JP4067821B2 - 油圧ショベルの遠隔操作システム - Google Patents

油圧ショベルの遠隔操作システム Download PDF

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一宏 菅原
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、応答性の高い近距離遠隔操作と耐ノイズ性の高い遠距離遠隔操作を特定小電力無線装置で行う油圧ショベル遠隔操作システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、作業者が近寄り難い災害現場での復旧工事などでは、操作者と建設機械(油圧ショベルなど)や作業車両(ダンプトラック)などが数100m〜数km離れた場所で遠隔操作されて使用される。また、深穴掘削や側溝掘りなどでは運転者と作業機械が数m〜数10m離れた場所で遠隔操作される。
【0003】
前者に代表される第1の遠隔操作では、通信距離の長い耐ノイズ性に優れた無線電波が使用され、後者に代表される第2の遠隔操作では、通信距離は短いが通信速度が速い無線電波が使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、第1の遠隔操作で使用される無線通信装置(送受信装置)と第2の遠隔操作で使用される無線通信装置(送受信装置)とを別々に用いている。したがって、1台の建設機械を第1および第2の遠隔操作で使用することが事実上できなかった。
【0005】
本発明の目的は、通信距離の長い耐ノイズ性に優れた第1の遠隔操作と通信距離は短いが通信速度が速い第2の遠隔操作を1台の特定小電力無線装置で行うことができるようにした油圧ショベルの遠隔操作システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明は、特定小電力無線方式により1つの通信チャンネルを用いて、通信速度を切換える油圧ショベルの遠隔操作システムであって、(A)油圧操作レバー装置、油圧操作レバー装置の操作信号により駆動されて油圧を制御するメインバルブ、および前記メインバルブで制御された油圧で駆動される油圧アクチュエータを備える油圧ショベルと、(B)操作者による操作指令を指示する操作指示器、少なくとも第1および第2の通信速度(>第1の通信速度)のいずれかを操作者が手動操作で切換える通信速度切換スイッチ、および前記操作指令に基づいて、前記第1の通信速度に手動操作で切換えられているときは前記第1の通信速度の指令信号を特定小電力無線方式に基づいて単一チャンネル上に送信し、前記第2の通信速度に手動操作で切換えられているときは前記第2の通信速度の指令信号を前記特定小電力無線方式に基づいて単一チャンネル上に送信する送信回路を備え、前記油圧ショベルから数100 m 〜数Km離れた作業現場もしくは、数m〜数10m離れた作業現場に配置される送信機とを備え、(C)前記油圧ショベルに搭載する機器として、(C−1)前記通信速度切換スイッチにより手動操作で切換えられた通信速度に応じて前記送信機から送信される少なくとも前記第1の通信速度および第2の通信速度による複数の指令信号をそれぞれ復調して複数の復調信号を生成し、前記通信速度切換スイッチにより手動操作で切換えられた通信速度の指令信号により切り換わるスイッチにより前記複数の復調信号のいずれか一つを切換えて出力する復調器、および前記復調器から出力される復調信号による指令信号に基づいてアクチュエータ駆動信号を生成する駆動信号生成回路を備えた受信機と、(C−2)前記受信機から供給された前記アクチュエータ駆動信号を入力して前記メインバルブを駆動するための比例電磁弁駆動信号を生成するコントローラと、(C−3)前記比例電磁弁駆動信号に応答して作動する比例電磁弁と、(C−4)前記比例電磁弁から出力される油圧信号、および前記油圧操作レバー装置の操作に基づいた前記油圧信号のいずれか一方を選択して前記メインバルブに供給することにより、有人操作と無線遠隔操作とを切換える切換弁とを有する。
請求項2係る本発明は、請求項1に記載の油圧ショベルの遠隔操作システムにおいて、前記送信回路から放射される電波は429MHz帯域の搬送波で放射され、前記第1の通信速度の指令信号は、通信速度2400bpsのMSK変調によって生成され、前記第2の通信速度の指令信号は、通信速度4800bpsのFSK変調によって生成される。 請求項3係る本発明は、請求項1または2に記載の油圧ショベルの遠隔操作システムにおいて、前記送信機は無線リモコン装置であり、前記無線リモコン装置には、前記油圧アクチュエータを操作する複数のジョイスティックで構成された前記操作指示器と、前記通信速度切換スイッチとが設けられる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1〜図10により本発明による無線リモコン式建設機械を油圧ショベルに適用した一実施の形態について説明する。以下の説明では、429MHz帯域の電波を使用する一台の特定小電力無線装置により、4800bpsの高速通信と2400bpsの低速通信を切換えて遠隔操作する場合について説明する。
【0008】
図1は、油圧ショベル10と、油圧ショベル10を無線で遠隔操作する送信機(無線リモコン装置)20とから構成される無線リモコン式油圧ショベルシステムを示す。油圧ショベル10は、左右油圧走行モータで駆動される走行体11と、油圧旋回モータで旋回する旋回体12と、油圧作業シリンダで駆動されるフロント装置13と、油圧操作レバー装置14とを備える。この実施の形態の油圧ショベル10は、オペレータが油圧ショベル10に搭乗して油圧操作レバー装置14により運転する有人操作と、油圧ショベル10から離れた場所からオペレータが無線リモコン装置(送信機)20で運転する遠隔操作とを選択的に使い分けることができる。
【0009】
図2は無線リモコン式油圧ショベルシステムの構成を示すブロック図である。送信機20は、3本のジョイスティック21と、押しボタンスイッチ群22と、通信速度切換スイッチ23と、3本〜5本のジョイスティック21および押しボタンスイッチ群22の操作に応じた無線電波を生成する送信回路24と、生成された無線電波を放射するアンテナ25と、有線信号出力端子26とを備えている。
【0010】
3本のジョイスティック21はそれぞれ前後左右に操作され、操作方向と操作量に応じた信号を出力する。そのため、ジョイスティック21は、前後方向と左右方向の2軸の操作方向を検出し、操作方向と操作量に応じた操作指令信号を出力する角度検出器を内蔵している。押しボタンスイッチ群22はオンオフ信号を出力する。通信速度切換スイッチ23は、第1通信方式と第2通信方式のいずれかを選択する。第1通信方式は、遠距離通信が可能な通信方式であり、耐ノイズ性は高いが通信速度は遅い通信方式である。第2通信方式は、応答性の速い近距離通信用の通信方式であり、第1通信方式に比べて通信速度は速いが耐ノイズ性は低い通信方式である。
【0011】
図2において、油圧ショベル10には、受信機31と、コントローラ32と、パイロット圧制御用油圧機器33とが搭載されている。受信機31は、送信機20から送信される操作信号を受信してシリアル操作信号(アクチュエータ駆動信号)を生成してコントローラ32へ送る。コントローラ32は、受信した操作信号に応じてパイロット圧制御用油圧機器33を駆動する信号を出力する。パイロット圧制御用油圧機器33は、油圧アクチュエータ駆動用圧油を生成する比例電磁減圧弁(以下、比例電磁弁)331と、オンオフ弁332と、油圧操作レバー装置14から出力される油圧パイロット圧力と比例電磁弁331から出力される油圧パイロット圧力とのいずれかを選択するシャトル弁333とを有する。シャトル弁333で選択された油圧パイロット圧力によりメインバルブ15が駆動され、左右走行モータ16,旋回モータ17,油圧シリンダ18a〜18cが操作される。
【0012】
図2では省略しているが、比例電磁弁331は左右走行モータ16,旋回モータ17,油圧シリンダ18a〜18c用にそれぞれ一対ずつ設けられている。また、メインバルブ15には、左右走行モータ16,旋回モータ17,油圧シリンダ18a〜18c用にそれぞれ一つずつスプールが設けられている。各比例電磁弁331は、入力される駆動信号に応じたパイロット圧力を発生し、対応するメインバルブ15の操作方向と操作量を制御する。
【0013】
オンオフ弁332は、比例電磁弁331のパイロット圧力の一次圧入力ポートに設けられ、オンオフ弁332がオフの時には、比例電磁弁331に電流を流したとしても比例電磁弁331から駆動圧油が出力されないように構成されている。なお、送信機20からエンジン始動/停止信号やエンジン回転数制御信号も送信される。これらの信号はコントローラ32から油圧ショベルのメインコントローラ34へ送信されてエンジン制御機器(たとえば、燃料カット弁)35が制御される。
【0014】
―送信機20―
図3および図4により送信機20について詳細に説明する。
図3は送信機20の送信回路24の詳細例を示す。送信回路24は、操作信号を処理する1チップマイコンを主体とする信号変換回路240と、操作信号をアンテナから放射送信するための高周波モジュール250とを有する。信号変換回路240は、上述したジョイスティック21から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器241と、押しボタンスイッチ群22から出力される1,0(ハイレベル、ローレベル)の信号を入力して出力するデジタルインターフェイス(D/I)242と、CPU243と、ROM244と、RAM245と、シリアルインターフェイス(I/F)246と、D/O回路247とを備えている。
【0015】
図3に示すように、ジョイスティック21から出力される操作アナログ電圧信号は、A/D変換器241に入力されてデジタル操作信号に変換される。同様に、各種押しボタンスイッチ群22から出力されるデジタルスイッチ信号は、デジタルインターフェイス242に入力される。信号変換回路240は、A/D変換器241とデジタルインターフェイス242のデジタル出力信号を周期的に取り込み、予め決められた順序(固定フォーマット)に信号を並び替えてシリアル信号に変換する。このシリアル信号は、シリアルインターフェイス(I/F回路)246から高周波モジュール250へ出力される。
【0016】
高周波モジュール250は、クロック信号発生器251と、高周波電源252と、高周波発振器253と、変調信号発生回路254と、周波数変調器(VCO)255と、ミキサ256と、フィルタ257と、高周波アンプ258と、有線信号用アンプ259とを備えている。クロック信号発生器251は、通信速度切換スイッチ23により高速通信が選択されているときは4800bpsのクロック信号を発生し、低速通信が選択されているときは2400bpsのクロック信号を発生する。クロック信号はシリアルI/F回路246と変調信号発生回路254に入力される。シリアルI/F回路246は、高速通信選択時は4800bpsの速度でシリアル信号(図9(a))を出力し、低速通信選択時は2400bpsの速度でシリアル信号(図9(d))を出力する。
【0017】
VCO255は、変調信号発生回路254からの信号の大きさにしたがって、VCO255の出力周波数を変える。すなわち、周波数変調を行う。変調信号発生回路254は後で詳細に説明する。周波数変調された信号は、高周波発振器253の出力とミキサ256で混合され、フィルタ257を通って電力増幅を行う高周波アンプ258へ入力される。高周波アンプ258から出力される高周波電力はアンテナ250Aから電波として放出される。
【0018】
有線信号用アンプ259は変調信号発生回路254からの信号を有線信号出力端子26へ出力する。したがって、有線信号出力端子26を油圧ショベルとケーブルで接続することにより、有線操作が可能となる。
【0019】
なお、高周波発振器253は簡略化して示しているが、水晶発振器のシンセサイザ方式によって周波数が設定される。すなわち、CPU243からシンセサイザの分周比を制御することによって、使用する無線チャネルを設定している。
【0020】
図4は変調信号発生回路254の詳細を示す図である。変調信号発生回路254には、シリアルインターフェイス(I/F回路)246からシリアル信号が、クロック信号発生器251からクロック信号が、通信速度切換スイッチ23から切換信号がそれぞれ入力される。変調信号発生回路254は、シリアル信号を所定の電圧値で制限するリミッタ2541と、リミッタ2541で制限された信号の低周波成分を通過させるローパスフィルタ2542と、所定周波数の副搬送波を発生する副搬送波発生器2543と、ローパスフィルタ2542の出力および副搬送波発生器2543の出力のいずれか一方を選択して取り出すスイッチ2544と、通信速度切換信号でスイッチ2544を切換えるリレー2545とを備える。
【0021】
図5は、無線区間の固定データフォーマットの一例を示す。固定データの1組で1フレームを構成する。ここで1つの区切りが1バイトの信号を示している。無線回線の1フレームの信号は、無線回線の同期のための信号であるSYNの後、データの始まりを示す信号STX、無線機固有のIDの後に、無線操作信号のDataが続き、信号の終了信号であるETX、最後にデータの誤り検出信号CRCで構成される。
【0022】
―受信機31―
図6および図7により受信機31を詳細に説明する。
受信機31は、送信機20からの電波を受信してデジタル信号に変換し、信号の誤り検出を行った後に、操作信号としてコントローラ22へ送出する。そのため、受信機31は、アンテナ311と、高周波アンプ312と、ミキサ313と、フィルタ314と、FM復調器(同期検波器)315と、信号復調器316と、局部発振器317と、1チップマイコン318とを有する。1チップマイコン318は、シリアルインターフェイス(I/F)3181と、CPU3182と、ROM3183と、RAM3184と、シリアルインターフェイス(I/F)3187と、D/O回路3186とを備えている。
【0023】
アンテナ311で受信された電波は高周波アンプ312で増幅されてミキサ313へ入力される。ミキサ313では、増幅された信号が受信機31の局部発信器317の信号と混合されて周波数変換される。周波数変換された信号は、フィルタ314を通ってFM復調器(検波器)315へ入力され、送信機20の変調信号と同じ形に復調される。復調された信号はさらに、信号復調器316でデジタル信号に変換される。デジタル信号はここで、送信機20のシリアルインタフェース246からの操作信号と同一の信号に戻る。復調されたデジタルシリアル信号は、1チップマイコン318のシリアルインターフェイス(I/F)3181を介してCPU3182へ入力される。CPU3182は、入力されたシリアル信号の誤りをチェックし、その後、シリアルインターフェイス(I/F)3187を介してコントローラ22へ操作信号(アクチュエータ駆動信号)を出力する。
【0024】
信号復調器316は、図7に示すように、FM復調器315で復調された信号を増幅するアンプ3161と、その増幅された信号から低周波数成分だけを取り出すローパスフィルタ3162と、ローパスフィルタ3162で抽出された信号の平均値をとる平均信号発生回路3164と、平均信号発生回路3164からの信号とローパスフィルタ3162からの信号を比較するコンパレータ3163と、アンプ3161で増幅された信号から所定周波数帯域成分を取り出すバンドパスフィルタ3167と、副搬送波復調器3168と、入力される切換信号に応じた周波数のクロック信号を副搬送波復調器3168に出力するクロック信号発生器3169と、コンパレータ3163からの比較信号および副搬送波復調器3168からの信号のいずれかを選択して出力するスイッチ3165と、通信速度切換信号でスイッチ3165を切換えるリレー3166とを有する。なお、受信機31は通信速度切換信号を受信し、信号復調器316へこの切換信号が入力される。これにより、リレー3166によりスイッチ3165が切換えられる。
切換信号数を増やし、切換信号をクロック信号発生器に入力してクロック周波数を下げれば、2400bpsよりもさらに低速の1200bpsの信号を使用することもできる。すなわち、3段階切換ができる。
【0025】
図7の信号復調器316は次のように動作する。切換信号がH(高速通信)の場合、リレー3166によりスイッチ3165が上側に切り換わる。FM復調器315の出力は、アンプ3161で増幅された後、ローパスフィルタ3162で高周波成分がカットされる。ローパスフィルタ3162の出力は平均信号発生回路3164に入力され、平均値が算出されてコンパレータ3163に入力される。平均信号発生回路3164は、非常に時定数の長い、例えば0.1秒といった時間の信号の平均値(直流分を含む)を出力する。コンパレータ3163は、平均信号発生回路3164からの平均値信号とローパスフィルタ3162の出力信号とを比較する。ローパスフィルタ3162の出力が平均値信号よりも大きいときにコンパレータ3162からハイレベル信号が出力される。このシリアル信号は、送信側の変調信号とほぼ同一の電気信号となる。
【0026】
一方、切換信号がL(低速通信)の場合、リレー3166により切換スイッチ3165は下側に切り換わる。アンプ3161の出力はバンドパスフィルタ3167を通過して所定周波数帯域成分の信号となり、副搬送波復調器3168に入力する。副搬送波復調器3168は周波数1800Hzの信号を内部で発生しており、バンドパスフィルタ3167から出力されるMSK信号がハイレベル、ローレベルの信号1,0に変換される。副搬送波1800Hzの信号の位相が進みと遅れを判別する復調方式には各種の方法がある。細かい復調方法についての説明は省略する。
【0027】
図8は、受信機31から車体コントローラ22ヘの送信信号の構成を示す。この例では、無線回線の同期信号を取り去り、残りのSTXからCRCまでの信号を受信機31から車体コントローラ22へ送信している。信号の誤りを検出するCRC信号を無線回線に入れ、CRC信号によって、誤りでない場合に初めて動作するように動作の論理が組まれる。シリアルで送られてくる信号をチェックしてデータに誤りがあるかないかを判断し、正常なデータであれば受信信号に対応して比例電磁弁の電流やリレー回路を駆動する。
【0028】
このような送受信装置20,30を使用した遠隔装置について説明する。
−送信機20−
図9は、図4の送信機20における変調信号発生回路254の信号波形を説明する図である。 図9(a)は、高速通信選択時にシリアルI/F246から出力される1,0(ハイレベル、ローレベル)状態を示す。(b)は高速通信時の4800bpsの信号波形図である。このシリアル信号は、図4のリミッタ2541に入力されて振幅が制限されてローパスフィルタ2542に入力される。図9(c)は、4800bpsのシリアル信号がローパスフィルタ2542に入力されたときの出力信号波形である。高速通信が選択されているとき、スイッチ2544は上側に切換えられており、図9(c)に示す信号がFSK変調信号として変調信号発生回路254からVCO255へ出力される。
【0029】
図9(d)は、低速通信選択時にシリアルI/F246から出力される1,0(ハイレベル、ローレベル)状態を示す。図9(e)は低速通信時の2400bpsの信号波形図である。このシリアル信号は、図4の副搬送波発生器2543に入力される。副搬送波発生器2543には1800Hzのクロック信号が入力されている。図9(f)は副搬送波発生器2543から出力される2400bpsのMSK信号を示す。
【0030】
MSK信号は1800Hzの副搬送波の位相変調を行って得られる。シリアル信号が1の時、位相を45°遅らせる操作をする。結果的に1200Hzの周波数の半波成分とした信号が得られる。シリアル信号が0の時は、位相を45度進める信号が生成される。その結果、2400Hzの1半波形の形の信号が得られる。MSK信号の場合、シリアル信号と比較すれば明らかなように、信号が連続して1、あるいは0であっても、高周波を変調する信号は必ず交流の成分として出力される。
【0031】
この2400bpsの例では、周波数成分は1200bpsと2400bpsの成分しかない。すなわち、変調信号の周波数帯域は1200〜2400Hzの限られた成分が受信できれば信号が再生できる。2値のFSKでは、基本的に直流の成分から最大の変調信号までの成分が必要である。
【0032】
−受信機30−
図10は、受信機30の各部の信号波形図である。図10(a)〜(e)が高速通信(4800bps)の場合を、図10(f)〜(h)が低速通信(2400bps)の場合をそれぞれ示す。まず、通信速度切換スイッチ23により高速通信が選択されている場合について説明する。
【0033】
FM復調器315でFM検波されたFM検波信号は、アンプ3161で増幅されてローパスフィルタ3162に入力される。図10(a)の信号S1はローパスフィルタ3162の出力波形を示す。信号S1は平均信号発生回路3164に入力され、図10(a)の信号S2のような信号を出力する。信号S1とS2はコンパレータ3163で比較され、コンパレータ3163は、信号S1およびS2の大小に応じて図10(b)に示す方形波信号を出力する。高速通信が選択されているとき、スイッチ3165は上側に切換えられており、図10(b)に示す信号が復調シリアル信号として1チップマイコン318に出力される。
【0034】
図10(b)に示す方形波信号は、1チップマイコン318のシリアルI/F3181からCPU3182に送出される。CPU3182では、図10(c)に示すようなサンプリングのタイミングで、シリアルI/F3181からの信号をラッチする。図10(d)に示す方形波信号がCPU3182にラッチされたシリアル信号である。図10(e)はそのシリアル信号の状態を示す。
【0035】
ここで、受信されるシリアル信号の周期(送信速度)は受信機20のもつサンプリングのタイミング信号とは必ずしも一致しない。その理由は、クロック信号としてクリスタルを使ったとしても、発信周波数はわずかな誤差を持つために、発信側と受信側では同じ周波数、タイミングとはならないからである。
【0036】
このため、高速通信であるFSK信号を使った通信では、調歩同期での通信となる。すなわち、信号1バイトを送るには、少なくともスタート、ストップビットが必要であり、同期式の通信よりも信号の構成ビットは多くなることもある。
【0037】
図10(f)〜(h)を参照して、通信速度切換スイッチ23により低速通信(2400bps)が選択された場合について説明する。図10(f)は、低速通信時に送信機20から送られるMSK信号を復調したMSK信号を示す。すなわち、バンドパスフィルタ3167の出力波形である。MSK信号では、前述したように、FM復調した後の信号は必ず交流成分が得られる。そして、例えば2400bpsの例では、高い周波数が2400Hz、低い周波数は1200Hzの成分である。そこで、バンドパスフィルタ3167は周波数2400Hz〜周波数1200HzまでのMSK信号を通すように構成されている。
【0038】
一般的には、2400bpsのMSK信号では、FM復調後のフィルタの構成によって、信号対ノイズの比(S/N比)が、FSK信号と比較して約10dBの優位差がある。このため、通信速度が遅い場合には、電波のノイズが多い環境下でも、最終的なシリアル信号レベルでは信号の誤りが少ない、すなわち、遠方でも信号が届くことになる。
【0039】
CPU3182はラッチしたシリアル信号の誤り検出を行う。まず、受信バッファにラッチされた信号データからCRCの計算を行う。CRCを含む最後尾まで受信したら、受信信号のCRCと計算されたCRCとを比較して誤り検出を行う。最後尾まで受信した後、受信信号のCRCも含むデータでCRCを計算して誤り検出を行ってもよい。この場合、最後尾まで含まれた計算値が0かどうかがで判断する。すなわち、誤り検出された場合にはCRCは0でなく、0以外では誤り検出がされたことを意味する。誤り検出がされないとき、送信機20から送信されてくるシリアル信号に応じてコントローラ32に信号を送出し、コントローラ32が油圧ショベルを制御する。
【0040】
図11は、送信機20の変調信号発生回路254Aの他の実施の形態を示す。この例は、高速通信のときは前述した図4の場合と全く同様に変調信号が出力される。すなわち、高速通信選択時にシリアルI/F246から出力されるシリアル信号は、図11のリミッタ2541に入力されて振幅が制限される。高速通信が選択されているとき、スイッチ2544は上側に切換えられており、リミッタ2541の出力はローパスフィルタ2547に入力される。したがって、高速通信が選択されているとき、図9(c)に示す信号がFSK変調信号として変調信号発生回路254から出力される。
【0041】
低速通信が選択されているときは、図9(e)に示すようなシリアル信号がシリアルI/F246から出力される。このシリアル信号は、図11の副搬送波発生器2543に入力され、図9(f)に示すような2400bpsのMSK信号が生成される。図11の例では、副搬送波発生器2543からの交流MSK信号を方形波生成回路2546に入力し、図9(g)に示すようなシリアル信号を生成する。さらに、このシリアル信号をローパスフィルタ2547を通してFSK変調信号を生成する。
【0042】
このような方式を採用すると、見かけ上は低速および高速通信ともに2つのFSK信号として送信されることになる。この回路構成をとれば、操作部(ジョイスティックなど)と無線機(送信機20)を別体とした外部無線機の場合に有効である。すなわち、外部送信機として、2値のFSK送信機を用意しておき、高速通信の時は、シリアル信号をそのまま電気信号として入力し、低速通信の時はMSK信号を波形整形した信号を外部無線機に入力すれば、高速、低速の両信号を送出できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、高速通信では4800bps、低速通信は2400bpsの通信速度としたが、低速通信を1200bpsとして、更に遠方に同一の電波を使って信号伝送を行うことも可能である。さらに、本実施の形態では、高速、低速の2速度としたが、高速、中速、低速の3段階にすることもできる。例えば、高速はFSK、中速、低速をMSK信号とすることも可能である。
【0044】
日本の電波法のCH間隔12.5kHzでは占有周波数帯域は8.5kHzに制限される。この制限から、通信の最高速度は4800bpsのFSKが最高の通信速度である。通信速度と通信の伝送距離の関係は明確に決定できるものではないが、通信速度の遅い場合には、ローパスフィルタのカットオフ周波数は低くできる。ノイズがホワイトノイズと仮定すれば、信号速度が半分になれば、ノイズ成分のエネルギは半分となる。同様に、MSK信号のように周波数帯域が制限されれば、同様にノイズ成分をカットでき、同一のノイズが存在する環境であっても、信号の誤り(信号化け)を少なくすることができる。
【0045】
このように、本発明は通信距離が短い場合には高速の通信速度で行い、災害地などの遠距離の遠隔運転では通信速度を遅くして信号伝送を確実にすることができる。また、中速以下をMSK信号で実現すれば、さらに周囲のノイズ成分の除去が可能であり、より遠距離または高いノイズの環境であっても、遠隔操作が可能になる。高低速通信をFSK変調とMSK変調で実現したが、これ以外の2種類の変調方式を使用して同様な作用効果を得るようにしてもよい。
【0046】
以上では油圧ショベルを作業機械の一例として説明した。油圧ショベルのような建設機械の無線リモコンでは、操作信号の種類が多く、信号伝送時に1フレームの伝送遅延時間が発生することから、遅延時間を短くして操作感覚を向上させたい要求がある。一方、多少の操作感覚を犠牲にしても、確実に遠距離の現場まで信号を伝送したい要求もある。したがって、高速通信と低速通信の無線方式を切換えることにより、1台の特定小電力無線装置により遠近両方の操縦を行うことができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、油圧ショベルとその操作指示器とが離れている場合、たとえば、作業者が近寄り難い災害現場での復旧工事などでは、操作者と油圧ショベルが数100m〜数km離れた場所で遠隔操作されるが、その場合は送信機側の手動操作により第1の通信方式を選択し、油圧ショベルとその操作指示器とが近い場合、たとえば、深穴掘削や側溝掘りなど操作者と油圧ショベルが数m〜数10m離れた場所で遠隔操作される場合は送信機側の手動操作により第2の通信方式を選択すればよい。その結果、操作者が操作指示器を操作するだけで、操作感覚を重視する近距離運転と、より遠距離の確実な運転を要求する両極端の現場に1台の特定小電力無線装置で対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 遠隔操縦される油圧ショベルを示す図
【図2】 無線リモコン式油圧ショベルシステムの構成を示すブロック図
【図3】 無線リモコン装置の送信機の一例を示すブロック図
【図4】 送信機の変調信号発生回路の詳細例を示すブロック図
【図5】 無線区間の伝送信号データ構成図
【図6】 受信機の一例を示すブロック図
【図7】 受信機の信号復調器の詳細例を示すブロック図
【図8】 有線区間の伝送信号データ構成図
【図9】 送信機の各部信号波形図
【図10】 受信機の各部信号波形図
【図11】 送信機の変調信号発生回路の他の詳細例を示すブロック図
【符号の説明】
10:油圧ショベル 20:無線リモコン装置(送信機)
21:ジョイスティック 23:通信速度切換スイッチ
24:送信回路 31:受信機
254:変調信号発生回路 316:信号復調器

Claims (3)

  1. 特定小電力無線方式により1つの通信チャンネルを用いて、通信速度を切換える油圧ショベルの遠隔操作システムであって、
    (A)油圧操作レバー装置、油圧操作レバー装置の操作信号により駆動されて油圧を制御するメインバルブ、および前記メインバルブで制御された油圧で駆動される油圧アクチュエータを備える油圧ショベルと、
    (B)操作者による操作指令を指示する操作指示器、少なくとも第1および第2の通信速度(>第1の通信速度)のいずれかを操作者が手動操作で切換える通信速度切換スイッチ、および前記操作指令に基づいて、前記第1の通信速度に手動操作で切換えられているときは前記第1の通信速度の指令信号を特定小電力無線方式に基づいて単一チャンネル上に送信し、前記第2の通信速度に手動操作で切換えられているときは前記第2の通信速度の指令信号を前記特定小電力無線方式に基づいて単一チャンネル上に送信する送信回路を備え、前記油圧ショベルから数100m〜数Km離れた作業現場もしくは、数m〜数10m離れた作業現場に配置される送信機とを備え
    (C)前記油圧ショベルに搭載する機器として、
    (C−1)前記通信速度切換スイッチにより手動操作で切換えられた通信速度に応じて前記送信機から送信される少なくとも前記第1の通信速度および第2の通信速度による複数の指令信号をそれぞれ復調して複数の復調信号を生成し、前記通信速度切換スイッチにより手動操作で切換えられた通信速度の指令信号により切り換わるスイッチにより前記複数の復調信号のいずれか一つを切換えて出力する復調器、および前記復調器から出力される復調信号による指令信号に基づいてアクチュエータ駆動信号を生成する駆動信号生成回路を備え受信機と、
    (C−2)前記受信機から供給された前記アクチュエータ駆動信号を入力して前記メインバルブを駆動するための比例電磁弁駆動信号を生成するコントローラと、
    (C−3)前記比例電磁弁駆動信号に応答して作動する比例電磁弁と
    (C−4)前記比例電磁弁から出力される油圧信号、および前記油圧操作レバー装置の操作に基づいた前記油圧信号のいずれか一方を選択して前記メインバルブに供給することにより、有人操作と無線遠隔操作とを切換える切換弁とを有する、
    ことを特徴とする油圧ショベルの遠隔操作システム。
  2. 請求項に記載の油圧ショベルの遠隔操作システムにおいて、
    前記送信回路から放射される電波は429MHz帯域の搬送波で放射され、
    前記第1の通信速度の指令信号は、通信速度2400bpsのMSK変調によって生成され、
    前記第2の通信速度の指令信号は、通信速度4800bpsのFSK変調によって生成されることを特徴とする油圧ショベルの遠隔操作システム。
  3. 請求項1または2に記載の油圧ショベルの遠隔操作システムにおいて、
    前記送信機は無線リモコン装置であり、
    前記無線リモコン装置には、前記油圧アクチュエータを操作する複数のジョイスティックで構成された前記操作指示器と、前記通信速度切換スイッチとが設けられることを特徴とする油圧ショベルの遠隔操作システム。
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