JP4063900B2 - 高屈折率プラスチックレンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、高屈折率の含硫黄プラスチックレンズに関するものである。更に詳しくは、注型重合して得られた硫黄含有のレンズ用成型体において、該成型体の切削研磨加工時に、硫黄特有の異臭、悪臭を発生しないプラスチックレンズに関するものである。本願発明の含硫黄プラスチックレンズは、眼鏡、光学素材等に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れにくく、染色が可能なため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。しかし、メガネレンズ用として光学用プラスチックを考えると、その屈折率をいかに高めるかが重要な課題であった。すなわち、無機レンズに比ベ屈折率が小さい光学用プラスチックを用いてメガネレンズを製造すると、ガラスレンズと同等の光学物性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚、及び曲率を大きくする必要がある。従って、メガネレンズが全体的に肉厚になり、極めてファッション性を重視する近年の市場動向に逆行することが避けられない。このため、屈折率1.64を越えるプラスチックメガネレンズが普及した現在ですら、さらに屈折率の高いレンズ用樹脂の一刻も早い上市がメガネレンズメーカーからは強く望まれ続けている。
【0003】
樹脂の屈折率を高めるためには、ポリマー分子への重金属原子、ハロゲン原子、硫黄原子、または芳香族化合物の導入などの方法が知られている。なかでも、硫黄原子を導入する方法は、樹脂の光学性能の重要な指標であるアッベ数を高く保ち、耐候性に優れ、廃棄物の環境への影響も少ない光学用樹脂を実現できるため、最も精力的に研究が行われてきた。その結果、例えば、ポリイソシアナートとポリチオールよりなる含硫ウレタン系樹脂(特開昭60−199016、特開昭62−267316、特開昭63−46213 )、ポリチオ(メタ)アクリレート樹脂(特開昭64−26613 、特開昭64−31759 、特開昭63−188660)あるいは含硫ポリ(メタ)アクリレート樹脂(特開昭62−283109、特開昭63−268707)等が提案されている。
なかでも、ポリイソシアナートとポリチオールよりなる含硫ウレタン系樹脂は、屈折率1.64を越える超高屈折率眼鏡用レンズを提供できること、耐衝撃性に優れた安全な眼鏡を提供できること、等の理由から、市場に広く普及している。
【0004】
ところで、これらの樹脂において、屈折率1.64以上で、かつアッベ数が30以上という優れた物性を確保するためには、硫黄の含量がその分子量の半分以上を占めるような、ポリチオール化合物を用いなくてはならない。このような高含硫黄量のポリチオール化合物を原料モノマーとして、高屈折率を実現したメガネレンズは、上市から5年以上を経過して、広く普及してきたが、コバズリ加工における臭気、悪臭発生が問題になっている。すなわち、眼鏡が消費者に渡る前に、眼鏡フレームにレンズの形を合わせるためのコバズリ加工が必要とされるが、その際、レンズが高温に曝されるため、レンズ材料の一部が熱的に分解し、硫黄特有の異臭、悪臭を発生することがある。この加工は眼鏡小売店で行われることが多いため、顧客に不快な印象を与えることになる。また、コバズリ加工時の異臭、悪臭を除去するために換気または消臭設備を導入すれば、小売店に経済的な負担を強いることになる。
このような事情から、屈折率1.64以上で、かつアッベ数が30以上である優れた物性を確保した高屈折率メガネレンズが広く普及した現在、現在の最高級グレード(屈折率1.64以上、アッベ数30以上のクラス)を保ちつつ、しかも加工時に臭気を発生しない超高屈折率メガネレンズの創出が急務であった。
【0005】
プラスチックレンズについては、以前から、切削、研磨時等に発生する異臭、悪臭を減少または消臭する加工法が望まれ、すでにいくつかの対策も提案されている。例えば、ラジカル重合タイプで、屈折率が1.50以上の架橋構造を有する高屈折率プラスチックレンズの製造において、香気性付与化合物を0.05%〜1%含有した樹脂を用いることにより、レンズの切削、研磨時の異臭、悪臭を緩和する技術が特公平2-56641 に開示されている。しかしながら、含硫黄プラスチックレンズについて、ここに開示されている香気牲付与化合物を用いて検討を行った結果では、硫黄特有の異臭、悪臭を減少または消臭させるには不十分であることが既に知られている(特開平5-273401)。
【0006】
また、含硫黄プラスチックレンズの加工時に界面活性剤を添加して臭気を低減する方法(特開平4-256558)、含硫黄プラスチックレンズの加工時に酸化剤を添加した水を使用して臭気を低減する方法(特開平5-228816)、含硫黄プラスチックレンズの加工時に金属酸化物添着炭を使用して臭気を低減する方法(特開平5-253839)などが提案されている。確かに、これらの方法で、刺激的な臭気を幾分かは低減はできるものの、狭い店舗内で加工した場合に周囲に全く不快感を与えない程度にまで硫黄臭を除去するためには、なお、簡易的な換気設備との併用が必要であった。
さらに、含硫黄プラスチックレンズの製造時に、モノマー組成物中に香料を添加して臭気を低減する方法(特開平5-273401、特開平5-297201)なども提案されている。しかし、香料には個人的な好みの問題がつきまとい、万能の方法とは言い難い。すなわち、折角硫黄臭を低減できても、そのマスクに使用した香料の香りが万一顧客の好みに合わなければ効果がないも同然の結果になってしまうからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、含硫黄プラスチックレンズについて、その切削、研磨等の加工時に、硫黄特有の異臭、悪臭を発生しない高屈折率の含硫黄プラスチックレンズを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討を行った。現在市販されている高屈折率(屈折率1.64以上)グレードの含硫黄プラスチックレンズについて、メガネレンズ加工用のエッジャーでコバズリ加工したときに発生するガスを採取し、分析した結果、低分子量のエチル基など単純なアルキル基を有するメルカプタン、スルフィド誘導体などが極微量検出され、含硫プラスチックレンズの加工時に発生する異臭、悪臭は、これらに由来するものと判断した。これらは、メガネレンズ樹脂を形成する分子構造のうち、高い硫黄含有率のポリチオールモノマー由来の単純なアルキリデンジチオ構造が加工時の高温で一部切断されて生じたものと考えられる。そこで、ポリチオールの分子構造を熱分解によってこれらのエチル基など単純なアルキル基を有するメルカプタン、スルフィド誘導体を生じないように変更し、同時に樹脂の耐熱性を向上させ、根本的に熱加工時に分解を受け難くする分子設計をポリチオール誘導体に取り入れることを目標に鋭意検討を続けた結果、メルカプトメチルベンゼン型のポリチオール誘導体、およびメルカプトカルボン酸エステル型のポリチオール誘導体のみを含硫モノマーとして得られる樹脂が、加工時に根本的に臭気を発生しないことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は、▲1▼ポリチオールとポリイソシアナートを重合して得られる含硫ウレタン樹脂からなるプラスチックレンズにおいて、ポリチオールとして下記一般式(1)(化2)で表される化合物および下記一般式(2)(化2)で表される化合物を用い、ポリイソシアナートとしてキシリレンジイソシアナートを含むポリイソシアナートを用いることを特徴とする屈折率が1.64以上で、かつアッベ数が30以上である高屈折率プラスチックレンズ、
▲2▼ポリチオールが、一般式(1)で表される化合物を40〜80重量%、一般式(2)で表される化合物を20重量%〜60重量%含むものである▲1▼記載の高屈折率プラスチックレンズ、
▲3▼ポリイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートを50重量%以上含むものである▲2▼記載の高屈折率プラスチックレンズ、
▲4▼一般式(1)で表される化合物が1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼンである▲2▼または▲3▼記載の高屈折率プラスチックレンズ、
▲5▼一般式(1)で表される化合物が1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼンであり、一般式(2)で表される化合物がペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)および/またはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である▲3▼記載の高屈折率プラスチックレンズ、に関するものである。
【0010】
【化2】
(上式中、Rは炭素数2〜9の非環式炭化水素の多価基を表し、lは1〜3、mは2〜4、nは2〜4の整数を表す)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のプラスチックレンズは、ポリチオールとして前記一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物を用い、ポリイソシアナートとしてキシリレンジイソシアナートを含むポリイソシアナートを用いることによって得られる、屈折率が1.64以上で、かつアッベ数が30以上である高屈折率プラスチックレンズであり、しかも、レンズの切削、研磨等の加工時に硫黄独特の悪臭や異臭を発生することがないプラスチックレンズである。
【0012】
本発明に用いられる一般式(1)で表されるポリチオールとしては、o−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、p−キシリレンジチオール、1,2,4−トリスメルカプトメチルベンゼン、1,3,5−トリスメルカプトメチルベンゼン、1,2,3−トリスメルカプトメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラキスメルカプトメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラキスメルカプトメチルベンゼン等が挙げられる。
屈折率1.64以上を実現し、樹脂の耐熱性を向上させ、しかも、モノマーの取り扱いが容易なように室温で液体状態を保つためには、メルカプトメチル基はベンゼン環あたり3つが望ましい。したがって、本発明に用いられる一般式(1)で表されるポリチオールとしては、トリスメルカプトメチルベンゼン誘導体がより好ましく、重合して得られる樹脂の耐熱性の観点からは、1,2,4−トリスメルカプトメチルベンゼンが特に好ましい。
【0013】
これらのポリチオールのうち、o−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、p−キシリレンジチオールは試薬として市販されており、その他の化合物についても、公知の方法により製造できる。また、それらの合成に必要な原料も入手が容易である。例えば、1,2,4,5−テトラキスメルカプトメチルベンゼンは、市販されているテトラキスブロモメチルベンゼンをチオ尿素と反応させた後、アルカリ水溶液中で加水分解することによって得ることができる。
対応するハロメチルベンゼン誘導体が入手できないときは、メチルベンゼン誘導体を臭素やN−ブロムスクシンイミド(NBS)により臭素化するか、ヒドロキシメチルベンゼン誘導体をハロゲン化リンなどでハロゲン化するとよい。
【0014】
一般式(2)で表される化合物としては、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2ーメルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等を例示することが出来る。
得られる樹脂の屈折率と耐熱性、入手の容易さや価格を考慮すればペンタエリスリトールテトラキス(2ーメルカプトアセテート)またはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を用いるのが好ましい。
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)は、一般に市販されているもので、ペンタエリスリトールトリス(2ーメルカプトアセテート)やペンタエリスリトールビス(2ーメルカプトアセテート)等を不純物として含有するものでもよい。ペンタエリスリトールテトラキス(2ーメルカプトアセテート)についても同様である。
【0015】
本発明では、一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物を併用することに特徴があり、この両方の化合物を併用することによりアッベ数を向上させ、樹脂の光学性能を所望の値に調整できる。また、耐熱性を適度に保ちつつも、染色性を向上できる。一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物の使用割合は、好ましくは、40〜80重量%:60〜20重量%である。
【0016】
本発明で用いるポリイソシアナートは、o−キシリレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート、テトラメチル−p−キシリレンジイソシアナート、テトラメチル−m−キシリレンジイソシアナート等のキシリレンジイソシアネートを含有するポリイソシアナートであり、好ましくは、キシリレンジイソシアネートを50重量%以上含有するポリイソシアナートである。
キシリレンジイソシアネートと共に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、及びこれらの塩素化物、臭素化物、メチル化物またはエチル化物等、イソホロンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して、キシリレンジイソシアネートと共に用いることもできる。
本発明で用いるポリイソシアナートは、屈折率や入手の容易さなどを考慮すると、m−キシリレンジイソシアナート、あるいはm−キシリレンジイソシアナートとノルボルネンジイソシアナートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアナートの混合物がより好ましい。
【0017】
本願発明の含硫黄ポリウレタンレンズは、通常、注型重合により得られる。具体的には、モノマー混合物と本願発明に用いる前述の化合物とをよく混合し、この混合液を、必要に応じ、適当な方法で脱泡を行った後、モールド中に注入し、加熱して重合させる。この際、重合後の離型を容易にするため、モールドに公知の離型処理を施しても差し支えない。また、所望の反応速度に調節するために、公知の触媒を適宜添加してもよい。
重合温度、重合時間は、使用するモノマーの組合せおよび添加する化合物の種類等により適宜決められ、例えば、20〜200 ℃で 0.5〜100 時間を要して重合することができる。
また、必要に応じて、公知の成型法におけると同様に、内部離型剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質を添加してもよい。また、本発明の含硫黄プラスチックレンズは、必要に応じて、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇牲付与あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、網光処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことが出来る。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本願発明を更に辞しく説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。尚、実施例中に示す部は、重量部を示す。
得られたレンズの性能試験は以下の試験法により評価した。
・屈折率、アッベ数:プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・外 観:目視により観察した。
・耐熱性:サーモメカニカルアナライザーTAS300(理学電機製)を用い、試験片に5g加重し、2.5 ℃/分で加熱して、その熱変形開始温度を測定した。
・染色性:三井東圧染料(株)製のプラスチックレンズ用分散染料であるML−Yellow、ML−Red、ML−Blue、を各々5g/Lの水溶液に調製した染色槽を使って、95℃で5分間浸漬し9mmの厚さの平板を染色した。染色後、スペクトロフォトメーター、U−2000(日立製作所製)を用いて400〜700nmの透過率を測定した。
総合評価として染色性が良好なものを(○)、染色性に劣るか、全く染色できないものを(×)とした。
・吸水率:JIS−K−7209に基づいて、試験片を作製し、室温で、水中に48時間浸漬し、その後の重量変化から吸水率を測定した。
・表面硬度:JIS−K−5401の塗膜用鉛筆引っ掻き試験機を使用して、鉛筆硬度を測定した。
【0019】
実施例1
m−キシリレンジイソシアナート23.7重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)9.6重量部、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン11.7重量部、およびジメチルチンジクロライド0.01重量%(混合物の全量に対して、以下同じ)を良く混合し、十分に脱泡した後、この混合物を離型処理したガラスモールド中に注入した。30℃から120 ℃まで22時間かけて徐々に昇温させながら重合を行った。
重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。得られたレンズは、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率1.64、アッベ数32、熱変形開始温度127℃であり、また、何ら臭気は感じられなかった。
染色後の透過率は、ML−Yellowで33%、ML−Redで37%、ML−Blueで37%であり、染色性の総合評価は(○)であった。
このレンズを、眼鏡レンズ加工用のエッジャーで切削、研磨したところ、硫黄特有の刺激的な悪臭は殆ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
【0020】
実施例2
m−キシリレンジイソシアナート28.1重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)6.0重量部、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン18重量部、およびジメチルチンジクロライド0.01重量%を良く混合し、十分に脱泡した後、この混合物を、離型処理したガラスモールド中に注入した。30℃から120 ℃まで22時間かけて徐々に昇温させながら重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。得られたレンズは、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率1.65、アッベ数30、熱変形開始温度133℃であり、また、何ら臭気は感じられなかった。
染色後の透過率は、ML−Yellowで38%、ML−Redで45%、ML−Blueで49%であり、染色性の総合評価は(○)であった。
このレンズを、眼鏡レンズ加工用のエッジャーで切削、研磨したところ、硫黄特有の刺激的な悪臭は殆ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
【0021】
実施例3
m−キシリレンジイソシアナート21.1重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−チオプロピオナート)6.6重量部、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン12.3重量部、およびジメチルチンジクロライド0.01重量%を良く混合し、十分に脱泡した後、この混合物を、離型処理したガラスモールド中に注入した。30℃から120 ℃まで22時間かけて徐々に昇温させながら重合を行った。
重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。得られたレンズは、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率1.64、アッベ数32、熱変形開始温度128℃であり、また、何ら臭気は感じられなかった。
染色後の透過率は、ML−Yellowで35%、ML−Redで39%、ML−Blueで42%であり、染色性の総合評価は(○)であった。
このレンズを、眼鏡レンズ加工用のエッジャーで切削、研磨したところ、硫黄特有の刺激的な悪臭は殆ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
【0022】
比較例1
m−キシリレンジイソシアナート39.1部、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン30.0部を混合して均一液とし、十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。
40℃から120 ℃まで徐々に昇温しながら、20時間かけて加熱硬化させた。重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。
得られた樹脂は、無色透明で、屈折率1.67、アッベ数28であり、熱変形開始温度は132 ℃あった。
染色後の透過率は、ML−Yellowで61%、ML−Redで77%、ML−Blueで78%であり、染色性の総合評価は(×)であった。
このレンズを、眼鏡レンズ加工用のエッジャーで切削、研磨したところ、硫黄特有の刺激的な悪臭は殆ど発生せず、作業者が不快感を感じることはなかった。
1,2,4−トリスメルカプトメチルベンゼンとm−キシリレンジイソシアナートのみを1:1の官能基当量比で重合して得たこの樹脂は、アッベ数が28と低くかった。このアッベ数はメガネレンズの色収差を示す指標の一つとしてカタログ等に記載されているが、アッベ数が20台すなわち30未満のレンズと、30台すなわち30以上のレンズとでは顧客に与える印象上、商品的価値は全く別物といって良いほどの大きな差を有するもので、いくら屈折率が1.64を越える超高屈折率レンズ用樹脂といえど、アッベ数30以上を確保できなければ最高級グレードのメガネレンズとは認められない。
また、このレンズは熱変形開始温度が132℃と高かった。熱変形開始温度と染色性は一般に相反するもので、この温度が高いと、染色性が劣ることはよく知られている。したがって、このレンズは、高度な染色技術抜きには、顧客の好みに応じて染色できず、好ましいものではない。
【0023】
比較例2
m−キシリレンジイソシアナート65.4部、1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン60.1部、ジブチルチンジラウレート0.1重量%を混合して均一液とし、十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。
40℃から120 ℃まで徐々に昇温しながら、20時間かけて加熱硬化させた。重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。
得られた樹脂は、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率1.66、アッベ数33であり、熱変形開始温度は84℃であった。
染色後の透過率は、ML−Yellowで24%、ML−Redで31%、ML−Blueで40%であり、染色性の総合評価は(○)であった。
このレンズを、眼鏡レンズ加工用のエッジャーで切削、研磨したところ、硫黄特有の刺激的な悪臭をはっきりと感じた。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、一般式(1)で表される化合物および一般式(2)で表される化合物を併用することによって、得られる含硫ウレタン樹脂の高屈折率およびアッベ数を好ましい範囲に維持しつつ、染色性を向上させ、さらに、切削、研磨等の加工時に臭気を発しない極めて優れた性能を有するプラスチックレンズを提供するものである。
Claims (2)
- 一般式(1)で表される化合物が1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼンであり、一般式(2)で表される化合物がペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)および/またはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である請求項1記載の高屈折率プラスチックレンズ。
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