JP3975921B2 - 補強壁および補強壁の構築方法 - Google Patents

補強壁および補強壁の構築方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存建物の柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して構築される補強壁および補強壁の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存建物に耐震用補強壁を増設する在来工法としては、既存建物の柱梁架構の内方に小型のプレキャストコンクリートブロック(以下、単にブロックと言う)を組積して壁体を増設するものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この壁体は、その内部に配筋用の空間を形成しながら前記ブロックを上下左右に組積し、前記空間に壁筋を配筋後にグラウト材を打設することによって一体化して構築される。そして、この壁体の柱梁架構への定着は、前記ブロックの組積前に柱梁架構の内周面に予め打設しておいた多数のアンカーを、前記配筋用の空間に挿入後に前記グラウト材を打設して前記壁体内に埋設することによりなされている。尚、この定着をより確実なものとすべく、前記アンカーを、前記壁体内の壁筋に溶接等によって結合する場合もある。
【0003】
しかしながら、このアンカーの打設時には、柱梁架構へのアンカー打ち込みによって騒音や振動が発生するために、建物のテナントが常駐する平日施工は困難であった。そこで、最近では、柱梁架構にアンカーを打ち込まずに壁体を柱梁架構へ定着させることが可能な、定着部材を用いた構築方法が開発され実用化されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
この耐震用補強壁の構築方法を、図19の耐震用補強壁の正面図を参照しつつ説明する。尚、図19は、耐震用補強壁の略右半分の領域のブロックを破断して示している。
この方法は、前記柱梁架構の内向きに延びる定着筋58が係止される溝形鋼等の定着鋼材50を、前記柱梁架構の内周2a,4aに沿わせて柱2および梁4毎にエポキシ系樹脂接着剤で貼設する貼設工程と、これら定着鋼材50の内方に上下左右にブロック10を組積して、内部に定着筋58の挿入用空間が設けられた壁体30を形成する組積工程と、前記空間に前記定着筋58を挿入した状態で当該空間にグラウト材を打設して前記壁体30を前記柱梁架構に定着する定着工程とからなる。
そして、このような構築方法によれば、柱梁架構に打設するアンカー数を少なく抑えることができる結果、騒音等の発生を低減できて平日施工が実施可能となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−13291号公報(第2−5頁、第1図)
【0006】
【非特許文献1】
栗田 康平、外4名,「小型プレキャストブロックを用いた増設耐震壁工法の開発(その2)」,2002年 社団法人日本建築学会学術講演梗概集,C−2分冊,p.687
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この定着鋼材50は、これが貼設される柱2や梁4の内法とほぼ同長の一体ものである。このため、定着鋼材50の一本当たりの重量は約100kgというように非常に重く、もって、特に持ち上げが必要な上梁4や左右の柱2への貼設作業の場合には、作業者に重労働を課してしまうという非常に取り扱い難いものであった。
【0008】
また、この定着鋼材50は、その接着面が錆びた状態では接着性が悪いため、通常は、貼り付け直前に、接着面の錆び取りとしてケレン(例えば、ショットブラスト処理等)を行わねばならず、更にはケレン後の錆の発生を抑えながらの保管にも手がかかり、取り扱い難いものであった。
【0009】
更に、柱2に貼設される定着鋼材50については、次のような点でも取り扱い難かった。ブロック10の組積が進むと、各段におけるブロック10の組積高さには、ブロック10間の目地幅や個々のブロック10の寸法精度等の誤差が累積してあらわれるため、実際の組積高さは、各段の計画高さから上下にずれてくる。そして、このずれに伴って、組積したブロック10にて形成される壁体30内部の定着筋58の挿入用空間も、計画位置から上下にずれて形成されてしまい、その結果、この計画高さに基づいて予め工場で定着鋼材50に溶接固定された定着筋58を前記空間に挿入できなくなる場合がある。この定着鋼材50側での定着筋58の位置変更は、前述の溶接固定のために簡単には行えない。つまりこの定着鋼材50は、組積高さの誤差に対して柔軟に対応できるものではなく、非常に取り扱い難いものであった。
【0010】
また、組積されたブロック10は、通常、左右に隣り合うブロック10に隙間無く突き合わされている。しかし、当該ブロック10は所定の標準寸法に形成された規格品であるため、このブロック10を組積してなる左右の横方向の全長が、前記柱梁架構の開口幅に合致しない場合があり、その際には壁体30の横方向の一部にブロック10の存在しない隙間Sが生じる。通常、この隙間Sは、前記定着工程においてグラウト材が充填されるが、この隙間Sが、図19に示すように左右の柱際、すなわち、定着鋼材50と、その隣のブロック10との間に形成されると、壁体30と柱2との定着強度が低下する虞があった。
【0011】
更には、この定着鋼材50は鋼製のため材料費が高く、また定着筋58の溶接手間等もかかって高価なものとなっており、施工費を引き上げる一因となっていた。
【0012】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、取り扱い易く安価な定着部材を使用して柱梁架構へ定着された補強壁および補強壁の構築方法を提供することを第1の目的とし、前記定着部材を用いて高い定着強度で定着した補強壁および補強壁の構築方法を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために請求項1に記載された発明は、柱梁架構の内向きに延びる定着筋を係止する定着部材を、前記柱梁架構の内周に沿わせて貼設するとともに、前記柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して内部に前記定着筋の挿入用空間が設けられた壁体を形成し、前記空間に前記定着筋を挿入した状態で当該空間にグラウト材を打設して前記壁体を前記柱梁架構に定着する補強壁の構築方法であって、前記柱梁架構のうちの少なくとも柱に貼設する定着部材として、前記定着筋を係止するための係止部材が取り付けられた複数のコンクリート製の定着用ブロックを用いることを特徴とする。
【0014】
上記発明によれば、少なくとも柱に貼設する定着部材は複数の定着用ブロックから構成されており、定着部材を定着用ブロック単位で取り扱うことができる。従って作業者は、軽くなった定着用ブロック単位で定着部材を持ち上げて柱に貼り付けることができて、身体に大きな負荷をかけずに貼設作業を実施できる。
また、この定着用ブロック単位で独立に貼設高さを調整することができる。従って、コンクリートブロックの寸法精度等の誤差が組積に伴って累積し、コンクリートブロックの実際の組積高さが計画高さからずれている場合であっても、各コンクリートブロックの実際の組積高さに基づいて、定着用ブロック単位でその貼設高さを適合調整可能であり、もって組積高さの誤差に対して柔軟に対応することができる。
更には、この定着用ブロックはコンクリート製であって錆びないため、前記柱梁架構に対する接着面の錆び取り処理を省略できて取り扱い易い。
また、この定着用ブロックはコンクリート製であるため、安価に製造できて施工費を低減可能である。
【0015】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の補強壁であって、前記壁体の各段のコンクリートブロックを組積する度に、各段に対応する高さに定着用ブロックを貼設することを特徴とする。
上記発明によれば、コンクリートブロックの段毎に、その実際の組積高さに定着用ブロックの貼設高さを適合させることができて、もってコンクリートブロックの組積高さの誤差に対して更に柔軟に対応可能となる。
【0016】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、前記壁体の壁幅方向の両端に位置するコンクリートブロックを、それぞれその直近の柱に貼設された定着用ブロックに突き合わせて配したことを特徴とする。
上記発明によれば、コンクリートブロック間の隙間は、柱際、すなわち、柱に貼設された定着用ブロックと、その壁幅方向の直近のコンクリートブロックとの間には形成されない。よって、コンクリート間の隙間のために定着強度が低下するのを防止できる。
【0017】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、前記柱梁架構のうちの上梁に貼設される定着部材として、前記定着筋を係止するための係止部材が取り付けられた複数のコンクリート製の定着用ブロックを用いることを特徴とする。
上記発明によれば、上梁に貼設される定着部材は、複数の定着用ブロックから構成されており、定着部材を定着用ブロック単位で取り扱うことができる。従って、作業者は、この定着用ブロック単位で定着部材を持ち上げて上梁に貼り付けることができて、身体に大きな負荷をかけずに貼設作業を実施できる。
また、この定着用ブロックはコンクリート製であって錆びないため、前記柱梁架構に対する接着面の錆び取り処理を省略できて取り扱い易い。
更には、この定着用ブロックはコンクリート製であるため、安価に製造できて施工費を低減可能である。
【0018】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、前記係止部材は、前記定着用ブロックに埋設されているとともに、前記定着筋を着脱可能に係止することを特徴とする。
上記発明によれば、定着用ブロックは、定着筋を着脱可能に係止することができる。よって、定着用ブロックを柱梁架構の内周に貼設する際には、この貼設作業の邪魔となりがちな定着筋を取り外しておき、貼設後に取り付けることができて、もって定着用ブロックの貼設作業性に優れる。
【0019】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、前記定着筋の挿入用空間は、前記壁体の高さ方向および壁幅方向に亘って形成され、当該挿入用空間には、前記壁体の補強鉄筋が、前記定着筋に掛け渡されて配されていることを特徴とする。
上記発明によれば、前記壁体の高さ方向および壁幅方向に亘って形成された前記挿入用空間には、壁体の補強鉄筋が配されているので、その壁体の剛性および強度を高めることができる。
また、この壁体の補強鉄筋は定着筋に掛け渡されているので、当該壁体の柱梁架構への定着強度を更に高めることができる。
【0020】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、前記定着筋は前記壁体の補強鉄筋であることを特徴とする。
上記発明によれば、定着筋は壁体の補強鉄筋である。つまり、当該補強鉄筋が定着部材に直接係止されており、もって壁体の柱梁架構への定着強度を更に高めることができる。
【0021】
請求項8に記載された発明は、請求項3記載の補強壁の構築方法であって、前記両端に位置するコンクリートブロックを、それぞれその直近の柱に貼設された定着用ブロックの略下半部分と前記直近の柱とで挟み込むように当該定着用ブロックに突き合わせて配したことを特徴とするものである。
請求項9に記載された発明は、請求項8記載の補強壁の構築方法であって、
上下に隣り合う前記定着用ブロックを、それらの間に隙間が形成されるように設けることを特徴とするものである。
請求項10に記載された発明は、柱梁架構の内向きに延びる定着筋を係止する定着部材を、前記柱梁架構の内周に沿わせて貼設するとともに、前記柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して内部に前記定着筋の挿入用空間が設けられた壁体を形成し、前記空間に前記定着筋を挿入した状態で当該空間にグラウト材を打設して前記壁体を前記柱梁架構に定着する補強壁の構築方法であって、
前記柱梁架構を構成する下梁の上面にその内法に亘って、前記定着部材としての平板部材を貼設するとともに、上梁の下面に複数のコンクリート製の前記定着用ブロックを貼設し、
下側の定着筋を前記平板部材に取り付けるとともに、上側の定着筋を前記定着用ブロックに取り付け、
上下の前記定着筋の間に縦筋を掛け渡して配筋し、
前記柱梁架構の内方に前記コンクリートブロックを1段づつ、前記挿入用空間が形成されるように組積し、各段の前記コンクリートブロックを組積する都度、その段に対応する前記定着用ブロックを左右の柱に貼設して、当該定着用ブロックに定着筋を取り付け、
左右の前記定着筋の間に横筋を、前記挿入用空間に収容されるように掛け渡して配筋し、
最上段の前記コンクリートブロックまで組積したら、前記挿入用空間にグラウト材を充填することを特徴とするものである。
請求項11に記載された発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法によって構築された補強壁に係るものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
===第1実施形態===
本発明は、既存建物の柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して構築される補強壁およびその構築方法であり、第1実施形態では、耐震用補強壁を増設する場合を例に説明する。
【0023】
−−−耐震用補強壁の構造−−−
図1は増設された耐震用補強壁を示す図であって、図1(a)は、その略右半分の領域のブロックを破断して示す正面図、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の断面図である。図2乃至図5は定着部材を説明するための図であって、図2は、図1(b)中のII部を拡大して示す図、図3は、図1(a)中のIII−III線矢視の断面図、図4は、図1(a)中のIV−IV線矢視の断面図である。また図5は、図2中のV−V線矢視の断面図である。但し、図が見難くなるのを避けるため、図1(b)では、グラウト材の部分の断面線および壁筋の図示を省略し、また図2乃至図5ではグラウト材を透視して示している。更に図2では断面上のブロックも透視して示している。尚、以下の説明では、耐震用補強壁の壁厚方向を前後方向とも言うとともに、壁幅方向を左右の横方向と、また高さ方向を上下方向とも言う。
【0024】
図1に示すように、この耐震用補強壁は、柱梁架構としての左右一対の柱2,2および上下一対の梁4,4で囲まれた内方の略矩形空間に、多数のコンクリートブロック10を組積等して構築される壁体30である。柱2および梁4は共に鉄筋コンクリート造(RC造)であり、その各両端部が柱梁仕口構造によって一体的に連結されている。尚、この柱2および梁4は、表層部がコンクリートであればRC造に限るものではなく、例えば鉄骨コンクリート造(SRC造)であっても良い。
【0025】
(A)壁体
壁体30は、小型のプレキャストコンクリートブロック10(以下、ブロックと言う)を高さ方向および壁幅方向に組積してなるブロック壁32,42を主体として構成される。このブロック壁32,42は、図1(b)に示すように壁厚方向の前後に互いに対向して一対が設けられ、これら一対のブロック壁32,42は、互いに、壁体30の壁厚中心線30aに関して線対称になるように配されている。これら一対のブロック壁32,42の間には空間19が形成されており、この空間19には、図2乃至図5に示すように、壁筋としての鋼製の縦筋6や横筋8が配筋されるとともにグラウト材19aが密実に充填され、これによってブロック壁32,42は壁体30として一体化されている。尚、以下の説明では、これら一対のブロック壁32,42のうちの前方に位置するブロック壁32を前側のブロック壁、後方に位置するブロック壁42を後側のブロック壁と言う。
【0026】
図6〜図8に、このブロック壁に供される前記ブロックを示す。尚、図6は下面図、図7は背面図、そして図8は側面図である。また、図9は、形成されたブロック壁の一部を示す斜視図である。
図6に示すように、このブロック10は、ブロック本体12と、このブロック本体12の背面に突設させた一対の突部14とから構成される。ブロック本体12は、平坦面12aを備えた略矩形の板状体であり、図9に示すようにブロック10を組積してブロック壁32(42)を形成した際には、前記平坦面12aが鉛直な壁面をなす。
【0027】
突部14は、図6に示すように左右方向に間隔を隔てて一対が設けられ、それらの間に中央空間18が形成されている。また、この突部14はブロック本体12の左右の端部12bより内側に配置されており、図9に示すように、ブロック10の端部12b同士を突き合わせながら当該ブロック10を左右の横方向に連ねて並べた際には、隣接するブロック10同士の一方の突部14との間に共有空間20が形成される。
【0028】
これら中央空間18および共有空間20は、図9に示すブロック壁32(42)の形成状態において、それぞれに上下方向に連通しており、本実施形態にあっては、これらのうちの共有空間20に、前記縦筋6および後述する梁4の定着筋58が挿入される。尚、場合によっては、中央空間18に前記縦筋6および前記定着筋58を挿入しても良い。
【0029】
また、図8および図5に示すように、この突部14の下面には凹部16が形成されており、この凹部16によって前記中央空間18および共有空間20は左右方向に連通している。そして、この連通空間には前記横筋8および後述する柱2の定着筋58が挿入される。尚、これら中央空間18、共有空間20、および連通空間も、前述の空間19の一部であり、前記グラウト材19aが埋設されるのは言うまでもない。
【0030】
(B)壁体を柱梁架構へ定着するための定着部材
この壁体30の柱梁架構への定着は、図1(a)に示すように、エポキシ系樹脂接着剤で柱梁架構の内周面2a,2a,4a,4aに接着された定着部材52,52,54,56によってなされる。すなわち、左右の柱2,2および上下の梁4,4のそれぞれに対して、その長手方向に沿って定着部材52,52,54,56が配されている。各定着部材52,52,54,56の接着位置は、壁体30の外周面に対向するように、壁厚方向には互いに揃えられている。これら定着部材52,52,54,56からは、柱梁架構の内向きに延びた定着筋58が、壁体30内の前記共有空間20または前記連通空間に向けて突出しており、この定着筋58が、これら共有空間20および連通空間に打設されるグラウト材19aに埋設されることによって壁体30を柱梁架構に一体化して定着する。
【0031】
このような定着部材52,52,54,56は、その構成上の相違から、左右の柱2,2および上梁4のそれぞれに対して複数が貼設される定着用ブロック52a,54aと、下梁6に対して一つが貼設される平板部材56とに大別される。
前者の定着用ブロック52a,54aは、柱2または上梁4の内法を複数に分割した大きさの、略直方体形状のプレキャストコンクリート部材であり、作業者が楽に持ち上げ可能な重さ(例えば4〜8kg)に形成されている。そして、図2および図3に示すように、その内部には、前記定着筋58を着脱可能に係止する係止部材としてのインサート62と、定着用ブロック52a,54aを補強する鉄筋52b,54bとが埋設されている。
【0032】
図1(a)および図5に示すように、柱2に対しては、その高さ方向に沿って複数の定着用ブロック52aが一列に、ほぼ全段のブロック10に対応して配されている。より正確には、定着用ブロック52aは、互いに上下に隣接するブロック10,10の接合部である横方向の目地10aに対応して配されている。そして、各定着用ブロック52aは、その対応する目地10aを上下に跨ぎつつ、横方向に隣接する前記ブロック10,10に隙間無く突き合わされている。
【0033】
このように上下のブロック10,10間の目地10aを跨ぎつつ、これらブロック10,10に突き合わして定着用ブロック52aを配している理由は次の通りである。先ず、定着用ブロック52aを柱2に貼設する際には、前記接着剤が硬化するまでは何らかの手段によって仮支持する必要があって、この仮支持を下段のブロック10によって行っているためである。すなわち、図5に示すように、下段のブロック10の端部12bを定着用ブロック52aに突き合わせて、この定着用ブロック52aの略下半部分を下段のブロック10と柱2とで挟み込んで支持している。また、前述したように、柱際に隙間Sが存在すると、柱2と壁体30との定着強度が低下する虞があって、これを防ぐためでもある。すなわち、定着用ブロック52aに、壁幅方向の端に位置するブロック10を突き合わせることによって、少なくとも柱際である、定着用ブロック52aと前記端のブロック10との間には隙間を形成しないようにしている。
【0034】
前記インサート62は、図5に示すように、その内周面が雌ネジ加工された略鋼製パイプ部材である。そして、定着用ブロック52aの高さ方向の略中央に埋設されており、この定着用ブロック52aを前記目地10aに跨がせて配することによって、前記インサート62が上段のブロック10の凹部16を横方向から臨むようになっている。よって、このインサート62に、一端部が雄ネジ加工された定着筋58をねじ込むと、当該定着筋58は横方向に延び、前記凹部16を通って前記連通空間に挿入されるようになっている。そして、前述したように、この連通空間に打設されるグラウト材19aによって定着筋58は前記壁体30内に埋設され、これによって壁体30は柱梁架構のうちの柱2に定着される。尚、前記連通空間には前記横筋8も挿入されており、この横筋8は、左の柱の定着筋58と右の柱の定着筋58とに掛け渡されて溶接されている。従って、柱2,2への壁体30の定着強度は更に高いものとなっている。
【0035】
このようなインサート62は、図2に示すように、定着用ブロック52aにおける壁厚方向の二箇所に埋設されている。これは、本実施形態にあっては、壁厚方向の前後に一対のブロック壁32,42を形成するために前後に一対のブロック10,10を対向配置しており、これらブロック10,10の各凹部16に対して定着筋58,58を挿入するようにしているからである。
【0036】
定着用ブロック52aの高さ寸法は、図5に示すように、前記ブロック10の高さ寸法よりも若干小さく設定されている。よって、前記目地10aに対応させて高さ方向に並べると、上下に隣り合う定着用ブロック52a,52a同士の間には隙間S0が形成される。そして、この隙間S0分だけ、ブロック10に対して上下の高さ方向に相対移動させて柱2に貼設することができるため、この定着用ブロック52aに係止される前記定着筋58の高さを、ブロック10の前記凹部16に適合させて確実に挿入することができる。
【0037】
また、定着用ブロック52aの壁厚方向の寸法は、図2に示すように、壁体30の厚みと同じに設定されている。但し、耐震用補強壁の完成後には、当該定着用ブロック52aと柱2との接着部を介して壁体30と柱梁架構との間の応力伝達がなされることから、この接着面積は広い方が好ましい。このため、本実施形態にあっては、図示のように、定着用ブロック52aの接着面側に向かうに従って壁厚方向に拡幅したテーパー部52cを設けている。
【0038】
一方、図3に示すように上梁4の定着用ブロック54aとしては、前記柱2の定着用ブロック52aとほぼ同じ構成のものが90°向きを変えて、すなわち定着筋58を下方に向けて使用されている。この定着用ブロック54aは、図1(a)に示すように、上梁4の下面に、その長手方向である壁幅方向に沿って一列に複数が貼設されている。各定着用ブロック54aの貼設位置は、互いに左右に隣接するブロック10,10の接合部である縦方向の目地10bに対応しており、各定着用ブロック54aは、それぞれに対応する目地10bを左右に跨いで配されている。よって、各定着用ブロック52aの横方向の略中央に設けられた定着筋58は、前記互いに左右に隣接するブロック10,10が形成する前記共有空間20に上方から挿入される。そして、この共有空間20に打設されたグラウト材19aに前記定着筋58が埋設されることによって、壁体30は柱梁架構のうちの上梁4に定着される。
【0039】
後者の定着部材としての下梁4上面に貼設される平板部材56は、図1(a)に示すように、下梁4の内法とほぼ同じ長さで、かつ図4に示すように、壁体30の壁厚とほぼ同じ板幅の平鋼である。そして、その上面には、前記一対のブロック壁32,42が配置される。また、同じく平板部材56の上面には、前記上梁4の定着用ブロック52aの前記インサート62に対応させてナット51が溶接されており、各ナット51には、一端部を雄ネジ加工された定着筋58がねじ込まれて、この定着筋58は、下方から前記壁体30の共有空間20に挿入されるようになっている。そして、この共有空間20に打設されたグラウト材19aに前記定着筋58が埋設されることによって、壁体30は、柱梁架構のうちの上梁4に定着される。尚、前記共有空間には前記縦筋8も挿入されており、この縦筋8は、前記上梁4の定着筋58と当該下梁4の定着筋58とに掛け渡されて溶接されている。従って、上下梁4,4への壁体30の定着強度は更に高いものとなっている。
【0040】
ところで、本実施形態において、この下梁4の定着部材56をブロック化しなかった理由は、施工の際にこの定着部材56を持ち上げる機会が少なく軽量化のニーズが無かったためである。従って、平板部材56の接着面の錆び取りの省略や材料費の低減のニーズがある場合には、プレキャストコンクリート製の定着用ブロックを用いても良い。そして、その場合には、前記上梁4の定着用ブロック54aと同じものを、前記定着用ブロック54aに対応させて下梁4に貼設すれば良い。
【0041】
−−−耐震用補強壁の構築手順−−−
ここで、この耐震用補強壁30の構築手順を説明する。図10〜図15は、構築手順を説明するための説明図であって、各図とも(a)に正面図を示し、(b)には、(a)図中のB−B線矢視の断面図を示している。但し、図10〜図15における(b)図では壁筋および定着筋の図示を省略している。
【0042】
(A)上下梁の定着部材の貼設
先ず、図10に示すように、柱梁架構のうちの下梁4の上面に、その内法に亘って一つの平板部材56をエポキシ系樹脂接着剤によって接着する。また、上梁4の下面には、その内法に亘って複数の定着用ブロック54aを接着する。この時、持ち上げが必要な上梁4の定着用ブロック54aは軽いため、楽に持ち上げることができて、もって作業者は、身体に大きな負荷をかけずに貼設作業を行うことができる。また、この定着用ブロック54aは錆びないため、この貼設前に、接着面の錆び取りとしてのケレンを行わなくて良い。更に、この貼設作業に際しては、その作業の邪魔となりがちな定着筋58を前記ナット51やインサート62によって平板部材56や定着用ブロック54aから取り外しておけば、当該貼設作業を容易に行うことができる。
【0043】
尚、この貼設してから接着剤が硬化するまでの間における、上梁4からの定着用ブロック54aの脱落を防ぐ目的で、細径のアンカー(不図示)を打設する等して定着用ブロック54aを仮支持しておくと良い。このアンカーは、定着用ブロック54aの自重を支持できれば良いため、ケミカルアンカー等といった本定着用のアンカーを用いる必要はなく、機械式アンカーを各定着用ブロック54aに一箇所程度打設すれば十分である。
【0044】
次に、前記ナット51を介して下梁4の平板部材56に定着筋58を、またインサート62を介して上梁4の定着用ブロック54aに定着筋58をそれぞれねじ込んで、定着筋58を柱梁架構に対して内向きに配置する。そして、互いに対応する上梁4の定着筋58と下梁4の定着筋58とに鉄筋6を掛け渡してその上下端部を溶接し、これによって縦筋6が配筋される。尚、この縦筋6の配筋タイミングはこれに限るものではなく、例えば後述するブロック10の組積作業と並行して行っても良い。また、壁体30内に縦筋6を設けない場合には、前記上梁4の定着用ブロック54aの貼設作業もこのタイミングで行う必要はなく、例えば、この後になされるブロック壁の形成後に貼設しても良い。
【0045】
(B)柱の定着部材の貼設および一対のブロック壁の形成
次に、定着部材52,56の内方にブロック10を組積して、最終的には、図15に示すように壁厚方向の前後に一対のブロック壁32,42を形成する。尚、柱2の定着用ブロック52aの貼設作業は、このブロック壁32,42の形成作業と並行して行う。すなわち、前側および後側のブロック壁32,42を構成する各段のブロック10を組積する度に、その段のブロック10に対応させて定着用ブロック52aを柱2に貼設していく。
【0046】
この貼設作業および組積作業を、順を追って説明すると、先ず、図11に示すように、前側および後側の最下段(1段目)に配されるブロック10のうちで、壁幅方向の左端のブロック10を下梁4の平板部材56上に仮置きする。そして、この仮置きのブロック10を貼設高さの目安として、最下段の定着用ブロック52aを左の柱2に貼り付ける。すなわち、図5に示すように、この定着用ブロック52aのインサート62が、この後でこのブロック10上に載置される2段目のブロック10の前記凹部16に臨むように、高さを調整しつつ柱2に貼り付ける。そして貼り付けたら、図1(a)に示すように、この定着用ブロック52aに前記左端のブロック10を突き合わせることによって、この定着用ブロック52aの略下半部分を前記ブロック10と柱2とで挟み込んで当該定着用ブロック52aを脱落不能に支持する。尚、この時には、図5に示すブロック10の左端部12bを定着用ブロック52aに接着するとともに、ブロック10の下面を前記平板部材56の上面に接着する。これらの接着はエポキシ系樹脂接着剤にてなされる。このようにして定着用ブロック52aおよび左端のブロック10を配置したら、図12に示すように、この左端のブロック10の右側に、順次、ブロック10の左右の端部12b同士を突き合わせながら当該ブロック10を壁幅の中央まで左詰めに連ねて並べる。尚、この時には、図5に示すように左右に隣接するブロック10の端部12b同士を接着するとともに、ブロック10の下面を前記平板部材56の上面に接着する。
【0047】
そして、この次に、またはこれと並行させて、この左側と同様の作業を、右側に対しても行う。すなわち、図11に示すように平板部材56上に仮置きした右端のブロック10を貼設高さの目安にして、最下段の定着用ブロック52aを右の柱2に貼り付ける。そして、この右端のブロック10を定着用ブロック52aに突き合わせつつ接着したら、図12に示すようにこのブロック10の左側に、順次、ブロック10の左右の端部12bを突き合わせながら、壁幅の中央まで当該ブロック10を右詰めに接着配置する。
【0048】
尚、このブロック10として、標準寸法の規格品が使用された場合には、この最下段に並んだブロック10の全長が柱梁架構の開口幅に合致しない限り、壁幅の中央には隙間S1が形成される。そして、この隙間S1には、後述する型枠施工によってグラウト材だけが充填されるため壁体30の脆弱部となる虞がある。しかしながら、本実施形態にあっては、この隙間S1は、柱際から最も離れた壁幅の中央に形成されているため、この部分が柱2と壁体30との定着強度へ与える影響は極小さく、もって定着強度を高く維持できるようになっている。
【0049】
次に、図12に示すようにこの左右の柱2,2の定着用ブロック52a,52aに、それぞれ定着筋58,58を取り付ける。この定着筋58はその一端部を前記インサート62にねじ込まれて固定され、他端部は壁幅方向に沿って前記ブロック10の上に位置している。そして、これら左右の柱2,2の定着筋58,58には、横筋8が掛け渡されて溶接固定される。尚、この横筋8は、この後に積み上げる2段目のブロック10の凹部16等からなる前記連通空間に収まる。
【0050】
このようにして1段目のブロック10および定着用ブロック52aを全て配置し終えたら、図13および図14に示すように、2段目の定着用ブロック52aの貼設およびブロック10の積み上げを、1段目の場合と同じように行う。但し、2段目の各ブロック10の下面は、その下段である1段目のブロック10の上面に接着される。
【0051】
そして、この積み上げ等を順次繰り返して、図15に示すようにブロック10が前記上梁4の定着用ブロック54aの近傍に達したら、柱2への定着用ブロック52aの貼設および一対のブロック壁32,42の形成は終了となる。
【0052】
尚、上梁4への定着用ブロック54aの貼設時と同様に、この定着用ブロック52aを用いれば、作業者の負荷は大きく軽減される。すなわち、この定着用ブロック52aは軽いため楽に持ち上げることができて、もって作業者は、身体に大きな負荷をかけずに柱2への貼設作業を行うことができる。また、この定着用ブロック52aは錆びないため、この貼設前に、接着面の錆び取りとしてのケレンを行わなくて良い。
【0053】
(C)グラウト材の打設
最後に、図15(b)に示す前側と後側のブロック壁32,42の間の空間19に、無収縮モルタル等のグラウト材を打設する。このグラウト材の打設は、図15(a)に示す、最上段のブロック10とその直上の定着用ブロック54aとの間に形成された隙間S2を利用してなされる。すなわち、このブロック10は前述の規格品であるため、そのブロック10の組積高さが、既存建物の柱梁架構の開口高さと合致しない限り、高さ方向に関しても前述と同様の隙間S2を生じる。この隙間S2は、最上段のブロック10と上梁4の定着用ブロック54との間に形成され、もってこの隙間S2から前記空間19にグラウト材を充填することができて、これにより前側と後側とのブロック壁32,42を一体化して壁体30の構築が完了する。
【0054】
尚、前記隙間S1,S2の部分は型枠施工によって埋める。すなわち、前記グラウト材の打設前に、そのグラウト材の投入口の部分を残しつつ、隙間S2近傍の定着用ブロック54aと最上段のブロック10とに堰板を立て掛けて隙間S2を閉塞する。また、前記略中央の隙間S1についても、その両脇のブロック10間に跨って堰板を立て掛けて隙間S1を閉塞する。そして、前記空間19へのグラウト材の打設によって、前記隙間S1,S2の部分も埋めるようにしている。
【0055】
===第2実施形態===
図16は、第2実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図16(a)は、その略右半分の領域のブロックを破断して示す正面図、図16(b)は、図16(a)中のB−B線矢視の断面図である。図17は、図16(b)中のXVII部を拡大して示す図である。尚、図16(b)では、グラウト材の部分の断面線および壁筋の図示を省略しており、図17では、グラウト材および断面上のブロックも透視して示している。また、図中、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して示し、その同じ構成部分の説明は省略する。
【0056】
前述の第1実施形態は、柱梁架構に耐震用補強壁30を増設して補強するものであったが、本第2実施形態は、予め柱梁架構が備える既存壁5を増厚して補強するものである。すなわち、本第2実施形態では、柱梁架構の内方に、前記第1実施形態に係る後側のブロック壁42の代わりに既存壁5が予め存在している。そして、この既存壁5に対向させて一つのブロック壁32を組積形成するとともに、このブロック壁32と既存壁8との間の空間19にグラウト材19aを打設することによって既存壁5と一体化した壁体31を構築するようになっている。尚、ブロック壁32が一つであることに起因して、図17に示すように定着用ブロック52aに埋設されるインサート62は一つだけになっている。
【0057】
===第3実施形態===
図18は、第3実施形態に係る耐震用補強壁を、図2と同じ線矢視で示す断面図である。尚、図中ではグラウト材および断面上のブロックを透視して示している。また、図中、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して示し、その同じ構成部分の説明は省略する。
【0058】
第3実施形態に係るブロック11は、一対のブロック本体12,12と、これらブロック本体12,12を一体に連結するための、壁厚方向の中央部分が括れた鼓形状のウエッブ部13とから構成される。一対のブロック本体12,12の平坦面12a,12aは、互いに平行に対向して配されており、もってこの平坦面12aが壁体30の両壁面を夫々構成するようになっている。また、壁体33の内部に形成されるべき定着筋58および縦横筋6,8の挿入空間については、前記ウエブ部13が鼓形状に形成されていることから、このブロック11を上下左右に組積した際には、上下左右に隣り合うウエッブ部13同士の間に空間が形成され、この空間が前記挿入空間として用いられる。尚、この空間には、定着筋58よび縦横筋6,8の挿入後に、グラウト材が打設される。
【0059】
尚、柱2および上梁4の定着用ブロック52a,54a、および下梁4の平板部材56は、第1実施形態と同じ構成のものを使用している。また、横方向の左端および右端に位置する各ブロック11は、その前後一対のブロック本体12,12の端部12b,12bを、柱2の定着用ブロック52aに突き合わされて配されている。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
(a)本実施形態においては、定着筋58を介して定着部材52,54,56と、縦筋6または横筋8とを結合したが、これに限るものではなく、例えば定着筋58を介さずに定着部材52,54,56のインサート62またはナット51に、縦筋6または横筋8を直接結合しても良い。すなわち、縦筋6または横筋8の両端部に雄ネジ加工を施し、これら端部をそれぞれに定着部材52,54,56のインサート62またはナット51にねじ込んで固定するようにしても良い。
そして、この構成によれば、壁体30の柱梁架構への定着強度を更に高めることが可能となる。
【0061】
(b)本実施形態においては、ブロック10の段毎に精細に定着用ブロック52aの貼設位置を調整できるように、ほぼ各段に一対一対応させて定着用ブロック52aを設けたが、例えば2、3段といった複数段毎に一つの定着用ブロックを設けるようにしても良い。尚、この場合の各定着用ブロックには、前記複数段分の定着筋58が係止されているのは言うまでもない。
【0062】
(c)本実施形態においては、定着用ブロック52a,54aに定着筋58を着脱可能に係止する係止部材の一例としてインサート62を示したが、これに限らず、着脱可能に係止できる構成であれば良い。
【0063】
(d)本実施形態においては、貼設作業の負荷軽減およびケレンの省略を図るべく、上梁4に対しても定着用ブロック54aを用いたが、これに限るものではなく、場合によっては、上梁4に対しては、当該上梁4の内法とほぼ同じ長さの溝形鋼を定着部材として使用しても良い。
【0064】
(e)本実施形態においては、定着用ブロック52a,54aおよび平板部材56を貼り付けるためにエポキシ系樹脂接着剤を用いたが、壁体30を柱梁架構に定着させるのに十分な強度および剛性を有するものであればこれに限らずに適用可能である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、取り扱い易く安価な定着部材を使用して柱梁架構へ定着された補強壁および補強壁の構築方法を提供することができ、また、前記定着部材を用いて高い定着強度で定着した補強壁および補強壁の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図1(a)は、その略右半分の領域のブロックを破断して示す正面図、図1(b)は、図1(a)中のB−B線矢視の断面図である。
【図2】図1(b)中のII部を拡大して示す図である。
【図3】図1(a)中のIII−III線矢視の断面図である。
【図4】図1(a)中のIV−IV線矢視の断面図である。
【図5】図2中のV−V線矢視の断面図である。
【図6】第1実施形態に係る耐震用補強壁に供するブロックの下面図である。
【図7】図6の背面図である。
【図8】図6の側面図である。
【図9】ブロック壁の一部を示す斜視図である。
【図10】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図11】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図12】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図13】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図14】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図15】第1実施形態に係る耐震用補強壁の構築手順を説明するための説明図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る耐震用補強壁を示す図であって、図16(a)は、その略右半分の領域のブロックを破断して示す正面図、図16(b)は、図16(a)中のB−B線矢視の断面図である。
【図17】図16(b)中のXVII部を拡大して示す図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る耐震用補強壁を、図2と同じ線矢視で示す断面図である。
【図19】従来の耐震用補強壁の正面図であって、その略右半分の領域のブロックを破断して示している。
【符号の説明】
2 柱
4 梁、上梁、下梁
10 ブロック、コンクリートブロック、プレキャストコンクリートブロック
19 空間
19a グラウト材
30 壁体、耐震用補強壁
32 前側のブロック壁
42 後側のブロック壁
52,54 定着部材
52a,54a 定着用ブロック
56 平板部材(定着部材)
58 定着筋
62 インサート(係止部材)

Claims (11)

  1. 柱梁架構の内向きに延びる定着筋を係止する定着部材を、前記柱梁架構の内周に沿わせて貼設するとともに、前記柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して内部に前記定着筋の挿入用空間が設けられた壁体を形成し、前記空間に前記定着筋を挿入した状態で当該空間にグラウト材を打設して前記壁体を前記柱梁架構に定着する補強壁の構築方法であって、
    前記柱梁架構のうちの少なくとも柱に貼設する定着部材として、前記定着筋を係止するための係止部材が取り付けられた複数のコンクリート製の定着用ブロックを用いることを特徴とする補強壁の構築方法。
  2. 請求項1記載の補強壁の構築方法であって、
    前記壁体の各段のコンクリートブロックを組積する度に、各段に対応する高さに定着用ブロックを貼設することを特徴とする補強壁の構築方法。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、
    前記壁体の壁幅方向の両端に位置するコンクリートブロックを、それぞれその直近の柱に貼設された定着用ブロックに突き合わせて配したことを特徴とする補強壁の構築方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、
    前記柱梁架構のうちの上梁に貼設される定着部材として、前記定着筋を係止するための係止部材が取り付けられた複数のコンクリート製の定着用ブロックを用いることを特徴とする補強壁の構築方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、
    前記係止部材は、前記定着用ブロックに埋設されているとともに、前記定着筋を着脱可能に係止することを特徴とする補強壁の構築方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、
    前記定着筋の挿入用空間は、前記壁体の高さ方向および壁幅方向に亘って形成され、当該挿入用空間には、前記壁体の補強鉄筋が、前記定着筋に掛け渡されて配されていることを特徴とする補強壁の構築方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の補強壁の構築方法であって、
    前記定着筋は、前記壁体の補強鉄筋であることを特徴とする補強壁の構築方法。
  8. 請求項3記載の補強壁の構築方法であって、
    前記両端に位置するコンクリートブロックを、それぞれその直近の柱に貼設された定着用ブロックの略下半部分と前記直近の柱とで挟み込むように当該定着用ブロックに突き合わせて配したことを特徴とする補強壁の構築方法。
  9. 請求項8記載の補強壁の構築方法であって、
    上下に隣り合う前記定着用ブロックを、それらの間に隙間が形成されるように設けることを特徴とする補強壁の構築方法。
  10. 柱梁架構の内向きに延びる定着筋を係止する定着部材を、前記柱梁架構の内周に沿わせて貼設するとともに、前記柱梁架構の内方にコンクリートブロックを組積して内部に前記定着筋の挿入用空間が設けられた壁体を形成し、前記空間に前記定着筋を挿入した状態で当該空間にグラウト材を打設して前記壁体を前記柱梁架構に定着する補強壁の構築方法であって、
    前記柱梁架構を構成する下梁の上面にその内法に亘って、前記定着部材としての平板部材を貼設するとともに、上梁の下面に前記定着部材としての複数のコンクリート製の定着用ブロックを貼設し、
    下側の定着筋を前記平板部材に取り付けるとともに、上側の定着筋を前記定着用ブロックに取り付け、
    上下の前記定着筋の間に縦筋を掛け渡して配筋し、
    前記柱梁架構の内方に前記コンクリートブロックを1段づつ、前記挿入用空間が形成されるように組積し、各段の前記コンクリートブロックを組積する都度、その段に対応する前記定着用ブロックを左右の柱に貼設して、当該定着用ブロックに定着筋を取り付け、
    左右の前記定着筋の間に横筋を、前記挿入用空間に収容されるように掛け渡して配筋し
    最上段の前記コンクリートブロックまで組積したら、前記挿入用空間にグラウト材を充填することを特徴とする補強壁の構築方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載の方法によって構築されたことを特徴とする補強壁。
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