JP4066799B2 - 壁および壁の構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートブロックを用いた壁および壁の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存建物に耐震用補強壁を増設する在来工法としては、既存建物の柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して壁を増設するものが知られている。具体的には、構築すべき壁の両面を夫々構成するコンクリートブロックを、それらの間に空間が形成されるように互いに対向して組積し、しかる後に前記空間にグラウト材を打設して壁を増設する方法である(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0003】
しかしながら、このグラウト材の打設時においては、対向するコンクリートブロック同士の空間を広げる方向にグラウト材の圧力(以下、側圧と言う)が作用する。そして、この側圧が大きい場合には、組積したコンクリートブロックが、前記空間の広がる方向に動かされてしまう虞がある。ここで、この側圧は、いわばグラウト自重に基づく液圧であり、もって一度に打設されるグラウト材の量が多い程この側圧は大きくなり、組積されたコンクリートブロックは動き易くなる。
【0004】
このため、作業現場では、一度に打設可能なグラウト材の量を制限している。すなわち、壁高が高くてグラウト材の打設総量が多くなる場合には、グラウト材の打設を一度に行わずに複数回に分けて行うようにしている。例えば、12段のコンクリートブロックからなる壁を構築する場合には、先ず3段までグラウト材を打設し、このグラウト材の硬化を待ってから更にその上の3段までのグラウト材の打設を行い、この手順を最上段まで繰り返している。
【0005】
【非特許文献1】
栗田 康平、外4名,「小型プレキャストブロックを用いた増設耐震壁工法の開発(その2)」,2002年 社団法人日本建築学会学術講演梗概集,C−2分冊,p.687
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この打設量を制限する方法では、前記複数回に亘ってグラウト材の硬化を待たねばならず、その分だけ施工時間が延長し工期の長期化を招いていた。
本発明はかかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、施工時間の短縮化が図れる壁およびその壁の構築方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、コンクリートブロックを用いた壁の構築方法であって、構築すべき壁の両面を夫々構成するコンクリートブロックを、それらの間に空間が形成されるように互いに対向して組積して、この組積したコンクリートブロック同士を接着し、その際、当該空間が壁厚方向に広がるのを規制する規制部材の両端部を、上下のコンクリートブロックの間に挟み込んで接着することにより、当該空間を形成する二つのコンクリートブロック間に跨るように設け、しかる後に、前記空間にグラウト材を打設することを特徴とする。
【0008】
上記発明によれば、グラウト材の打設前に、その打設用の空間を形成する二つのコンクリートブロック間に跨るように前記規制部材を貼り付けている。よって、前記空間にグラウト材が打設された際に、そのグラウト材の液圧に起因して、当該空間を広げる方向にコンクリートブロックに作用する側圧を、前記規制部材が有効に受けて対抗し、もってコンクリートブロックが動くことは防止される。従って、壁高が高くグラウト材の打設量が多くなる場合であっても、複数回に分けずに一度に打設することができて、もって施工時間の短縮化が図れる。
また、この規制部材のコンクリートブロックへの取り付け作業は、上下のコンクリートブロック間に挟み込んで接着するだけであって簡単に行うことができるため、短時間で実施可能である。
【0009】
請求項2に示す発明は、既存壁を増厚するためのコンクリートブロックを用いたの構築方法であって、前記既存壁の前記コンクリートブロックを組積する側の表面に、当該コンクリートブロック側へ突出する板状部を備える部材を固定すると共に、前記既存壁との間に空間が形成されるように当該既存壁に対向させてコンクリートブロックを組積して、この組積したブロック同士を接着し、その際、当該空間が壁厚方向に広がるのを規制する規制部材の一端部を前記部材の板状部に接着し、他端部を組積される上下のコンクリートの間に挟み込んで接着することにより、当該既成部材を当該空間を形成する既存壁とコンクリートブロックとの間に跨るように設け、しかる後に、前記空間にグラウト材を打設してコンクリートブロックを既存壁に一体化することを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、グラウト材の打設前に、その打設用の空間を形成する既存壁とコンクリートブロックとの間に跨るように前記規制部材を貼り付けている。よって前記空間にグラウト材が打設された際に、そのグラウト材の液圧に起因して、当該空間を広げる方向にコンクリートブロックに作用する側圧を、前記規制部材が有効に受けて対抗し、もってコンクリートブロックが動くことは防止される。従って、壁高が高くグラウト材の打設量が多くなる場合であっても、複数回に分けずに一度に打設することができて、もって施工時間の短縮化が図れる。
また、この規制部材の既存壁およびコンクリートブロックへの取り付け作業は、規制部材の一端部を前記部材の板状部に接着し、他端部を組積される上下のコンクリートの間に挟み込んで接着するだけであって簡単に行うことができるため、短時間で実施可能である。
【0011】
請求項3に示す発明は、請求項1または2のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材はシート状部材であることを特徴とする。
上記発明によれば、前記規制部材はシート状部材であるため、狭所でも貼り付けることができて、もって貼り付け位置の選択自由度に長ける。
【0012】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材は、所定段のコンクリートブロックに選択的に設けられることを特徴とする。
上記発明によれば、前記規制部材は、全ての段のコンクリートブロックに対しては設けられない。従って、規制部材の貼り付け作業時間を短くできて、もって工期の短縮化が図れる。
【0013】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記コンクリートブロックは、壁面をなす平坦な板状体と、該板状体の背面から突出した突部とを有し、前記コンクリートブロックはその突部を、構築すべき壁の内側に向けて配されることを特徴とする。
上記発明によれば、前記コンクリートブロックの突部を、構築すべき壁の内側に向けているので、前記グラウト材が打設される空間は、突部が突出した空間となっている。従って、空間内に打設したグラウト材とコンクリートブロックとの付着面積を増やして両者を確実に付着させることができて、もって壁の強度や剛性を高めることができる。
【0014】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材は、繊維強化プラスチックからなることを特徴とする。
上記発明によれば、前記規制部材は、繊維強化プラスチックからなるため、グラウト材の打設時に作用する側圧に十分対抗可能な剛性および強度を有する。よって、前記打設時におけるコンクリートブロックの移動を確実に防止可能となる。
【0015】
請求項7に示す発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法によって構築されたことを特徴とする壁。
上記発明によれば、請求項1乃至6の発明と同様の作用を奏することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
===第1実施形態===
本発明は、コンクリートブロックを組積して構築する壁およびその構築方法であり、第1実施形態では、既存建物に耐震用補強壁を増設する場合を例に説明する。
図1は、増設された耐震用補強壁を示す図であって、図1(a)は、その一部のブロックを破断して示す正面図、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の断面図である。また、図2は、図1(a)中のII部を拡大して示す図である。但し、図が見難くなるのを避けるため、図1(b)および図2では、グラウト材の部分の断面線は示しておらず、更に図1(b)にあっては壁筋も示していない。また、以下の説明では、耐震用補強壁の壁厚方向を前後方向とも言うとともに、壁幅方向を左右の横方向と、また高さ方向を上下方向とも言う。
【0017】
図1に示すように、この耐震用補強壁は、既存建物が備える左右一対の柱2,2および上下一対の梁4,4からなる柱梁架構の内方に、多数のコンクリートブロック10を組積等して構築される壁体30である。柱2および梁4は共に鉄筋コンクリート造(RC造)であり、その各両端部が柱梁仕口構造によって一体的に連結されている。尚、この柱2および梁4は、表層部がコンクリートであればRC造に限るものではなく、例えば鉄骨コンクリート造(SRC造)であっても良い。
【0018】
壁体30は、小型のプレキャストコンクリートブロック10(以下、ブロックと言う)を高さ方向および壁幅方向に組積してなるブロック壁32,42を主体として構成される。このブロック壁32,42は、図1(b)に示すように、壁厚方向の前後に、互いに対向して設けられている。そして、これら一対のブロック壁32,42の間には空間19が形成されており、この空間19には、図2に示すように、壁筋としての縦筋6や横筋8が配筋されるとともにグラウト材19aが密実に充填され、これによってブロック壁32,42は壁体30として一体化されている。尚、このブロック10の形状やその組積の仕方については、後述する構築手順にて説明する。
【0019】
この壁体30の柱梁架構への定着は、図1に示す柱梁架構の内周面2a,4aに接着された溝形鋼等の定着鋼材52,52,54,56によってなされる。詳細には、左右の柱2および上下の梁4のそれぞれに対して、その内法とほぼ同じ長さの定着鋼材52,52,54,56を、その長手方向を揃えつつエポキシ系樹脂接着剤にて接着している。柱梁架構における各定着鋼材52,52,54,56の接着位置は、壁厚方向には互いに揃えられており、もって、これら定着鋼材52,52,54,56は前記壁体30の四周の端面をそれぞれ臨むように配されている。これら定着鋼材52,52,54,56からは、内向きの定着筋58が前記壁筋6,8の配筋ピッチで突出しており、この定着筋58が、前記グラウト材19aの打設前に前記壁筋6,8に溶接等にて結合されることによって壁体30を柱梁架構に一体化して定着するようになっている。ちなみに、この定着筋58の定着鋼材52,52,54,56への固定は、図2に示すように、各定着鋼材52,52,54,56に溶着されたナット51の雌ネジに、雄ネジ加工された定着筋58の一端をねじ込むことでなされる。
【0020】
尚、各定着鋼材52,52,54,56のうちで、特に下梁4に設けられる定着鋼材56に関しては、前述の溝形鋼の代わりに平鋼を使用するのが望ましい。これは、下梁4にあっては、その定着鋼材56上にブロックを組積することから、溝形鋼のようにリブがあるとブロックを載置し難いためである。この平鋼56は、溝形鋼と比較してリブが無い分だけ低剛性となり接着強度が低くなってしまうが、これについては鋼材厚みを厚くして対処可能である。
【0021】
また、前記定着鋼材52,52,54,56の壁厚方向の寸法たる鋼材幅は、少なくとも前記壁体30の厚み程度は確保するのが好ましい。これは、前記定着が、定着鋼材52,52,54,56と柱梁架構との接着にも依存しているためである。
【0022】
ここで、この耐震用補強壁30の構築手順を説明する。図3〜図6は、構築手順を説明するための説明図であって、各図とも(a)に正面図を示し、(b)には、(a)図中のB−B線矢視の断面図を示している。但し、図4〜図6における(b)図では壁筋および定着筋は示していない。
【0023】
−−−(1)定着鋼材の柱梁架構への取り付け−−−
先ず、図3に示すように、柱梁架構を構成する左右の柱2および上下の梁4のそれぞれに対して、前記定着鋼材52,52,54,56をエポキシ系樹脂接着剤によって接着する。尚、下梁4については平鋼56を、それ以外の柱梁2,2,4には夫々溝形鋼52,52,54を接着する。そして、各定着鋼材52,52,54,56の前記ナット51に定着筋58をねじ込んで、これら定着筋58を、柱梁架構に対して内向きに固定する。そして、壁筋6,8のうちの縦筋6(図中破線で示す)のみを配筋する。これら縦筋6は、後述する壁体30内に形成される中央空間18または連通空間20に収納可能な位置に配されつつ上下に通されて、その上下端部を、上下梁4,4の定着筋58,58に溶接される。尚、この縦筋6の配筋タイミングは、これに限るものではなく、例えば後述するブロック10の組積作業と並行して行っても良い。但し、本実施形態にあっては、縦筋6が、前記一対のブロック壁32,42の間に配されることから、縦筋6をブロック10の組積前に配筋しても組積作業性を何等悪化しないために、この組積前のタイミングで行うようにしている。
【0024】
−−−(2)一対のブロック壁の形成−−−
次に、これら定着鋼材52,52,54,56の内方にブロック10を組積して、最終的には、図6に示すように壁厚方向の前後に一対のブロック壁32,42を形成する。尚、以下では、これら一対のブロック壁32,42のうちの前方に位置するブロック壁32を前側のブロック壁、後方に位置するブロック壁42を後側のブロック壁と言う。
【0025】
図7〜図9に、このブロック壁に供されるブロックを示す。尚、図7は下面図、図8は背面図、図9は側面図である。また、図10には、組積途中のブロック壁の斜視図を示す。
【0026】
このブロック10は、ブロック本体12と、このブロック本体12の背面に突設させた一対の突部14とから構成される。ブロック本体12は、平坦面12aを備えた略矩形の板状体であり、図10に示すようにブロック10を組積してブロック壁を構築した際には、前記平坦面12aが鉛直な壁面を形成する。また、図9に示すように、突部14は、その上面14cおよび下面14dがブロック本体12と面一に形成されており、もって前記組積時にはブロック10の自重を突部14でも支持する。
【0027】
図7に示すように、この突部14は、左右方向に間隔を隔てて一対が設けられ、それらの間に中央空間18が形成されている。また、この突部14はブロック本体12の左右の端部12bより内側に配設されており、図10に示すようにブロック10を横方向に連ねて並べたときには、隣接するブロック10同士の一方の突部14との間に共有空間20が形成される。これら中央空間18および共有空間20は、図6に示すブロック壁32,42の形成状態において、それぞれに上下に連通しており、もってこれらそれぞれの空間18,20に、前述の縦筋6を収納するようになっている。尚、共有空間20および中央空間18の幅は突部14の幅より十分に広く形成されている。
【0028】
このようなブロック10を用いての、前側および後側のブロック壁32,42の形成は、以下のようにしてなされる。
先ず、図4に示すように、前側のブロック壁32の最下段(1段目)のブロック列32aを配列する。すなわち、図11(図4(b)中のXI部の拡大図)に示すように、下梁4の定着鋼材である平鋼56の前縁56aにブロック本体12の平坦面12aを揃えながら、左右の横方向にブロック10を、左の柱2から右の柱2までに亘って順次並べていく。この時、左右に隣接するブロック10の端部12b同士は接着されるとともに、ブロック10の下面は前記平鋼56の上面に接着される。これらの接着はエポキシ系樹脂接着剤にてなされる。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、前側のブロック列32aと対向させて、後側のブロック壁42の1段目のブロック列42aを形成する。すなわち、図11に示すように、前記平鋼56の後縁56bにブロック本体12の平坦面12aを揃えながら、左右の横方向にブロック10を順次並べていく。尚、この時、この後側のブロック10の突部14は、前記前側のブロック10の突部14に対向するように配される。左右に隣接するブロック10の端部12b同士の接着や、ブロック10下面の平鋼56上への接着は、前述の前側のブロック列32aの場合と同様に行う。
【0030】
次に、図11および図12に示すように、互いに対向する前側のブロック10と後側のブロック10とに跨るようにして規制部材としての帯状シート60を貼り付けて、前側と後側のブロック10同士が壁厚方向に離れないように規制する。詳細には、この帯状シート60の長手方向を壁厚方向に揃えつつ、その帯状シート60の長手方向の一端部を、前側のブロック本体12上面から突部14上面にかけて貼り付けるとともに、他端部を、後側のブロック本体12上面から突部14上面にかけて貼り付ける。このように貼り付けることによってこの帯状シート60に、後記グラウト打設時の側圧に有効に対抗させることが可能となり、もって壁厚方向のブロック10の移動を確実に規制することができる。すなわち、図6のように組積形成された前側および後側のブロック壁32,42の間の空間19にグラウト材を打設すると、各ブロック10には、前記空間19を壁厚方向に広げる方向に圧力(側圧)が作用し、前記接着剤の接着強度によってはブロック10が動いてしまう虞がある。しかしながら、前述のように帯状シート60の長手方向を壁厚方向に揃えて貼っておけば、帯状シート60が捻れること等なく、前記側圧には、前記帯状シート60の引張剛性が有効に対抗し、もってブロック10の移動を確実に防ぐことができる。
【0031】
この帯状シート60の素材としては、前記側圧に対抗し得る剛性および強度を有していれば適用可能であるが、特にCFRP(carbon fiber reinforced plastics)等の繊維強化プラスチックや鋼等が好適である。尚、シート厚みは、極力薄い方が好ましい。これは、この帯状シート60をブロック10上面に貼り付けた上に次段のブロック10を積み上げるためである。すなわち、ブロック10上面における帯状シート60の貼り付け段差が大きくなると、多段積み上げ時におけるブロック10の組積安定性が悪くなるからである。一般には0.5〜1.5mmの厚みであれば許容される。また、シート長さおよび幅は、構築される壁体30の壁厚や接着面積等を考慮して適宜設定される。
【0032】
尚、この帯状シート60の貼り付けについては、必ずしも横方向の全てのブロック10に対して行う必要はなく、ブロック10間の接着強度が前記側圧に負けてしまう虞のあるブロック10に対してのみ選択的に設けるようにしても良い。そして、このようにすれば、帯状シート60の貼り付け作業に要する時間を短くできる。また、帯状シート60の貼り付け位置は、前述のブロック本体12の上面および突部14の上面に限らず、ブロック本体12の左右の側面、または突部14の左右の側面等でも良い。
【0033】
このようにして、1段目のブロック列32a,42aを配列し終えたら、この上に2段目のブロック列32a,42aを積み上げるが、その前に、図4(a)および図11に示すように、2段目のブロック列32a,42a用の横筋8(図4(a)では破線で示す)を配筋する。図13に図11中のXIII−XIII矢視の断面図を示すが、この横筋8は、2段目のブロック10の突部14下面の凹部16に通されるようになっており、これによって、図11に示すように、横筋8を左右に掛け渡して配置し、その左右端部を左右の柱2の定着筋58に溶接できるようになっている。尚、図13中では、仮想的に配置した2段目のブロック列32a,42aを二点鎖線で示している。
【0034】
この配筋後に、図5に示すように2段目のブロック列32a,42aを積み上げるが、その際には、前述と同様に左右に隣接するブロック10の端部12b同士を接着するとともに、各ブロック10の下面をその下段である1段目のブロック10の上面に接着する。また、図14(図5(b)中のXIV部の拡大図)に示すように、帯状シート60の貼り付けおよび3段目のブロック列用の横筋8の配筋を1段目の時と同様に行う。尚、図14中では、1段目のブロック列32a,42aを一点鎖線で示している。
【0035】
但し、この帯状シート60の貼り付けについては、全ての段に対して行う必要はなく、ブロック間の接着強度が前記側圧に負けてしまう虞のある段に対してのみ選択的に設けるようにしても良い。例えば、場合によっては、この2段目のブロック列32a,42aに対して省略しても良い。そして、このようにすれば、帯状シート60の貼り付け作業に要する時間を更に短くすることができる。
【0036】
また、この積み上げに際しては、壁体30の強度上の観点から、左右のブロック10間の接着部である縦方向の目地が、上下段のブロック列32a(42a)同士で揃わないようにしている。すなわち、図14に示すように、1段目のブロック列32a,42aから、突部14の幅の約半分だけ横方向にずらして2段目のブロック列32a,42aを載置し、以降、奇数段の目地は前記1段目32a,42aに合わせるとともに、偶数段の目地は、前記2段目32a,42aに合わせるようにして、3段目以降のブロック列を順次積み上げている。そして、この積み上げを繰り返してブロック列32a,42aが前記上梁4の定着鋼材54の近傍に達したら、この前方側および後方側のブロック壁32,42の形成は終了となる。
【0037】
−−−(3)グラウト材の打設−−−
最後に、図6に示す前側と後側のブロック壁32,42の間の空間19に、無収縮モルタル等のグラウト材を打設する。このグラウト材の打設は、最上段のブロック列32a,42aと上梁4の定着鋼材54との間に形成された隙間Sを利用してなされる。すなわち、このブロック10は所定の標準寸法に形成された規格品であるため、このブロック10の組積高さが、既存建物の柱梁架構の開口高さと合致するケースはまれであり、殆どの場合には、最上段のブロック列32a,42aと上梁4の定着鋼材54との間には隙間Sが存在する。よって、この隙間Sから前記空間19にグラウト材を充填していき、前側と後側とのブロック壁32,42を一体化して壁体30を構築する。
【0038】
尚、前記隙間Sの部分は、型枠施工によって埋める。すなわち、前記グラウト材の打設前に、そのグラウト材の投入口の部分を残しつつ、前記隙間S近傍の定着鋼材54と最上段のブロック列32a,42aとに堰板を立て掛けて前記隙間Sを閉塞する。そして、前記ブロック壁32,42の間の空間19へのグラウト材の打設と同時に、前記隙間Sの部分もグラウト材にて埋めるようにしている。
【0039】
ちなみに、前述したように、このグラウト材の打設時には、前記ブロック10には、前記空間19を壁厚方向に開く側圧が作用するが、この側圧を前記帯状シート60が有効に受けて対抗し、もってブロック10の移動を防止可能となっている。従って、全てのグラウト材を一度に打設することができて、もって施工時間の短縮化を図ることができる。
【0040】
===第2実施形態===
図15は、第2実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図15(a)は、その一部のブロックを破断して示す正面図、図15(b)は、図15(a)中のB−B線矢視の断面図である。尚、図15(b)では、グラウト材の部分の断面線および壁筋は示していない。また、図中、前記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して示し、その同じ構成部分の説明は省略する。
【0041】
前述の第1実施形態は、柱梁架構に耐震用補強壁30を増設して補強するものであったが、本第2実施形態は、予め柱梁架構が備える既存壁5を増厚して補強するものである。すなわち、本第2実施形態では、柱梁架構の内方に、前記第1実施形態に係る後側のブロック壁42の代わりに既存壁5が予め存在している。そして、この既存壁5に対向させつつ一つのブロック壁32を組積形成するとともに、このブロック壁32と既存壁5との間の空間19にグラウト材19aを打設することによって既存壁5と一体化した壁体31を構築するようになっている。
【0042】
尚、このグラウト材19aの打設時においては、第1実施形態と同様に、前記ブロック壁32の各ブロック10には壁厚方向に側圧が作用するが、この側圧に対抗すべく前記帯状シート60が貼り付けられており、ブロック10の移動を防ぐようになっている。但し、その貼り付け方法が第1実施形態と相違しており、以下ではその相違点を重点的に説明する。
【0043】
図16および図17に、1段目のブロック列を配列した状態を示す。尚、図16は平面図であり、また図17は、図16中のXVII−XVII矢視の断面図である。
【0044】
図15に示すように、柱梁架構の内方にはRC造の既存壁5が予め立設している。また、増厚補強をすべく、この既存壁5に沿わせつつ、柱梁架構の内周には定着鋼材53,53,55,56が配置されている。尚、下梁4の定着鋼材56には、前述と同様に平鋼が使用されているが、柱2および上梁4の定着鋼材53,55には、山形鋼が使用されている。そして、図16に示すように、前記平鋼56の上面には、前記第1実施形態の前側のブロック列32aと同じように、第1段目のブロック列32aが配置されている。すなわち、前記平鋼56の前縁56aに沿って、ブロック本体12の平坦面12aを揃えながら、左右の横方向にブロック10が、左の柱2から右の柱2までに亘って順次並べられている。尚、この整列状態では、各ブロック10の突部14は既存壁5に対向して配されているとともに、前記ブロック列32aと既存壁5との間には、前記中央空間18および共有空間20を含む前記空間19が形成されている。
【0045】
図16および図17に示すように、帯状シート60は、前記空間19を形成する既存壁5とブロック10との間に跨るように貼り付けられている。詳細には、この帯状シート60の長手方向を壁厚方向に揃えつつ、その長手方向の一端部が、ブロック本体12上面から突部14上面にかけて貼り付けられているとともに、他端部は、既存壁5に設けられたアングル部材62に貼り付けられている。このアングル部材62は、水平片62aと鉛直片62bとからなる断面L字状の鋼製部材であり、その鉛直片62bをエポキシ系樹脂接着剤またはアンカー等によって既存壁5の壁面5aに固定されている。一方、水平片62aの上面には、前記帯状シート60の他端部が前記接着剤にて貼り付けられている。尚、この水平片62aの上面高さは、ブロック10上面と同高になるように調整されており、もってこのアングル部材62の水平片62a上面とブロック10上面との間に跨がせて貼り付けた際には、帯状シート60は水平になる。このため、グラウト材の打設時においては、帯状シート60には、ねじり力等が作用せず引張力のみが作用するようになり、もって前記グラウト材の側圧に有効に対抗可能となっている。
【0046】
尚、この帯状シート60の貼り付けは、必ずしも横方向の全てのブロック10に対して行う必要はなく、また必ずしも全ての段のブロック列に対して行う必要がないのは、前記第1実施形態と同様である。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0048】
(a)本実施形態においては、組積に供するブロックとして、板状体のブロック本体12と、その背面に突設した一対の突部14とを備えた特殊形状のブロック10を例示したが、その形状はこれに限るものではない。例えば、一対のフェイスシェルと、これらを繋ぐウエッブとを備えた一般形状のブロックを使用しても良い。
【0049】
(b)本実施形態では、既存建物に耐震用補強壁を増設する場合または増厚する場合を例に説明したが、本発明の壁および壁の構築方法の適用対象は、これに限るものではない。例えば、新設建物の壁に適用しても良いし、耐震性を奏さない単なる界壁に適用しても良い。更には、柱梁架構の無い屋外の壁に適用しても良い。
【0050】
(c)本実施形態においては、壁体の柱梁架構への定着を取るのに、柱梁架構に接着して定着を取る定着鋼材を使用したが、これに限るものではない。例えば、柱梁架構に、あと施工アンカーを打設して壁体と柱梁架構との定着を取っても良い。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、施工時間の短縮化が図れる壁およびその壁の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図1(a)は、その一部のブロックを破断して示す正面図、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の断面図である。
【図2】図1(a)中のII部を拡大して示す図である。
【図3】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図5】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図6】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図7】第1実施形態に係る耐震用補強壁に供するブロックの下面図である。
【図8】図7の背面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】組積途中のブロック壁を示す斜視図である。
【図11】図4(b)中のXI部の拡大図である。
【図12】図11の斜視図である。
【図13】図11中のXIII−XIII矢視の断面図である。
【図14】図5(b)中のXIV部の拡大図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図15(a)は、その一部のブロックを破断して示す正面図、図15(b)は、図15(a)中のB−B線矢視の断面図である。
【図16】第2実施形態に係る1段目のブロック列を配列した状態を示す平面図である。
【図17】図16中のXVII−XVII矢視の断面図である。
【符号の説明】
2 柱
4 梁
10 ブロック、プレキャストコンクリートブロック(コンクリートブロック)
19 空間
19a グラウト材
30 壁体
32 前側のブロック壁
42 後側のブロック壁
60 帯状シート、規制部材

Claims (7)

  1. コンクリートブロックを用いた壁の構築方法であって、
    構築すべき壁の両面を夫々構成するコンクリートブロックを、それらの間に空間が形成されるように互いに対向して組積して、この組積したコンクリートブロック同士を接着し、その際、当該空間が壁厚方向に広がるのを規制する規制部材の両端部を、上下のコンクリートブロックの間に挟み込んで接着することにより、当該空間を形成する二つのコンクリートブロック間に跨るように設け、しかる後に、前記空間にグラウト材を打設することを特徴とする壁の構築方法。
  2. 既存壁を増厚するためのコンクリートブロックを用いたの構築方法であって、
    前記既存壁の前記コンクリートブロックを組積する側の表面に、当該コンクリートブロック側へ突出する板状部を備える部材を固定すると共に、前記既存壁との間に空間が形成されるように当該既存壁に対向させてコンクリートブロックを組積して、この組積したブロック同士を接着し、その際、当該空間が壁厚方向に広がるのを規制する規制部材の一端部を前記部材の板状部に接着し、他端部を組積される上下のコンクリートの間に挟み込んで接着することにより、当該既成部材を当該空間を形成する既存壁とコンクリートブロックとの間に跨るように設け、しかる後に、前記空間にグラウト材を打設してコンクリートブロックを既存壁に一体化することを特徴とする壁の構築方法。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材はシート状部材であることを特徴とする方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材は、所定段のコンクリートブロックに選択的に設けられることを特徴とする方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記コンクリートブロックは、壁面をなす平坦な板状体と、該板状体の背面から突出した突部とを有し、前記コンクリートブロックはその突部を、構築すべき壁の内側に向けて配されることを特徴とする方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の壁の構築方法において、前記規制部材は、繊維強化プラスチックからなることを特徴とする方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の方法によって構築されたことを特徴とする壁。
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