JP3944823B2 - 紙用添加剤及びそれを含有する紙 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紙用添加剤及びそれを含有する紙に関し、更に詳しくは、低分子有機ハロゲン化合物、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール(以下、これをDCPと記す。)の含有量がより少なくなり、特定のモノカルボン酸及び/又は特定のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを特定の反応条件下で反応させて製造する紙用添加剤、及びそれを含有する紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙のサイズ剤の主要成分として、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応物(以下、「CAE樹脂」)が有用であることは、例えば特公昭42−2922号公報、特公昭47−11306号公報等に記載されていて公知である。CAE樹脂のサイズ剤以外の用途として不透明度向上剤及び多孔性向上剤もある。前記CAE樹脂が不透明度向上剤として使用されることは、特開昭61−252400号公報及び特開平2000−273792号公報に、多孔性向上剤としては、特開昭61−252400号公報に記載されていており公知である。
【0003】
一方、近年においては環境保護の気運の上昇などにより、発ガン性があると言われているDCPを減らすことが求められている。CAE樹脂についてもDCPの含有量をより少なくすることが、求められている。しかも単にDCPの含有量を少なくするのではなく、従来のCAE樹脂の性能を低下させないことが求められている。
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、例えば、特公昭42−2922号公報の実施例のように、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応は、溶媒を使用せず、また80℃〜90℃の一段階で反応させており、反応中に生成する副生成物としてのDCPの含有量が十分に減少していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定のモノカルボン酸及び/又は特定のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロドリンとを反応して得られるところの、DCPの含有量がより少ないにもかかわらず、従来の性能を維持することのできる紙用添加剤、及びこのような紙用添加剤を含有する紙を提供することを課題とするものである。更に言うと、本発明の目的は、従来公知のCAE樹脂を製造する際のアミド系化合物の残存アミノ基とエピハロドリンとのモル比が同じである場合には、ダイオキシンの発生原因となると言われている吸着性有機塩素化合物(AOX;Adsorbable Organic Halogen)の含有量を低減させることができ、しかも従来のCAE樹脂と同じ性能を有するCAE樹脂を含有する紙用添加剤、及びこれを含有する紙を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記公知方法により製造される樹脂の欠点について鋭意検討を重ねた結果、DCPの含有量を減らすために多くの反応条件中から反応溶媒、及び反応初期の反応温度を特定化することによりDCPを含むAOXの含有量が減り、さらに従来の性能を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて製造する紙用添加剤において、反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、(i)アミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応を、40℃〜55℃で行った後、(ii)70℃〜100℃で反応させ、(iii)アミド系化合物における残存アミノ基の活性水素に対して、エピハロヒドリンの量が0.5〜1.2当量となるように反応させることにより得られる反応生成液から分離された固形分中に含まれる1,3−ジクロロ−2−プロパノールの含有量が9200ppm以下であることを特徴とする紙用添加剤を提供するものである。
【0008】
また、(6)前記(1)の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙、
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される炭素数6〜24のモノカルボン酸及び炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体としては炭素数6〜24の脂肪酸及び炭素数6〜24の脂肪酸のエステル等を挙げることができる。
【0010】
脂肪酸としては炭素数6〜24である直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種の脂肪酸の中でも特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0011】
脂肪酸のエステルとしては上記各脂肪酸の酸無水物、及び上記各脂肪酸の低級アルコールエステルなどが挙げられる。脂肪酸の低級アルコールエステルとして、脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸のエチルエステル、及び脂肪酸のプロピルエステルなどが挙げられる。本発明における脂肪酸エステルは、従来から公知の、脂肪酸とアルコールとのエステル化反応により得ることができる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0012】
本発明においては、前記以外のモノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体の一部として、脂肪族二塩基性カルボン酸を併用することができる。脂肪族二塩基性カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。また、アルケニル無水コハク酸、及びアルケニルケテンダイマーを併用することもできる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0013】
本発明に使用される、ポリアルキレンポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられ、これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましく、さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0014】
カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応モル比は特に限定するものではないが、ポリアルキレンポリアミン類1モルに対してモノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体の反応量は、通常、1.5〜3モルである。
【0015】
モノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応は、100〜200℃に加熱することにより行われる。反応時間は、通常、0.5〜10時間であり、中でも2〜6時間が好ましい。反応に際してカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類とを混合する方法に制限はなく、通常はポリアルキレンポリアミン類にカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを徐々に添加して反応をスムースに進行させる方法が好ましい。アミド化反応の触媒は特に用いなくても良いが、アミド化反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類、あるいは、アミド化反応に通常に用いられる触媒を使用しても良い。その使用量はポリアルキレンポリアミン1モルに対し、通常の場合0.005 〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0016】
次に、このようにして得られたアミド化合物とエピハロヒドリンとを反応させる。具体的には反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、アミド化合物と反応溶媒との混合物を40℃〜55℃に保ち、そこへエピハロヒドリンを添加して反応を進行させる。エピハロヒドリンを添加した後、さらに反応温度を40℃〜55℃に保ち、反応を進める。この反応を便宜上1次反応と称する。1次反応の時間は5分〜1時間が好ましい。5分未満の反応時間では、CAE樹脂中のDCPの含有量を低くする効果が十分ではないことがあり、一方、1次反応時間が1時間を超えても得られるCAE樹脂中のDCPの含有量はあまり低下せず、単に反応時間が延びるだけであって経済的でない。
【0017】
1次反応で反応させた後、70℃〜100℃に昇温し、その温度に保ちつつ反応を進める。この反応を便宜上2次反応と称する。2次反応の反応時間は反応が完結するのに十分な時間行えば良く、通常、1時間〜8時間である。
【0018】
本発明に使用される反応溶媒としては水あるいは水および有機溶剤の混合溶媒が使用される。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、この中でもイソプロピルアルコールが好ましい。これらは一種単独で水と混合しても良いし、二種以上を併用して水と混合しても良い。水と有機溶剤の使用量、混合比率は反応温度でアミド化合物を均一に溶解、分散させるのに必要な量、混合比を使用すれば良く、通常アミド化合物とエピハロヒドリンとの反応は、アミド化合物の濃度が5〜90%、水と有機溶剤の混合比は水100gに対して0〜100gで行われる。
【0019】
アミド化合物はエピハロヒドリンとの反応において、アミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量は、0.5〜1.2当量であり、好ましくは、0.7〜1.2当量である。エピハロヒドリンのモル量が0.5当量よりも少ないとCAE樹脂の粘度が高くなり流動性を失い、取り扱いが困難となると言う不都合を生じることがあり、また1.2当量を超えるとCAE樹脂中のDCPの含有量が多くなると言う不都合を生じることがある。
【0020】
ここで、残存アミノ基は、アミノ系化合物のアミン価を測定して算出することができる。
【0021】
残存アミノ基=アミン価=(V ×F ×0.5 ×56.1 )/S
但し、V :1/2 規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1/2 規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
本発明に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0022】
CAE樹脂は必要に応じて従来公知の方法で分散させることができる。従来公知の分散方法としては、転相乳化、界面活性剤、無機塩類の添加、あるいは界面活性剤、無機塩類を添加した後の転相乳化、また機械的な方法により分散させることができる。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的な方法としてはホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、従来公知の界面活性剤が使用でき、例えば、高級アルコールあるいは高級脂肪酸にオキシアルキレン基が付加した非イオン界面活性剤などが挙げられる。また、無機塩類としては、例えばナトリウムやカルシウムの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられる。これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0024】
かくして、得られた本発明のCAE樹脂は、DCPの含有量が著しく低く、しかも、製紙用添加剤として用いると公知の方法で製造されたCAE樹脂と同等もしくはそれ以上の優れたサイズ効果、不透明度向上及び多孔性向上効果を奏する。
【0025】
一般的にはDCPの含有量はアミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量により大きく変化し、このモル量が多くなるほどDCP量は多くなる。アミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対するエピハロヒドリンのモル量が同じ場合、本発明の製紙用添加剤は、従来公知のCAE樹脂に比べ、DCPの含有量を、従来公知の前記サイズ剤よりも、200〜5000ppm減少でき、かつサイズ性能、不透明度、多孔性を同等もしくは向上できる。
【0026】
一方、残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量を減らすことでDCP量を減少させることができるが、その場合、サイズ性能、不透明度、多孔性は低下する。
【0027】
本発明の製紙用添加剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。
【0028】
本発明の紙を製造するに当たって、通常、本発明の製紙用添加剤をパルプ原料固形分に対し固形分で0.1〜3重量%の使用割合で添加する。また本発明の製紙用添加剤はサイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等で紙基体に塗布されたものであってもよい。
【0029】
本発明の紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料と岩綿、石綿、あるいはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0030】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用添加剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0031】
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのごとき脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、ロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0032】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。
【0033】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0034】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、硫酸バン土は本発明の製紙用添加剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて重量%である。
【0036】
製造例1
温度計、冷却器、撹拌機、及び窒素導入管を備えた5リットル四つ口丸底フラスコに、テトラエチレンペンタミン1000g (5.28モル)を仕込み130℃へ昇温した後、牛脂脂肪酸{ステアリン酸/パルミチン酸混合物(混合重量比65:35)} 3011g(10.96モル)を徐々に加えた。170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら5時間反応させ、ワックス状のアミド系化合物を得た。得られたアミド化合物の1gあたりの残存アミノ基量は、アミン価を測定することにより、3.2mmol/gと確定された。
【0037】
製造例2
前記製造例1の牛脂脂肪酸に代えて、表1に示した脂肪酸を使用したこと以外は製造例1と同様にしてアミド系化合物を得た。得られたアミド化合物の1gあたりの残存アミノ基量も表1に併記した。
【0038】
【表1】
実施例1
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた1000mlの四つ口フラスコに、製造例1で得られたアミド系化合物50.0g(残存アミノ基量0.16モル)とイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)5.6g、水290.4gを仕込み(固形分50 %)、80℃まで昇温した後、1時間攪拌した。アミド化合物が、サスペンジョンとなったことを確認した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン14.8g(0.16モル)を加え、50℃にて30分反応させた(1次反応)。次いで、80℃にて4時間反応させた後(2次反応)、冷却して固形分15%のCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂中に含まれるDCPの含有量をガスクロマトグラフィーで測定し、その値を表2 に示した。得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤Aとして用いた。
【0039】
比較例1、2
前記実施例1の一次反応の温度を、表2に示した温度に変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂中に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。なお、比較例1、比較例2で得られたCAE樹脂をそのまま各々製紙用添加剤a、bとして用いた。
【0040】
比較例3
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた1000mlの四つ口フラスコに、製造例1で得られたアミド系化合物50.0g(残存アミノ基量0.16モル)とイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)50.0gを仕込み(固形分50 %)、80℃まで昇温して、均一な溶液とした。50℃まで冷却した後、エピクロロヒドリン14.8g(0.16モル)を加え、50℃にて30分反応させた(1次反応)。次いで、80℃にて2.5時間反応させた後(2次反応)、水290.4gを加えていく事で転相乳化を行った。均一に攪拌した後冷却し、固形分15%のCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、1次反応に際して溶媒としてイソプロピルアルコールを使用しているので、比較例となっている。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤cとして用いた。
【0041】
実施例2
前記実施例1のエピクロロヒドリンの量を、表2に示した量に変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤Bとして用いた。
【0042】
比較例4
前記実施例2の一次反応の温度を、表2に示した量に変えたこと以外は実施例2と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、1次反応における反応温度が、本発明で規定する温度範囲を外れているので、比較例となっている。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤dとして用いた。
【0043】
比較例5
前記比較例3のエピクロロヒドリンの量を、表2に示した量に変えたこと以外は比較例3と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、1次反応に際して溶媒としてイソプロピルアルコールを使用しているので、比較例となっている。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤eとして用いた。
【0044】
実施例3
前記実施例1のアミド系化合物を、表2に示したものに変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤Cとして用いた。
【0045】
比較例6
前記実施例3の一次反応の温度を、表2に示した量に変えたこと以外は実施例3と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、この例は、1次反応における反応温度が、本発明で規定する温度範囲を外れているので、比較例となっている。なお、得られたCAE樹脂をそのまま製紙用添加剤fとして用いた。
【0046】
実施例4
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた1000ml 四つ口フラスコに、製造例3で得られたアミド系化合物40.0g(残存アミノ基量0.15モル)と水264.4gを仕込み(固形分16%)、50℃に昇温した後、エピクロロヒドリン10.4g(0.11モル)を加え、50℃にて30分反応させた(1次反応)。次いで、90℃にて1.5時間反応させた後(2次反応)、室温まで冷却しCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。
【0047】
比較例7
前記比較例3のアミド系化合物、エピクロロヒドリンの量を、表2に示したものに変えたこと以外は比較例3と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、1次反応に際して溶媒としてイソプロピルアルコールを使用しているので、比較例となっている。
【0048】
実施例5
前記実施例1のアミド系化合物、エピクロロヒドリンの量を、表2に示したものに変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。
【0049】
比較例8
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた1000ml 四つ口フラスコに、製造例4で得られたアミド系化合物40.0g(残存アミノ基量0.1モル)を40℃に昇温した後、エピクロロヒドリン7.5g(0.081モル)を加え、40℃にて30分反応させた(1次反応)。次いで、90℃にて1.5時間反応させた後(2次反応)、水249.5gを加えていくことで転相乳化を行った。固形分を15 %とし、均一に攪拌した後冷却し、固形分15%のCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂に含まれるDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。この例は、1次反応が無溶媒で行われたので、比較例である。
【0050】
比較例9
前記実施例1のエピクロロヒドリンの量を、表2に示した量に変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂のDCP含有量を実施例1と同様に測定し、その値を表2に示した。
【0051】
比較例10
前記実施例1のエピクロロヒドリンの量を、表2に示した量に変えたこと以外は実施例1と同様にしてCAE樹脂を得た。得られたCAE樹脂は、製品粘度が高く流動性のない物であった。
【0052】
【表2】
実施例6
LBKPを、カナディアンスタンダード・フリーネス400に調整した濃度2.4%のパルプスラリーに、硫酸バンドをパルプに対して1.0%加えた後、実施例1の製紙用添加剤A(パルプに対して1.0%)、両性澱粉(日本NSC(株)製、CATO3210、パルプに対して0.5%)の順にパルプに添加した。攪拌した後、角型シートマシンにて抄紙して、坪量50g/m2の手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、サイズ度、不透明度、密度を下記方法により測定した。なお、前記薬品の添加率はパルプ絶乾重量に対する固形分重量比である。測定結果を表3に示す。
サイズ度…JIS P 8122 紙のステキヒトサイズ度試験方法
不透明度…JIS P 8149 紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法
密度:JIS P 8118 紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法
実施例7、8
実施例6において使用した実施例1の製紙用添加剤Aに代えて前記実施例2,3の製紙用添加剤B、Cを使用したこと以外は実施例6と同様にしてサイズ度、不透明度、密度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0053】
比較例11〜16
実施例6において使用した実施例1の製紙用添加剤Aに代えて前記比較例1〜6の製紙用添加剤a〜fを使用したこと以外は実施例6と同様にしてサイズ度、不透明度、密度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0054】
比較例17
実施例6において使用した実施例1の製紙用添加剤Aに代えてロジンサイズ剤(日本PMC(株)社製CC167をパルプに対して0.5%使用)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてサイズ度、不透明度、密度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0055】
比較例18
実施例6において使用した実施例1の製紙用添加剤Aを添加しない事以外は実施例6と同様にしてサイズ度、不透明度、密度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
かくして、本発明の製紙用添加剤は、従来公知のCAE樹脂を製造する際のアミド系化合物の残存アミノ基とエピハロドリンとのモル比が同じである場合には、公知のCAE樹脂と同等もしくはそれ以上の優れたサイズ効果及び/または不透明度向上及び多孔性向上効果を有し、しかも、製紙用添加剤中に含まれるDCPの含有量が著しく少ないという優れた効果を有している。
Claims (2)
- 炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて製造する紙用添加剤において、反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、(i)アミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応を、40℃〜55℃で行った後、(ii)70℃〜100℃で反応させ、(iii)アミド系化合物における残存アミノ基の活性水素に対して、エピハロヒドリンの量が0.5〜1.2当量となるように反応させることにより得られる反応生成液から分離された固形分中に含まれる1,3−ジクロロ−2−プロパノールの含有量が9200ppm以下であることを特徴とする紙用添加剤。
- 請求項1に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙。
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