JP4057508B2 - 消泡剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、内添安定性、消泡性に優れ、ハジキの発生のない消泡剤組成物に関する。
シリコーン系消泡剤は他の消泡剤に比べて種々の優れた性質を持っているので、化学工業、食品工業、石油工業、織物工業、製紙工業、紙パルプ工業、医薬品工業などの発泡を伴う製造工程において広く使用されている。このシリコーン系消泡剤としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンオイルを微粉末シリカと混合したオイルコンパウンド型消泡剤、これらのオイルコンパウンドを界面活性剤と共に水中に分散してなるエマルジョン型消泡剤が汎用されている。
しかし、ジメチルポリシロキサンを含むこれらの消泡剤は、ジメチルポリシロキサンが疎水性であるため、水性塗料、ラテックス、水性インキ、染色工業、サイズ剤等の用途に使用された場合、ハジキ、染色ムラ、フィッシュアイ、オイルスポット等が発生しやすい問題がある。
このため、ポリオキシアルキレン基で変性したオルガノポリシロキサン(ポリエーテル変性シリコーン)/ポリプロピレングリコール/微粉末シリカを含む消泡剤(特許文献1)、アルキル基を導入したオルガノポリシロキサン/ポリエーテル変性シリコーン/シリカを含む消泡剤(特許文献2、特許文献3)、ポリエーテル変性シリコーンに長鎖アルキル基を導入したアルキル・ポリエーテル共変性シリコーン/微粉末シリカを含む消泡剤(特許文献4)が提案されている。これらは比較的ハジキを発生しにくいものの、ジメチルポリシロキサンを使用したものと比較して消泡性が著しく劣っている。また、シルカルベン単位を分子中に有するポリシルカルベンシロキサンとポリエーテル変性シリコーンを含む消泡剤(特許文献5)も提案されている。この消泡剤はある程度ハジキ抑制性が改良されているものの、ポリシルカルベンシロキサンの製造方法が特殊であるため、ジメチルポリシロキサンを使用した消泡剤と比較して高価となり一般工業用としては不向きである。
これらの問題を解決するため、一般的には、オクチルフェニルエーテル、ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の、消泡剤の濡れ性・ハジキ抑制性・内添安定性等に効果のあるアルキルフェニルエーテル系の活性剤を添加した消泡剤が使用されてきた。しかし、アルキルフェニルエーテル系の活性剤は、近年の研究により内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)として作用する恐れのあることが報告されている。このことから、アルキルフェニルエーテル系の活性剤の使用を制限もしくは中止することが検討されているが、これらの活性剤を使用せずにジメチルポリシロキサン由来のハジキの問題を満足させる消泡剤は得られておらず、早急の対策が求められている。
特公昭54−9145号 特開昭54−149388号 特開昭56−129013号 特開昭57−180407号 特開平8−108007号
本発明は上記事情を改善するためになされたもので、水性塗料、ラテックス、水性インキ、染色工業、サイズ剤等の用途に使用された場合においても、ハジキ、染色ムラ、フィッシュアイ、オイルスポット等の発生がなく、アルキルフェニルエーテル系活性剤を含まなくても消泡性に優れたペインタブル性消泡剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、疎水性オルガノポリシロキサンと微粉末シリカとを含んでなるオイルコンパウンドにポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとオレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンを配合することにより、優れた消泡性を有しながらも、ハジキの発生しない消泡剤組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、
(イ)25℃における粘度が10〜100,000mm/sである疎水性オルガノポリシロキサン100質量部と微粉末シリカ2〜30質量部とを含んでなるオイルコンパウンド: 100質量部、
(ロ)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン: 20〜100質量部、
(ハ)1分子中にオレフィン性不飽和基を少なくとも2個含有し、25℃における粘度が5〜5,000mm/sであるオルガノポリシロキサン: 10〜100質量部、
(ニ)非イオン性界面活性剤: 1〜100質量部、
(ホ)平均分子量が500〜5,000であるポリオキシアルキレン重合体:
0〜100質量部、
ならびに、
(ヘ)水:(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)および(ホ)の全成分の合計量100質量部に対して、60〜1000質量部
を含有してなることを特徴とする消泡剤組成物を提供する。
本発明の消泡剤組成物は、ハジキの発生がなく、内添安定性および消泡性に優れることから、水性インキ用、水性塗料用および各種サイズ剤用の消泡剤として最適である。
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
[(イ)成分]
本発明の消泡剤組成物の(イ)成分は、疎水性オルガノポリシロキサンと微粉末シリカとを含んでなるオイルコンパウンドであり、この組成物に消泡性を付与するための主成分である。
ここに使用される疎水性オルガノポリシロキサンは直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、平均組成式(I)
SiO(4−a)/2 (I)
[式中、Rは水酸基または置換もしくは非置換の、好ましくは炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、aは1.9〜2.2の数である。]
で示される。
この平均組成式(I)におけるRは水酸基または置換もしくは非置換の、好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜14、さらにより好ましくは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、スチリル基などのアラルキル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル基などが挙げられる。また、消泡性および経済性の面からその90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
平均組成式(I)中のaは1.9≦a≦2.2で示される。aがこの範囲であると、作業性、乳化特性および消泡性がより好ましくなる。
上記平均組成式(I)で表される疎水性オルガノポリシロキサンの好ましいより具体的な例としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサンコポリマー、ポリメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
(イ)成分に含まれるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は10〜100,000mm/sであるが、消泡性および作業性の面から好ましくは50〜50,000mm/s、より好ましくは100〜10,000mm/sである。また、このオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
また、ここで使用される微粉末シリカは公知のものでよく、例えば、沈降シリカ等の湿式シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ等の乾式シリカのいずれでもよい。これらは親水性シリカである。具体的には、親水性シリカの市販品の例としては、「アエロジル(日本アエロジル社製)」、「ニプシル(日本シリカ社製)」、「サイリシア(富士シリシア社製)」等が挙げられる。これらはBET法による比表面積が100m/g以上のものが好ましい。
また、親水性シリカの表面を有機シリル基で表面処理して調製した疎水性シリカを用いてもよい。親水性シリカの表面疎水化処理は従来公知の方法によって、すなわち、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で親水性シリカを処理することによって行うことができる。
微粉末シリカの添加量が上記疎水性オルガノポリシロキサン100質量部に対して2質量部未満だと本発明の消泡剤組成物の消泡性が劣る。一方、その添加量が30質量部より多いとオイルコンパウンド組成物の粘度が増加して本発明の消泡剤組成物の作業性が悪くなる。したがって、微粉末シリカの添加量は疎水性オルガノポリシロキサン100質量部に対して2〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部の範囲である。
さらに本発明においては、疎水性シリカと親水性シリカとを組み合わせて使用することが、ハジキ抑制効果と消泡効果をより向上させることができるため好ましい。そのとき、疎水性シリカ/親水性シリカの質量比は好ましくは1/1〜1/3、より好ましくは1/1.2〜1/2.8、さらにより好ましくは1/1.5〜1/2.6である。この範囲では、本発明の消泡剤組成物のハジキ抑制効果が高くなり、また、この消泡剤組成物の消泡性が持続しやすくなる。
また、(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドは、例えば、上記疎水性オルガノポリシロキサンと微粉末シリカを所定量混合し、室温〜200℃の温度で処理してから必要に応じて低沸点留分を除くことによって製造することができる。こうして得られるオイルコンパウンドに、例えば、特公平4−42043号、特開平5−261206号に記載のように、さらに無機質アンモニウム塩、有機ケイ素化合物、シロキサン樹脂などを消泡持続性、高温特性、希釈安定性などの向上のために添加してもよい。
さらに、疎水性シリカと親水性シリカとを組み合わせて使用する場合、このシリコーンオイルコンパウンドは、例えば、疎水性シリカの親水性シリカに対する質量比が所定の質量比となるように、疎水性オルガノポリシロキサンに所定量の微粉末シリカを配合することにより製造してもよい。または、疎水性オルガノポリシロキサンと親水性シリカとを含んでなるオイルコンパウンド(X)と疎水性オルガノポリシロキサンと疎水性シリカとを含んでなるオイルコンパウンド(Y)を製造し、疎水性シリカの親水性シリカに対する質量比が目的とする所定の質量比となるような割合で(X)と(Y)を混合または併用してもよい。
[(ロ)成分]
次に、本発明の消泡剤組成物において(ロ)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドの水系への乳化分散性を高めるとともにこのシリコーンオイルコンパウンドのハジキ性を抑制する作用を有する。該(ロ)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(II)で示される。
SiO(4−b−c)/2 (II)
式中、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数1〜16、より好ましくは炭素原子数1〜14の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、スチリル基などのアラルキル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル基などが挙げられる。また、消泡性および経済性の面から、R全体の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
は一般式(III)
−R−O−(RO)−R (III)
で示される有機基である。式中、Rはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素原子数2〜6の2価炭化水素基、Rはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、Rは水素原子または、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基、アセチル基、もしくはイソシアノ基から選択される1価の有機基である。また、1.9≦b+c≦2.2である。さらに、dは1以上の整数である。
このポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、Si−H基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと分子鎖末端にアリル基などの不飽和基を有するポリオキシアルキレン化合物を白金等の触媒の存在下、付加反応することによって得ることができる。
(ロ)成分の含有量が(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンド100質量部に対して20質量部未満だと、本発明の消泡剤組成物のハジキ抑制効果が十分でない。一方、その含有量が100質量部を超えると、本発明の消泡剤組成物の消泡性が低下する。よって、(ロ)成分の含有量は(イ)成分100質量部に対して20〜100質量部、好ましくは25〜90質量部、より好ましくは30〜80質量部である。
さらに、このポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの少なくとも60質量%が下記一般式(IV)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
SiO−(R SiO)−(RSiO)−SiR (IV)
式中、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数1〜16、より好ましくは炭素原子数1〜14の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、スチリル基などのアラルキル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル基などが挙げられる。また、消泡性および経済性の面から、R全体の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
は一般式(V)
−R10−O−(R11O)−(R12O)−R13 (V)
で示される有機基である。式中、R10はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素原子数2〜6の2価炭化水素基、R11はエチレン基、R12はプロピレン基、R13はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基、アセチル基、またはイソシアノ基から選択される1価の有機基である。gはg≧1の整数、hはh≧1の整数である。(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドの乳化分散を容易に行うのに適した粘度を確保できるので、2≦g+h≦80であるが、好ましくは10≦g+h≦60である。また、g/h比が5/1より大きいと本発明の消泡剤組成物の消泡性が低下する。一方、g/h比が4/5より小さいと(イ)成分の乳化分散が難しくなる。よって、g/h比は5/1〜4/5、好ましくは4.5/1〜4.5/5、より好ましくは4/1〜1/1の範囲である。
はメチル基またはRについて説明した一般式(V)で表される有機基である。
また、(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドの乳化分散を容易に行うのに適した粘度を確保でき、また、本発明の消泡剤組成物の乳化安定性を確保できるので、eは5〜100の整数であるが、好ましくは10〜90の整数、より好ましくは20〜70の整数である。
(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドの乳化分散が可能であり、また、本発明の消泡剤組成物の消泡性とハジキ抑制効果が確保できるので、fは1〜20の整数であるが、好ましくは2〜15の整数、より好ましくは3〜10の整数である。
一般式(IV)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドの乳化分散が容易に行われることから、10〜10,000mm/s、好ましくは100〜6,000mm/s、より好ましくは400〜4,000mm/sである。
平均組成式(II)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては次のものを挙げることができる。
(CHSiO−[(CHSiO]30−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)30−(CO)10−C
(CHSiO−[(CHSiO]30−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)20−(CO)20−C
(CHSiO−[(CHSiO]40−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)21−(CO)−COCH
(CHSiO−[(CHSiO]50−[(CH)R’SiO]−[(CH)R’’SiO]−Si(CH
R’:−CO−(CO)32−(CO)−C
R’’:−C1225
[(ハ)成分]
本発明の消泡剤組成物の(ハ)成分は、1分子中にオレフィン性不飽和基を少なくとも2個、好ましくは2〜10個含有するオルガノポリシロキサンであり、ハジキを抑制する成分である。(ハ)成分のオレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(VI)で示される。
14 15 SiO(4−i−j)/2 (VI)
[式中、R14は好ましくは炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、R15は炭素原子数2〜6の1価オレフィン性不飽和基、iおよびjは0≦i≦2.999、0<j≦3および0.1≦i+j≦3を満たす数である。]
式中、R14は好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは炭素原子数1〜8、さらにより好ましくは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R14としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。消泡性および経済性の面から、R14全体の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
また、R15は炭素原子数2〜6の1価オレフィン性不飽和基である。R15としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などの1価オレフィン性不飽和基が挙げられる。経済性および生産性の面から、工業的にはR15がビニル基であることが好ましい。
さらに、(i+j)の値は0.1〜3の範囲内であることが好ましく、この範囲内では、本発明の消泡剤組成物の作業性、乳化特性および得られるハジキ抑制効果がより良好になる。よって、iおよびjは0≦i≦2.999、0<j≦3および0.1≦i+j≦3を満たす数であり、好ましくは0≦i≦2.295、0.005≦j≦2.3および0.5≦i+j≦2.3を満たす数である。
平均組成式(VI)で表されるオレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、α,ω−ジビニルジメチルポリシロキサン、ポリジメチル−ポリメチルビニルシロキサンコポリマー、α,ω−ジビニル−ポリジメチル−ポリメチルビニルシロキサンコポリマー等が挙げられる。
(ハ)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。(ハ)成分の25℃における粘度が5mm/sより低いと、(ハ)成分は揮発性になるため、本発明の消泡剤組成物の消泡効果が十分には発揮されない。一方、当該粘度が5,000mm/sを超えると、本発明の消泡剤組成物の乳化性が低下し、そのハジキ抑制効果が十分ではなくなる。よって、(ハ)成分の25℃における粘度は、5〜5,000mm/s、好ましくは6〜2,000mm/s、より好ましくは10〜1,000mm/sである。
また、(ハ)成分の含有量が(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンド100質量部に対して10質量部未満では本発明の消泡剤組成物のハジキ抑制効果が十分でない。一方、その含有量が(イ)成分100質量部に対して100質量部を超えると、本発明の消泡剤組成物の消泡性が低下する。よって、(ハ)成分の含有量は、(イ)成分100質量部に対して10〜100質量部、好ましくは12〜85質量部、より好ましくは15〜70質量部である。
[(ニ)成分]
また、(ニ)成分の非イオン性界面活性剤は(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドを水に分散させるためのものである。(ニ)成分の非イオン性界面活性剤は一般に公知のものでよく、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等が挙げられる。この非イオン性界面活性剤は、1種のみで使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用した方が、(イ)成分の乳化性が向上するので、好ましい。
(ニ)成分の使用量は(イ)成分100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは15〜60質量部である。その使用量が1質量部より少ないと本発明の消泡剤組成物の乳化安定性が不足する。一方、その使用量が100質量部を超えると本発明の消泡剤組成物の消泡性が低下する。
[(ホ)成分]
本発明の消泡剤組成物において、(ホ)成分のポリオキシアルキレン重合体は、(イ)成分のシリコーンオイルコンパウンドを乳化分散させるときに乳化助剤となるものである。これは、使用しても使用しなくてもよいが、使用することにより本発明の消泡剤組成物の乳化安定性がより向上する。(ホ)成分のポリオキシアルキレン重合体は、例えば、下記一般式(VII)
16−O−(R17O)−R16 (VII)
で示される。
式中、R16は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。R16で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、アセチル基、ステアロイル基、アリル基等が挙げられる。また、R17はエチレン基、プロピレン基等の2価炭化水素基である。
このポリオキシアルキレン重合体の平均分子量が500未満だと本発明の消泡剤組成物の乳化安定性が悪い。一方、この平均分子量が5000を超えると本発明の消泡剤組成物の粘度が高くなり、その作業性が悪くなる。よって、このポリオキシアルキレン重合体の平均分子量は500〜5000、好ましくは1000〜4500、より好ましくは1,500〜4,200である。
ここで平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量を意味する。
該ポリオキシアルキレン重合体のより好ましい例としては、次のものが挙げられる。
HO−[CH(CH)CHO]35−H、
HO−[CH(CH)CHO]70−H、
HO−(CHCHO)−[CH(CH)CHO]30−H、
CHCHCHO−(CHCHO)32−[CH(CH)CHO]−H、
CHCHCHO−(CHCHO)22−[CH(CH)CHO]22−C
CHCHCHO−(CHCHO)10−CH
なお、(ホ)成分を使用する場合、その使用量は(イ)成分100質量部に対して100質量部以下、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは30〜80質量部である。その使用量が100質量部より多いと、本発明の消泡剤組成物の消泡性が低下する。
[(ヘ)成分]
本発明の消泡剤組成物では、上記した(イ)〜(ホ)成分からなる系を乳化するのに必要な水を(へ)成分として添加する。(へ)成分の添加量は、前記した(イ)〜(ホ)成分の合計100質量部に対して、60〜1000質量部、好ましくは70〜600質量部、より好ましくは80〜300質量部である。その添加量が60質量部より少ないと消泡剤組成物の粘度が高くなりすぎる。一方、その添加量が1000質量部より多くなると有効成分濃度が低くなりすぎるので、十分な効果を発揮するためには消泡剤組成物の添加量を多くする必要がある。
[その他の成分]
さらに、本発明の消泡剤組成物には、防腐の目的で少量の保存料・殺菌料を任意で添加してもよい。この保存料・殺菌料の具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン類、イソチアゾリン化合物等が挙げられる。これらの添加量は本発明の消泡剤組成物100質量部に対して好ましくは0.005〜1.0質量部、より好ましくは、0.01〜0.8質量部、さらにより好ましくは、0.02〜0.5質量部である。
[組成物の調製]
本発明の消泡剤組成物の乳化物は、上記(イ)〜(へ)成分の所定量を混合し、ホモミキサー、ホモイジナイザー、コロイドミル等の混合・分散機により均一に撹拌することにより、調製することができる。より好ましくは、例えば、まず、(イ)〜(ホ)成分の所定量を均一に混合分散させ、次に、(へ)成分の所定量の一部を添加し、撹拌・乳化を行い、最後に、(へ)成分の残部を加え均一に撹拌・混合することにより、消泡剤組成物を調製することができる。
[組成物の使用方法]
さらに、本発明は、液体の消泡方法であって、上記(イ)〜(へ)成分の所定量を含有してなる本発明の消泡剤組成物を当該液体に添加する工程を含む方法を提供する。当該液体には、例えば、単一の成分からなる液体、溶液、乳濁液、懸濁液などが含まれる。また、当該液体は、水性液体および油性液体のどちらでもよいが、好ましくは水性液体である。水性液体としては、例えば、水性インキ、水性塗料などを挙げることができる。本発明の消泡方法において、本発明の消泡剤組成物は、(イ)〜(ホ)成分の混合物の添加量が当該液体100質量部に対して好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.05〜1質量部、さらにより好ましくは0.1〜0.8質量部となるような量で当該液体に添加される。
次に本発明の実施例と比較例を挙げる。これらは本発明の内容を何ら制限するものではない。なお、例中における粘度は25℃での測定値である。
(イ)成分
・オイルコンパウンドA
疎水性オルガノポリシロキサンとして、粘度が1,000mm/sのジメチルポリシロキサン100質量部を用いた。また、微粉末シリカとして、親水性シリカであるNipsil HD−2[日本シリカ(株)社製、比表面積300m/g] 10質量部を用いた。これら二者を窒素ガス雰囲気下150℃で3時間、混合してオイルコンパウンドAを得た。オイルコンパウンドAは、疎水性オルガノポリシロキサンと親水性シリカとを含んでなるオイルコンパウンドである。
・オイルコンパウンドB
疎水性オルガノポリシロキサンとして、粘度が5,000mm/sでCHSiO3/2単位を0.01モル分率含有する分岐状のジメチルポリシロキサン100質量部を用いた。また、微粉末シリカとして、親水性シリカであるAEROSIL200[日本アエロジル(株)社製、比表面積200m/g]をヘキサメチルジシラザンで表面処理して調製した表面疎水化処理シリカ5質量部を用いた。これら二者を窒素ガス雰囲気下150℃で3時間、混合してオイルコンパウンドBを得た。オイルコンパウンドBは、疎水性オルガノポリシロキサンと疎水性シリカとを含んでなるオイルコンパウンドである。
(ロ)成分
・ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンC
(CHSiO−[(CHSiO]30−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)30−(CO)10−C
粘度:1000mm/s
・ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンD
(CHSiO−[(CHSiO]30−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)20−(CO)20−C
粘度:2000mm/s
・ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンE
(CHSiO−[(CHSiO]30−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)24−(CO)16−H
粘度:1500mm/s
・ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンF
(CHSiO−[(CHSiO]70−[(CH)RSiO]−Si(CH
R:−CO−(CO)−(CO)24−H
粘度:800mm/s
(ハ)成分
・オレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンG
(CHRSiO−[(CHSiO]15−SiR(CH
R:−CH=CH
粘度:10mm/s
・オレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンH
(CHRSiO−[(CHSiO]80−SiR(CH
R:−CH=CH
粘度:100mm/s
・オレフィン性不飽和基含有オルガノポリシロキサンI
(CHRSiO−[(CHSiO]280−[(CH)RSiO]15−SiR(CH
R:−CH=CH
粘度:800mm/s
(ニ)成分
(1)ソルビタンモノステアレート
(2)モノステアリン酸ポリエチレングリコール(EO付加モル数50)
(ホ)成分
・ポリオキシアルキレン重合体J
平均組成がHO−(CO)35−Hで表されるもの
・ポリオキシアルキレン重合体K
平均組成がHO−(CO)70−Hで表されるもの
表1に示した所定量の(イ)〜(ホ)成分を70℃に加熱しホモミキサーで均一に混合した。その後、この混合物に(ヘ)成分を徐々に添加して、消泡剤組成物を調製した。この組成物について、ハジキ抑制性、消泡性、安定性を調査した。
[ハジキ抑制性試験]
(1)水性インキ100質量部に、0.5質量部の有効成分((イ)〜(ホ)成分の混合物)を含む消泡剤組成物を添加する。
(2)消泡剤組成物を添加した水性インキをワイヤーバー(No.14)にて上質ケント紙に塗布する。
(3)次の基準にて評価を行う。
ハジキは、インクが付着しない部分として斑点状に一様な密度で現れる。ハジキが全くない場合を◎、最も高い密度で全面にハジキが現れる場合を××で表す。両者の中間の密度でハジキが現れる場合を、ハジキの密度の低い順から相対的に○、△、×で表す。
[消泡性試験]
(1)市販の水性インキ100質量部に、0.5質量部の有効成分((イ)〜(ホ)成分の混合物)を含む消泡剤組成物を添加する。
(2)100gガラスびんに消泡剤組成物を添加した水性インキを50g入れる。
(3)そのガラスびんを縦振り振とう器で250回/分の速度で30秒間振とうする。
(4)撹拌停止後、泡が消失するまでの時間を計測し、次の基準にて評価を行う。
○:撹拌停止後、30秒以内に泡が消失
△:撹拌停止後、30秒を超え、1分以内に泡が消失
×:撹拌停止後、泡が消失するまでに1分超の時間を要する
[安定性試験]
(1)100gガラスびんに入れた消泡剤組成物を45℃で保管し、状態を観察。
(2)次の基準にて評価を行う。
○:2ヶ月を超えても濃淡分離、オイル分離等が見られない
△:1ヶ月を超え、2ヶ月以内に、濃淡分離、オイル分離等が見られる
×:1ヶ月以内に、濃淡分離、オイル分離等が見られる。
各成分の配合比および評価結果を表1に示した。
表1の結果より、本発明により得られた消泡剤組成物は、アルキルフェニルエーテル系の活性剤を使用しなくても、ハジキ抑制性、消泡性および安定性に優れることが認められる。
Figure 0004057508
本発明の消泡剤組成物は、ハジキの発生がなく、内添安定性および消泡性に優れることから、水性インキ用、水性塗料用および各種サイズ剤用の消泡剤として最適である。また、本発明の消泡剤組成物は、化学工業、食品工業、石油工業、織物工業、製紙工業、紙パルプ工業、医薬品工業などの発泡を伴う製造工程において広く使用することができる。

Claims (3)

  1. (イ)25℃における粘度が10〜100,000mm/sである疎水性オルガノポリシロキサン100質量部と微粉末シリカ2〜30質量部とを含んでなるオイルコンパウンド: 100質量部、
    (ロ)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン: 20〜100質量部、
    (ハ)1分子中にオレフィン性不飽和基を少なくとも2個含有し、25℃における粘度が5〜5,000mm/sであるオルガノポリシロキサン: 10〜100質量部、
    (ニ)非イオン性界面活性剤: 1〜100質量部、
    (ホ)平均分子量が500〜5,000であるポリオキシアルキレン重合体:
    0〜100質量部、
    ならびに、
    (ヘ)水:(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)および(ホ)の全成分の合計量100質量部に対して、60〜1000質量部
    を含有してなることを特徴とする消泡剤組成物。
  2. (イ)成分のオイルコンパウンドが、25℃における粘度が10〜100,000mm/sである疎水性オルガノポリシロキサン100質量部と、疎水性シリカおよび親水性シリカを1/1〜1/3の質量比で含む微粉末シリカ2〜30質量部とを含んでなるオイルコンパウンドである請求項1に記載の消泡剤組成物。
  3. (ロ)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの少なくとも60質量%が下記一般式(IV)
    SiO−(R SiO)−(RSiO)−SiR (IV)
    [ここで、Rは同一または異種の置換もしくは非置換の炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、Rは一般式(V)
    −R10−O−(R11O)−(R12O)−R13 (V)
    (R10は炭素原子数2〜6の2価炭化水素基、R11はエチレン基、R12はプロピレン基、R13は炭素原子数1〜6のアルキル基、アセチル基、またはイソシアノ基から選択される1価の有機基、gはg≧1の整数、hはh≧1の整数、2≦g+h≦80で、g/h比が5/1〜4/5)で表される有機基であり、Rはメチル基または前記一般式(V)で表される有機基である。更にeは5〜100の整数であり、fは1〜20の整数である]
    で示され、一般式(IV)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が10〜10,000mm/sであることを特徴とする請求項1または2に記載の消泡剤組成物。

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