JP4912903B2 - 紙質向上剤の製造方法 - Google Patents
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工程(I):
下記一般式(1)で表されるアミン化合物(a)と炭素数12〜40の飽和脂肪酸類(b)とを反応させてアミド化合物を得る工程
工程(II):
工程(I)で得られたアミド化合物を溶融させ、該アミド化合物とエピクロロヒドリン(c)とを、アミド化合物のアミノ基1当量に対して、エピクロロヒドリンを0.40〜0.65当量で反応させる工程
融点が50℃以上であり、1,3−ジクロロ−2−プロパノールの含有量が2.0重量%以下である紙質向上剤に関する。
本発明の紙質向上剤を得るには、下記一般式(1)で表されるアミン化合物が用いられる。
また、本発明の紙質向上剤を得るのに用いられる炭素数12〜40の飽和脂肪酸類(b)〔以下、脂肪酸類(b)という場合もある〕は、飽和脂肪酸と飽和脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸類(b)の脂肪酸の炭素数は12〜30が好ましく、更に炭素数16〜24が好ましい。また、直鎖又は分岐鎖の何れでもよいが、直鎖が好ましい。飽和脂肪酸を主成分として本発明の効果を有する範囲で不飽和脂肪酸を含有しても良い。例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。飽和もしくは不飽和の脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。脂肪酸混合物としては、ヤシ油脂肪酸などの天然由来の脂肪酸を使用することもできる。得られる紙のサイズ性の観点から、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
また、本発明の紙質向上剤を得るのに用いられるエピクロロヒドリン(c)は、工業用原料及び試薬等の市販品を使用することができる。
本発明の紙質向上剤は、上記アミン化合物(a)と上記飽和脂肪酸類(b)とを反応させて得られるアミド化合物に、エピクロロヒドリン(c)を反応させて得られる反応生成物からなる。
工程(I)は、アミン化合物(a)と飽和脂肪酸類(b)とを反応させてアミド化合物を得る工程である。
工程(II)は工程(I)で得られたアミド化合物とエピクロロヒドリン(c)とを水等の溶媒を用いずに所定条件で反応させる工程であり、これによりアミド化合物をアルキル化及び/又は架橋する。工程(II)では、DCP含有量の低減と紙への嵩高さの付与とを両立する観点から、アミド化合物のアミノ基1当量に対して、エピクロロヒドリン(c)を0.40〜0.65当量、好ましくは0.45〜0.63、さらに好ましくは0.48〜0.60で用いる。用いるエピクロロヒドリンの当量が多いほどサイズ性が向上する傾向にあり、逆に用いるエピクロロヒドリンの当量が少ないほど得られる紙質向上剤中のDCPの含有量が少なくなる傾向にある。
本発明の紙質向上剤の製造方法は、さらに、下記工程(III)を有することが好ましい。
工程(III):
工程(II)で得られた反応生成物を成形して、平均長径3〜30mm、平均短径1〜15mm、平均厚さ0.1〜5mmの薄片状物とする工程
また、本発明の紙質向上剤の製造方法は、さらに、下記工程(IV)を有してもよい。
工程(IV):
工程(I)及び(II)で得られた反応生成物又は工程(I)〜(III)で得られた薄片状反応生成物を、その融点以上の温度の水に分散させて、紙質向上剤の水分散体を得る工程
本発明の紙質向上剤は、抄紙工程の何れかにおいて添加されるものであり、そのまま添加してもよいし、必要に応じて水等に分散させた分散液として添加してもよい。
<工程(I)>
2L4つ口フラスコにパルミチン酸とステアリン酸との混合物(融点63℃、酸価203mgKOH/g)500gを入れ、窒素雰囲気下で70℃に加熱し、次にジエチレントリアミンを105g加えて140〜150℃で、常圧で5時間反応させた。さらに、酸価が5mgKOH/g未満になったことを確認してから、140〜150℃で減圧下(6.7kPa)4時間熟成を行った。その後常圧に戻すと共に室温まで冷却した。得られたアミド化合物のアミン価は118mgKOH/gであった。
工程(I)で得られたアミド化合物200gを500ml4つ口フラスコに移した。フラスコを105〜115℃で保持しつつ、エピクロロヒドリン19.4g(アミド化合物のアミノ基1当量に対して0.5当量)を2時間かけて滴下し、さらに105〜120℃で5時間熟成した後、フラスコから反応物を取り出し反応生成物を得た。得られた反応生成物の融点は83℃、DCP含有量は0.4重量%であった。
工程(II)で得られた反応後の溶融状態の反応生成物の一部分を150mm×200mmのステンレス製のバットに厚さ約2mmに拡げて一晩冷却し板状に固化させた。固化した板状の反応生成物1をポリ袋に入れ袋の上から手で粉砕し、平均長径10mm、平均短径5mm、平均厚さ2mmのフレーク状の反応生成物を得た。
このフレーク状の反応生成物(融点83℃)18gを、500mlビーカに入れた90℃の水282g中に添加し、プロペラ型攪拌羽根(直径50mm、羽根4枚、500rpm)で30分間攪拌し分散させ、紙質向上剤を含有する水分散体(本発明品1)を得た。本発明品1は固形分6重量%であり、DCP含有量は0.02重量%であった。この液状の本発明品1は、25℃で60日間保存しても分離は観察されず保存安定性も良好であった。
工程(I)で、140〜150℃での減圧条件を10kPaとした以外は、実施例1と同様にして、反応生成物を得た。得られた反応生成物の融点は80℃、DCP含有量は0.7重量%であった。さらに、実施例1と同様の操作により、平均長径10mm、平均短径5mm、平均厚さ2mmのフレーク状の反応生成物(融点80℃)を得た。更に、実施例1と同様にして紙質向上剤を含有する水分散体(本発明品2)を得た。本発明品2は固形分6重量%であり、DCP含有量は0.04重量%であった。この液状の本発明品2は、25℃で60日間保存しても分離は観察されず保存安定性も良好であった。
500ml4つ口フラスコにステアリン酸189.7gとテトラエチレンペンタミン63.1g(モル比2/1)とを入れ、窒素ガスを吹き込みながら徐々に加熱し、180〜200℃で5時間反応させ室温まで冷却しアミン価が160.5mgKOH/gのアミド化合物を得た。500ml4つ口フラスコにこのアミド化合物169.8gを入れ90℃に加熱し、90〜100℃で保持しつつ、エピクロロヒドリン30.13g〔アミド化合物のアミノ基1当量に対して0.67当量、ステアリン酸2モルとテトラエチレンペンタミン1モルが反応して得られるアミドアミンに対してアミン価から計算したモル比(エピクロロヒドリン/アミドアミン)で1/2〕を50分かけて滴下し、さらに90〜100℃で4時間熟成した後、フラスコから反応物を取り出し反応生成物(比較品1)を得た。得られた反応生成物のDCP含有量は9.4重量%であった。
(融点測定法)
測定装置として図1の装置を用いる。該装置により所定の条件で加熱したとき、試料が完全に透明になったときの温度を融点とする。具体的な操作は次の通りである。
DCP含有量は、以下のようにして調製した各溶液を用いてガスクロマトグラフィーにより検量線に基づき測定する。
(1)内部標準溶液
ブチルカルビトール約0.5gを、50mlメスフラスコに精量し、クロロホルムでメスアップする。この溶液を試料溶液及び検量線溶液に1ml添加する。
(2)試料溶液
試料約1gを30mlスクリュー管に精量する。内部標準溶液を1ml添加し、クロロホルムで約20mlにする。
(3)検量線溶液
DCP標準を約0.5g、50mlメスフラスコに精量し、クロロホルムでメスアップする。この溶液を30mlスクリュー管4個に1ml、2ml、3ml、4ml入れ、内部標準溶液を1mlずつ添加する。それぞれにクロロホルムを加えて約20mlにする。
(4)GC測定条件
カラム:FFAP
カラム温度:90℃(5℃昇温)から220℃(15分ホールド)
注入口温度:220℃
検出器温度:220℃
試料注入量:1μl
表1に示す紙質向上剤の水分散体(便宜上、表中では紙質向上剤と表記する)を用いて以下の試験を行った。結果を表1に示す。
(抄紙方法)
LBKPを室温下、叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとしたものを用いた。カナディアンスタンダードフリーネスは430mlであった。このLBKPスラリーを抄紙後のシートの坪量が絶乾で80g/m2になるようにはかりとってから、カチオン化澱粉(CATO308、日本NSC製)1.0部(パルプ100重量部に対する重量部、以下同じ)、工業用硫酸バンド0.5部、炭酸カルシウム(ホワイトンPC、白石工業(株)製)20部、サイズ剤(アルキルケテンダイマー)0.05部、及び表1の紙質向上剤を攪拌しながら添加した。その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、カチオン性ポリアクリルアミド系歩留向上剤(パーコール47、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.03部を攪拌しながら添加した後、角型タッピ抄紙機にて150メッシュワイヤーで抄紙し、コーチングを行って湿紙を得た。抄紙後の湿紙は、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥し、パルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、湿度50%RHの条件で1日間調湿してから、下記評価を行った。結果を表1に示す。
調湿されたパルプシートの坪量(g/m2)と厚み(mm)を測定し、下記計算式により緊度(g/cm3)を求めた。
計算式: (緊度)=(坪量)/(厚み)×0.001
緊度は絶対値が小さいほど嵩が高く、また緊度の0.02の差は有意差として十分に認識される。
計算式: 嵩高向上率(%)=〔1−(紙質向上剤添加品の緊度)/(紙質向上剤無添加品の緊度)〕×100
JIS P 8122−54の紙のステキヒトサイズ度試験方法で行った。すなわち、シャーレに入れた23±1℃の2%ロダンアンモニウム溶液上に抄紙された紙の試験片(2cm×2cm)を浮かべると同時に、同じ温度の1%塩化第二鉄溶液をピペットで1滴試験片上に滴下してから試験片上に3個の赤色の斑点が現れるまでの秒数を計り、それをもってサイズ度とする。
**比較品2は、脂肪酸エステル系嵩高剤(花王(株)製、KB−110)である。
B:コルク栓
C:通気孔
D:温度計
E:補助温度計
F:浴液
G:毛細管
H:側管
Claims (3)
- 以下の工程(I)、工程(II)及び工程(III)を有する紙質向上剤の製造方法であって、紙質向上剤の融点が50℃以上であり、1,3−ジクロロ−2−プロパノールの含有量が2.0重量%以下である紙質向上剤の製造方法。
工程(I):
下記一般式(1)で表されるアミン化合物(a)と炭素数12〜40の飽和脂肪酸類(b)とを反応させてアミド化合物を得る工程
〔式中、R’はR又は−[(CH2)nNH]x−R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基もしくは炭素数2〜24のアルケニル基、nは1〜10の数、x、y及びzはそれぞれ0〜5の数を示す。〕
工程(II):
工程(I)で得られたアミド化合物を溶融させ、該アミド化合物とエピクロロヒドリン(c)とを、アミド化合物のアミノ基1当量に対して、エピクロロヒドリンを0.40〜0.65当量で反応させる工程
工程(III):
工程(II)で得られた反応生成物を成形して、平均長径3〜30mm、平均短径1〜15mm、平均厚さ0.1〜5mmの薄片状物とする工程 - 下記一般式(1)で表されるアミン化合物(a)と炭素数12〜40の飽和脂肪酸類(b)とを反応させて得られるアミド化合物に、エピクロロヒドリン(c)を反応させて得られる反応生成物からなる紙質向上剤であって、
融点が50℃以上であり、1,3−ジクロロ−2−プロパノールの含有量が2.0重量%以下であり、
平均長径が3〜30mm、平均短径が1〜15mm、平均厚さが0.1〜5mmの薄片状の形態を有する、
紙質向上剤。
〔式中、R’はR又は−[(CH2)nNH]x−R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基もしくは炭素数2〜24のアルケニル基、nは1〜10の数、x、y及びzはそれぞれ0〜5の数を示す。〕 - 請求項2記載の紙質向上剤を、水に分散させ、該分散液をパルプスラリー中に添加し抄紙を行うパルプシートの製造方法。
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