JP3829747B2 - 紙用嵩高剤及びそれを含有する嵩高紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紙用嵩高剤、及びそれを含有する嵩高紙に関し、特にサイズ性を付与できる紙用嵩高剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の活字離れを反映して、急激にコミック本やペーパーバックが普及してきた。これに伴い、紙にも軽量化や柔軟性付与が求められている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち嵩高化(低密度化)のことを指す。環境問題が叫ばれている現在、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用する上でも、紙の軽量化は避けて通れない問題である。また、柔軟性付与とは、紙の厚さを維持した上で紙の曲げこわさ、すなわち本を開いた時に自然に閉じることなく、開いた状態を充分に保つことのできる紙のしなやかさのことを指す。
【0003】
紙を嵩高にする方法としては架橋パルプを用いる方法(特開平4-185792号公報等)や合成繊維との混抄による方法(特開平3-269199号公報等)、パルプ間に無機物等の充填物を満たす方法(特開平3-269199号公報等)、発泡性粒子を用いる方法(特開平5-230798号公報、特開平11-200282号公報等)などがある。しかしながら、架橋パルプや合成繊維等の使用は紙のリサイクルを不可能にしてしまう。また、パルプ間に充填物を満たす方法や発泡性粒子を用いる方法では紙力が著しく低下する。また、界面活性剤を用いる方法(WO098/03730号公報、特開平11-200283号公報、特開平11-200284号公報、特開平11-200285号公報、特開平11-269799号公報、特開平11-350380号公報等)も報告されている。
【0004】
また、最近では環境問題の高まりと古紙のリサイクル率の向上に伴って、上質紙等にも古紙パルプを積極的に配合する傾向が進んでおり、機械パルプと同様、古紙パルプの配合量が増加しつつある。しかしながら、古紙パルプの配合量が増加すると、白色度や不透明度が低下するなどの諸問題が発生し、これらを解決する必要に迫られている。古紙を含む紙を嵩高にする方法としては、界面活性剤を用いる方法(特開2000-282398号公報等)が報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの嵩高剤を実際の抄紙工程で使用しても嵩高化の効果が十分に発揮されないことがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、十分な嵩高性を示す用紙を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される分子内に水酸基を1個以上有する脂肪族多価カルボン酸と高級アルコールとのエステル化合物を嵩高剤として使用し、紙中に含有させることにより嵩高性に優れた紙を得ることができた。さらに、エステル化合物として酒石酸エステル、クエン酸エステルまたはリンゴ酸エステルを用いることで、顕著な嵩高性を有する紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【化2】
(但し、Xは炭素数1以上9以下の直鎖または分岐のアルキル基、若しくはアルケニル基を表す。Rは炭素数12〜22の直鎖または分岐のアルキル基、若しくはアルケニル基を表し、各々のRは必ずしも同一である必要はない。mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。)
Xは、例えば、下記一般式(2)で示されるような炭素数1以上9以下の直鎖または分岐のアルキル基、若しくはアルケニル基を表す。
【0009】
【化3】
さらに、Rは炭素数12〜22の直鎖または分岐のアルキル基、若しくはアルケニル基であり、好ましくは炭素数12〜22の直鎖アルキル基である。また、Rには下記一般式(3)の様にアルキレンオキサイド構造が含まれていても良い。
【0010】
【化4】
(ただし、一般式(3)中のRxは炭素数12〜22の直鎖または分岐のアルキル基、若しくはアルケニル基であり、好ましくは炭素数12〜22の直鎖アルキル基である。AOはアルキレンオキサイド構造を示し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選択された少なくとも1種類の構造から成り立っており、中でもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド構造であることが好ましい。yは0から10までの整数を示す。また、2種以上のアルキレンオキサイドを使用する際の重合方式はブロック重合、ランダム重合のいずれでも良い。)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の紙用嵩高剤及びこれを含有する嵩高紙について詳細に説明する。
【0012】
はじめに、本発明の一般式(1)で表される嵩高剤の製造方法について記述する。本発明の嵩高剤は、従来公知の方法により合成することができる。本発明の嵩高剤の製造方法は特に限定されるものではないが、基本的には分子内に水酸基を1個以上有する脂肪族多価カルボン酸と高級アルコール、あるいは水酸基を1個以上有する脂肪族多価カルボン酸と高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物と触媒存在下で脱水反応させる、すなわち、エステル化反応を行なう方法が好ましい。
【0013】
水酸基を1個以上有する脂肪族多価カルボン酸としては、十分な嵩高性とサイズ性を有し、工業的に入手が容易で、かつ安価である化合物として酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
高級アルコールとしては、工業的に入手が容易で、かつ安価である化合物としてラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、高級アルコール部分には以下に示す一般式(3)で表されるようなアルキレンオキサイド構造が含まれていても良い。
【0015】
【化5】
一般式(3)中のRxは炭素数12〜22の直鎖または分岐のアルキル基、若しくは不飽和の炭化水素であり、好ましくは炭素数12〜22の直鎖アルキル基である。AOはアルキレンオキサイド構造を示し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選択された少なくとも1種類の構造から成り立っており、中でもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド構造であることが好ましい。yは0から10までの整数を示す。また、2種以上のアルキレンオキサイドを使用する際の重合方式はブロック重合、ランダム重合のいずれでも良い。
【0016】
また、エステル化反応には様々な手法があり、特定の方法に限定されるものではないが、触媒として鉱酸、有機酸、Lewis酸、酸性イオン交換樹脂、DCC等を用いて脱水縮合させる反応が収率・操作性の面で好ましい。
【0017】
嵩高剤による紙の嵩高性の発現機構は完全には解明されていないが、嵩高剤が抄紙時にパルプ繊維に定着し、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化して、乾燥後には単繊維同士を反発させて繊維間結合距離を増加させることで嵩高性を発現させていると考えられる。嵩高剤が効率的にパルプ繊維表面に定着するためには、極めて親水性が高いパルプ繊維と親和性が高い親水基が嵩高剤に必要である。また、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化させるためには、かなり疎水性が高い構造を有することが必要不可欠である。以上のことから、嵩高剤は分子内に親水性基と疎水性基を同時に有する化合物であることが好ましい。
【0018】
疎水性が高い化合物としてワックスなどの高級炭化水素化合物、高級脂肪酸エステル、油脂などの多価アルコール高級脂肪酸エステル、そして脂肪族多価カルボン酸と高級アルコールとのエステル化合物などが挙げられる。いずれの化合物も各種界面活性剤を用いて乳化でき、その乳化液をパルプスラリーに添加することにより、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化することができる。しかしながら、サイズ性を高めることはできるものの嵩高性を高めるまでは至っていない。疎水性が高い化合物は併用するカチオン性界面活性剤や硫酸バンドによってパルプ表面に一時的に定着はするが、プレス工程及び乾燥工程でパルプ繊維同士の水素結合が生成する際に、併用する硫酸バンドを介してパルプ繊維に定着する能力が比較的弱いため定着性が不安定になり、疎水性が高い化合物がその結合点から排斥されるため嵩高にはならず疎水性のみが向上するものと考えられる。
【0019】
一方、一般に広く用いられる界面活性剤の中には嵩高作用を持つものがあるが、パルプ繊維に定着した界面活性剤は高い親水性をそのまま維持するため、併用するサイズ剤のサイズ性を低下させるか、あるいは全く消失させてしまうものが散見される。
【0020】
本発明者らは、疎水性が高いが、定着性が不安定であるため効果的に嵩高性を発現しない化合物に対して、僅かではあるが界面活性効果を持つ水酸基を1個以上有する多価カルボン酸と高級アルコールとのエステル化合物を嵩高剤として紙に添加して抄紙することによって、極めて密度が低い所謂嵩高紙を製造し、本発明を完成するに至った。
【0021】
本発明の嵩高剤中に存在している水酸基は、親水性と疎水性のバランスをより親水性側に傾けて界面活性効果が発現するのに加えて、共存する硫酸バンド中のアルミニウムイオンとキレートを形成し、そのキレート複合体がパルプ繊維と極めて強い結合力を示すと考えられる。そのため、プレスおよび乾燥の際に繊維間水素結合を阻害し、嵩高性が効率的に発現するものと考えられる。
【0022】
本発明の嵩高剤は通常常温で固体であり、一般式(1)中のRの炭素数が多い場合は融点が90℃を超える化合物もある。このような融点が高い化合物を嵩高剤として添加しても、嵩高剤が抄紙の乾燥工程で完全に融解して繊維表面に均一に分布できず、所望の嵩高性が発現しない場合がある。一方、Rに分岐構造や不飽和結合を有するアルキル基を導入すると、融点が30℃以下の化合物が生成する場合がある。このような融点が室温で液体またはゲル状の化合物を嵩高剤として添加して抄紙すると、サイズ性を低下させる、あるいは併用するサイズ剤の効果を低下させ、場合によってはサイズ性が全く消失してしまう。また、アルキレンオキサイド構造を有するアルキル基部分で繰り返し単位がエチレンオキサイド単位が多くなると固体になりやすく、プロピレンオキサイド単位が多くなると液体になりやすい傾向が見られる。本発明の化合物はいずれも融点が30℃から90℃までの範囲に入るので効果的に嵩高性が発現し、しかもサイズ性に影響を与えることはない。
【0023】
本発明の嵩高剤の具体例として、例えば、表1に示す構成から成る一般式(1)で表される脂肪族多価カルボン酸エステル化合物が挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【表1】
本発明の嵩高剤は水酸基を有しているものの、やや疎水性が高いため、効率的に水に乳化するために乳化能力の高い界面活性剤を併用することで均一な乳化液を作ることができる。その際、乳化剤を嵩高剤に対して0.1重量%以上30重量%以下の範囲で添加することが好ましく、紙質をあまり変化させずに嵩高性にするには0.1重量%以上20重量%以下の範囲で添加することがより好ましい。
【0025】
乳化剤としてはアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性などの様々な界面活性剤が用いられるが、特にカチオン化澱粉や4級アンモニウム塩の様なカチオン性の乳化剤や高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物の様なノニオン性乳化剤を1種類以上使用することにより泡の発生が低減し、作業性が極めて良好になる。また、カチオン化澱粉は非イオン性化合物である本発明の嵩高剤の乳化安定性を高め、かつパルプ繊維への歩留りを高める働きを有している。繊維用柔軟剤に用いられている長鎖アルキル4級アンモニウム塩は、それ自身嵩高作用を有しているが、本発明の嵩高剤の乳化安定性及び歩留りを高める作用も有しており、僅かな添加量でも十分な効果を示す。
【0026】
本発明の嵩高剤を乳化するために用いられる界面活性剤の具体例としては以下の化合物が挙げられる。すなわち、ぺレックスOT−P(花王(株)製)、デモールEP(花王(株)製)、ディスパーTL(明成化学(株)製)、ゴーセランL−3266(日本合成化学(株)製)、アロンT−40(東亜合成化学(株)製)などのアニオン性界面活性剤、エマルゲン(花王(株)製)、エマルミン(三洋化成製)、Span#20,40,60,80,83,85並びにTween20,40,60,80,85などのノニオン性界面活性剤、カチオンDS(三洋化成(株)製)、コータミン86W(花王(株)製)、コータミンD86P(花王(株)製)などのカチオン性界面活性剤などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
嵩高剤はパルプ繊維間の結合の阻害要因となるため、一般に紙の強度が低下し、紙の嵩高性が発現する。しかし、ある一定以上に添加量を増やしてもその効果が頭打ちになってしまう。すなわち、原料パルプに対して嵩高剤を0.1重量%以上5重量%以下添加することがより好ましい。また、添加量が多すぎると紙の摩擦係数が極端に変化してしまうなど一般紙質への影響が出る場合もある一方、少なすぎると嵩高剤の種類によっては嵩高効果が十分に発現しない場合があるので、0.2重量%以上2重量%以下添加することがより好ましい。
【0028】
本発明の嵩高紙は、各種パルプから通常の製紙工程によって製造される。原料パルプには、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプなどを単独または任意の割合で混合して使用することができる。なお、紙の原料に用いるパルプに機械パルプまたは古紙が含まれた場合でも、本発明の嵩高剤は良好な嵩高性を示す。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。
【0029】
本発明の嵩高紙は填料を含有してもよい。填料としては一般に使用されているものが使用でき、特に限定されるものではないが、例えばクレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が、単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。
【0030】
本発明の嵩高剤を含有する紙を得るには、通常の抄紙工程に嵩高剤をそのまま若しくは嵩高剤の乳化液を添加(いわゆる内添)すればよい。添加する場所は、パルプスラリーと均一に混合できるところであれば特に限定されるものではない。
【0031】
本発明の嵩高紙を製造する際において、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性の歩留まり剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。
【0032】
製紙用内添助剤としては、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が挙げられる。
【0033】
各種サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー系化合物、アルケニル無水コハク酸系化合物、スチレン−アクリル系化合物、高級脂肪酸系化合物、石油樹脂系サイズ剤やロジン系サイズ剤が挙げられる。
【0034】
その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物が例示できる。
【0035】
さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。なお、本発明の紙の製造方法は、その抄紙方法が、抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙によるものか、あるいは炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pHが約6の弱酸性〜約9の弱アルカリ性で行う、中性抄紙またはアルカリ性抄紙によるものかについては特に限定されず、全ての抄紙方法によって得られる紙を対象とする。また、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用できる。
【0036】
本発明の嵩高紙は、例えばオフセット印刷用紙として好適である。その他にも凸版印刷用紙、電子写真用紙、あるいはインクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙、PPC用紙、フォーム用紙などの情報記録用紙の原紙にも使用することができる。また、塗工紙用原紙としての使用も好ましい態様である。最近では、環境問題の高まりに伴い、古紙パルプを高配合する傾向が随所に見られてきている。本発明の紙用嵩高剤は古紙パルプの量にかかわらず、著しい嵩高性を示す。そのため、新聞紙はもちろんのこと、板紙・白板紙でも効果を発揮する。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例にて製造した紙について下記の項目を測定して評価した。結果を表2に示した。
・密度:JIS P 8118に準拠した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠した。
【0038】
[合成例1]クエン酸トリステアリルの合成(表1の化合物No.1)
多価カルボン酸としてクエン酸を6.64g、一級アルコールとしてステアリルアルコールを25.64g、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.50gを混合し、オイルバスで140℃に加熱して溶解させ、そのまま6時間反応を行った。反応終了後、濃度1mol/LのNaOH水溶液8.2mlを加えて中和し、室温まで放冷した。反応混合物を温メタノールで洗浄し、クエン酸トリステアリルを白色固体(融点:73℃)として27.03g得た。
<1HNMR(CDCl3,TMS,δppm)>
4.20(t,2H,δ=6.7Hz),4.07(t,4H,δ=6.7Hz),2.89(d,2H,δ=15.4Hz),2.79(d,2H,δ=15.4Hz),1.67(quintet,2H,δ=7.1Hz),1.60(quintet,4H,δ=7.1Hz),1.47-1.06(m,90H),0.88(t,9H,δ=6.7Hz)
<MS(FAB+)>
M/Z=950(M+1)
【0039】
[合成例2]リンゴ酸ジステアリルの合成(表1の化合物No.5)
多価カルボン酸としてリンゴ酸を6.30g、一級アルコールとしてステアリルアルコールを25.41g、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.50gを混合し、オイルバスで140℃に加熱して溶解させ、そのまま6時間反応を行った。反応終了後、濃度1mol/LのNaOH水溶液8.2mlを加えて中和し、室温まで放冷した。反応混合物を温メタノールで洗浄し、リンゴ酸ジステアリルを白色固体(融点:62℃)として25.45g得た。
<1HNMR(CDCl3,TMS,δppm)>
4.48(dd,1H,δ=4.6,5.6Hz),4.20(td,2H,δ=3.9,10.7Hz),4.10(t,2H,δ=6.8Hz),2.85(dd,1H,δ=4.4,16.2Hz),2.78(dd,1H,δ=6.1,16.4Hz),1.66(quintet,2H,δ=6.8Hz),1.50-1.06(m,60H),0.88(t,6H,δ=6.8Hz)
<MS(FAB+)>
M/Z=640(M+1)
【0040】
[合成例3]酒石酸ジラウリルの合成(表1の化合物No.8)
多価カルボン酸として酒石酸を15.40g、一級アルコールとしてラウリルアルコールを38.28g、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.50gを混合し、オイルバスで140℃に加熱して溶解させ、そのまま6時間反応を行った。反応終了後、濃度1mol/LのNaOH水溶液8.2mlを加えて中和し、室温まで放冷した。反応混合物を温メタノールで洗浄し、酒石酸ジラウリルを白色固体(融点:67℃)として39.04g得た。
<1HNMR(CDCl3,TMS,δppm)>
4.50(s,2H),4.23(td,4H,δ=3.9,10.5Hz),3.15(br,2H),1.66(quintet,4H,δ=7.1Hz),1.47-1.02(m,36H),0.86(t,6H,δ=6.8Hz)
<MS(FAB+)>
M/Z=487(M+1)
【0041】
[合成例4]酒石酸ジセチルの合成(表1の化合物No.8)
多価カルボン酸として酒石酸を7.52g、一級アルコールとしてセチルアルコールを24.29g、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.50gを混合し、オイルバスで140℃に加熱して溶解させ、そのまま6時間反応を行った。反応終了後、濃度1mol/LのNaOH水溶液8.2mlを加えて中和し、室温まで放冷した。反応混合物を温メタノールで洗浄し、酒石酸ジセチルを白色固体(融点:80℃)として24.04g得た。
<1HNMR(CDCl3,TMS,δppm)>
4.50(s,2H),4.23(td,4H,δ=3.9,10.7Hz),3.15(br,2H),1.67(quintet,4H,δ=7.1Hz),1.48-1.02(m,60H),0.86(t,6H,δ=6.8Hz)
<MS(FAB+)>
M/Z=600(M+1)
【0042】
[合成例5]酒石酸ジステアリルの合成(表1の化合物No.10)
多価カルボン酸として酒石酸を11.46g、一級アルコールとしてステアリルアルコールを41.28g、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム1.50gを混合し、オイルバスで140℃に加熱して溶解させ、そのまま6時間反応を行った。反応終了後、濃度1mol/LのNaOH水溶液8.2mlを加えて中和し、室温まで放冷した。反応混合物を温メタノールで洗浄し、酒石酸ジセチルを白色固体(融点:85℃)として43.21g得た。
<1HNMR(CDCl3,TMS,δppm)>
4.53(s,2H),4.25(td,4H,δ=4.1,10.7Hz),3.16(br,2H),1.69(quintet,4H,δ=7.1Hz),1.47-1.05(m,60H),0.88(t,6H,δ=7.1Hz)
<MS(FAB+)>
M/Z=656(M+1)
【0043】
[実施例1]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.5 10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)1.0gとを良く混合し、それを100gの水に添加して、乳化機を用いて回転数10,000rpmにて10分間攪拌を行ない、嵩高剤の乳化液を調製した。
パルプ分として広葉樹晒クラフトパルプ(ろ水度 CSF435ml)を使用し、定着剤として硫酸バンドをパルプ絶乾重量当たり1%添加し、さらに前述の嵩高剤の乳化液をパルプ絶乾重量当たり1%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を配向性抄紙機を用いて抄紙した後に、4.18kg/cm2の有効プレス圧にてプレスし、シリンダードライヤーで乾燥(120℃、1分間)を行なって、坪量60g/m2の紙を得た。得られた紙を温度23℃、相対湿度50%で24時間保存した後各種試験を行なった。
【0044】
[実施例2]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.5 10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)0.5gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0045】
[実施例3]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.8 10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)0.5gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0046】
[実施例4]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.8 10.0gと、乳化剤としてぺレックスOT−P(花王(株)製)0.15gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0047】
[実施例5]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.9 10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)1.0gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0048】
[実施例6]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.9 10.0gと、乳化剤としてカチオンDS(三洋化成(株)製)0.8gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0049】
[実施例7]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.9 10.0gと、乳化剤としてSpan#20 0.9gとを使用して嵩高剤の乳化液を調製した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0050】
[比較例1]
表1に示した化合物No.2を添加しない以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0051】
[比較例2]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.2の代わりにアジピン酸ジステアリルを添加した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0052】
[比較例3]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.2の代わりにフタル酸ジステアリルを添加した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0053】
[比較例4]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.2の代わりにグリセリントリステアレートを添加した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0054】
[比較例5]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.2の代わりにペンタエリスリトールテトラステアレートを添加した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0055】
[比較例6]
嵩高剤として、表1に示した化合物No.2の代わりにステアリルアルコールに5等量のプロピレンオキサイドを付加して得られた界面活性剤を添加した以外は実施例1と同様にして抄紙を行なった。
【0056】
さらに、実施例1〜7、比較冷4〜6において嵩高剤の他にアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤をパルプ絶乾重量当たり0.2重量%となるように添加し、各嵩高剤がAKD系サイズ剤のサイズ効果を阻害しないか確認を行なった。
【0057】
【表2】
表2に示す様に実施例1〜7と比較例1(嵩高剤無添加)とを比べると、嵩高剤として一般式(1)で表される化合物を用いることにより、嵩高性が発現するだけではなく化合物がサイズ性も有していることが判った。しかも、一緒に添加したAKD系サイズ剤のサイズ効果を阻害する現象は特に見られなかった。一方、比較例2〜5で用いた化合物は、分子内に水酸基を有していないため嵩高性を紙に付与することができなかった。また、比較例6に用いた化合物は末端に水酸基を有しているため嵩高効果は見られたが、AKD系サイズ剤のサイズ効果を阻害する作用を有していることが判った。
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