JP4066896B2 - 炭素繊維強化炭素複合材及びそれを用いた摺動材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、強度及び摩擦、摺動特性に優れ、特に高速度・高エネルギー車の摺動材に適した炭素繊維強化炭素複合材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に炭素繊維強化炭素複合材(以下、「C/C複合材」という。)はPAN系、ピッチ系、或いはレーヨン系などの長短炭素繊維にフェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂、或いはピッチ類などの熱可塑性樹脂等を含浸、又は混合して加熱成形したものを非酸化性雰囲気において焼成し、さらに緻密化、黒鉛化処理することにより製造されている。
【0003】
C/C複合材は摩擦特性、機械特性、耐熱性に優れ、かつ軽量であることから航空機や車両用のブレーキとして用いられている。C/C複合材に用いる炭素繊維の強化法としては、2次元織物、所謂織布を用いたり、本発明の如く短繊維を用いる方法があるが、均一な摩擦面が容易に得られること、安価であること等から、一般に短繊維強化型のC/C複合材が摩擦材として用いられてきた。しかしながら、近年の航空機や車両の大型化、高速化に伴って、より高熱容量、高熱伝導率、高強度がC/C複合材に要求されるようになってきた。特に航空機や高速車両用のC/C複合材は、大径(外径〜500mmφ)かつ高回転(〜8000rpm)、さらに高熱容量、高熱伝導率が要求されている。
【0004】
例えば、外径500mmφ、内径120mmφ、嵩密度1.8kg/cm3で回転数8000rpmの条件下に使用する時に必要とされる引張強度は、円周方向の応力(σt)MAXとして次式で求めることができる。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、γ:嵩密度(1.8×10-3kg/cm3)
r2 :外半径(25cm)
r1 :内半径(6cm)
ω:角速度(8000/60)×2π=838rad/s
ν:ポアソン比(0.2)
∴ (σt)MAX=654kg/cm2=6.5kg/mm2
(σt)MAX=806kg/cm2=8.1kg/mm2(r1=r2時のMAX値)
【0007】
従って、少なくとも8.5kg/mm2以上、好ましくは9kg/mm2以上、更に好ましくは10kg/mm2以上の引張強度が必要となる。しかし、従来の短繊維強化型C/C複合材では強度不足のため、織布を用いたり摩擦特性を維持するために、中央部は織布を用い、表面のみ短繊維強化型としたC/C複合材等が大型車両用のブレーキ材として提案されている。しかしながら、織布を用いたC/C複合材は高価である上に、摩擦特性に劣り、ブレーキ材としての要求特性を満足したものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、短繊維強化型C/C複合材に着目して、上記のような問題がなく、高速車両摺動材として有用なC/Cを提供すべく鋭意検討した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる課題を解決するため、短繊維を用いたC/C複合材について鋭意検討し、特に、炭素繊維としてピッチ系炭素繊維を使用し、緻密化のためにピッチで含浸することにより、更に緻密化の前に2200℃以上で黒鉛化し、緻密化焼成温度を2100℃以下にすることによって、高強度、高熱容量、高熱伝導率、かつ摩擦特性に優れるC/C複合材を製造することができることを見い出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明の要旨は、短繊維強化型C/C複合材であって、引張強度8.5kg/mm2以上、嵩密度1.8g/cm3以上、熱伝導率100W/m・K以上、且つ気孔率10%以下の特性を有するC/C複合材及びそれを用いた摺動材に存する。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明で用いる炭素繊維としてはPAN系、レーヨン系等の公知のものが使用できるが、高熱容量かつ高熱伝導であるピッチ系炭素繊維を使用するのが好ましい。更に必要に応じてSiC、Al2O3、カーボンブラックなどの無機繊維、無機物などを添加してもよい。
【0011】
用いられる炭素繊維の形態としては、複数の単繊維からなるトウ、ストランド、ロービング、ヤーンなどの形態であり、これらをカッティングすることにより得られる短繊維を用いるのが好ましい。そして、これらの短繊維は複数の単繊維の束、1000〜8000本、好ましくは2000〜6000本から形成されており、本発明においては、通常0.3〜100mm、好ましくは5〜50mm程度の短繊維束を使用する。炭素繊維自体の径や弾性率は、一般に複合材として用いられる範囲で特に限定はない。C/C複合材とする際には、該短繊維束を解繊、分散し、二次元ランダムのシートを作製し、マトリックス物質をその間に充填させることが特性向上のために重要である。
【0012】
このため、本発明においては、上記短繊維束を乾式又は湿式解繊し、二次元ランダムのシートを作製する。ここで乾式解繊し、二次元ランダムに配向したシートの製造方法としては、例えば紡績において一般的な機械的に炭素繊維をモノフィラメント化し、シートを作製するランダムウェバーを使用して製造したり、またはエアーにより解繊し、シートを製造する方法等がある。
【0013】
また湿式解繊し、二次元ランダムに配向したシートを製造する方法としては、例えばパルプ等の叩解処理に通常使用されているビーターや解繊処理に用いられるパルパーを使用し、溶媒中で短繊維状炭素繊維を解繊後、例えば底部にスクリーンを有する型枠等に少量ずつ供給したり、解繊後攪拌等の手段で均一に分散させ、金網等で抄紙後、乾燥させて作製する方法がある。短繊維状の炭素繊維を均一に分散させる溶媒としては、好ましくは水、或いはアセトン、炭素1〜5のアルコール、アントラセン油等を用いるが、その他の有機溶剤を用いてもよい。又該溶媒中にフェノール樹脂、フラン樹脂或いはピッチ等を分散もしくは溶解させておくと、炭素繊維同士が接着された状態となり、次工程での取り扱いをより容易とするので好ましい。更に、繊維素グリコール酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース等の増粘剤を溶媒中に加えておくと、その効果が更に増大となるので好ましい。
【0014】
シートの目付(1m2当りの重量)としては、種々のものが取り得るが、取り扱い性、含浸性、均一性を考えると、10〜500g/m2が最適である。この様にして得られた二次元ランダムに配向したシートに、フェノール樹脂、フラン樹脂、或いは石油系、石炭系ピッチ等のマトリックスを含浸させた後乾燥する。その際、マトリックスはアルコール、アセトン、アントラセン油等の溶媒に溶解して適正な粘度に調整したものを使用する。
【0015】
次いで、この乾燥したシートを積層して金型へ充填し、100〜500℃の温度で加圧成形してVf(繊維体積含有量)=5〜65%、好ましくは10〜55%程度の成形体を得る。その後、N2ガス等の不活性ガス雰囲気中で1〜200℃/hの昇温速度で2200℃、好ましくは2400℃以上2800℃以下の温度まで焼成し、熱伝導率100W/m・K以上、好ましくは110W/m・K以上とし、更に引張強度を8.5kg/mm2以上、好ましくは9kg/mm2以上、更に好ましくは10kg/mm2以上とする。
【0016】
更に上記焼成したC/C複合材を緻密化する。その方法としては、CVD及び/又は樹脂等を用いる方法が挙げられるが、高熱容量且つ高熱伝導性が得られるピッチを含浸することが好ましい。その後更に、2100℃以下で焼成する緻密化処理を複数回繰り返し気孔率10%以下とすることにより、嵩密度1.8g/cm3以上、好ましくは1.9g/cm3以上となり、高熱容量かつ摩擦特性及び耐酸化性に優れたC/C複合材となる。このとき使用するピッチとしては、種々のピッチを用いることができるが、好ましくは、軟化点70〜150℃、さらに好ましくは80〜90℃、トルエン不溶分10〜30%、さらに好ましくは13〜20%、実質上キノリン不溶分は含まず、固定炭素40%以上、さらに好ましくは50%以上のものを用いる。緻密化処理工程以降での最高温度は摩擦特性を向上させるため、2100℃以下であることが必要であるが、耐酸化性向上のためには1600℃以上であることが好ましく、かかる緻密化処理工程以降での最高温度は、最終熱処理時の温度であることが必要である。尚、最終熱処理は、緻密化工程であってもよいし、あるいは緻密化工程後に別に設けてもよい。
【0017】
このようにして得られた短繊維強化型C/C複合材は、引張強度8.5kg/mm2以上、嵩密度1.8g/cm3以上、熱伝導率100W/m・K以上、気孔率10%以下となり、航空機や高速車両用ブレーキとしての要求特性を十分に兼ね備えたものとなる。尚、物性値の測定に当たっては、気孔率については水銀ポロシメーターを使用し、熱伝導率の測定は、レーザーフラッシュ法を用い、引張強度の測定は、JIS K−6911に準拠して測定した。
【0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、下記実施例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
フィラメント数4000のピッチ系炭素繊維を30mm長に切断したものをランダムウェバーにて解繊し、二次元ランダムに配向した目付200g/m2のシートを得た。このシートへエタノールで希釈したフェノール樹脂を含浸させた後乾燥し、200g/m2の炭素繊維に対し130g/m2のフェノール樹脂を含浸したシートを作製した。このシートを金型内へ積層し、250℃にて加圧成形し、Vf≒50%の成形体を得た。この成形体を2400℃迄焼成した後、ピッチを含浸し1000℃迄焼成した。さらに同様の含浸−焼成の操作を複数回繰り返し、その後最終処理として、2000℃の熱処理を行って、気孔率8%のC/C複合材を得た。このC/C複合材の特性を表1に示す。
【0020】
比較例1
実施例1と同様な方法で成形し、2000℃で焼成した後に、実施例1と同様の緻密化処理を行い、気孔率8%のC/C複合材を得た。このC/C複合材の特性を表1に示す。
比較例2
フィラメント数4000のピッチ系炭素繊維100重量部にフェノール樹脂65重量部含浸し、乾燥したのち30mm長に切断した所謂トウプレプリグを作製した。このものを金型内へ充填し、250℃にて加圧成形し、Vf≒50%の成形体を得た。この成形体を実施例1と同様な方法にて緻密化処理を行い、気孔率8%のC/C複合材を得た。このC/C複合材の特性を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
本発明により、航空機や高速車両用の摩擦特性、機械特性、熱特性、耐酸化性に優れた短繊維強化型C/C複合材ブレーキを容易に得ることができる。
Claims (3)
- 内部に強化材として二次元ランダムに配向しているピッチ系炭素短繊維を含有しており、引張強度8.5kg/mm2以上、嵩密度1.8g/cm3以上、熱伝導率100w/m・k以上、且つ気孔率10%以下の特性を有する炭素繊維強化炭素複合材。
- 内部に強化材として二次元ランダムに配向しているピッチ系炭素短繊維を含有しており、引張強度9kg/mm 2 以上、嵩密度1.9g/cm 3 以上、熱伝導率110w/m・k以上、且つ気孔率10%以下の特性を有する炭素繊維強化炭素複合材。
- 請求項1又は2に記載の炭素繊維強化炭素複合材からなることを特徴とする摺動材。
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