JP4058667B2 - 2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法 - Google Patents

2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗ウイルス剤、アンチセンス医薬などの原料、並びに核酸合成のための基質として有用な2’−デオキシヌクレオシド化合物を生化学的方法により選択的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法は天然物である魚類の精子から抽出生産する方法が常法として知られている。しかし、原料となるDNA(デオキシリボ核酸)が高価でかつ分離精製工程が煩雑であり安価に2’−デオキシヌクレオシド化合物を得ることはできなかった。
【0003】
一方、2’−デオキシヌクレオシド化合物と核酸塩基を原料として、ヌクレオシドホスホリラーゼにより塩基交換反応を行わせ、希望するヌクレオシドを得る方法が報告されている(Hori.N.,Watanabe,M.,Yamazaki,Y.,Mikami,Y.,Agric.Biol.Chem.,53,197〜202(1989))。
【0004】
この方法はヌクレオシドホスホリラーゼにより触媒される、リボース1−リン酸又は2−デオキシリボース1−リン酸による核酸塩基のリボシル化である。すなわち、この方法により、2−デオキシリボース1−リン酸と任意の核酸塩基を原料にして、ヌクレオシドホスホリラーゼの作用により、該当する2’−デオキシヌクレオシド化合物を調製することが可能である。
【0005】
しかしながら、既存の2’−デオキシヌクレオシド化合物を原料としないで、安価で入手しやすい物質を出発原料として、2’−デオキシヌクレオシド化合物を生化学的に合成する方法は確立されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこでまず、2−デオキシリボース1−リン酸を、2−デオキシリボース5−リン酸からホスホペントムターゼにより生化学的に生成し、2−デオキシリボース1−リン酸の製造方法に関する発明、並びに2’-デオキシヌクレオシドの製造方法に関する発明を完成させた(特願2000−289187)。
【0007】
次いで、前述の発明の原料となる2−デオキシリボース5−リン酸を、グリセルアルデヒド3−リン酸(又はジヒドロキシアセトンリン酸)とアセトアルデヒドから2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼの触媒作用により生化学的に生成し、2−デオキシリボース5−リン酸の製造方法に関する発明を完成させた(特願2001−58902)。
【0008】
しかしながら、いずれの方法においても、安価で入手しやすいグリセルアルデヒド3−リン酸(又はジヒドロキシアセトンリン酸)とアセトアルデヒドを出発原料として、途中の生成物(2−デオキシリボース5−リン酸)を単離することなく、2’−デオキシヌクレオシド化合物を得る方法、すなわち、微生物由来の酵素による反応をカップリングさせる方法は検討されていないのが現状である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、グリセルアルデヒド3−リン酸とアセトアルデヒドを出発原料として、又はジヒドロキシアセトンリン酸とアセトアルデヒドを出発原料として、2’−デオキシヌクレオシド化合物を選択的に製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、微生物由来の酵素による反応をカップリングさせることにより、グリセルアルデヒド3−リン酸とアセトアルデヒドを出発原料として、又はジヒドロキシアセトンリン酸とアセトアルデヒドを出発原料として、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させた後、2’−デオキシヌクレオシド化合物を選択的に製造する方法を見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)グリセルアルデヒド3−リン酸とアセトアルデヒドを、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させて、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させ、次に該2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させることを特徴とする2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0013】
(2)ジヒドロキシアセトンリン酸とアセトアルデヒドを、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させて、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させ、次に該2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させることを特徴とする2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0016】
)2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物がクレブシエラ・ニューモニエ B−44(IFO 16579)であり、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物がバチルス・コアギュランス YGK−6054(FERM BP−7898)、又はバチルス・スピーシーズ YGK−6008(FERM BP−7897)である上記(1)記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0017】
)2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物がクレブシエラ・ニューモニエ B−44(IFO 16579)であり、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物がバチルス・コアギュランス YGK−6054(FERM BP−7898)、又はバチルス・スピーシーズ YGK−6008(FERM BP−7897)である上記(2)記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0018】
)2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させる際に、アルデヒド類を共存させることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1に記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0019】
)2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させる際に、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムを共存させることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1に記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
<酵素反応による2’−デオキシヌクレオシド化合物の合成>
本発明では、まず、下記(1)式に示すように、グリセルアルデヒド3−リン酸とアセトアルデヒドを原料として、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼ(以下、式中でDERAと略す)を含有する微生物の菌体又は該微生物由来の酵素の触媒作用により、2−デオキシリボース5−リン酸を製造する。(1)式は平衡反応であるが、平衡は2−デオキシリボース5−リン酸の生成側に片寄っている。
【0022】
【化1】
Figure 0004058667
【0023】
また、下記(2)式に示すように、グリセルアルデヒド3−リン酸は、ジヒドロキシアセトンリン酸をトリオースリン酸イソメラーゼ(以下、式中でTPIと略す)を含有する微生物の菌体又は該微生物由来の酵素の触媒作用により異性化させることにより製造することができる。
【0024】
【化2】
Figure 0004058667
【0025】
本発明において、トリオースリン酸イソメラーゼと2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼが同時に存在する場合には、ジヒドロキシアセトンリン酸とアセトアルデヒドを原料として、該微生物の菌体又は該微生物由来の酵素の触媒作用により、(2)式の異性化とそれに続く(1)式のアルドラーゼ反応が連続的に起こり、2−デオキシリボース5−リン酸を製造することができる。
【0026】
次に、下記(3)及び(4)式に示すように、上記反応液(即ち、2−デオキシリボース5−リン酸を含む反応液)、核酸塩基(式中ではアデニン)、並びにホスホペントムターゼ(以下、式中でPPMと略す)及びヌクレオシドホスホリラーゼ(以下、式中でNPと略す)を含有する微生物の菌体又は該微生物由来の酵素の触媒作用により、2−デオキシリボース1−リン酸を経由して2’−デオキシヌクレオシド化合物を製造することができる。
【0027】
【化3】
Figure 0004058667
【0028】
【化4】
Figure 0004058667
【0029】
本発明において(1)式から(3)式への反応の移行は、(1)式の反応により得られた2−デオキシリボース5−リン酸を反応液から単離することなく連続して行うことができる。このように(1)式から(3)式への反応を連続して行うことを、本発明において「反応のカップリング」もしくは「反応をカップリングさせる」という。反応のカップリングは、まず(1)式の反応を行い(もしくは、(2)式および(1)式の反応を行い)、2−デオキシリボース5−リン酸が生成される程度の反応時間が経過した後に、(3)式および(4)式の反応を触媒する微生物、及び核酸塩基を反応液中に添加することにより行われ得る。あるいは、(1)式の反応を行う際(もしくは、(2)式および(1)式の反応を行う際)に、(3)式および(4)式の反応を触媒する微生物、及び核酸塩基が既に添加されていてもよい。ただし、(3)式および(4)式の反応を触媒する微生物、及び核酸塩基は、2−デオキシリボース5−リン酸が生成された後に添加した方が、(1)式の反応(または(2)式および(1)式の反応)を円滑に進行させるという点で望ましい。
【0030】
本発明の説明において、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させるまでの反応(即ち、(1)式および(2)式の反応)と、その後の2’−デオキシヌクレオシド化合物を製造する反応(即ち、(3)式および(4)式の反応)を便宜的に分けて説明するが、本発明は、中間生成物(2−デオキシリボース5−リン酸)を単離することなく連続して各反応を行うことができるものである。
【0031】
なお、(1)式から(3)式へ反応を連続して行うには、(3)式の反応においてもアルデヒド類の存在下で行うことが好ましい。アルデヒド類の存在下で(3)式の反応を行うと、最終生成物である2’−デオキシヌクレオシドの収率を増大させることができる。アルデヒド類の存在により、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼが共存している反応系では、(1)式の平衡反応を2−デオキシリボース5−リン酸の生成側(右側)にシフトさせることができるからである。アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリセルアルデヒドなどが挙げられる。中でも、アセトアルデヒドとプロピオンアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒドが最も好ましい。
【0032】
また、グルコース1,6−二リン酸はホスホペントムターゼによる反応の活性化因子として報告されており(Hammer−Jesperson,K.,Munch−Petersen,A.,Eur.J.Biochem.,17巻,397〜407頁(1970年))、(3)式の反応系に加えることが望ましい。
【0033】
<原料>
本発明で原料として使用する、アセトアルデヒド、グリセルアルデヒド3−リン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、核酸塩基は全て市販されている(例えば、シグマ・アルドリッチ・ジャパン社、2000年総合カタログ)。本発明の原料として用いられる化合物は、通常工業原料として用いられる程度の純度以上であれば十分である。
【0034】
グリセルアルデヒド3−リン酸は、D−グリセルアルデヒド3−リン酸、DL−グリセルアルデヒド3−リン酸を使用することができる。ジヒドロキシアセトンリン酸は合成により入手可能であり、例えば、工業原料として用いられるジヒドロキシアセトンとアセチルリン酸を原料とし、ジヒドロキシアセトン・キナーゼ(EC 2.7.1.29)を触媒として生化学的に合成することができる(例えば、Itoh,N.,Tujibata,Y.,Liu,J.Q.;Appl.Microbiol.Biotechnol.,51巻,193〜200頁,1999年)。
【0035】
もう一つの原料である核酸塩基には天然型のチミン、ウラシル、シトシン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチンなどの他に、ヌクレオシドホスホリラーゼにより認識される人工の核酸塩基類縁化合物(例えば、5−ブロモウラシル、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロメチルウラシル、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−クロロプリン、6−クロロプリン、2,6−ジクロロプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、6−メルカプトプリン、6−メチルチオプリン、1−デアザアデニン、3−デアザグアニン、ベンズイミダゾール、グリオキサール−グアニンなど)を使用することができる。
【0036】
<微生物及び酵素>
本発明に用いられる2−デオキシリボースリン酸アルドラーゼ(EC4.1.2.4)、トリオースリン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.1)、ホスホペントムターゼ(EC5.4.2.7)、及びヌクレオシドホスホリラーゼ(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)及びピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.2)の両者を意味する)は原理的にはいかなる微生物の起源のものでもかまわない。なお、本発明で使用する微生物は、基質として、ジヒドロキシアセトンリン酸を使用せず、グリセルアルデヒド3−リン酸を使用する場合には、反応にはトリオースリン酸イソメラーゼを含有していなくてよいが、含有していても構わない。
【0037】
本発明で使用する微生物は全て、ホスファターゼ及びヌクレオシダーゼを実質的に含有しないものが好ましい。なお、本発明においてホスファターゼ及びヌクレオシダーゼを実質的に含有しないとは、当該酵素を含有しないか、又は含有していても当該酵素が本発明の製造方法に影響を及ばさない微弱な活性しか示さないことを意味する。
【0038】
上述の条件を満たし、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含有する微生物として、好ましくはクレブシエラ属に属する微生物が挙げられる。更に具体的菌株として、好ましくはクレブシエラ・ニューモニエ B−44(IFO 16579)が挙げられる。本菌株は財団法人発酵研究所(Institute for Fermentation, Osaka ; 2-17-85, juso-honmachi, yodogawa-ku, Osaka, 532-8686, Japan)に寄託されている(平成13年3月1日)。なお、本菌株は国立感染症研究所が作成した微生物のバイオセーフティーレベルによれば、レベル2に属するものであるため、ブダペスト条約上の国際寄託当局である産業技術総合研究所(旧工業技術院)生命工学工業技術研究所により寄託を拒否され、平成13年2月27日付でその旨説明されている。
【0039】
また、上述の条件を満たし、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有する微生物として、好ましくはバチルス属に属する耐熱性微生物が挙げられる。更に具体的菌株として、好ましくはバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans) YGK−6054(FERM BP−7898)、及びバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.) YGK−6008(FERM BP−7897)が挙げられる。本菌株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに上記寄託番号により国際寄託されている。
【0040】
本発明において、微生物の菌体又は該微生物に由来の酵素によりとは、微生物を含有する懸濁液(菌体懸濁液)、又は該微生物から産生される酵素を用いて反応を行うことを意味する。すなわち、本発明は、菌体懸濁液そのものを用いて反応を行ってもよく、また微生物から産生される酵素を取り出して該反応を行ってもよい。
【0041】
<反応条件及び生成物の分離精製と定量>
まず、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼによる反応条件について記す。以下、2−デオキシリボース5−リン酸が生成されるまでの反応を「第一の反応系」ともいう。
【0042】
「第一の反応系」において、原料のリン酸化合物であるグリセルアルデヒド3−リン酸又はジヒドロキシアセトンリン酸の初期濃度は、一般に5〜500mMであり、好ましくは25〜150mMである。アセトアルデヒドの初期濃度は、一般に15〜1000mMであり、好ましくは150〜400mMである。また、基質となるリン酸化合物に対するアセトアルデヒドの濃度が高い方が、2−デオキシリボース5−リン酸のリン酸化合物に対する収率は増大する。
【0043】
反応液のpHは、通常4.0〜12.5であり、好ましくは8.5〜9.5である。反応液としては上記pHに調整することが可能な任意の緩衝液が使用可能である。原料としてグリセルアルデヒド3−リン酸を使用する場合は、トリス−塩酸緩衝液が好ましい。ジヒドロキシアセトンリン酸を原料とする場合は、緩衝液を使用しなくとも水でよい。
【0044】
反応温度は、通常20〜60℃であり、好ましくは25〜40℃である。反応時間は反応条件によって左右されるが、通常2〜6時間で終了する。
【0045】
「第一の反応系」に使用する微生物は、好ましくは、保存微生物を予め栄養培地で、3〜25時間培養したものが使用され、より好ましくは8〜20時間培養したものが使用される。また、反応に使用する菌体濃度は、好ましくは、1.0〜20質量%であるが、菌体濃度が高いほど2−デオキシリボース5−リン酸の生成のうえで好ましい。
【0046】
なお、反応液からの生成物の採取は行っても行わなくても次の反応に移行することができるが、採取を行う場合には、限外ろ過、イオン交換分離、吸着クロマトグラフィーなどにより行うことができる。
【0047】
反応生成物の定量は2つの方法により行うことができる。第1の方法はバートン(Burton)法である(例えば、東京化学同人、生化学辞典・第3版、664頁、1998年)。本法は、ジフェニルアミン・酢酸・硫酸反応により、鋭敏に2−デオキシリボースを検出する特異性の高い定量方法で、2−デオキシリボース5−リン酸の吸光係数は2−デオキシリボースのそれと等しい。第2の方法は、DNAの比色定量法であるシステイン・硫酸(cystein−sulfate)法の応用である(例えば、Stumpf,P.K.; J.Biol.Chem.,169巻,367〜371頁,1947年)。本法により2−デオキシリボース5−リン酸を定量することができる。
【0048】
次に、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼによる反応条件について記す。以下、2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基から2’−デオキシヌクレオシド化合物が生成されるまでの反応を「第二の反応系」ともいう。
【0049】
「第二の反応系」の原料となる2−デオキシリボース5−リン酸を、「第一の反応系」から単離することなく使用する場合、2−デオキシリボース5−リン酸の初期濃度は、「第一の反応系」で得られた濃度となる。「第二の反応系」において、原料の2−デオキシリボース5−リン酸の初期濃度は、5〜200mMであることが好ましく、より好ましくは5〜100mMである。原料の核酸塩基の初期濃度は、一般に5〜200mMであり、好ましくは5〜100mMである。なお、核酸塩基は、「第一の反応系」において2−デオキシリボース5−リン酸が生成される程度の充分な反応時間が経過した後に、該反応液に添加してもよいし、「第一の反応系」の反応液に予め添加されていてもよい。また、核酸塩基の初期濃度は、2−デオキシリボース5−リン酸の初期濃度以上とするのがよい。一般に、2−デオキシリボース5−リン酸に対する核酸塩基のモル濃度は高い方が2−デオキシリボース5−リン酸に対するヌクレオシド化合物の収率は増大する。ただし、飽和濃度より高い濃度の核酸塩基を加える場合には、反応の進行を見ながら分割して加えてもよい。
【0050】
上述のとおり、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼによる「第二の反応系」は、アルデヒド類の存在下で行うことが好ましい。アルデヒド類の存在により、「第一の反応系」の平衡反応を2−デオキシリボース5−リン酸の生成側にシフトさせることが可能となる。アルデヒド類は、「第二の反応系」の際に存在していれば、任意の時期に添加され得る。アルデヒド類の初期濃度は、一般に5〜600mMであり、好ましくは200〜400mMである。
【0051】
また、上述のとおり、ホスホペントムターゼによる反応は、該反応の活性化因子として報告されているグルコース1,6−二リン酸の存在下で行うことが好ましい。グルコース1,6−二リン酸は、ホスホペントムターゼによる反応の際に存在していれば、任意の時期に添加され得る。グルコース1,6−二リン酸の初期濃度は触媒量でかまわないが、好ましくは0.01〜0.1mMである。
【0052】
反応液のpHは、通常6.0〜11.0であり、好ましくは9.0〜11.0である。反応液としては上記pHに調整することが可能な任意の緩衝液が使用可能である。好ましくは、トリス−塩酸緩衝液である。
【0053】
反応温度は、耐熱性酵素の適温の範囲40〜65℃で行えばよく、好ましくは50〜60℃である。反応時間は反応条件によって左右されるが、通常4〜12時間で終了する。
【0054】
「第二の反応系」に使用する微生物は、好ましくは、保存微生物を予め栄養培地で、5〜15時間培養したものが使用され、より好ましくは7〜9時間培養したものが使用される。また、反応に使用する菌体濃度は、好ましくは、1〜20質量%であるが、菌体濃度が高いほど2’−デオキシヌクレオシド化合物の生成のうえで好ましい。
【0055】
「第一の反応系」の最適な反応条件(pH、温度)と、「第二の反応系」の最適な反応条件とのずれは、「第一の反応系」において2−デオキシリボース5−リン酸が生成される程度の反応時間が経過した後に調整することが好ましいが、全反応を通して、pH6.0〜11.0、温度40〜60℃で行ってもよい。
【0056】
さらに本発明において、「第一の反応系」と「第二の反応系」を連続して行うと、ホスホペントムターゼによる反応が、ジヒドロキシアセトンリン酸又はグリセルアルデヒド3−リン酸によって阻害を受けることが明らかになった。グリセルアルデヒド3−リン酸は2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼによる反応の基質であり、一方ジヒドロキシアセトンリン酸はトリオースリン酸イソメラーゼによってグリセルアルデヒド3−リン酸になる。ジヒドロキシアセトンリン酸又はグリセルアルデヒド3−リン酸を出発原料にして、生成物の2−デオキシリボース5−リン酸を単離せずに、2’−デオキシヌクレオシド化合物を製造する場合、未反応の基質として少量のジヒドロキシアセトンリン酸又はグリセルアルデヒド3−リン酸が混入することは避けられない。そこで、阻害効果の解除を目的として検討した結果、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムにより、阻害を受けている酵素を活性化できることが本発明において明らかになった(後述の実施例3参照)。
【0057】
酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムをホスホペントムターゼ反応系へ添加することが有効であり、添加濃度は、一般に5〜1000mMであり、好ましくは200〜300mMである。添加時期は、ホスホペントムターゼによる反応の際に酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムが反応系に存在していれば特に限定されず、予め添加されていても構わない。
【0058】
反応液からの2’−デオキシヌクレオシド化合物の採取は、限外ろ過、イオン交換分離、吸着クロマトグラフィーなどにより行うことができる。反応生成物の定性・定量分析はTLCにより、より精度の高い定量はUV検出器及び/又は屈折計を装着したHPLCなどにより行うことができる。
【0059】
<培養条件と酵素の調製>
寄託菌株の菌学的性質は、バージェイス・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー第1巻(1984年)及びバージェイス・マニュアル・オブ・デターミナティブ・バクテリオロジー第9版(1994年)に準じて検討した。その結果は、次のようである。なお、実験は主として長谷川武治編著、改訂版「微生物の分類と同定」(学会出版センター、1985年)記載の方法により行った。
【0060】
クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae) B−44は通常の細菌用培地によく生育し、デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼ及びトリオースリン酸イソメラーゼを生産するが、培地に2−デオキシリボース、フルクトース、フルクトース1,6−二リン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸などを0.1〜2.0質量%添加することは、該酵素活性を高めるうえで有効である。炭素源及び窒素源としては、酵母エキス、肉エキス、ペプトンなどを、無機塩としては、塩化アンモニウム、硝酸カリウムなどを用いることができる。培養した菌体はそのまま本酵素反応に利用することが可能であるが、通常の方法(超音波又はミルによる破砕、遠心分離、硫安分離、膜分離など)により該微生物由来の酵素を得てこれを用いることもできる。
【0061】
クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae) B−44(IFO 16579)[以下、B−44と略す]。
1.形態的性質
(1)細胞の形及び大きさ:桿菌、0.8×0.8〜3.2μm
(2)グラム染色性: 陰性
(3)細胞の多形性の有無: なし
(4)運動性: なし
(5)鞭毛の着生状態: なし
(6)胞子の有無: なし
(7)抗酸性: なし
2.培養的性質
(1)肉汁寒天平板培養: 円形、全縁滑らか、低凸状、表層滑らか、乳黄色
(2)肉汁寒天斜面培養: 乳黄色、不透明で培地全体に拡がり生育は良好である。
(3)肉汁液体培養: 濁りは中程度で均一、色なし
(4)肉汁ゼラチン穿刺培養: 変化なし
(5)リトマスミルク: やや酸性、凝固、ガス発生
3.生理学的性質
(1)硝酸塩の還元: 陽性
(2)脱窒反応: 陰性
(3)MRテスト: 陽性
(4)VPテスト: 陰性
(5)インドールの生成: 陰性
(6)硫化水素の生成: 陰性
(7)デンプンの加水分解: 陰性
(8)クエン酸の利用
・コーザー(Koser)培地: 陽性
・クリステンセン(Christensen)培地: 陽性
(9)無機窒素源の利用:
・硝酸塩: 陽性(弱い)
・アンモニウム塩: 陽性(弱い)
(10)色素の産生: 陰性
(11)ウレアーゼ: 陰性
(12)オキシダーゼ: 陰性
(13)カタラーゼ: 陽性
(14)生育の範囲
・pH: 3.5〜10.2(至適5.0〜8.0)
・温度域: 10〜40℃(至適22〜30℃)
(15)酸素に対する態度: 均一に生育、ガス発生
(16)O−Fテスト
・グルコース: F
4.その他種の特徴を示すに必要なもの
(1)各種炭素源の利用
・ラクトース: +
・マルトース: +
・D−キシロース: +
・D−マンニトール: +
・ラフィノース: +
・D−ソルビトール: +
・シュークロース: +
・イノシトール: +
・アドニトール: +
・L−ラムノース: +
・L−アラビノース: +
・D−マンノース: +
(2)β−ガラクトシダーゼ: +
(3)アルギニン脱炭酸: −
(4)リジン脱炭酸: +
(5)オルニチン脱炭酸: −
(6)エスクリン加水分解: +
(7)有機酸の利用
・マロン酸: +
・クエン酸: +
・グルコン酸: +
・n−カプリン酸: −
・アジピン酸: −
・DL−リンゴ酸: +
(8)アセトアミド利用: −
(9)インドール・ピルビン酸産生: −
(10)アルギニンデヒドロラーゼ: −
(11)ゼラチン加水分解: −
(12)酢酸フェニル資化能: −
5.化学分類学的性質
(1)GC含量: 50〜52mol%(HPLC法)
以上の菌学的性質に基づき、本菌株はクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)と判明した。
【0062】
バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans) YGK−6054(FERM BP−7898)及びバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.) YGK−6008(FERM BP−7897)は、通常の細菌用培地によく生育し、ホスホペントムターゼ及びヌクレオシドホスホリラーゼを生産するが、培地にリボースなどの糖又はイノシンなどのヌクレオシドを0.1〜1質量%添加することが、該酵素活性を高めるうえで有効である。炭素源及び窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどの無機窒素類又はペプトンなどの有機窒素類を用いることができる。また、培地にマンガン、マグネシウムを添加するのが望ましい。培養した菌体はそのまま本酵素反応で利用可能であるが、通常の方法(超音波又はミルによる破砕、遠心分離、硫安分離、膜分離など)により該微生物由来の酵素を得てこれを用いることもできる。
【0063】
バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans) YGK−6054(FERM BP−7898)[以下、YGK−6054と略す]。
1.形態的性質
(1)細胞の形及び大きさ:桿菌、0.7×2μm
(2)グラム染色性:陽性
(3)細胞の多形性の有無:なし
(4)運動性:あり
(5)鞭毛の着生状態:周毛
(6)胞子:楕円形の内性胞子形成、位置は末端
(7)抗酸性:なし
2.培養的性質
(1)肉汁寒天平板培養:不規則形、全縁波状、低くて平ら、やや光沢あり、クリーム色
(2)肉汁寒天斜面培養:クリーム色、半透明で培地全体に広がり生育は良好
(3)肉汁液体培養:濁りは中程度で均一
(4)肉汁ゼラチン穿刺培養:全体液化(冷却時)
(5)リトマスミルク:凝固、pH8
3.生理学的性質
(1)硝酸塩の還元:陽性
(2)脱窒反応:陽性
(3)MRテスト:陰性
(4)VPテスト:陽性
(5)インドールの生成:陰性
(6)硫化水素の生成:陰性
(7)デンプンの加水分解:陰性
(8)クエン酸の利用:陽性
(9)無機窒素源の利用:
・硝酸塩:陽性
・アンモニウム塩:陽性
(10)色素の産生:陰性
(11)ウレアーゼ:陰性
(12)オキシダーゼ:陽性
(13)カタラーゼ:陽性
(14)生育の範囲
・pH5〜6.8における生育:生育した
・NaCl濃度:1〜2%で生育した、5%で生育せず
・温度域:42〜59℃で生育した(至適52〜55℃)、30℃で生育せず
(15)酸素に対する態度:通性嫌気性
(16)O−Fテスト
・グルコース:F(ガスの産生なし)
4.その他種の特徴を示すに必要なもの
(1)各種炭素源の利用
・ラクトース:−
・マルトース:+
・D−キシロース:+
・マンニトール:+
・D−ラフィノース:−
・ソルビトール:−
・シュークロース:−
・イノシトール:−
・アドニトール:−
・ラムノース:−
・L−アラビノース:−
・D−マンノース:−
・リボース:+
・ガラクトース:+
・D−グルコース:+
・D−フルクトース:+
・N−アセチルグルコサミン:+
・トレハロース:+
(2)β−ガラクトシダーゼ:陽性
(3)アルギニン脱炭酸:陰性
(4)リジン脱炭酸:陰性
(5)オルニチン脱炭酸:陰性
(6)エスクリン加水分解:陽性
(7)インドール産生:陰性
(8)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(9)ゼラチン加水分解:陽性
5.化学分類学的性質
(1)GC含量:50〜52mol%(HPLC法)
以上の菌学的性質に基づき、本菌株はバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)と判明した。
【0064】
バチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.) YGK−6008(FERM BP−7897)[以下、YGK−6008と略す]。
1.形態的性質
(1)細胞の形及び大きさ:桿菌、0.8×2〜3μm
(2)グラム染色性:陽性
(3)細胞の多形性の有無:なし
(4)運動性:あり
(5)鞭毛の着生状態:周毛
(6)胞子:楕円形の内性胞子形成、位置は末端
(7)抗酸性:なし
2.培養的性質
(1)肉汁寒天平板培養:楕円形、全縁なめらか、低凸状、やや光沢あり、クリーム色
(2)肉汁寒天斜面培養:クリーム色、不透明で画線跡にそって生育、生育は良好
(3)肉汁液体培養:濁りは中程度で均一
(4)肉汁ゼラチン穿刺培養:全面液化(冷却時)
(5)リトマスミルク:凝固、pH8
3.生理学的性質
(1)硝酸塩の還元:陽性
(2)脱窒反応:陽性
(3)MRテスト:陰性
(4)VPテスト:陽性
(5)インドールの生成:陰性
(6)硫化水素の生成:陰性
(7)デンプンの加水分解:陰性
(8)クエン酸の利用:陽性
(9)無機窒素源の利用:
・硝酸塩:陽性
・アンモニウム塩:陽性
(10)色素の産生:陰性
(11)ウレアーゼ:陰性
(12)オキシダーゼ:陽性
(13)カタラーゼ:陽性
(14)生育の範囲
・pH5〜6.8における生育:pH5〜5.7で生育せず、pH6.8で生育した
・NaCl濃度:1%で生育した、2〜5%で生育せず
・温度域:42〜59℃で生育した(至適52〜55℃)、30℃で生育せず
(15)酸素に対する態度:通性嫌気性
(16)O−Fテスト
・グルコース:F(ガスの産生なし)
4.その他種の特徴を示すに必要なもの
(1)各種炭素源の利用
・ラクトース:−
・マルトース:+
・D−キシロース:+
・マンニトール:+
・D−ラフィノース:−
・ソルビトール:−
・シュークロース:−
・イノシトール:−
・アドニトール:−
・ラムノース:−
・L−アラビノース:−
・D−マンノース:−
・リボース:+
・ガラクトース:+
・D−グルコース:+
・D−フルクトース:+
・N−アセチルグルコサミン:+
・トレハロース:+
(2)β−ガラクトシダーゼ:陽性
(3)アルギニン脱炭酸:陰性
(4)リジン脱炭酸:陰性
(5)オルニチン脱炭酸:陰性
(6)エスクリン加水分解:陽性
(7)インドール産生:陰性
(8)アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
(9)ゼラチン加水分解:陽性
5.化学分類学的性質
(1)GC含量:48〜50mol%(HPLC法)
以上の菌学的性質に基づき、本菌株はバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)と判明した。
【0065】
【実施例】
以下、製造例及び実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
【0066】
デオキシリボース5−リン酸の同定はTLC分析により行った。分析条件は次のとおりである。
[TLC分析条件]
TLCプレート:Kieselgel 60F254(メルク社製)
展開液:n−ブタノール/2-プロパノール/水=3/12/4(v/v/v)
検出:エタノール/p-アニスアルデヒド/酢酸/硫酸=90/5/1/5(v/v/v/v)発色:90〜100℃
【0067】
また、2’−デオキシヌクレオシド化合物の定量はHPLC分析により行った。分析条件は次のとおりである。
[HPLC分析条件]
カラム:Inertsil ODS−2(ジーエルサイエンス製)φ4.6mm×250mm
溶出液:8%メタノール/0.1M−NH4H2PO4(pH7.0)
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV 260nm
【0068】
製造例1:2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含む菌体懸濁液の調製と酵素活性確認
<湿菌体の調製>
0.3%2−デオキシリボース、0.2%塩化アンモニウム、0.1%リン酸一カリウム、0.1%リン酸二カリウム、0.03%硫酸マグネシウム・七水塩、0.01%酵母エキスを含む培地(pH7.0)の5mlを試験管(16×165mm)に入れ滅菌した。これにB−44を1白金耳植菌し、28℃で2日間、300rpmで振盪培養した。この培養液を、500mLの上記培地を含む2L容三角フラスコに接種し、28℃、120rpmで10〜12時間振盪培養した。0.85%食塩水で2度洗浄して、湿菌体を得た。以下、この湿菌体をB−44湿菌体という。
【0069】
<湿菌体の酵素活性確認>
200mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、200mMアセトアルデヒド、87.5mMのDL−グリセルアルデヒド3−リン酸になるように調合した60μLの水溶液に、12.5%(w/v)のB−44湿菌体を加え、30℃で3時間撹拌した。遠心分離により得られた上清をTLCで分析した結果、2−デオキシリボース5−リン酸を検出した。
【0070】
同様に、200mMアセトアルデヒド、116.6mMのジヒドロキシアセトンリン酸になるように調合した60μLの水溶液に、16.6%(w/v)のB−44湿菌体を加え、30℃で3時間撹拌した。遠心分離により得られた上清をTLCで分析した結果、2−デオキシリボース5−リン酸を検出した。
【0071】
製造例2:ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含む菌体懸濁液の調製と酵素活性確認
<湿菌体の調製>
0.2%イノシン、0.1%リン酸二カリウム、0.5%塩化アンモニウム、0.01%塩化マンガン・四水塩、0.08%硫酸マグネシウム・七水塩、0.2%酵母エキスの10mlを含む培地(pH7.0)を50ml三角フラスコへ入れ、滅菌した。これにYGK−6054を1白金耳植菌し、52℃、130rpmで9時間往復振とうし、前培養液を得た。上記の培地100mlを500ml三角フラスコへ入れ滅菌し、前培養液5mlを加えて52℃、100rpmで18.5時間往復振とうした。培養液を遠心分離して静止菌体を得た。0.85%食塩水100mlに菌体を懸濁して再び遠心分離し、洗浄菌体を得た。以下、この湿菌体をYGK−6054湿菌体という。湿菌体重は0.66gで、胞子のう細胞の状態であった。
【0072】
<湿菌体の酵素活性確認>
0.3Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、50mM2−デオキシリボース5−リン酸、50mMアデニン、0.1mMグルコース1,6−二リン酸、0.3Mアセトアルデヒド、12.5%(w/v)のYGK−6054湿菌体を含む反応液50μlを調製した。50℃で6時間振とうして反応を行った。遠心分離により得られた上清をHPLCで分析した結果、11.5mMの2’−デオキシアデノシンを検出した。
【0073】
実施例1:2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼによる反応と、ホスホペントムターゼ及びヌクレオシドホスホリラーゼによる反応のカップリング
200mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、200mMアセトアルデヒド、87.5mMのDL−グリセルアルデヒド3−リン酸及び12.5%(w/v)のB−44湿菌体になるように調合した50μLの水溶液を、30℃で5時間撹拌した。その反応液に、600mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、600mMアセトアルデヒド、100mM各種核酸塩基、0.1mMグルコース1,6−二リン酸及び25.0%(w/v)のYGK−6054湿菌体を含む溶液50μlを添加し、50℃で12時間撹拌した。遠心分離により得られた上清をHPLCで分析した。
【0074】
結果を表1に示す。アデニン、ヒポキサンチン及びシトシンを添加したときに、それぞれ対応する2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシイノシン及び2’−デオキシシチジンが得られた。
【0075】
実施例2:トリオースリン酸イソメラーゼ及び2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼによる反応と、ホスホペントムターゼ及びヌクレオシドホスホリラーゼによる反応のカップリング
200mMアセトアルデヒド、116.6mMジヒドロキシアセトンリン酸及び16.6%(w/v)のB−44湿菌体になるように調合した50μLの水溶液を、30℃で5時間撹拌した。その反応液に、600mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、600mMアセトアルデヒド、100mM各種核酸塩基、0.1mMグルコース1,6−二リン酸及び25.0%(w/v)のYGK−6054湿菌体を含む溶液50μlを添加し、50℃で12時間撹拌した。遠心分離により得られた上清をHPLCで分析した。
【0076】
結果を表1に示す。アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、シトシン、チミン及びウラシルを添加したときに、それぞれ対応する2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、2’−デオキシイノシン、2’−デオキシシチジン、チミジン及び2’−デオキシウリジンが得られた。
【0077】
【表1】
Figure 0004058667
【0078】
実施例3:2’−デオキシヌクレオシド化合物の生成におけるホスホペントムターゼ阻害に対する各種塩の効果
上述のとおり、ホスホペントムターゼによる反応は、ジヒドロキシアセトンリン酸又はグリセルアルデヒド3−リン酸によって阻害を受けることが、本発明において新たな問題として提起された。そこで、この阻害に対する各種塩の効果を本実施例において検討した。本実施例では、2−デオキシリボース5−リン酸とアデニンから2’−デオキシアデノシンを生成する反応を実施し、該反応におけるジヒドロキシアセトンリン酸の阻害効果を、各種塩が緩和し得るか否かを調べた。以下、その詳細である。
【0079】
0.3Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、50mMジヒドロキシアセトンリン酸(又は無添加)、50mM2−デオキシリボース5−リン酸、50mMアデニン、0.1mMグルコース1,6−二リン酸、0.3Mアセトアルデヒド、0.2M各種塩(リン酸二カリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、又は硫酸アンモニウム)、25%(w/v)のYGK−6054湿菌体を含む反応液50μlを調製した。50℃で6時間振とうして反応を行った。遠心分離により得られた上清をHPLCで分析し、生成した2’−デオキシアデノシンを検出した。
【0080】
結果を表2に示す。ジヒドロキシアセトンリン酸が非存在下の際、塩によるホスホペントムターゼに対する活性化効果を調べたところ、各種塩の中では酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムを添加したとき、2’−デオキシアデノシンの生成活性が、それぞれ170%、150%と向上した。
【0081】
また、ジヒドロキシアセトンリン酸を添加し、ホスホペントムターゼを阻害する条件下で塩による阻害の解除効果を見たところ、ジヒドロキシアセトンリン酸添加により22%まで低下した酵素活性が、各種塩の中では酢酸アンモニウウム又はギ酸アンモニウムの添加により、それぞれ32%、49%まで活性が回復した。
【0082】
【表2】
Figure 0004058667
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、安価で入手しやすいアセトアルデヒド及びグリセルアルデヒド3−リン酸を原料として、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼ、ホスホペントムターゼ及びヌクレオシドホスホリラーゼの3種類の酵素を利用し互いに反応をカップリングさせることにより、所望の2’−デオキシヌクレオシド化合物を選択的に得ることができる。
【0084】
また、本発明によれば、安価で入手しやすいアセトアルデヒド及びジヒドロキシアセトンリン酸を原料として、トリオースリン酸イソメラーゼ、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼ、ホスホペントムターゼ及びヌクレオシドホスホリラーゼの4種類の酵素を利用し互いに反応をカップリングさせることにより、所望の2’−デオキシヌクレオシド化合物を選択的に得ることができる。
【0085】
このように、本発明は、反応の中間生成物を単離することなく最終産物を得ることができるという利点を有する。更に本発明は、複数の酵素が共存する反応系で複数の反応を行っているため、各々の平衡反応を所定の方向にシフトさせることは難しいが、添加剤の検討などにより収率を向上させることができた点で優れた効果を有するものである。

Claims (6)

  1. グリセルアルデヒド3−リン酸とアセトアルデヒドを、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させて、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させ、次に該2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させることを特徴とする2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
  2. ジヒドロキシアセトンリン酸とアセトアルデヒドを、2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させて、2−デオキシリボース5−リン酸を生成させ、次に該2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させることを特徴とする2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
  3. 2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物がクレブシエラ・ニューモニエ B−44(IFO 16579)であり、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物がバチルス・コアギュランス YGK−6054(FERM BP−7898)、又はバチルス・スピーシーズ YGK−6008(FERM BP−7897)である請求項1記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
  4. 2−デオキシリボース5−リン酸アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼを含有するクレブシエラ属の微生物がクレブシエラ・ニューモニエ B−44(IFO 16579)であり、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物がバチルス・コアギュランス YGK−6054(FERM BP−7898)、又はバチルス・スピーシーズ YGK−6008(FERM BP−7897)である請求項2記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
  5. 反応中間体である2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させる際に、アルデヒド類を共存させることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
  6. 反応中間体である2−デオキシリボース5−リン酸と核酸塩基を、ホスホペントムターゼとヌクレオシドホスホリラーゼを含有するバチルス属の微生物の菌体又は該微生物由来の酵素により反応させる際に、酢酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムを共存させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の2’−デオキシヌクレオシド化合物の製造方法。
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