JP4056862B2 - 紙用填料、及びその填料を含有する紙 - Google Patents

紙用填料、及びその填料を含有する紙 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙厚を向上させることのできる紙用填料及びその填料を含有する紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の原木供給事情の悪化や環境保全の立場から、少ないパルプ量で従来の品質を維持した紙が求められている。しかし、単にパルプ量を減らしただけでは、紙が薄くなって不透明度が低下してしまうことから、不透明度を低下させないで紙厚を保持してパルプ量を減らせる、すなわち紙厚を向上させることができる薬品が求められている。
【0003】
紙厚を向上させる薬品としては、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応物(以下、「CAE樹脂」)が多孔性向上剤及び不透明度向上剤として有用であることが知られている(特許文献1及び2)。また、特定の脂肪酸或いはアルコールのポリオキシアルキレン付加物も紙厚を向上させることが特許文献に開示されており(特許文献3及び4)、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物も紙厚を向上させることが特許文献に記載されている(特許文献5)。
【特許文献1】
特開昭61−252400号公報(第2頁、発明の詳細な説明欄第18行〜第26行)
【特許文献2】
特開平2000−273792号公報(【0003】及び【0004】参照)
【特許文献3】
特開平11−200284号公報(【0005】及び【0006】参照)
【特許文献4】
WO098/03730号公報(第2頁、発明の概要、第1〜15行)
【特許文献5】
特許第2971447号公報(【0003】及び【0004】参照)
しかし、これらの紙厚を向上させる薬品は、その紙厚向上効果が充分満足されるものではなく、また、抄紙系での発泡が多いという問題がある場合もある。
【0004】
以上より、従来公知の技術は紙厚を向上させる効果とともに紙の他の性質や操業性を損なう問題を有している。これらの問題を解決するため、より優れた紙厚向上処方が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた紙厚向上効果を有する紙用填料、及びその填料を含有する紙を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、含水ケイ酸又はケイ酸塩の粒子と、特定の高級アルコール又は高級脂肪酸にポリオキシアルキレン基が付加した非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン基の両端に高級アルコール又は高級脂肪酸が付加した非イオン性界面活性剤あるいは特定のCAE樹脂等とを混合してなる紙用填料を使用すると、その紙厚向上効果は単に薬剤それぞれの効果の相加平均ではなく、相乗効果が奏されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、前記課題を解決するための手段として、
請求項1に記載の構成は、含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子、並びに、化合物Aを混合して成り、
前記化合物Aは、
(I)下記一般式(1)で表される化合物、
(II)下記一般式(2)で表される化合物及び/又は下記一般式(3)で表される化合物、
(III)モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド化合物と、エピハロヒドリンとの反応物
のいずれかであることを特徴とする紙用填料であり、
R−A−(EO) (PO) −H ・・・ (1)
(但し、一般式(1)中、−A−は−O−又は−COO−を示し、Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。)
1 −A 1 −(EO) (PO) −CO−R 2 ・・・(2)
1 −O−(EO) (PO) −R 2 ・・・(3)
(但し、一般式(2)及び一般式(3)中、−A 1 −は−O−又は−COO−を示し、R 1 、及びR 2 は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R 1 とR 2 とは同一であっても異なっていてもよいが、少なくともR 1 、及びR 2 のどちらか一方は炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。)
請求項2に記載の構成は、前記化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子が、下記(1)〜(3)の物性値を有することを特徴とする請求項1に記載の紙用填料であり、
(1)比表面積が50〜250m2/g、
(2)細孔半径が0.01〜0.1μmの範囲内にある細孔の容積が0.7〜1.6cc/g、
(3)細孔半径が0.5〜2μmの範囲内にある細孔の容積が0.4〜1.3cc/g
請求項3に記載の構成は、前記化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子は、(4)細孔半径が0.035〜7.6μmの範囲内にある細孔の容積が少なくとも2.5cc/gであることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の紙用填料であり、
請求項4に記載の構成は、前記化合物Aと混合される前の含水ケイ酸が、(a)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との反応により生成され、化合物Aと混合される前のケイ酸塩が、(b)ケイ酸アルカリ水溶液と、ケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を生成可能な塩の水溶液との反応により生成されてなる前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙用填料であり
請求項5に記載の構成は、請求項1〜のいずれか一項に記載の紙用填料を含有する紙である。
【0008】
【発明の実施の形態】
(化合物A)
本発明に使用される化合物Aは、アルキル基又はアルケニル基である疎水性基(以下において、このアルキル基又はアルケニル基を単に疎水性基と称することがある。)と親水性基とが、アミド結合、エステル結合、及びエーテル結合よりなる群から選択される少なくとも一種により結合してなる化合物である。
【0009】
上記アルキル基又はアルケニル基は、直鎖構造、枝分かれ構造又は環状構造の何れか、又はそれら各種の構造を同時に有していてもよい。前記アルキル基又はアルケニル基は、十分な疎水性を示すにはその炭素数が4以上、好ましくは炭素数が6〜24である。前記アルキル基又はアルケニル基は、その疎水性を阻害しない範囲で酸素、窒素、ハロゲン等、炭素及び水素以外の元素又はそれらからなる官能基を含有しても良い。このような本発明におけるアルキル基又はアルケニル基として、例えばノルマルヘキシル、ノルマルオクチル、ノルマルデシル、ノルマルドデシル、ノルマルヘキサデシル、ノルマルオクタデシル、ノルマルエイコシル等のノルマルアルキル基、イソヘキサデシル、イソオクタデシル等のイソアルキル基、シクロヘキシル、ノニルシクロアルキル等の、アルキル基が置換していてもよいシクロアルキル基、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル等のアルケニル基、ヒドロキシオクタデセニル等のヒドロキシアルキル基、アミノオクタデセニル等のアミノアルキル基、及びパーフルオロアルキル等のフルオロアルキル基、等が挙げられる。
【0010】
前記化合物Aの親水性基は、炭素、水素、酸素、窒素、燐、及び硫黄等のいずれか一種又は二種以上の原子を含有し、かつ親水性を有するに至る官能基、及び/又は高分子鎖等を含む親水性構造を有する。この親水性基は、前記疎水性基とアミド結合、エステル結合及びエーテル結合の何れかの結合基によって前記疎水性基と結合可能な基である。
【0011】
前記親水性基は、前記した電気陰性度の大きな基又は原子を有することにより親水性を発揮し、またイオン形成可能な基を有することにより親水性を発揮することもある。前記イオン形成可能な基によるイオン性はアニオン性、及びカチオン性の何れも問わない。
【0012】
前記結合基を介して疎水性基と結合された前記親水性基を与える化合物としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレンイミンとそれらの重合物、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステルジアリルジメチルアンモニウムの塩、等をモノマー成分として含み、さらに上記疎水部と結合してアミド結合、エステル結合又はエーテル結合を形成しうる親水性の官能基を必須の構造として含む水溶性ポリマー、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンポリアミン及びその四級化物等の水溶性ポリマー、澱粉、セルロース、キトサン、アルギン酸等の天然水溶性高分子、及びそれらの変性物、等からなる水溶性化合物が挙げられる。
【0013】
化合物Aは、アミド結合、エステル結合、及びエーテル結合よりなる群から選択される少なくとも一種の結合基により疎水性基と親水性基とが結合する。疎水性基と親水性基とを結合する方法は、例えば、
(1)親水性基に結合するアミノ基又は親水性を与える化合物に存在するアミノ基と、前記疎水性基に結合するカルボキシル基又は疎水性を与える化合物に存在するカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成する方法、
(2)親水性基に結合するカルボキシル基又は親水性を与える化合物に存在するカルボキシル基と、前記疎水性基に結合するアミノ基又は疎水性を与える化合物に存在するアミノ基との反応によりアミド結合を形成する方法、
(3)親水性基に結合する水酸基又は親水性を与える化合物に存在する水酸基と、前記疎水基に結合するカルボキシル基又は疎水性を与える化合物に存在するカルボキシル基との反応によりエステル結合を形成する方法、
(4)親水性基に結合するカルボキシル基又は親水性を与える化合物に存在するカルボキシル基と、前記疎水性基に結合する水酸基又は疎水性を与える化合物に存在する水酸基との反応によりエステル結合を形成する方法、
(5)親水性基に結合する水酸基又は親水性を与える化合物に存在する水酸基と、前記疎水性基に結合する水酸基又は疎水性を与える化合物に存在する水酸基との反応によりエーテル結合を形成する方法
等が、一般的かつ簡便な方法として例示できる。
【0014】
本発明で使用される化合物Aの好適例の一つが、下記一般式(1)で表される。
R−A−(EO)(PO)−H ・・・ (1)
但し、一般式(1)中、−A−は−O−又は−COO−を示し、Rは炭素数6〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。
【0015】
上記一般式(1)で表される化合物は、炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数が7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸1モルにエチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドを付加して得ることができる。エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでも良く、炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸1モルに対して1〜60モル、好ましくは2〜40モルの割合で付加される。60モルを超えると、紙用填料の紙厚向上効果が低くなることがある。
【0016】
又、本発明で使用される化合物Aの他の好適例が、下記一般式(2)で表される。
1−A1−(EO)(PO)−CO−R2 ・・・(2)
但し、一般式(2)中、−A1−は−O−又は−COO−を示し、R1、及びR2は炭素数1〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R1とR2とは同一であっても異なっていてもよく、少なくともR1、及びR2のどちらか一方は炭素数6〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。
【0017】
上記一般式(2)で表される化合物は、例えば炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数が7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸1モルにエチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドを付加したのちに、炭素数が2〜25の脂肪酸1モルでエステル化して得ることができる。又、例えば、エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドを付加したのちに、炭素数が7〜25、好ましくは11〜23の脂肪酸1モルでエステル化して得ることもできる。エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでも良く、アルコール又は脂肪酸1モルに対して1〜60モル、好ましくは2〜40モルの割合で付加される。60モルを超えると、紙厚向上効果が低くなることがある。
【0018】
更に、本発明で使用される化合物Aは、下記一般式(3)で表される化合物を含む。
1−O−(EO)(PO)−R2 ・・・(3)
但し、一般式(3)中、R1、及びR2は炭素数1〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R1とR2とは同一であっても異なっていてもよく、少なくともR1、及びR2のどちらか一方は炭素数6〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。
【0019】
上記一般式(3)で表される化合物は、例えば炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール1モルにエチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドを付加したのちに、炭素数が1〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数6〜24好ましくは10〜22のハロゲン化アルキル1モルでエーテル化して得ることができる。エチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでも良く、炭素数が6〜24、好ましくは10〜22のアルコール又は炭素数7〜25の脂肪酸1モルに対して1〜60モル、好ましくは2〜40モルの割合で付加される。60モルを超えると、紙厚向上効果が低くなることがある。
【0020】
炭素数が6〜24のアルコールとしては、直鎖アルコール、分岐鎖を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールの何れでも良い。これら各種のアルコールの中でも炭素数が10〜22のアルコールが好ましく、特に、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールが好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0021】
炭素数7〜25の脂肪酸としては、直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種の脂肪酸の中でも、炭素数が10〜22の脂肪酸が好ましく、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0022】
上記一般式(2)、(3)中のR、及びR2の少なくともどちらかは紙厚向上効果の点から、炭素数6〜24、好ましくは10〜22のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
【0023】
本発明における化合物Aは、モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られたものであってもよい。
【0024】
この化合物Aを得るためのモノカルボン酸又はその誘導体としては、炭素数6〜24の脂肪酸、炭素数6〜24の脂肪酸のエステル及び炭素数6〜24の脂肪酸の酸無水物を挙げることができる。前記脂肪酸としては炭素数6〜24である直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種の脂肪酸の中でも特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。脂肪酸のエステルとしては上記各脂肪酸の低級アルコールエステルなどが挙げられる。脂肪酸の低級アルコールエステルとして、脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸のエチルエステル、及び脂肪酸のプロピルエステル等を一例とする脂肪酸の低級アルキルエステルが挙げられる。なお、この脂肪酸の低級アルキルエステルにおける低級アルキル基としては炭素数1〜5程度のアルキル基を挙げることができる。本発明における脂肪酸エステルは、従来から公知の、脂肪酸とアルコールとのエステル化反応により得ることができる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。脂肪酸の酸無水物としては上記各脂肪酸の酸無水物等が挙げられる。前記脂肪酸の酸無水物としては、前記した各種脂肪酸の無水物を挙げることができる。
【0025】
また、ポリアルキレンポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられ、これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましく、さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0026】
モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応モル比は特に限定するものではないが、ポリアルキレンポリアミン類1モルに対してモノカルボン酸又はその誘導体の反応量は、通常、1.5〜3.0モルである。
【0027】
このモノカルボン酸又はその誘導体とポリアルレンポリアミン類との反応は、例えば、前記モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類とを、窒素雰囲気下に、100〜200℃に加熱することにより、行われる。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは2〜6時間である。
【0028】
モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類とを反応させて得られるアミド化合物との反応に供されるエピハロヒドリンのモル量はアミド化合物中に残存するアミノ基即ち残存アミノ基の活性水素に対して、0.5〜1.2当量である。
【0029】
ここで、残存アミノ基は、アミド化合物のアミン価を測定して算出することができる。
残存アミノ基=アミン価=(V ×F ×0.5 ×56.1 )/S
但し、V :1 /2 規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1 /2 規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
アミド化合物と反応させるエピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0030】
前記アミド化合物とエピハロヒドリンとの反応は、水又は水と有機溶剤との混合溶媒中でアミド化合物と反応溶媒との混合物を45〜55℃に保持し、そこへエピハロヒドリンを発熱に注意しながら添加して反応を進行させる。エピハロヒドリンを添加した後、さらに、反応温度を40〜55℃で5分〜1時間保持し反応を進める。その後、70〜100℃に昇温し、1〜8時間反応して室温まで冷却し、反応を完結させる。
【0031】
(含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子)
本願発明の紙用填料に含まれ、また紙用填料を製造する原料でもある前記含水ケイ酸は、一般式SiO2・nH2O (n は自然数である。)で示される化合物であり、少量の、例えば2重量%未満の不純物が含まれていてもよい。前記ケイ酸塩は、ケイ素以外の金属を酸化物換算で2〜30重量%含む化合物が好適である。具体的には、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸チタニウム、ケイ酸アルミニウムチタニウム等の化合物を挙げることができる。
【0032】
本発明における含水ケイ酸又はケイ酸塩は、通常、粒子径8〜50nmの一次粒子が凝集して形成されたところの、粒子径1〜300μmの凝集粒子であり、この凝集粒子を水に分散させたスラリー状態であるときのその凝集粒子の平均凝集粒子径は好適には5〜25μmの範囲内である。
【0033】
本発明における含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子を水に分散させた分散液のpHは5〜7の範囲であり、ほぼ中性である。また、前記含水ケイ酸又はケイ酸塩を水中に分散させても、この含水ケイ酸又はケイ酸塩はほとんど水に溶出することがない。
【0034】
(凝集粒子の製造方法)
本発明の紙用填料を製造するのに使用される含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子はどのような方法によって製造されてもよい。一般には、次に述べる方法によって好適に製造することができる。
【0035】
塩類の存在下に、シリカ換算濃度が4〜10重量%であるケイ酸アルカリ水溶液に、10〜45℃で中和率20〜40%となるように鉱酸及び/又はケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液を、添加して反応液を生成する第1工程と、該第1工程で得られた前記反応液を90℃以上該反応液の沸点以下の温度に昇温して熟成し、このようにして熟成した反応液に、該反応液のpHが3〜6になるように鉱酸及び/又はケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液を、添加する第2工程よりなる方法である。
【0036】
まず、上記方法の第1工程では、塩類の存在下に、シリカ換算濃度が4〜10重量%であるケイ酸アルカリ水溶液に、10〜45℃で中和率が20〜40%となるように鉱酸及び/又はケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液が、添加される。
【0037】
ケイ酸アルカリとしては、通常、市販のケイ酸ナトリウムが使用される。反応時のケイ酸アルカリ水溶液の濃度は、シリカ換算濃度で4〜10重量%の範囲が好適で、6〜8重量%が好ましい。ケイ酸アルカリ水溶液の濃度が上記の範囲をはずれた場合には、得られる紙用填料の細孔容積が小さくなることがある。
【0038】
ケイ酸アルカリ水溶液に添加される鉱酸としては、公知のものが何等制限なく採用される。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等が採用されるが、通常は硫酸が使用される。鉱酸の濃度は特に制限されないが、一般には10〜30重量/体積%の範囲から選べばよい。
【0039】
また、ケイ酸アルカリ水溶液に添加される塩の酸性水溶液としては、ケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液が何ら制限なく使用される。例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタニウム等の硫酸塩の酸性水溶液を好適に使用し得る。
【0040】
鉱酸及び/又はケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液のケイ酸アルカリ水溶液への添加は、中和率が20〜40%の範囲となるように行われる。ここで、中和率とは、ケイ酸アルカリ水溶液の中和に必要な上記の鉱酸及び/又は酸性水溶液の量を使用したときを100%とした、中和の程度を示す指標である。中和率が20%よりも低いときは、一次粒子が大きくなって粒子の凝集が弱くなるため細孔容積が小さくなる。中和率が40%を越えるときは、粒子の凝集が強くなり、化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子の0.5〜2μmの細孔が0.4cc/g未満となる。
【0041】
第1工程では塩類の存在下に反応が行われる。塩類は、公知の水溶性無機塩が何等制限なく採用されるが、一般には核形成作用のある水溶性無機塩が好適に採用される。具体的には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム等のアルカリ金属塩を例示することができる。このような塩類は、鉱酸及び/又は塩の酸性水溶液を添加する前にケイ酸アルカリ水溶液中にこれを添加しておくと、細孔半径が0.5〜2μmの範囲内にある細孔の容積がスラリー状態での粉砕によっても減少しなくなるので、好ましい。
【0042】
上記の塩類の濃度は、特に制限されないが、通常は酸化物換算濃度でケイ酸アルカリ水溶液中に0.5〜3 重量%の範囲から選ばれる。
【0043】
第1工程の反応は、通常10〜45℃で行われる。反応温度が、上記範囲をはずれた場合には、細孔の容積が小さくなることがある。
【0044】
次に本発明の方法の第2工程では、上記の第1工程で得られた反応液が90℃以上該反応液の沸点以下の温度に昇温される。反応液の温度が上記の範囲をはずれた場合には、細孔容積が小さくなるために好ましくない。そして、この温度で熟成される。熟成の時間は特に制限されないが、通常は10〜30分間の範囲から選択すればよい。このような熟成を行うことにより、含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子が良好に形成されるものと、考えられる。
【0045】
第2工程においては、反応液のpHが3〜6になるように、熟成された前記反応液に、鉱酸及び/又はケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を形成し得る塩の酸性水溶液が、添加される。反応液のpHが3未満の場合は、中和のための酸を必要以上に使用することになって経済的でないばかりでなく、これをそのまま使用して紙用填料とした場合は、抄紙工程におけるpHの低下を招く傾向が生じる。また、反応液のpHが6を越えると、一次粒子の凝集が不十分になり、本発明で規定する細孔容積を有する凝集粒子を得ることができないことがある。
【0046】
鉱酸及び/又は塩の酸性水溶液は、熟成された前記反応液に、徐々に添加することが好ましく、通常は、これらを60〜120分の時間をかけて添加することが好ましい。
【0047】
(凝集粒子と化合物Aとの混合)
本発明の紙用填料は、例えば、かくして得られた含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子と化合物Aとを水中に共存状態で含有してなるスラリーの形態を取ることができる。
【0048】
化合物Aと含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子とを共存状態に至らせる方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能である。具体的には上記により得られた化合物Aと含水ケイ酸又はケイ酸塩スラリーとを混ぜ合わせることにより、本発明の紙用填料を得ることが可能である。また、化合物Aの存在下にて含水ケイ酸又はケイ酸塩の製造を行うことにより本発明の紙用填料を得ることも可能である。紙用填料中における化合物Aと含水ケイ酸又はケイ酸塩中のシリカ成分(SiO)との比率は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常、化合物Aの固形分/SiO=0.01/100〜50/100であり、好ましくは、化合物Aの固形分/SiO=0.1/100〜20/100である。含水ケイ酸又はケイ酸塩中のSiOに対して化合物Aの固形分濃度が0.01重量部未満であると顕著な技術的効果が得られない場合があり、また化合物Aの固形分濃度が50重量部を超えると粘度が高くなったり、その経時安定性が悪くなる場合がある。
【0049】
本発明の紙用填料は、化合物Aと含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子とを含有する分散液スラリーとして主に使用されるが、分散媒を留去した後に粉砕するなど従来公知の方法により粉体として使用してもよい。分散液として使用する場合、分散媒は安全性等の点から水が好ましい。
【0050】
(混合状態)
本発明における含水ケイ酸又はケイ酸塩は、前記化合物Aとの混合により共存状態にあるが、互いに独立して存在することなく後述するように相互作用しているものと考えられる。ここで「互いに独立して存在」というのは、化合物Aと混合する前と混合した後とにおいて含水ケイ酸又はケイ酸塩自体に、化学的変化を生じていないという程度の意味である。また、後述の比較例からも明らかなように、パルプスラリーに含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩と化合物Aとを別個に添加しても本願発明の目的を達成することができないことから、本発明の紙用填料においては、含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子と化合物Aとの混合により、該凝集粒子の表面を化合物Aが被覆し、又は該凝集粒子表面に化合物Aが付着するという相互作用をしているものと考えられるのである。
【0051】
(混合後の凝集粒子)
前記化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子(以下において、この凝集粒子を混合処理後凝集粒子と称することにより、混合処理前の凝集粒子と区別することがある。)は、下記(1)〜(3)の物性値、即ち、
(1)比表面積が50〜250m2/g、
(2)細孔半径が0.01〜0.1μmの範囲内にある細孔の容積が0.7〜1.6cc/g、
(3)細孔半径が0.5〜2μmの範囲内にある細孔の容積が0.4〜1.3cc/g
を有することが好ましい。
【0052】
上記の比表面積が50m/gより小さいときは細孔容積が小さくなり、紙厚効果が出ない。逆に上記の比表面積が250m/gより大きいときは0.5〜2μmの細孔容積が減少し、インクの裏抜け防止効果が低下する。
【0053】
本発明の紙用填料を用いた紙においては、細孔半径が0.01〜0.1μmである細孔にはインクの成分のうちビヒクルが吸収されると考えられる。したがって、上記細孔半径の範囲内にある細孔の容積が0.7cc/g未満のときには、インクを形成する成分の一種であるビヒクルが細孔に容易に吸収されなくなるので、インクの吸収性及び裏抜け防止効果の良好な紙用填料となり得ないことがある。上記の細孔半径の細孔容積は、インクの吸収性の十分な填料を得るためには、0.7〜1.6cc/gの範囲であることが好ましい。
【0054】
さらに、本発明の紙用填料を用いた紙においては、細孔半径が0.5〜2μmの範囲である細孔にはインクの成分のうち顔料が吸収されると考えられる。したがって、上記範囲の細孔容積が0.4cc/g未満のときには、インクを形成する成分の一種である顔料が細孔に容易に吸収されなくなるので、細孔容積が0.4cc/g未満である混合処理後凝集粒子を有する紙用填料は、インクの吸収性の良好な紙用填料となり得ないことがある。上記範囲の細孔容積は、インクの吸収性の十分な紙用填料とするためには、0.4〜1.3cc/gの範囲であることが好ましい。
【0055】
なお、本発明において、細孔の積算容積及び比表面積は、水銀ポロシメーターを用いて測定した値である。
【0056】
本発明においてさらに含水ケイ酸又はケイ酸塩の好適な混合処理後凝集粒子は、前記(1)〜(3)の物性値に加えて、(4)細孔半径が0.035〜7.6μmの範囲内にある細孔の容積が少なくとも2.5cc/g、好ましくは2.5〜4cc/gであるという物性値を有しているのが、好ましい。前記(1)〜(4)の物性値を有する含水ケイ酸又はケイ酸塩の混合処理後凝集粒子を含有する紙用填料は、前記(1)〜(3)の物性値を有する含水ケイ酸又はケイ酸塩の混合処理後凝集粒子を含有する紙用填料に比べて、紙厚をより一層向上させることができる。
【0057】
本発明の紙用填料においては、分散スラリーとして、あるいは粉体として使用されるにしても、含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の混合処理後凝集粒子は、前記(1)〜(3)、要すればさらに(4)の特性を有している。このような特性は、含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子の製造方法において、以下の条件を調整することによって制御することができる。
【0058】
すなわち、例えば、含水ケイ酸又はケイ酸塩の前記製造方法において、前記第1工程における反応液中の含水ケイ酸又はケイ酸塩の濃度、第2工程における中和率、第1工程又は第2工程における反応温度、第2工程における鉱酸の添加時間、又はpH等の少なくとも一つの条件を可変することにより、前記含水ケイ酸又はケイ酸塩の特性を調節することができる。
【0059】
具体的には、含水ケイ酸又はケイ酸塩の比表面積は、第1工程における含水ケイ酸又はケイ酸塩の濃度を高めることにより、低下させることができ、第2工程における中和率を高くすると、高くすることができ、反応温度を高くすると低下させることができ、鉱酸の添加時間を長くすると、低下させることができ、pHを高くするとて、低下させることができる。
【0060】
また、細孔半径は、反応液中の含水ケイ酸塩又はケイ酸塩の濃度を高くすると、大きくすることができ、中和率を高くすると、小さくすることができ、反応温度を高くすると、大きくすることができ、鉱酸の添加時間を長くすると、大きくすることができる。
【0061】
特定の細孔半径を有する細孔容積は、反応液中の含水ケイ酸又はケイ酸塩の濃度を高くすると、大きくすることができ、中和率を高くすると、小さくすることができ、反応温度を高くすると、大きくすることができ、鉱酸の添加時間を長くすると、大きくすることができ、pHを高くすると、小さくすることができる。
【0062】
さらに、含水ケイ酸塩又はケイ酸塩の混合処理後凝集粒子は前記(1)〜(3)、要すれば(4)の特性は、含水ケイ酸塩又はケイ酸塩の粉砕操作、又は分級操作によっても、調整することができる。
【0063】
本発明の紙用填料は、化合物Aの1種又は2種類以上と含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子(混合処理後凝集粒子)とを含んでいても良い。紙用填料を得るに当たり、使用される化合物Aが2種以上である場合に、夫々の混合割合には制限がない。
【0064】
(紙用填料と紙)
本発明の紙用填料の紙中への含有量は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、紙乾燥重量に対して通常、0.5〜20%であり、好ましくは1〜15%である。含有量が0.5%未満では紙厚向上効果が現れにくく、20%を越えると紙力、サイズ効果等の紙質へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
本発明の紙用添加剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙、板紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。
【0066】
本発明の紙用填料を用いて得られる本発明の紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料と岩綿、石綿、あるいはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0067】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤及び凝結剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するため、あるいは操業性の向上のために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用填料と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。本発明の紙用填料以外の填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのごとき脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、及びロジンエステル等を含有するロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。凝結剤としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、アミンとエピハロヒドリンの反応物等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、硫酸バン土は本発明の製紙用填料を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0068】
本発明の効果の発現機構は次の様に考えられる。即ち、本発明に係る化合物Aと含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子とを混合すると、化合物Aはシリカ表面のシラノール基と反応し、シリカの乾燥時の凝集力を弱めるため、乾燥後のシリカの細孔容積が増加すると考えられる。又、抄紙時のパルプ間にシリカによる隙間と同時にシリカ表面のアルキル基又はアルケニル基の疎水的作用による隙間が多く生じ、その結果パルプシートの紙厚が向上し、不透明度及びインクの裏抜け防止効果が更に向上する。このような本発明の効果は、化合物Aと含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子とが、単に混合しているだけではなく、相互作用を及ぼしあっているから、奏されるものと、考えられる。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて重量%である。
【0070】
(抄紙試験方法)
LBKPを、カナディアン・スタンダード・フリーネス400に調整した濃度2.4%のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製TP−121S)を1.0%加え、次いで紙用填料を加えて硫酸バンド1.0%、両性澱粉(日本NSC(株)製CATO3210)0.8%、ロジンサイズ剤(日本PMC(株)製CC167)0.5%を順次加えた。攪拌した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量64g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下で24時間調湿した後、比容積及び比容積の向上度、不透明度、裏抜けを下記方法により測定した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。
【0071】
比容積向上度:JIS P8118 紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法より、比容積を計算し、無添加の紙の比容積に対する比率を示した。
【0072】
不透明度:JIS P8138 紙の不透明度試験方法
裏抜け:JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.45 新聞用紙−印刷後不透明度試験方法
実施例1
市販のケイ酸ソーダ(SiO2 28.30w/v%、SiO2/Na2O モル比3.04)1696ml、ボウ硝(Na2O 2.38w/v%)2521ml、及び水1783ml を10Lの外部加熱方式の反応槽へ投入して攪拌した(シリカ換算濃度8%)。第1工程において、反応液温度35℃で、中和率を30%とするために22w/v%の硫酸351mlを投入した。その後、第2工程において、90℃まで昇温し、昇温後、そのままの状態で10分間攪拌した。次に22w/v%硫酸797mlを90分かけて投入し、反応液のpHを3.6として反応を終了した。この反応液をろ過、水洗した後、固形分濃度が13〜14%となるように水に再分散させ、この分散液600mLを2Lのポリ容器に入れ、大きさ2mmのガラスビーズ1kgとともに回転数420rpmで5分間粉砕した後、145メッシュの篩で篩分けした。この分散液400mlに攪拌速度250rpmで攪拌しながら、化合物Aのポリ(エチレンオキサイド)オレイルアルコールエーテル(エチレンオキサイドの平均重合度:4)を添加量2.6g(添加率5%)混合し,分散液スラリー(以下において、紙用填料スラリーと称することがある)を作成した。この混合液50mlをビーカーに取り、熱風乾燥機を用いて105 ℃で24時間乾燥した。乾燥されたケークについて水銀ポロシメーター(カルロエルバ社製2000型)を使用して細孔容積と比表面積を測定した。
【0073】
抄紙テストには紙用填料スラリーを添加率5%になるように添加し、紙の評価を実施した。その評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例2
実施例1において、化合物Aの添加量を5.2g(添加率10%)にした以外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例3
市販のケイ酸ソーダ(SiO2 26.50w/v%、SiO2/Na2O モル比3.04)1358ml、ボウ硝(Na2O 2.38w/v%)2521ml、及び水2121ml(シリカ換算濃度6%)とし、第1工程の中和率40%、22w/v%硫酸344ml、第2工程の硫酸500mlを投入した以外は、実施例1と同様にして、分散液を得た。この分散液400mlと、化合物Aとしてポリ(エチレンオキサイド)オレイルアルコールエーテル(エチレンオキサイドの平均重合度:4)を添加量2.6g(添加率5%)とを混合して分散液スラリーを調整した以外は実施例1と同様にした。その評価結果を表1に示す。
【0076】
実施例4
実施例3のケイ酸ソーダを用いて、ケイ酸ソーダ928ml、ボウ硝2521ml、及び水2551ml(シリカ濃度 4.1%)とし、第一工程の中和率36%、22w/v%硫酸212ml、第2工程の反応温度95℃、硫酸364mlを90分掛けて投入した以外は、実施例1と同様にして分散液を得た。この分散液400mlと実施例1と同じ化合物Aの添加量2.6g(添加率5%)とを混合した以外は実施例1と同様にした。その評価結果を表1に示す。
【0077】
実施例5
実施例1において、化合物Aとしてポリ(エチレンオキサイド)ポリ(プロピレンオキサイド)ラウリルアルコールエーテル(エチレンオキサイドの平均重合度:4.5、プロピレンオキサイドの平均重合度:3)、化合物Aの添加量を5.2g(添加率10%)に変更した以外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0078】
実施例6
実施例1において、ケイ酸ソーダ1696ml、ボウ硝2521ml、及び水1783ml第1工程において中和率35%,22w/v%硫酸409ml,第2工程において、硫酸739ml,反応温度を90℃にし、化合物Aとしてポリ(エチレンオキサイド)ラウリン酸ジエステル(エチレンオキサイドの平均重合度:9),添加量5.2g(添加率10%)に変更した以外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0079】
実施例7
実施例6において、化合物AとしてCAE樹脂の添加量34g(添加率10%)に変更した以外は実施例6と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0080】
なお、CAE樹脂は下記合成例のようにして得たものを用いた。
合成例
温度計、冷却器、撹拌機、及び窒素導入管を備えた5リットル四つ口丸底フラスコに、テトラエチレンペンタミン1000g (5.28モル)を仕込み130℃へ昇温した後、ステアリン酸/パルミチン酸混合物(混合重量比65:35)3011g(10.96モル)を徐々に加えた。170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら5時間反応させ、ワックス状のアミド系化合物を得た。得られたアミド化合物の1gあたりの残存アミノ基量は、アミン価を測定することにより、3.2mmol/gと確定された。このアミド化合物50.0g(残存アミノ基量0.16モル)とイソプロピルアルコール5.6g、水290.4gを温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた1000mlの四つ口フラスコに仕込み(固形分50%)、80℃まで昇温した後1時間攪拌した。アミド化合物がサスペンジョンとなったことを確認した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン14.8g(0.16モル)を加え、50℃にて30分反応させた後、次いで、80℃にて4時間反応させ、冷却して固形分15%のCAE樹脂を得た。
【0081】
比較例1
実施例1において、化合物Aを使用しない外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0082】
比較例2
実施例3において、化合物Aを使用しない外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0083】
比較例3
実施例4において、化合物Aを使用しない外は同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
【0084】
比較例4
実施例2において、分散液と化合物Aとを混合せずに、パルプスラリーに、分散液と化合物Aを別々に添加した場合の評価結果を表1に示す。
【0085】
比較例5
抄紙時に紙用填料を使用せず、実施例1で使用した化合物Aを抄紙時に0.5%添加した場合の評価結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
Figure 0004056862
【0087】
【発明の効果】
本発明によると、優れた紙厚向上効果を有する紙用填料及びそれを利用した紙を提供することが出来る。

Claims (5)

  1. 含水ケイ酸及び/又はケイ酸塩の凝集粒子、並びに、化合物Aを混合して成り、
    前記化合物Aは、
    (I)下記一般式(1)で表される化合物、
    (II)下記一般式(2)で表される化合物及び/又は下記一般式(3)で表される化合物、
    (III)モノカルボン酸又はその誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド化合物と、エピハロヒドリンとの反応物
    のいずれかであることを特徴とする紙用填料。
    R−A−(EO) (PO) −H ・・・ (1)
    (但し、一般式(1)中、−A−は−O−又は−COO−を示し、Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。)
    1 −A 1 −(EO) (PO) −CO−R 2 ・・・(2)
    1 −O−(EO) (PO) −R 2 ・・・(3)
    (但し、一般式(2)及び一般式(3)中、−A 1 −は−O−又は−COO−を示し、R 1 、及びR 2 は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R 1 とR 2 とは同一であっても異なっていてもよいが、少なくともR 1 、及びR 2 のどちらか一方は炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、式中、Eはエチレン基を示し、Pはプロピレン基を示し、m及びnは平均付加モル数であり、mとnとの合計は1〜60である。)
  2. 前記化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子は、下記(1)〜(3)の物性値を有することを特徴とする請求項1に記載の紙用填料。
    (1)比表面積が50〜250m2/g、
    (2)細孔半径が0.01〜0.1μmの範囲内にある細孔の容積が0.7〜1.6cc/g、
    (3)細孔半径が0.5〜2μmの範囲内にある細孔の容積が0.4〜1.3cc/g
  3. 前記化合物Aと混合された後の含水ケイ酸又はケイ酸塩の凝集粒子は、(4)細孔半径が0.035〜7.6μmの範囲内にある細孔の容積が少なくとも2.5cc/gであることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の紙用填料。
  4. 前記化合物Aと混合される前の含水ケイ酸が、(a)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との反応により生成され、前記化合物Aと混合される前のケイ酸塩が、(b)ケイ酸アルカリ水溶液と、ケイ酸アルカリと反応してケイ酸塩を生成可能な塩の水溶液との反応により生成されてなる前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙用填料。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の紙用填料を含有する紙。
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