JP4066590B2 - スリーブナット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエンジンのインジェクションパイプの締結等に使用するスリーブナット及びこのスリーブナットを使用したインジェクションパイプ締結構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来技術のエンジンにおいては、図10に示すように、ヘッドカバー8内にインジェクター(燃料噴射弁)3を収める構造の場合には、インジェクター3に高圧燃料を送るためのインジェクションパイプ(燃料パイプ)2を、シリンダヘッド5の側面に開口した装着穴5aを貫通して、内部のインジェクター3に装着しているが、この取付けに、インジェクションパイプナットと呼ばれる特殊な長いスリーブナット1Aを使用することが多い。
【0003】
このスリーブナット1Aは、図7と図8に示すように、中空部11Aと、前端側のネジ部12Aと後端側の頭部13Aを有する筒形状体10Aで形成されている。取付けは、図9に示すように、この中空部11Aにインジェクションパイプ2を挿通し、インジェクションパイプ2の両端にスリーブ2a,2bを取り付けてから、図10〜図12に示すように、スリーブナット1Aをシリンダヘッド5の装着穴5aに挿入する。そして、スリーブ2aをインジェクター3のパイプ取付け部3aに当接しながら、スリーブナット1Aの前端の雌ネジ部12Aを、パイプ取付け部3aの雄ネジ部3asに螺合させることにより、インジェクションパイプ2の先端をパイプ取付け部3aに締結するように構成されている。
【0004】
また、シリンダヘッド5の装着穴5aとスリーブナット1Aの外周部との間にシール部材5bを介装して、動弁室7のオイルがエンジン外部に漏れるのを防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術のスリーブナット1Aを使用した場合には、取り付け又は取り外し時の図11と装着した時の図12に示すように、シリンダヘッド5の側面の外側に、スリーブナット1Aの長さL1分にインジェクションパイプ2の曲がり部2bの長さL2を加えた空間が必要となる。
【0006】
これは、中空部11Aにインジェクションパイプ2が挿通されているため、図11に示すように、取り付け又は取り外し時に、このインジェクションパイプ2の曲がり部2bが中空部11Aの後端に当接するので、スリーブナット1Aはこれ以上後退できず、そのため、曲がり部2bの長さL2を加えた空間が必要となるからである。
【0007】
従って、シリンダヘッド5の装着穴5aに、小さい隙間Sで近接してインレットマニホールド(吸気マニホールド)6が配置されているような場合には、インジェクションパイプ2が図10〜図12に示すように、インレットマニホールド6と干渉してしまうので、エンジンのレイアウトが不成立になってしまうという問題がある。
【0008】
また、逆に、インジェクションパイプ2の曲がり部2aをインレットマニホールド等の干渉物6を避けるために、装着穴5aに近つけて配置すると、スリーブナット1Aを装着穴5aに挿入するために、後側に引くと曲がり部2aとスリーブナット1Aの後端とが干渉するため、スリーブナット1Aを装着穴5aに挿入できないことになる。
【0009】
特に、現行のエンジンを改良して、インジェクター3のシリンダヘッド5における取付け部位が変更となるような場合には、スリーブナット1Aの長さL1も変更になるので、このスリーブナット1Aの長さL1が長くなると、スリーブナット1Aの後側に着脱用の十分なスペースSnの確保ができなくなり、この面からインジェクター3の取付け部位が制限され、エンジンの十分な改良ができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、その目的は、スリーブナットを使用してパイプを取り付ける場合に、スリーブナットの後端側にパイプの曲がり部を収容できる切り欠き部を設けて、パイプの脱着の際にスリーブナットを後退した時に、この切り欠き部にパイプの曲がり部を収容することにより、パイプの曲がり部の後退量を少なくし、この曲がり部の後方に配置されている干渉物を避けて脱着できるスリーブナットを提供することにある。
【0011】
そして、更に、この切り欠き部を有するスリーブナットを採用することにより、インジェクションパイプとスリーブナットが挿通する装着穴が形成されているシリンダヘッドの側面に、インレットマニホールドが近接して配設されているような内燃機関においても、容易に燃料供給装置からインジェクターに連結するインジェクションパイプを締結することができるインジェクションパイプ締結構造を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するためのスリーブナットは、中空部と、前端側のネジ部と後端側の頭部を有する筒形状体で形成され、前記中空部にインジェクションパイプを挿通し、前記ネジ部をパイプ取付け部に螺合させることにより、前記インジェクションパイプを前記パイプ取付け部に締結するスリーブナットにおいて、後端部に、前記インジェクションパイプの直径より幅広で且つ後端に連続する切り欠き部を設け、前記中空部に挿通したインジェクションパイプの曲がり部が後端から切り欠き部の前端まで移動可能に構成される。
【0013】
この構成のスリーブナットによれば、パイプの曲がり部と干渉するスリーブナットのの後端側の部位に切り欠き部を設けたことにより、パイプの脱着の際にスリーブナットを後退した時に、この切り欠き部にパイプの曲がり部が収容されるので、パイプの曲がり部の後退量が減少し、この曲がり部の後方に配置されている干渉物を避けることができる。
【0014】
つまり、スリーブナットに切り欠き部を設け、脱着時にパイプの曲がり部を切り欠き部に通すことにより、後部側に配置された他の部品との干渉を防止し、スリーブナット及びパイプの脱着を可能とするものである。
【0015】
また、インジェクションパイプ締結構造は、内燃機関の燃料供給装置からインジェクターに連結するインジェクションパイプを挿通し、かつ、シリンダヘッド側面に設けられた装着穴に、インレットマニホールドが近接して配設されているエンジンにおいて、前記インジェクションパイプを挿通した請求項1記載の前記スリーブナットを、前記装着穴に挿通し、前記インジェクターに螺合することによって、前記インジェクションパイプを前記インジェクターに締結するように構成される。
【0016】
この構成のインジェクションパイプ締結構造によれば、インジェクションパイプを装着穴に挿入しても、切り欠き部を有するスリーブナットを採用しているので、インジェクションパイプの曲がり部の後退量が少なくなり、装着穴に近接して配置されたインレットマニホールドと干渉することなく、インジェクションパイプを配設することができる。
【0017】
なお、スリーブナットの前端側に設けるネジ部は雌ネジでも雄ネジでもよく、これに対応してパイプ取付け部のネジ部の雄ネジや雌ネジに対応して形成されることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明の実施の形態のスリーブナットは、図1及び図2に示すように、中空部11と、前端側の内周側に形成されたネジ部(雌ネジ)12と後端側の工具と係合する頭部13を有する筒形状体10で形成される。
【0020】
この中空部11にインジェクションパイプ(燃料パイプ)2を挿通し、頭部13をスパナ等の工具で保持して回転することにより、ネジ部12を、図4〜図6に示すように、インジェクター(燃料噴射弁)3のパイプ取付け部3aのネジ部(雄ネジ)3asに螺合させることにより、インジェクションパイプ2をパイプ取付け部3aに締結する。
【0021】
そして、このスリーブナット1の頭部13がある後端側にインジェクションパイプ2の曲がり部2bを収めることが可能な切り欠き部14を設ける。この切り欠き部14は、インジェクションパイプ2の直径より幅広で且つ後端に連続する切り欠きとし、中空部11に挿通したインジェクションパイプ2の曲がり部2bが、スリーブナット1の後端から切り欠き部14の前端まで移動できるように形成する。
【0022】
また、この切り欠き部14は、スリーブナット1が挿通する装着穴5aのシール部材5bと当接する部分に形成されるとシールが難しくなるので、このシール部材5bと当接する部分を避けて設ける。
【0023】
次に、このスリーブナット1を使用して、内燃機関の燃料供給装置4からインジェクター3に連結するインジェクションパイプ2を挿通する場合について説明する。
【0024】
先ず、図3に示すように、このスリーブナット1にインジェクションパイプ2を挿通し、インジェクター3側のスリーブ2aと、燃料供給装置である燃料ポンプ4側のスリーブ2bを取り付ける。
【0025】
このスリーブナット1を、図4〜図6に示すように、インレットマニホールド(吸気マニホールド)6が小さい隙間Sで近接して配置されているシリンダヘッド5の装着穴5aに挿通して、インジェクションパイプ2のスリーブ2aをインジェクター3のパイプ取付け部3aに当接しながら、前端のネジ部12をインジェクター3の取付部3aのネジ部3asに螺合して、インジェクションパイプ2をインジェクター3に締結する。
【0026】
この締結完了時には、スリーブナット1の外周面と装着穴5aに取り付けられたシール部材5bとが密着してシールを形成し、動弁室7から油が漏れるのを防止する。
【0027】
また、インジェクションパイプ2の曲がり部2bは、図5に示すように装着穴5aに挿入開始時と離脱終了間際においては、切り欠き部14に収まり、また、ネジ部12を取付部3aのネジ部3asに螺合し始めから、図6に示す螺合完了時までは、切り欠き部14から抜けてスリーブナット1の後端より外側に位置するように形成される。
【0028】
これにより、頭部13をスパナ等で回転してネジ部12,3as同士の螺合を行う時に、曲がり部2bは切り欠き部14から抜けているので、スリーブナット1に係合しない。そのため、インジェクションパイプ2の曲がり部2bがスリーブナット1の回転を妨げることはない。
【0029】
以上の構成のスリーブナット1によれば、インジェクションパイプ2の脱着の際にスリーブナット1を後退した時に、この切り欠き部14にインジェクションパイプ2の曲がり部2bを収容することができるので、曲がり部2bの後退量を少なくすることができる。
【0030】
これにより、インジェクションパイプ2の曲がり部2bの後方に配置されているインテークマニホールド6等の干渉物を避けることができる。
【0031】
また、以上の構成のインジェクションパイプ締結構造によれば、インジェクションパイプ2を装着穴5aに挿通する際に、切り欠き部14を有するスリーブナット1を採用しているので、インジェクションパイプ2の曲がり部2bの後退量が少なくなり、装着穴5aに近接して配置されたインレットマニホールド6と干渉することなく、インジェクションパイプ2を配設することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るスリーブナットによれば、パイプの脱着の際にスリーブナットを後退した時に、スリーブナットの後端側に形成した切り欠き部にパイプの曲がり部を収容することができるので、パイプの曲がり部の後退量に必要なスペースを小さくすることができる。
【0033】
これにより、パイプの曲がり部の後方に近接して配置されているインテークマニホールド等の干渉物を避けることができるので、狭い部分でもパイプを比較的自由に配設できる。
【0034】
つまり、従来技術のスリーブナットでは、他部品への干渉のためにスリーブナット及びパイプを脱着することができないスペースにおいても、本発明に係るスルーブナットでは脱着が可能となる。
【0035】
更に、取付けスペースが限られてはいるが、従来技術のスリーブナットを使用することができる場合であっても、本発明のスリーブナットを使用することにより、パイプの曲がり部の曲率を大きく形成することができるので、配管の内部流通抵抗を小さくでき、又、強度的な面からも有利な構造にすることができる。
【0036】
また、本発明に係るインジェクションパイプ締結構造によれば、インジェクションパイプを装着穴に挿通する際に、切り欠き部を有するスリーブナットを採用しているので、インジェクションパイプの曲がり部の後退量が少なくなり、装着穴に近接して配置されたインレットマニホールドと干渉することなく、インジェクションパイプを配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスリーブナットを示す斜視図である。
【図2】図1のスリーブナットを示す図で、(a)は正面図で、(b)は(a)のY−Y断面図を含む側面図で、(c)は(a)のZ−Z断面図を含む平面図である。
【図3】図1のスリーブナットにインジェクションパイプを挿通した状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係るインジェクションパイプ締結構造を示す模式的な側面図である。
【図5】図4のインジェクションパイプ締結構造を示す図で、装着開始及び取り外し完了間際を示す側断面図である。
【図6】図4のインジェクションパイプ締結構造を示す図で、装着完了時の状態を示す側断面図である。
【図7】従来技術のスリーブナットを示す斜視図である。
【図8】図7のスリーブナットを示す図で、(a)は正面図で、(b)は(a)のY−Y断面図を含む側面図で、(c)は(a)のZ−Z断面図を含む平面図である。
【図9】図7のスリーブナットにインジェクションパイプを挿通した状態を示す平面図である。
【図10】従来技術のインジェクションパイプ締結構造を示す模式的な側面図である。
【図11】図10のインジェクションパイプ締結構造を示す図で、装着開始及び取り外し完了間際を示す側断面図である。
【図12】図10のインジェクションパイプ締結構造を示す図で、装着完了時の状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 スリーブナット
2 パイプ(インジェクションパイプ)
2b 曲がり部
3a パイプ取付け部
4 燃料ポンプ(燃料供給装置)
3 インジェクター(燃料噴射弁)
5 シリンダヘッド
5a 装着穴
6 インレットマニホールド
10 筒形状体
11 中空部
12 ネジ部
13 頭部
14 切り欠き部

Claims (2)

  1. 中空部と、前端側のネジ部と後端側の頭部を有する筒形状体で形成され、前記中空部にインジェクションパイプを挿通し、前記ネジ部をパイプ取付け部に螺合させることにより、前記インジェクションパイプを前記パイプ取付け部に締結するスリーブナットにおいて、
    後端部に、前記インジェクションパイプの直径より幅広で且つ後端に連続する切り欠き部を設け、前記中空部に挿通したインジェクションパイプの曲がり部が後端から切り欠き部の前端まで移動可能に構成したことを特徴とするスリーブナット。
  2. 内燃機関の燃料供給装置からインジェクターに連結するインジェクションパイプを挿通し、かつ、シリンダヘッド側面に設けられた装着穴に、インレットマニホールドが近接して配設されているエンジンにおいて、
    前記インジェクションパイプを挿通した請求項1記載の前記スリーブナットを、前記装着穴に挿通し、前記インジェクターに螺合することによって、前記インジェクションパイプを前記インジェクターに締結することを特徴とするインジェクションパイプ締結構造。
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