JP6083001B1 - 建造物の補強構造 - Google Patents
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Abstract
Description
柱のみを補強した場合に、柱と梁の強度のバランスが崩れ、かえって建造物全体が壊れやすくなってしまうことがあるからである。
既存柱と、柱と梁との交差部とを同時に補強する補強構造として、特許文献1に示す構造が知られている。
上記柱用枠体3は、一対の断面L字状の鋼板3a,3bの先端を重ね合わせてコの字状にしたものである。そして、各鋼板3a,3b軸方向長さは、対向する柱1の補強対象部分の軸方向長さを複数に分割した長さにしている。したがって、複数の柱部用枠体3を既存柱1に沿って積層して既存柱1の補強対象部分を囲うようにしている。
また、上記枠体3,4の表面には、帯状シート5を貼り付けて、各鋼板同士を連結している。
上記のように固定した枠体3,4と柱1との間には、柱1に沿った一対の軸方向筋6を配置するとともに、図示しないグラウト材などの充填材を充填し、硬化した充填材によって既存柱1と交差部とを一体的に補強するようにしていた。
一方、通常の建造物は、柱が崩れてしまうと崩壊してしまうので、柱に対し梁が先行して崩壊するように設計しなければならない。そのため、柱と交差部とを補強する場合にも、補強された梁の強度が、補強柱の強度を越えないようにする必要がある。
ところが、上記従来の補強構造では、柱と交差部とを一体的に補強しているため、柱の強度に対して梁の強度が相対的に低くなるように交差部の補強強度を調整することが難しかった。
この発明の目的は、補強した柱の強度に対し、梁の強度が相対的に低くなるように強度を調整することが容易な、建造物の補強構造を提供することである。
しかも、交差部を補強柱とは別体のコンクリートブロックで補強するようにしたので、コンクリートブロックの強度を調整することで交差部の補強強度を自由に調整することができる。交差部の補強強度を調整できれば、梁の強度を補強柱の強度に対して相対的に小さく調整することも容易である。
また、コンクリートブロックは、成形型を共通化しても、コンクリートの種類やコンクリートに埋設する補強筋や、強化繊維などの強化材によって、その強度を自由に設定することができる。したがって、共通の成形型を用いて、製造コストを抑えながら、強度調整の自由度を保つことができる。
さらに、交差部の補強に、あらかじめ形成されたコンクリートブロックを用いるため、補強工事現場での作業を簡略化できる。例えば、コンクリートを現場打ちする場合と比べて、作業時間や養生時間を短縮することもできる。
特に、上下の階に設けられた補強柱の軸方向筋を、コンクリートブロックを介して連結すれば、補強柱の軸方向筋を多層階にわたって連続させることができ、補強柱の連続性を保つことができる。
また、上記空間の分だけ、コンクリートブロックの重量を小さくできるため、現場への搬送性が良くなる。
また、コンクリートブロックの空間に充填する充填材を補強柱の補強層を構成する材料と共通にして、上記補強層と共に構成すれば、充填材を介して補強柱とコンクリートブロックとの一体性を上げることができる。特に、補強柱に連続する部分のみに上記空間を設けた場合には、交差部においても柱部分の強度を補強柱と同様にして、梁の部分よりも補強強度を高くすることができる。
また、コンクリートブロックの空間内に、既存柱や梁に打ち込んだアンカーボルトを突出させることができる。
上記アンカーボルトによる定着力が大きくなれば、コンクリートブロックを貫通する貫通ボルトなどの他の締結部材を省略することもできる。
さらに、アンカーボルトの突出長さを長くすれば、それを、充填材内のせん断補強筋として機能させることもできる。
この第1実施形態では、既存柱1の梁下部分を、図9に示す従来例と同様に鋼板3a,3bからなる柱用枠体3で囲って補強柱Aを構成し、この補強柱Aの上に交差部補強用のコンクリートブロックB1を設けたものである。
なお、図1,3は後で説明する充填材11を充填していない状態を示しているが、図2は充填材11を充填して完成した補強柱Aを示している。
なお、図中の符号10は、既存柱1及び梁2に打ち込まれたアンカーボルトである。
このようにして柱用枠体3で囲まれた空間内にはグラウト材などの充填材11を充填し、補強層12を構成している。この補強層12内には、既存柱1に沿った一対の軸方向筋6と、既存柱1に打ち込まれたアンカーボルト10の突出部分が埋設される。
このコンクリートブロックB1は、工場などであらかじめ形成されたものであるが、図1,3に示すように、上部と、既存柱1及び梁2との対向面側とを解放した空間S1を備えている。
また、コンクリートブロックB1の底面の中央には、上記補強柱Aの幅に合わせた開口13が形成され、この開口13の部分において上記空間S1が、この発明の、補強柱Aの軸方向に貫通する空間を構成している。
また、コンクリートブロックB1の上記前面部には、梁2に打ち込まれたこの発明の締結部材である貫通ボルト16を貫通させるためのボルト孔17が形成されている。
まず、既存柱1の補強対象面にアンカーボルト10を打ち込むとともに、一対の軸方向筋6を配置してから、上記柱用枠体3を既存柱1の梁下部分に固定する。
さらに、梁2の必要個所にも、アンカーボルト10及び貫通ボルト16を打ち込み、コンクリートブロックB1を、貫通ボルト16とナット8とで固定する。
上記アンカーボルト10は充填材に埋設されることによって、上記貫通ボルトと16と相まって、コンクリートブロックB1を既存柱1及び梁2に定着する機能を発揮する。
なお、上記柱用枠体3を設けるとき、その最上端とコンクリートブロックB1の底面との間に、充填材11が漏れ出るすき間ができないようにする必要がある。
これにより、上記補強層12とコンクリートブロックB1とが一体化され、補強柱AとコンクリートブロックB1とからなる補強構造が完成する。
この第1実施形態の補強構造では、充填材11を介して補強柱AとコンクリートブロックB1とが一体化されているが、コンクリートブロックB1の強度は、補強柱Aと別に調整することができる。そのため、このコンクリートブロックB1で補強された梁2の強度が、補強柱Aの強度を越えないように調整することが可能である。
ただし、現場において配置する上記軸方向筋6の太さや本数を調整したり、コンクリートブロックB1の空間S1を、梁2の軸方向に沿って貫通する図示しないタイバーなどを設置したりすることで、あらかじめ設定されたコンクリートブロックB1の強度をさらに調整して、補強柱Aの強度と梁1の強度の相対差を調整することもできる。
そして、この第1実施形態の補強構造は、多層階に連続する既存柱1に対しても同様に適用でき、各階層に設けた補強柱Aの軸方向筋6を、補強層12やコンクリートブロックB1内で連結して連続させることができる。
特に、この第1実施形態では、既存柱1と対向する側だけでなく、底部にも開口13を備えているので、例えば、梁2に対して既存柱1がコンクリートブロックB1側に突出していたとしても、その突出した部分を上記開口13内に設ければ、既存柱1と梁2とが面一の場合に使用する上記コンクリートブロックB1の形状を変更することなく用いることができる。
また、図4では省略しているが、この第2実施形態でも図1と同様に、コンクリートブロックB1内に、曲げ補強筋14及びあばら筋15を埋設してもよい。
図4,5は、コンクリートブロックB1の空間S1に充填材を充填する前の状態を示し、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同じ符号を用いている。
なお、上記タイバー19は、上記第1実施形態のコンクリートブロックB1に設けてもよいし、交差部の必要強度に応じて複数本設けるようにしてもよい。
そして、上記軸方向筋6の、上側の突出部分が上記コンクリートブロックB1の空間S1内に配置されるようにし、下側の突出部分が基礎あるいは下層階に設けた交差部補強用のコンクリートブロックに連結されるようにしている。
なお、上記柱用コンクリートブロック18は、工場などであらかじめ形成しておいたものでもよいし、現場でコンクリートを打って形成してもよい。交差部補強用のコンクリートブロックB1は、その設置位置が高いため、型枠の設定など現場打ち作業が煩雑になるが、柱用コンクリートブロック18は梁下で形成できるので、現場打ちでも、作業性はそれほど悪くならない。
例えば、図6に示すように、上下の柱用コンクリートブロック18のいずれかの端部に、充填材の注入口22を備えた空間S3を形成する。この空間S3内で上下の軸方向筋6を重ねた状態を維持し、注入口22から充填材を注入して空間S3に充填すれば、上下の軸方向筋6を連結することができる。
上記コンクリートブロックB2は、梁2の軸方向に長さを有するブロックで、中央の既存柱1に対応する部分に一対の連結筋23,23を固定した支持部24を備えている。また、コンクリートブロックB2内には、上記支持部24で区画された空間S4,S5が形成されている。
また、このコンクリートブロックB2にはボルト孔17を形成している。このボルト孔17に、梁2に打ち込まれた固定用の貫通ボルト16(図1参照)を貫通させ、貫通した貫通ボルト16の先端に図示しないナットを締め付けることによって、コンクリートブロックB2を交差部に固定するようにしている。
なお、もう一方の空間S4には、上層階の補強層に連続する軸方向筋の端部を突出させて充填材を充填すれば、上層階の軸方向筋と上記連結筋23とを連結することができる。その結果、上記連結筋23によって階層をまたいで上下の補強柱における補強層内の軸方向筋を連続させることができる。
なお、上下の空間S4,S5は連通口25によって連通しているため、充填材は、一方の空間S4またはS5のいずれか一方から充填すれば足りる。
上記軸方向筋6は、あらかじめ形成されたコンクリートブロックからなる補強層に埋設されたものでもよいし、第1実施形態のように現場で柱用枠体3内に配置されたものでもよい。いずれにしても、梁下部分に対応する補強柱から連続する軸方向筋6を上記軸方向凹部26内でコンクリートブロックB3と一体化することができる。
この第4実施形態においても、交差部補強用のコンクリートブロックB3の強度を調整して、補強柱の強度を越えない範囲で梁を補強することは容易である。
上記コンクリートブロックB3も、同一の成形型を用いながら、コンクリートの種類、コンクリートに埋設する補強筋の太さや本数、カーボンファイバーなどの強化材を混合することなどで強度を調整することができる。
なお、既存柱1の梁下部分に設けられる補強層は、第1実施形態のように柱用枠体3で形成される空間に充填材を充填して構成してもよいし、第2実施形態のようにコンクリートブロック18で構成してもよい。
また、上記柱用枠体は、柱の周方向や軸方向に分割された分割鋼板で構成されてもよいし、例えば、特開2013−181332号公報にあるように、各分割鋼板の縦縁に沿った縦リブや、横縁に沿った横リブが形成された鋼板を用いてもよい。
さらに、枠体の素材は鋼板に限らず、強化樹脂や合板などを用いてもよい。
要するに、既存柱1に対して必要な補強強度が実現できるものであれば、この発明の補強層はどのような構成でも構わない。
そして、上記補強層を、既存柱1の特定の側面だけでなく、複数の側面や全周にわたって設けて補強柱を構成してもよい。
そして、補強された梁2の強度は、上記した様々な方法で交差部補強用のコンクリートブロックの強度を調整するだけでなく、現場で充填する充填材の種類によっても調整可能である。
さらに、交差部補強用のコンクリートブロックにおいて充填材を充填する空間を、既存柱1に対応する部分のみに限って形成し、そこに充填する充填材によって柱部分の強度を梁部分の強度に対して高くすることも可能である。
また、交差部補強用のコンクリートブロックや柱用コンクリートブロックの表面に、鋼板や帯状シートを設けることによって、コンクリート表面の崩壊も防止できる。
そして、既存柱1に対して交差する梁同士が直交する部分には、直交する梁間にわたる形状の交差部補強用のコンクリートブロックを設けるようにする。
1 既存柱
2 梁
3 柱用枠体
6 軸方向筋
10 アンカーボルト
11 充填材
12 補強層
16 (締結部材)貫通ボルト
18 (補強層)柱用コンクリートブロック
23 連結筋
B1〜B3 交差部補強用のコンクリートブロック
S1,S3,S4,S5 (交差部補強用のコンクリートブロック内の)空間
Claims (6)
- 梁と交差する既存柱の梁下部分であって、その全周もしくは一部に補強層が設けられた補強柱と、
上記既存柱と梁との交差部を覆い、上記既存柱と梁との間にわたって固定される、あらかじめ形成された交差部補強用のコンクリートブロックとを備えた建造物の補強構造であって、
建造物の階層ごとに上記補強柱が設けられ、これら補強柱の補強層には軸方向筋が埋設され、上記埋設された軸方向筋が、上記コンクリートブロック内で、直接もしくは間接的に連結された建造物の補強構造。 - 上記コンクリートブロックには、上記補強層に埋設された軸方向筋に直接もしくは間接的に連結される連結筋が設けられた請求項1に記載の建造物の補強構造。
- 上記コンクリートブロックには、上記補強柱の軸方向に貫通し、コンクリートやグラウト材等の充填材を充填する空間が形成された請求項1又は2に記載の建造物の補強構造。
- 上記コンクリートブロックには、既存柱との対向面あるいは既存柱及び梁との対向面側を解放し、コンクリートやグラウト材等の充填材を充填する空間が形成された請求項1〜3のいずれか1に記載の建造物の補強構造。
- 上記空間には、既存柱あるいは梁に打ち込んだアンカーボルトが突出した請求項4に記載の建造物の補強構造。
- 上記コンクリートブロックは、ボルト等の締結部材を介して既存柱及び梁に固定された請求項1〜5のいずれか1に記載の建造物の補強構造。
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