JP4073300B2 - スチレン系樹脂発泡板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱性及び難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からスチレン系樹脂発泡板は建築用断熱材に汎用されており、このスチレン系樹脂発泡板は、スチレン系樹脂を押出機に供給して溶融、混練した後、この溶融状態のスチレン系樹脂に発泡剤を圧入した上で押出機から押出発泡させて製造されている。
【0003】
そして、上記発泡剤としては、ジクロロジフルオロメタン(フロン−12)等の塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(CFC)が用いられていたが、オゾン層を破壊するという環境上の問題点があることから、1−モノクロロ−1,1−ジフルオロエタン(フロン−142b)等の塩素原子を部分的に水素化した塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(HCFC)への改善が試みられ、更に、HCFCから1、1,1,2−テトラフルオロエタン(フロン−134a)等のフッ素化炭化水素(HFC)への転換が行われている。
【0004】
加えて、発泡剤のノンフロン化を図るために、塩化メチルや塩化エチル等のハロゲン化炭化水素と、ブタンやプロパン等の炭化水素とを組み合わせた発泡剤の使用も行われているが、塩化メチルや塩化エチル等は塩素原子を含んでいることから、環境上、可能であれば代替されることが好ましいとされている。
【0005】
そこで、特許文献1には、発泡剤として、ジメチルエーテル等のエーテル類と、ブタンやプロパン等の炭化水素とを併用して製造されたスチレン系樹脂発泡体が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記スチレン系樹脂発泡体は、その気泡が比較的大径なものであることから断熱性に劣り、JIS A9511で規定されたB類2種程度の断熱性しか有しないと共に、可燃性を有する炭化水素を用いていることから難燃性にも劣るものであった。
【0007】
【特許文献1】
WO99/54390(特許請求の範囲、第15頁第15〜17頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、断熱性及び難燃性に優れ、特に、断熱性にあっては、JIS A9511で規定されたB類3種を満たす優れた断熱性を有し、建築用断熱材等に好適に用いることができるスチレン系樹脂発泡板を提供する。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明のスチレン系樹脂発泡板は、押出機から押出発泡させてなるスチレン系樹脂発泡板であって、スチレン系樹脂100重量部に対してヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を含有していると共に、気泡が、主として厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小径気泡と、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満の大径気泡とから構成され、押出方向に垂直な面で切断した切断面において、小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率が85%以上であり且つ小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率が30〜80%であり、更に、押出発泡後30日経過した発泡板に含まれるブタン量が1.5重量%以上で且つ3.0重量%未満であることを特徴とする。
【0010】
上記スチレン系樹脂発泡板は、従来から汎用されている押出発泡方法を用いて製造されたものであり、その気泡は、主として厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小径気泡と、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満の大径気泡とから構成されている。なお、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向とは、スチレン系樹脂発泡板の肉薄方向であって、スチレン系樹脂発泡板の表面に対する法線方向をいう。
【0011】
このように、スチレン系樹脂発泡板の気泡を小径気泡と大径気泡とから構成しているのは以下の理由による。即ち、厚み方向の気泡径が0.10mm以下という微細な小径気泡を存在させることによって、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡壁の数を増やし、気泡壁による熱の遮断回数を増加させることにより断熱性を向上させている。
【0012】
一方、スチレン系樹脂発泡板の気泡の全てが小径気泡であるとすると、スチレン系樹脂発泡板中における気泡壁の数、即ち、気泡壁の表面積が多くなり過ぎて各気泡壁の厚さが薄くなり、気泡壁の数は多くなって熱の遮断回数は多くなるものの、気泡壁による熱の遮断効果の低下度合いの方が大きくなってしまい、結果として、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下してしまう。
【0013】
そこで、本発明のスチレン系樹脂発泡板では、上記小径気泡に加えて、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満である大径気泡を所定割合で併存させることによって、小径気泡の数、即ち、気泡壁の数を減少させ、小径気泡を形成する気泡壁の厚みを厚くして熱の遮断効果が充分となるように構成している。
【0014】
即ち、本発明のスチレン系樹脂発泡板は、小径気泡と大径気泡とを所定割合で併存させることによって、小径気泡の気泡壁の厚み及びスチレン系樹脂発泡板の厚み方向における小径気泡の気泡壁の数を調整し、優れた断熱性が発揮されるようにしていると共に、曲げ強さや圧縮強さ等の物理的強度の向上も図っている。
【0015】
更に、スチレン系樹脂発泡板を詳細に説明する。先ず、スチレン系樹脂発泡板の気泡のうち、厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小径気泡について着目した理由は、厚み方向の気泡径が0.10mmを越えた気泡では、その数をたとえ調整したとしても、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における気泡壁による熱の遮断回数が減少してしまい、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下してしまうためである。
【0016】
又、スチレン系樹脂発泡板の気泡のうち、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満の大径気泡について着目した理由は下記の通りである。
【0017】
つまり、スチレン系樹脂発泡板における厚み方向の気泡径が0.10mmを越え且つ0.15mm未満の気泡では、その径が上記小径気泡に近くなってしまい、このような径を有する気泡をいくら制御したとしても、小径気泡の気泡壁の厚み及び気泡壁の数をスチレン系樹脂発泡板の断熱性が効果的に向上するように調整することができないからである。
【0018】
そして、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における気泡径が0.30mm以上の気泡では、その径が大きくなりすぎてしまって、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における全体の気泡数が減少し、その結果、気泡壁による熱の遮断回数が減少し、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下してしまうからである。
【0019】
ここで、上記スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における気泡径は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、スチレン系樹脂発泡板を任意の部分において押出方向に垂直な面で切断する。そして、スチレン系樹脂発泡板の切断面を走査型電子顕微鏡を用いて50倍にて拡大、撮影し、拡大写真を得、この拡大写真を乾式複写機にてコピーをとる。なお、拡大写真において、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向が上下方向となるように撮影する。
【0020】
次に、コピー上に表れた気泡のうち測定しようとする気泡を特定し、この特定した気泡の気泡壁の上端に接し且つスチレン系樹脂発泡板の厚み方向に直交する上側基準直線を引き、同様に、この特定した気泡の気泡壁の下端に接し且つ厚み方向に直交する下側基準直線を引く。
【0021】
そして、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における上側基準直線と下側基準直線との間の距離を測定し、この距離を50で除したものを、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向における気泡の径とする。
【0022】
更に、スチレン系樹脂発泡板を押出方向に垂直な面で切断した際の切断面において、小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率は、小さいと、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下したり或いは物理的強度が低下したりするので、85%以上に限定され、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましい。
【0023】
又、スチレン系樹脂発泡板を押出方向に垂直な面で切断した際の切断面において、小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率は、小さいと、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、又、大きいと、相対的に大径気泡の数が少なくなって、小径気泡の気泡壁の厚みが薄くなり、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下するので、30〜80%に限定され、40〜80%が好ましく、50〜80%がより好ましい。
【0024】
更に、スチレン系樹脂発泡板を押出方向に垂直な面で切断した際の切断面において、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.3mm以上である気泡の占める総面積の比率は、大きいと、相対的に小径気泡の数が少なくなって、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡壁の数が少なくなり、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下することがあるので、5%未満が好ましく、3%未満がより好ましく、2%未満が特に好ましい。
【0025】
ここで、スチレン系樹脂発泡板を押出方向に垂直な面で切断した際の切断面において、測定対象となる気泡の占める総面積は下記の要領で測定されたものをいう。
【0026】
即ち、スチレン系樹脂発泡板を任意の3箇所において押出方向に垂直な面で切断する。そして、スチレン系樹脂発泡板の各切断面を走査型電子顕微鏡を用いて50倍にて拡大、撮影し、拡大写真をそれぞれ得、これら拡大写真を乾式複写機にてコピーをとる。なお、拡大写真において、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向が上下方向となるように撮影する。但し、スチレン系樹脂発泡板の切断面の撮影対象としては、スチレン系樹脂発泡板の両面と、この両面のそれぞれから厚み方向に内側に2mmだけ入った部分との間にある表層部分を除外した部分とする。これは、表層部分は、成形具との接触や外気による冷却等によって、その他の部分と気泡の状態が異なることが多いためである。
【0027】
各コピーから縦2.5mm×横1.7mmの長方形と同一或いはこの長方形よりも大きな大きさを有する長方形状の測定部分を任意に特定し、この測定部分内において、測定対象となる気泡を黒く塗りつぶし、この黒く塗りつぶした面積の総和、即ち、測定対象となる気泡の占める総面積を求め、これら総面積の平均を測定対象となる気泡の占める総面積とする。なお、測定対象となる気泡が、測定部分と測定部分でない部分とを区画する線(区画線)によって分断されている場合には、気泡を分断した区画線が気泡の気泡壁であるとみなして算出された気泡径に基づいて測定対象となる気泡を特定する。ここで、上記黒く塗りつぶした面積の総和は、例えば、タマヤ計測システム社から商品名「PLANIX5000」にて市販されている測定機器を用いて算出することができる。
【0028】
そして、小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率は、下記式により算出される。
【0029】
同様に、小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率は、下記式により算出される。
【0030】
更に、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.3mm以上である気泡の占める総面積の比率は、下記式により算出される。
(スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.3mm以上である気泡の占める総面積の比率〔%〕)
=100×スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.3mm以上である気泡の占める総面積/測定部分の面積
【0031】
又、上記スチレン系樹脂発泡板における押出発泡後30日経過した発泡板に含まれるブタン量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、又、多いと、スチレン系樹脂発泡板の難燃性が低下したり或いは回収再利用のためリペレット化する際の粉砕工程で発火する危険性が大きくなるので、1.5重量%以上で且つ3.0重量%未満に限定され、1.8重量%以上で且つ2.5重量%未満が好ましい。
【0032】
なお、上記スチレン系樹脂発泡板における押出後30日経過した発泡板に含まれるブタン量は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、押出発泡後30日経過したスチレン系樹脂発泡板から、該スチレン系樹脂発泡板の両面と、この両面のそれぞれから厚み方向に内側に2mmだけ入った部分との間にある表層部分を除外し、この表層部分が除外されたスチレン系樹脂発泡板から、押出方向に35mm、スチレン系樹脂発泡板の表面に沿い且つ押出方向に直交する方向に5mm、厚み方向に5mmの大きさを有する直方体形状の試験片を切り出し、この試験片の重量を測定する。
【0033】
そして、上記試験片を150℃の熱分解炉に供給してガスクロマトグラフィーからチャートを得、予め測定しておいたブタンの検量線に基づいて上記チャートから試験片中のブタン量を算出し、以下の式に基づいて求める。
【0034】
(押出発泡後30日経過したスチレン系樹脂発泡板に含まれるブタン量)
=100×試験片中のブタン量/試験片の重量
【0035】
なお、上記スチレン系樹脂発泡板には、その物性を損なわない範囲内において、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化チタン等の無機化合物;フェノール系抗酸化剤;耐光性安定剤;難燃剤;ステアリン酸モノグリセライド等の帯電防止剤;顔料等の着色剤;ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩等の添加剤が含有されてもよい。
【0036】
そして、上記タルクの添加量は、多いと、スチレン系樹脂発泡板の気泡中における小径気泡の占める割合が低下することがあるので、スチレン系樹脂100重量部に対して1.5重量部以下が好ましく、1.0重量部以下がより好ましく、0.5重量部以下が特に好ましい。
【0037】
次に、スチレン系樹脂発泡板の製造方法を説明する。このスチレン系樹脂発泡板は、スチレン系樹脂100重量部、難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を押出機に供給して溶融、混練し、この溶融状態のスチレン系樹脂中にジメチルエーテル60〜80重量%及びブタン20〜40重量%からなる有機系発泡剤3〜15重量部、水0.5〜1.5重量部及び二酸化炭素0.3〜2.0重量部を圧入した後に押出機から押出発泡させることによって製造することができる。
【0038】
上記スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらスチレン系単量体を2種以上組み合わせた共重合体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、ブタジエン等の単量体と上記スチレン系単量体との共重合体等が挙げられる。なお、共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体の何れであってもよい。又、上記スチレン系樹脂が50重量%以上含有しておれば、スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加させてもよい。
【0039】
そして、上記ヘキサブロモシクロドデカンの添加量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の難燃性が低下し、又、多いと、小径気泡と大径気泡とを上述のような割合で併存させることが困難となってスチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下したり或いはスチレン系樹脂発泡板のリサイクル化の際に支障をきたすことがあるので、スチレン系樹脂100重量部に対して2.0〜4.0重量部に限定され、2.5〜3.5重量部が好ましい。
【0040】
又、上記合成雲母は、天然の雲母とは異なり、天然の雲母の結晶構造中の全ての−OH基が−Fで置換された組成を有する人工的に作られた雲母であり、KMg3 AlSi3 O10F2 を理想組成とするものである。
【0041】
そして、合成雲母の平均粒径は、小さいと、嵩比重が小さくなり、押出機へ供給する際に凝集して樹脂中への分散が不十分となって、スチレン系樹脂発泡板に小径気泡ができにくくなることがあり、又、大きいと、気泡核の数が減少して小径気泡ができにくくなることがあるので、1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが特に好ましい。
【0042】
なお、上記合成雲母の平均粒径は、レーザー散乱法によって測定されたものをいい、具体的には、島津製作所社から商品名「SALD−2100」、日機装社から商品名「マイクロトラック 9320HRA」で市販されている測定装置を用いて湿式法にて測定することができる。
【0043】
そして、合成雲母の添加量は、少ないと、小径気泡と大径気泡とを上記した特定割合で形成することが困難となってスチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、又、多くても、合成雲母同士が凝集し、小径気泡と大径気泡とを上記した特定割合で形成することが困難となってスチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下するので、スチレン系樹脂100重量部に対して0.3〜2.0重量部に限定され、0.5〜1.8重量部がより好ましく、0.8〜1.5重量部が特に好ましい。
【0044】
又、有機系発泡剤としては、ジメチルエーテル及びブタンからなるものが用いられる。上記ブタンとしては、イソブタン、ノルマルブタンが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0045】
そして、ブタンとしてイソブタンとノルマルブタンとを併用する場合、ブタン中におけるイソブタンの含有量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下することがあるので、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0046】
又、有機系発泡剤中におけるジメチルエーテルの含有量は、少ないと、相対的にブタン量が多くなってスチレン系樹脂発泡板の難燃性が低下し、又、多いと、相対的にブタン量が少なくなってスチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下するので、60〜80重量%に限定される。同様の理由で、有機系発泡剤中におけるブタンの含有量は、20〜40重量%に限定される。
【0047】
そして、上記有機系発泡剤の添加量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の発泡倍率が低下して断熱性や軽量性が低下し、又、多いと、スチレン系樹脂発泡板内部にボイド(大きな空隙部)が生じるので、スチレン系樹脂100重量部に対して3〜15重量部に限定される。
【0048】
更に、溶融状態のスチレン系樹脂中に圧入される水は、特に限定されないが、不純物の少ないもの、例えば、純水を用いることが好ましい。なお、水の添加量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の小径気泡の割合が少なくなって、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、又、多くても、スチレン系樹脂発泡板の小径気泡の割合が少なくなって、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、或いは、押出機からスチレン系樹脂を押出発泡する際に吐出変動が発生して良好なスチレン系樹脂発泡板が得られないので、スチレン系樹脂100重量部に対して0.5〜1.5重量部に限定され、0.6〜1.0重量部がより好ましい。
【0049】
又、二酸化炭素の添加量は、少ないと、スチレン系樹脂発泡板の大小径気泡の占める割合が少なくなったり或いは小径気泡の占める割合が少なくなったりして、スチレン系樹脂発泡板の断熱性が低下し、又、多いと、発泡時に内部発泡や突沸が発生して良好なスチレン系樹脂発泡板が得られないので、スチレン系樹脂100重量部に対して0.3〜2.0重量部に限定され、0.5〜1.5重量部が好ましい。
【0050】
ここで、本発明のスチレン系樹脂発泡板の製造方法では、合成雲母、水及び二酸化炭素を所定割合でスチレン系樹脂に供給することによって、難燃剤であるヘキサブロモシクロドデカンの存在にもかかわらず、主な気泡の径を0.30mm未満とすることができると共に、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.10mm以下の気泡も安定的に多数、形成することができ、上述のような、小径気泡と大径気泡とが所定割合で併存する全体的に気泡径の微細なスチレン系樹脂発泡板を得ることができるものである。
【0051】
この理由は明確に解明されていないが、合成雲母は層状に形成され、押出機内における剪断応力によって各層が互いに剥離して微細な形状となった上で溶融状態のスチレン系樹脂中に均一に分散すると共に、合成雲母はその表面に水を吸着する。その結果、小径気泡を形成させる気泡核になると考えられる合成雲母と水との共存点の数が多くなる。
【0052】
更に、二酸化炭素は、スチレン系樹脂に溶解すると共に水にも溶解し易い性質を有していると共に、蒸気圧が高いために気泡核からの実際の微小気泡の発生効率を高める作用がある。
【0053】
以上のような複合作用の結果、小径気泡を発生させる能力の高い合成雲母、水及び二酸化炭素の共存点が多数でき、スチレン系樹脂発泡板の厚み方向の気泡径が0.1mm以下という小径気泡を多数、安定的に形成することができるものと思われる。
【0054】
又、大径気泡は、気泡の形成過程において、水の吸着の少ない合成雲母、二酸化炭素単独の気泡核からの成長気泡や、上記小径気泡の気泡壁の一部が破断して隣接する気泡同士が結合することによって形成されるものと思われる。
【0055】
スチレン系樹脂発泡板の主な気泡をその厚み方向の径が0.3mm未満のものとするには、二酸化炭素の効果が特に大きく、従来から行われているタルクの増量では0.1mm以下の小径気泡が消失してしまうといった問題点を生じる。
【0056】
以上の如く、上記有機系発泡剤の他に、合成雲母、水及び二酸化炭素をスチレン系樹脂に所定割合でもって添加することによって、小径気泡と大径気泡とを所定割合でもって安定的に形成することができる。
【0057】
なお、有機系発泡剤、水及び二酸化炭素は、溶融状態のスチレン系樹脂中に同時に圧入してもよいが、水は、難燃剤であるヘキサブロモシクロドデカンを分解する作用があるため、有機系発泡剤及び二酸化炭素を溶融状態のスチレン系樹脂中に圧入した後、水を溶融状態のスチレン系樹脂中に圧入することにより、水とヘキサブロモシクロドデカンとの接触時間をできるだけ短くすることが好ましい。
【0058】
更に、上記では、発泡剤として、有機系発泡剤、水及び二酸化炭素をスチレン系樹脂中に圧入しているが、得られるスチレン系樹脂発泡板の物性を損なわない範囲内において、有機系発泡剤、水及び二酸化炭素以外の発泡剤を添加してもよいが、ハロゲン原子を含む発泡剤は用いないのが好ましい。
【0059】
このような発泡剤としては、例えば、窒素、塩化メチル、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン等が挙げられる。
【0060】
【実施例】
(実施例1〜4 比較例1〜6)
押出機として、第一押出機の先端に第二押出機が接続されてなるタンデム型押出機を用い、上記第一押出機に、表1に示した量のポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−18」)、ヘキサブロモシクロドデカン、合成雲母(コープケミカル社製 商品名「ME−100」、平均粒径:3μm)及びタルクを供給して210℃で溶融、混練した。
【0061】
更に、表1に示した量のジメチルエーテル及びブタンからなる有機系発泡剤並びに二酸化炭素を第一押出機の先端部分から同時に溶融状態のポリスチレン中に圧入した後、水を第一押出機の先端部分から溶融状態のポリスチレン中に圧入した。
【0062】
そして、第一押出機内の溶融状態のポリスチレンを第二押出機内に連続的に供給し、第二押出機内においてポリスチレンを発泡に適した温度に冷却した上で、第二押出機の先端に装着したT型ダイの口金(リップ幅:70mm、リップ厚み:1.2mm)から126℃にて押出発泡し、得られた溶融状態の発泡体を、上下方向に30mmの間隔を存して互いに平行に配設されてなる一対の板の間に供給して成形し、表2に示した寸法の断面横長長方形状のスチレン系樹脂発泡板を製造した。なお、第二押出機からのポリスチレンの吐出量は、35kg/時間とした。
【0063】
なお、比較例5では、第二押出機で吐出変動が発生して良好なスチレン系樹脂発泡板が得られず、比較例6では、突沸が発生して良好なスチレン系樹脂発泡板が得られなかった。
【0064】
以上の如くして得られたスチレン系樹脂発泡板において、押出方向に垂直な面で切断した切断面での小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率(大小径気泡占有率)、小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率(小径気泡占有率)、並びに、厚み方向の気泡径が0.3mm以上である気泡の占める総面積の比率(0.3mm以上気泡占有率)、押出発泡後30日経過した発泡板に含まれるブタン量(ブタン残ガス量)、燃焼性、熱伝導率及び密度を下記に示した方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0065】
(ブタン残ガス量)
押出発泡後30日経過したスチレン系樹脂発泡板の両面から、該スチレン系樹脂発泡板の両面と、この両面のそれぞれから厚み方向に内側に2mmだけ入った部分との間にある表層部分を除外し、この表層部分が除外されたスチレン系樹脂発泡板から、押出方向に35mm、スチレン系樹脂発泡板の表面に沿い且つ押出方向に直交する方向に5mm、厚み方向に5mmの大きさを有する直方体形状の試験片を切り出し、その試験片の重量を測定した。
【0066】
そして、上記試験片を150℃の熱分解炉(島津製作所社製 商品名「PYR−1A」)に供給してガスクロマトグラフィー(島津製作所社製 商品名「GC−14B」)からチャートを得、予め測定しておいたブタンの検量線に基づいて上記チャートから試験片中のブタン量を算出し、以下の式に基づいて求めた。
(ブタン残ガス量)=100×試験片中のブタン量/試験片の重量
【0067】
(燃焼性)
JIS A9511-1995 に規定された測定方法Aの燃焼性試験に準拠して測定し、JIS A9511-1995 に規定された難燃性を満足したものを○、満足しなかったものを×とした。
【0068】
(熱伝導率)
押出発泡後30日が経過したスチレン系樹脂発泡板から、該スチレン系樹脂発泡板の両面と、この両面のそれぞれから厚み方向に内側に2mmだけ入った部分との間にある表層部分を除外し、この表層部分が除外されたスチレン系樹脂発泡板から、押出方向に200mm、スチレン系樹脂発泡板の表面に沿い且つ押出方向に直交する方向に15mm、厚み方向に25mmの大きさを有する試験片を切り出した。
【0069】
そして、上記試験片の熱伝導率を、JIS A1412-1994 の「熱絶縁材の熱伝導率及び熱抵抗の測定方法」において規定された平板熱流計法に準拠して測定した。
【0070】
(密度)
スチレン系樹脂発泡板の密度をJIS K7222に準拠して測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡板は、押出機から押出発泡させてなるスチレン系樹脂発泡板であって、スチレン系樹脂100重量部に対してヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を含有していると共に、気泡が、主として厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小径気泡と、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満の大径気泡とから構成され、押出方向に垂直な面で切断した切断面において、小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率が85%以上であり且つ小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率が30〜80%であり、更に、押出発泡後30日経過した発泡板に含まれるブタン量が1.5重量%以上で且つ3.0重量%未満であることを特徴とするので、断熱性及び難燃性の双方に優れていると共に厚みの厚いものとすることができる。
【0074】
又、請求項2に記載のスチレン系樹脂発泡板は、請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡板において、押出後30日経過後の熱伝導率が0.0280W/m・K以下であることを特徴とするので、断熱性が更に優れたものとなっている。
【0075】
更に、請求項3に記載のスチレン系樹脂発泡板の製造方法は、スチレン系樹脂100重量、ヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を押出機に供給して溶融、混練し、この溶融状態のスチレン系樹脂中にジメチルエーテル60〜80重量%及びブタン20〜40重量%からなる有機系発泡剤3〜15重量部、水0.5〜1.5重量部及び二酸化炭素0.3〜2.0重量部を圧入した後に押出機から押出発泡させることを特徴とするので、従来と同様の押出発泡要領でもって、小径気泡と大径気泡とが所定の割合で形成された断熱性に優れた厚さの厚いスチレン系樹脂発泡板を簡単に製造することができる。
Claims (3)
- 押出機から押出発泡させてなるスチレン系樹脂発泡板であって、スチレン系樹脂100重量部に対してヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を含有していると共に、気泡が、主として厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小径気泡と、厚み方向の気泡径が0.15mm以上で且つ0.30mm未満の大径気泡とから構成され、押出方向に垂直な面で切断した切断面において、小径気泡及び大径気泡の占める総面積の比率が85%以上であり且つ小径気泡及び大径気泡の占める総面積に対する小径気泡の占める総面積の比率が30〜80%であり、更に、押出発泡後30日経過した発泡板に含まれるブタン量が1.5重量%以上で且つ3.0重量%未満であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡板。
- 押出後30日経過後の熱伝導率が0.0280W/m・K以下であることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡板。
- スチレン系樹脂100重量、ヘキサブロモシクロドデカン2.0〜4.0重量部及び合成雲母0.3〜2.0重量部を押出機に供給して溶融、混練し、この溶融状態のスチレン系樹脂中にジメチルエーテル60〜80重量%及びブタン20〜40重量%からなる有機系発泡剤3〜15重量部、水0.5〜1.5重量部及び二酸化炭素0.3〜2.0重量部を圧入した後に押出機から押出発泡させることを特徴とするスチレン系樹脂発泡板の製造方法。
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