JP2005054004A - スチレン系樹脂発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境課題が比較的低い発泡剤を用いつつ、リサイクル性(環境適合性)、熱安定性、断熱性、難燃性に優れた発泡体を得る。
【解決手段】スチレン系樹脂を押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、発泡剤と、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
【選択図】 なし
【解決手段】スチレン系樹脂を押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、発泡剤と、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクルする際の熱履歴によっても熱劣化しがたい、すなわちリサイクル性に優れたスチレン系樹脂発泡体につき、特に、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを発泡剤として用いる場合には環境適合性にも優れた発泡体であり、更に、熱安定性、断熱性、難燃性にも優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、次いで発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧域に押出すことにより発泡体を連続的に製造する方法は既に知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、発泡剤にいわゆるフロン類を用いる方法も知られている(例えば、特許文献3及び4参照。)。
【0004】
フロン類以外の発泡剤を用いたスチレン系樹脂発泡体及び製造方法として、発泡剤にプロパン、ブタンあるいはそれらの混合物を用いたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法は開示されており、更に難燃性を満たすためには、リン酸ハロゲン化アルキル−アリールやポリリン酸アンモニウム、ヘキサブロモシクロドデカンまたは水酸化マグネシウム、テトラブロモビスフェノールAが用いられるとしている(例えば、特許文献5及び6参照。)。
【0005】
また、熱可塑性フォームの難燃性を高める目的で、臭素化脂肪族化合物と、これより熱安定性が高く揮発性の低い臭素化芳香族化合物などを併用して用いる方法も知られている(例えば、特許文献7及び8)。
【0006】
更に、熱可塑性フォームの難燃性を高める目的で、テトラブロモシクロドデカンとペンタブロモトルエンを併用して用いる方法も知られている(例えば、特許文献9。)。
【0007】
一方、本発明者らは、発泡剤にプロパン、ブタンなどの飽和炭化水素を用いた発泡体において、JISA 9511で規定する高度な難燃性と押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の如き高度な断熱性を両立するためには、発泡体中に残存する飽和炭化水素の燃焼を抑制する必要があり、前記発明では実現し難い問題があることを見出し、鋭意検討した結果、飽和炭化水素の燃焼を抑制し、JISA 9511で規定する難燃性と押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の断熱性を両立できる技術を提案した(例えば、特許文献10〜12参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特公昭31−5393号公報
【0009】
【特許文献2】
特公昭42−19195号公報
【0010】
【特許文献3】
特公昭41−672号公報
【0011】
【特許文献4】
特公昭57−7175号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平7−53761号公報
【0013】
【特許文献6】
特開平10−237210号公報
【0014】
【特許文献7】
特表平5−509338号公報
【0015】
【特許文献8】
特表平7−502047号公報
【0016】
【特許文献9】
特開平02−194038号公報
【0017】
【特許文献10】
特開2001−121596号公報
【0018】
【特許文献11】
特開2001−131322号公報
【0019】
【特許文献12】
特開2001−131323号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今般、環境適合性が重要視されるようになっている中で、樹脂発泡体製品そのもの、あるいは発泡体を製造しカットして製品に仕上げる際に発生する発泡体の切れ端などをリサイクルして、再度発泡体やその他の何らかの製品として利用できることが望まれている。
【0021】
このようなリサイクル性を考慮した場合には、前記の如き発明であっても、例えば発泡体としてリサイクル利用した際に難燃剤の熱安定性に起因して樹脂劣化が発生し、リサイクル発泡体が変色したり、所望の機械的強度が発現しなかったりする傾向がある。
【0022】
このような問題を解決するために、難燃剤の使用量を制限したり、フェノール系あるいはリン系などの安定剤を増量添加して、樹脂の劣化を抑制することが考えられるが、その結果、難燃性が低下したり、製品のコストアップにもつながる。
【0023】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンなどの環境適合性の優れた発泡剤を使用し、更に、リサイクル性にも優れていることから、廃棄することなく再使用が可能となり環境適合性を高めたところの、熱安定性、断熱性や難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法を提供することである。
【0024】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、発泡剤を含有させたスチレン系樹脂発泡体において、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性、熱安定性に優れた難燃性スチレン系樹脂発泡体が得られ、特に、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを発泡剤として用いた場合には、環境適合性を備えるとともに、断熱性にも優れた発泡体が得られることを見出し本発明に至った。
【0025】
すなわち、本発明は、
(1)スチレン系樹脂を押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、発泡剤と、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体に関する。
(2)前記発泡剤の一部または全部が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(3)前記発泡剤の一部または全部が、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(4)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(5)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(6)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(7)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(8)スチレン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤ヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを0.1〜20重量部含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(9)炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が、プロパン、n−ブタン、i−ブタンより選ばれる1種以上の飽和炭化水素であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(10)他の発泡剤が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、水、二酸化炭素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(11)他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(12)含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(13)発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする(1)〜(14)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(14)発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする(13)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(15)スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、スチレン系樹脂に、(A)発泡剤、及び(B)ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエン、(C)必要に応じて他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート及び/又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、(D)必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種または2種以上の化合物を共存させて、押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【0026】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0027】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物あるいはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0028】
スチレン系樹脂では、加工性の面からスチレンホモポリマー、スチレンアクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。
【0029】
本発明において用いられる発泡剤としては特に制限はないが、炭素数3〜5の飽和炭化水素及び/又はオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いることが環境適合性の観点から好ましい。
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、発泡成形性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0031】
一方、発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを使用することも環境適合性の点から好ましいが、オゾン層破壊係数とは、各化合物の1kg当たりの総オゾン破壊量をCFC−11(CCl3F)の1kg当たりの総オゾン破壊量で割った値であり、一般的に知られているものである。
【0032】
オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンとしては、HFC−23(CHF3)、HFC−32(CH2F2)、HFC−125(CHF2CF3)、HFC−134a(CH2FCF3)、HFC−143a(CH3CF3)、HFC−152a(CH3CHF2)、HFC−227ea(CF3CHFCF3)、HFC−236fa(CF3CH2CF3)、HFC−245ca(CH2FCF2CHF2)、HFC−245cb(CF3CF2CH3)、HFC−245fa(CF3CH2CHF2)、HFC−365mfc(CF3CH2CF2CH3)などが挙げられ、これらを2種以上用いても良い。
【0033】
これらの中でも、発泡成形性の観点から、HFC−134aがより好ましい。
【0034】
本発明では、前記、炭素数3〜5の飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボン以外の、他の発泡剤を用いることで、発泡体製造時の可塑化効果や発泡助剤効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に発泡体の製造が可能となる。ただし、目的とする発泡倍率、難燃性等の発泡体の諸特性いかんによっては、その使用量などが制限されうる。
【0035】
本発明で用いられる他の発泡剤としては、特に限定されるものではない。
【0036】
例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、更には、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。これら他の発泡剤は単独または2種以上混合して使用することができる。
【0037】
なお、発泡剤として炭素数3〜5の飽和炭化水素を用いる場合には、他の発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いても良い。発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いる場合には、他の発泡剤として炭素数3〜5の飽和炭化水素を用いることもできる。
【0038】
他の発泡剤の中では、発泡性、発泡成形性などの点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは後述する断熱性等の点からは水、二酸化炭素が好ましい。これらの中でも、環境適合性の優れたジメチルエーテル、水、二酸化炭素が特に好ましい。
【0039】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の製造時に、スチレン系樹脂中に添加または注入される発泡剤の量は、発泡倍率の設定値などに応じて適宜かわるものではあるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部とするのが好ましい。発泡剤の添加量が1重量部未満では発泡倍率が低く、発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくい場合があり、一方、20重量部を超えると過剰な発泡剤量のため発泡体中にボイドなどの不良を生じたり、難燃性が低下する場合がある。
【0040】
発泡剤の構成としては特に制限はないが、発泡剤の一部または全部として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物を含有していることが環境適合性の点で好ましい。
又、発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することが環境適合性の点からより好ましい。
【0041】
この中でも、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が発泡剤全量100重量%に対して、10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上であり、他の発泡剤の量は、発泡剤全量100重量%に対して、90重量%以下がより好ましく、更に好ましくは80重量%以下である。炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の量が前記範囲より少ないと、得られる発泡体の断熱性が劣る場合がある。他の発泡剤の量が前記範囲を超える場合、樹脂との相溶性が高い場合は、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなったり、樹脂との相溶性が低い場合は、発泡体に気孔などが生じて良好な発泡体が得られなかったり、押出機の圧力制御が難しくなったりすると共に、易燃性の発泡剤によっては発泡体の難燃性の低下を招く場合がある。
【0042】
他の発泡剤として水を用いる場合には、加工性や、気泡径0.25mm以下の気泡(以下、小気泡とも言う)と気泡径0.3〜1mmの気泡(以下、大気泡とも言う)の生成の面から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜70重量%、特に好ましくは3〜65重量%である。他の発泡剤として水と、水以外の他の発泡剤(i−ブタンなどの飽和炭化水素や、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエーテルなど)を併用する場合には、加工性や、前記小気泡、大気泡の生成の面から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは水1〜75重量%及び水以外の他の発泡剤79〜5重量%、より好ましくは水2〜70重量%及び水以外の他の発泡剤78〜10重量%、特に好ましくは水3〜65重量%及び水以外の他の発泡剤77〜15重量%である。
【0043】
発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0044】
本発明により得られたスチレン系樹脂発泡体には、発泡剤として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が含有されることが好ましい。ただし、得られたスチレン系樹脂発泡体中における、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の残存含有量は、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やハイドロフルオロカーボンの種類及び使用量、発泡剤の発泡体中における透過性、発泡体の倍率あるいは密度、要求される断熱性能などによっても異なる。特に発泡剤の発泡体中における透過性によっては、経時的に残存量が減量し、発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。従って、透過性が高い炭素数が3〜5である飽和炭化水素やハイドロフルオロカーボンを用いて製造され、結果的に発泡体中に残存含有するハイドロフルオロカーボン量が非常に少ない発泡体も本発明の範疇である。
【0045】
しかしながら、JISA 9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が要求される場合には、得られたスチレン樹脂発泡体中における発泡剤の組成は、残存する発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が、好ましくは100〜1重量%、より好ましくは100〜5重量%、さらに好ましくは100〜10重量%、特に好ましくは100〜20重量%、他の発泡剤が好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜95重量%、さらに好ましくは0〜90重量%、特に好ましくは0〜80重量%である。発泡体中に残存する発泡剤における炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の量が前記範囲より少なくなるとJISA 9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が得られにくい場合がある。
【0046】
さらに、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種の如き、高度な断熱性能を要求する場合には、発泡体中における、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の残存含有量は、一般に発泡体100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。
【0047】
炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物以外の他の発泡剤の残存含有量は、発泡剤の種類、発泡体のガス透過性や密度などによっても異なるが、発泡体の断熱性能を良好なものにするために、0〜18重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10重量部である。特に発泡剤の発泡体中における透過性によっては、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物と同様に、経時的に残存量が減量し、発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。
【0048】
本発明では、ハロゲン系難燃剤として、ヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用いる。これらの難燃剤を用いることにより、難燃性とともに熱安定性、かつリサイクル性を兼ね備えたスチレン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0049】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤であるヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンの含有量は、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される難燃性を得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、後述する他のハロゲン系難燃剤、相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは、1〜15重量部、さらに好ましくは、2〜12部である。ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンの含有量が前記未満では、本発明の目的とする難燃性などの発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方前記範囲を超えると、発泡体製造時の安定性、表面性などをかえって損なう場合がある。
【0050】
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに必要に応じて他のハロゲン系難燃剤を含有することができる。他のハロゲン系難燃剤としては、熱可塑性樹脂に通常使用される難燃剤を特別に限定することなく使用することができる。例えば、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などのハロゲン化脂肪族化合物はるいはその誘導体、あるいはハロゲン化脂環族化合物あるいはその誘導体、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどのハロゲン化芳香族化合物あるいはその誘導体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などのハロゲン化ビスフェノール類及びその誘導体、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどのハロゲン化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどのハロゲン化アクリル樹脂、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジンなどのハロゲン及び窒素原子含有化合物、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどのハロゲン及びリン原子含有化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物などが挙げられる。これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。さらには、本発明のスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も他のハロゲン系難燃剤として用いることが出来る。
【0051】
これらの中でも、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)が他のハロゲン難燃剤としては好ましく、これらの難燃剤をヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンとを併用することにより、熱安定性やリサイクル性を低下させることなく難燃性をより向上させることが可能となる。又、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の添加により可塑性が得られやすくなることから、発泡成形性が向上する点からも好ましい。
【0052】
他のハロゲン系難燃剤の含有量は、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される難燃性を得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンの添加量、後述する相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜9重量部、更に好ましくは、1〜8重量部である。更には、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンと他のハロゲン系難燃剤の添加量の合計量が、0.1〜20重量部とするのが発泡体製造時の安定性などの点から好ましい。
【0053】
本発明では、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、あるいはこれと他のハロゲン系難燃剤に、更に、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物を併用することにより、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種に該当する高い断熱性能を発揮させるために燃焼性の高い炭化水素を発泡剤として比較的多く含有している場合でも、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいはこれと他のハロゲン系難燃剤を多量に添加することなく、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される高度の難燃性を達成することができる。
【0054】
本発明で使用される含燐化合物とは、燐原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいは他のハロゲン系難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えばホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸またはこれの誘導体、金属塩、メラミン塩、アンモニウム塩、及び、ホスファゼンまたはその誘導体、ホスホニトリルまたはその誘導体等が挙げられる。
【0055】
前記、含燐化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの脂肪族炭化水素モノリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの芳香族炭化水素モノリン酸エステル、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムアミド、リン酸アミド、二亜リン酸ピペラジン、亜リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、亜リン酸グアナゾール、ホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アミド、ポリホスファゼン、ホスホニトリル等の含燐含窒素系化合物等が挙げられる。更には、前述のトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどのハロゲン化ホスフェート系化合物を含燐化合物として使用しても良い。含燐化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0056】
含燐化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0057】
本発明で使用される含窒素化合物とは、窒素原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えば、トリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸あるいはイソシアヌル酸及びその誘導体、グアニジン化合物、アゾ化合物、テトラゾール化合物等が挙げられる。
【0058】
前記含窒素化合物の具体例としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、メチロールメラミンなどのトリアジン骨格含有化合物あるいはその誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N‘−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物とシアヌル酸あるいはイソシアヌル酸及びその誘導体からなる塩、例えばメラミンシアヌレート等が挙げられる。更には、前述の、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチロニトリルなどアゾ化合物、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩等のテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩、例えば5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩等のテトラゾール金属塩類などのテトラゾール化合物など、飽和炭化水素以外の発泡剤として用いられる発泡剤を含窒素化合物として使用しても良い。更には、前述の、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどのハロゲン及び窒素原子含有化合物を含窒素化合物として使用しても良い。含窒素化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0059】
含窒素化合物としてシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体を用いる場合には、化合物自体が難燃性であると共に、270℃〜400℃で分解あるいは溶融する化合物が好ましい。また、テトラゾール化合物を用いる場合には、熱分解温度が250℃以上である化合物が好ましい。
【0060】
含窒素化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0061】
本発明で使用される含ホウ素化合物とは、ホウ素原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えば、ホウ酸、硼砂、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素、リン酸ホウ素、ボロシリケート類等が挙げられる。
【0062】
前記、含ホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、硼砂、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸スズなどのホウ酸金属塩、及びこれらの化合物の水和物など誘導体、二酸化二ホウ素、三酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等の酸化ホウ素が挙げられる。含ホウ素化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0063】
含ホウ素化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0064】
含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物は、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種または2種以上を併用して用いられる。 更に、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物は、後述する如き表面処理剤、例えば各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、シランカップリング剤、チタン系化合物、無機化合物などから選ばれる1種または2種以上の化合物で表面被覆処理をしても好適に使用し得る。
【0065】
含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物で好ましくは、トリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの芳香族リン酸エステルあるいは芳香族縮合リン酸エステル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼンなどの燐及び窒素原子含有化合物、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸、イソシアヌル酸、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、熱分解温度が250℃以上である5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩テトラゾール化合物などのテトラゾール化合物、ホウ酸亜鉛、酸化ホウ素、表面処理剤で処理されたホウ酸亜鉛あるいは酸化ホウ素などなどが難燃性の相乗的効果が発揮され、発泡剤の燃焼も抑制される点で好ましい。
【0066】
更にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン以外のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物としては、高い断熱性などを得るために他の発泡助剤として水を用いた場合でも、発泡体中に、前記小気泡と大気泡の発生する効果を阻害しない化合物が好ましく、例えば、室温付近の温度域(10〜30℃前後)において水に難溶あるいは水への溶解度が10重量%以下の化合物が好ましい。水への溶解度が高い場合、前記の小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にある。水への溶解度が高い場合であったり、小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にあった場合には、表面被覆処理を施すことで改善できる場合があり、表面被覆処理された化合物を用いることが好ましい。
【0067】
表面処理剤としては、一般的に表面処理剤として知られている物質に限らず、水との相互作用を絶縁できる物質であれば構わない。例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、アクリル樹脂等が例示できる熱硬化性樹脂、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示できるシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラアルコキシチタン、チタンアシレート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン等が例示できるチタン系表面処理剤、(アルキルアセトアセタト)アルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が例示できるアルミニウム系表面処理剤、フッ素樹脂、アミド樹脂、アリレート樹脂、イミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等が例示できる熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、これらの表面処理剤を2種以上併用することも本発明の範疇である。さらに、最近では無機物−無機物の組み合わせでも表面処理が可能であり、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素等で表面に被膜を形成することも可能である。このようなことからは、有機物、無機物に関わらず表面処理することが可能である。なお、これらの表面処理剤を2種以上併用することも本発明の範疇である。
【0068】
表面処理する方法としては、次の(1)〜(4)ような方法が例示できるが、これらの方法に何ら制限されるものではない。
(1)混合機能のある装置を用いて化合物と表面処理剤をミキシングする。混合機能のある装置とは一般的なヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で充分であるが、粉体コーティング用の混合機、例えば、(株)セイシン企業製ニューグラマシン、(株)奈良機械製作所製混合造粒機NMG等も例示できる。
(2)表面処理剤を適当な有機溶剤に溶解させ、これに化合物を添加、浸漬した後、乾燥する。
(3)液状表面処理剤、あるいは固体状表面処理剤を有機溶剤に溶解し、気流中で分散している化合物に噴霧した後、乾燥する。気流分散中に散布する装置としては、不二パウダル(株)製グローマックス等が例示できる。
(4)機械的衝撃により化合物の表面に表面処理剤を被覆させる。機械的衝撃を与えることのできる装置としては、(株)奈良機械製作所製NHS(ハイブリダイゼーションシステム)等が例示できる。これは、表面処理剤が固体の場合に有効である。
【0069】
表面処理剤として熱硬化性樹脂を用いる場合は、(1)〜(4)により化合物表面に熱硬化前の樹脂の被膜を形成し、その後一般的な乾燥機や流動層乾燥機等で加温して熱硬化すると良い。あるいは、熱硬化後の粉末樹脂を(4)により表面処理することも可能である。
【0070】
なお、表面処理を一度実施した後、同じ表面処理剤あるいは異なる表面処理剤を用いて再び表面処理を実施するなど、複数回表面処理を施すことにより被覆率を向上させることも本発明の範疇である。
【0071】
また、発泡剤として飽和炭化水素を用いた場合、発泡体の燃焼時に発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、該発泡剤が燃焼することで、該発泡剤の燃焼熱により発泡体の表面溶解が生じて延焼する傾向があった。
【0072】
しかしながら、これらの延焼傾向についても、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンと、他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物あるいは含ホウ素化合物を併用することにより、残留発泡剤の燃焼を阻害することで、極めて軽減させ得るか、ないしは無くすることができるといった優れた効果が得られ、適量を使用することで優れた難燃性と成形加工の安定性を有する発泡成形品が得られるようになる。
【0073】
他の発泡剤として、水を用いる場合は、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩類あるいはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなど(本発明においては、これらの物質を吸水性物質と総称する)の1種または2種以上を添加することで、発泡体中に、前記小気泡、大気泡の発生する作用をさらに向上することができ、得られる発泡体の成形性、生産性及び断熱性能がさらに向上する。
【0074】
ここで使用する吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性のない水を吸水してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散させることができると考えられることから使用される。
【0075】
本発明で用いられる吸水性物質の含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは0.5〜7重量部である。吸水性物質の含有量が前記範囲未満では吸水性物質による水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる場合があり、一方前記範囲を超える場合には、押出機内で吸水性物質の分散不良が発生し、気泡むらができ、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生ずる場合がある。
【0076】
本発明で用いられる層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから成り、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し存在しうるものである。層状珪酸塩の例としては、例えば、スメクタイト族粘土及び膨潤性雲母などが挙げられる。
【0077】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式1
X0.2〜0.6Y2〜3Z4O10(OH)2・nH2O・・・・・・一般式1
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオン及び相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。
【0078】
該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式2
X0.5〜1.0Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2 ・・・・・・一般式2
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。
【0080】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、及び水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式3
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4−xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O・・・・・・一般式3
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。
【0082】
膨潤性層状珪酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、得られる発泡体中の分散性の点などからスメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイト及び膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が好ましい。
【0083】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどが挙げられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0084】
ベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは、0.5〜7重量部、最も好ましくは1〜5重量部である。スメクタイトの含有量が前記範囲満では水の圧入量に対してスメクタイトによる水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる傾向がある。一方前記範囲を超える場合には、スチレン系樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、スチレン系樹脂中への均一分散が困難になり、気泡むらが発生する傾向にある。さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にある。したがって、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる。水/スメクタイト(ベントナイト)の混合比率は重量比で、好ましくは0.02〜20、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲が理想的である。
【0085】
本発明で得られるスチレン系樹脂発泡体における気泡径の平均は、0.05〜1mmが好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.6mm、特に好ましくは0.08〜0.4mmである。
【0086】
また、発泡剤として水を用いた場合、発泡体中に、気泡径が概ね0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)と、気泡径が概ね0.3mmから1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造を有する発泡体が得られ、得られる発泡体の断熱性能が向上することから好ましい。他の発泡剤として水を用いる場合、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物のみと組み合わせて用いても良いが、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物及び水以外の他の発泡剤(たとえば、ジメチルエーテル、二酸化炭素など)と組み合わせて3成分またはそれ以上の成分からなる発泡剤とすることにより、発泡体の発泡性、成形性がより一層向上するので好ましい。
【0087】
さらに、気泡径0.25mm以下の小気泡及び気泡径0.3〜1mmの大気泡が混在してなる特定の気泡構造の発泡体においては、発泡体断面積あたりに占める小気泡の面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)(以下、小気泡面積率という)は、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜70%である。
【0088】
本発明においては、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で種々の難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0089】
難燃助剤としては、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいはその他の難燃剤と相乗作用を発現する物質で有れば特に制限はないが、次のような熱により分解してラジカルを発生させる難燃助剤が好ましい。
【0090】
すなわち、具体的には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの非パーオキサイド類、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカービネート類、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル類などが挙げられる。
【0091】
このような中でも2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが難燃性を向上させる上で好ましく、最も好ましくは2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである。
【0092】
難燃助剤の含有量は、難燃性が向上するよう適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは、0.05〜3重量部、さらに好ましくは、0.1〜1重量部である。
【0093】
また、より安定的に押出発泡するためには、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤、3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどのイオウ系安定剤を添加するのが好ましい。
【0094】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、
(い)スチレン系樹脂にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤を混合した後加熱溶融する、
(ろ)スチレン系樹脂とヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融し、これに残りの添加剤をそのままあるいは必要により液体化あるいは溶融させて添加し加熱混合する、
(は)あらかじめスチレン系樹脂にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの添加剤、必要に応じてスチレン系樹脂をあらためて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
など、スチレン系樹脂、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤を押出機等の加熱溶融手段に供給し、任意の段階で高圧条件下で、発泡剤をスチレン系樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをダイを通して低圧領域に押出発泡して、発泡体を形成することにより製造される。
【0095】
スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間及び溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、たとえば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
【0096】
また、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型及び成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0097】
本発明の発泡体の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度及び圧縮強度を付与せしめるためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。また、本発明の発泡体の密度については、軽量でかつ優れた断熱性及び曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには15〜50kg/m3であることが好ましく、25〜35kg/m3であるのがさらに好ましい。
【0098】
【実施例】
次に本発明の熱可塑性樹脂押出発泡体の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0099】
1)リサイクル性
後述するように樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、発泡剤を添加するとともに前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。次に、該発泡体(A)を粉砕し、口径44mmの二軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約1.5mm、長さ約3mmの大きさのペレットを得た。
【0100】
その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、発泡剤を添加(押出発泡体(A)を得たときと同種、同量の発泡剤を添加)して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)を次のような基準で判定し、リサイクル性を評価した。
○:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)とほぼ同様の色をしており、熱劣化は認められず、発泡体としてのリサイクル性が良好であった。
△:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)に比べてやや着色して変色が見られ、熱劣化していた。
×:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)に比べて著しく変色しており、発泡体としてリサイクルできるレベルではなかった。
【0101】
2)発泡体密度
押出発泡体(A)の発泡体密度は、次の式:発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
【0102】
3)熱伝導率
押出発泡体(A)の熱伝導率をJISA 9511に準じて測定した。測定は製造後、表面から10mmの部分を削除した後、30日経過した発泡体について行った。
【0103】
4)燃焼性
押出発泡体(A)の燃焼性をJISA 9511(燃焼性測定方法A)に準じて厚さ10mm、長さ200mm、幅25mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は製造後、前記寸法に切削した後、7日経過した発泡体について行った。
【0104】
燃焼時間
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる
○:消炎時間が5本の内、少なくとも1本が3秒を越えるが、残りの3本以上は3秒以内となる
△:消炎時間が5本の内、少なくとも3本が3秒を越えるが、残りの1本以上は3秒以内となる
×:消炎時間が5本すべて3秒を超える
燃焼距離
◎:5本全てが限界線以内で停止する
○:5本の内、少なくとも1本は燃焼が限界線を越えるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する
△:5本の内、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する
×:5本全てで燃焼が限界線を越える
燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全く見られない
○:発泡剤の燃焼が若干見られる
△:発泡剤の燃焼が見られるが、全焼には至らない
×:発泡剤の燃焼も見られ、全焼する
5)小気泡面積率
押出発泡体(A)について、気泡径0.25mm以下の気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を以下のようにして求めた。ここで、気泡径0.25mm以下の気泡とは、円相当直径が0.25mm以下の気泡とする。
a)走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、品番:S−450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が7.5mmよりも大きい気泡(実寸法が0.25mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる(一次処理)。
c)画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、即ち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
d)濃色部分のうち、直径7.5mm以下の円の面積に相当する部分、即ち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径7.5mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行う。
e)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径7.5mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積比(%)=(1−濃色部分の面積/画像全体の面積)×100
実施例1
ポリスチレン樹脂(A&Mスチレン(株)製、G9401)100部に対して、難燃剤としてヘキサブロモベンゼン8部、さらにタルク0.5部、ステアリン酸バリウム0.25部、安定剤0.3部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。
【0105】
このとき発泡剤として、プロパン100%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して6部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
【0106】
また、リサイクル性を評価するため、押出発泡体(A)を粉砕し、口径44mmの二軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約2〜3mm、長さ約3〜5mmの大きさのペレットを得た。その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、プロパン100%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して6部となるように添加して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)のリサイクル性評価結果、及び押出発泡体(A)の特性を表1に示す。
【0107】
実施例2〜12
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン難燃剤、含燐化合物、発泡剤の種類、添加量を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。なお、2種以上の発泡剤を添加する場合には、所定の添加量になるよう調整し、それぞれ、別々のラインから押出機に圧入した。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0108】
比較例1〜2
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンあるいはテトラブロモシクロオクタンを用い、その添加量、発泡剤の種類及び添加量を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0109】
【表1】
本発明の実施例である実施例1〜12と比較例1あるいは2を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好でかつ難燃性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例2と実施例4〜7を比較、あるいは実施例3と実施例10を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)を併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0110】
実施例13〜24
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン難燃剤、含燐化合物、含ホウ素化合物、難燃助剤、発泡剤の種類、添加量を表2に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。なお、2種以上の発泡剤を添加する場合には、所定の添加量になるよう調整し、それぞれ、別々のラインから押出機に圧入した。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0111】
比較例3〜4
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンを用い、その添加量、発泡剤の種類及び添加量を表2に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0112】
【表2】
本発明の実施例である実施例13〜24と比較例3あるいは4を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好で、断熱性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例13と実施例15〜21を比較、又、実施例14と実施例24を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、更には含燐化合物、含ホウ素化合物、難燃助剤である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0113】
実施例25
ポリスチレン樹脂(A&Mスチレン(株)製、G9401)100部に対して、難燃剤としてヘキサブロモベンゼン8部、更にベントナイト1部、AEROSIL0.1部、タルク0.5部、ステアリン酸バリウム0.25部、安定剤0.3部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。
【0114】
このとき発泡剤を、イソブタン57%、ジメチルエーテル29%、水14%からなる発泡剤とし、トータル添加量をポリスチレン樹脂100部に対して7部となるように、それぞれ別々のラインから前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)にて前記樹脂中に圧入した。
【0115】
また、リサイクル性を評価するため、押出発泡体(A)を粉砕し、口径44mmのニ軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約2〜3mm、長さ約3〜5mmの大きさのペレットを得た。その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、イソブタン57%、ジメチルエーテル29%、水14%からなる発泡剤をトータル添加量がポリスチレン樹脂100部に対して7部となるように添加して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)のリサイクル性評価結果、及び押出発泡体(A)の特性を表3に示す。
【0116】
実施例26〜35
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物、難燃助剤、発泡剤の種類及び添加量を表3に示す値とした以外は実施例25と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表3に示す。
【0117】
比較例5〜6
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンあるいはテトラブロモシクロオクタン、含窒素化合物、発泡剤、の種類及び添加量を表3に示す値とした以外は実施例25と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表3に示す。
【0118】
【表3】
本発明の実施例である実施例25〜35と比較例5あるいは6を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好で、断熱性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例25と実施例27〜33を比較、又、実施例26と実施例34を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、更には含燐化合物、含窒素化合物、難燃助剤である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0119】
なお、実施例及び比較例では、下記の化合物を用いた。
【0120】
・ハロゲン系難燃剤
ヘキサブロモベンゼン:マナック(株)製、HBB
ペンタブロモトルエン:マナック(株)製、PBT
・他のハロゲン系難燃剤
トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート:日本化成(株)製、TAIC−6B
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル):帝人化成(株)製、FG−3100
テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル):丸菱油化工業(株)製、ノンネンPR−2
ヘキサブロモシクロドデカン:アルベマールコーポレーション製、SAYTEXHP−900
テトラブロモシクロオクタン:アルベマールコーポレーション製、SAYTEXBC−48
トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート:大八化学工業(株)製、CR−900
・含燐化合物
トリフェニルホスフェート:大八化学工業(株)、TPP
・含窒素化合物
イソシアヌル酸:四国化成(株)製ICA−P、それ自体は燃えない、分解点330℃、25℃における水への溶解度0.3g/100g
・含ホウ素化合物
酸化亜鉛:ユー エス ボラックス製ZB
・発泡剤
イソブタン:三井化学(株)製イソブタン
ジメチルエーテル:三井化学(株)製ジメチルエーテル
HFC−134a:ダイキン工業(株)製HFC−134a
塩化メチル:信越化学(株)製塩化メチル
水:水道水
・難燃助剤
2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン:化薬アクゾ(株)製、パーカドックス30
・その他添加剤
ベントナイト:豊順鉱業(株)製、ベンゲル23
AEROSIL:日本アエロジル(株)製、AEROSIL
安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系抗酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの1:1の混合物)
タルク:林化成(株)製、タルカンパウダー
ステアリン酸バリウム:堺化学(株)製、スタリン酸バリウム
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用い、熱安定性、断熱性、難燃性に優れ、かつリサイクルする際の熱履歴によっても熱劣化しがたい、すなわちリサイクル性にも優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法が提供される。本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた難燃性、断熱性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材の用途に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクルする際の熱履歴によっても熱劣化しがたい、すなわちリサイクル性に優れたスチレン系樹脂発泡体につき、特に、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを発泡剤として用いる場合には環境適合性にも優れた発泡体であり、更に、熱安定性、断熱性、難燃性にも優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、次いで発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧域に押出すことにより発泡体を連続的に製造する方法は既に知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、発泡剤にいわゆるフロン類を用いる方法も知られている(例えば、特許文献3及び4参照。)。
【0004】
フロン類以外の発泡剤を用いたスチレン系樹脂発泡体及び製造方法として、発泡剤にプロパン、ブタンあるいはそれらの混合物を用いたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法は開示されており、更に難燃性を満たすためには、リン酸ハロゲン化アルキル−アリールやポリリン酸アンモニウム、ヘキサブロモシクロドデカンまたは水酸化マグネシウム、テトラブロモビスフェノールAが用いられるとしている(例えば、特許文献5及び6参照。)。
【0005】
また、熱可塑性フォームの難燃性を高める目的で、臭素化脂肪族化合物と、これより熱安定性が高く揮発性の低い臭素化芳香族化合物などを併用して用いる方法も知られている(例えば、特許文献7及び8)。
【0006】
更に、熱可塑性フォームの難燃性を高める目的で、テトラブロモシクロドデカンとペンタブロモトルエンを併用して用いる方法も知られている(例えば、特許文献9。)。
【0007】
一方、本発明者らは、発泡剤にプロパン、ブタンなどの飽和炭化水素を用いた発泡体において、JISA 9511で規定する高度な難燃性と押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の如き高度な断熱性を両立するためには、発泡体中に残存する飽和炭化水素の燃焼を抑制する必要があり、前記発明では実現し難い問題があることを見出し、鋭意検討した結果、飽和炭化水素の燃焼を抑制し、JISA 9511で規定する難燃性と押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の断熱性を両立できる技術を提案した(例えば、特許文献10〜12参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特公昭31−5393号公報
【0009】
【特許文献2】
特公昭42−19195号公報
【0010】
【特許文献3】
特公昭41−672号公報
【0011】
【特許文献4】
特公昭57−7175号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平7−53761号公報
【0013】
【特許文献6】
特開平10−237210号公報
【0014】
【特許文献7】
特表平5−509338号公報
【0015】
【特許文献8】
特表平7−502047号公報
【0016】
【特許文献9】
特開平02−194038号公報
【0017】
【特許文献10】
特開2001−121596号公報
【0018】
【特許文献11】
特開2001−131322号公報
【0019】
【特許文献12】
特開2001−131323号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今般、環境適合性が重要視されるようになっている中で、樹脂発泡体製品そのもの、あるいは発泡体を製造しカットして製品に仕上げる際に発生する発泡体の切れ端などをリサイクルして、再度発泡体やその他の何らかの製品として利用できることが望まれている。
【0021】
このようなリサイクル性を考慮した場合には、前記の如き発明であっても、例えば発泡体としてリサイクル利用した際に難燃剤の熱安定性に起因して樹脂劣化が発生し、リサイクル発泡体が変色したり、所望の機械的強度が発現しなかったりする傾向がある。
【0022】
このような問題を解決するために、難燃剤の使用量を制限したり、フェノール系あるいはリン系などの安定剤を増量添加して、樹脂の劣化を抑制することが考えられるが、その結果、難燃性が低下したり、製品のコストアップにもつながる。
【0023】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンなどの環境適合性の優れた発泡剤を使用し、更に、リサイクル性にも優れていることから、廃棄することなく再使用が可能となり環境適合性を高めたところの、熱安定性、断熱性や難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法を提供することである。
【0024】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、発泡剤を含有させたスチレン系樹脂発泡体において、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性、熱安定性に優れた難燃性スチレン系樹脂発泡体が得られ、特に、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを発泡剤として用いた場合には、環境適合性を備えるとともに、断熱性にも優れた発泡体が得られることを見出し本発明に至った。
【0025】
すなわち、本発明は、
(1)スチレン系樹脂を押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、発泡剤と、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体に関する。
(2)前記発泡剤の一部または全部が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(3)前記発泡剤の一部または全部が、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(4)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(5)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(6)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(7)スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
(8)スチレン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤ヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを0.1〜20重量部含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(9)炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が、プロパン、n−ブタン、i−ブタンより選ばれる1種以上の飽和炭化水素であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(10)他の発泡剤が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、水、二酸化炭素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(11)他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(12)含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(13)発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする(1)〜(14)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(14)発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする(13)記載のスチレン系樹脂発泡体に関する。
(15)スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、スチレン系樹脂に、(A)発泡剤、及び(B)ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエン、(C)必要に応じて他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート及び/又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、(D)必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種または2種以上の化合物を共存させて、押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【0026】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0027】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物あるいはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0028】
スチレン系樹脂では、加工性の面からスチレンホモポリマー、スチレンアクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。
【0029】
本発明において用いられる発泡剤としては特に制限はないが、炭素数3〜5の飽和炭化水素及び/又はオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いることが環境適合性の観点から好ましい。
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、発泡成形性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0031】
一方、発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを使用することも環境適合性の点から好ましいが、オゾン層破壊係数とは、各化合物の1kg当たりの総オゾン破壊量をCFC−11(CCl3F)の1kg当たりの総オゾン破壊量で割った値であり、一般的に知られているものである。
【0032】
オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンとしては、HFC−23(CHF3)、HFC−32(CH2F2)、HFC−125(CHF2CF3)、HFC−134a(CH2FCF3)、HFC−143a(CH3CF3)、HFC−152a(CH3CHF2)、HFC−227ea(CF3CHFCF3)、HFC−236fa(CF3CH2CF3)、HFC−245ca(CH2FCF2CHF2)、HFC−245cb(CF3CF2CH3)、HFC−245fa(CF3CH2CHF2)、HFC−365mfc(CF3CH2CF2CH3)などが挙げられ、これらを2種以上用いても良い。
【0033】
これらの中でも、発泡成形性の観点から、HFC−134aがより好ましい。
【0034】
本発明では、前記、炭素数3〜5の飽和炭化水素やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボン以外の、他の発泡剤を用いることで、発泡体製造時の可塑化効果や発泡助剤効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に発泡体の製造が可能となる。ただし、目的とする発泡倍率、難燃性等の発泡体の諸特性いかんによっては、その使用量などが制限されうる。
【0035】
本発明で用いられる他の発泡剤としては、特に限定されるものではない。
【0036】
例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、更には、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。これら他の発泡剤は単独または2種以上混合して使用することができる。
【0037】
なお、発泡剤として炭素数3〜5の飽和炭化水素を用いる場合には、他の発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いても良い。発泡剤としてオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンを用いる場合には、他の発泡剤として炭素数3〜5の飽和炭化水素を用いることもできる。
【0038】
他の発泡剤の中では、発泡性、発泡成形性などの点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは後述する断熱性等の点からは水、二酸化炭素が好ましい。これらの中でも、環境適合性の優れたジメチルエーテル、水、二酸化炭素が特に好ましい。
【0039】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の製造時に、スチレン系樹脂中に添加または注入される発泡剤の量は、発泡倍率の設定値などに応じて適宜かわるものではあるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部とするのが好ましい。発泡剤の添加量が1重量部未満では発泡倍率が低く、発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくい場合があり、一方、20重量部を超えると過剰な発泡剤量のため発泡体中にボイドなどの不良を生じたり、難燃性が低下する場合がある。
【0040】
発泡剤の構成としては特に制限はないが、発泡剤の一部または全部として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物を含有していることが環境適合性の点で好ましい。
又、発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することが環境適合性の点からより好ましい。
【0041】
この中でも、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が発泡剤全量100重量%に対して、10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上であり、他の発泡剤の量は、発泡剤全量100重量%に対して、90重量%以下がより好ましく、更に好ましくは80重量%以下である。炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の量が前記範囲より少ないと、得られる発泡体の断熱性が劣る場合がある。他の発泡剤の量が前記範囲を超える場合、樹脂との相溶性が高い場合は、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなったり、樹脂との相溶性が低い場合は、発泡体に気孔などが生じて良好な発泡体が得られなかったり、押出機の圧力制御が難しくなったりすると共に、易燃性の発泡剤によっては発泡体の難燃性の低下を招く場合がある。
【0042】
他の発泡剤として水を用いる場合には、加工性や、気泡径0.25mm以下の気泡(以下、小気泡とも言う)と気泡径0.3〜1mmの気泡(以下、大気泡とも言う)の生成の面から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜70重量%、特に好ましくは3〜65重量%である。他の発泡剤として水と、水以外の他の発泡剤(i−ブタンなどの飽和炭化水素や、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエーテルなど)を併用する場合には、加工性や、前記小気泡、大気泡の生成の面から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは水1〜75重量%及び水以外の他の発泡剤79〜5重量%、より好ましくは水2〜70重量%及び水以外の他の発泡剤78〜10重量%、特に好ましくは水3〜65重量%及び水以外の他の発泡剤77〜15重量%である。
【0043】
発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0044】
本発明により得られたスチレン系樹脂発泡体には、発泡剤として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が含有されることが好ましい。ただし、得られたスチレン系樹脂発泡体中における、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の残存含有量は、炭素数が3〜5である飽和炭化水素やハイドロフルオロカーボンの種類及び使用量、発泡剤の発泡体中における透過性、発泡体の倍率あるいは密度、要求される断熱性能などによっても異なる。特に発泡剤の発泡体中における透過性によっては、経時的に残存量が減量し、発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。従って、透過性が高い炭素数が3〜5である飽和炭化水素やハイドロフルオロカーボンを用いて製造され、結果的に発泡体中に残存含有するハイドロフルオロカーボン量が非常に少ない発泡体も本発明の範疇である。
【0045】
しかしながら、JISA 9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が要求される場合には、得られたスチレン樹脂発泡体中における発泡剤の組成は、残存する発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物が、好ましくは100〜1重量%、より好ましくは100〜5重量%、さらに好ましくは100〜10重量%、特に好ましくは100〜20重量%、他の発泡剤が好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜95重量%、さらに好ましくは0〜90重量%、特に好ましくは0〜80重量%である。発泡体中に残存する発泡剤における炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の量が前記範囲より少なくなるとJISA 9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が得られにくい場合がある。
【0046】
さらに、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種の如き、高度な断熱性能を要求する場合には、発泡体中における、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物の残存含有量は、一般に発泡体100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。
【0047】
炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物、あるいは、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物以外の他の発泡剤の残存含有量は、発泡剤の種類、発泡体のガス透過性や密度などによっても異なるが、発泡体の断熱性能を良好なものにするために、0〜18重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10重量部である。特に発泡剤の発泡体中における透過性によっては、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物やオゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物と同様に、経時的に残存量が減量し、発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。
【0048】
本発明では、ハロゲン系難燃剤として、ヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用いる。これらの難燃剤を用いることにより、難燃性とともに熱安定性、かつリサイクル性を兼ね備えたスチレン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0049】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤であるヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンの含有量は、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される難燃性を得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、後述する他のハロゲン系難燃剤、相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは、1〜15重量部、さらに好ましくは、2〜12部である。ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンの含有量が前記未満では、本発明の目的とする難燃性などの発泡体としての良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方前記範囲を超えると、発泡体製造時の安定性、表面性などをかえって損なう場合がある。
【0050】
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに必要に応じて他のハロゲン系難燃剤を含有することができる。他のハロゲン系難燃剤としては、熱可塑性樹脂に通常使用される難燃剤を特別に限定することなく使用することができる。例えば、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などのハロゲン化脂肪族化合物はるいはその誘導体、あるいはハロゲン化脂環族化合物あるいはその誘導体、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどのハロゲン化芳香族化合物あるいはその誘導体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などのハロゲン化ビスフェノール類及びその誘導体、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどのハロゲン化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどのハロゲン化アクリル樹脂、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジンなどのハロゲン及び窒素原子含有化合物、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどのハロゲン及びリン原子含有化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物などが挙げられる。これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。さらには、本発明のスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も他のハロゲン系難燃剤として用いることが出来る。
【0051】
これらの中でも、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)が他のハロゲン難燃剤としては好ましく、これらの難燃剤をヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンとを併用することにより、熱安定性やリサイクル性を低下させることなく難燃性をより向上させることが可能となる。又、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の添加により可塑性が得られやすくなることから、発泡成形性が向上する点からも好ましい。
【0052】
他のハロゲン系難燃剤の含有量は、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される難燃性を得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンの添加量、後述する相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜9重量部、更に好ましくは、1〜8重量部である。更には、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンと他のハロゲン系難燃剤の添加量の合計量が、0.1〜20重量部とするのが発泡体製造時の安定性などの点から好ましい。
【0053】
本発明では、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、あるいはこれと他のハロゲン系難燃剤に、更に、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物を併用することにより、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種に該当する高い断熱性能を発揮させるために燃焼性の高い炭化水素を発泡剤として比較的多く含有している場合でも、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいはこれと他のハロゲン系難燃剤を多量に添加することなく、JISA 9511(燃焼性測定方法A)に規定される高度の難燃性を達成することができる。
【0054】
本発明で使用される含燐化合物とは、燐原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいは他のハロゲン系難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えばホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸またはこれの誘導体、金属塩、メラミン塩、アンモニウム塩、及び、ホスファゼンまたはその誘導体、ホスホニトリルまたはその誘導体等が挙げられる。
【0055】
前記、含燐化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの脂肪族炭化水素モノリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの芳香族炭化水素モノリン酸エステル、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムアミド、リン酸アミド、二亜リン酸ピペラジン、亜リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、亜リン酸グアナゾール、ホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アミド、ポリホスファゼン、ホスホニトリル等の含燐含窒素系化合物等が挙げられる。更には、前述のトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどのハロゲン化ホスフェート系化合物を含燐化合物として使用しても良い。含燐化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0056】
含燐化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0057】
本発明で使用される含窒素化合物とは、窒素原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えば、トリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸あるいはイソシアヌル酸及びその誘導体、グアニジン化合物、アゾ化合物、テトラゾール化合物等が挙げられる。
【0058】
前記含窒素化合物の具体例としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、メチロールメラミンなどのトリアジン骨格含有化合物あるいはその誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N‘−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物とシアヌル酸あるいはイソシアヌル酸及びその誘導体からなる塩、例えばメラミンシアヌレート等が挙げられる。更には、前述の、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチロニトリルなどアゾ化合物、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩等のテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩、例えば5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩等のテトラゾール金属塩類などのテトラゾール化合物など、飽和炭化水素以外の発泡剤として用いられる発泡剤を含窒素化合物として使用しても良い。更には、前述の、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどのハロゲン及び窒素原子含有化合物を含窒素化合物として使用しても良い。含窒素化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0059】
含窒素化合物としてシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体を用いる場合には、化合物自体が難燃性であると共に、270℃〜400℃で分解あるいは溶融する化合物が好ましい。また、テトラゾール化合物を用いる場合には、熱分解温度が250℃以上である化合物が好ましい。
【0060】
含窒素化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0061】
本発明で使用される含ホウ素化合物とは、ホウ素原子を含有する化合物であって、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤と相乗的効果を発揮できる化合物であれば特に制限はない。例えば、ホウ酸、硼砂、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素、リン酸ホウ素、ボロシリケート類等が挙げられる。
【0062】
前記、含ホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、硼砂、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸スズなどのホウ酸金属塩、及びこれらの化合物の水和物など誘導体、二酸化二ホウ素、三酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等の酸化ホウ素が挙げられる。含ホウ素化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0063】
含ホウ素化合物の添加量は、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤などの難燃剤、発泡剤種及びその含有量、得られる発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは、0.3〜9重量部、さらに好ましくは、0.5〜8重量部である。0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られず、10重量部を越えると、発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0064】
含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物は、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種または2種以上を併用して用いられる。 更に、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物は、後述する如き表面処理剤、例えば各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、シランカップリング剤、チタン系化合物、無機化合物などから選ばれる1種または2種以上の化合物で表面被覆処理をしても好適に使用し得る。
【0065】
含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物で好ましくは、トリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの芳香族リン酸エステルあるいは芳香族縮合リン酸エステル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼンなどの燐及び窒素原子含有化合物、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸、イソシアヌル酸、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、熱分解温度が250℃以上である5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩テトラゾール化合物などのテトラゾール化合物、ホウ酸亜鉛、酸化ホウ素、表面処理剤で処理されたホウ酸亜鉛あるいは酸化ホウ素などなどが難燃性の相乗的効果が発揮され、発泡剤の燃焼も抑制される点で好ましい。
【0066】
更にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン以外のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物としては、高い断熱性などを得るために他の発泡助剤として水を用いた場合でも、発泡体中に、前記小気泡と大気泡の発生する効果を阻害しない化合物が好ましく、例えば、室温付近の温度域(10〜30℃前後)において水に難溶あるいは水への溶解度が10重量%以下の化合物が好ましい。水への溶解度が高い場合、前記の小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にある。水への溶解度が高い場合であったり、小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にあった場合には、表面被覆処理を施すことで改善できる場合があり、表面被覆処理された化合物を用いることが好ましい。
【0067】
表面処理剤としては、一般的に表面処理剤として知られている物質に限らず、水との相互作用を絶縁できる物質であれば構わない。例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、アクリル樹脂等が例示できる熱硬化性樹脂、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示できるシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラアルコキシチタン、チタンアシレート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン等が例示できるチタン系表面処理剤、(アルキルアセトアセタト)アルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が例示できるアルミニウム系表面処理剤、フッ素樹脂、アミド樹脂、アリレート樹脂、イミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等が例示できる熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、これらの表面処理剤を2種以上併用することも本発明の範疇である。さらに、最近では無機物−無機物の組み合わせでも表面処理が可能であり、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素等で表面に被膜を形成することも可能である。このようなことからは、有機物、無機物に関わらず表面処理することが可能である。なお、これらの表面処理剤を2種以上併用することも本発明の範疇である。
【0068】
表面処理する方法としては、次の(1)〜(4)ような方法が例示できるが、これらの方法に何ら制限されるものではない。
(1)混合機能のある装置を用いて化合物と表面処理剤をミキシングする。混合機能のある装置とは一般的なヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等で充分であるが、粉体コーティング用の混合機、例えば、(株)セイシン企業製ニューグラマシン、(株)奈良機械製作所製混合造粒機NMG等も例示できる。
(2)表面処理剤を適当な有機溶剤に溶解させ、これに化合物を添加、浸漬した後、乾燥する。
(3)液状表面処理剤、あるいは固体状表面処理剤を有機溶剤に溶解し、気流中で分散している化合物に噴霧した後、乾燥する。気流分散中に散布する装置としては、不二パウダル(株)製グローマックス等が例示できる。
(4)機械的衝撃により化合物の表面に表面処理剤を被覆させる。機械的衝撃を与えることのできる装置としては、(株)奈良機械製作所製NHS(ハイブリダイゼーションシステム)等が例示できる。これは、表面処理剤が固体の場合に有効である。
【0069】
表面処理剤として熱硬化性樹脂を用いる場合は、(1)〜(4)により化合物表面に熱硬化前の樹脂の被膜を形成し、その後一般的な乾燥機や流動層乾燥機等で加温して熱硬化すると良い。あるいは、熱硬化後の粉末樹脂を(4)により表面処理することも可能である。
【0070】
なお、表面処理を一度実施した後、同じ表面処理剤あるいは異なる表面処理剤を用いて再び表面処理を実施するなど、複数回表面処理を施すことにより被覆率を向上させることも本発明の範疇である。
【0071】
また、発泡剤として飽和炭化水素を用いた場合、発泡体の燃焼時に発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、該発泡剤が燃焼することで、該発泡剤の燃焼熱により発泡体の表面溶解が生じて延焼する傾向があった。
【0072】
しかしながら、これらの延焼傾向についても、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンと、他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物あるいは含ホウ素化合物を併用することにより、残留発泡剤の燃焼を阻害することで、極めて軽減させ得るか、ないしは無くすることができるといった優れた効果が得られ、適量を使用することで優れた難燃性と成形加工の安定性を有する発泡成形品が得られるようになる。
【0073】
他の発泡剤として、水を用いる場合は、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩類あるいはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなど(本発明においては、これらの物質を吸水性物質と総称する)の1種または2種以上を添加することで、発泡体中に、前記小気泡、大気泡の発生する作用をさらに向上することができ、得られる発泡体の成形性、生産性及び断熱性能がさらに向上する。
【0074】
ここで使用する吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性のない水を吸水してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散させることができると考えられることから使用される。
【0075】
本発明で用いられる吸水性物質の含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは0.5〜7重量部である。吸水性物質の含有量が前記範囲未満では吸水性物質による水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる場合があり、一方前記範囲を超える場合には、押出機内で吸水性物質の分散不良が発生し、気泡むらができ、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生ずる場合がある。
【0076】
本発明で用いられる層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから成り、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し存在しうるものである。層状珪酸塩の例としては、例えば、スメクタイト族粘土及び膨潤性雲母などが挙げられる。
【0077】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式1
X0.2〜0.6Y2〜3Z4O10(OH)2・nH2O・・・・・・一般式1
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオン及び相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。
【0078】
該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式2
X0.5〜1.0Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2 ・・・・・・一般式2
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。
【0080】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、及び水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式3
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4−xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O・・・・・・一般式3
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。
【0082】
膨潤性層状珪酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、得られる発泡体中の分散性の点などからスメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイト及び膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が好ましい。
【0083】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどが挙げられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0084】
ベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、特に好ましくは、0.5〜7重量部、最も好ましくは1〜5重量部である。スメクタイトの含有量が前記範囲満では水の圧入量に対してスメクタイトによる水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる傾向がある。一方前記範囲を超える場合には、スチレン系樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、スチレン系樹脂中への均一分散が困難になり、気泡むらが発生する傾向にある。さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にある。したがって、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる。水/スメクタイト(ベントナイト)の混合比率は重量比で、好ましくは0.02〜20、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲が理想的である。
【0085】
本発明で得られるスチレン系樹脂発泡体における気泡径の平均は、0.05〜1mmが好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.6mm、特に好ましくは0.08〜0.4mmである。
【0086】
また、発泡剤として水を用いた場合、発泡体中に、気泡径が概ね0.25mm以下の比較的気泡径の小さい気泡(小気泡)と、気泡径が概ね0.3mmから1mm程度の比較的気泡径の大きな気泡(大気泡)が海島状に混在してなる特徴的な気泡構造を有する発泡体が得られ、得られる発泡体の断熱性能が向上することから好ましい。他の発泡剤として水を用いる場合、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物のみと組み合わせて用いても良いが、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物及び水以外の他の発泡剤(たとえば、ジメチルエーテル、二酸化炭素など)と組み合わせて3成分またはそれ以上の成分からなる発泡剤とすることにより、発泡体の発泡性、成形性がより一層向上するので好ましい。
【0087】
さらに、気泡径0.25mm以下の小気泡及び気泡径0.3〜1mmの大気泡が混在してなる特定の気泡構造の発泡体においては、発泡体断面積あたりに占める小気泡の面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)(以下、小気泡面積率という)は、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜70%である。
【0088】
本発明においては、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で種々の難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0089】
難燃助剤としては、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンあるいはその他の難燃剤と相乗作用を発現する物質で有れば特に制限はないが、次のような熱により分解してラジカルを発生させる難燃助剤が好ましい。
【0090】
すなわち、具体的には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの非パーオキサイド類、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカービネート類、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル類などが挙げられる。
【0091】
このような中でも2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが難燃性を向上させる上で好ましく、最も好ましくは2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである。
【0092】
難燃助剤の含有量は、難燃性が向上するよう適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは、0.05〜3重量部、さらに好ましくは、0.1〜1重量部である。
【0093】
また、より安定的に押出発泡するためには、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤、3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどのイオウ系安定剤を添加するのが好ましい。
【0094】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、
(い)スチレン系樹脂にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤を混合した後加熱溶融する、
(ろ)スチレン系樹脂とヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融し、これに残りの添加剤をそのままあるいは必要により液体化あるいは溶融させて添加し加熱混合する、
(は)あらかじめスチレン系樹脂にヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの添加剤、必要に応じてスチレン系樹脂をあらためて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
など、スチレン系樹脂、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、必要に応じて他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物、他の添加剤を押出機等の加熱溶融手段に供給し、任意の段階で高圧条件下で、発泡剤をスチレン系樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをダイを通して低圧領域に押出発泡して、発泡体を形成することにより製造される。
【0095】
スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間及び溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、たとえば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
【0096】
また、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型及び成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0097】
本発明の発泡体の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度及び圧縮強度を付与せしめるためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。また、本発明の発泡体の密度については、軽量でかつ優れた断熱性及び曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには15〜50kg/m3であることが好ましく、25〜35kg/m3であるのがさらに好ましい。
【0098】
【実施例】
次に本発明の熱可塑性樹脂押出発泡体の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0099】
1)リサイクル性
後述するように樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、発泡剤を添加するとともに前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。次に、該発泡体(A)を粉砕し、口径44mmの二軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約1.5mm、長さ約3mmの大きさのペレットを得た。
【0100】
その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、発泡剤を添加(押出発泡体(A)を得たときと同種、同量の発泡剤を添加)して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)を次のような基準で判定し、リサイクル性を評価した。
○:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)とほぼ同様の色をしており、熱劣化は認められず、発泡体としてのリサイクル性が良好であった。
△:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)に比べてやや着色して変色が見られ、熱劣化していた。
×:押出発泡体(B)は押出発泡体(A)に比べて著しく変色しており、発泡体としてリサイクルできるレベルではなかった。
【0101】
2)発泡体密度
押出発泡体(A)の発泡体密度は、次の式:発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
【0102】
3)熱伝導率
押出発泡体(A)の熱伝導率をJISA 9511に準じて測定した。測定は製造後、表面から10mmの部分を削除した後、30日経過した発泡体について行った。
【0103】
4)燃焼性
押出発泡体(A)の燃焼性をJISA 9511(燃焼性測定方法A)に準じて厚さ10mm、長さ200mm、幅25mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は製造後、前記寸法に切削した後、7日経過した発泡体について行った。
【0104】
燃焼時間
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる
○:消炎時間が5本の内、少なくとも1本が3秒を越えるが、残りの3本以上は3秒以内となる
△:消炎時間が5本の内、少なくとも3本が3秒を越えるが、残りの1本以上は3秒以内となる
×:消炎時間が5本すべて3秒を超える
燃焼距離
◎:5本全てが限界線以内で停止する
○:5本の内、少なくとも1本は燃焼が限界線を越えるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する
△:5本の内、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する
×:5本全てで燃焼が限界線を越える
燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全く見られない
○:発泡剤の燃焼が若干見られる
△:発泡剤の燃焼が見られるが、全焼には至らない
×:発泡剤の燃焼も見られ、全焼する
5)小気泡面積率
押出発泡体(A)について、気泡径0.25mm以下の気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を以下のようにして求めた。ここで、気泡径0.25mm以下の気泡とは、円相当直径が0.25mm以下の気泡とする。
a)走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、品番:S−450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影する。
b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が7.5mmよりも大きい気泡(実寸法が0.25mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる(一次処理)。
c)画像処理装置((株)ピアス製、品番:PIAS−II)に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、即ち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
d)濃色部分のうち、直径7.5mm以下の円の面積に相当する部分、即ち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径7.5mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行う。
e)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径7.5mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積比(%)=(1−濃色部分の面積/画像全体の面積)×100
実施例1
ポリスチレン樹脂(A&Mスチレン(株)製、G9401)100部に対して、難燃剤としてヘキサブロモベンゼン8部、さらにタルク0.5部、ステアリン酸バリウム0.25部、安定剤0.3部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。
【0105】
このとき発泡剤として、プロパン100%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して6部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
【0106】
また、リサイクル性を評価するため、押出発泡体(A)を粉砕し、口径44mmの二軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約2〜3mm、長さ約3〜5mmの大きさのペレットを得た。その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、プロパン100%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して6部となるように添加して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)のリサイクル性評価結果、及び押出発泡体(A)の特性を表1に示す。
【0107】
実施例2〜12
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン難燃剤、含燐化合物、発泡剤の種類、添加量を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。なお、2種以上の発泡剤を添加する場合には、所定の添加量になるよう調整し、それぞれ、別々のラインから押出機に圧入した。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0108】
比較例1〜2
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンあるいはテトラブロモシクロオクタンを用い、その添加量、発泡剤の種類及び添加量を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0109】
【表1】
本発明の実施例である実施例1〜12と比較例1あるいは2を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好でかつ難燃性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例2と実施例4〜7を比較、あるいは実施例3と実施例10を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)を併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0110】
実施例13〜24
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン難燃剤、含燐化合物、含ホウ素化合物、難燃助剤、発泡剤の種類、添加量を表2に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。なお、2種以上の発泡剤を添加する場合には、所定の添加量になるよう調整し、それぞれ、別々のラインから押出機に圧入した。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0111】
比較例3〜4
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンを用い、その添加量、発泡剤の種類及び添加量を表2に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0112】
【表2】
本発明の実施例である実施例13〜24と比較例3あるいは4を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好で、断熱性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例13と実施例15〜21を比較、又、実施例14と実施例24を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、更には含燐化合物、含ホウ素化合物、難燃助剤である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0113】
実施例25
ポリスチレン樹脂(A&Mスチレン(株)製、G9401)100部に対して、難燃剤としてヘキサブロモベンゼン8部、更にベントナイト1部、AEROSIL0.1部、タルク0.5部、ステアリン酸バリウム0.25部、安定剤0.3部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体(A)を得た。
【0114】
このとき発泡剤を、イソブタン57%、ジメチルエーテル29%、水14%からなる発泡剤とし、トータル添加量をポリスチレン樹脂100部に対して7部となるように、それぞれ別々のラインから前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)にて前記樹脂中に圧入した。
【0115】
また、リサイクル性を評価するため、押出発泡体(A)を粉砕し、口径44mmのニ軸押出機に投入し、200℃に加熱して溶融、押出して直径約2〜3mm、長さ約3〜5mmの大きさのペレットを得た。その後、再度該ペレットを口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給し、イソブタン57%、ジメチルエーテル29%、水14%からなる発泡剤をトータル添加量がポリスチレン樹脂100部に対して7部となるように添加して押出発泡体(A)を得た方法と同様にして、再度直方体状の押出発泡体(B)を得た。このときの押出発泡体(B)のリサイクル性評価結果、及び押出発泡体(A)の特性を表3に示す。
【0116】
実施例26〜35
ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエン、他のハロゲン系難燃剤、含燐化合物、含窒素化合物、難燃助剤、発泡剤の種類及び添加量を表3に示す値とした以外は実施例25と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表3に示す。
【0117】
比較例5〜6
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンあるいはテトラブロモシクロオクタン、含窒素化合物、発泡剤、の種類及び添加量を表3に示す値とした以外は実施例25と同様にして発泡体を得た。リサイクル性、得られた発泡体の特性を表3に示す。
【0118】
【表3】
本発明の実施例である実施例25〜35と比較例5あるいは6を比較して明らかなように、本発明のヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを用いることにより、リサイクル性が良好で、断熱性にも優れた発泡体が得られることが判る。さらに、実施例25と実施例27〜33を比較、又、実施例26と実施例34を比較して判るように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、更には含燐化合物、含窒素化合物、難燃助剤である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを併用することにより、ヘキサブロモベンゼンやペンタブロモトルエンを減量させた場合でも優れた難燃性が得られる。
【0119】
なお、実施例及び比較例では、下記の化合物を用いた。
【0120】
・ハロゲン系難燃剤
ヘキサブロモベンゼン:マナック(株)製、HBB
ペンタブロモトルエン:マナック(株)製、PBT
・他のハロゲン系難燃剤
トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート:日本化成(株)製、TAIC−6B
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル):帝人化成(株)製、FG−3100
テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル):丸菱油化工業(株)製、ノンネンPR−2
ヘキサブロモシクロドデカン:アルベマールコーポレーション製、SAYTEXHP−900
テトラブロモシクロオクタン:アルベマールコーポレーション製、SAYTEXBC−48
トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート:大八化学工業(株)製、CR−900
・含燐化合物
トリフェニルホスフェート:大八化学工業(株)、TPP
・含窒素化合物
イソシアヌル酸:四国化成(株)製ICA−P、それ自体は燃えない、分解点330℃、25℃における水への溶解度0.3g/100g
・含ホウ素化合物
酸化亜鉛:ユー エス ボラックス製ZB
・発泡剤
イソブタン:三井化学(株)製イソブタン
ジメチルエーテル:三井化学(株)製ジメチルエーテル
HFC−134a:ダイキン工業(株)製HFC−134a
塩化メチル:信越化学(株)製塩化メチル
水:水道水
・難燃助剤
2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン:化薬アクゾ(株)製、パーカドックス30
・その他添加剤
ベントナイト:豊順鉱業(株)製、ベンゲル23
AEROSIL:日本アエロジル(株)製、AEROSIL
安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系抗酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの1:1の混合物)
タルク:林化成(株)製、タルカンパウダー
ステアリン酸バリウム:堺化学(株)製、スタリン酸バリウム
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを用い、熱安定性、断熱性、難燃性に優れ、かつリサイクルする際の熱履歴によっても熱劣化しがたい、すなわちリサイクル性にも優れたスチレン系樹脂発泡体及びその製造方法が提供される。本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた難燃性、断熱性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材の用途に有用である。
Claims (15)
- スチレン系樹脂を押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、発泡剤と、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
- 前記発泡剤の一部または全部が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 前記発泡剤の一部または全部が、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、発泡剤全量に対して、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を100〜1重量%、及び、他の発泡剤を0〜99重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂発泡体中における発泡剤として、オゾン層破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を発泡体100重量部に対して、1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤ヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエンを0.1〜20重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 炭素数が3〜5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が、プロパン、n−ブタン、i−ブタンより選ばれる1種以上の飽和炭化水素であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 他の発泡剤が、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、水、二酸化炭素から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする請求項1〜12記載のスチレン系樹脂発泡体。
- 発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする請求項13記載のスチレン系樹脂発泡体。
- スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、スチレン系樹脂に、(A)発泡剤、及び(B)ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロモベンゼン及び/又はペンタブロモトルエン、(C)必要に応じて他のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート及び/又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、(D)必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物の群から選ばれる1種または2種以上の化合物を共存させて、押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006283718A (ja) * | 2005-04-04 | 2006-10-19 | Fujikura Rubber Ltd | アンブレラバルブ、エアポンプ用逆止弁装置およびエアポンプ |
JP2007031557A (ja) * | 2005-07-26 | 2007-02-08 | Sekisui Plastics Co Ltd | 難燃性ポリスチレン系樹脂押出発泡体及びその製造方法 |
JP2015036403A (ja) * | 2013-08-13 | 2015-02-23 | 株式会社ジェイエスピー | ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 |
KR102236665B1 (ko) * | 2020-09-17 | 2021-04-07 | 주식회사 티앤비우드 | 나무무늬 재현성이 향상된 합성수지판의 제조방법 |
KR102260706B1 (ko) * | 2020-09-17 | 2021-06-08 | 주식회사 티앤비우드 | 나무무늬 재현성이 향상된 합성수지판의 제조시스템 |
-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003206732A patent/JP2005054004A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006283718A (ja) * | 2005-04-04 | 2006-10-19 | Fujikura Rubber Ltd | アンブレラバルブ、エアポンプ用逆止弁装置およびエアポンプ |
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