結晶子サイズが1000A(オングストローム)以上のものを○、それ未満のものを×とした。
【0108】
(6)供給管51へのニッケル付着量
粉末製造後、供給管51(外径:d=24mm)を取り出し、付着したニッケルの厚み(t)を測定し、ニッケル付着度t/dを算出した。この値が小さいほど供給管51へのニッケル付着量は小さいことになる。
【0109】
得られた評価結果を表2に示す。なお、表2のニッケル付着度欄中の「−」は、ニッケル付着がなく(t=0.00mm)、付着率が0.00であることを示す。
【0110】
【表1】
Figure 0004075214
【0111】
【表2】
Figure 0004075214
【0112】
以上をまとめると、次のようになる。
【0113】
(1)アルゴンガス温度および塩化ニッケル蒸気分圧を適宜変化させることによって、所望の平均粒径および粒度分布をもつ粉末が生産性よく得られる。
【0114】
(2)実施例1〜11および参考例1、2ではいずれも、(a)平均粒径が0.1〜1.0μm(実施例2以外は0.1〜0.6μm)であり、(b)充填性、結晶性および分散性が満足でき、(c)粒度分布が広すぎず、(d)形状が球形の粉末が生産性よく得られた。
【0115】
(3)実施例10、11および参考例1、2では、供給管温度が高くなるとともに、ニッケル付着度が高くなっていた。実施例10、11では供給管温度が200℃以下でありニッケルの付着が極く微量であった。
【0116】
(4)参考例3、4では、捕捉部の濾過器の開口径が大きめの開口径をもつ濾過器を捕捉部で用いたために、回収部で回収した粉末に粗大粒子が混ざり、その粉末の粒度分布が広くなった。
【0117】
(5)参考例5では、加熱温度が低めのアルゴンガスを用いたために、回収部で回収した粉末に粗大粒子が混ざり、その粉末の粒度分布が広くなった。
【0118】
(6)比較例1では、反応部温度が700℃と低く、塩化ニッケル分圧が0.30と低いために、(a)粒子形状が非球形化した、(b)粒度分布が広い、(c)結晶性が悪い粉末が得られた。
【0119】
(7)比較例2では、反応部温度が700℃と低く、塩化ニッケル分圧が0.95と高いために、(a)平均粒径が大きい、(b)粒子形状が非球形化した、(c)粒度分布が広い、(d)結晶性が悪い粉末が得られた。
【0120】
(8)比較例3、4では、反応部温度が1490℃と高く、また塩化ニッケル分圧が0.30と低い(比較例3)か、0.95と高い(比較例4)ために、(a)ニッケル粒子同士が結合して形状が非球形化した多数の粒子を含む、(b)粒度分布が広い粉末が得られた。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の製造方法および製造装置によれば、以下の効果が得られる。
【0122】
(1)気相化学反応法により粉末を製造するので、粉末の結晶性・分散性・充填性が高い。
【0123】
(2)水素ガスとの反応性がないキャリアガスを用いることにより、反応中においての爆発などの危険性がない。
【0124】
(3)キャリアガスを加熱した状態で供給することにより、(a)塩化ニッケル蒸気分圧が高い状態で生産することができるため、生産性が従来と比べて著しく改善される、(b)平均粒径が0.1〜1.0μmで、粒度分布が広狭自由の粉末を製造することができる、(c)キャリアガス温度を800℃以上とした場合、反応部の加熱を行わなくても反応熱により反応を継続的に行わせることができ、コスト的に非常に有利になる。
【0125】
(4)供給管を冷却することにより、生成粉末による該供給管の閉塞が抑制され、連続した反応が可能となるため、生産性が一層向上する。
【0126】
(5)捕捉部を設けることで、生成した粉末中への粗大粒子の混入が抑制され、生産性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサー用粉末の製造装置の一実施例の模式図である。
【符号の説明】
10 加熱部
11、22、52 加熱器
12、23、53、54 熱電対
20 蒸発部
21 収容器
30 混合部
31 導入管
40 捕捉部
41 濾過器
50 反応部
51 供給管
51a 冷却ジャケット
60 冷却部
70 回収部
71 固分離器

Claims (17)

  1. 塩化ニッケル蒸気と該塩化ニッケル蒸気のキャリアガスとを混合して、塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製するA工程、該混合ガスを1453℃未満で水素還元してニッケル粒子を生成させるB工程、および該ニッケル粒子を回収するC工程からなるニッケル粉末の製造方法において、(1)200〜1400℃に加熱した不活性ガスを該キャリアガスとし、該混合ガスの塩化ニッケル蒸気分圧を0.35〜0.90とした該A工程を第1工程とし、(2)該第1工程における該混合ガスに含まれる固体粒子を該混合ガスから開口径が40〜150μmの濾過器を用いて分離除去する工程を第2工程とし、(3)該第2工程から受けた分離除去ガスを該B工程における混合ガスとし、水素還元温度を800℃以上とした該B工程を第3工程とし、および(4)該C工程を第4工程とすることを特徴とする積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  2. 濾過器の開口径が50〜100μmである請求項1に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  3. 不活性ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスである請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  4. 第1工程におけるキャリアガスが200〜1300℃に加熱された請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  5. 第1工程におけるキャリアガスが800℃以上に加熱された請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  6. 第1工程における混合ガスの塩化ニッケル蒸気分圧が0.35〜0.60である請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  7. 水素還元温度が900〜1250℃である請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  8. 水素還元のために水素ガスを供給する供給管が、200℃以下に冷却される請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  9. 供給管が100℃以下に冷却される請求項8に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  10. 水素還元のために供給する水素ガス量は、塩化ニッケルを還元する化学量論量の1.0〜3.0倍である請求項1、2または8に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  11. 水素ガス量は、塩化ニッケルを還元する化学量論量の1.5〜2.5倍である請求項10に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  12. 水素還元してニッケル粒子を生成させ、次に該ニッケル粒子を含むガスを冷却した後、該ニッケル粒子を回収する請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造方法。
  13. (1)塩化ニッケル蒸気のキャリアである不活性ガスを加熱する温度制御可能な加熱器を有する加熱部と、(2)固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器を有する蒸発部と、(3)該加熱キャリアガスを導入する導入管を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する混合部と、(4)該混合部から受けた該混合ガスから、含まれる固体粒子を開口径が40〜150μmの濾過器を用いて捕捉して分離除去する固気分離器を有する捕捉部と、(5)該捕捉部から受けた該分離除去ガスを水素還元してニッケル粒子を生成させるための水素ガスを供給する供給管、および該水素還元の反応温度に加熱する温度制御可能な加熱器を有する反応部と、(6)該水素還元後のガスから該ニッケル粒子を分離回収する固気分離器を有する回収部とからなる積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造装置。
  14. (1)塩化ニッケル蒸気のキャリアである不活性ガスを加熱する温度制御可能な加熱器を有する加熱部と、(2)該加熱キャリアガスを導入する導入管、および固体塩化ニッケルを加熱して塩化ニッケル蒸気を生成させる加熱器を有し、該加熱キャリアガスと該塩化ニッケル蒸気とを混合して塩化ニッケル・キャリア混合ガスを調製する蒸発・混合部と、(3)該蒸発・混合部から受けた該混合ガスから、含まれる固体粒子を開口径が40〜150μmの濾過器を用いて捕捉して分離除去する固気分離器を有する捕捉部と、(4)該捕捉部から受けた該分離除去ガスを水素還元してニッケル粒子を生成させるための水素ガスを供給する供給管、および該水素還元の反応温度に加熱する温度制御可能な加熱器を有する反応部と、(5)該水素還元後のガスから該ニッケル粒子を分離回収する固気分離器を有する回収部とからなる積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造装置。
  15. 不活性ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスである請求項13または14に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造装置。
  16. 濾過器の開口径が50〜100μmである請求項13または14に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造装置。
  17. 水素還元後のガスを冷却し、回収部に送る冷却部を有する請求項13または14に記載の積層セラミックコンデンサー電極用ニッケル粉末の製造装置。
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