JP3857547B2 - 噴霧熱分解法による微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、噴霧熱分解法による微粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、微粒子の製造は、固相反応法、液相法、気相法などによって行われている。液相法の一つである噴霧熱分解法は、原料溶液(前駆体)を噴霧して微小液滴を作り、高温反応雰囲気中に導入することによって原料の周囲ガスとの反応ないし熱分解によって種々の化合物等の微粒子を得る方法である。
【0003】
噴霧熱分解法によるナノメートルサイズの微粒子の製造が研究されており、平均粒径10nm〜数μmの金属酸化物超微粒子の製造方法(特公昭63−46002号公報)、500nm以下の金属超微粒子の製造方法(特公平1−32282号公報)、10〜100nm程度の球状金属酸化物超微粒子の製造方法(特公平4−57602号公報)、金属酸化物粉末表面に微細な貴金属粒子または貴金属酸化物粒子を担持させる方法(特公平7−63633号公報)、一次粒子径100nm以下のCo,Ni,Cu,Pdの超微粉の製造方法(特開平5−65510号公報)、50nm〜5μm程度の金属酸化物微粒子の製造方法(特開平6−199502号公報)などが開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ナノメートルサイズ(1〜100nm)の粒径を有するセラミックス、金属、合金などの微粒子(ナノ粒子)は、半導体、光電子材料、センサー、触媒、蓄電池などの分野で優れた特性を示すものがある。従来、ナノ粒子の製造には、ゾルゲル法等の湿式法、プラズマ法・スパッタリング法などのエアロゾル法、などが用いられているが、製造工程が複雑なので一般に長時間の処理を必要とする点に課題がある。
【0005】
エアロゾル法の一つである噴霧熱分解法は、工程が簡素なので数秒間という短時間で能率よく連続的に微粒子を製造することができるが、超微粒子になると合体凝集してしまい分離困難となる問題があり、液滴サイズの大きさや原料溶液の濃度の制約により、能率よく製造できる微粒子の大きさはサブミクロンないし数十ミクロン程度となっている。
【0006】
最近、燃料中に溶解させた前駆体を高温炎中で反応させてシンプルなセラミック(多成分系でない)微粒子を製造する例が報告されている(例えば、特表平8−506080号公報、特表平8−510203号公報)が、反応の制御が複雑となり、種々の化合物について汎用的に適用できる方法とはいえない。
本発明の目的は、結晶化度の高い種々の物質の微粒子、特に、ナノメートルサイズの微粒子を、能率よく製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、噴霧熱分解法の研究を行なう中で、出発原料溶液に原料成分以外の無機化合物を溶解することによって、該無機化合物の粒子(以下、適宜「媒体粒子」という)が形成されるとともにその媒体粒子の内部に集合化された目的物質の一次粒子が形成された中間生成物が得られ、この中間生成物中の一次粒子は媒体粒子から容易に単離することができ、該一次粒子からなる微粒子を二次粒子として効率的に回収することができるとともに、この方法によれば、低い反応温度で反応が十分に進んだ結晶化度および純度が高い微粒子を短時間で大量に製造できることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は、原料溶液を噴霧熱分解して微粒子を製造する方法において、原料成分以外の無機化合物を原料溶液に溶解する工程、該原料溶液を噴霧熱分解して該無機化合物からなる媒体粒子とその内部に集合化された目的物質の一次粒子を作成する工程、該無機化合物からなる媒体粒子から一次粒子を単離して該一次粒子からなる微粒子を回収する工程、とからなることを特徴とする噴霧熱分解法による微粒子の製造方法である。
【0009】
【作用】
噴霧熱分解法は、通常、原料溶液の噴霧、噴霧された液滴の乾燥、乾燥粒子の熱分解と固相反応、生成粒子の捕集の段階からなる。本発明の方法では、従来の方法の「乾燥粒子の熱分解と固相反応」とは異なる反応が起こる。
すなわち、熱分解反応温度で溶融してミクロンサイズの液滴となるような原料以外の無機化合物を原料溶液に溶解すると、熱分解反応のための加熱時に該無機化合物またはそれらの錯体の液滴が形成され、出発原料成分の熱分解により生成する結晶核に液体状態で接触し、液滴内に生成する複数の結晶核の間隙に該無機化合物が存在して微細な一次粒子が形成される。ついで、該無機化合物の液滴の凝固によって形成された無機化合物粒子内に、目的物質の多数の微細な一次粒子が集合化された状態の中間生成物が形成される。これにより、凝固した無機化合物粒子が個々の一次粒子同士を凝集させることなく物理的に集合させて結合する媒体の役割をする。
【0010】
この方法によれば、従来より低い熱分解反応温度で目的物質の一次粒子が形成されることが分かった。この理由は、固相反応が起きる温度の低下と推測されるもののメカニズムはまだ明らかではない。熱分解反応温度は無機化合物媒体の溶融温度以上であればよく、従来の熱分解反応温度のように高温にする必要はない。したがって、低融点無機塩などの融点の低い無機化合物を媒体粒子を形成する無機化合物として選択すれば、従来より低い熱分解反応温度で一次粒子の作成ができる。
【0011】
また、従来の噴霧熱分解法では1個の液滴から1個の粒子が生成されるとすれば、最終的な粒子のサイズを決定するのは、(1)液滴サイズ、および(2)初期原料溶液濃度である。従来の噴霧熱分解法において、使用されている液滴サイズは数ミクロンから数十ミクロンが一般的であるから、一般的な従来の方法では、0,3〜2ミクロン程度の粒子しか得られない。
【0012】
これに対して、本発明の方法においては、(1)液滴サイズ、および(2)初期原料溶液濃度が同一条件であっても、媒体粒子となる無機化合物の種類によって製造される微粒子の径(平均粒径)を制御できる。さらに、媒体粒子となる無機化合物を溶解した場合は、熱分解反応温度、熱分解加熱時間、原料溶液の種類、該無機化合物の原料溶液中の濃度、該無機化合物以外の添加剤の種類、などによっても得られる微粒子の平均粒径をある程度制御できる。熱分解反応温度による制御が最も簡便であり、反応温度を高くすると製造される微粒子の平均粒径が大きくなる。
【0013】
したがって、本発明の製造方法は、従来法と同様な(1)液滴サイズ、および(2)初期原料溶液濃度であっても、サブミクロンオーダーの媒体粒子からなる中間生成物の作成と、中間生成物の分離という2段階工程により、従来困難であった平均粒径が1〜100nmナノメートルサイズの粒子(ナノ粒子)の製造をを容易に実現できる。
【0014】
さらに、本発明の製造方法は、媒体粒子となる無機化合物の溶融液中で原料成分の反応が十分に進行するので、平均粒径が1〜100nmの粒子(ナノ粒子)のみならず、サブミクロン(100〜1000nm)サイズの結晶化度(結晶性)および純度の高い微粒子が製造できる。また、従来の噴霧熱分解法と同等の結晶化度でよければ、本発明の方法では熱分解反応温度を下げられるので省エネルギーとなり、かつ一次粒子の回収率も向上する。
【0015】
熱分解反応で形成された一次粒子は溶融凝固した無機化合物からなる媒体粒子の内部に物理的に集合しているだけであり、従来の複合粒子のように複合反応生成物は形成していないので一次粒子のみを溶出手段などにより容易に分離し、目的物質の二次粒子として回収できるので、従来困難であった平均粒径1〜100nm程度のナノ粒子も多量に能率よく製造できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の一般的な実施方法・変形の方法・好ましい方法について述べる。
本発明の方法によって製造される微粒子(目的物質粒子)は、例えば、次のようなものがある。一成分酸化物:ZnO、CeO2、NiO、多成分酸化物:LiCoO2、LaxCe1-xO2、Y2O3-ZrO2、NiCo2O4、SrPd3O4、(SrxBa1-x)TiO3、La0.8Sr0.2Ni0.5Co0.5O3-x、硫化物:ZnS、CdS、(ZnxCd1-x)S、珪化物:βーSiC、金属:Ni、Ag、Pd、合金:Ag-Pd、Ni-Fe、複合物:(La,Sr)MnO3-YSZ 、Pd-Ca、 Pd-SiO2など。
【0017】
製造する微粒子の出発原料としては、噴霧熱分解法における微粒子製造においてそれぞれ公知の原料溶液(前駆体)が用いられる。一般に、各種の金属の塩化物、硝酸塩、酢酸塩などを純水またはアルコール類に溶かして噴霧用原料液体とする。原料は、アルコールや各種の有機溶媒を用いたアルコキシドや有機金属化合物でもよい。
【0018】
本発明の方法において、媒体粒子を形成するために使用する無機化合物は、アルカリ金属(Na、K、など)の硝酸塩、ハロゲン化塩(弗化物、塩化物、臭化物、など)、酢酸塩、水酸化物、炭化物、アルカリ金属以外の典型金属(Alなど)や遷移金属の無機化合物、など水またはその他の溶媒に溶解するものが挙げられる。これらの無機化合物のうち、無機塩は、一般に水・アルコールなどの溶媒に溶解度が高いので、溶出による媒体粒子からの一次粒子の分離・回収が容易となる
【0019】
該無機化合物の種類は、出発原料(前駆体)の種類、熱分解の加熱温度、所望の微粒子径などに応じて適宜選択する。原料のモル量に対する該無機化合物のモル比は0.1〜1000程度とする。
【0020】
媒体粒子の内部に集合化された微細な一次粒子を作るには、目的物質の原料と媒体粒子となる無機化合物とを含む原料溶液が噴霧されて液滴が形成され、該液滴が加熱されて該無機化合物が乾燥により固相析出して溶融し、該溶融液滴内で原料成分の熱分解反応を生じさせる必要がある。
【0021】
したがって、該無機化合物の融点が低いほど原料成分の固相反応温度を低くすることができる。該無機化合物の例として、NaNO3、KNO3は融点(<350℃)が比較的低いので、反応温度を低くすることができ、また、反応温度を広い範囲で選択できる点で好ましい。無機化合物を2種類以上組み合わせて使用すると、単独の場合より融点を低くすることができるので好ましい。
【0022】
液滴の作成は、噴霧熱分解法において常用される任意の手段を用いることができる。例えば、加圧式噴霧器、超音波噴霧器、振動法噴霧器、または回転ディスク式噴霧器などがある。作成される液滴の大きさや、その分布は作成される一次粒子の大きさ・粒度分布に影響を持つが、本発明の方法で製造される微粒子(二次粒子)の粒径や粒度分布に直接影響するものではない(実施例3参照)。液滴の作成には超音波噴霧器が便利なので良く使われる。しかし、能率をさらに上げたいときは二流体式の加圧式噴霧器を使うこともできる。
【0023】
液滴の加熱から一次粒子の回収までの工程には、従来の噴霧熱分解法の装置が使用できる。本発明の方法で作成される一次粒子は、無機化合物またはそれらの錯体の液滴状の溶融液中で原料成分が反応することが製造法の要点であり、これを満たす装置であればよく、従来の噴霧熱分解法の装置を使用することが必須要件ではない。
【0024】
図1は、本発明の製造方法の概念を従来の噴霧熱分解法との比較において示す図である。
原料溶液から作成される液滴(a)は、従来の噴霧熱分解法(上段)と本発明による製造方法(下段)において均質溶液からなる点では同一であり、本発明の方法において、溶液中に媒体粒子を形成するための無機化合物が含まれている点においてのみ異なっている。その後の図は、加熱による固相析出中の状況(b1) 、(c1)と、一次粒子が回収された状態(b2)、 (c2)と、水洗した後の状態(b3)、 溶媒(水)で無機化合物からなる媒体粒子を除去した後の状態(c3)を示している。
【0025】
従来法は、液滴の加熱段階(b1)において、原料溶液の乾燥による固相析出とその熱分解による一次粒子の形成が始まり、微細な結晶粒子が凝集一体化した一次粒子(b2)が回収される。この一次粒子は水洗した後(b3)も凝集したままで変化しないので、一つの液滴から一つの微粒子が製造される。
【0026】
一方、本発明の方法によれば、原料溶液の加熱段階(c1)では、乾燥により原料溶液から固相析出した媒体粒子となる無機化合物が溶融して液滴が形成され、その溶融液滴からなるミクロンサイズの反応系の中で、原料溶液の乾燥による原料成分の固相析出・固相反応・結晶化反応が起きる。そのため、捕集される一次粒子(c2)は、一次粒子単独ではなく、微細な一次粒子の表面に該無機化合物が集まって媒体粒子となり、その内部に微細な一次粒子が相互に集合化している形態で得られる。
【0027】
次いで、この媒体粒子から微細な一次粒子を単離して微粒子を回収する。
例えば、媒体粒子の無機化合物を溶媒で溶解・流出させると、微細な一次粒子が分離して複数の微粒子(c3)が製造されることにより、一次粒子が二次粒子へ転換される。すなわち、一つの液滴から多数の微粒子が製造されることになる。
【0028】
媒体粒子から微細な一次粒子を溶出によって分離させるには、溶媒へ浸漬して媒体粒子を溶解する方式や、媒体粒子を保持した膜上に溶媒を滴下して媒体粒子を溶解する方式などが適用できる。
【0029】
溶媒は、媒体粒子として使用した無機化合物の溶解度が高いものであればよく、水、アルコールなど無機化合物の種類に合わせて適宜適用できる。溶媒の温度・圧力の制約はなく、溶媒を循環使用することも可能である。媒体粒子の無機化合物の例として、NaNO3、KNO3を使用した場合には、水への溶解度が高いので、水を使うのが簡便である。
【0030】
媒体粒子の無機化合物を溶出して単離された微粒子(二次粒子)は、通常、溶媒中に懸濁するので、懸濁液を遠心分離して二次粒子を回収することができる。フイルターで濾過分離して回収することも可能である。
【0031】
本発明の方法において、媒体粒子に集合化させた一次粒子の作成と該一次粒子を媒体粒子から分離して二次粒子へ転換するには、製造装置・製造量等に応じて種々のプロセスを適用できる。また、媒体粒子に集合化させた一次粒子のままで製造・販売して、使用者が二次粒子に分離して用いる使用方法もある。これは、流通工程の大部分で粒径の大きい粒子として扱えるので取扱いが容易になる。
【0032】
【実施例】
本発明を実施例・比較例によりさらに詳細に説明する。
<実験装置>
本発明の製造方法の試験に用いた実験装置を図2に示す。
図2において、媒体粒子となる無機化合物を溶解した原料溶液は、キャリアガスホルダ1のガスにより噴霧器4に運ばれ、噴霧器4で加熱炉5内に噴霧される。媒体粒子の内部に集合化された状態で生成した一次粒子は加熱炉5とガス排出管11の間の粒子捕集器6によって捕集される。なお、生成した粒子の表面などに溶媒として使用した水が凝縮されることを避けるために捕集器全体を200℃程度に加熱することが好ましい。
【0033】
キャリアガスホルダ1のガスは、製造する微粒子の種類に応じて、非酸化物の場合は窒素ガス、窒素−水素混合ガス、酸化物の場合は空気を使用した。ガスの流量は流量調整器2で調節し、流量計3で測定した流量を加熱炉内における液滴および粒子の滞留時間(秒)の計算に用いた。噴霧器4は、超音波噴霧器(オムロン製;NE-U12型)を用い、平均粒径4μmの液滴を発生させた。加熱炉5は外径17mmφ、内径14mmφ、長さ1,100mmのセラミックス管を用い、加熱領域長さ1,000mmの管状型電気炉を使用した。粒子捕集器6として、捕集基板7、接地電極8、捕集電源9、電極10からなる静電型捕集器を用いて、生成した粒子を捕集基板7(ガラス板)上に捕集した。
【0034】
次いで、無機化合物からなる媒体粒子と一次粒子を単離して微粒子を得るために、捕集基板7上に収集された粒子を溶媒容器(図示せず)に移し、溶媒とよく混合した後に遠心分離器で一次粒子を分離した。溶媒は全て水を使用した。回収した微粒子は乾燥させて計測した。
【0035】
実施例1〜6
<微粒子の製造>
種々の目的物質について、上記の実験装置と条件を適用して微粒子を作成した。無機化合物からなる媒体粒子の溶出には全て水を用いた。目的物質に応じて変更した製造条件を表1に示す。No.1〜6はそれぞれ実施例1〜6を示す。原料溶液・無機化合物の濃度mol/Lは、各成分を合計した濃度で示している。各実施例で作成した微粒子(SAD,CAD)を備考欄に示す方法で評価した。
また、媒体粒子となる無機化合物を溶解しないこと以外は同じ条件で一次粒子を製造し、比較例とした。実施例1〜6で作成した粒子を以下SAD(Salt-assisted Aerosol Decomposition)粒子、比較例で作成した粒子をCAD(Conventional Aerosol Decomposition)粒子と呼ぶ場合がある。
【0036】
実施例1は、媒体粒子を形成する無機化合物としてLiCl(融点606℃)とKCl(融点776℃)を用い、熱分解反応温度を750℃とし、Y2O3−ZrO2微粒子が得られた。
<微粒子の粒径分布>
実施例1で作成した500個以上のY2O3‐ZrO2微粒子を顕微鏡写真で計測して粒子径の分布を求めた。測定結果を比較例とともに図3に示す。
(CAD粒子)0.11〜2.12μm、平均粒径0.66μm、幾何標準偏差1.76。
(SAD粒子)6.3〜18.7nm、平均粒径12.8nm、幾何標準偏差1.19。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例1の微粒子(b)は、比較例(a)に比べて良好な(狭い)粒径分布を示している。一般に、従来の噴霧熱分解法によって製造される粒子の粒子径は幾何標準偏差1.40以上の対数正規分布することが知られている。これに対して、実施例1による微粒子径は、ほぼ通常の正規分布を示している。また、幾何標準偏差1.19と極めて均一な粒径分布となっている。このことは、本発明の方法において、微粒子の生成工程が従来の噴霧熱分解法による生成工程とは全く異なることを示している。
【0039】
実施例2は、媒体粒子を形成する無機化合物としてKNO3(融点334℃)とNaNO3(融点306℃)を用い、熱分解反応温度を550℃と700℃とし、ZnS微粒子が得られた。
<X線回折パターン>
実施例2によって製造したZnSについて、加熱温度条件と結晶化度を見るために、X線回折装置による回折パターンを取って比較例と比較した結果を図4に示す。図4において、a、cは、実施例2の微粒子(a:550℃加熱、c:700℃加熱)、b、d、eは、比較例の微粒子(b:550℃加熱、d:700℃加熱、e:800℃加熱)としたときのX線回折パターンである。
【0040】
比較例に比べて実施例2の微粒子は、明瞭な回折ピークを示し、結晶化度が良好であることを示している。類似の結晶化度を示すaとeとを比較すると、加熱温度がそれぞれ、550℃、800℃であり、本発明の方法によって、加熱エネルギーが省けることを示している。
【0041】
実施例3は、媒体粒子を形成する無機化合物としてKNO3(融点334℃)とNaNO3(融点306℃)を用い、熱分解反応温度を700℃と1000℃とし、(Ba0.5Sr0.5)TiO3微粒子が得られた。
<X線回折パターン>
実施例3によって製造した(Ba0.5Sr0.5)TiO3について、結晶化度を見るために、X線回折装置による回折パターンを取って比較例と比較した結果を図5に示す。従来法において、固相反応が不十分なために、Ba2TiO4、BaTi2O5、BaTi4O3などの不純物が生じることが報告されている。
【0042】
図5の比較例(CAD)においても矢印(↓)で示す不純物ピークが700℃加熱において見られる。(Ba0.5Sr0.5)TiO3の製造において、一般的に採用されている1000℃の加熱温度においてもなお残っている。一方、実施例3の微粒子(SAD)では、700℃、1000℃とも対応する個所に不純物ピークは見られない。
【0043】
実施例3による微粒子は、700℃加熱において単一相であり、比較例による1000℃加熱による粒子よりも高い結晶化度を示している(回折法による結晶粒径は32.2nm)。実施例3による微粒子は、1000℃加熱においてさらに高い結晶化度を示している。さらに、実施例3の微粒子のピーク波形は、CAD粒子には見られない完全な対称性を示している。
【0044】
測定に用いたSAD粒子、CAD粒子の電子顕微鏡写真を図6に示す。左上のカットは低倍率の参考写真である。SAD粒子(b)は立方体ないし直方体で、良好に成長した結晶であることを示しており、一方、CAD粒子(a)の形状は不定形であり、結晶化度が低いことに対応している。両者の相違点は媒体粒子となる無機化合物の使用の有無だけであり、媒体粒子となる無機化合物を用いる本発明の方法は、作成される微粒子の結晶化度の改善に有効であることを示している。
【0045】
<微粒子径の制御>
本発明の方法において、製造される微粒子の径(平均径)は、熱分解の加熱温度による制御が最も簡便であり、温度を高くすると平均径が大きくなる。
実施例3によって製造した(Ba0.5Sr0.5)TiO3において、熱分解温度が700℃の場合の微粒子(SAD粒子)の平均粒径は約32nm、1000℃の場合は約80nmであった。
【0046】
実施例4は、媒体粒子を形成する無機化合物としてRbCl(融点718℃)とKCl(融点776℃)を用い、熱分解反応温度を500℃とし、Ni微粒子が得られた。
<X線回折パターン>
実施例4によって作成したNiについて、X線回折パターンを図7に示す。ニッケル結晶に対応する回折ピークが現れ、その他のピークが見られないことから、純度の高いニッケル結晶の微粒子ができていることが解る。
【0047】
実施例5は、媒体粒子を形成する無機化合物としてKNO3(融点334℃)とNaNO3(融点306℃)を用い、熱分解反応温度を400℃とし、CdS微粒子が得られた。
<形状・寸法、X線回折パターン>
実施例5によって製造したCdSについて、電子顕微鏡写真を図8に、X線回折パターンを図9に示す。図8から、平均粒径が約20nmで、粒度の揃った微粒子となっていることが分かる。図9からは、CdSに対応する回折ピークがあり、その他のピークがないことから、純度の優れたCdSナノ粒子が得られていることが分かる。
【0048】
実施例6は、媒体粒子を形成する無機化合物としてKNO3(融点334℃)を用い、熱分解反応温度を350℃とし、Ag−Pd微粒子が得られた。
<X線回折パターン>
実施例6によって製造したAg‐Pd合金について、微粒子のX線回折パターンを取って比較例と比較した結果を図10に示す。図10において、実施例6の微粒子(SAD)は、350℃加熱という低温でも単一相を示すピークとなっており、比較例の微粒子(CAD)は、65°、78°で分割ピークとなっていることはAgとPdとの固相反応が不十分であることを示している。無機化合物からなる媒体粒子を用いる本発明の方法は、作成される微粒子の固相反応の改善に有効であることを示している。
【0049】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、下記のような顕著な効果が得られ、産業上寄与するところ大である。(1)媒体粒子からの単離が容易で、粒径分布が狭い微細な微粒子が製造できるので、多量のナノ粒子が能率よく製造できる。(2)高温の噴霧熱分解と同等の結晶化度の高く、純度が高く、反応が十分に進行した微粒子が、より低温の反応温度で製造できるので、製造に要する熱エネルギーを省略できる。(3)多数のナノ粒子を容易に分離できる取扱いが容易な媒体粒子を中間生成物として提供できる。(4)媒体粒子を中間生成物として用いても、原料溶液と微粒子の組成が対応し、化学量論的に制御された種々の物質の微粒子を能率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明と従来例の製造方法の概念を比較して示す図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法の試験に用いた実験装置の概略説明図である。
【図3】図3は、実施例1のY2O3‐ZrO2微粒子について、比較例の微粒子(a)と、実施例の微粒子(b)の粒度分布を示す図である。
【図4】図4は、実施例2のZnSについて、比較例の微粒子(b:550℃加熱、d:700℃加熱、e:800℃加熱)と、実施例の微粒子(a:550℃加熱、c:700℃加熱)のX線回折パターンを示す図である。
【図5】図5は、実施例3の(Ba0.5Sr0.5)TiO3について、比較例の微粒子(CAD)と、実施例の微粒子(SAD)のX線回折パターンを示す図である。
【図6】図6は、実施例3の(Ba0.5Sr0.5)TiO3について、比較例の微粒子(a)と、実施例の微粒子(b)の図面代用電子顕微鏡写真である。左上のカットは参考のための低倍率の図面代用写真である。
【図7】図7は、実施例4のNi微粒子についてX線回折パターンを示す図である。
【図8】図8は、実施例5のCdS微粒子の図面代用電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、実施例5CdS微粒子についてX線回折パターンを示す図である。
【図10】図10は、実施例6のAg‐Pd合金について、比較例の微粒子(CAD)と、実施例の微粒子(SAD)のX線回折パターンを示す図である。
Claims (7)
- 原料溶液を噴霧熱分解して微粒子を製造する方法において、原料成分以外の無機化合物を原料溶液に溶解する工程、該原料溶液を噴霧熱分解して該無機化合物からなる媒体粒子とその内部に集合化された目的物質の一次粒子を作成する工程、該無機化合物からなる媒体粒子から一次粒子を単離して該一次粒子からなる微粒子を回収する工程、とからなることを特徴とする噴霧熱分解法による微粒子の製造方法。
- 原料成分以外の無機化合物は、熱分解時に溶融液滴を形成する物質であることを特徴とする請求項1記載の微粒子の製造方法。
- 原料成分以外の無機化合物は、低融点金属塩であることを特徴とする請求項1または2記載の微粒子の製造方法。
- 無機化合物媒体は2種類以上の無機塩の組み合わせであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
- 媒体粒子から一次粒子を単離する工程は溶媒を用いた溶出工程であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
- 製造される微粒子は、酸化物、硫化物、珪化物、金属、合金、またはこれらの複合物であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
- 製造される微粒子の平均粒径が1〜100nmのナノ粒子であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
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JP2001208613A JP3857547B2 (ja) | 2001-07-09 | 2001-07-09 | 噴霧熱分解法による微粒子の製造方法 |
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Publications (2)
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