JP6408876B2 - 熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法 Download PDF

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本発明は、熱可塑性脂押出発泡断熱板の製造方法に関し、詳しくは、建築物の壁、床、屋根等の断熱材として好適に使用可能な熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法に関するものである。
ポリスチレン樹脂押出発泡断熱板は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから、板状に成形されたものが断熱材等として広く使用されている。このような発泡断熱板は、一般に押出機中でポリスチレン樹脂を加熱溶融した後、得られた溶融物に物理発泡剤を圧入、混練して得られる発泡性溶融混練物を、押出機先端に付設されたフラットダイなどから低圧域に押出発泡し、板状に賦形することにより製造されている。
前記のようなポリスチレン樹脂押出発泡断熱板の製造には、塩化フッ化炭化水素、水素原子含有塩化フッ化炭化水素、フッ化炭化水素などのフロン類が物理発泡剤として使用されてきたが、現在はオゾン層の保護や地球温暖化防止などの観点から、ノルマルブタン、イソブタンなどの炭化水素や、ハイドロフルオロオレフィン(以下、HFOともいう。)を含む発泡剤が使用されるようになってきている。なお、該HFOは、不燃性の発泡剤であり、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であるとともに、地球温暖化係数も小さく、得られる発泡断熱板の熱伝導率を下げる特性を有するものである。
なお、これらの炭化水素やハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤は熱伝導率が低いため、気泡中に残存していれば断熱性の向上に寄与するものの、徐々に逸散していくので押出発泡板の熱伝導率も徐々に上昇するという問題があった。この炭化水素等の物理発泡剤の逸散を防止することを目的とする技術が、特許文献1に開示されている。
特許文献1には、発泡断熱板を構成する基材樹脂として、ポリスチレン樹脂と特定のDSC曲線に基づくポリエステル樹脂の融解に伴う吸熱ピーク熱量が5J/g未満の非晶性のポリエステル樹脂との混合物を用いることにより、発泡剤の発泡断熱板からの逸散を効果的に防止して、長期にわたり優れた断熱性を達成できることが開示されている。
特開2013−82805号公報
しかし、近年では、さらなる長期断熱性の向上が求められるようになってきており、さらに長期断熱性が改良された発泡断熱板が求められている。
本発明は、従来の発泡断熱板よりも熱伝導率が小さく、より長期断熱性に優れる熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法を開発することを課題とするものである。
本発明によれば、以下に示す熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法が提供される。
[1]熱可塑性樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡する、厚さ10〜150mm、見かけ密度20〜50kg/mの押出発泡断熱板の製造方法において、該熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂と、JIS K7122(1987)に基づく融解熱量が5J/g未満であるポリエチレンテレフタレート共重合体(I)とからなり、該ポリスチレン系樹脂と該共重合体(I)の重量比率が95:5〜50:50であり、該共重合体(I)の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度(η1)が1000〜3000Pa・sであり、該物理発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンと炭素数1〜5の脂肪族アルコールを含み、該ハイドロフルオロオレフィンの配合量が該熱可塑性樹脂1kgあたり0.05〜0.5モル/kgであり、該炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量(b)に対する、該ハイドロフルオロオレフィンの配合量(a)のモル比(a/b)が0.3〜4であることを特徴とする熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
[2]前記ポリスチレン系樹脂の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度(η2)が800〜2000Pa・sであり、該ポリスチレン系樹脂の溶融粘度(η2)に対する前記共重合体(I)の溶融粘度(η1)の比(η1/η2)が1.0〜3.5である、前記1に記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
[3]前記共重合体(I)が、ジオール成分として環状エーテル骨格を有するグリコール成分を含む、前記1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
[4]前記ハイドロフルオロオレフィンが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
[5]前記物理発泡剤が、炭素数3〜5の飽和炭化水素とハイドロフルオロオレフィン(HFO)と炭素数1〜5の脂肪族アルコールと水とを含有し、その配合割合が、炭素数3〜5の飽和炭化水素20〜60モル%、HFO3〜50モル%、炭素数1〜5の脂肪族アルコール3〜40モル%、水5〜50モル%(ただし、HFOと、炭素数1〜5の脂肪族アルコールと、炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂と特定のポリエチレンテレフタレート共重合体(I)を特定量含有する熱可塑性樹脂を用い、更に該共重合体(I)として特定範囲の溶融粘度を有するものを使用することにより、得られた押出発泡断熱板の気泡膜断面写真において、該共重合体(I)の筋状相が確認される相構造の形成が可能となる。この気泡膜中における該共重合体(I)の相構造によりガスバリア効果が発現し、気泡内から大気中への物理発泡剤の逸散が抑制されるとともに、気泡内への空気の流入が抑制されて、従来の押出発泡断熱板よりも熱伝導率が小さく、より長期断熱性に優れる押出発泡断熱板が得られる。
図1は実施例1で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図2は実施例2で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図3は実施例3で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図4は実施例6で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図5は比較例1で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図6は比較例2で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。 図7は比較例3で得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真である。
以下、本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板(以下、単に発泡断熱板ともいう。)の製造方法においては、熱可塑性樹脂と物理発泡剤とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出機出口に付設されたフラットダイを通して押出発泡し、板状に賦形することにより、発泡断熱板が製造される。
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂と、特定のポリエチレンテレフタレート共重合体(I)(以下、単に共重合体(I)ともいう。)とからなるものである。
前記ポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレンやスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレンアクリレート共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用される。なお、上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
該ポリスチレン樹脂の中でも、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体が好ましく、さらにはポリスチレンがより好ましい。
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂は、温度200℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η2)が800〜2000Pa・sのものが好ましく、850〜1500Pa・sのものがより好ましい。ポリスチレン樹脂の溶融粘度(η2)が、この範囲内であることにより、発泡断熱板を製造する際の押出成形性が確保されると共に、共重合体(I)との混練性も向上するので、気泡膜中に、優れたガスバリア効果を発現可能な共重合体(I)相を形成することが容易となる。なお、ポリスチレン樹脂がその他の成分やリサイクル樹脂などを含有する場合には、それらを含むポリスチレン系樹脂組成物が上記の溶融粘度を有することが好ましい。
なお、気泡膜を構成するポリスチレン系樹脂中に形成される共重合体(I)相は、得られる押出発泡断熱板の気泡膜断面の透過型電子顕微鏡写真(以下、気泡膜断面写真または断面写真ともいう。)において、気泡膜の厚み方向に対して交差する方向に筋状に形成される相として観察されるものであることが好ましい。
さらに本発明で用いられるポリスチレン系樹脂は、200℃における溶融張力が30cN以上のポリスチレン(a)を含有することが好ましい。該ポリスチレン(a)が配合されることにより、ポリスチレン系樹脂相を形成するのに好適な溶融粘度を維持しつつ、押出発泡時に気泡が破泡し難くなるので、見掛け密度が低いと共に断熱性に優れる発泡断熱板を得ることが容易になる。かかる観点から、ポリスチレン(a)の溶融張力は35cN以上であることが好ましく、40cN以上であることがさらに好ましい。なお、ポリスチレン(a)の溶融張力の上限は概ね100cNであり、好ましくは60cNである。該溶融張力(MT)は、ASTM D1238に準じて測定された値であり、例えば、(株)東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定することができる。
また、該ポリスチレン(a)の重量平均分子量(Mw)は20×10〜70×10であることが好ましく、より好ましくは30×10〜60×10であることが好ましく、さらに好ましくは35×10〜55×10である。また、数平均分子量(Mn)は、9×10以上であることが好ましく、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは3以上であることが好ましく、より好ましくは4以上である。
さらに、ポリスチレン(a)のZ平均分子量(Mz)は70×10以上が好ましく、80×10以上がより好ましく、100×10以上がさらに好ましい。
本明細書におけるポリスチレン(a)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、いずれもゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC法)により求めた値である。具体的には、ポリスチレン系樹脂30mgをテトラヒドロフラン(THF)20mLに溶解させた後(ただし、THFへの不溶分が存在する場合には、ろ過により該不溶分を除去した後)、下記に示す分析条件にてGPC法による測定を行い、この測定によって得られたチャートのポリスチレン系樹脂によるピーク開始位置を基準にして水平(横軸と平行)にベースラインを引き、標準ポリスチレンを用いて作成した標準較正曲線により、各分子量を計算する。
使用機器:株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
カラム:昭和電工株式会社製カラム、商品名Shodex GPC KF−806、同KF−805、同KF−803をこの順に直列に連結して使用
カラム温度:40℃
溶媒:THF
流速:1.0mL/分
濃度:0.15w/v%
注入量:0.2ml
検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波
長254nm)
分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:1.9×107〜5.4×103
前記特定の溶融張力を有するポリスチレン(a)としては、例えば、分岐構造を有するマクロモノマーを用いて重合することにより得られた、DIC社製HP780などの、分子中に特殊な分岐構造が導入されたポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
該ポリスチレン(a)の含有割合はポリスチレン系樹脂100重量%中、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることが好ましい。また、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
本発明において用いられるポリエチレンテレフタレート共重合体(I)(以下、単に共重合体(I)ともいう。)は、JIS K7122(1987)に基づく樹脂の融解に伴う融解熱量(A)(以下、単に融解熱量(A)ともいう)が5J/g未満の共重合体である。ここで、融解熱量が5J/g未満である共重合体(I)とは、非晶性又は低結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体であることを意味する。
なお、共重合体(I)の結晶化度が高く、該融解熱量(A)が高すぎる場合には押出機内にて熱可塑性樹脂を発泡温度まで冷却する前に、ポリエチレンテレフタレート共重合体の結晶化が開始してしまい、目的とする発泡断熱板を得ることが困難となる。かかる観点から、共重合体(I)の融解熱量(A)は、2J/g未満(0も含む。)であることが好ましく、より好ましくは1J/g未満(0も含む。)である。
本明細書における、該融解熱量(A)は、JIS K7122(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置(以下、DSC装置という。)を使用して得られるDSC曲線に基づいて測定される。
本発明で用いられる共重合体(I)は、ジカルボン酸成分単位としてテレフタル酸成分単位、ジオール成分単位としてエチレングリコール成分単位を、主たる成分単位として有するものである。さらに、該共重合体(I)の結晶性を制御するために、その他の成分単位が用いられる。
該共重合体(I)の、その他のジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸或いはそのエステル形成性誘導体が使用できる。エステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数1〜4程度のアルキルエステルなどのエステル誘導体、ジアンモニウム塩などの塩、ジクロリドなどの酸ハロゲン化物などを挙げることができる。該共重合体(I)中のジカルボン酸成分単位としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物等の誘導体、またはシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で使用してもよく2種以上の複合使用でもよい。
該共重合体(I)の、その他のジオール成分としては、脂肪族系および芳香族系ジオール(二価のフェノールを含む)或いはそのエステル形成性誘導体を使用することができる。
該共重合体(I)中の、その他のジオール成分単位として、具体的には、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,6−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール、または3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下、スピログリコールという)や(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン(以下、ジオキサングリコールという)等の環状エーテル骨格を有するジオールを挙げることができる。これらのジオール成分は、単独使用でもよく2種以上の複合使用でもよい。
本発明において用いられる共重合体(I)は、前記の中でも、ジオール成分単位として、環状エーテル骨格を有するジオール成分単位を含有するものが好ましく、これらの環状エーテル骨格を有するジオール成分の合計量はジオール成分中10モル%以上であることが好ましく、ジオール成分中15〜60モル%であることがより好ましく、20〜50モル%であることがさらに好ましい。
また、該共重合体(I)は、ジオール成分単位として、環状アセタール骨格を有するジオール成分単位を含有するものがより好ましい。該環状アセタール骨格を有するジオール成分単位としては、スピログリコールまたはジオキサングリコールが好ましい。
また、該ジオール成分単位として、シクロヘキサンジメタノール成分単位、ネオペンチルグリコール成分単位から選択される一種類以上を含むものも好ましい。なお、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール成分単位の含有量はジオール成分中25〜40モル%であることが好ましい。
該共重合体(I)の結晶性の程度は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸の他にイソフタル酸等を使用してそれらジカルボン酸成分単位のモル比を変える方法や、ジオール成分としてエチレングリコールの他にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール等を使用してそれらジオール成分単位のモル比を変える方法等により調整することができる。
該共重合体(I)は、例えば少量の安息香酸,ベンゾイル安息香酸,メトキシポリエチレングリコール等の単官能化合物から誘導される成分単位によって分子末端を封止されていてもよい。また、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される成分単位を少量含んでいてもよい。
本発明においては、前記共重合体(I)の温度200℃、剪断速度100sec−1の条件下における溶融粘度(η1)が1000〜3000Pa・sであることを要する。溶融粘度がこの範囲の共重合体(I)は、ポリスチレン系樹脂との混練性に優れ、気泡膜を構成するポリスチレン系樹脂中にガスバリア効果に優れる相構造を容易に形成することができる。該相構造は、前記したように、本発明の発泡断熱板の気泡膜断面写真において筋状相として確認されるものが好ましく、長さ5μm以上の相として確認されるものがより好ましく、連続相として確認されるものがさらに好ましい。また、該厚み方向に複数の相が確認されることが更に好ましい。該筋状相が確認される相構造は、得られる発泡断熱板の熱伝導率を長期に亘って低い状態に保つことができる。該溶融粘度が高すぎると共重合体(I)が島状に分散したり、塊状となる虞がある。一方、該溶融粘度が低すぎると押出機内でのダイ内の圧力の低下が起こり、断熱板としての形状を保持することが困難となるおそれがある。そのため、該溶融粘度(η1)は1100〜2600Pa・sであることが好ましく、1200〜2500Pa・sがより好ましく、1400〜2400Pa・sが特に好ましい。
更に、本発明においては、前記ポリスチレン系樹脂の溶融粘度(η2)に対する前記ポリエチレンテレフタレート共重合体(I)の溶融粘度(η1)の比(η1/η2)が1.0〜3.5であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0であり、更に好ましくは1.3〜2.5であり、最も好ましくは1.4〜2.3である。該比がこの範囲内であれば、該ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)との混練性が良好となり、押出断熱板の気泡膜断面写真において該共重合体(I)が筋状相として確認される共重合体(I)相が形成され易くなる。
本発明における熱可塑性樹脂において、前記ポリスチレン系樹脂と前記共重合体(I)の重量比率(ポリスチレン系樹脂:共重合体(I))は、95:5〜50:50である。共重合体(I)の配合量が少なすぎると、発泡断熱板のガスバリアー性の向上効果が低下する虞がある。一方、共重合体(I)の配合量が多すぎると、熱可塑性樹脂の溶融張力が低下して押出発泡成形が困難になり、低見かけ密度(高発泡倍率)の発泡断熱板が得られなくなる虞れがある。
さらに、ガスバリアー性に優れる共重合体(I)相を形成可能な観点から、ポリスチレン樹脂:共重合体(I)の配合割合は、85:15〜51:49であることが好ましく、80:20〜52:48であることがより好ましく、70:30〜54:46であることがさらに好ましい。
本発明においては、溶融粘度が前記範囲の共重合体(I)を用いることにより、前記ガスバリア効果を発現可能な、共重合体(I)相がポリスチレン系樹脂中に存在するモルフォロジーを形成することができる。該モルフォロジーとしては、得られた押出発泡断熱板の気泡膜断面写真において該共重合体(I)の筋状相が複数形成されていることが確認される相構造であることが好ましく、該共重合体(I)相の連続性が向上してポリスチレン系樹脂と同様に連続相を形成し、共連続相となっていることがより好ましい。共重合体(I)がこのようなモルフォロジーを形成している場合には、押出発泡後、気泡中に残存していた物理発泡剤が大気中に逸散することが効果的に防止され、熱伝導率の低い物理発泡剤が気泡中に長期に亘って残存するとともに、大気からの酸素や窒素の発泡断熱板の気泡内への流入が抑制されることにより、発泡断熱板の熱伝導率を長期にわたって低い状態に保たれることが可能となると考えられる。
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲内で、前記熱可塑性樹脂中に、前記ポリスチレン系樹脂及び共重合体(I)以外のその他の樹脂や共重合体、例えばポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマーやポリフェニレンエーテル樹脂などを、配合目的に応じて混合することができる。なお、その配合量の上限は、発泡断熱板を構成する熱可塑性樹脂全体を100重量%として、30重量%であることが好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
本発明で用いられる物理発泡剤としては、有機物理発泡剤及び/又は無機物理発泡剤を用いることができる。該有機物理発泡剤としては、炭素数3〜5の飽和炭化水素、炭素数1〜5の脂肪族アルコール、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、エーテル類、塩化アルキル類が挙げられる。また、該無機物理発泡剤としては、水、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。これらの発泡剤は、単独、又は2種以上を混合して使用することができる。
前記炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。
前記ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランスHFO−1234ze)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シスHFO−1234ze)、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンなどのフッか不飽和炭化水素や、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンなどの塩化フッ化不飽和炭化水素が挙げられる。本発明方法においては、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから選択される少なくとも1種を、発泡断熱板が含有することが、長期断熱性を達成するために好ましい。
前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールとしては、例えばメチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール(イソブチルアルコール)、tert−ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、n−アミルアルコール,sec−アミルアルコール,イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール等が挙げられる。これらの中では、エタノールが環境、人体への安全性に優れるため好ましい。
前記エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記塩化アルキル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチルなどの蟻酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどが挙げられる。
該物理発泡剤の熱可塑性樹脂1kgあたりの合計配合量は、所望する見かけ密度との関連で適宜選択されるが、見かけ密度が20〜50kg/mの発泡断熱板を得るには、概ね0.5〜3モルであり、好ましくは0.6〜2.5モルである。
本発明においては、前記の物理発泡剤の中でも、前記炭素数3〜5の飽和炭化水素と前記ハイドロフルオロオレフィン(HFO)と前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールと水が組み合わされた物理発泡剤(A)が好ましく、その配合割合は、炭素数3〜5の飽和炭化水素20〜60モル%、HFO3〜50モル%、炭素数1〜5の脂肪族アルコール3〜40モル%、水5〜50モル%(ただし、HFOと、炭素数1〜5の脂肪族アルコールと、炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)であることが好ましい。
該物理発泡剤(A)において、前記飽和炭化水素の配合割合が前記範囲内であれば、押出安定性を低下させることなく、低見かけ密度化が可能であり、また、多量の難燃剤を添加しなくても、長期断熱性に優れる発泡断熱板を容易に得ることができる。また、該飽和炭化水素は、ポリスチレン樹脂に対する溶解度が高いので押出安定性を向上させることができ、ポリスチレン樹脂に対するガス透過速度が遅いので、比較的長期にわたって熱伝導率を低く保つことができる。かかる観点から、該飽和炭化水素の配合割合は、25〜60モル%が好ましく、より好ましくは30〜50モル%である。
該飽和炭化水素の熱可塑性樹脂1kgあたりの配合量は0.1〜3モルが好ましく、より好ましくは0.2〜2.5モル、更に好ましくは0.3〜2モルである。この範囲内であれば、安定した押出発泡が可能となり、所望される見かけ密度の発泡断熱板を得ることが容易となる。
前記ハイドロフルオロオレフィンは、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が非常に小さく、環境に与える負担が小さい発泡剤である。さらに、気体状態の熱伝導率が低く、燃えにくい特性を有するので、前記飽和炭化水素と併用することによって該飽和炭化水素の使用量を減らすことができ、難燃剤の添加量を低減させることができる。
該物理発泡剤(A)において、該HFOの配合割合が前記範囲内であれば、得られる発泡断熱板の独立気泡率、見かけ密度が低下したり、発泡状態が悪くなったりすることなく、気泡内にHFOを多く残存させることができるので、長期断熱性に優れた発泡断熱板が得られる。かかる観点から、該HFOの配合割合は、5〜40モル%が好ましく、より好ましくは10〜30モル%である。
該HFOの熱可塑性樹脂1kgあたりの配合量は、0.05〜0.5モル/kgであることが好ましい。該配合量がこの範囲内であれば、押出発泡後の発泡断熱板に、HFOが有効量残存して、長期断熱性を有する押出発泡断熱板となる。かかる観点から、該HFOの配合量は0.1〜0.4モル/kgであることがより好ましく、0.15〜0.3モル/kgがさらに好ましい。
該物理発泡剤(A)において、前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合割合が前記範囲内であれば、所望される見かけ密度を得つつ、ガスバリア性に優れる前記共重合体(I)相を形成することができる。
また、該炭素数1〜5の脂肪族アルコールは、ポリスチレン系樹脂よりも共重合体(I)の可塑性を特異的に向上させる特性を有している。その働きにより、熱可塑性樹脂中におけるポリスチレン樹脂に対する共重合体(I)の粘度を相対的に低下させることによって、該共重合体(I)の筋状相を形成しやすくすることができる。該炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合割合は、5〜30モル%がより好ましく、更に好ましくは8〜20モル%である。
該炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量は熱可塑性樹脂1kgあたり0.05〜0.3モルであることが好ましく、0.07〜0.28モルがより好ましく、0.08〜0.25モルが更に好ましく、0.10〜0.23モルが特に好ましい。
更に、該物理発泡剤(A)において、前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量(b)に対する、前記ハイドロフルオロオレフィンの配合量(a)のモル比(a/b)は0.3〜4であることが好ましい。該モル比がかかる範囲内であれば、優れた長期断熱性を有する発泡断熱板を得ることができる。
かかる観点から、該モル比は0.5〜3.5であることがより好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
なお、従来の前記炭化水素やHFOを発泡剤として用いた発泡断熱板においては、これらの発泡剤は従来用いられていたフロン類に比べるとポリスチレン樹脂に対する透過速度が相対的に速いことから、発泡後、徐々に発泡剤が発泡体から逸散してしまい、その結果、発泡断熱板の長期断熱性が低下する傾向にあった。これに対し、本発明により得られる発泡断熱板においては、発泡断熱板を構成する熱可塑性樹脂がポリスチレン樹脂と前記共重合体(I)とからなる上に、該共重合体(I)として特定範囲の溶融粘度のものを用いることによって、得られた押出発泡断熱板の気泡膜断面写真において、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂の連続相中に、該共重合体(I)の筋状相が複数確認される相構造のモルフォロジーとして形成される。その結果、本発明により得られる発泡断熱板においては、物理発泡剤、特にHFOの逸散が効果的に防止され、大気からの気泡内への空気の流入も防止されることにより、長期断熱性が従来の発泡断熱板より優れたものとなる。
なお、該物理発泡剤(A)においては、さらに、水を物理発泡剤として用いることが好ましい。水を、前記飽和炭化水素と前記HFOと前記脂肪族アルコールに加えて用いることにより、得られる発泡断熱板の発泡倍率をさらに向上させて、見かけ密度を小さくすることが可能となる。水の配合割合は、5〜50モル%であることが好ましい(ただし、HFOと、前記脂肪族アルコールと、前記飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)。
該水の配合割合がこの範囲内であれば、所望される見かけ密度を得つつ、発泡断熱板の気泡形状の悪化を防止することが容易であり、長期断熱性に優れた発泡断熱板を容易に得ることが可能となる。かかる観点から、該配合割合は、10〜40モル%、より好ましくは15〜35モル%である。
本発明により得られる熱可塑性樹脂押出発泡断熱板は、主に建築用断熱板として使用されることから、JIS A9511(2006R)5・13・1に規定される、「測定方法A」に記載の押出ポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足することが好ましい。該規格を満足する熱可塑性樹脂押出発泡断熱板は、前記飽和炭化水素の発泡断熱板中の含有量の調整に加えて、難燃剤を添加することにより達成される。
本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板に配合できる難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく使用される。該臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤または臭素化されたブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤などが挙げられる。
該臭素化ビスフェノール系難燃剤とはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、又はこれらの誘導体の臭素化物であり、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などが挙げられる。
該臭素化イソシアヌレート系難燃剤とは、イソシアヌル酸又はイソシアヌル酸誘導体の臭素化物であり、モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
該臭素化ブタジエン−スチレン共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体など、従来公知のものがそのまま使用でき、ポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体などが挙げられる。具体的には、Chemtura社のEmerald3000、ICL−IP社のFR122Pなどの市販品が挙げられる。
該臭素系難燃剤の総配合量は、所望の難燃性に応じて適宜決定されるものであるが、JIS A9511(2006R)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満足するポリスチレン系樹脂押出発泡体を得るためには、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部配合することが好ましく、より好ましくは2〜8重量部、である。該総配合量が、この範囲内であれば、難燃剤が発泡性を阻害することなく、良好な表面状態の押出発泡体が得られる。
なお、前記難燃剤は、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤及び臭素化ブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤以外のその他の難燃剤を含むことができる。その他の難燃剤の添加量は、臭素系難燃剤の添加量全体に対して20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
前記難燃剤の熱可塑性樹脂への配合方法としては、所定割合の難燃剤を熱可塑性樹脂と共に押出機上流に設けられている供給部に供給し、押出機中にて混練する方法を採用することができる。その他、押出機途中に設けられた難燃剤供給部より溶融熱可塑性樹脂中に難燃剤を供給する方法も採用することができる。尚、難燃剤を押出機に供給する場合、難燃剤と熱可塑性樹脂を構成するポリスチレン系樹脂とをドライブレンドしたものを押出機に供給する方法や、難燃剤マスターバッチや難燃剤溶融混練物を作製し、熱可塑性樹脂と共に押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の点から難燃剤マスターバッチを作製し押出機に供給する方法を採用することが好ましい。
本発明においては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、およびヒンダードアミン系安定剤等の安定剤を熱可塑性樹脂に添加することができる。これらの安定剤は、加工時に臭素系難燃剤が分解して発生するハロゲンラジカルやハロゲンイオンを補足することにより、ポリスチレン系樹脂の分子量低下や着色を抑制することができるものである。
本発明においては、難燃助剤として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンなどのジフェニルアルカンや、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテンなどのジフェニルアルケン、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンなどのポリアルキルベンゼン、トリフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等を熱可塑性樹脂に配合することができる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。
本発明においては、基材樹脂としての前記熱可塑性樹脂に、断熱性向上剤を配合してさらに断熱性を向上させることができる。断熱性向上剤としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物、アルミ等の金属、セラミック、カーボンブラック、黒鉛等の微粉末、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイトなどが例示される。これらは1種又は2種以上を使用することができる。該断熱性向上剤の添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部の範囲で使用される。
また、本発明においては基材樹脂に、必要に応じて、気泡調整剤、顔料,染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を適宜配合することができる。
前記気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。なかでも難燃性を阻害することがなく気泡径を調整することが容易であるタルクが好適である。気泡調整剤の添加量は、該気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、概ね、0.01〜8重量部、更に0.01〜5重量部、特に0.05〜3重量部が好ましい。
該気泡調整剤も他の添加剤と同様にマスターバッチを調製して使用することが添加剤の分散性の点から好ましい。気泡調整剤のマスターバッチの調製は、例えば、気泡調整剤としてタルクを使用した場合、基材樹脂に対してタルクの含有量が20〜80重量%となるように調製されることが好ましく、30〜70重量%となるように調整されることがより好ましい。
以下、本発明により得られる熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の諸物性について詳述する。
本発明により得られる発泡断熱板においては、その気泡膜を構成する熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂と前記共重合体(I)から構成されている。さらに、本発明によれば、特定の溶融粘度を有する共重合体(I)を用いることにより、共重合体(I)が島状または塊状に分散することを抑制して、ポリスチレン樹脂の連続相中にガスバリア効果を発現可能な共重合体(I)相を形成させることができる。該共重合体(I)相は、押出発泡断熱板の気泡膜断面写真において、複数の筋状相として確認されるものである。
なお、本明細書において、気泡膜の断面写真中に確認される筋状の共重合体(I)相とは、断面写真中で気泡膜に沿う方向(該気泡膜の長手方向、気泡膜の厚み方向と直交する方向)に線状または帯状に共重合体(I)が存在して相をなしていることをいう。
該筋状の共重合体(I)相の長さは、優れたバリヤー効果を得ることができることから、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上である。また、該長さを有する共重合体(I)相が厚み方向に複数存在することが好ましく、3以上存在することがより好ましい。
前記共重合体(I)相は空気の気泡膜中への浸入を抑え、ハイドロフルオロオレフィンをはじめとする物理発泡剤の大気中への逸散を抑えることができるので、発泡断熱板の熱伝導率の上昇を抑え、熱伝導率を長期に亘り低く抑えることができる。さらに、本発明により得られる発泡断熱板においては、特定の共重合体(I)相を形成することにより、気泡中への空気の流入が効果的に抑制される。
本発明により得られる発泡断熱板の見かけ密度は、20〜50kg/mである。見かけ密度が小さすぎる場合には、発泡断熱板を製造すること自体かなり困難であり、用途によっては機械的強度が不十分な発泡断熱板となる。一方、見かけ密度が大きすぎる場合は、発泡断熱板の厚みを相当厚くしない限り、充分な断熱性を発揮させることが困難であり、また軽量性の点からも好ましくない。かかる観点から、25〜45kg/mであることが好ましい。
該発泡断熱板の厚みは10〜150mmである。厚みが薄すぎる場合には、特に断熱材として使用する場合に要求される断熱性が不十分となる虞がある。一方、押出機の大きさにもよるが、厚みが厚すぎる場合には発泡押出成形が難しくなる虞がある。なお、厚みは15mm〜120mmがより好ましい。
該発泡断熱板の厚み方向平均気泡径は、好ましくは0.05〜2mmであり、より好ましくは0.06〜0.7mmであり、さらに好ましくは0.06〜0.3mmである。厚み方向の平均気泡径が該範囲内にあることにより、前記見かけ密度範囲の構成と相俟って赤外線透過を抑制することができるなどの理由からより一層高い断熱性を有する発泡断熱板となるなどの利点がある。
本明細書における平均気泡径の測定方法は次の通りである。
厚み方向の平均気泡径(DTav)、幅方向の平均気泡径(DWav)は、発泡断熱板の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計3箇所において、写真中のセル数が200から500個程度になるように拡大倍率を50倍から200倍程度の範囲で調整した拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の厚み方向の気泡径及び幅方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めることができる。
押出方向の平均気泡径(DLav)は、発泡断熱板の幅方向を二等分する位置で、発泡断熱板を押出方向に切断して得られた押出方向垂直断面の、任意の3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の押出方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めることができる。
また、発泡断熱板の水平方向の平均気泡径Dは、DWavとDLavの算術平均値とする。
本発明により得られる発泡断熱板においては、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、前記測定方法により求められたDをDで除すことにより算出される値(D/D)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下する虞があり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、発泡断熱板の寸法安定性も低下する虞がある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。そのような観点から、該気泡変形率は、0.8〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。気泡変形率が該範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有する熱可塑性樹脂押出発泡断熱板となる。
本発明により得られる発泡断熱板の独立気泡率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。独立気泡率が高い程、HFO等の物理発泡剤が長く気泡中に留まることが可能となり、高い断熱性能を長期に亘って維持することができる。独立気泡率S(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定される。
さらに、本発明により得られる熱可塑性樹脂発泡断熱板は、JIS A9511(2006R)4.2で規定される熱伝導率の規格を満足することが望ましい。
さらに、本発明により得られる発泡断熱板の熱伝導率は、0.0270W/(m・K)以下であることが好ましく、0.0260W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.0250W/(m・K)であることが更に好ましい。該熱伝導率が該範囲内であれば断熱性に優れる、建材用途に好適な発泡断熱板となる。なお、熱伝導率は、製造直後から変動するが、発泡断熱板の使用時に、該範囲内の熱伝導率となっていればよい。さらに、該発泡断熱板は、長期の断熱性にも優れるという点で、製造後100日経過後の熱伝導率においても、0.0248W/(m・K)以下であることが望ましく、0.0245W/(m・K)以下であることが更に好ましい。本発明により得られる発泡断熱板は、熱可塑性樹脂として、前記ポリスチレン樹脂と共重合体(I)からなり、更に特定範囲の溶融粘度を有する共重合体(I)を用い、前記物理発泡剤を用いて押出発泡していることから、気泡膜中で共重合体(I)相がガスバリア効果を発揮する前記モルフォロジーで存在し、前記HFOの発泡断熱板からの逸散と気泡内への空気の流入が効果的に防止される。したがって、製造後100日経過後であっても、熱伝導率が低く維持される。
本発明により得られる発泡断熱板中のHFOの残存量は、製造後100日経過後で発泡断熱板1kg当たり0.18モル以上存在することが好ましい。該残存量が該範囲内であれば、HFOが断熱性向上効果を発揮して、より断熱性に優れるものとなる。
一方、HFO残存量の上限は、発泡断熱板の見かけ密度などとも関連するが、概ね0.8モルであり、好ましくは0.7モルである。なお、HFOの残存量は、製造直後から変動するものであるが、発泡断熱板の使用時に、該範囲内のHFO残存量であればよい。
本明細書における発泡断熱板中のHFO残存量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。具体的には、発泡断熱板から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し発泡断熱板中のHFOをトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って発泡断熱板中のHFO残存量を求める。
本発明の製造方法で得られる発泡断熱板においては、製造100日後の気泡内の空気分圧が1atm以下であることが好ましい。該発泡断熱板は、前記共重合体(I)が特有の相構造を形成することにより、発泡体の熱伝導率を上昇させる要因となる空気の気泡内への流入を抑制することができる。従って、従来の押出発泡体よりも長期間、気泡内の空気分圧が低く保持され、空気の流入量が少なくなる。かかる観点から、製造100日後の空気分圧は、0.7atm以下であることがより好ましく、0.65atm未満であることがさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用したポリスチレン系樹脂を次に示す。実施例及び比較例においては、下記に示すポリスチレン1、ポリスチレン2(ポリスチレン(a))、ポリスチレン3を、下記に示す重量比で配合した、樹脂1、樹脂2を用いた。
樹脂1:ポリスチレン1と、ポリスチレン2とを、67:33の重量で混合したポリスチレン系樹脂。
なお、樹脂1を溶融混練してペレットとし、このペレットの溶融粘度を測定すると、溶融粘度は(200℃、100s−1)920Pa・sであった。
樹脂2:ポリスチレン1と、ポリスチレン2と、ポリスチレン3とを、67:23:10の重量比で混合したポリスチレン系樹脂。
なお、樹脂2を溶融混練してペレットとし、このペレットの溶融粘度を測定すると、溶融粘度は(200℃、100s−1)950Pa・sであった。
ポリスチレン1:PSジャパン社製グレード名679、溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s−1)=673Pa・s、溶融張力(200℃)=3cN 、Mn=7.3×10、Mw=20×10、Mz=38×10
ポリスチレン2:DIC社製グレード名HP780、溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s−1)=1946Pa・s、溶融張力(200℃)=45cN、Mn=10×10、Mw=50×10、Mz=190×10
ポリスチレン3:PSジャパン社製グレード名GX154、溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s−1)=1625Pa・s、溶融張力(200℃)=25cN、Mn=10×10、Mw=32×10、Mz=76×10
実施例及び比較例で使用した共重合体(I)を表1に示す。なお、SPET B、C、Dは、SPET Aを押出機を用いて表1に示す加熱処理条件で処理することにより製造し、PETG Bは、PETG Aを押出機を用いて表1に示す加熱処理条件で処理することにより製造した。
気泡調整剤
ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
難燃剤
(i)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)(第一工業製薬製SR130、表中「SR130」と記載する)
(ii)テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(第一工業製薬製SR720、表中「SR720」と記載する)
を用いた。
物理発泡剤
下記(1)〜(4)を物理発泡剤として用いた。
(1)炭素数3〜5の飽和炭化水素:イソブタン(略称「i−Bu」)
(2)HFO:トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)
(3)炭素数1〜5の脂肪族アルコール:エタノール
(4)水
装置
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、幅方向断面が長方形(間隙1mm×幅115mm)の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第2押出機の出口に連結されており、更に該フラットダイの樹脂出口にはこれと平行するように上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板が設置された賦形装置(ガイダー)が付設されている製造装置を用いた。
実施例1〜6、比較例1〜3
表2、表3中に示すそれぞれの配合量となるように樹脂、難燃剤及び気泡調整剤を、前記第1押出機に供給した。次に、これらを220℃まで加熱し、溶融、混練して樹脂溶融物とし、第1押出機の先端付近に設けられた発泡剤注入口から表2、表3中に示す配合組成の物理発泡剤を表中に示す割合で溶融物に供給し、溶融混練して発泡性樹脂溶融物とした。この発泡性樹脂溶融物を続く第2押出機及び第3押出機に移送して樹脂温度を表中に示すような発泡適性温度(表中では押出樹脂温度と表記した。この発泡温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性樹脂溶融物の温度である。)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップからガイダー内に押出し、発泡させながら厚み方向に28mmの間隙で平行に配置されたガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し、熱可塑性樹脂押出発泡断熱板を製造した。得られた発泡断熱板の物性、評価を実施例1〜3、比較例1、2については表2に、実施例4〜6、比較例3については表3にまとめて示す。
実施例1においては、ポリスチレン系樹脂「樹脂1」56重量%と、共重合体(I)「PETG B」44重量%とからなる熱可塑性樹脂を用い、物理発泡剤としてイソブタン、HFO、エタノール、水を表3に示す配合で混合したものを用いた。得られた発泡断熱板の電子顕微鏡による断面写真を撮影したところ、気泡膜の断面において、図1に示すように、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂中で筋状相を複数形成していること、更にポリスチレン系樹脂と共重合体(I)とが共連続相を形成していることが確認できる。表2から、得られた発泡断熱板は経時による熱伝導率の変化が小さく、長期断熱性に優れていることが分かる。なお、断熱性は、発泡体中の発泡剤の散逸や気泡中への空気の流入に関係するが、実施例1における断熱性の効果は、気泡中への空気の流入が効果的に抑制されているためであると考えられる。
実施例2においては、共重合体(I)として「SPET C」を用いた以外、実施例1と同じ配合で発泡断熱板を製造し、実施例3においては、共重合体(I)として「SPET D」を用いた以外、実施例1と同じ配合で発泡断熱板を製造した。図2、3に気泡膜の断面写真を示す。実施例2〜3においても、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂中で筋状相を複数形成しており、さらに共重合体(I)とポリスチレン系樹脂が共連続相を形成していることが確認でき、長期断熱性に優れた発泡断熱板が得られた。
一方、比較例1、2においては、溶融粘度の高い共重合体(I)「SPET A」「PETG A」を用いて発泡断熱板を製造した。共重合体(I)の溶融粘度が高いと、共重合体(I)が島状構造となる傾向にある(図5、図6)。また、製造後5日後または7日後と100日後の熱伝導率を実施例と対比すると、実施例の発泡断熱板の方が経時変化量(熱伝導率差)が小さく、より長期にわたって断熱性を維持できることが分かる。
実施例4においては、ポリスチレン系樹脂を樹脂2に変え、ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)の重量比を変えた以外、実施例1と同様に発泡断熱板を製造した。実施例5においては、ポリスチレン系樹脂を樹脂2に変え、ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)の重量比を変えた以外、実施例2と同様に発泡断熱板を製造した。また、実施例6においては、ポリスチレン系樹脂を樹脂2に変え、ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)の重量比を変えた以外、実施例3と同様に発泡断熱板を製造した。図4に気泡膜の断面写真を示す。共重合体(I)が筋状相を複数形成していることが確認できる。なお、実施例4、実施例5においても、実施例6と同様の相状態が観察された。
比較例3は、実施例4〜6に対し、溶融粘度の高い共重合体(I)を用いた例である。共重合体(I)の溶融粘度が高いと、共重合体(I)が島状構造となる傾向にあり(図6)、得られた発泡断熱板は、長期断熱性能に劣ることが分かる。
なお、共重合体(I)は樹脂自体に輻射熱伝導を抑制する効果があり、実施例1〜3と実施例4〜6の対比から、共重合体(I)の配合量が増加すると、押出発泡断熱板の断熱性能も向上することが分かる。
表中の各物性は次のように測定した。
(溶融粘度)
溶融粘度の測定は、温度200℃、剪断速度100sec−1の条件下において行い、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを用いた。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃にし、熱風循環式乾燥機によりガラス転移温度より10℃低い温度で十分に乾燥させた樹脂を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから測定し、そこで得られた溶融粘度(Pa・s)を採用した。なお、測定の際にオリフィスから押出されるストランドには気泡ができるだけ混入しないようにして測定した。
なお、共重合体(I)の場合、測定前に、80℃の真空オーブンで12時間乾燥を行った。
(見かけ密度)
見かけ密度の測定はJIS K7222:1999に準拠して行った。
(独立気泡率)
本明細書において発泡断熱板の独立気泡率は、前記ASTM−D2856−70の手順Cにより各サンプルの独立気泡率を測定し、それらの測定値を算術平均した値(5点以上)として下記式(1)から求めた。押出発泡断熱板の中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルを測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を採用した。なお、カットサンプルは発泡断熱板から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、発泡断熱板表皮を有しないサンプルとした。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ) (1)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm)(発泡断熱板のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡断熱板を構成する基材樹脂の密度(g/cm
(厚み方向の平均気泡径)
厚み方向の平均気泡径(DTav)については、前記方法により測定した。厚み方向の平均気泡径(DTav)は、押出発泡体の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計三箇所の拡大倍率50倍の拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の厚み方向の気泡径及び幅方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めた。
(発泡断熱板の気泡膜のMD方向断面写真)
まず、発泡断熱板の中央部分を適当な大きさに切り出した押出発泡体をエポキシ樹脂中に入れ包埋させた。包埋後、ガラスナイフ等で厚み方向に垂直な面を切り出し、ダイヤモンドナイフ等で断面から厚さ約0.1μmの発泡体の超薄型切片を切り出した。切り出した切片(サンプル)をCuメッシュに載せた状態で2%OsO水溶液数mlと共にシャーレ内に入れ室温で密封し、OsO蒸気に暴露させ、染色を30分間行った。次にサンプルをNaClO水溶液数mlと小スパチュラ1杯分のRuCl結晶を使用直前に混合した液とともにシャーレ内に入れ室温で密封し、発生するRuO蒸気に暴露させて30分間染色した。染色された発泡体の超薄型切片を透過型電子顕微鏡を用いて撮影した。撮影した電子顕微鏡写真において白い部分がポリスチレン樹脂であり、黒い部分が共重合体(I)である。なお、透過型電子顕微鏡としては、日本電子株式会社製透過電子顕微鏡「JEM−1010」を使用した。また、該写真を用いて、相の長さ、厚み方向の平均長さ(厚み)、相数を測定した。なお、本発明において上記測定が行われる気泡膜部は、発泡体断面において気泡膜(セル膜)が3個以上会合する会合部以外の部分である。気泡膜の延伸状態にもよるが、気泡膜部は、一つの気泡膜における膜厚みの最も薄い部分からその1.3倍の膜厚みまでの部分とした。
[撮影条件]
透過型電子顕微鏡:日本電子株式会社製透過電子顕微鏡「JEM−1010」
加速電圧:100kV
染色:四酸化ルテニウム
倍率:20000倍
(共重合体(I)の相状態)
前記発泡断熱板の気泡膜の断面写真を用い、モルフォロジーを目視にて観察し、次の基準で評価した。なお、
前記方法により観察された画像上に、画像の気泡膜に沿う方向の中心及び中心から長手方向左右2.5μmの点の計3点に、気泡膜厚み方向に線分を引き、該線分と交わる、長さが5μm以上の筋状の相の数を計測した。相がセル膜中で分岐、合流していた場合、線分と交わった点で分かれているものは複数の相として計測した。同様の操作を、計3点以上の箇所の拡大画像について行い、その平均値を採用した。
○:共重合体(I)が筋状相を複数形成している。
×:共重合体(I)が塊状相を形成している。
(熱伝導率)
発泡断熱板の熱伝導率は、製造直後の発泡断熱板を、23℃、湿度50%の雰囲気下に5日、または100日保存した後、以下の方法で測定した。
発泡断熱板から、縦200mm×横200mm×厚み10mmの発泡断熱板の、表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片についてJIS A1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定した。
(HFO残存量)
発泡断熱板のHFO残存量は、製造直後の発泡断熱板を、23℃、湿度50%の雰囲気下に5日、または100日保存した後、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定した。具体的には、発泡断熱板から、適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し発泡断熱板中のHFOをトルエン中に溶解させて測定用試料とし、ガスクロマトグラフ分析を行って発泡断熱板中のHFO残存量を求めた。
(発泡状態)
発泡状態の評価は、次の基準で行った。
◎:発泡状態がきわめて良好である。
○:発泡状態は良好であるが、表面の一部に凹凸が存在する
△:発泡状態が悪く、表面に凹凸が多数発生する
×:板状に成型できない
(燃焼性)
得られた発泡断熱板について、JIS A9511(2006R)5・13・1に準拠して、5・13・1の測定方法Aの燃焼性試験を行った。測定は一の発泡断熱板に対して試験片を5個切り出し、下記基準により評価した。
○:全ての試験片において3秒以内で炎が消え、残塵がなく、かつ燃焼限界線を超えて燃焼しない。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を超える。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡する、厚さ10〜150mm、見かけ密度20〜50kg/mの押出発泡断熱板の製造方法において、
    該熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂と、JIS K7122(1987)に基づく融解熱量が5J/g未満であるポリエチレンテレフタレート共重合体(I)とからなり、
    該ポリスチレン系樹脂と該共重合体(I)の重量比率が95:5〜50:50であり、
    該共重合体(I)の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度(η1)が1000〜3000Pa・sであり、
    該物理発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンと炭素数1〜5の脂肪族アルコールを含み、該ハイドロフルオロオレフィンの配合量が該熱可塑性樹脂1kgあたり0.05〜0.5モル/kgであり、該炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量(b)に対する、該ハイドロフルオロオレフィンの配合量(a)のモル比(a/b)が0.3〜4であることを特徴とする熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
  2. 前記ポリスチレン系樹脂の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度(η2)が800〜2000Pa・sであり、該ポリスチレン系樹脂の溶融粘度(η2)に対する前記共重合体(I)の溶融粘度(η1)の比(η1/η2)が1.0〜3.5である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
  3. 前記共重合体(I)が、ジオール成分として環状エーテル骨格を有するグリコール成分を含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
  4. 前記ハイドロフルオロオレフィンが1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
  5. 前記物理発泡剤が、炭素数3〜5の飽和炭化水素とハイドロフルオロオレフィン(HFO)と炭素数1〜5の脂肪族アルコールと水とを含有し、その配合割合が、炭素数3〜5の飽和炭化水素20〜60モル%、HFO3〜50モル%、炭素数1〜5の脂肪族アルコール3〜40モル%、水5〜50モル%(ただし、HFOと、炭素数1〜5の脂肪族アルコールと、炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
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