本発明で用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体又はその誘導体から得られるランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体、臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、分岐構造を有するスチレン系樹脂などを用いることができる。
スチレンと共重合可能な単量体としては、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物又はその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、メルトフローレイト(以下、「MFR」という。)が0.1〜50g/10分の範囲のものを用いることが好ましい。MFRが上記範囲のスチレン系樹脂が用いられることにより、押出発泡体を成形加工する際のスチレン系樹脂組成物の吐出量の調整や、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の厚み、幅、密度、独立気泡率、又は表面性の調整がしやすいという利点がある。つまり、押出発泡体の成形性に優れるという利点がある。また、MFRが上記範囲のスチレン系樹脂が用いられることにより、スチレン系樹脂押出発泡体の外観が優れ、圧縮強度、曲げ強度、曲げたわみ量で表される機械的強度や靱性などの特性のバランスが良好となる。更に、スチレン系樹脂のMFRは、成形性、押出発泡体の機械的強度、靱性などのバランスの点から、0.3〜30g/10分が更に好ましく、0.5〜20g/10分が特に好ましい。なお、MFRは、JIS K7210(1999年)のA法にて測定され、スチレン系樹脂の組成に応じて試験条件が設定される。例えば、ポリスチレンでは、試験条件Hにより測定される。
前述されたスチレン系樹脂のうち、経済性、成形性の観点からはスチレンホモポリマー(ポリスチレン)を用いることが好ましい。また、押出発泡体により高い耐熱性が要求される場合には、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンを用いることが好ましい。また、押出発泡体により高い耐衝撃性が求められる場合には、ゴム強化ポリスチレンを用いることが好ましい。これらスチレン系樹脂は単独で使用してもよく、分子量、MFR、組成、分岐度などの異なる2種以上のスチレン系樹脂を混合して使用してもよい。
本発明では発泡剤として、(イ)炭素数が3〜5である1種以上の飽和炭化水素と、(ロ)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルから選ばれる化合物と、(ハ)その他の非ハロゲン系発泡剤とを含有してなるものが使用される。このように非ハロゲン系発泡剤が用いられることにより、押出発泡成形方法及び得られた押出発泡体の環境適合性が向上される。また、上記(イ),(ロ),(ハ)の発泡剤が組み合わせて用いられることにおり、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の厚み、幅、密度、又は独立気泡率、熱伝導率、気泡径、表面性を所望の値に調整しやすくなる。つまり、押出発泡体の成形性に優れる。また、外観の良好なスチレン系樹脂押出発泡体が得られる。
炭素数が3〜5である1種以上の上記飽和炭化水素として、プロパン,n−ブタン,i−ブタン,n−ペンタン,シクロペンタンなどが挙げられるが、発泡性が良好であることから、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる1種以上のものが好ましい。また、押出発泡体の断熱性が良好となることから、n−ブタン、iブタンから選ばれる1種以上のものが好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
発泡剤としての炭素数3〜5の飽和炭化水素は、スチレン系樹脂押出発泡体に対して2〜8重量%含有せしめることが、断熱性の観点から好ましく、より好ましくは2〜7重量%であり、最も好ましく3〜6重量%である。炭素数3〜5の飽和炭化水素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性とを併有させることができる。
発泡剤としてのジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルから選ばれる化合物は、スチレン系樹脂組成物に対して、0.1〜8重量%含有させることが成形性の観点から好ましく、より好ましくは0.2〜5重量%であり、最も好ましくは0.5〜2.5重量%である。ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルから選ばれる化合物の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性、成形性を併有させることができる。また、上記化合物と同様に発泡剤として用いられるその他のエーテルとして、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。
その他の非ハロゲン系発泡剤としては、水、二酸化炭素、アルコールよりなる群から選ばれるものが挙げられる。これらが発泡剤として用いられることによりにより、(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素及び(ロ)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルから選ばれる化合物の使用量、すなわち可燃性の発泡剤の使用量が減じられ、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の燃焼性が向上される。
その他の非ハロゲン系発泡剤としては、水をスチレン系樹脂組成物に対して0.1〜4重量%含有させることが発泡成形性、断熱性の観点から好ましく、より好ましくは0.1〜2.5重量%であり、最も好ましくは0.2〜2重量%である。水の含有量を上記範囲とすることにより、高い断熱性と成形性とを併有し、良好な表面の押出発泡体が得られる。発泡剤として水が用いられることにより、発泡剤の種類、組成、使用量、後述される吸水性物質の種類及び添加量、押出発泡成形条件などにより、後述される気泡径分布図において複数のピークをもつ気泡構造が得られる。これにより、単一のピークをもつ気泡構造に比べ、所望の発泡体密度を有し、断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
その他の非ハロゲン系発泡剤として水が用いられる場合には、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質が添加されることが好ましい。吸水性物質とは、それ自体が水を吸水するもの、吸収するもの、吸着するもの、水によって膨潤するもの、又は水と反応して水和物を形成する化合物をいう。吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性の低い水を吸収して、吸着して、又は反応してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散するので、押出発泡体に気孔やボイドが生ずることなく、安定した押出発泡成形が実現されると考えられる。
その他の非ハロゲン系発泡剤として二酸化炭素が用いられる場合には、押出発泡体の断熱性及び成形性が良好となるので好ましい。
本発明においては、更に他の発泡剤が用いられてもよい。更に他の発泡剤としては、具体的には、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、窒素などの無機発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などが挙げられる。
スチレン系樹脂押出発泡体における他の発泡剤の添加量は、断熱性や発泡成形性、発泡体密度を考慮して適宜決めればよいが、スチレン系樹脂組成物に対して0〜4重量%が好ましく、より好ましくは0〜3重量%である。
スチレン系樹脂押出発泡体に含まれる発泡剤の含有量は、得られた押出発泡体から、全ての表面を2mm以上切除した試験片を密閉容器中で加熱して抽出される気体、又は、スチレン系樹脂の種類によっては溶剤に溶解して抽出される気体を試料として、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
本発明に用いられる吸水性物質は、酸化ケイ素、層状珪酸塩、多孔性物質、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、その他の金属塩、ホウ素化合物、吸水性高分子から選ばれる1種又は2種以上のものである。具体的には、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)などのように、表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末が挙げられる。このような無水シリカは、例えば日本アエロジル株式会社:AEROSIL(商品名)、DSL.ジャパン株式会社:カープレックス(商品名)などが市販されている。層状珪酸塩としては、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母など又はこれらの有機化処理品が挙げられる。多孔性物質としては、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土などが挙げられる。硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。その他の金属塩としては、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸カリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどが挙げられる。ホウ素化合物としては、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。吸水性高分子としては、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−アクリル酸塩系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリアクリロニトリル−メタクリル酸メチル−ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの吸水性物質は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
前述された吸水性物質のうち、無水シリカ、ポリアクリル酸塩系重合体、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性又は水による膨潤性のある層状珪酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩などの金属塩、ゼオライトなどの多孔性物質が、押出発泡成形が安定され、気孔やボイドなどの発生が抑制され、後述される特徴的な気泡径分布を有する気泡構造が形成されて、所望の断熱性能の押出発泡体が実現されるので好ましい。
本発明で用いられる吸水性物質の量は、発泡剤としての水の添加量に応じて適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜8重量部、特に好ましくは0.2〜7重量部である。吸水性物質の量が上記範囲にされることにより、押出機内における水の分散が良好となり、押出発泡成形が安定され、気孔やボイドなどの発生が抑制されるという利点がある。また、後述される特徴的な気泡径分布を有する気泡構造が形成され、所望の断熱性能が発現され、その品質が安定するという利点がある。
上記層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シート及び主として金属水酸化物の八面体シートからなる。四面体シートと八面体シートとは単位層を形成し、単位層単独、又は単位層間に陽イオンなどを介して複数層に積層されて一次粒子を形成し、又は、一次粒子の凝集体である粒子(二次粒子)を形成して存在するものである。層状珪酸塩の例としては、例えばスメクタイト族粘土及び膨潤性雲母などが挙げられる。スメクタイト族粘土は、化学式(1):X0.2〜0.6Y2〜3Z4O10(OH)2・nH2O(式中、Xは、K、Na、1/2Ca及び1/2Mgよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al及びCrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、Si及びAlよりなる群から選ばれる1種以上である。なお、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表わし、n=0.5〜10程度であるが、nは層間イオン及び相対湿度に応じて著しく変動するため、この範囲に限定されない。)で表される天然又は合成されたものである。スメクタイト族粘土の具体例としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト、及びこれらの置換体、誘導体、又はこれらの混合物が挙げられる。
上記膨潤性雲母は、化学式(2):X0.5〜1.0Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2(式中、Xは、Li、Na、K、Rb、Ca、Ba及びSrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Ni、Mn、Al及びLiよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、Si、Ge、Al、Fe及びBよりなる群から選ばれる1種以上である。)で表わされる天然又は合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、及び水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する。膨潤性雲母の具体例として、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、ナトリウム型四ケイ素雲母、及びこれらの置換体、誘導体、又はこれらの混合物が挙げられる。
上記膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、このようなバーミキュライト類相当品なども使用し得る。バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型とがあり、化学式(3):(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O(式中、MはNa及びMgなどのアルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である。)で表されるものが挙げられる。これら層状珪酸塩は単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
層状珪酸塩では、得られる押出発泡体中における分散性、発泡剤として水を用いた場合における押出発泡成形の安定性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、更に好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトなどのスメクタイト族粘土、膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母である。
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどが挙げられる。また、有機化ベントナイトも使用できる。ヘクトライトの代表例としては、合成ヘクトライトが挙げられる。スメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物も含まれる。
層状珪酸塩の含有量は、発泡剤としての水の添加量によって適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜7重量部である。水と層状珪酸塩との混合比率(重量比)は、好ましくは0.02〜20、更に好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲である。層状珪酸塩の量が上記範囲にされることにより、水の添加量に対して層状珪酸塩の水の吸収量又は吸着量が十分に上回って水の分散性が良好となるので、押出発泡成形が安定され、気孔やボイドなどの発生が抑制されるという利点がある。また、過剰の層状珪酸塩による気泡むらが生じず、独立気泡が良好に形成されるという利点がある。また、後述される特徴的な気泡径分布を有する気泡構造が形成され、所望の断熱性能が発現されるという利点がある。
本発明において、例えば建築用断熱材のようなスチレン系樹脂押出発泡体の用途における要求に応えるために、スチレン系樹脂に難燃剤が添加されていてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物などが挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物又はその誘導体、又は臭素化脂環式化合物又はその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物又はその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類及びその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素及び窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素及び燐原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などが挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。更には、本発明におけるスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も、難燃剤として用いることができる。
これらの中でも、難燃性の観点から、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
ハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂押出発泡体中における含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましい。また、JIS A9511測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、難燃相乗効果を有する添加剤などの種類又は添加量などにあわせて適宜調整されることがより好ましく、スチレン系樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部、更に好ましくは2〜8重量部である。ハロゲン系難燃剤の含有量を上記範囲内とすることにより、目的とする難燃性などの良好な諸特性が得られる。また、押出発泡体の耐熱性や表面性、発泡体製造時の安定性が良好となる。
スチレン系樹脂押出発泡体の難燃性を向上させる目的で、上記ハロゲン系難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤が添加されてもよい。このような難燃助剤としては、金属化合物、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物などがあげらえる。より具体的には、酸化鉄やその他、特開2002−30174号公報([0069]段落〜[0079]段落)に記載されている金属化合物、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物などを用いることができる。これらの中でも難燃性の観点から、金属化合物として酸化鉄、含燐化合物としてトリフェニルホスフェートやトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、含窒素化合物としてシアヌル酸やイソシアヌル酸及びこれらの誘導体、含ホウ素化合物として酸化ホウ素、含硫黄化合物としてスルファニル酸及びこの誘導体が最も好ましい。なお、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体としては、例えば特開2002−30174号公報([0074]段落)記載のものを用いることができる。このような難燃助剤のスチレン系樹脂押出発泡体中における含有量は、ハロゲン系難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤の種類にもよるが、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましい。
本発明においては、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラスナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、上記難燃剤以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤が含有されてもよい。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、押出方向に沿った断面及び幅方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られたサンプル断面における各気泡の気泡径及び面積を求め、横軸をゼロから最大気泡径まで0.02mm毎の区間に区分された気泡径とし、縦軸を下記式(1)で求められる区間毎の面積比とした気泡径分布図において、以下の条件(a),条件(b),条件(c)の全てを満たすものである。
式(1):区間毎の面積比=区間に属する気泡径を有する気泡の面積の和/全気泡の面積の和
条件(a):面積比を有する気泡径の区間の最大値が0.26mm以上である。
条件(b):気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなす。
条件(c):上記複数のピークのうち少なくとも一つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在する。
気泡径分布図は次の方法により作成される。スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面及び幅方向に沿った断面の所定範囲をサンプリングする。押出方向に沿った断面とは、押出発泡体の押出方向であって厚み方向に拡がる断面である。幅方向に沿った断面とは、押出発泡体の幅方向であって厚み方向に拡がる断面であり、該断面は押出方向と直交する面となる。これら2つの各断面の所定範囲をそれぞれサンプリングする。サンプリングする所定範囲は、押出発泡体の端部の特殊な気泡構造の部分を除けば、押出発泡体の何処でサンプリングしてもよいが、好ましくは、各断面の幅方向中央の位置で、厚さの中心及び上下対称位置の3点程度をサンプリングする。
サンプリングされた各試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、SEM画像を得る。SEM画像の撮影倍率は、30〜40倍程度に設定する。撮影範囲は、例えば縦×横が数mm〜数cm程度である。各SEM画像を、厚み方向を縦方向、押出方向又は幅方向を横方向として、画像処理装置(例えば、株式会社ピアス製、商品名:PIAS−II型)を用いて処理し、SEM画像中の個々の気泡の面積(以下、「気泡面積」と称される。)(a)を求める。また、各気泡の縦方向(厚み方向:zf)及び横方向(押出方向又は幅方向:xf)の最大径(Feret径)を求める。なお、気泡面積及び最大径の測定は、SEM画像中に気泡の全景が映し出された気泡のみを対象とし、SEM画像の端部で気泡の一部が欠落しているものや、SEM画像の端部ではなくとも気泡壁の一部が欠落したり、隣の気泡等と一体化している気泡は除かれる。この除外した気泡は、測定全面積からも除外される。測定対象となる気泡は、少なくとも200個以上であることが好ましい。従って、1つのSEM画像で200個以上の気泡を測定できる場合もあるが、そうでない場合は2つ以上のSEM画像を用いてもよい。
SEM画像中の各気泡を楕円形と仮定し、次の式(2)及び式(3)に従って、各気泡の厚み方向の気泡径Z、押出方向又は幅方向の気泡径Xを求める。
式(2):X=[{(4×a)/(π×xf×zf)}1/2]×xf
式(3):Z=[{(4×a)/(π×xf×zf)}1/2]×zf
求められた各気泡の厚み方向の気泡径Z、押出方向又は幅方向の気泡径Xを式(4)に従って相乗平均することにより、各気泡の代表気泡径Dを求める。
式(4):D=(X×Z)1/2
ゼロから最大気泡径を含む区間までの範囲において、横軸に0.02mm毎に区間分けした代表気泡径D、縦軸に上記式(1)で表される区間毎の面積比として作成した図を作成し、本発明における気泡径分布図とする。気泡径分布図における代表気泡径Dの区分けは、例えば、最も小さい区間は、代表気泡径Dがゼロ以上、0.02mm未満となる。なお、本明細書において、単に「気泡径」と記載している場合は、特に断りがない限り上記代表気泡径Dを示すものとする。また、気泡径分布図の横軸、つまり代表気泡径Dの個々の区間の範囲は、その区間の最小の代表気泡径Dを含み、最小の代表気泡径Dから0.02mm大きい気泡径は含まないものとする。すなわち、区間に属する気泡径は、区間の最小気泡径以上、区間の最小気泡径+0.02mm未満である。
上記気泡径分布図において、気泡径がゼロから0.02mm未満の区間から、その区間における面積比を隣接する区間の面積比と比較していき、ある区間における面積比が、前後に隣接する2つの区間(気泡径が0.02mm小さい区間及び0.02mm大きい区間)における面積比より大きい値を持つ場合に本発明においてピークが認定され、その区間の面積比がピーク面積比、その区間がピーク区間と称される。前後に隣接する2つの区間のいずれか一方又は両方における面積比が等しい場合には、等しい側の区間の更に隣の区間の面積比を比較し、該区間の面積比より大きい場合には、この複数の区間を合わせてピーク区間とされる。隣接するいずれか一方又は両方の区間における面積比の方が大きい場合はピークと判断されない。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(a)を満たすことにより、つまり、気泡径分布図において、最大気泡径が0.26mm以上であることにより、低い発泡体密度で所定の厚みのスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができ、また、スチレン系樹脂押出発泡体の断熱性が優れる。更に好ましくは、最大気泡径が0.26〜0.60mmであり、特に好ましくは0.28〜0.50mmである。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(b)を満たすことにより、つまり、気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなすことによりスチレン系樹脂押出発泡体の断熱性能が向上されるとともに、低い発泡体密度で厚みのある押出成形体とすることが可能となり、また、押出発泡の成形性が良好となる。仮に、スチレン系樹脂押出発泡体が上記気泡径分布図において単一のピークをなすものとすれば、断熱性能を向上させるには気泡径を小さくすることになる。気泡径が小さくなることにより、輻射による熱伝導を抑制する気泡の壁が増えるので、断熱性が向上される。しかし、気泡径を小さくすると、厚みのある押出発泡体を成形するにはより多くのスチレン系樹脂組成物が必要となる。その結果、押出発泡体の全体の発泡体密度が大きくなって、スリットダイから押し出される圧力が高くなって、押出発泡の成形性が低下する。これに対し、条件(b)を満たす気泡構造の押出発泡体では、断熱性能が向上されるとともに、低い発泡体密度で厚みのある押出発泡体を容易に成形することができる。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(c)を満たすことにより、つまり、上記複数のピークのうち少なくとも一つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在することにより、スチレン系樹脂押出発泡体の断熱性能が向上される。気泡径が0.26mm未満の区間にピークが存在することにより、スチレン系樹脂押出発泡体に比較的小さな気泡径の気泡が一群となって存在し、輻射による熱伝導を抑制する気泡の壁が増えるので、断熱性が向上される。また、0.02〜0.26mmの間の区間に上記ピークが存在することが更に好ましく、特に好ましくは0.04〜0.20mmの区間に存在することである。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(d)を満たすものであってもよい。
条件(d):気泡径が0.26mm未満の区間に存在するピークのうち、その他のいずれのピークより気泡径が大きい区間に存在する第1ピークと、気泡径が0.26mm以上の区間に存在するピークのうち、その他のいずれのピークより気泡径が小さい第2ピークとの間に存在する最も低い面積比を有する第1区間から、又は気泡径が0.26mm以上の区間にピークが存在しない場合には、気泡径が0.26mm以上の区間に存在する面積比がゼロとなる最も気泡径の小さい第2区間から、気泡径がゼロから0.02mmの第3区間までに含まれる面積比の総和が、0.1以上である。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(d)を満たすことにより、発泡体密度と断熱性とのバランスが良好となる。更に好ましくは、上記面積比の総和が0.2以上であり、特に好ましくは0.3以上である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(e)を満たすものであってもよい。
条件(e):上記複数のピークのうち、その他のいずれのピークより気泡径が小さい区間に存在する第3ピークと、第3ピークより気泡径の大きい区間に存在し、且つ第3ピークと最も近接する第4ピークとの間に存在する最も低い面積比を有する第4区間から、気泡径がゼロから0.02mmの第3区間までに含まれる面積比の総和(最小気泡径を構成する面積比)が、0.1〜0.9である。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(e)を満たすことにより、発泡体密度と断熱性とのバランスが良好となる。更に好ましくは、最小気泡径を構成する面積比が0.15〜0.8である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(f)を満たすものであってもよい。
条件(f):上記複数のピークのうち少なくとも一つのピークが、気泡径が0.10mm以上の区間に存在する。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(f)を満たすことにより、発泡体密度と断熱性とのバランスが良好となる。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(g)を満たすものであってもよい。
条件(g):上記複数のピークのうち少なくとも一つのピークが、気泡径が0.14mm以上の区間に存在する。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(g)を満たすことにより、発泡体密度と断熱性とのバランスが良好となる。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(h)を満たすものであってもよい。
条件(h):上記気泡径分布図の横軸における気泡径の区間を0.01mm毎とした場合に、気泡径が0.11mm以上0.15mm未満の区間に含まれる面積比の和と、気泡径が0.30mm以上の区間に含まれる面積比の和との総和が0.15より大きい。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(h)を満たすことにより、スチレン系樹脂押出発泡体に比較的大きな径の気泡と中程度の径の気泡とが多く分布することとなり、複合セル(気泡)の分布形状が全体に緩やかに拡がる。これにより、全気泡の径を比較的小さくして断熱性能を向上させ、かつバランスのよい発泡体密度とすることができる。また、気泡径の制御が容易になり、押出発泡体の製造が安定される。更に好ましくは、上記面積比の総和が0.15超0.50以下であり、特に好ましくは0.15超0.30以下である。
本スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂を溶融混練手段に供給するとともに、核剤を含む添加剤及び発泡剤を該溶融混練手段に供給してスチレン系樹脂と混練することによりスチレン系樹脂組成物とし、該スチレン系樹脂組成物を高圧領域からダイリップを通して低圧領域に押出発泡することにより得られる。
スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径分布を調整する方法としては、発泡剤に水を用い、他の発泡剤の種類及び使用量、吸水性物質の種類及び使用量、押出発泡の成形条件などにより調整できる。
スチレン系樹脂に各種添加剤を添加する手順として、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加して混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を添加して混合する手順が挙げられるが、各種添加剤をスチレン系樹脂に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
スチレン系樹脂の加熱温度は、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、添加剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜250℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられるものであれば特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低剪断タイプのものとすることが好ましい。
発泡成形方法は、例えば、押出成形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ圧力開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着又は接して設置された成形金型、及び該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する方法が用いられる。成形金型の流動面形状調整及び金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体表面性、発泡体品質が得られる。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材として機能することを考慮すると、熱伝導率が0.028W/mK以下であることが好ましい。この熱伝導率は、JIS A9511に準じて測定される。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材として用いられることを考慮した断熱性及び強度、軽量性の観点から、発泡体密度が35〜60kg/m3であることが好ましく、より好ましくは35〜50kg/m3である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みは、例えば建築用断熱材として用いられることを考慮した断熱性、曲げ強度及び圧縮強度の観点から、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは15〜120mmであり、特に好ましくは20〜100mmである。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、表面にスキン層を有するものが好ましい。このスキン層により、厚み方向(断熱材として使用した際に熱が流れる方向)における熱伝導が抑制されるとともに、押出発泡体中からブタンなどの発泡剤の放散及び押出発泡体中への空気の進入が抑制されて断熱性が向上され、また、その経時変化が抑制される。
このように本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、前述された条件(a)、条件(b)、及び条件(c)を全て満たす気泡径分布を有するので、断熱性に優れ、所望の発泡体密度を有するスチレン系樹脂押出発泡体が得られることができる。このようなスチレン系樹脂押出発泡体は、建築材料として特に有用である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。また、以下の実施例においては、特に断られない限り、「%」は「重量%」を表すものとする。
実施例1から実施例5、比較例1から比較例2について、以下の手法に従って気泡径分布、発泡体密度、熱伝導率、発泡剤量、燃焼性を評価した。
(1)気泡径分布
スチレン系樹脂押出発泡体について気泡径分布図を前述された手法に従って作成した。この気泡径分布図を用いて最大気泡径(代表気泡径Dの最大の気泡径)、ピーク数及びピーク位置、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和、最小気泡径を構成する面積比、横軸を0.01mm毎にした場合の0.11mm以上0.15mm未満の区間の面積比の和と0.30mm以上の区間の面積比の和との総和(以下、「総和A」と称される。)を前述された手法に従って求めた。
(2)発泡体密度
スチレン系樹脂押出発泡体を約200mm(押出方向)×100mm(幅方向)×25mm(厚み方向)の直方体形状に切り出して重量を測定するとともに、ノギスで、縦寸法、横寸法、高さ寸法を測定した。なお、押出発泡体がスキン層を有する場合には、厚み方向は押出厚みのままとした。測定された重量及び各寸法から以下の式に基づいて発泡体密度を求め、単位をkg/m3に換算した。
発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)
(3)熱伝導率(単位:W/mK)
試作後30日経過したスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率をJIS A9511(1995)に準じて測定した。
(4)発泡体中の発泡剤量(単位:重量%)
試作後30日経過したスチレン系樹脂押出発泡体から、全ての表面を2mm以上切除した試験片約1gを精秤し、密閉容器中に入れて、200℃で15分間加熱した。容器中の気体を採取してガスクロマトグラフィーを用いて発泡剤の含有量を測定した。
(5)燃焼性
スチレン系樹脂押出発泡体から、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を切り出し、7日間放置したものについて、JIS A9511測定方法Aに準じて以下の基準で評価した。
(a)燃焼時間
◎:5本の試験片全ての消炎時間が3秒以内である。
○:5本の試験片のうち、少なくとも1本は消炎時間が3秒を超えるが、残りの3本以上は3秒以内である。
△:5本の試験片のうち、少なくとも3本は消炎時間が3秒を超えるが、残りの1本以上は3秒以内である。
×:5本の試験片全ての消炎時間が3秒を超える。
(b)燃焼距離
◎:5本の試験片全てにおいて燃焼が限界線以内で停止する。
○:5本の試験片うち、少なくとも1本は燃焼が限界線を超えるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
△:5本の試験片のうち、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
×:5本の試験片全てにおいて燃焼が限界線を越える。
(c)燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全くみられない。
○:発泡剤の燃焼が若干みられる。
△:発泡剤の燃焼がみられるが、全焼には至らない。
×:発泡剤の燃焼がみられ、全焼する。
(実施例1)
ポリスチレン(PSジャパン株式会社、商品名:G9401、MFR=2.5g/10分)100重量部に対して、吸水性物質としてベントナイト(株式会社ホージュン、商品名:ベンゲルブライト11)1重量部及び含水性非晶質二酸化ケイ素(DSL.ジャパン株式会社、商品名:カープレックス)0.1重量部、タルク(林化成株式会社、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.2重量部、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン(アルベマール・コーポレーション、商品名:SAYTEX HP−900)4重量部、難燃助剤としてトリフェニルホスフェート(味の素ファインテクノ株式会社、商品名:レオフォスTPP)1重量部、ステアリン酸バリウム(堺化学工業株式会社、商品名:ステアリン酸バリウム)0.5重量部、安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、商品名:IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系抗酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの1:1の混合物))0.2重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、該スチレン系樹脂組成物を口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機へ80kg/時間で供給した。第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練し、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社)3.7重量%、ジメチルエーテル(三井化学株式会社)1.9重量%、水(水道水)0.6重量%を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は8〜19MPaであり、これに対して発泡剤の圧入圧力は+0.5〜3MPaに設定した。第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を120℃に冷却し、第2押出機の先端に設けられた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有したダイリップより、スチレン系樹脂組成物を大気中へ押し出し、厚み29mm、幅150mmの直方体形状の押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の評価結果を表1に示す。また、押出発泡体の押出方向に沿った断面のSEM画像を図1に示し、幅方向に沿った断面のSEM画像を図2に示す。更に、押出発泡体の気泡径分布図を図3に示し、気泡径分布図の横軸の気泡径を0.01mm毎としたものを図4に示す。
図1及び図2に示されるように、押出発泡体の各断面のSEM画像において、大径の気泡と小径の気泡とが海島状に形成されていることが確認された。また、図3に示されるように、気泡径分布図において、面積比を有する気泡径の区間の最大値(最大気泡径)が0.44mmであるので、上記条件(a)を満たし、気泡径の全区間においてピークが5つ確認されるので、上記条件(b)を満たす。また、これら5つのピークのうちの1つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在するので、上記条件(c)を満たす。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0.45であるので、上記条件(d)を満たし、最小気泡径を構成する面積比が0.4であるので、上記条件(e)を満たす。また、上記5つのピークのうち4つのピークが、気泡径が0.10mm以上の区間に存在するので、上記条件(f)を満たし、それら4つのピークが気泡径が0.14mm以上の区間に存在するので、上記条件(g)を満たす。
なお、実施例1において0.18mm以上0.20mm未満の区間に存在するピークが本発明における第1ピークであり、0.26mm以上0.28mm未満の区間に存在するピークが本発明における第2ピークである。そして、実施例1において、0.16mm以上0.18mm未満の区間が本発明における第1区間であり、第2区間は存在せず、0.00mm以上0.02mm未満の区間が本発明における第3区間である。また、実施例1において、0.08mm以上0.10mm未満の区間に存在するピークが本発明における第3ピークであり、0.18mm以上0.20mm未満の区間に存在するピークが本発明における第4ピークである。そして、0.18mm以上0.20mm未満の区間が本発明における第4区間である。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は42kg/m3であり、熱伝導率が0.026W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.2重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離、及び燃焼状況の全てにおいて非常に良好であった。
(実施例2)
実施例1で得られた発泡体から、更に上下面を2mmづつ切除し、厚み25mm、幅150mmの板状発泡体として評価した。その評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において、面積比を有する気泡径の区間の最大値(最大気泡径)が0.44mmであるので、上記条件(a)を満たし、気泡径の全区間においてピークが5つ確認されるので、上記条件(b)を満たす。また、これら5つのピークのうちの1つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在するので、上記条件(c)を満たす。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0.45であるので、上記条件(d)を満たし、最小気泡径を構成する面積比が0.4であるので、上記条件(e)を満たす。また、上記5つのピークのうち4つのピークが、気泡径が0.10mm以上の区間に存在するので、上記条件(f)を満たし、それら4つのピークが気泡径が0.14mm以上の区間に存在するので、上記条件(g)を満たす。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は37kg/m3であり、熱伝導率が0.027W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.1重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離、及び燃焼状況の全てにおいて非常に良好であった。
(実施例3)
実施例1と同様にして厚み50mm、幅150mmの直方体形状の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において、面積比を有する気泡径の区間の最大値(最大気泡径)が0.50mmであるので、上記条件(a)を満たし、気泡径の全区間においてピークが3つ確認されるので、上記条件(b)を満たす。また、これら3つのピークのうちの1つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在するので、上記条件(c)を満たす。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0.35であるので、上記条件(d)を満たし、最小気泡径を構成する面積比が0.45であるので、上記条件(e)を満たす。また、上記3つのピークともに、気泡径が0.10mm以上の区間に存在するので、上記条件(f)を満たし、それらのうち2つのピークが気泡径が0.14mm以上の区間に存在するので、上記条件(g)を満たす。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は40kg/m3であり、熱伝導率が0.026W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.2重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離、及び燃焼状況の全てにおいて非常に良好であった。
(実施例4)
ポリスチレン系樹脂組成物に添加するハロゲン系難燃剤として、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(帝人化成株式会社、商品名:ファイヤガード3100)5重量部、難燃助剤として酸化鉄(和光純薬株式会社)0.05重量部としたほかは、実施例1と同様に混合したスチレン系樹脂組成物を用いて、厚み25mm、幅150mmの直方体形状の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において、面積比を有する気泡径の区間の最大値(最大気泡径)が0.50mmであるので、上記条件(a)を満たし、気泡径の全区間においてピークが3つ確認されるので、上記条件(b)を満たす。また、これら3つのピークのうちの1つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在するので、上記条件(c)を満たす。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0.55であるので、上記条件(d)を満たし、最小気泡径を構成する面積比が0.35であるので、上記条件(e)を満たす。また、上記3つのピークともに、気泡径が0.10mm以上の区間に存在するので、上記条件(f)を満たし、更に3つのピークが気泡径が0.14mm以上の区間に存在するので、上記条件(g)を満たす。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は38kg/m3であり、熱伝導率が0.026W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.1重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離、及び燃焼状況の全てにおいて非常に良好であった。
(実施例5)
ポリスチレン系樹脂組成物に添加するハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3)−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成株式会社、商品名:TAIC−6B)5重量部としたほかは、実施例1と同様に混合したスチレン系樹脂組成物を用いて、厚み25mm、幅150mmの直方体形状の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において、面積比を有する気泡径の区間の最大値(最大気泡径)が0.55mmであるので、上記条件(a)を満たし、気泡径の全区間においてピークが2つ確認されるので、上記条件(b)を満たす。また、これら2つのピークのうちの1つのピークが、気泡径が0.26mm未満の区間に存在するので、上記条件(c)を満たす。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0.5であるので、上記条件(d)を満たし、最小気泡径を構成する面積比が0.37であるので、上記条件(e)を満たす。また、上記2つのピークともに、気泡径が0.10mm以上の区間に存在するので、上記条件(f)を満たし、更に2つのピークが気泡径が0.14mm以上の区間に存在するので、上記条件(g)を満たす。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は37kg/m3であり、熱伝導率が0.026W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.1重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離、及び燃焼状況の全てにおいて非常に良好であった。
(比較例1)
ポリスチレン100重量部に対して、タルク0.2重量部、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン4重量部、ステアリン酸バリウム0.5重量部、安定剤0.3重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。また、発泡剤として、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン4重量%、ジメチルエーテル2重量%を用いた。このほかは実施例1と同様にして直方体形状の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の上下面を2mmずつ削除し、厚み50mm、幅150mmの押出発泡体を得た。この押出発泡体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において3つのピークが確認されるが、いずれのピークも気泡径が0.26mm未満の区間に存在しないので、上記条件(c)を満たさない。また、表1に示されるように、0.26mm未満に存在するピークを構成する面積比の総和が0であるので、上記条件(d)を満たさず、最小気泡径を構成する面積比が0であるので、上記条件(e)を満たさない。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は35kg/m3であり、熱伝導率が0.031W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.2重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間のみが良好であり、燃焼距離及び燃焼状況は悪かった。
(比較例2)
タルクの混合量を3重量部とし、ハロゲン系難燃剤を添加せずにポリスチレン系樹脂組成物とした。発泡剤は比較例1と同様にして、スキン層を有する厚み25mm、幅150mmの直方体形状の押出発泡体を得た。この押出発泡体の評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において1つのピークのみが確認されるので、上記条件(b)を満たさない。また、表1に示されるように、最小気泡径を構成する面積比が0であるので、上記条件(e)を満たさない。
表1に示されるように、得られた押出発泡体全体の発泡体密度は50kg/m3であり、熱伝導率が0.029W/mKであった。また、押出発泡体に残存する発泡剤量は、イソ−ブタンが3.2重量%、ジメチルエーテルが0.1重量%であった。また、押出発泡体の燃焼は、燃焼時間、燃焼距離及び燃焼状況ともに極めて悪かった。
スチレン系樹脂押出発泡体が、例えば建築材料として用いられる場合には、軽量化を目的として発泡体密度が50kg/m3未満が好ましく、高断熱性能というには熱伝導率が0.028W/mK以下であることが好ましい。実施例1から実施例5では、このような発泡体密度及び断熱性能を満たし、比較例1及び比較例2では満たさないことが確認された。また、実施例1と実施例2とを比較すると、スキン層を有する実施例1において、より断熱性能が高いことが確認された。