JP4062819B2 - 水素吸蔵合金およびその製造方法 - Google Patents

水素吸蔵合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素を吸蔵・放出する水素吸蔵合金およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵合金は大量の水素を可逆的に吸蔵・放出できるため、エネルギー媒体としての水素の貯蔵、輸送用材料として利用が期待されている。その一つとして自動車など車載用燃料電池システム、家庭用など民生用燃料電池システムの燃料である水素の貯蔵用材料としての利用がある。また、反応熱を利用したヒートポンプ等の熱利用システムの材料などとして幅広い用途への利用が期待されている。
【0003】
水素吸蔵合金には、LaNi等のAB型合金、ZrMn等のAB型ラーベス合金、TiFe等のAB型合金、MgNi等のAB型合金、Ti−V等の固溶体型合金などが知られている。
【0004】
Ti−V等のBCC固溶体型合金は、2水素化物まで水素を吸蔵する。常温、常圧付近で放出できる水素は、吸蔵できる水素の半分の1水素化物までである。それでも1水素化物までしか水素を吸蔵できない他のAB型合金等に比べ大量の水素を可逆的に吸蔵・放出できることから、水素吸放出量が大きい水素吸蔵合金として実用化が望まれている。
【0005】
水素吸蔵合金に求められる特性は、利用できる水素吸放出量が大きいこと、活性化が容易であること、プラトー領域の平坦性が良好であることなどが挙げられる。
【0006】
Ti−V合金は、活性化に高温、高水素圧を必要とすることや、Ti濃度分布により、プラトー領域の平坦性に乏しいなどの欠点を持つ。また、実用的にはさらに大きな水素吸放出量が必要とされている。活性化条件を緩和する方法としてCr、Mn等のVより5%以上原子半径の小さな元素の添加が有効であるとされている。プラトー領域の平坦化のためには高温での熱処理によりTi濃度分布を平坦にする均質化が有効であるとされている。
【0007】
従来技術1として、特開平10−110225号公報には、V−Ti−Cr三元系合金BCC相の中にスピノーダル分解により形成した微細構造を有し、この微細構造の制御により活性化温度を低下させ、水素吸放出量を増大させた水素吸蔵合金とその製造方法が開示されている。
【0008】
また、従来技術2として、特開平7−252560号公報には、一般式Ti100−x−y−zCrで表され、AがV、Nb、Mo、Ta、Wの一種以上、BがZr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの二種以上からなる、体心立方構造を有する5元素以上からなり、0<z<20の範囲でのBの元素の添加によりプラトー領域の平坦性が改善し、平衡解離圧特性の制御ができる水素吸蔵合金が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術1は、プラトー領域の平坦性に劣り、実用的な圧力範囲1.0〜0.1MPaでの水素放出量が2.0wt%程度と低い問題点がある。
【0010】
プラトー領域の平坦性を改善するために均質化処理が考えられるが、V系合金は非常に酸化されやすいので、この均質化処理に高真空が必要である問題点がある。
【0011】
また従来技術2は、体心立方晶単相とするために1200℃から1400℃の熱処理を施した後、直ちに水冷処理により急冷する必要があり、製造工程が複雑になる問題点がある。
【0012】
本発明は上記課題を解決したもので、活性化が容易で、大きな水素吸放出量と良好なプラトー領域の平坦性を有し、急冷処理を必要とせず、均質化処理に高真空を必要としない低コストの水素吸蔵合金およびその製造方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項1において講じた技術的手段(以下、第1の技術的手段と称する。)は、一般式がV100−x−y−zTiCrMnで表され、5≦x≦15、5≦y≦25、0.5≦z<5の範囲にあることを特徴とする水素吸蔵合金である。
【0014】
上記第1の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0015】
すなわち、Mnを添加することにより水素との反応性が向上するので、活性化を容易にでき、水素吸放出量を大きくできる。また結晶相を単相にしなくてもよいので、急冷処理を必要とせず低コストな水素吸蔵合金ができる。さらにMnの添加により酸化しやすさが軽減できるので、均質化処理に高真空を必要とせずにプラトー領域の平坦性が良好な水素吸蔵合金ができる。均質化処理に高真空を必要としないため、工程や設備が簡単になるので低コストな水素吸蔵合金ができる。
【0016】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項2において講じた技術的手段(以下、第2の技術的手段と称する。)は、前記一般式におけるx、y、zの合計が、x+y+z≦20の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金である。
【0017】
上記第2の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0018】
すなわち、上記の組成範囲にあることにより水素吸放出量を大きくできる。
【0019】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項3において講じた技術的手段(以下、第3の技術的手段と称する。)は、請求項1、2のいずれかに記載の水素吸蔵合金の組成となる原料を溶解、固化してインゴットを製造し、該インゴットを600〜1400℃で1〜100時間保持する均質化処理を施すことを特徴とした水素吸蔵合金の製造方法である。
【0020】
上記第3の技術的手段による効果は、以下のようである。
【0021】
すなわち、上記の均質化処理を施すことによりTi濃度分布が均一化できるので、プラトー領域の平坦性が良好な水素吸蔵合金ができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者は、Vより%原子半径が5%以上小さい元素であるMnを添加し、組成と諸特性の関係を詳細に検討した結果、特定範囲の組成において、活性化が容易になると同時にプラトー領域の平坦性や水素吸放出量においても顕著な効果を確認し、本発明を完成させたものである。また、本発明者は、研究の過程で、この組成の水素吸蔵合金の場合、熱処理によりTi濃度分布を均一化する均質化処理に高真空を必要としないことを見いだした。
【0023】
本発明の水素吸蔵合金は、一般式がV100−x−y−zTiCrMnで表され、5≦x≦15、5≦y≦25、0.5≦z<5の範囲にあることを特徴とする。
【0024】
Ti及びCr濃度により水素の解離圧の調整が可能である。Ti濃度が増加すると解離圧が低下し、逆に低下すると解離圧が上昇する。Ti濃度が5原子%未満の範囲では、水素との反応速度が遅い、すなわち、水素との反応性に劣り、水素吸蔵量が低下する。また、この範囲では使用温度を低温とした場合でも解離圧が実用範囲より高く、解離圧を下げるためにはCr濃度をさらに下げる必要がある。ところが、後述するようにCr濃度が5原子%を下回ると、初期活性化ならびに再活性化特性が極端に低下することとなり、実用には適さない。
【0025】
Ti濃度の増加にともないプラトー領域の傾斜の原因であるTi濃度分布が助長されるためプラトー領域の平坦性は低下する。x=15を超える場合はプラトー領域の平坦性に劣り、実用化できるものではない。
【0026】
CrもTi同様に濃度による水素の解離圧の調整が可能である。Cr濃度が増加すると解離圧が上昇し、Cr濃度が低下すると解離圧が低下する。前述のように活性化を容易にすることも、Crを添加する理由である。Cr濃度が5%未満の場合、活性化に高温が必要になり、実用には適さない。解離圧を実用範囲に調整する場合、Ti濃度の上限からCr濃度の上限は25原子%であり、これ以上では解離圧が高くなりすぎるため実用には適さない。
【0027】
以上のように、x、yは請求範囲おいて、合金が使用される温度、圧力範囲に合わせ適宜決定される。
【0028】
Mnはプラトー領域の平坦性の向上、水素吸放出量の増加、および活性化を容易にするため添加する。その最適な範囲は0.5≦z<5である。Mn濃度が0.5原子%未満では効果がみられず、5原子%以上では平坦性、放出量ともに低下する。
【0029】
活性化を容易にするMnを添加することで、水素との反応性が向上し、水素吸蔵量が増加したと考えられる。また、プラトー領域が平坦化されることから、プラトー領域の低圧部において放出される水素がより不安定になることで、一定の圧力範囲で放出される水素量が増加したと考えられる。
【0030】
本発明の水素吸蔵合金において、V−richな組成における水素吸蔵量および水素放出量が若干増加する傾向があり、活性化特性の低下や水素解離圧調整範囲が狭くなる欠点があるものの、水素吸放出量の点からはx+y+z≦20の範囲が最適である。
【0031】
V−Ti−Cr系合金は熱処理による均質化処理によりプラトー領域の平坦性を向上することができる。熱処理温度は600℃以下ではプラトー領域の平坦化の効果がみられず、1400℃以上ではMnの蒸発が激しく、目標組成からの狂いが大きくなるので600〜1400℃の範囲にするのが好ましい。
【0032】
均質化処理の保持時間については所望のプラトー領域の平坦性が得られるように適宜選択されるが、工業的な応用を考えた場合、1〜100時間が好ましい。
【0033】
本発明の水素吸蔵合金は結晶相を単相にする必要がないので、均質化処理の冷却速度は徐冷で十分である。高温の水素吸蔵合金を急冷するには特別の装置と工程が必要であるが、本発明の水素吸蔵合金ではその必要がないので、製造が容易になり低コスト化される。もちろん、均質化の観点から急冷の方が好ましいので、急冷してもかまわない。
【0034】
以下、実施例を示し、本発明の特徴とするところを明確にする。
【0035】
(実施例1)
水素吸蔵合金の組成が原子%でV70−zTi10Cr20Mn、z=1.05になるように市販のV、Ti、Cr、Mnを秤量し、アーク溶解法により溶解し、10gのインゴットを得た。このインゴットをステンレス製乳鉢等を用いて5〜10mmの粗粉砕した。この粗粉砕物を反応容器に入れ、ロータリーポンプによる真空排気を行いながら400℃で30分加熱した。その後、3MPaの水素ガスを反応容器に導入後5分間保持し、室温まで放冷し水素化し初期活性化処理した。
【0036】
水素化した粗粉砕物は、反応容器内の水素圧を0.5MPaまで排気した後、空気中に取り出し、数100μm程度の粒径まで乳鉢を用い粉砕した。
【0037】
製造された水素吸蔵合金の水素吸蔵放出特性は、ジーベルツ装置を用いて、JIS−H−7201「水素吸蔵合金の圧力-組成等温線の測定方法」により評価した。
【0038】
粉末試料は粉砕工程ですでに水素化されているが、空気中での粉砕中に酸化膜の生成により水素に対する活性は失われ、真空排気中で試料を加熱する再活性化が必要であり、この加熱温度から活性化特性を評価した。真空排気中で試料を加熱することにより、水素吸蔵合金内に吸蔵されている水素が放出される。この水素が表面の酸化膜を還元するため初期活性化よりも低温で再活性化が可能になると考えられる。この水素が放出される温度を活性化温度とした。
【0039】
(比較例1)
水素吸蔵合金の組成が原子%でV70−zTi10Cr20Mn、z=0になるように市販のV、Ti、Cr、Mnを秤量し原料とした。すなわち、Mnを含有しない組成である。この原料を用いて、実施例1と同じ方法で水素吸蔵合金を製造した。その評価も実施例1と同じ方法で行った。
【0040】
(比較例2)
水素吸蔵合金の組成が原子%でV70−zTi10Cr20Mn、z=5.00になるように市販のV、Ti、Cr、Mnを秤量し原料とした。この原料を用いて、実施例1と同じ方法で水素吸蔵合金を製造した。その評価も実施例1と同じ方法で行った。
【0041】
(評価結果1)
図1は、実施例1および比較例1、2の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図である。横軸は水素吸蔵合金中の水素濃度C(wt%)である。縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素圧P(MPa)である。400℃、3時間の真空排気により脱水素化処理を行い、原点とした。
【0042】
比較例1に比べ、実施例1のz=1.05の水素吸蔵合金ではプラトー領域の平坦性が向上し、実用的な圧力範囲1.0〜0.1MPaでの水素放出量が増加していることがわかる。比較例2のz=5.00の水素吸蔵合金では実施例1のz=1.05の水素吸蔵合金と比較して、プラトー領域の平坦性、水素放出量ともに低下している。
【0043】
室温ではどの試料も約1.0MPaの水素ガス導入後、24時間以上経過しても、水素吸蔵による圧力変化はみられなかった。Mnを添加していない比較例1では再活性化に200℃の加熱が必要であったのに対し、実施例1では170℃で再活性化し活性化特性が向上していることがわかる。なお、比較例2では150℃で再活性化し活性化特性が向上しているが、上記に示したようにプラトー領域の平坦性、水素放出量ともに低下する欠点がある。
【0044】
(実施例2)
水素吸蔵合金の組成が原子%でV70−zTi10Cr20Mn、z=1.05になるように市販のV、Ti、Cr、Mnを秤量し原料とした。この組成は実施例1と同じである。この原料をアーク溶解法により溶解しインゴットを得た。
【0045】
このインゴットを真空中(油拡散ポンプ排気、約10−3Torrの真空度)、1000℃で24時間保持し均質化処理を施した。昇温速度は600℃/hで行い、降温は炉冷で行った。熱処理したインゴットを実施例1の方法で粉砕し試料とした。すなわち、実施例2は実施例1に均質化処理を付加したものである。
【0046】
製造された水素吸蔵合金の活性化特性及び水素吸蔵放出特性は、実施例1と同じ方法で評価した。
【0047】
(比較例3)
水素吸蔵合金の組成が原子%でV70−zTi10Cr20Mn、z=0になるように市販のV、Ti、Cr、Mnを秤量し原料とした。この組成は比較例1と同じであるこの原料を用いて実施例2と同じ方法で水素吸蔵合金を製造し、均質化処理を施した。すなわち、比較例3は比較例1に均質化処理を付加したものである。
【0048】
製造された水素吸蔵合金の活性化特性及び水素吸蔵放出特性は、実施例1と同じ方法で評価した。
【0049】
(評価結果2)
V−Ti−Cr系合金のプラトー領域の傾きは、Ti濃度分布に起因している。熱処理によりTi濃度分布を均一化する均質化処理をすることでプラトー領域の平坦性が向上することが知られている。均質化処理した試料の再活性化に必要な温度は、熱処理前と変わらなかった。
【0050】
図2は、実施例2および比較例3の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図である。横軸は水素吸蔵合金中の水素濃度C(wt%)である。縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素圧P(MPa)である。
【0051】
実施例2では、均質化処理を施していない実施例1に比べプラトー領域の平坦性が向上し、水素放出量も増加した。一方比較例3では、均質化処理を施していない比較例1に比べプラトー領域の平坦性、水素放出量ともに低下した。
【0052】
V系合金は非常に酸化しやすいため、高温熱処理する場合の雰囲気を、特に酸素について厳格に制御する必要がある。比較例3の結果については均質化処理における試料の酸化の影響が考えられ、Mnを添加することにより、酸化の影響を低減できることがわかり、工業的な応用を考えた場合、均質化処理雰囲気を厳格に制御する必要がなく有利である。
【0053】
(実施例3)
均質化処理を真空排気(1×10−5Torr以下)した石英管にインゴットを真空封管して行った以外は、実施例2と同じ条件水素吸蔵合金を製造し、評価も同じ方法で行った。
【0054】
(比較例4)
均質化処理を真空排気(1×10−5Torr以下)した石英管にインゴットを真空封管して行った以外は、比較例3と同じ条件水素吸蔵合金を製造し、評価も同じ方法で行った。
【0055】
(評価結果3)
図3は、実施例4および比較例3の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図である。横軸は水素吸蔵合金中の水素濃度C(wt%)である。縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素圧P(MPa)である。
【0056】
実施例3では実施例2と同じ水素放出特性をしめし、均質化処理時の真空度により水素放出特性の変化はみられなかった。実施例1に比べると、プラトー領域の平坦性が向上し、水素放出量も増加した。
【0057】
比較例4を比較例1と比べると、高真空中で均質化処理することによりプラトー領域の平坦性が向上している。しかし、均質化処理による水素吸放出量の向上は見られない。比較例4では、比較例3に比べてプラトー領域の平坦性、水素放出量ともに大幅に向上し、均質化処理時の真空度の影響が大きく、先の推論を証明している。高真空による熱処理は、例えば真空封管が必要になるなど工業上不利となる。
【0058】
したがって、本発明の水素吸蔵合金は、酸化の影響が比較的少なく真空度が低い均質化処理でもプラトー領域の平坦性が向上でき、水素吸放出量を大きくできるので、低コスト化でき工業上有利である。
【0059】
また、いずれの熱処理においても冷却時は炉冷しており、急冷しなくても大きな水素放出量で、良好なプラトー領域の平坦性が実現できた。これは、本発明の組成では、結晶相を単相にしなくても十分な特性が得られることを示している。高温の合金材料を急冷するためには、特別の装置が必要になるため工業上不利となる。本発明は、急冷のための工程と装置が必要ないため、低コスト化でき工業上有利である。
【0060】
以上の結果、V−Ti−Cr系合金にMnを添加することで、プラトー領域の平坦性が向上し、水素放出量が増大することがわかる。また、結晶相を単相にする必要がないので、急冷処理を必要とせず、かつ均質化処理に高真空を必要としないことがわかる。
【0061】
次に本発明の請求範囲を明確にするため、組成を変えた水素吸蔵合金について本発明例を、本発明の範囲外の比較例と比較して説明する。
【0062】
まず実施例3と同じ方法で作製した水素吸蔵合金について、組成と圧力−組成等温線(60℃放出曲線)におけるプラトー領域の平坦性、水素放出量、再活性化温度の相関について調べた。なお、Mnはアーク溶解、熱処理中に蒸発し、秤量値からズレるため分析値を用いた。
【0063】
圧力−組成等温線の測定は実施例1と同じ方法で行った。なお、ここでは脱水素化は60℃で3時間の真空排気を行った。プラトー領域の平坦性、水素放出量は、以下の方法で数値化して表した。
【0064】
図4は、代表的な水素吸蔵合金の圧力−組成等温線図である。横軸は水素吸蔵合金中の水素濃度C(wt%)である。縦軸は水素吸蔵合金が置かれている雰囲気の水素圧P(MPa)である。
【0065】
とPは水素圧であり、ここではln(P/P)=0.4の関係を互いに有する任意の水素圧である。 CHaは水素圧P時の水素吸蔵合金中の水素濃度であり、 CHbは水素圧P時の水素吸蔵合金中の水素濃度である。ΔCは水素圧P時と水素圧P時の水素吸蔵合金中の水素濃度差、すなわちΔC=CHa−CHbである。
【0066】
プラトー領域の平坦性は、 PとPをln(P/P)=0.4の関係を保持したまま移動したとき最大になるΔCであるでΔCHmax表される。この値が大きいほどプラトー領域の平坦性が良い。
【0067】
水素圧の実用的な圧力範囲は1.0〜0.1MPaである。 CH1.0MPaは水素圧1.0MPa時の水素吸蔵合金中の水素濃度であり、CH0.1MPaは水素圧0.1MPa時の水素吸蔵合金中の水素濃度である。 Ceffは実用的な圧力範囲1.0〜0.1MPaの圧力変化における合金の水素濃度変化、すなわちCeff=CH1.0MPa−CH0.1MPaであり、水素放出量を表している。
【0068】
表1に本発明例と比較例の、 Mn濃度とΔCHmax、Ceffの結果を示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004062819
【0070】
図5は、表1のMn濃度とΔCHmax、Ceffの相関を表した図である。横軸はMn濃度、縦軸はΔCHmax、Ceffである。Mn濃度が0.5原子%から効果が表れはじめ、Ceff、ΔCともに3原子%付近で極大値をとることがわかる。
【0071】
さらにMn濃度が増すと、5原子%を超える範囲では水素放出量が極端に低下する。以上からMn濃度は0.5≦z<5.0の範囲が最適である。また、脱水素化を400℃で3時間行い、1水素化物の水素まで完全に放出させた試料の20℃、3.3MPaでの水素吸蔵量は、最大で3.8wt%に達した。
【0072】
次に、 V85.5−xTiCr12.5Mnの組成式でTi濃度xを変えて水素の解離圧を試験した。表2に本発明例と比較例の、 Ti濃度と水素の解離圧の結果を示す。
【0073】
【表2】
Figure 0004062819
【0074】
図6は、V85.5−xTiCr12.5Mnの60℃におけるTi濃度と水素の解離圧の関係を示した図である。横軸はTi濃度、縦軸は水素の解離圧である。Ti濃度が5原子%未満の範囲では、使用温度を低温とした場合でも、解離圧が実用範囲より高く、解離圧を下げるためにはCr濃度をさらに下げる必要がある。ところが、後述にあるようにCr濃度が5原子%を下回ると、初期活性化ならびに再活性化特性が極端に低下することとなり、実用には適さない。
【0075】
Ti濃度の増加にともないプラトー領域の平坦性は低下する。これはプラトー領域の傾斜の原因であるTi濃度分布が助長されるためと考えられる。また、x=15の合金まではMn濃度を増加することによりプラトー領域の平坦性は保たれた。 x=17.5の合金では再活性化に280℃の加熱が必要であり、実用には適さない。以上の結果から、Ti濃度は実用の観点から5≦x≦15が最適である。
【0076】
Cr濃度変化に対してプラトー領域の平坦性、水素放出量は変化せず、Cr濃度によりこれら特性に影響を与えずに解離圧の調整が可能である。但し、Cr濃度5at%未満の合金では、初期活性化に450℃以上の高温が必要であったり、再活性化温度が高く、数サイクルの水素吸蔵・放出を繰り返さなければ、平衡圧に到達するのに長時間を要し、十分な反応速度が得られない。このCr濃度の下限値とTi濃度範囲から、Cr濃度は5≦y≦25が最適である。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、一般式がV100−x−y−zTiCrMnで表され、5≦x≦15、5≦y≦25、0.5≦z<5の範囲にあることを特徴とする水素吸蔵合金およびこの組成となる水素吸蔵合金原料を溶解、固化してインゴットを製造し、該インゴットを600〜1400℃で1〜100時間保持する均質化処理を施すことを特徴とした水素吸蔵合金の製造方法であるので、活性化が容易で、大きな水素吸放出量と良好なプラトー領域の平坦性を有し、急冷処理を必要とせず、均質化処理に高真空を必要としない低コストの水素吸蔵合金ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1、2の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図
【図2】実施例2および比較例3の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図
【図3】実施例4および比較例3の20℃における圧力−組成等温線(20℃放出曲線)図
【図4】代表的な水素吸蔵合金の圧力−組成等温線図
【図5】Mn濃度とΔCHmax、Ceffの相関を表した図
【図6】V85.5−xTiCr12.5Mnの60℃におけるTi濃度と水素の解離圧の関係を示した図

Claims (3)

  1. 一般式がV100−x−y−zTiCrMnで表され、5≦x≦15、5≦y≦25、0.5≦z<5の範囲にあることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 前記一般式におけるx、y、zの合計が、x+y+z≦20の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金。
  3. 請求項1、2のいずれかに記載の水素吸蔵合金の組成となる原料を溶解、固化してインゴットを製造し、該インゴットを600〜1400℃で1〜100時間保持する均質化処理を施すことを特徴とした水素吸蔵合金の製造方法。
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