JP4062135B2 - 高周波発振装置、無線装置およびレーダ - Google Patents

高周波発振装置、無線装置およびレーダ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、マイクロ波帯やミリ波帯などの超高周波帯の発振信号を発生する発振器を備えた高周波発振装置、無線装置およびレーダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、FM−CWレーダ(Frequency Modulated - Continuous Wave Radar )は、所定の周波数範囲内で発振周波数をFM変調させて特定周波数の信号を連続的に出力し、物標からの反射波を受信して、その物標の観測を行う。このようなFM−CWレーダでは、発振周波数の変調に、約100MHz以上の線形性に優れた三角波変調を用いる。
【0003】
ここで、線形性に優れた三角波を生成するためには、一般に次に示す各方法が考えられる。
(1)周波数変調感度が一定の電圧制御発振器VCO(以下、単に「VCO」という。)を使用する。
(2)周波数変調感度が一定になるように、変調信号を変調感度特性と逆方向に予め歪ませることで線形性を得る。
(3)発振周波数を連続的に監視し、周波数がずれた場合に補正をかける閉ループ回路を構成する。
【0004】
ところが、(1)に示した方法では、変調特性に優れるVCOを用いなければならないが、現状このようなVCOを構成することは非常に困難であり、実現したとしても、非常に高価なものとなってしまう。
【0005】
また、(2)に示した方法は、低周波回路を使用することで、比較的容易に良好な線形性を得ることができるが、オープンループ回路で補正するので、VCOの特性変動により回路の特性がずれて、線形性を得られなくなることがある。
【0006】
(3)に示す方法の代表例として、従来からPLL(Phase Lock Loop )方式が用いられており、この方式を用いることで線形性に優れた三角波が得られ、VCOの特性が経時変化しても補正が可能である。しかし、PLLは、水晶発振器等の基準発振器および分周器などが必要となり、構成が複雑で高価なものとなってしまう。
【0007】
このPLLの構造を簡素化し、発振中心周波数を安定させた高周波発振装置として、VCOからの発振信号を伝送する線路に結合する共振器と、該共振器に結合し、共振器から出力される共振エネルギーレベルを検出する検波器と、検波器からの出力に応じてVCOに対する制御電圧信号を生成して出力するCPUを備え、共振器の共振周波数と発振器の発振中心周波数とが一致するように設定した装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−223169公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されている高周波発振装置は、FM−CW周波数変調信号を利用して共振エネルギーレベル(透過信号レベル)の時間変化を測定し、最大値すなわち共振器の共振周波数を検出する。次に、共振エネルギーレベルの最大値が現れるタイミングにより中心周波数のズレを検出することで、安定した発振中心周波数を得ることができるものである。
【0010】
しかしながら、このような高周波発振装置では、中心周波数のズレを検出し補正することが容易であるが、各変調波形を補正する場合には、発振中心周波数が共振周波数に一致していること、すなわち、共振エネルギーレベルの最大値(ピーク)で発振中心周波数となることで、発振中心周波数から所望の周波数だけ変調を行った変調信号の周波数と共振エネルギーレベルを検出する検波器の出力とが一意に対応しない。このため、制御電圧信号の設定に至る検波後の信号処理が複雑になってしまう。また、発振中心周波数を共振エネルギーレベルのピークに一致させるので、ピークから離れた部分と比較して、ピーク付近では周波数の変化に対する共振エネルギーレベルの変化量が非常に少ない。このため、共振周波数付近で共振エネルギーレベルから発振周波数を正確に得ることが難しくなってしまう。
【0011】
この発明の目的は、任意の周波数変調範囲で変調する場合にも容易に発振周波数の補正を行うことができるとともに、全体に複雑な回路構成をとらずに、発振器の発振周波数を安定化させた高周波発振装置および発振周波数補正方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明の高周波発振装置は、制御電圧信号によって所定周波数変調範囲内で周波数変調された発振信号を発生する発振器と、発振器の発振信号を伝送する線路に結合し、所定周波数変調範囲外の周波数で共振する共振器と、該共振器に結合して共振器の共振エネルギーレベルを検出するレベル検出手段と、その検出された共振エネルギーレベルに基づいて制御電圧信号を生成する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
この構成では、制御電圧信号により所定周波数変調範囲内の特定周波数で発振する発振器の発振信号を伝送する線路に、所定周波数変調範囲外の共振周波数を有する共振器を結合させることで、共振器の共振エネルギーレベルを、発振器の発振周波数に対して一意に定まる値として得る。共振エネルギーレベルと発振周波数との関係は予め定めておくことができるので、制御手段は共振エネルギーレベルに基づいて発振周波数を補正するための制御電圧信号を生成し、VCOに出力する。このように、発振器の発振周波数に対して一意の(一対一の関係の)信号レベルが検出されることで、周波数変調量やリニアリティ等の変調特性において、現実の発振周波数が所望の発振周波数からずれた場合でも、発振周波数の補正を容易に行える。
【0014】
また、この発明の高周波発振装置は、制御電圧信号によって前記所定周波数変調範囲内で周波数変調された発振信号を発生する発振器と、発振器の発振信号を伝送する線路に結合し、所定周波数変調範囲の中心よりも高い周波数で共振する第1の共振器と、所定周波数変調範囲の中心よりも低い共振周波数で共振する第2の共振器と、第1・第2の共振器にそれぞれ結合して第1・第2の共振器の共振エネルギーレベルを検出する第1・第2のレベル検出手段と、該第1・第2の共振器の共振エネルギーレベルの差分値に基づいて制御電圧信号を生成する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
この構成では、第1、第2の共振器の共振エネルギーレベルの差分値に基づいて発振周波数を補正するための制御電圧信号を生成し、VCOに出力する。この差分値は、発振器の発振周波数に対して一意の(一対一の関係の)レベルであり、且つ発振出力の変動の影響を受けにくいので、発振周波数の補正を常に的確に行える。
【0016】
また、この発明の無線装置は、上述の高周波発振装置と上記発振信号を送信する手段とを備えることを特徴としている。
これにより、所定の高精度な周波数での送信が可能となる。
【0017】
また、この発明のレーダは、上述の高周波発振装置を備えることで、安定した発振周波数を得るとともに、発振周波数のズレを容易に補正する。これによりCWレーダやFM−CWレーダ方式で、物標の探知が正確に行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態に係る高周波発振装置について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る高周波発振装置の主要部を示すブロック図である。ここで、1は電圧制御発振器(以下、単に「VCO」という。)、2は共振器、3は本発明のレベル検出手段に対応する検波器、4は制御部である。共振器2はTE01δモードで共振する円柱形状の誘電体から形成されており、検波器3はショットキーバリアダイオード(SBD)で構成されている。
図2は制御部4の主要部を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、VCO1の発振信号は伝送線路10aを伝送してVCO出力11から出力される。また、VCO1の発振信号が伝送線路10aを伝送されることで、伝送線路10aと共振器2とはQe1の結合量で結合し、この結合により共振器2が励振されて、共振器2と伝送線路10bとがQe2の結合量で結合する。伝送線路10bは検波器3に接続されており、検波器3の出力は制御部4に入力され、制御部4の出力はVCO1に入力されている。このように、VCO1、伝送線路10a、共振器2、伝送線路10b、検波器3、および制御部4でクローズドループ回路を構成している。
【0020】
上述の伝送線路10aは、誘電体ストリップとこれを挟む上下の導電体平面とによる誘電体線路で形成されており、伝送線路10bは、前記上下の導電体平面とこの間に配置される基板上の線路パターンによるマイクロストリップラインまたはサスペンデッドラインで形成されている。そして共振器2は、前記導電体平面の間で、誘電体ストリップと基板上の線路パターンとの双方に結合する位置に配置されている。
【0021】
また、図2に示すように制御部4は、AD変換器41と、基準電圧テーブル43および基準制御信号テーブル44を備えた記憶部42と、差分検出部45と、制御信号補正部46とから構成される。ここで、基準電圧テーブル43は検波信号レベルと発振周波数との関係が記憶されており、基準制御信号テーブル44は出力タイミングと本来発振したい発振周波数(以下、「目標周波数」という。)と該目標周波数を得るために必要な制御電圧信号レベル(以下、「目標制御電圧信号レベル」という。)との関係が記憶されている。
【0022】
このような高周波発振装置では、VCO1から出力された発振信号が伝送線路10aを伝送することで、伝送線路10aは共振器2に結合して、共振器2が励振する。そして、共振器2が伝送線路10bに結合することにより、伝送線路10bに所定のRF信号が出力される。このRF信号のレベル(大きさ)は、図3(c)に示すような共振器2の共振器特性に依存し、発振信号の周波数に応じてRF信号レベルが決定する。この透過信号を検波器3が検波して制御部4に出力する。そして、制御部4が、この検波信号に基づいて、後に示す方法によりVCO1に対する制御電圧信号を生成してVCO1に出力することで、VCO1の発振周波数を補正する。
【0023】
次に、発振信号の周波数補正方法について図3を用いて詳細に説明する。
図3はVCO1に対する制御電圧とその発振周波数、共振器2の共振特性および検波器3の検波信号出力の変化の例を示している。VCO1に対する制御電圧を図3(a)に示すように、所定の周波数範囲で時間経過に伴って三角波状に変化させれば、これに応じてVCO1の発振周波数が図3(b)に示すように変化する。すなわち、VCO1に対する制御電圧がVc1の時、VCO1の発振周波数はf1、制御電圧がVc2の時、VCO1の発振周波数はf2、というように制御電圧の上昇に伴って発振周波数も上昇する。
【0024】
このようなVCO1の発振周波数の変化に伴い、共振器2のRF信号レベルも共振器特性に応じて図3(c)に示すように変化するため、検波器3から出力される検波信号レベルが図3(d)に示すように変化する。すなわち、発振周波数がf1のとき検波信号レベルはV1、発振周波数がf2のとき検波信号レベルはV2のように変化する。ここで、f1〜f5が発振周波数変調範囲である。
【0025】
共振器の共振周波数を図3(c)に示すように、VCO1の発振周波数変調範囲よりも高い周波数に設定することにより、発振周波数の上昇に伴って、検波信号レベルは一方的に高くなっていく。すなわち、発振周波数がf1の時の検波信号レベルV1よりも、発振周波数f2(>f1)の時の検波信号レベルV2は高い電圧値となり、発振周波数がf1、f2、f3、f4、f5と上昇していくのに応じて、検波信号レベルはV1、V2、V3、V4、V5の順に高くなっていき、異なる発振周波数で同じ電圧値をとることはない。つまり、各発振周波数の関係がf1<f2<f3<f4<f5ならば、各検波信号レベルの関係はV1<V2<V3<V4<V5となる。
このように、共振器の共振周波数をVCO1の発振周波数変調範囲よりも高くすることにより、各発振周波数に対して一意に検波信号レベルが検出される。
【0026】
このような高周波発振装置では、ユーザが所望の発振周波数を設定すると、制御部4で設定された発振周波数に対する制御電圧信号レベル(以下、「設定制御電圧信号レベル」という。)を記憶部42の基準制御信号テーブル44から読み出し、制御信号補正部46を介してVCO1に出力する。VCO1は入力された設定制御電圧信号レベルに基づいて、所定の発振周波数で発振し、発振信号を伝送線路10aに出力する。この発振信号により共振器2と伝送線路10bとが結合して、上述の説明のように、発振信号の発振周波数に応じたレベルのRF信号が検波器3に入力され、検波器3はこのRF信号を検知して、RF信号レベルに応じたレベルの検波信号を生成し制御部4に出力する。
【0027】
制御部4のAD変換器41は入力された検波信号を増幅し、AD変換することで、現在発振中の発振周波数に応じた検波信号レベル(以下、「実検波信号レベル」という。)をディジタル形式のデータとして得る。一方、制御部4は、現在、設定されている発振周波数(制御電圧信号レベル)を基準制御信号テーブル44から読み出し、基準電圧テーブル43で参照して、設定された発振周波数に応じた検波信号レベル(以下、「設定検波信号レベル」という。)を得る。差分検出部45は、これら実検波信号レベルと設定検波信号レベルとを入力し、差分演算を含む所定の演算処理を行うことで、補正信号を生成して制御信号補正部46に出力する。補正信号は、実検波信号レベルと設定検波信号レベルとの差分値に基づいた制御電圧信号の補正量を表すものであり、制御信号補正部46は、この補正信号に基づいて基準制御信号テーブル44から入力した設定制御電圧レベルを補正し、VCO1に出力する。VCO1は新たに補正された設定制御電圧レベルに基づいた発振周波数で発振して発振信号を出力する。この一連のクローズドループの信号処理を繰り返し行うことで、所望の発振周波数の発振信号を安定化して出力することができる。
【0028】
また、共振器の共振周波数が発振周波数範囲よりも高い周波数に設定されていることで、発振周波数に対して一意的に検波信号電圧が測定されるので、従来のように入力された検波信号電圧と発振周波数との関係を改めて解析する必要がないため、比較的簡素な回路構成で、容易に制御電圧信号の補正を行うことができる。
【0029】
また、共振器特性における変化の少ない共振周波数(ピーク)付近を用いず、変化が大きい部分を利用して、発振周波数に対するRF信号レベルを設定することで、発振周波数の変化にともなうRF信号レベルの変化を大きくとることができる。これにより、発振周波数の変動を容易に検出することができ、より安定して所望の発振周波数でVCOを発振させることができる。
【0030】
なお、上述の説明では、発振周波数を安定化する方法について説明したが、所定の発振中心周波数から変調を行い発振周波数を変調させる場合にも、周波数変調量に応じた検波信号レベルを制御部で算出して記憶しておくことで、設定した周波数変調量と実際の周波数変調量とのズレを検出して補正することができる。また、リニアリティが要求される変調特性を得る場合にも、設定した発振周波数と現実の発振周波数とのズレを正確に検知し、容易にVCOの発振周波数を補正できるので、設定された変調特性を安定して再現することができる。
【0031】
また、本実施形態では、共振器の共振周波数を、VCO1の発振周波数変調範囲よりも高い周波数に設定したが、図4に示すようにVCO1の発振周波数変調範囲よりも低い周波数に設定してもよい。
【0032】
この場合、発振周波数の上昇に伴って、検波信号レベルは一方的に低くなっていく。すなわち、発振周波数がf1の時の検波信号レベルV1よりも、発振周波数f2(>f1)の時の検波信号レベルV2は低い電圧値となり、発振周波数がf1、f2、f3、f4、f5と上昇していくのに対し、検波信号レベルはV1,V2,V3,V4,V5の順に低くなっていき、異なる発振周波数で同じ電圧値となることはない。つまり、各発振周波数の関係がf1<f2<f3<f4<f5ならば、各検波信号レベルの関係はV1>V2>V3>V4>V5となる。
このような構成としても、発振周波数に対する検波信号レベルが一意に決定されるので、上述の効果を適用することができる。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る高周波発振装置について図5〜図7を参照して説明する。
【0034】
図5は本実施形態に係る高周波発振装置の主要部の構成を示すブロック図である。ここで、1はVCO、2a,2bはそれぞれ共振周波数の異なる共振器、3a,3bはそれぞれ共振器2a,2bに結合する検波器、4は制御部である。共振器2a,2bはTE01δモードで共振する円柱形状の誘電体から形成されており、共振器2aの共振周波数はVCO1の発振周波数変調範囲よりも高い周波数に、共振器2bの共振周波数はVCO1の発振周波数変調範囲よりも低い周波数にそれぞれ設定されている。検波器3a,3bはショットキーバリアダイオード(SBD)で構成されている。
図6は制御部4の構成を示すブロック図である。
【0035】
図5に示したように、VCO1の発振信号は伝送線路10aを伝送してVCO出力11から出力される。また、VCO1の発振信号が伝送線路10aを伝送されることで、伝送線路10aと共振器2a,共振器2bとはそれぞれQe1,Qe3の結合量で結合し、この結合により共振器2a,2bがそれぞれ励振されて、共振器2a,2bと伝送線路10b、10cとがそれぞれQe2およびQe4の結合量で結合する。伝送線路10bは検波器3aに接続されており、伝送線路10cは検波器3bに接続されている。そして、検波器3a,3bの出力は制御部4に入力され、制御部4の出力はVCO1に入力されている。このように、VCO1、伝送線路10a、共振器2a,2b、伝送線路10b,10c、検波器3a,3b、および制御部4でクローズドループ回路を構成している。
【0036】
また、制御部4は、図6に示すようにAD変換器41と、基準電位差テーブル47および基準制御信号テーブル44を備えた記憶部42と、差分検出部45と、制御信号補正部46とから構成される。ここで、基準電位差テーブル47は二つの検波器3a,3bからの検波信号レベルの差分値と発振周波数との関係が記憶されている。
【0037】
このような高周波発振装置では、VCO1から出力された発振信号が伝送線路10aを伝送することで、伝送線路10aは共振器2a,2bにそれぞれ結合して、共振器2a,2bが励振する。そして、共振器2a,2bが励振し、共振器2aが伝送線路10bに結合し、共振器2bが伝送線路10cに結合することで、伝送線路10b,10cに発振信号に周波数に応じたレベルのRF信号がそれぞれ伝送される。これらRF信号がそれぞれ検波器3a,3bで検波されて制御部4に出力される。制御部4は、これら検波信号間の差分値に基づいて、後に示す方法によりVCO1に対する制御電圧信号を生成してVCO1に出力することで、VCO1の発振周波数が補正される。
【0038】
次に、発振信号の周波数補正方法について図7を用いて詳細に説明する。
【0039】
図7はVCO1に対する制御電圧とその発振周波数、共振器2a,2bの共振特性、検波器3a,3bの検波信号出力の変化の例、および検波信号出力の差分値の例を示している。VCO1に対する制御電圧を図7(a)に示すように、所定の周波数範囲で時間経過に伴って三角波状に変化させれば、これに応じてVCO1の発振周波数が図7(b)に示すように変化する。すなわち、VCO1に対する制御電圧がVc1の時、VCO1の発振周波数はf1、制御電圧がVc2の時、VCO1の発振周波数はf2、というように制御電圧の上昇に伴って発振周波数も上昇する。
【0040】
このようなVCO1の発振周波数の変化に伴い、共振器2aのRF信号レベルも共振器特性に応じて図7(c)に示すように変化するため、検波器3aから出力される検波信号レベルが図7(d)に示すように変化する。すなわち、発振周波数がf1のとき、検波信号レベルはV1、発振周波数がf2のとき、検波信号レベルはV2のように変化する。
【0041】
ここで、共振器2aの共振周波数を図7(c)に示すように、VCO1の発振周波数変調範囲よりも高い周波数に設定することにより、発振周波数の上昇に伴って、検波信号レベルは一方的に高くなっていく。すなわち、発振周波数がf1の時の検波信号レベルV1よりも、発振周波数f2(>f1)の時の検波信号レベルV2は高い電圧値となり、発振周波数がf1→f2へと上昇していくのに対し、検波信号レベルはVa1→Va2へと順に高くなっていき、異なる発振周波数で同じ電圧値となることはない。つまり、各発振周波数の関係がf1<f2ならば、各検波信号レベルの関係はVa1<Va2となる。
【0042】
一方、VCO1の発振周波数の変化に伴い、共振器2bのRF信号レベルも共振器特性に応じて図7(e)に示すように変化するため、検波器3bから出力される検波信号レベルが図7(f)に示すように変化する。すなわち、発振周波数がf1のとき検波信号レベルはVb1、発振周波数がf2のとき検波信号レベルはVb2のように変化する。
【0043】
ここで、共振器2bの共振周波数を図7(e)に示すように、VCO1の発振周波数変調範囲よりも低い周波数に設定することにより、発振周波数の上昇に伴って、検波信号レベルは一方的に低くなっていく。すなわち、発振周波数がf1の時の検波信号レベルVb1よりも、発振周波数f2(>f1)の時の検波信号レベル圧Vb2は低い電圧値となり、発振周波数がf1→f2へと上昇していくのに対し、検波信号レベルはVb1→Vb2へと低くなっていき、異なる発振周波数で同じ電圧値となることはない。つまり、各発振周波数の関係がf1<f2ならば、各検波信号レベルの関係はVb1>Vb2となる。
【0044】
このように、共振器2aの共振周波数をVCO1の発振周波数変調範囲よりも高くし、共振器2bの共振周波数をVCO1の発振周波数変調範囲よりも低くすることにより、図7(g)に示すような各発振周波数に対して各検出器3a,3bで測定される検波信号レベルの差分値(Vb−Va)すなわち電位差が算出できる。
【0045】
なお、上述の実施形態においては、共振器2a,2bの共振周波数を発振周波数変調範囲外に設定しているが、これらの共振周波数をそれぞれ発振周波数変調範囲内の高周波数側と低周波数側とに設定してもよい。これは、共振器2aの共振ピークの高周波数側か低周波数側かを、共振器2bのRF信号レベルを用いて一意的に決定することができるからである。
【0046】
このような高周波発振装置では、第1の実施形態に示したように発振信号を出力すると、この発振信号により共振器2aおよび伝送線路10bが結合するとともに、共振器2bおよび伝送線路10cが結合して、上述の説明のように、発振信号の発振周波数に応じたレベルのRF信号が検波器3a,3bに入力され、検波器3a,3bはRF信号を検知して、RF信号レベルに応じたレベルの検波信号を生成し、それぞれ制御部4に出力する。
【0047】
制御部4のAD変換器41a,41bはそれぞれ検波器3a,3bから入力された検波信号を増幅し、AD変換を行うことで、実検波信号レベルをディジタル形式のデータで得る。一方、制御部4は、現在、設定されている発振周波数に対応する制御電圧信号を基準制御信号テーブル44から読み出し、基準電位差テーブル47で参照して、設定された発振周波数に応じた検波信号レベルの差分値(以下、「設定差分値」という。)を得る。差分検出部45は、AD変換部41a,41bのそれぞれから出力された実検波信号レベルに基づいて差分演算を行い、実検波信号レベル同士の差分値(以下、「実差分値」という。)を算出し、この実差分値と設定差分値とに基づいて、さらに差分演算を含む所定の演算処理を行うことで、補正信号を生成して制御信号補正部46に出力する。補正信号は、実差分値と設定差分値との差分値に基づいた制御電圧信号の補正量を表すものであり、制御信号補正部46は、この補正信号に基づいて基準制御信号テーブル44から入力した設定制御電圧レベルを補正し、VCO1に出力する。VCO1は新たに補正された設定制御電圧レベルに基づいた発振周波数で発振して、発振信号を出力する。この一連のクローズドループの信号処理を繰り返し行うことで、所望の発振周波数の発振信号を安定して出力することができる。
【0048】
また、異なる発振周波数間での検波信号レベルの差分値(電位差)の変化量は、単独の検波信号レベルで検出する電圧の変化量よりも大きいので、より高精度に発振周波数のズレが測定でき、安定、且つ高精度に発振周波数補正を行うことができる。
【0049】
また、VCOの出力が変動したとしても、上記2つの実検波信号レベルは共に変動するので、その差分値はVCOの出力変動の影響を殆ど受けない。これにより、VCOの出力に殆ど影響されることなく、さらに安定して発振周波数補正を行うことができる。
【0050】
なお、上述の各実施形態では誘電体共振器を用いたが、所定の周波数範囲で信号を透過する特性を有する共振器および透過型フィルタを用いてもよい。
【0051】
また、上述の各実施形態では、VCOの出力に接続される伝送線路として誘電体線路、検波用の伝送線路としてマイクロストリップ線路、またはサスペンディッド線路の例を示したが、これら両伝送線路として、誘電体線路、マイクロストリップ線路、サスペンディッド線路、CPW線路、スロット線路等、いかなる伝送線路も使用可能である。
【0052】
さらに、発振信号を補正するクローズドループの処理は、FMCW動作の間、リアルタイムに行ってもよいし、別途専用の補正シーケンスを設けて補正動作を行ってもよい。補正シーケンスを低速度で行う場合には、検波用のディバイスとして、速度の遅いセンサ、例えばサーミスタ等を使用することもできる。
【0053】
次に、第3の実施形態に係るFM−CWレーダについて、図8を参照して説明する。
【0054】
図8は本実施形態に係るFM−CWレーダの主要部を示すブロック図である。ここで、VCO1は電圧制御発振器、CPL5はカップラ、CIR7はサーキュレータ、MIX8はミキサである。カップラCPL5は、VCO1の発振信号をサーキュレータCIR7の入力ポート側に伝送するとともに、その一部をローカル信号として取り出してミキサMIX8へ伝送する。サーキュレータCIR7は、送信信号をアンテナ50へ伝送し、アンテナ50からの受信信号をミキサMIX8へ伝送する。信号処理回路9は、ミキサMIX8の出力信号に対して所定の処理を行いCPU40に出力する。CPU40はVCO1の発振周波数を三角波状に変調させ、物標からの反射信号とローカル信号との二つのビート信号(ダウンビートとアップビート)の組み合わせにより、物標までの距離と相対速度を算出する。
【0055】
一方、結合器6は、送信信号を伝送する線路と共振器2とを結合させる。検波器3は、共振器2に結合して、共振器2の透過信号を検波する。CPU40は検波器3からの検波信号を入力し、該検波信号のレベルに基づいてVCO1に対する制御電圧信号を補正する。
【0056】
このFM−CWレーダのVCO1、共振器2、検波器3、および結合器6に上述の高周波発振装置の構成を用い、CPU40に上述の制御部4を組み込んで構成する。このような構成とすることにより、発振周波数が安定した発振信号を出力し、変調特性に優れるFM−CWレーダが構成できる。これにより、物標の探知を正確に行うことができる。また、発振制御を行うクローズドループ回路を簡素な回路で構成できるので、簡素な構造で且つ小型のFM−CWレーダを構成することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、FM−CWレーダを例に説明したが、CWレーダ等の安定した発振周波数の発振信号を要する無線装置、および高精度で安定した変調特性を要する無線装置に対しても上述の構成および効果を適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
この発明によれば、電圧制御発振器VCOの周波数変調範囲外に共振周波数を有する共振器をVCO出力側の伝送線路に結合させることで、VCOの発振周波数に対して一意(一対一)の関係で共振器の共振エネルギーレベルを検出することができる。この共振エネルギーレベルに基づく検波信号レベルと発振周波数との関係は既知とすることができるので、制御手段がこの共振エネルギーレベルを基に、発振周波数を補正するための制御電圧信号を生成し、VCOに入力することにより、設定した発振周波数と現実の発振周波数とのズレを容易に補正することができ、安定した発振周波数の発振信号を出力することができる。また、同様にして、設定した周波数変調量と実際の周波数変調量とのズレを検出して、そのズレを容易に補正することができる。
【0059】
また、共振器の共振周波数が発振器の周波数変調範囲外に設定されているので、共振器の共振周波数を周波数変調範囲内に設定する場合に比べて、周波数の変動に対する共振エネルギーレベルの変化量が大きくなり、容易に且つ高精度に周波数のズレを検出することができる。これより、高精度に発振周波数を補正することができる。
【0060】
さらに、クローズドループ回路をVCO、伝送線路、共振器、検波器、および簡素な構造の制御部のみで構成することができるので、安定した出力特性を備えながらも、簡素で小型の高周波発振装置を構成することができる。
【0061】
また、この発明によれば、発振器の発振信号を伝送する線路に結合し、所定周波数変調範囲の中心よりも高い周波数で共振する第1の共振器と、所定周波数変調範囲の中心よりも低い共振周波数で共振する第2の共振器と、第1・第2の共振器にそれぞれ結合して第1・第2の共振器の共振エネルギーレベルを検出する第1・第2のレベル検出手段と、該第1・第2の共振器の共振エネルギーレベルの差分値に基づいて制御電圧信号を生成する制御手段とを備えたことにより、周波数変化に対する変化量が大きくなるので、さらに高精度に発振周波数を補正することができる。また、発振出力の変動の影響を受けにくいので、発振周波数の補正を常に的確に行える。
【0062】
また、この発明によれば、上述の高周波発振装置と上記発振信号を送信する手段とを備えて無線装置を構成したことにより、所定の高精度な周波数での送信が可能となる。
【0063】
また、この発明によれば、上述の高周波発振装置を備えてレーダを構成したことにより、安定した発振周波数および安定した周波数変調を行ってCWレーダやFM−CWレーダ方式で、物標の検知を安定且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る高周波発振装置の主要部を示すブロック図
【図2】第1の実施形態に係る高周波発振装置の制御部の主要部を示すブロック図
【図3】VCO1に対する制御電圧とその発振周波数、共振器2の共振特性および検波器3の検波信号出力の変化の例を示す図
【図4】VCO1に対する制御電圧とその発振周波数、共振器2の共振特性および検波器3の検波信号出力の変化の例を示す図
【図5】第2の実施形態に係る高周波発振装置の主要部を示すブロック図
【図6】第2の実施形態に係る高周波発振装置の制御部の主要部を示すブロック図
【図7】VCO1に対する制御電圧とその発振周波数、共振器2の共振特性および検波器3の検波信号出力の変化の例を示す図
【図8】第3の実施形態に係るFM−CWレーダの主要部を示すブロック図
【符号の説明】
1−電圧制御発振器(VCO)
2,2a,2b−共振器
3,3a,3b−検波器
4−制御部
41,41a,41b−制御部4のAD変換器
42−制御部4の記憶部
43−記憶部42の基準電圧テーブル
44−記憶部42の基準制御信号テーブル
45−差分検出部
46−制御信号補正部
47−記憶部42の基準電位差テーブル
5−カップラ(CPL)
6−結合器
7−サーキュレータ(CIR)
8−ミキサ(MIX)
9−信号処理回路
10a,10b,10c−伝送線路
11−VCO出力端子
50−アンテナ
40−CPU

Claims (4)

  1. 制御電圧信号によって所定周波数変調範囲内で周波数変調された発振信号を発生する発振器と、前記発振器の発振信号を伝送する線路に結合し、前記所定周波数変調範囲外の周波数で共振する共振器と、該共振器に結合して共振器の共振エネルギーレベルを検出するレベル検出手段と、該レベル検出手段により検出された前記共振エネルギーレベルに基づいて前記制御電圧信号を生成する制御手段とを備えたことを特徴とする高周波発振装置。
  2. 制御電圧信号によって所定周波数変調範囲内で周波数変調された発振信号を発生する発振器と、前記発振器の発振信号を伝送する線路に結合し、前記所定周波数変調範囲の中心よりも高い周波数で共振する第1の共振器と、前記所定周波数変調範囲の中心よりも低い共振周波数で共振する第2の共振器と、前記第1・第2の共振器にそれぞれ結合して第1・第2の共振器の共振エネルギーレベルを検出する第1・第2のレベル検出手段と、該第1・第2のレベル検出手段により検出された共振エネルギーレベルの差分値に基づいて前記制御電圧信号を生成する制御手段とを備えたことを特徴とする高周波発振装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の高周波発振装置と、前記発振信号を送信する送信手段とを備えた無線装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の高周波発振装置を備えた送信手段と、該送信手段からの送信信号に対する物標からの反射信号を受信する受信手段とを備えたレーダ。
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